説明

可食性ゼリー状組成物、ゼリー状製剤及びゼリー状製剤の製造方法

【課題】水を含まないものでありながら、嚥下しやすいゼリー状であり、かつ、口腔内で溶解する可食性ゼリー状組成物、該可食性ゼリー状組成物を用いてなるゼリー状製剤及びゼリー状製剤の製造方法を提供する。
【解決手段】多糖類ゲル化剤と、該多糖類ゲル化剤と相溶する不揮発性有機溶媒とを含み、水を含まないことを特徴とする可食性ゼリー状組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不揮発性有機溶媒によりゲル化された可食性ゼリー状組成物、ゼリー状製剤及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、経口的に投与される薬剤としては、裸錠剤、被覆錠剤、カプセル、散剤、顆粒剤、液剤などが市場に出されている。口腔内で崩壊し、消化管で吸収される製剤としては、口腔内崩壊錠、速溶解型口腔内フィルムが既に市場に出されており、口腔内で噛まずに唾液のみで崩壊又は溶解させて服用するような患者及び介護者のベネフィットを向上させるような剤形が注目を浴びている。
高齢者人口の増加に伴い、飲食物の摂取に障害を有する、いわゆる咀嚼・嚥下困難な患者が増加しているという背景があり、また、「高齢者に投与最適な新規製剤および新規包装容器の作成研究」という1988年杉原正泰らが報告した旧厚生省(現厚生労働省)シルバーサイエンス研究報告によると、将来希望する医薬品の剤形として半固形製剤(ゼリー、ヨーグルト、プリン)が挙げられている。
当該背景もあり、近年、医薬品を含有するゼリー状製剤の開発が進められており、既に本邦においても数種類の製品が販売されている。
しかし、これらのゼリー状製剤はすべて、スプーン等で服用するポーションタイプであったり、袋から押し出して服用するピロー包装タイプであった。また、当該ゼリー状製剤自体が口腔内で溶解するタイプではなく、嚥下時の物理的力により容易に拡散するというタイプであった。
【0003】
また、例えば、水を含むゼリー型の剤形としては、例えば、カラギーナン、ローカストビーンガム、ポリアクリル酸又はその部分中和物もしくは塩とを含有するゼリー製剤(特許文献1)、ゼリー基剤とアルカリ塩類から成る医薬用ゼリー組成物(特許文献2)、カラギーナンとグァーガムとポリアクリル酸又はその部分中和物もしくは塩とを含有する医薬用ゼリー組成物(特許文献3)が開示されている。
しかし、これらゼリー状製剤は、高温(60〜100℃程度)の熱可逆性ゲル化剤を用いたもの、又は、ゲル化剤を架橋することにより不可逆性ゲル化剤を用いたものであり、ゼリー状製剤自体が口腔内で溶解するタイプのものではなく、嚥下時の物理的力により容易に拡散するというタイプのものである。また、これら従来のゼリー状製剤は、調製時に高温を必要とするか、又は、架橋剤として金属塩を用いるために、特に熱安定性が悪い薬剤や、金属塩との相互作用が高いタンパク質やペプチドを含有させる場合には、その安定性が問題となる恐れがあった。
【0004】
また、これら従来のゼリー状製剤は、すべて水によりゲル化された製剤であり、更にゲル化剤として天然多糖類、添加剤として糖類を含むため、カビ等の菌類の発生がし易く、製造工程中において加熱滅菌等が必須となり、更に防腐剤の添加が必要となる問題点があった。また、水を多量に含むため、腎臓病や心臓病に代表される水分制限が必要な患者に投与することが難しいという問題点もあり、更に、水が組成物の中から包装材料を透過し揮発するため、保管安定性上、透湿性が高い高価な包装材料が必要となる問題点があった。
このような問題点に対して、水を含まない乾燥型のフィルム状の剤形で、唾液でゲル化する製剤としては、例えば、架橋化カルボキシビニルポリマーを用いた水膨潤性ゲル形成層と薬物含有層を有する製剤(特許文献4)が開示されている。
【0005】
しかしながら、このようなフィルム形状の製剤は、水溶性ポリマーを用いて口腔内にて溶解させる又は膨潤させるためには、ある程度の唾液量を必要とし、嚥下困難な患者によっては、溶解に長期間を要する可能性があった。また、水分を吸収しやすいため、口腔粘膜に付着し易く違和感を覚えやすいという欠点があった。特に口腔内溶解型のフィルム製剤の場合には、その溶解性とフィルムの厚み、サイズには相関関係があり、結果として100mgを超えるような薬物量を含有させることは難しかった。製造方法に関しても、このようなフィルム形状の製剤は、水溶性ポリマーを溶媒として水を用いて溶解させ、この中に薬物を溶解させ、加熱乾燥することにより調製することが開示されており、特に熱に弱い薬物の場合には、加熱により薬物含量の低下が懸念される。また、薬物が液状である場合には、フィルム状の製剤が溶解することが懸念されるので、一定の形状を維持することが困難となる恐れがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9−187233号公報
【特許文献2】特開2004−99558号公報
【特許文献3】特開2004−99559号公報
【特許文献4】特許第4267926号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記現状に鑑み、水を含まないものでありながら、嚥下しやすいゼリー状であり、かつ、口腔内で溶解する可食性ゼリー状組成物、該可食性ゼリー状組成物を用いてなるゼリー状製剤及びゼリー状製剤の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するため、鋭意検討した結果、多糖類ゲル化剤を、該多糖類ゲル化剤と相溶する不揮発性有機溶媒により水を用いずにゲル化させることにより、製造工程上の滅菌を考慮する必要がなく、更に保管安定性上問題となる透湿性もまた考慮する必要がなく、更にその性状特性から、舌下投与も含む口腔内及び経口経由での食品及び医薬品の投与に適した可食性ゼリー状組成物となることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、多糖類ゲル化剤と、該多糖類ゲル化剤と相溶する不揮発性有機溶媒とを含み、水を含まないことを特徴とする可食性ゼリー状組成物である。
本発明の可食性ゼリー状組成物において、上記不揮発性有機溶媒は、分子中に2〜4個のOH基を有する、炭素数4以下の多価アルコールであることが好ましい。
また、本発明の可食性ゼリー状組成物において、上記多糖類ゲル化剤は、κ−カラギーナン、キサンタンガム、脱アシル型ジェランガム、タマリンドガム、ペクチンからなる群より選択される少なくとも1種であり、上記多糖類ゲル化剤と相溶する不揮発性有機溶媒は、プロピレングリコール及び/又はプロピレングリコール誘導体であることが好ましい。
また、本発明の可食性ゼリー状組成物において、上記多糖類ゲル化剤は、κ−カラギーナン、ジェランガム、タマリンドガム、LMペクチンからなる群より選択される少なくとも1種であり、上記多糖類ゲル化剤と相溶する不揮発性有機溶媒は、グリセリン及び/又はグリセリン誘導体であることが好ましい。
また、上記多糖類ゲル化剤の配合量が、組成物の全重量基準で0.1〜40重量%であることが好ましい。
