説明

台紙レスラベルプリンタ

【課題】台紙レスラベル用紙をバックフィードする際、ラベル用紙がプラテンローラに巻き付くのを、簡単な機構で防止することができる台紙レスラベルプリンタを提供する。
【解決手段】台紙レスラベルロール3からラベル用紙3’を引き出し、該ラベル用紙に印字部5で所定事項を印字し、枚葉状のラベルを発行する台紙レスラベルプリンタAにおいて、前記台紙レスラベルロール3から印字部に至るラベル用紙の移動経路に、前記ラベル用紙3’を所定量バックフィードする際、該ラベル用紙3’を台紙レスラベルロール3側へ引き戻し前記ラベル用紙3’の発行方向と逆方向に弾発揺動する押圧部材8と、前記ラベル用紙3’が、少なくともバックフィードされる際、前記台紙レスラベルロール3の回転を抑える抑制手段9と、を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はラベル用紙としてロール状に巻かれた台紙レスラベルロールを使用する台紙レスラベルプリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
ラベル用紙として台紙レスのラベル用紙を使用するラベルプリンタは、ラベル用紙の印字面と反対側の面に施された粘着面(糊面)が、ラベル用紙を繰り出すプラテンローラに直接接触する為、該プラテンローラの外周面に非粘着性(又は易剥離性)の表面処理(例えば、コーティング処理)を施すか、またはプラテンローラ自体或いはプラテンローラの外側層が、前記作用を奏する材料で構成されている。
しかし、前記非粘着性又は易剥離性の効果は永久に維持されるわけではなく、長期の使用において前記効果が徐々に低下する。そして、前回のラベル発行後、次のラベル発行までに長い時間を要する場合、長時間サーマルヘッドとプラテンローラ間の圧により前記台紙レスラベル用紙が押圧され続けられる。
そして、この種のラベルプリンタでは、印字の開始位置をラベル用紙の先端縁近傍(先端縁よりロール側に数ミリの位置)とするため、印字ラベルを切断後、ラベル用紙を印字部側にバックフィードさせるが、前記長時間サーマルヘッドとプラテンローラ間の圧により前記台紙レスラベル用紙が押圧されていた状態でラベル用紙をバックフィードさせるようプラテンローラを逆回転させると、ラベル用紙がプラテンローラの外周面に巻き付きながら回転してしまう恐れがある。
前記プラテンローラへのラベル用紙の巻き付きは、図5に示すように、プラテンローラ28の逆回転によってバックフィードされたラベル用紙29は該プラテンローラより上流付近に弛みを作り、その弛み部分がプラテンローラ28の外周面に付着し、そのままプラテンローラ28が回転して巻き付くことになる。そして、バックフィードの際、プラテンローラ28にラベル用紙29が付着し、巻き付くと、次のラベル発行に必要なラベル用紙の繰り出しも出来なくなり、ラベルの印字発行が不可能となる。
【0003】
この問題に対して、プラテンローラとは別に、プラテンローラより上流位置にラベル用紙を搬送する上下一対の駆動ローラを設け、ラベル用紙をバックフィードする時、この駆動ローラを逆回転させることで、プラテンローラ上流側にラベル用紙に張力を発生させ、それによりプラテンローラに貼り付いたラベル用紙を引き剥がす技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
しかし、この場合、プラテンローラとは別に、プラテンローラより上流位置にラベル用紙を上下より挟持する一対の駆動ローラを設けるため、構造が複雑になると共に、コスト高になるという問題を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−5943号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記問題に鑑みてなされたもので、台紙レスラベル用紙をバックフィードする際、ラベル用紙がプラテンローラに巻き付くのを、簡単な機構で防止することができる台紙レスラベルプリンタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために、本発明の台紙レスラベルプリンタは、台紙レスラベルロールからラベル用紙を引き出し、該ラベル用紙に印字部で所定事項を印字し、切断し枚葉状のラベルを発行する台紙レスラベルプリンタにおいて、前記台紙レスラベルロールからプラテンローラとサーマルヘッドからなる印字部に至るラベル用紙の移動経路に、前記ラベル用紙を所定量バックフィードする際、該ラベル用紙を台紙レスラベルロール側へ引き戻し前記ラベル用紙の発行方向と逆方向に弾発揺動する押圧部材と、前記ラベル用紙が、少なくともバックフィードされる際、前記台紙レスラベルロールの回転を抑える抑制手段と、を設けたことを特徴とする。
