説明

可食体用レーザマーキング装置

【課題】可食体へのマーキングを正確に効率良く行うことができる可食体用レーザマーキング装置を提供する。
【解決手段】可食体eを保持する保持部を備え、可食体eをマーキングエリアに搬送する搬送手段10と、保持部に可食体eを供給する供給手段20と、搬送手段10による可食体eの搬送位置を検出する搬送位置検出手段15と、マーキングエリアに搬送された可食体eに照射するレーザ光を走査するレーザ光走査手段30とを備え、前記保持部は、搬送手段10の搬送方向に沿って複数形成されており、レーザ光走査手段30は、搬送位置検出手段15の検出に基づいてレーザ光を走査することにより、各保持部に保持された可食体eへのマーキングを順次行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、錠剤、カプセル剤などの可食体にマーキングパターンを形成する可食体用レーザマーキング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
錠剤やカプセル剤などの可食体に対しては、表面に商品名などをマーキングすることにより、識別性を付与することが従来から行われている。例えば特許文献1には、錠剤及びカプセルに、パターンマスクを介してレーザ光を照射することにより、識別マークを施す方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平4−122688号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、特許文献1に開示されたマーキング方法によれば、可食体の所望の位置へマーキングを施すために、パターンマスクの位置合わせを正確に行う必要があり、作業効率の点で問題があった。特に、錠剤やカプセル剤のように、曲面への微細なマーキングが必要な場合には、可食体の位置決めに高い精度が要求されることから、マーキングパターンの位置ずれを防止しつつマーキング処理能力を高めることが極めて困難であった。
【0005】
そこで、本発明は、可食体へのマーキングを正確に効率良く行うことができる可食体用レーザマーキング装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の前記目的は、可食体にマーキングパターンを形成する可食体用レーザマーキング装置であって、可食体を保持する保持部を備え、可食体をマーキングエリアに搬送する搬送手段と、前記保持部に可食体を供給する供給手段と、前記搬送手段による可食体の搬送位置を検出する搬送位置検出手段と、前記マーキングエリアに搬送された可食体に照射するレーザ光を走査するレーザ光走査手段とを備え、前記保持部は、前記搬送手段の搬送方向に沿って複数形成されており、前記レーザ光走査手段は、前記搬送位置検出手段の検出に基づいてレーザ光を走査することにより、前記各保持部に保持された可食体へのマーキングを順次行うことを特徴とする可食体用レーザマーキング装置により達成される。
【0007】
この可食体用レーザマーキング装置において、前記保持部は、吸引部及び一対の当接部を備えており、前記供給手段から前記保持部に供給された可食体が、自重により一対の前記当接部に当接した状態で、前記吸引部により吸引保持されるように構成することが好ましい。
【0008】
この場合、前記保持部は、底面に前記吸引部が形成された凹部とすることができ、一対の前記当接部は、前記凹部のV字状内壁面とすることができる。また、前記吸引部は、負圧により可食体を吸引可能に構成することができ、前記保持部は、前記吸引部を通過して延びる溝部を備えることができる。
【0009】
また、前記供給手段は、前記保持部に保持される可食体の被マーキング面が所定の向きとなるように、可食体の姿勢を調整する姿勢調整手段を備えることが好ましい。前記姿勢調整手段は、複数の可食体を垂直方向に整列保持する供給シュートと、整列保持された最下部の可食体を順次切り出して外周面に保持し、回転により搬送する切り出しローラと、前記切り出しローラにより搬送された可食体を外周面に吸引保持し、回転により前記搬送手段の前記各保持部に供給する供給ローラとを備える構成にすることができる。
【0010】