また、上記多糖類ゲル化剤と相溶する不揮発性有機溶媒の配合量が、組成物の全重量基準で10〜99重量%であることが好ましい。
【0010】
また、本発明は、上記本発明の可食性ゼリー状組成物に、薬物を更に含むことを特徴とするゼリー状製剤でもある。
【0011】
また、本発明は、多糖類ゲル化剤と該多糖類ゲル化剤と相溶する不揮発性有機溶媒と薬物とを混合して多糖類ゲル化剤溶液を調製する工程、上記多糖類ゲル化剤溶液を分注又は延伸する工程、及び、放冷又は冷却により固化させる工程を含むことを特徴とするゼリー状製剤の製造方法でもある。
更にまた、本発明は、多糖類ゲル化剤と水を混合して多糖類ゲル化剤混合液を調製する工程、上記多糖類ゲル化剤混合液を加熱し、上記多糖類ゲル化剤を溶解させて、多糖類ゲル化剤溶解溶液を調製する工程、上記多糖類ゲル化剤溶解溶液を凍結乾燥又は噴霧乾燥させて、凍結乾燥又は噴霧乾燥された多糖類ゲル化剤を得る工程、上記凍結乾燥又は噴霧乾燥された多糖類ゲル化剤と、該凍結乾燥又は噴霧乾燥された多糖類ゲル化剤と相溶する不揮発性有機溶媒と、薬物とを混合し、多糖類ゲル化剤溶液を調製する工程、上記多糖類ゲル化剤溶液を、分注又は延伸する工程、及び、放冷又は冷却により固化させる工程を含むことを特徴とするゼリー状製剤の製造方法でもある。
以下に、本発明を詳細に説明する。
【0012】
本発明は、多糖類ゲル化剤と、該多糖類ゲル化剤と相溶する不揮発性有機溶媒とを含み、水を含まずに、ゲル化されている可食性ゼリー状組成物である。
本発明の可食性ゼリー状組成物の形状としては特に限定されず、そのゼリー強度及び使用用途により最適な形状が異なる。例えば、患者や被介護者自身が服用するゼリー状製剤として用いる場合には、可食性ゼリー状組成物に充分自立できる強度を持たせ、錠剤やフィルム、シート状であることが好ましい。特に口腔内における溶解性の観点からは、フィルム及びシート状の形状が好ましく、この場合、厚みは30〜5000μmであることが好ましい。厚みが30μm未満であると、フィルム強度及び製品の取り扱い性の観点から問題となる可能性があり、5000μmを超えると、口腔内、特に舌下へ投与した場合、違和感を覚える恐れがある。
【0013】
また、本発明の可食性ゼリー状組成物を、シート形状の製剤として用いる場合のサイズとしては特に限定されないが、平面面積は、0.5〜6.0cmの範囲内が好ましい。0.5cm未満であると、製剤を摘まんで投与する際に取り扱いが難しくなる恐れがあり、6.0cmを超えると、投与時に口腔内、特に舌下へ投与した場合に完全に入れることができない恐れがある。
また、上記シート形状の製剤の平面形状は特に限定されず、例えば、長方形、正方形などの矩形、5角形などの多角形、円形、楕円形等、任意の形状が挙げられる。ここにいう多角形は、完全な多角形のほか、若干、角部にRを有する形状も含む。
なお、患者が自分で服用できず、医療従事者及び介護者が投与する場合には、可食性ゼリー状組成物の強度を柔らかくし、スプーン等で服用を補助できるカップ包装やピロー包装するような形状もまた望ましい。
【0014】
上記多糖類ゲル化剤は、本発明の可食性ゼリー状組成物の基材となる材料である。
本発明の可食性ゼリー状組成物において、上記多糖類ゲル化剤としては、可食性であり不揮発性有機溶媒下でゲル化能を有する多糖類である。すなわち、多糖類の中には可食性であっても不揮発性有機溶媒の種類によってはゲル化能を有さないものがあるが、このような多糖類は、別途添加剤等を添加してゲル化能が付与されない限り、単独で本発明における上記多糖類ゲル化剤として使用することはできない。
このような多糖類ゲル化剤としては、可食性でありゲル化能を有するものである限り特に限定されないが、不揮発性有機溶媒との相溶性の観点から、κ−カラギーナン、キサンタンガム、ペクチン、ジェランガム及びタマリンドガムからなる群より選択される少なくとも1種が好適に用いられる。上記多糖類ゲル化剤としてκ−カラギーナン、キサンタンガム、ペクチン、ジェランガム及びタマリンドガムからなる群より選択される少なくとも1種を含むことで、本発明の可食性ゼリー状組成物を、不揮発性有機溶媒下でゲル化させ、水により容易に溶解させることができる。
なお、本明細書において、「可食性」とは、経口的に投与可能であり、製剤学的に許容されるものであることを意味する。
【0015】
上記カラギーナンは、直鎖含硫黄多糖類の一種で、一般的にはコンドラス・クリパス(紅藻類)からアルカリ抽出により得られ、D−ガラクトース、3,6−アンヒドロ−D−ガラクトース、及び、硫酸基から構成される陰イオン性高分子化合物である。上記カラギーナンは、これらの構成比により、それぞれκ−カラギーナン、ι−カラギーナン、λ−カラギーナンに分けられる。
本発明においては、不揮発性有機溶媒下でゲル化させるという観点から、κ−カラギーナンが好ましい。ι−カラギーナンの場合にはそれ単体ではゲル化させることができず、別途Ca2+等が必要である。
また、上記κ−カラギーナンは、該κ−カラギーナンと相溶する不揮発性有機溶媒存在下でのゲル化点は80℃前後であり、そのため、常温付近での物性は安定であり、使用保管上の観点からも優れている。
また、本発明の可食性ゼリー状組成物に薬物を添加してゼリー状製剤とする場合、熱に弱い薬物(熱安定性が低い薬物)を用いる場合でも、薬物含有溶液を本発明の可食性ゼリー状組成物に後添加することにより、上記熱安定性が低い薬物の製造時の安定性も確保することができる。
これらのκ−カラギーナンの中でも、平均分子量が5万〜50万のグレードのものが好ましく、カウンターカチオンとしてK、Ca2+、Naを含むグレードのものが好ましい。更に好ましくは溶解性の観点から、カウンターイオンとしてNaを含むグレードのものである。
【0016】
上記キサンタンガムは、微生物であるキサントモナス・キャンペストリスの菌体外に産生される天然の多糖類であり、グルコース、マンノース及びグルクロン酸により構成されている。
上記キサンタンガムは、該キサンタンガムと相溶する不揮発性有機溶媒存在下でのゲル化点は80℃前後であり、そのため、常温付近での物性は安定であり、使用保管上の観点からも優れている。
また、本発明の可食性ゼリー状組成物に薬物を添加してゼリー状製剤とする場合、熱に弱い薬物(熱安定性が低い薬物)を用いる場合でも、薬物含有溶液を本発明の可食性ゼリー状組成物に後添加することにより、上記熱安定性が低い薬物の製造時の安定性も確保することができる。
これらのキサンタンガムの中でも、平均分子量が10万〜300万のグレードのものが好ましい。
【0017】
上記ペクチンは、可食性の植物体、一般的には柑橘類又はリンゴから水で抽出して得られた高分子多糖類であり、ガラクチュロン酸より構成され、カルボキシル基が部分的にメチルエステル化されている。
上記ペクチンは、全ガラクチュロン酸のうち、メチル化ガラクチュロン酸の占める割合により、50%以上のものがHMペクチン、50%未満のものがLMペクチンに分けられる。また、ペクチンのエステル化度(DE)は、ガラクチュロン酸100当量についてのエステル化されたカルボキシル基の数である。また、ガラクチュロン酸含有量(GA)は、粗精製サンプルの100gあたりのガラクチュロン酸(分子量194.1)の重量である。これらの測定は、(1)滴定による遊離酸の量の測定、(2)滴定によるけん化後の遊離酸量の測定、以上の2段階でなされる。