【0007】
前記押圧部材としては、外力を受けて撓み変形する板状部材、或いは戻しバネを備えた弾発揺動するローラ部材等、何れでもよい。板状部材からなる押圧部材の具体例としては、例えば、板部材の一方側部をケースに固定し、他方側部の自由端を前記ラベル用紙に接触させるものが考えられる。そして、押圧部材は少なくともラベル用紙がバックフィードする時に弾発揺動し、用紙を押し戻すものであればよく、ラベル用紙が順方向(発行方向)へ移動する際には、ラベル用紙と接触せずに、用紙がバックフィードするときのみ前記のように弾発揺動するようにしてもよい。
また、該ラベル用紙の印字方向への移動により撓み変形して引き戻し力を蓄積し、印字ラベル切断後のラベル用紙のバックフィード時、前記蓄積された引き戻し力を解放するよう前記ラベル用紙に力が加わるようにしてもよい。このようにすることで、ラベル用紙が発行される順方向へは、押圧手段に力を蓄えながらラベル用紙を移動するので、台紙レスラベルロールからラベル用紙が引き出される際に、台紙レスラベルロールの回転による必要以上の慣性力が印字部に加わることを防ぐことができる。これは、特に大きな径の台紙レスラベルロールにおいて有効である。そして、印字部に必要以上の力を与えることを防ぐための部材を利用して、バックフィード時には、その蓄えられた力を解放するようになるので、特別な部材を不要にする。つまり、この場合は、押圧部材はラベル発行方向に対し正逆いずれの方向にも移動可能になっている。
そして、バックフィード時にはラベルロールの回転が抑制されているのでラベル用紙は、前記蓄積された力を開放しようとする自由端により用紙搬送の上流側へ押し戻すよう作用することで、プラテンローラの上流側外周面に用紙が巻き付くのを防ぐことができる。
【0008】
また、前記抑制手段としては、前記台紙レスラベルロールの外周面に弾性的に接する押さえ部材、或いは前記台紙レスラベルロールの回転部に装着するブレーキ部材等、何れでもよい。
前記ブレーキ部材の具体例としては、例えば、無励磁作動電磁ブレーキが挙げられ、ラベルプリンタ本体の電源がOFFのとき、ラベルプリンタ本体の電源がONであってラベル発行待機のとき、あるいは、バックフィードのときには、バネにより制動力が働くスプリング式の無励磁作動電気ブレーキを採用することが好適である。つまり、コイルの電流を断つとアーマチュアは開放されてスプリング力によりディスクをエンドプレートに押しつけ摩擦によりブレーキが掛かるので、無励磁状態では常にブレーキが掛かっている。したがって、ラベル用紙が順方向に移動し発行するときのみ、ラベル用紙を発行する信号に基づき、前記コイルに電流が流れ、ブレーキが開放されるようになる。換言すれば、ラベル発行待機時、あるいは、ラベルプリンタ本体の電源がOFFのときであっても、ラベルロールが固定され、ラベル用紙が弛むことがない。
【0009】
また、抑制手段を構成する押さえ部材の取り付けは、例えば、前記台紙レスラベルロールの軸方向移動を規制する部材を支持する軸に、棒状をなした押さえ部材の一方側部を回動可能に取り付け、その押さえ部材の他方側部(自由端)の周面を台紙レスラベルロールの外周面に当接させることで、該押さえ部材の自重が台紙レスラベルロールの回転を抑制するようにする。この場合、台紙レスラベルロールは完全に停止されないが、ある程度の力にて該ロールが保持されると、バックフィード時に、抑制手段により印字部と台紙レスラベルロール間のラベル用紙は緊張状態で保持される。そして、その緊張状態のラベル用紙に抗して押圧部材がラベル発行方向と逆方向へ僅かに移動するようになるので、ラベル用紙を引き戻すようになり、プラテンローラの上流側外周面にラベル用紙が巻き付くのを防ぐことができる。つまり、抑制手段は、バックフィード時に台紙レスラベルロールの回転を完全に停止させる方が、押圧部材が接触した際にラベルロールが回転しラベル用紙に撓みを形成しないのでより好適であるが、バックフィード時に押圧部材に蓄積された力が解放され、ラベル用紙を上流側へ引き戻すよう作用するだけの力で台紙レスラベルロールの回転が抑制されていれば完全に停止されるものでもよい。