また、前記搬送手段は、前記保持部を外周面に備え、回転駆動によって可食体を搬送する搬送ドラムから構成することができる。この場合、前記搬送位置検出手段は、前記搬送ドラムの回転位置の検出に基づいて、可食体の搬送位置を検出することが好ましい。前記搬送ドラムは、軸方向及び周方向の双方に沿って前記保持部がそれぞれ複数形成された構成にすることができ、前記レーザ光走査手段は、前記搬送ドラムの周方向に搬送される可食体に対して、前記搬送ドラムの軸方向に沿ってマーキングを順次行うことができる。また、前記レーザ光走査手段は、前記搬送ドラムが連続回転する状態で、前記搬送位置検出手段の検出に基づいて前記搬送ドラムの搬送量を算出し、レーザ光の走査を補正するように構成することができる。
【0011】
また、上記各可食体用レーザマーキング装置においては、前記レーザ光走査手段により可食体に施されたマーキングを、可食体が前記各保持部に保持された状態で撮影するマーキング検査手段を更に備えることが好ましい。
【0012】
また、マーキング対象の可食体としては、錠剤、カプセル剤又は空カプセルのいずれかであることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の可食体用レーザマーキング装置によれば、可食体へのマーキングを正確に効率良く行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態に係る可食体用レーザマーキング装置の概略構成を示す側面図である。
【図2】図1に示すレーザマーキング装置の要部断面図である。
【図3】搬送ドラムの外周面を平面的に表した展開図である。
【図4】レーザ光走査装置の概略構成図である。
【図5】レーザ光走査装置の作動を説明するための図である。
【図6】搬送ドラムの変形例を示す展開図及び断面図である。
【図7】供給装置の変形例を示す側面図である。
【図8】図7に示す供給装置の要部断面図である。
【図9】搬送ドラムの変形例を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実態形態について添付図面を参照して説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る可食体用レーザマーキング装置の概略構成を示す側面図である。本実施形態のレーザマーキング装置は、錠剤などの偏平な可食体の表面にマーキングを施すものである。
【0016】
図1に示すように、レーザマーキング装置1は、可食体eを外周面に保持して回転により搬送する搬送ドラム10と、搬送ドラム10に可食体eを供給する供給装置20と、搬送ドラム10により搬送される可食体eに対してレーザ光を走査してマーキングを行うレーザ光走査装置30と、可食体eのマーキング状態を検査するマーキング検査装置40と、検査後の可食体eを排出する排出装置50とを備えており、脚部1a,1aにより水平な床面F上に設定可能とされている。
【0017】
搬送ドラム10は、図2に断面図で示すように、中空筒状に形成されており、端部において回転軸を介して連結された駆動モータ(図示せず)により、回転駆動される。図2及び図3に示すように、搬送ドラム10の外周面には、可食体eを収容可能な凹部からなる保持部11が、周方向及び軸方向の双方に沿って等間隔に複数形成されている。なお、図3は、搬送ドラム10の外周面を平面的に表した展開図である。
【0018】
また、搬送ドラム10は、周方向に沿って配置された各保持部11にそれぞれ対応するように、径方向内側に通気路12が形成されている。各通気路12は、搬送ドラム10を軸方向に貫通するように延びており、軸方向に整列する複数の保持部11と連通孔13を介して連通する。
【0019】
図3に示すように、連通孔13は、各保持部11の底面にそれぞれ開口しており、搬送ドラム10の周方向に整列する各保持部11の連通孔13を通過するように、溝部14が形成されている。保持部11の形状は、溝部14を対称軸とする五角形状(ホームベース状)であり、溝部14上の頂点を挟んで両側に延びるV字状の内壁面が、収容される可食体eの周縁と当接する一対の当接部11a,11aを構成している。
【0020】
搬送ドラム10に形成された通気路12は、真空吸引装置の吸引部(図示せず)に対して、開口端部が気密状態を維持しながら摺動回転するように接続されることで、連通孔13を介して保持部11内の可食体eを吸引保持する。各通気路12は、大部分の回転位置において前記真空吸引装置に接続されるが、図2に示す姿勢補正エリアAを通過する間は、圧縮空気供給装置(図示せず)から圧縮空気が供給され、連通孔13を介して保持部11に空気が噴出される。
【0021】