本発明の可食性ゼリー状組成物では、不揮発性有機溶媒下でゲル化するという観点からLMペクチンが好ましい。
上記LMペクチンは、該LMペクチンと相溶する不揮発性有機溶媒存在下でのゲル化点は70℃前後であり、そのため、常温付近での物性は安定であり、使用保管上の観点からも優れている。
また、本発明の可食性ゼリー状組成物に薬物を添加してゼリー状製剤とする場合、熱に弱い薬物(熱安定性が低い薬物)を用いる場合でも、薬物含有溶液を本発明の可食性ゼリー状組成物に後添加することにより、上記熱安定性が低い薬物の製造時の安定性も確保することができる。
これらのLMペクチンの中でも、平均分子量が1万〜15万のグレードのものが好ましい。
【0018】
上記ジェランガムは、微生物であるスフィンゴモナス・エロデアの菌体外に産生される天然の直鎖状のヘテロ多糖類であり、グルコース、グルクロン酸、グルコース、ラムノースの4糖の繰り返し単位から構成されている。
上記ジュランガムは、1−3結合したグルコースに存在するアセチル基とグリセリル基の有無により、ネイティブ型ジェランガムと脱アシル型ジェランガムに分けられる。本発明のゼリー状組成物では、不揮発性有機溶媒下でゲル化するという観点から脱アシル型ジェランガムが好ましい。
上記脱アシル型ジェランガムは、該脱アシル型ジェランガムと相溶する不揮発性有機溶媒存在下でのゲル化点は90℃前後であり、そのため、常温付近での物性は安定であり、使用保管上の観点からも優れている。
また、本発明の可食性ゼリー状組成物に薬物を添加してゼリー状製剤とする場合、熱に弱い薬物(熱安定性が低い薬物)を用いる場合でも、薬物含有溶液を本発明の可食性ゼリー状組成物に後添加することにより、上記熱安定性が低い薬物の製造時の安定性も確保することができる。
これらの脱アシル型ジェランガムの中でも、平均分子量が10万〜70万のグレードのものが好ましい。
【0019】
上記タマリンドガムは、マメ科植物であるタマリンドの種子の胚乳部分を、温水若しくはアルカリ性水溶液で抽出して得られた高分子多糖類であり、主鎖がグルコースであり、側鎖がキシロース又はキシロース及びガラクトースにより構成されている。
上記タマリンドガムは、該タマリンドガムと相溶する不揮発性有機溶媒存在下でのゲル化点は80℃前後であり、そのため、常温付近での物性は安定であり、使用保管上の観点からも優れている。
また、本発明の可食性ゼリー状組成物に薬物を添加してゼリー状製剤とする場合、熱に弱い薬物(熱安定性が低い薬物)を用いる場合でも、薬物含有溶液を本発明の可食性ゼリー状組成物に後添加することにより、上記熱安定性が低い薬物の製造時の安定性も確保することができる。
これらのタマリンドガムの中でも、平均分子量が10万〜70万のグレードのものが好ましい。
【0020】
本発明の可食性ゼリー状組成物において、上記多糖類ゲル化剤の配合量は、本発明の可食性ゼリー状組成物の全重量に基づいて、好ましくは0.1〜40重量%、より好ましくは0.5〜30重量%、更に好ましくは1〜20重量%である。0.1重量%未満であると、常温ではゲル化しない可能性があり、一方、40重量%を超えると、口腔内での溶解性が極めて遅くなり、使用上問題となる恐れがある。
【0021】
本発明の可食性高分子は、上記ゲル化剤として好適なκ−カラギーナン、キサンタンガム、LMペクチン、ジェランガム、タマリンドガムに加えて、本発明の効果を阻害しない範囲であれば、その他の可食性のゲル化剤を適量組み合わせて用いることもできる。
【0022】
上記その他の可食性高分子としては、例えば、ゼラチン、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、カルボキシビニルポリマー、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、結晶セルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルスターチナトリウム等の合成高分子化合物、デキストラン、カゼイン、グァーガム、トラガカントガム、アカシアガム、アラビアガム、サイリウムシードガム、デンプン、ツェイン等の天然物より得られる高分子化合物等が挙げられる。
上記その他の可食性高分子の量は、本発明の可食性ゼリー状組成物の全重量基準で、好ましくは0.1〜10重量%である。
【0023】
上記不揮発性有機溶媒は、本発明の可食性ゼリー状組成物の溶解を補助する作用を有する。本発明の可食性ゼリー状組成物中の不揮発性有機溶媒含有量を制御することで、本発明の可食性ゼリー状組成物の溶解時間を容易に制御することができる。したがって、本発明の可食性ゼリー状組成物は、口腔内で溶解し服用する場合にも、口腔内、特に舌下においてゆっくりと溶解させ薬物を除法させる場合の双方において適する。
本発明の可食性ゼリー状組成物の全重量に基づいて、上記不揮発性有機溶媒の含有量は、好ましくは10〜99重量%、より好ましくは20〜80重量%である。10重量%未満であると、口腔内での溶解性が極めて悪くなり、使用上問題となる可能性があり、一方、99重量%を超えると、常温での保形性等の物性面の保管安定性が悪くなる恐れがある。
【0024】
上記不揮発性有機溶媒としては、上記多糖類ゲル化剤と相溶し、可食性である限り特に限定されないが、分子中に2〜4個のOH基を有する、炭素数4以下の多価アルコールが好適に用いられる。
上記多価アルコールの分子中のOH基が2個未満であると、ゲル化剤と相溶性が悪くなることがあり、一方、上記多価アルコールの分子中のOH基が4個を超えると、融点が上昇し、常温では固体となり溶媒としての使用が難しくなることがある。
また、上記多価アルコールの炭素数が4を超えると、ゲル化剤との相溶性が悪くなることがある。
【0025】
このような多価アルコールとしては、例えば、グリセリン、ジグリセリン等のグリセリン誘導体、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール等のプロピレングリコール誘導体、及びエチレングリコール、ジエチレングリコール等のエチレングリコールの誘導体からなる群より選択される少なくとも1種が好適に挙げられる。
このような不揮発性有機溶媒は、1種又は2種以上組み合わせて用いられる。なかでも、本発明の可食性ゼリー状組成物中に多量に含まれた場合、ヒトに投与するための安全性の観点から、グリセリン及び/又はプロピレングリコールが好ましい。
【0026】
また、本発明の可食性ゼリー状組成物において、上記不揮発性有機溶媒は、上述した多糖類ゲル化剤に合せて適宜選択して用いることが好ましい。
例えば、本発明のゼリー状組成物では、上記多糖類ゲル化剤は、κ−カラギーナン、キサンタンガム、脱アシル型ジェランガム、タマリンドガム、ペクチンからなる群より選択される少なくとも1種であり、上記多糖類ゲル化剤と相溶する不揮発性有機溶媒は、プロピレングリコール及び/又はプロピレングリコール誘導体であることが好ましい。
また、上記多糖類ゲル化剤は、κ−カラギーナン、ジェランガム、タマリンドガム、LMペクチンからなる群より選択される少なくとも1種であり、上記多糖類ゲル化剤と相溶する不揮発性有機溶媒は、グリセリン及び/又はグリセリン誘導体であることが好ましい。