【0010】
上記手段によれば、印字部を構成するプラテンローラの駆動回転によりラベル用紙が引き出され、サーマルヘッドで所定事項が該ラベル用紙に印字される。このラベル用紙の順方向への移動時、ラベル用紙と接触する押圧部材もラベル用紙の移動方向に移動されて引き戻し力が蓄積される。そして、所定事項が印字されたラベル用紙は印字部より下流側に配置された切断手段で枚葉状に切断され、ラベルが発行される。ラベル発行後、台紙レスラベルロールに繋がったラベル用紙は次のラベル印字の開始位置を、該ラベル用紙の先端近傍とするために印字部側にバックフィードされる。ラベル用紙がバックフィードされる際、例えば長期間、プラテンローラとサーマルヘッドにて用紙が押さえ付けられていると、用紙がバックフィードされる際、ラベル用紙の前記プラテンローラとサーマルヘッドにて用紙が押さえ付けられている箇所がプラテンローラと共に回転するようになり、該プラテンローラより上流側に撓みを形成し、プラテンローラの上流側に巻き込むようになる。これは特に用紙の裏側に粘着面を有しているラベル用紙では顕著である。
しかしながら、ラベル用紙のバックフィード開始と同時に、前記押圧部材が蓄積した引き戻し力を解放して元の位置に戻るよう動作し、元の位置に戻る時、ラベル用紙を上流側に押し戻すように作用するため、前記プラテンローラの逆回転でバックフィードされるラベル用紙を緊張状態に保持し、弛みの発生を防止する。これにより、ラベル用紙をバックフィードする際、該ラベル用紙がプラテンローラに巻き付くのを防止できる。
また、前記プラテンローラを逆回転してラベル用紙をバックフィードする際、台紙レスラベルロールは抑制手段で回転が止められている為、前記押圧部材の引き戻し力によるラベル用紙の緊張状態の保持を確実に安定して行うことができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の台紙レスラベルプリンタは、ラベル用紙のバックフィード時、台紙レスラベルロールの回転が抑制され、緊張状態のラベル用紙に対して、ラベル用紙の移動経路に配置した押圧部材がラベル発行方向と逆方向へ弾発揺動することで、印字部と台紙レスラベルロール間のラベル用紙を引き戻すようになり、ラベル用紙のバックフィード時に、プラテンローラの外周面にラベル用紙が巻き付くのを確実に防止することができる。
しかも、前記押圧部材であるので、従来の上下一対の逆回転させる駆動ローラを設ける場合に比べて簡単な機構であるため、経済的で、既存製品に対して簡単に取り付けて、ラベル用紙の巻き付き防止を図ることができる。また、前記駆動ローラの場合、該ローラの外周面に粘着面が付着しないような非粘着性の表面処理をする必要があり、その処理は経年変化により効果が少なくなり、プラテンローラの他、該ローラに巻き込むようになる恐れがあるが、ラベル用紙の移動正逆方向に揺動する押圧部材であるので押圧部材に巻き込むこともない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る台紙レスラベルプリンタの実施の形態の一例を示す概略側面図。
【図2】押圧部材の動作を示す部分拡大図で、(a)はラベル用紙の順方向引き出しによって押圧部材に引き戻し力が蓄積されている状態、(b)は印字ラベルがラベル用紙から切断された状態、(c)はプラテンローラが逆回転してラベル用紙をバックフィードした時、押圧部材が元の位置に戻りラベル用紙を緊張させた状態。
【図3】押圧部材の他の例を示す側面図。
【図4】ラベル用紙のバックフィード時、台紙レスラベルロールの回転を止める抑制手段として電磁ブレーキを備えたプリンタの電気的構成を示すブロック図。
【図5】従来の台紙レスラベルプリンタにおけるラベル用紙の巻き付きを示す側面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る台紙レスラベルプリンタの実施の形態の一例を図面に基づき説明する。