また、搬送ドラム10の回転軸には、搬送ドラム10による可食体eの搬送位置検出手段として、搬送ドラム10の回転位置を検出するロータリーエンコーダ15が設けられている。ロータリーエンコーダ15は、発光素子と受光素子との間に、回転軸に設けられたスリット板および固定されたスリット板が配置された公知の構成である。本実施形態においては、回転位置検出手段として高い検出精度を得るために、搬送ドラム10の回転位置を絶対値として検出するアブソリュート型を使用しているが、インクリメンタル型を使用することも可能である。
【0022】
供給装置20は、図1に示すように、可食体eが投入されるホッパー21と、投入された可食体eを水平方向に搬送する直進フィーダ22と、水平搬送された可食体eを所定の姿勢に揃えてコイルシュート23に定量供給するボールフィーダ24とを備えている。ボールフィーダ24には、貯留物の高さ位置を検出するレベルセンサが設けられており、ボールフィーダ24に貯留される可食体eの量が常時ほぼ一定となるように、直進フィーダ22の作動が制御される。また、ボールフィーダ24には、搬送中に可食体eに帯電した静電気を除去する除電装置24aが設けられている。
【0023】
また、供給装置20は、図1及び図2に示すように、コイルシュート23を介して供給された複数の可食体eを垂直方向に整列保持する供給シュート25と、整列保持された可食体eを順次回転により搬送する切り出しローラ26と、搬送された可食体eを受け取り搬送ドラム10に充填する充填ローラ27とを備えている。これら供給シュート25、切り出しローラ26及び充填ローラ27は、搬送ドラム10の保持部11に保持される可食体eが、被マーキング面を径方向外方に露出させて所定の向きとなるように、搬送ドラム10に供給する可食体eの姿勢を調整する姿勢調整手段29として機能する。
【0024】
供給シュート25は、複数の可食体eを偏平面同士が互いに接するように積み重ねて保持しており、その整列高さが一定以下になると残量検知センサ25aにより検知される。
【0025】
切り出しローラ26は、外周面に周方向に沿って等間隔に形成された複数の凹部26aを有しており、供給シュート25に整列保持された最下部の可食体eを順次切り出して凹部26a内に収容し、露出する可食体eの偏平面をガイド部材26bの案内面と摺動させながら、充填ローラ27に案内する。
【0026】
充填ローラ27は、外周面に周方向に沿って等間隔に形成された複数の吸引孔27aを有しており、切り出しローラ26により搬送された可食体eを吸引孔27aにおける吸引により受け取り、搬送ドラム10に向けて回転搬送する。各吸引孔27aは、搬送ドラム10の連通孔13と同様に、通気路27bを介して真空吸引装置(図示せず)に接続されており、吸引孔27aからの吸引力を連通孔13からの吸引力よりも小さく設定することにより、充填ローラ27から搬送ドラム10の保持部11に対して可食体eの充填が確実に行われる。なお、充填ローラ27の近傍には除電装置27cが配置されており、充填ローラ27による回転搬送中に、可食体eに対する再度の除電が行われる。
【0027】
レーザ光走査装置30は、搬送ドラム10の近傍において、供給装置20よりも可食体eの搬送方向下流側に配置されており、図4に模式図で示すように、レーザ光源31と、一対のガルバノミラー32,33と、収束レンズ34と、コントローラ35とを備えている。
【0028】
レーザ光源31は、可食体eにマーキングパターンを形成するレーザ光を出射する装置であり、本実施形態においては、YVOレーザ光を出射するものを使用している。レーザ光源31から出射するレーザ光としては、YVOレーザ光以外に、YLFレーザ光や、YAGレーザ光などの固体レーザ光を好ましく例示することができ、エキシマレーザ、炭酸ガスレーザなどの気体レーザや、色素レーザなどの液体レーザを使用することも可能である。特に、基本・第2・第3・第4高調波YVO4レーザ発信器が好ましい。例えば、3高調波発信器としてYVO4 Laser DS20H-355(Photonics Industries International, Inc)、第4高調波発信器としてAVIA266-3000(COHERENT社)を利用することができる。
【0029】
また、本発明のレーザは、その波長が200〜1100nmを有するものを用いることができる。好ましくは1060〜1064nm、527〜532nm、351〜355nmまたは263〜266nmの波長のレーザである。例えば、可食体eの表面に存在する成分を燃焼させることによりマーキングする場合は、1060〜1064nmが好適であり、後述する変色誘起成分を利用するときは、351〜355nmまたは263〜266nmの波長のレーザが好適である。なお、可食体の表面を削ることによりマーキングする場合は、短い波長が好ましい。