【0027】
また、本発明の可食性ゼリー状組成物は、水を含まない。
本発明の可食性ゼリー状組成物が水を含まないことで、一般的な可食性ゼリー状組成物では必要な滅菌工程や防腐剤の添加が不必要となり、製造コスト面でのメリットがあり、また、水分制限が必要な患者のための栄養補助食及び医薬品の剤形へ適用する場合にも適している。
なお、本明細書において「水を含まない」は、実質的に水を含まない場合を含み、例えば、本発明の可食性ゼリー状組成物の全重量基準で、水の含有量が5重量%以下、好ましくは2.5重量%以下、より好ましくは1重量%以下であることを意味する。
【0028】
本発明の可食性ゼリー状組成物は、消泡剤を含有していてもよい。
上記消泡剤としては、例えば、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル等が挙げられる。
上記ソルビタン脂肪酸エステルとしては、例えば、モノオレイン酸ソルビタン、トリオレイン酸ソルビタン、セスキオレイン酸ソルビタン、ヤシ油脂肪酸ソルビタン、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル等が挙げられる。
また、上記ショ糖脂肪酸エステルとしては、例えば、ショ糖ステアリン酸エステル、ショ糖オレイン酸エステル、ショ糖パルミチン酸エステル、ショ糖ミリスチン酸エステル、ショ糖ベヘニン酸エステル、ショ糖エルカ酸エステル、ショ糖混合脂肪酸エステル等が挙げられる。
【0029】
また、本発明の可食性ゼリー状組成物は、該可食性ゼリー状組成物の基材を構成する成分として、上記の物質以外に、所望により香料、嬌味剤、甘味剤、着色剤、防腐剤、抗酸化剤、安定化剤、界面活性剤等を適宜使用してもよい。
【0030】
本発明の可食性ゼリー状組成物は、物性及び溶解性を向上させる添加剤を含有していてもよい。
上記添加剤としては、例えば、以下に示すような単糖、二糖、三〜六糖の糖又はこれらの糖アルコールが挙げられる。
単糖類としては、例えば、エリスロース、スレオース等のアルドテトロース、リボース、リキソース、キシロース、アラビノース等のアルドペントース、アロース、タロース、グロース、グルコース、アルトロース、マンノース、ガラクトース、イドース等のアルドヘキトース、エリスルロース等のケトテトロース、キシルロース、リブロース等のケトペントース、プシコース、フルクトース、ソルボース、タガトース等のケトヘキソース等が挙げられる。二糖類としては、例えば、トレハロース、コージビオース、ニゲロース、マルトース、イソマルトース等のα−ジグルコシド、イソトレハロース、ソホロース、ラミナリビオース、セロビオース、ゲンチオビオース等のβ−ジグルコシド、ネオトレハロース等のα,β−ジグルコシドの他、ラクトース、スクロース、イソマルツロース(パラチノース)等が挙げられる。三糖類としては、例えば、ラフィノース等が挙げられる。三糖〜六糖のオリゴ糖としては、例えば、フラクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、キシロオリゴ糖、イソマルトオリゴ糖、キチンオリゴ糖、キトサンオリゴ糖、オリゴグルコサミン、デキストリン、シクロデキストリン等の環状オリゴ糖等が挙げられる。
【0031】
また、単糖のアルコールとしては、例えば、エリスリトール、D−スレイトール、L−スレイトール等のテトリトール、D−アラビニトール、キシリトール等のペンチトール、D−イジトール、ガラクチトール(ダルシトール)、D−グルシトール(ソルビトール)、マンニトール等のヘキシトール、イノシトール等のシクリトール等が挙げられる。また、二糖のアルコールとしては、例えば、マルチトール、ラクチトール、還元パラチノース(イソマルト)等が挙げられ、オリゴ糖のアルコールとしては、ペンタエリスリトール、還元麦芽糖水飴等が挙げられる。
本発明の可食性ゼリー状組成物において、上記糖又は糖アルコールが置換されていてもよく、また、1種で又は2種以上混合して用いることもできる。
【0032】
上記糖又は糖アルコールは、本発明の可食性ゼリー状組成物を用いたシート形状の製剤が口腔内で容易に溶解する観点また製造工程において大きく溶液の粘性を変化させないという観点から、単糖類〜三糖類又はこれらの糖アルコールであることが好ましい。
【0033】
かかる添加剤の量は、本発明の可食性ゼリー状組成物の全重量に基づき、好ましくは1〜80重量%、より好ましくは、5〜70重量%である。1重量%未満であると、使用上充分な物性を担保できない可能性があり、一方、80重量%を超えると、添加した添加剤により本発明の可食性ゼリー状組成物を、シート又はフィルム形状の製剤として用いた場合、物性の制御が困難になる恐れがある。
【0034】
本発明の可食性ゼリー状組成物は、薬物を含有させて医薬組成物を得て、ゼリー状製剤を提供することができる。
なお、本明細書において、上記薬物とは、何らかの生理活性作用を有する物質を意味する。このような本発明の可食性ゼリー状組成物に、薬物を更に含むゼリー状製剤もまた、本発明の一つである。
【0035】
本発明のゼリー状製剤において、上記薬物は、ヒトなどの哺乳動物にその舌下、口腔内、腸管を通して投与し得る、すなわち経口投与可能な薬物が好ましい。そのような薬物としては、具体的には、例えば、全身性麻酔薬、催眠・鎮静薬、抗癲癇薬、解熱鎮痛消炎薬、鎮暈薬、精神神経用薬、中枢神経薬、抗痴呆薬、局所麻酔薬、骨格筋弛緩薬、自律神経用薬、鎮痙薬、抗パーキンソン薬、抗ヒスタミン薬、強心薬、不整脈用薬、利尿薬、血圧降下薬、血管収縮薬、冠血管拡張薬、末梢血管拡張薬、動脈硬化用薬、循環器用薬、呼吸促進薬、鎮咳去痰薬、ホルモン薬、化膿性疾患用外用薬、鎮痛・鎮痒・収斂・消炎用薬、寄生性皮膚疾患用薬、止血用薬、痛風治療用薬、糖尿病用薬、抗悪性腫瘍用薬、抗生物質、化学療法薬、麻薬、禁煙補助薬、減感作療法用アレルゲン、ワクチンなどが挙げられる。
【0036】
また、上記薬物は、疾患、状態又は障害の治療において所望の結果、例えば、所望の治療結果をもたらすのに充分な、本明細書中で有効量とも呼ばれる量で粘着剤層中に存在することができる。
有効量の薬物とは、例えば、非毒性ではあるが、しかし特定の時間にわたって選択された効果をもたらすのに充分な量の薬物を意味する。このような量は当業者によって容易に決定することができる。
【0037】
上記薬物は、固体薬物であっても液状薬物であってもよい。ここにいう固体薬物は、室温(25℃)で固体である薬物、すなわち、融点が25℃より高い薬物を意味する。ここにいう融点は、DSC、型番DSC6220(セイコーインスツルーメンツ(SII)製)で測定された値を意味する。
また、液状の薬物とは、室温(25℃)で流動性を有する、すなわち薬物の粘度が0.05〜10万mPa・sである薬物をいう。なお、上記薬物の粘度は、当該薬物を25℃に保温しながらE型粘度計を用いて測定する。
【0038】