図1は、押圧部材を撓み変形し得る平板で構成した台紙レスラベルプリンタAの概略を示し、ケース1内にロール装填部2が設けられ、そのロール装填部2にセットされる台紙レスラベルロール3のラベル用紙3’の繰り出し方向前方位置に、ラベル用紙3’の送出手段4と、印字部5と、印字されたラベル用紙3”を所定長さに切断する切断手段6が配置され、前記切断手段6より前方には切断送出された印字ラベルLを一時的に保持するラベル保持部7が設けられ、更に、前記ロール装填部2にセットされる台紙レスラベルロール3から印字部5に至るラベル用紙3’の移動経路には、ラベル用紙3’に接触して移動正逆方向に弾発揺動する押圧部材8が配置され、台紙レスラベルロール3の外周面には少なくともラベル用紙のバックフィード時、該台紙レスラベルロール3の回転を止める抑制手段9が当接配置されている。そして、前記ロール装填部2には台紙レスラベルロール3が回転可能に支持されている。
尚、ラベル用紙3’の裏面には予め粘着層が施されており、繰り出されたラベル用紙3’が切断手段6によりカットされることで、商品に貼付可能な一枚のラベルが生成される。
また、押圧部材8は、ラベル用紙が発行される順方向へは、押圧部材に力を蓄えながらラベル用紙を移動するので、台紙レスラベルロールからラベル用紙が引き出される際に、必要以上の力が印字部に加わることを防ぐことができる。
【0014】
ロール装填部2にセットされた台紙レスラベルロール3からラベル用紙3’を引き出す送出手段4は、ケース1の周壁に開設したラベル送出口10の上流側近傍に配置した上下一対のローラからなる下流側の用紙送出手段4bと、その用紙送出手段4bより上流側に所定間隔をおいて配置した印字部5を兼ねた上流側の用紙送出手段4aとからなる。
【0015】
印字部5を兼ねた上流側の用紙送出手段4aは、ラベル用紙3’の下方(貼付面側)に位置するプラテンローラ5aと、ラベル用紙3’の上方(印字面側)に位置するサーマルヘッド5bとで構成され、前記プラテンローラ5aと下流側の用紙送出手段4bにおける下側のローラはモータによって駆動回転するように構成されている。そして、ラベル用紙3’の上方に位置するサーマルヘッド5bと下流側の用紙送出手段4bにおける上側のローラはそれぞれラベル用紙3’を下側のローラ(用紙送出手段4bにおける下側のローラ、プラテンローラ5a)とで挾着するように下方に付勢され、それにより前記ラベル用紙3’を安定して送出し得るように構成されている。
【0016】
また、前記印字部5のプラテンローラ5aと下流側の用紙送出手段4bにおける下側のローラは、それぞれの表面に剥離剤がコーティングされており、ラベル用紙3’の印字面と反対側面に塗着されている粘着剤が付着しないようにしてあり、それによってラベル用紙3’の送出が円滑に行われるようになっている。尚、ラベル用紙3’の粘着層が前記ローラに付着しにくくする構成は、上記構成に限らず、前記ローラ自体又はローラの最外周部分を易剥離性の部材で構成してもよい。
【0017】
前記印字部5で商品情報が印字され、ラベル送出口10に向けて送出されるラベル用紙3’を所定長さの枚葉状に切断する切断手段6は、ラベル送出口10より水平状に送出されるラベル用紙3’を挟むように配置した上下一対の可動刃6aと固定刃6bとで構成されている。そして、前記可動刃6aが固定刃6bに向けて進退することによりラベル用紙3’がせん断作用によって切断されるようになっている。そして、切断手段6により切断されたラベル用紙3’の台紙レスラベルロール3と繋がる先端は、次のラベル発行指示を受けると、サーマルヘッド5bから僅かに突出した位置までバックフィードされる。これにより、次の印字の際には、ラベル用紙3’の略先端位置から印字をすることができる。
【0018】
前記切断手段6で切断された印字ラベルLを一時的に待機保持するラベル保持部7は、ソロバン玉状の接触部材7aを備えた枠体7bが、ケース1の外側面に固定枠11を介して設置されている。このラベル保持部7に送出された印字ラベルLは、貼付手段(アプリケータ)による自動貼り、或いはオペレータによる手貼りで商品に貼付される。
【0019】
台紙レスラベルロール3から印字部5に至るラベル用紙3’の移動経路に配置される押圧部材8は、ラベル用紙3’の用紙幅と略同じ幅か、幅広い合成樹脂製の薄板を略S字状に湾曲形成した、撓み変形し得る板部材(弾性板)12で構成され、その板部材12の長手方向の一方側部12aはケース1の内側に突設した取付部1’にネジ12cで固定され、他方側部12bの自由端は台紙レスラベルロール3から引き出されて印字部5に至るラベル用紙3’の印字面と接触するように配置されている。そして、この板部材12を経由することでラベル用紙3’が略水平状態で印字部5に供給されるようになっている。