【0030】
一対のガルバノミラー32,33は、それぞれサーボモータなどの駆動装置32a,33aによって反射角度を変えることが可能であり、一方のガルバノミラー32がX方向の反射角度を、他方のガルバノミラー33がY方向の反射角度を、それぞれ変更可能である。これにより、レーザ光源31から出射されたレーザ光を、搬送ドラム10上のマーキングエリアにおいて、搬送ドラム10の周方向及び軸方向に走査することができる。
【0031】
収束レンズ34は、例えばf−θレンズから構成され、一対のガルバノミラー32,33で反射されたレーザ光を、可食体eの表面に収束させる。収束レンズ34は、上下方向に移動可能に支持されており、レーザ光の焦点位置を適宜調整することができる。
【0032】
コントローラ35は、CADなどによりデザインされた文字、記号、図形などの可食体eに施すマーキングパターンを、マーキング情報としてメモリ部(図示せず)に格納しており、ロータリーエンコーダ15の検出により搬送ドラム10の回転位置を把握しつつ、マーキング情報に基づいてレーザ光源31の出射及び駆動装置32a,33aの駆動を制御することにより、各可食体eへのマーキングを行う。
【0033】
レーザ光走査装置30の構成としては、上述したガルバノミラー型に限定されるものではなく、レゾナントスキャン型、ポリゴンミラー型など他の構成であってもよい。
【0034】
搬送ドラム10に対する可食体eの充填ミスや脱落は、供給装置20とレーザ光走査装置30との間において、搬送ドラム10の各保持部11の充填状態を検知する抜け検知センサ(図示せず)又は後述する外観検査装置62により判別可能である。コントローラ35は、抜け検知センサ(又は外観検査装置62)が可食体eを検知しない保持部11に対しては、マーキングを行わないようにレーザ光源31の出射を制御する。
【0035】
レーザ光走査装置30は、筒状の保護カバー36により覆われ、保護カバー36の側面には、マーキング加工時に発生する粉塵を吸引する吸引装置(図示せず)が接続されており、更にマーキング後の可食体eを除電する除電装置(図示せず)が設けられている。
【0036】
マーキング検査装置40は、図1に示すように、搬送ドラム10の近傍において、レーザ光走査装置30よりも可食体eの搬送方向下流側に配置されており、搬送ドラム10により所定の撮影エリアに搬送された可食体eを照明する照明装置や、撮影エリア内の可食体eの表面を撮影するCCDカメラなどの撮影装置を備えている。
【0037】
排出装置50は、図1に示すように、マーキング検査装置40よりも可食体eの搬送方向下流側に配置されており、搬送ドラム10の保持部11に保持された可食体eを外表面に吸引する吸引ドラム51を備えている。吸引ドラム51は、真空吸引装置(図示せず)の作動により、受け渡しエリアにおいて搬送ドラム10の軸方向に沿って整列する各可食体eを吸引できるように個別に吸引孔を備えており、可食体eの吸引は、各吸引孔に対応して設けられた遮断弁によって、個別に遮断することができる。吸引ドラム51に吸引された可食体eは、良品シュート52に向けて回転搬送される。また、排出装置50は、吸引ドラム51で吸引されずに受け渡しエリアを通過した可食体eを回収する不良シュート53を備えている。
【0038】
更に、レーザマーキング装置1は、可食体eの外観検査を行うための外観検査装置61,62を備えている。外観検査装置61,62は、充填ローラ27及び搬送ドラム10により搬送される可食体eの露出面をそれぞれ撮影可能に配置されており、可食体eの割れ、欠損、異物付着などの有無を検査することができる。外観検査装置61,62は、マーキング検査装置40と同様の構成を備えており、検査結果が不合格の可食体eは、不良シュート53を介して排出される。
【0039】
次に、レーザマーキング装置1の作動について説明する。まず、供給装置20のホッパー21に錠剤からなる可食体eを多数投入する。可食体eへのマーキングを容易にするため、投入する可食体eの表面には着色皮膜が形成されていることが好ましく、これによってレーザ光の強度を過大にすることなく照射部分の変色を促し、鮮明なマーキングを形成することができる。
【0040】
ホッパー21に投入された可食体eは、直進フィーダ22及びボールフィーダ24を介して供給シュート25に垂直方向に整列保持された後、切り出しローラ26により順次切り出されることにより、偏平面の向きが一定の状態で充填ローラ27により搬送される。この結果、搬送ドラム10の各保持部11には、可食体eが所望の姿勢で充填される。