上記薬物の濃度としては、その性質などによっても異なるが、本発明のゼリー状製剤の全重量に対して、通常1×10−10〜80重量%である。1×10−10重量%未満であると、臨床効果の観点から多くの薬物において薬効を示さない場合があり、80重量%を超えると、可食性ゼリー状組成物の物性が著しく低下し、可食性ゼリー状組成物の保型性に問題が生じる可能性がある。
【0039】
本発明のゼリー状製剤は、例えば、多糖類ゲル化剤と該多糖類ゲル化剤と相溶する不揮発性有機溶媒と薬物とを混合して多糖類ゲル化剤溶液を調製する工程、上記多糖類ゲル化剤溶液を分注又は延伸する工程、及び、放冷又は冷却により固化させる工程を含む方法により製造することができる。
このような本発明のゼリー状製剤の製造方法も本発明の一つである。
なお、本発明のゼリー状製剤の製造方法において、薬物を添加しないことで、本発明のゼリー状組成物を製造することができる。
【0040】
上記多糖類ゲル化剤溶液を調製する工程では、まず、所定量の不揮発性有機溶媒にカラギーナン、キサンタンガム、ペクチン、ジェランガム、タマリンドガム等の多糖類ゲル化剤、及び、その他添加剤を常温又は加熱により溶解させ、上記不揮発性有機溶媒に溶解しない添加剤に関しては均一に分散させる。
薬物が熱に安定なものの場合、該薬物は、上記多糖類ゲル化剤等と併せて添加し、多糖類ゲル化剤溶液を調製する。一方、上記薬物が熱に不安定なものの場合、上記多糖類ゲル化剤等を溶解させた後、常温〜35℃付近まで冷やした後に該熱に不安定な薬物を添加し、攪拌混合することで多糖類ゲル化剤溶液を調製する。
更に、上記薬物は、後述する多糖類ゲル化剤溶液を分注又は延伸する工程において添加してもよい。
ここで、上記多糖類ゲル化剤溶液の調製時に泡が発生した場合は、長時間静置や真空又は減圧脱泡を行い充分に消泡させる。
【0041】
また、上記多糖類ゲル化剤溶液を調製する工程の際には、前もって、多糖類ゲル化剤と水を混合して多糖類ゲル化剤混合液を調製する工程、上記多糖類ゲル化剤混合液を加熱し、上記多糖類ゲル化剤を溶解させて、多糖類ゲル化剤溶解溶液を調製する工程、及び、この多糖類ゲル化剤溶解溶液を凍結乾燥又は噴霧乾燥させて、凍結乾燥又は噴霧乾燥された多糖類ゲル化剤を得る工程を行い、その後、不揮発性有機溶媒と、薬物とを混合し、多糖類ゲル化剤溶液を調製する工程を行ってもよい。かかる多糖類ゲル化剤溶解溶液を得る工程を行うことで、上記多糖類ゲル化剤は、不揮発性有機溶媒に容易に溶解しない場合であっても、不揮発性有機溶媒に溶解させることができる。
このような、多糖類ゲル化剤混合液を調製する工程、多糖類ゲル化剤溶解溶液を調製する工程、及び、凍結乾燥又は噴霧乾燥された多糖類ゲル化剤を得る工程を、多糖類ゲル化溶液を調製する工程の前に有するゼリー状製剤の製造方法もまた、別の態様に係る本発明の一つである。
【0042】
上記多糖類ゲル化剤溶液を分注又は延伸する工程、及び、放冷又は冷却により固化させる工程では、上記多糖類ゲル化剤溶液の所定量を40〜80℃の温度下で希望するサイズのプラスチック又はアルミ製ブリスターケース及びピロー包装内に分注し、分注後即座に冷却固化させる。当該分注方式の代りに、上記多糖類ゲル化剤溶液をプラスチック製剥離フィルム上に適当量展延し、冷却固化し、希望するサイズに裁断してもよい。
【0043】
なお、上記多糖類ゲル化剤溶液に水が添加されている場合には、本工程で冷却固化させる前に加熱乾燥又は減圧乾燥を行う必要がある。
また、製造するゼリー状製剤に含まれる不揮発性有機溶媒の含有量を調製する場合には、本工程の後に、冷風乾燥工程又は冷却減圧乾燥工程を行ってもよい。
【0044】
得られたシート又はフィルム状のゼリー状製剤を必要により密封包装し、製品とすることが好ましい。特に該ゼリー状製剤は、水を含まないため、一般的に必要となる加熱滅菌工程等の滅菌工程が不要となり便利である。
【発明の効果】
【0045】
本発明の可食性ゼリー状組成物は、水を含まないゼリー状の組成物であり、多糖類ゲル化剤として、例えば、κ−カラギーナン、キサンタンガム、LMペクチン、ジェランガム、タマリンドガムを用いることで、常温ではゲル化し、口腔内の唾液で容易に溶解するという特徴を持ち合わせている。
また、本発明の可食性ゼリー状組成物は、不揮発性有機溶媒の含有量を制御することで、その溶解時間を容易に制御することも可能である。この溶解時間を制御可能であるという観点からは、口腔内における滞留時間が必要である口腔粘膜及び舌下粘膜から吸収させる医薬品の剤形として、またアレルゲンを舌下粘膜から感作させる舌下減感作療法に適している。
また、水を含まないという観点からは、本発明の可食性ゼリー状組成物は、一般的なゼリーでは必要な滅菌工程や防腐剤の添加が不必要となり、製造コスト面でのメリットがあり、また、水分制限が必要な患者のための栄養補助食及び医薬品の剤形としても適している。
本発明の可食性ゼリー状組成物は、タンパク質やペプチドの保管安定性を向上させることが一般的に知られている多糖類及びグリセリンやプロピレングリコールといったポリオール類が好適に用いられるため、特にタンパク質やペプチドを安定に維持することができると期待される。
本発明の可食性ゼリー状組成物は、もちろんそのままの状態で嚥下してもよいし、口腔内で速やかに溶解させて嚥下してもよい。更に、口腔内での溶解時間を制御し、口腔粘膜や舌下粘膜からの吸収を期待することも可能である。体温ですべて溶解させることができるため、残渣感がないという観点、また水を含まないという観点から、本発明の可食性ゼリー状組成物を用いたゼリー状製剤は、水分制限のある患者及び嚥下困難な患者及び介護者のQOLを大幅に向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0046】
以下の実施例により、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0047】
(実施例1)
精製水(日本薬局方精製水、健栄製薬社製)10.0重量部に、κ−カラギーナン(GENUGEL JPE−126、CP Kelco社製)0.5重量部を加え、充分に攪拌した後、プロピレングリコール(和光純薬工業社製)9.5重量部を加え、85℃の温度で攪拌しながら溶解させた。溶解後、5cmプラスチック製ブリスターケース(クリオモルド(角型)3号、サクラファインテック社製)に2.0gずつ分注し、減圧乾燥機(DP63、ヤマト科学社製)で40℃3時間乾燥し水分を完全に蒸発させ、可食性の組成物を得た。
【0048】
(実施例2〜6)
表1に示した組成に従い、実施例1と同様の手順で可食性の組成物を得た。κ−カラギーナンの代わりに、実施例2ではキサンタンガム(ラボールガムGS−C、DSP五協フード&ケミカル社製)、実施例3では脱アシル型ジェランガム(ケルコゲル、CP Kelco社製)、実施例4ではタマリンドガム(グリロイド3S、DSP五協フード&ケミカル社製)、実施例5ではLMペクチン(GENU PECTIN Type LM−102AS−J、CP Kelco社製)、実施例6ではHMペクチン(GENU PECTIN Type USP−H、CP Kelco社製)を用いた。
【0049】
(比較例1)