【0041】
保持部11に充填された可食体eは、連通孔13を介して吸引保持された状態で、搬送ドラム10の回転により搬送される。そして、姿勢補正エリアAを通過する際に連通孔13から圧縮空気が噴出することにより、可食体eの吸引保持が一旦解除される。この結果、可食体eは、自重により保持部11の下側に位置する当接部11a,11aと当接した後、姿勢補正エリアAの通過後に連通孔13を介して再び吸引保持される。保持部11内には溝部14が形成されているので、姿勢補正エリアAにおいて圧縮空気が供給される際に、可食体eの外方に露出する溝部14から圧縮空気を逃がすことができ、圧縮空気の噴出による可食体eの脱落を確実に防止することができる。
【0042】
このように、搬送ドラム10は、供給装置20から供給された可食体eを、連通孔13から圧縮空気を噴出させて一対の当接部11a,11aに当接させた状態で、連通孔13を介して吸引保持するように構成されているので、可食体eの大きさに多少のばらつきが生じる場合でも、可食体eを保持部11内の適正な位置に適正な姿勢で確実に保持することができ、後工程におけるレーザマーキングを正確に行うことができる。姿勢補正エリアAにおける圧縮空気の噴出は、可食体eの位置及び姿勢を確実に修正する観点からは好ましいが、連通孔13を介した吸引を単に解除するだけでも、上記と同様の効果を得ることは可能である。
【0043】
姿勢補正エリアAは、吸引を解除した際に、可食体eが自重で一対の当接部11a,11aに当接しつつ、保持部11からの脱落は防止できる搬送ドラム10の回転位置に形成することが好ましく、本実施形態においては、水平方向とのなす角度が約50度から75度の範囲を姿勢補正エリアAとしている。
【0044】
こうして、可食体eは、搬送ドラム10の外表面における所定位置に正確に保持された状態で、レーザ光走査装置30に対向するマーキングエリアに搬送される。レーザ光走査装置30は、コントローラ35がマーキング情報に基づいてレーザ光を走査することにより可食体eにマーキングパターンを形成し、これを搬送ドラム10の軸方向に順次行っていく。
【0045】
なお、マーキング情報は、マーキングのデザイン以外に、一つの可食体における照射順序なども含んでおり、例えば、レーザ光の照射順序をマーキングのデザインを一筆書きにするように指示することができる。なお、マーキングのデザインは、特に限定されるものではなく、また、照射状態を観察しながら、マーキング情報を変更することも可能であるため、デザインの修正も容易である。
【0046】
レーザ光の走査時において搬送ドラム10は連続回転しているため、隣接する可食体eへのマーキングを行う際に、レーザ光の照射位置を単に搬送ドラム10の軸方向に移動させるだけでは、図5に実線で示すように、可食体eに対する位置ずれを生じ、正確なマーキングが行えない。そこで、コントローラ35は、搬送ドラム10の軸方向に沿って可食体eへのマーキングを行う際に、ロータリーエンコーダ15の検出に基づいて、搬送ドラム10の周方向への搬送量Δを算出し、この搬送量Δだけリアルタイムに補正しながらレーザ光を走査することにより、図5に破線で示すように、各可食体eの所望の位置に、所望のマーキングパターンを正確に形成することができる。この結果、搬送ドラム10の回転を一定に維持することができるため、供給装置20から搬送ドラム10への安定した可食体eの供給が可能になると共に、高いマーキング処理能力を得ることができる。
【0047】
レーザ光走査装置30は、搬送ドラム10の軸方向に沿ってレーザ光の照射位置を往復動させることにより、搬送ドラム10の回転により搬送される各可食体eに対してマーキングを行う。本実施形態においては、往動時及び復動時の双方においてマーキングを行っているが、いずれか一方のみにおいてマーキングを行うようにしてもよい。
【0048】
マーキングが施された可食体eは、搬送ドラム10の回転によりマーキング検査装置40の近傍に搬送され、マーキング状態の撮影が行われる。マーキング検査装置40は、撮影された可食体eの画像データに対して画像処理を施し、予め格納されたマスターとの比較により、マーキング状態の合否を判別する。この後、可食体eは排出装置50に向けて搬送される。
【0049】