精製水(日本薬局方精製水、健栄製薬社製)10.0重量部に、ι−カラギーナン(GENUVISCO TypePJ−JPE、CP Kelco社製)0.5重量部を加え、充分に攪拌した後、プロピレングリコール(和光純薬工業社製)9.5重量部を加え、85℃の温度で攪拌しながら溶解させた。溶解後、5cmプラスチック製ブリスターケース(クリオモルド(角型)3号、サクラファインテック社製)に2.0gずつ分注し、減圧乾燥機(DP63、ヤマト科学社製)で40℃3時間乾燥し水分を完全に蒸発させ、可食性の組成物を得た。
【0050】
(比較例2〜7)
表1に示した組成に従い、比較例1と同様の手順で可食性の組成物を得た。ι−カラギーナンの代わりに、比較例2ではλ−カラギーナン(ML200、MRCポリサッカライド社製)、比較例3ではローカストビーンガム(GENUGUM RL−200−J、CP Kelco社製)、比較例4ではネイティブ型ジェランガム(ケルコゲルLT100、CP Kelco社製)、比較例5ではグァーガム(MEYORO−GUAR CSA200/50、DANISCO社製)、比較例6ではカルボキシメチルセルロースナトリウム(CMCNa、MP Biomedicals社製)、比較例7ではカルボキシビニルポリマー(Carbopol971P、Noveon社製)を用いた。
【0051】
【表1】

【0052】
(実施例7)
精製水(日本薬局方精製水、健栄製薬社製)10.0重量部に、κ−カラギーナン(GENUGEL JPE−126、CP Kelco社製)0.5重量部を加え、充分に攪拌した後、グリセリン(和光純薬工業社製)9.5重量部を加え、85℃の温度で攪拌しながら溶解させた。溶解後、5cmプラスチック製ブリスターケース(クリオモルド(角型)3号、サクラファインテック社製)に2.0gずつ分注し、減圧乾燥機(DP63、ヤマト科学社製)で40℃3時間乾燥し水分を完全に蒸発させ、可食性の組成物を得た。
【0053】
(実施例8〜11)
表2に示した組成に従い、実施例7と同様の手順で可食性の組成物を得た。κ−カラギーナンの代わりに、実施例8ではネイティブ型ジェランガム(ケルコゲルLT100、CP Kelco社製)、実施例9では脱アシル型ジェランガム(ケルコゲル、CP Kelco社製)、実施例10ではタマリンドガム(グリロイド3S、DSP五協フード&ケミカル社製)、実施例11ではLMペクチン(GENU PECTIN Type LM−102AS−J、CP Kelco社製)を用いた。
【0054】
(比較例8)
精製水(日本薬局方精製水、健栄製薬社製)10.0重量部に、ι−カラギーナン(GENUVISCO TypePJ−JPE、CP Kelco社製)0.5重量部を加え、充分に攪拌した後、グリセリン(和光純薬工業社製)9.5重量部を加え、85℃の温度で攪拌しながら溶解させた。溶解後、5cmプラスチック製ブリスターケース(クリオモルド(角型)3号、サクラファインテック社製)に2.0gずつ分注し、減圧乾燥機(DP63、ヤマト科学社製)で40℃3時間乾燥し水分を完全に蒸発させ、可食性の組成物を得た。
【0055】
(比較例9〜15)
表2に示した組成に従い、比較例8と同様の手順で可食性の組成物を得た。ι−カラギーナンの代わりに、比較例9ではλ−カラギーナン(ML200、MRCポリサッカライド社製)、比較例10ではローカストビーンガム(GENUGUM RL−200−J、CP Kelco社製)、比較例11ではキサンタンガム(ラボールガムGS−C、DSP五協フード&ケミカル社製)、比較例12ではHMペクチン(GENU PECTIN Type USP−H、CP Kelco社製)、比較例13ではグァーガム(MEYORO−GUAR CSA200/50、DANISCO社製)、比較例14ではカルボキシメチルセルロースナトリウム(CMCNa、MP Biomedicals社製)、比較例15ではカルボキシビニルポリマー(Carbopol971P、Noveon社製)を用いた。
【0056】
【表2】

【0057】
(比較例16)
精製水(日本薬局方精製水、健栄製薬社製)10.0重量部に、κ−カラギーナン(GENUGEL JPE−126、CP Kelco社製)0.5重量部を加え、充分に攪拌した後、ポリエチレングリコール400(和光純薬工業社製)9.5重量部を加え、85℃の温度で攪拌しながら溶解させた。溶解後、5cmプラスチック製ブリスターケース(クリオモルド(角型)3号、サクラファインテック社製)に2.0gずつ分注し、減圧乾燥機(DP63、ヤマト科学社製)で40℃3時間乾燥し水分を完全に蒸発させ、可食性の組成物を得た。
【0058】
(比較例17〜28)
表3に示した組成に従い、比較例16と同様の手順で可食性の組成物を得た。κ−カラギーナンの代わりに、比較例17ではι−カラギーナン(GENUVISCO TypePJ−JPE、CP Kelco社製)、比較例18ではλ−カラギーナン(ソアギーナML200、MRCポリサッカライド製)、比較例19ではローカストビーンガム(GENUGUM RL−200−J、CP Kelco社製)、比較例20ではキサンタンガム(ラボールガムGS−C、DSP五協フード&ケミカル社製)、比較例21ではネイティブ型ジェランガム(ケルコゲルLT100、CP Kelco社製)、比較例22では脱アシル型ジェランガム(ケルコゲル、CP Kelco社製)、比較例23ではタマリンドガム(グリロイド3S、DSP五協フード&ケミカル社製)、比較例24ではLMペクチン(GENU PECTIN Type LM−102AS−J、CP Kelco社製)、比較例25ではHMペクチン(GENU PECTIN Type USP−H、CP Kelco社製)、比較例26ではグァーガム(MEYORO−GUAR CSA200/50、DANISCO社製)、比較例27ではカルボキシメチルセルロースナトリウム(CMCNa、MP Biomedicals社製)、比較例28ではカルボキシビニルポリマー(Carbopol971P、Noveon社製)を用いた。
【0059】
【表3】

【0060】
(実施例12)
精製水(日本薬局方精製水、建永製薬社製)1000重量部にκ−カラギーナン(GENUGEL JPE−126、CP Kelco社製)5重量部を70℃で加熱溶解し、室温で放冷した後、液体窒素で凍結し、凍結乾燥機(DC400、ヤマト科学社製)で1昼夜凍結乾燥処理を行った。
凍結乾燥処理を行ったκ−カラギーナン(FD品)0.5重量部を加え、充分に攪拌した後、プロピレングリコール(和光純薬工業社製)9.5重量部を加え、85℃の温度で攪拌しながら溶解させた。溶解後、5cmプラスチック製ブリスターケース(クリオモルド(角型)3号、サクラファインテック社製)に1.0gずつ分注し、室温で放冷し、可食性の組成物を得た。
【0061】
(実施例13〜17)
表4に示した組成に従い、実施例12と同様の手順で可食性の組成物を得た。κ−カラギーナンの代わりに、実施例13ではキサンタンガム(ラボールガムGS−C、DSP五協フード&ケミカル社製)、実施例14では脱アシル型ジェランガム(ケルコゲル、CP Kelco社製)、実施例15ではタマリンドガム(グリロイド3S、DSP五協フード&ケミカル社製)、実施例16ではLMペクチン(GENU PECTIN Type LM−102AS−J、CP Kelco社製)、比較例17ではHMペクチン(GENU PECTIN Type USP−H、CP Kelco社製)を用いた。