マーキング状態が合格である可食体eは、受け渡しエリアにおいて吸引ドラム51に吸引され、吸引ドラム51の回転により良品シュート52に自重で落下し、良品受け箱(図示せず)などに収容される。一方、検査結果が不合格である可食体eについては、マーキング検査装置40から排出装置50への不合格信号の伝達を受けて、ロータリーエンコーダ15の検出に基づき受け渡しエリアまで搬送された時点で、吸引ドラム51の吸引が一時遮断される。この結果、可食体eは吸引ドラム51への吸引が行われることなく受け渡しエリアを通過し、搬送ドラム10の最下部において真空遮断エリアを通過することにより、搬送ドラム10への吸引が解除されて不良シュート53に落下する。
【0050】
このように、搬送ドラム10による可食体eの搬送により、マーキングパターンの形成及びこれに続くマーキング状態の検査を効率よく行うことができる。
【0051】
また、本実施形態のレーザマーキング装置1は、外観検査装置61,62を備えており、可食体eは、充填ローラ27による搬送中に一方の偏平面に対する外観検査が行われ、搬送ドラム10による搬送中に他方の偏平面に対する外観検査が行われる。この結果、可食体eへのマーキングと併せて外観検査を効率よく行うことができる。
【0052】
以上、本発明の一実施形態について詳述したが、本発明の具体的な態様は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、本実施形態においては、錠剤の偏平面にマーキングを施す場合について説明したが、図6(a)及び(b)に示すように、搬送ドラム10の保持部11を構成する凹部を、錠剤からなる可食体eのリング状側面が露出する状態で収容されるように形成することで、可食体eの側面にマーキングを施すことができる。なお、図6(a)は、搬送ドラム10の外周面を平面的に表した展開図、図6(b)は、搬送ドラム10の部分断面図であり、図6において図2と同様の構成部分には同一の符号を付している(以下の図においても同様)。
【0053】
また、本実施形態においては、搬送ドラム10に供給する可食体eの姿勢を調整する姿勢調整手段29として、供給シュート25、切り出しローラ26及び充填ローラ27を備える構成としているが、可食体eの被マーキング面が所定の向きとなるように可食体eを供給可能であれば、特に限定されない。例えば、上述した図6に示す搬送ドラム10に対しては、図7に示すように、可食体eが投入されるサービスホッパー201と、投入された可食体eを起立状態で搬送ドラム10の各保持部11に案内する櫛歯状の振動ガイドフィーダ202と、保持部11に収容された可食体eの飛び出しを防止するブラシロール203とを備える供給装置20を用いることができ、振動ガイドフィーダ202を姿勢調整手段として機能させることができる。振動ガイドフィーダ202は、図8に断面図で示すように、搬送ドラム10に向けて開口幅が徐々に狭くなるように形成された傾斜面を有するガイド部202aと、可食体eが偏平面に沿う方向にのみ通過するように開口幅が設定された流通規制部202bとを備えており、これによって、可食体eは、偏平面がガイド部202aの傾斜面及び流通規制部202bの内壁面に沿って案内され、搬送ドラム10の軸方向に整列する各保持部11に対して、側面が径方向外方を向くように可食体eが供給される。可食体eの形状は、確実に一定の向きで流通規制部202bを通過するように偏平状であることが好ましく、例えば、可食体eが異形錠である場合、偏平面の短径が厚みよりも1mm以上大きいことが好ましい。
【0054】
また、レーザマーキングの対象となる可食体eは、薬剤に限定されるものではなく、健康食品や菓子などであってもよい。錠剤の形状は、円板状に限られず、異形錠であってもよい。また、錠剤以外に、カプセル剤や空カプセルであってもよく、いずれの場合もマーキングに高い精度が要求されることから、本発明によるマーキング対象として特に好適である。但し、可食体eは、錠剤、カプセル剤、空カプセル以外に、定形性を有する他の形態であってもよい。
【0055】
なお、可食体eは、レーザ光の照射により、その表面を削ることにより、あるいは、その表面に存在する成分が物理的もしくは化学的変化することにより、マーキングが施される。このとき、レーザ光照射に伴い変色を誘起する成分を予め可食体eもしくは、その被覆層に分散させることにより、あるいは予め可食体eの表面に付着させることが好ましい。すなわち、可食体eの表面がほとんど削られることなく鮮明なマーキングを施すことが可能となり、可食体の品質確保の面あるいは生産性向上の面で好適である。特に、変色を誘起する成分としては、レーザ照射により凝集することで変色を可能とする酸化チタン、黄色三二酸化鉄、三二酸化鉄等の変色誘起酸化物の少なくとも1種が好ましい。
【0056】