【0062】
【表4】

【0063】
(実施例18)
精製水(日本薬局方精製水、建永製薬社製)1000重量部にκ−カラギーナン(GENUGEL JPE−126、CP Kelco社製)5重量部を70℃で加熱溶解し、室温で放冷した後、液体窒素で凍結し、凍結乾燥機(DC400、ヤマト科学社製)で1昼夜凍結乾燥処理を行った。
凍結乾燥処理を行ったκ−カラギーナン(FD品)0.5重量部を加え、充分に攪拌した後、グリセリン(和光純薬工業社製)9.5重量部を加え、85℃の温度で攪拌しながら溶解させた。溶解後、5cmプラスチック製ブリスターケース(クリオモルド(角型)3号、サクラファインテック社製)に1.0gずつ分注し、室温で放冷し、可食性の組成物を得た。
【0064】
(実施例19〜22)
表5に示した組成に従い、実施例18と同様の手順で可食性の組成物を得た。κ−カラギーナンの代わりに、実施例19ではネイティブ型ジェランガム(ケルコゲルLT100、CP Kelco社製)、実施例20では脱アシル型ジェランガム(ケルコゲル、CP Kelco社製)、実施例21ではタマリンドガム(グリロイド3S、DSP五協フード&ケミカル社製)、実施例22ではLMペクチン(GENU PECTIN Type LM−102AS−J、CP Kelco社製)を用いた。
【0065】
【表5】

【0066】
(実施例23)
精製水(日本薬局方精製水、健栄製薬社製)10.0重量部に、κ−カラギーナン(GENUGEL JPE−126、CP Kelco社製)0.2重量部を加え、充分に攪拌した後、グリセリン(和光純薬工業社製)19.8重量部を加え、85℃の温度で攪拌しながら溶解させた。溶解後、5cmプラスチック製ブリスターケース(クリオモルド(角型)3号、サクラファインテック社製)に1.5gずつ分注し、減圧乾燥機(DP63、ヤマト科学社製)で40℃5時間乾燥し水分を完全に蒸発させ、可食性の組成物を得た。
【0067】
(実施例24〜32)
表6に示した組成に従い、実施例23と同様の手順で可食性の組成物を得た。グリセリンの代わりに、実施例28〜32ではプロピレングリコール(和光純薬工業社製)を用いた。
【0068】
【表6】

【0069】
(実施例33)
精製水(日本薬局方精製水、健栄製薬社製)10.0重量部に、キサンタンガム(ラボールガムGS−C、DSP五協フード&ケミカル社製)0.2重量部を加え、充分に攪拌した後、プロピレングリコール(和光純薬工業社製)9.8重量部を加え、85℃の温度で攪拌しながら溶解させた。溶解後、5cmプラスチック製ブリスターケース(クリオモルド(角型)3号、サクラファインテック社製)に2.0gずつ分注し、減圧乾燥機(DP63、ヤマト科学社製)で40℃5時間乾燥し水分を完全に蒸発させ、可食性の組成物を得た。
【0070】
(実施例34〜37)
表7に示した組成に従い、実施例33と同様の手順で可食性の組成物を得た。
【0071】
【表7】

【0072】
(実施例38)
精製水(日本薬局方精製水、建永製薬社製)1000重量部にκ−カラギーナン(GENUGEL JPE−126、CP Kelco社製)5重量部を70℃で加熱溶解し、室温で放冷した後、液体窒素で凍結し、凍結乾燥機(DC400、ヤマト科学社製)で1昼夜凍結乾燥処理を行った。
凍結乾燥処理を行ったκ−カラギーナン(FD品)1.0重量部をグリセリン(和光純薬工業社製)43.9重量部に入れ、85℃に加温し溶解させ多糖類ゲル化剤溶液を得た。当該多糖類ゲル化剤溶液に沈降炭酸カルシウム(備北粉化工業社製)50.0重量部、スクラロース(三栄源エフ・エフ・アイ社製)0.1重量部、クエン酸(日本薬局方クエン酸水和物、小松屋社製)1.0重量部を加え、80℃の温度で攪拌しながら混合した。混合後、5cmプラスチック製ブリスターケース(クリオモルド(角型)3号、サクラファインテック社製)に1.0gずつ分注し、2〜8℃下で1夜冷却保管し、フィルム状の製剤を得た。
【0073】
(実施例39)
表8に示した組成に従い、実施例38と同様の手順でフィルム状の製剤を得た。沈降炭酸カルシウムの代わりに、炭酸ランタン水和物(和光純薬工業社製)、κ−カラギーナン(FD品)の代わりに、κ−カラギーナン(FD品)と同様の手順で得られたLMペクチン(GENU PECTIN Type LM−102AS−J、CP Kelco社製、FD品)を用いた。
【0074】
(実施例40)
精製水(日本薬局方精製水、健栄製薬社製)60.0重量部に、脱アシル型ジェランガム(ケルコゲル、CP Kelco社製)1.0重量部を加え、充分に攪拌した後、グリセリン(和光純薬工業社製)60.9重量部に入れ、85℃に加温し溶解させ多糖類ゲル化剤溶液を得た。当該多糖類ゲル化剤溶液を60℃に冷却した後、イコサペント酸エチル(和光純薬工業社製)30.0重量部、スクラロース(三栄源エフ・エフ・アイ社製)0.1重量部、クエン酸(日本薬局方クエン酸水和物、小松屋社製)1.0重量部を加え、60℃の温度で攪拌しながら混合した。混合後、5cmプラスチック製ブリスターケース(クリオモルド(角型)3号、サクラファインテック社製)に1.6gずつ分注し、減圧乾燥機(DP63、ヤマト社製)で35℃5時間乾燥し水分を完全に蒸発させ、フィルム状の製剤を得た。
【0075】
(実施例41)
表8に示した組成に従い、実施例40と同様の手順でフィルム状の製剤を得た。イコサペント酸エチルの代わりに、エンタカポン(Cipla社製)、脱アシル型ジェランガムに加えて、タマリンドガム(グリロイド3S、DSP五協フード&ケミカル社製)を用いた。
【0076】
【表8】

【0077】
[試験方法]
実施例及び比較例において可食性の組成物又はフィルム状の製剤(以下、まとめてサンプルともいう)調製時に、各種多糖類ゲル化剤が溶解するかどうか(調製可能性)、調製後冷却することによりゼリー状組成物となるかどうか(ゲル化性1)、調製後冷却することにより液状成分が分離しないか(ゲル化性2)、40℃1ヶ月保管後に不揮発性有機溶媒の分離がみられないか(保管安定性)の3点から評価を行った。また実施例1〜11、23〜37に関しては口腔内における溶解特性を測定するために崩壊試験を行い、溶解時間を測定した。それぞれの試験方法を以下に示す。また、結果を表9〜11に示した。
【0078】
(1)調製可能性
各サンプル調製時に、各多糖類ゲル化剤が調製時の溶媒に溶解するかどうかを評価した。評価基準は以下の通りである。
3:完全に溶解し、澄明な溶液となった。
2:溶解したが、若干の濁りが見られた。
1:溶け残りが若干見られた。
0:ほとんど溶解しなかった。
【0079】
(2)ゲル化性1(ゼリー化性)
各サンプル調製時に、或いは、減圧乾燥又は放冷時にゼリー状となるかどうかを評価した。評価基準は以下の通りである。
3:指で押しても弾力性があり、指に多糖類ゲル化剤が付着しない可食性ゼリー状組成物又はゼリー状製剤となった。
2:可食性ゼリー状組成物又はゼリー状製剤となったが、柔らかく弾力性に欠けた。
1:可食性ゼリー状組成物又はゼリー状製剤であるが、指に基材が付着した。
0:粘性のある多糖類ゲル化剤で全くゲル化しなかった。
また、(1)調製可能性で“0:ほとんど溶解しなかった”サンプルに関しては、当該試験は行わず0としてスコア化した。