また、本実施形態においては、搬送ドラム10の外周面に形成された凹部を保持部11としているが、可食体eを確実に吸引保持できる限り、凹部の形状や連通孔13の配置については特に限定されるものではない。可食体eを吸引保持する吸引部としては、連通孔13以外の構成であってもよく、例えば、可食体eまたはその包装材が磁性を有する場合には、電磁石や永久磁石を用いることもできる。更に、保持部11は、必ずしも凹部である必要はなく、例えば、搬送ドラム10の平滑な外周面に単に連通孔13を形成することによって、保持部11を構成することも可能である。
【0057】
また、本実施形態においては、保持部11を構成する凹部のV字状内壁面により、一対の当接部11a,11aを構成しているが、可食体eを、搬送ドラム10の外周面上に載置された状態で周縁との当接により所定の位置に支持することができる限り、一対の当接部11a,11aを、それぞれ突片などによって構成することも可能である。一対の当接部11a,11aの形状は、それぞれ可食体eと点接触するように形成することが好ましい。
【0058】
また、本実施形態においては、連通孔13を通過する溝部14が、搬送ドラム10の周方向に延びるように形成されているが、搬送ドラム10の軸方向に延びるように形成してもよい。また、溝部14は、必ずしも保持部11の外まで延びている必要はなく、保持部11内に可食体eを収容した状態で溝部14を介して圧縮空気を逃がすことが可能であれば、溝部14を各保持部11に個別に設けてもよい。更に、連通孔13から噴出する圧縮空気の量を適正に制御可能であれば、溝部14を設けない構成にすることも可能である。
【0059】
また、本実施形態においては、搬送ドラム10が連続回転する状態で可食体eへのマーキングを行うことにより、マーキング処理能力の向上を図っているが、ロータリーエンコーダ15の検知により可食体eがマーキングエリアに搬送される毎に、マーキングが終了するまで搬送ドラム10の駆動を一時停止する間歇運転を行ってもよい。この場合においても、搬送ドラム10の搬送方向に沿って保持された各可食体eに対して、マーキングを順次行うことができ、マーキング作業を正確に効率良く行うことができる。
【0060】
また、本実施形態においては、保持部11を搬送ドラム10の周方向(搬送方向)に複数配置するだけでなく、軸方向に沿っても複数配置しているが、搬送ドラム10の軸方向における保持部11の配置は単一であってもよい。
【0061】
また、本実施形態においては、搬送ドラム10による可食体eの搬送位置検出手段として、ロータリーエンコーダ15を使用しているが、搬送ドラム10の回転位置を正確に把握できる限り、ポテンショメータやレゾルバなど他の回転位置検出装置を使用することも可能である。更に、搬送ドラム10の回転位置検出装置以外の手段で可食体eの搬送位置を検出することも可能である。例えば、搬送ドラム10により搬送される各可食体eを外観検査装置62により撮影することで各可食体eの位置情報を取得し、レーザ光走査装置30が、この位置情報に基づいてレーザ光を走査することによっても、可食体eへの正確なマーキングを行うことができる。このような搬送位置検出手段を用いる場合には、各保持部11は必ずしも整列配置されている必要はない。
【0062】
また、本実施形態においては、可食体eをマーキングエリアに搬送する搬送手段として、搬送ドラム10を使用しているが、例えば、ベルトコンベアやスラットコンベアなど、他の搬送装置を用いることもできる。例えば、図9(a)に示すように、無端状に形成されたコンベア100の内部を密閉空間として、この内部を負圧にする吸引ガイド101,102を備える搬送装置を使用し、コンベア100の搬送面に対向するように、供給装置20、外観検査装置(搬送位置検出装置)62及びレーザ光走査装置30を、搬送方向に沿って順次配置することもできる。コンベア100の搬送面は、図9(b)に示すように、凹部からなる保持部111が形成されており、連通孔113により可食体を吸引保持可能である。コンベア100は、マーキングエリアに向けて斜め上方に搬送するように配置することも可能であり、保持部111の斜め下方側に一対の当接部を形成することで、図2に示す構成と同様に、保持部111に供給された可食体が、自重により一対の当接部に当接した状態で、連通孔113により吸引保持されるように構成することができる。
【符号の説明】
【0063】
1 レーザマーキング装置
10 搬送ドラム
11 保持部
11a 当接部
12 通気路
13 連通孔
14 溝部
15 ロータリーエンコーダ
20 供給装置
25 供給シュート
26 切り出しローラ
27 充填ローラ
27a 吸引孔
27b 通気路
30 レーザ光走査装置
40 マーキング検査装置
50 排出装置
e 可食体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可食体にマーキングパターンを形成する可食体用レーザマーキング装置であって、
可食体を保持する保持部を備え、可食体をマーキングエリアに搬送する搬送手段と、
前記保持部に可食体を供給する供給手段と、
前記搬送手段による可食体の搬送位置を検出する搬送位置検出手段と、
前記マーキングエリアに搬送された可食体に照射するレーザ光を走査するレーザ光走査手段とを備え、
前記保持部は、前記搬送手段の搬送方向に沿って複数形成されており、
前記レーザ光走査手段は、前記搬送位置検出手段の検出に基づいてレーザ光を走査することにより、前記各保持部に保持された可食体へのマーキングを順次行うことを特徴とする可食体用レーザマーキング装置。
【請求項2】
前記保持部は、吸引部及び一対の当接部を備えており、前記供給手段から前記保持部に供給された可食体が、自重により一対の前記当接部に当接した状態で、前記吸引部により吸引保持されるように構成されている請求項1に記載の可食体用レーザマーキング装置。
【請求項3】
前記保持部は、底面に前記吸引部が形成された凹部からなり、一対の前記当接部は、前記凹部のV字状内壁面からなる請求項2に記載の可食体用レーザマーキング装置。
【請求項4】
前記吸引部は、負圧により可食体を吸引可能に構成されており、前記保持部は、前記吸引部を通過して延びる溝部を備える請求項2または3に記載の可食体用レーザマーキング装置。
【請求項5】
前記供給手段は、前記保持部に保持される可食体の被マーキング面が所定の向きとなるように、可食体の姿勢を調整する姿勢調整手段を備える請求項1から4のいずれかに記載の可食体用レーザマーキング装置。
【請求項6】
前記姿勢調整手段は、複数の可食体を垂直方向に整列保持する供給シュートと、
整列保持された最下部の可食体を順次切り出して外周面に保持し、回転により搬送する切り出しローラと、
前記切り出しローラにより搬送された可食体を外周面に吸引保持し、回転により前記搬送手段の前記各保持部に供給する供給ローラとを備える請求項5に記載の可食体用レーザマーキング装置。
【請求項7】
前記搬送手段は、前記保持部を外周面に備え、回転駆動によって可食体を搬送する搬送ドラムからなる請求項1から6のいずれかに記載の可食体用レーザマーキング装置。
【請求項8】
前記搬送位置検出手段は、前記搬送ドラムの回転位置の検出に基づいて、可食体の搬送位置を検出する請求項7に記載の可食体用レーザマーキング装置。
【請求項9】
前記搬送ドラムは、軸方向及び周方向の双方に沿って前記保持部がそれぞれ複数形成されており、
前記レーザ光走査手段は、前記搬送ドラムの周方向に搬送される可食体に対して、前記搬送ドラムの軸方向に沿ってマーキングを順次行う請求項7または8に記載の可食体用レーザマーキング装置。
【請求項10】
前記レーザ光走査手段は、前記搬送ドラムが連続回転する状態で、前記搬送位置検出手段の検出に基づいて前記搬送ドラムの搬送量を算出し、レーザ光の走査を補正する請求項7から9のいずれかに記載の可食体用レーザマーキング装置。
【請求項11】
前記レーザ光走査手段により可食体に施されたマーキングを、可食体が前記各保持部に保持された状態で撮影するマーキング検査手段を更に備える請求項1から10のいずれかに記載の可食体用レーザマーキング装置。
【請求項12】
前記可食体は、錠剤、カプセル剤又は空カプセルのいずれかである請求項1から11のいずれかに記載の可食体用レーザマーキング装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2013−52686(P2013−52686A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−266902(P2012−266902)
【出願日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【分割の表示】特願2006−317828(P2006−317828)の分割
【原出願日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【出願人】(506137147)エーザイ・アール・アンド・ディー・マネジメント株式会社 (215)
【出願人】(000228110)クオリカプス株式会社 (22)
【Fターム(参考)】