【0080】
(3)ゲル化性2(相溶性)
各サンプル調製時に、或いは、減圧乾燥又は放冷時に溶媒が分離していないかどうかを評価した。評価基準は以下の通りである。
3:不揮発性有機溶媒(液状成分)の分離は全く見られなかった。
2:サンプルの表面に若干の不揮発性有機溶媒(液状成分)の分離が見られた。
1:サンプルの表面にかなり不揮発性有機溶媒(液状成分)の分離が見られた。
0:分離がひどく、基材が不揮発性有機溶媒(液状成分)に浸った状態になった。
また、(1)調製可能性で“0:ほとんど溶解しなかった”サンプルに関しては、当該試験は行わず0としてスコア化した。
【0081】
(4)保管安定性試験
40℃に設定した恒温槽に調製したサンプルを保管し、保管開始から1カ月後に取出し、官能試験(触感)を評価した。評価方法は官能試験(触感)の評価方法に従った。
3:不揮発性有機溶媒(液状成分)の分離は全く見られなかった。
2:サンプルの表面に若干の不揮発性有機溶媒(液状成分)の分離が見られた。
1:サンプルの表面にかなり不揮発性有機溶媒(液状成分)の分離が見られた。
0:分離がひどく、基材が不揮発性有機溶媒(液状成分)に浸った状態になった。
また、(1)調製可能性で“0:ほとんど溶解しなかった”サンプル及び(2)ゲル化性1で“0:ほとんど溶解しなかった”サンプルに関しては、当該試験は行わず0としてスコア化した。
【0082】
(5)口腔内溶解時間測定
第15改正日本薬局方に記載の崩壊試験法に準じて試験を行った。1000mLの低形ビーカーに蒸留水をいれ、37±2℃の温度下で、1分間に29〜32往復、振幅53〜57mmで試験器を上下させる条件下により試験を行った。試験器の中にサンプルを入れ、前述の条件下で試験を開始し、試験開始からサンプルが完全に溶解し、試験器から消失した時間を口腔内溶解時間とした。
【0083】
【表9】

【0084】
表9に示したように、実施例1〜41のサンプルは、いずれの評価項目においても良好な結果であり、合計スコアは10〜12であった。
【0085】
【表10】

【0086】
表10に示したように、比較例1〜28のサンプルは、すべての評価項目において良好なものはなく、評価の合計スコアは3〜7であった。
【表11】

【0087】
表11に示したように、実施例のサンプルは、含まれる不揮発性有機溶媒の含有量を制御することで、口腔内での溶解時間を調整することができた。
【産業上の利用可能性】
【0088】
本発明の可食性ゼリー状組成物は、水を含まないゼリー状の組成物であり、多糖類ゲル化剤として、例えば、κ−カラギーナン、キサンタンガム、LMペクチン、ジェランガム、タマリンドガムを用いることで、常温ではゲル化し、口腔内の唾液で容易に溶解するという特徴を持ち合わせている。
また、本発明の可食性ゼリー状組成物は、不揮発性有機溶媒の含有量を制御することで、その溶解時間を容易に制御することも可能である。この溶解時間を制御可能であるという観点からは、口腔内における滞留時間が必要である口腔粘膜及び舌下粘膜から吸収させる医薬品の剤形として、またアレルゲンを舌下粘膜から感作させる舌下減感作療法に適している。
また、水を含まないという観点からは、本発明の可食性ゼリー状組成物は、一般的なゼリーでは必要な滅菌工程や防腐剤の添加が不必要となり、製造コスト面でのメリットがあり、また、水分制限が必要な患者のための栄養補助食及び医薬品の剤形としても適している。
本発明の可食性ゼリー状組成物は、タンパク質やペプチドの保管安定性を向上させることが一般的に知られている多糖類及びグリセリンやプロピレングリコールといったポリオール類が好適に用いられるため、特にタンパク質やペプチドを安定に維持することができると期待される。
本発明の可食性ゼリー状組成物は、もちろんそのままの状態で嚥下してもよいし、口腔内で速やかに溶解させて嚥下してもよい。更に、口腔内での溶解時間を制御し、口腔粘膜や舌下粘膜からの吸収を期待することも可能である。体温ですべて溶解させることができるため、残渣感がないという観点、また水を含まないという観点から、本発明の可食性ゼリー状組成物を用いたゼリー状製剤は、水分制限のある患者及び嚥下困難な患者及び介護者のQOLを大幅に向上させることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多糖類ゲル化剤と、該多糖類ゲル化剤と相溶する不揮発性有機溶媒とを含み、水を含まないことを特徴とする可食性ゼリー状組成物。
【請求項2】
不揮発性有機溶媒は、分子中に2〜4個のOH基を有する、炭素数4以下の多価アルコールである請求項1記載の可食性ゼリー状組成物。
【請求項3】
多糖類ゲル化剤は、κ−カラギーナン、キサンタンガム、脱アシル型ジェランガム、タマリンドガム、ペクチンからなる群より選択される少なくとも1種であり、
前記多糖類ゲル化剤と相溶する不揮発性有機溶媒は、プロピレングリコール及び/又はプロピレングリコール誘導体である請求項1又は2記載の可食性ゼリー状組成物。
【請求項4】
多糖類ゲル化剤は、κ−カラギーナン、ジェランガム、タマリンドガム、LMペクチンからなる群より選択される少なくとも1種であり、
前記多糖類ゲル化剤と相溶する不揮発性有機溶媒は、グリセリン及び/又はグリセリン誘導体である請求項1又は2記載の可食性ゼリー状組成物。
【請求項5】
多糖類ゲル化剤の配合量が、組成物の全重量基準で0.1〜40重量%である請求項1、2、3又は4記載の可食性ゼリー状組成物。
【請求項6】
多糖類ゲル化剤と相溶する不揮発性有機溶媒の配合量が、組成物の全重量基準で10〜99重量%である請求項1、2、3、4又は5記載の可食性ゼリー状組成物。
【請求項7】
請求項1、2、3、4、5又は6記載の可食性ゼリー状組成物に、薬物を更に含むことを特徴とするゼリー状製剤。
【請求項8】
多糖類ゲル化剤と該多糖類ゲル化剤と相溶する不揮発性有機溶媒と薬物とを混合して多糖類ゲル化剤溶液を調製する工程、
前記多糖類ゲル化剤溶液を分注又は延伸する工程、及び、
放冷又は冷却により固化させる工程を含む
ことを特徴とするゼリー状製剤の製造方法。
【請求項9】
多糖類ゲル化剤と水を混合して多糖類ゲル化剤混合液を調製する工程、
前記多糖類ゲル化剤混合液を加熱し、前記多糖類ゲル化剤を溶解させて、多糖類ゲル化剤溶解溶液を調製する工程、
前記多糖類ゲル化剤溶解溶液を凍結乾燥又は噴霧乾燥させて、凍結乾燥又は噴霧乾燥された多糖類ゲル化剤を得る工程、
前記凍結乾燥又は噴霧乾燥された多糖類ゲル化剤と、該凍結乾燥又は噴霧乾燥された多糖類ゲル化剤と相溶する不揮発性有機溶媒と、薬物とを混合し、多糖類ゲル化剤溶液を調製する工程、
前記多糖類ゲル化剤溶液を、分注又は延伸する工程、及び、
放冷又は冷却により固化させる工程を含む
ことを特徴とするゼリー状製剤の製造方法。

【公開番号】特開2012−240979(P2012−240979A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−114046(P2011−114046)
【出願日】平成23年5月20日(2011.5.20)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】