それにより、ラベル用紙3’が送出手段4(下流側の用紙送出手段4bとプラテンローラ5a)の駆動で引き出されると、該ラベル用紙3’と接触する板部材12は、ラベル用紙3’の移動前に当接していた位置からラベル用紙3’の移動方向に向かって屈曲移動(撓み変形)され、これにより該板部材12に、ラベル用紙3’を引き出し方向とは逆の方向に戻す引き戻し力(弾発力)が蓄積される(図1参照)。尚、ラベル用紙3’と当接する板部材12の自由端の位置は、台紙レスラベルロール3の外径がラベル発行により小さくなっても、ラベル用紙3’の引き出しによって前記引き戻し力(弾発力)をほぼ同じように生成し得る位置、例えば、台紙レスラベルロール3の外周と接する接線(ラベル用紙の繰り出し方向)と、印字部を通るラベル用紙3’の水平線方向との交差する角度が略鋭角に保持される位置が好適である。
【0020】
前記押圧部材8を構成する板部材12が、ラベル用紙3’の引き出し時に該ラベル用紙の移動方向に屈曲移動(撓み変形)して蓄積した引き戻し力を効果的に発揮するためにはロール装填部2にセットされる台紙レスラベルロール3は、少なくともラベル用紙3’をバックフィードする際、正逆何れの方向にも回転しないで停止している必要がある。即ち、印字の際は台紙レスラベルロール3を回転可能とし、バックフィードの際は回転を止めるのが抑制手段9である。
この抑制手段9としては、図1に示したように、台紙レスラベルロール3の外周面に、ある程度の重量を有した棒状の押さえ部材13をバネ部材により弾性的に接触させ、外力(ラベル用紙を引き出す力)によりラベル用紙が引き出される方向に回転し、前記外力が作用しなければ台紙レスラベルロール3の回転は前記押さえ部材13によって停止状態を維持する。この場合、バネ部材の力により回転が押さえられており、完全に台紙レスラベルロール3の回転が停止されているものではないが、ラベル用紙のバックフィード時に、板部材12とラベル用紙3‘とが当接され、前記ラベル用紙3’に緊張を与える程度の力であるので、板部材12に蓄えられた力が開放されると、プラテンローラ付近のラベル用紙が上流側に引き戻されるようになるので、プラテンローラの上流側外周面にラベルが付かないようになる。
つまり、ラベル用紙が発行される順方向へは、押圧手段に力が蓄えながらラベル用紙が移動するので、台紙レスラベルロールからラベル用紙が引き出される際に、必要以上の力が印字部に加わることを防ぐことができ、そのための部材を利用して、バックフィード時には、その蓄えられた力を開放するようになるので、特別な部材を不要にして、プラテンローラ付近のラベル用紙が上流側に引き戻されるようになるので、プラテンローラの上流側外周面にラベルが付かないようになる。また、板部材12は、非粘着面であるラベル用紙3’の印字面(粘着面とは反対側の面)と接触するので、ラベル発行の回数を重ねたとしても、板部材12に粘着粕が付着することはないのでラベル用紙3’を引き戻す際に影響を及ぼすことがない。
【0021】
前記押さえ部材13の取り付けは、棒状の押さえ部材の一方側部を、ロール装填部2の外方に配置した軸14に回動可能に支持し、押さえ部材の他方側部(自由端側)を、前記軸14を中心として台紙レスラベルロール3の外周面側に回動(傾倒)して接触させ、該押さえ部材13の重量が台紙レスラベルロール3の回転に負荷として作用するようにする。
前記軸14は押さえ部材13の取り付けのために専用に設けてもよいが、図1に示すように、ロール装填部2にセットした台紙レスラベルロール3が軸方向(ロール幅方向)に移動しないように、台紙レスラベルロール3の側端面に移動規制杆15が当接配置されるが、この移動規制杆15を支持する軸を利用して取り付けてもよい。
【0022】
前記台紙レスラベルロール3が、少なくともバックフィードの際、正逆何れの方向にも回転しないようにする抑制手段9は、前記押さえ部材13による構成に限らず、台紙レスラベルロール3がセットされるロール装填部2にブレーキ手段16を装着してもよい。これにより、バックフィード時に完全にロールが固定されるので、ラベル用紙3’にはより強固な緊張状態を生じることができ、その緊張したラベル用紙3’に対して板部材12が戻ろうとするので、プラテンローラ5a付近のラベル用紙は上流方向へ引っ張られるようになり、プラテンローラ5aの上流側外周にラベル用紙が巻き付くのを防ぐことができる。
そのブレーキ手段16としては、例えば、無励磁作動電磁ブレーキが挙げられ、ラベルプリンタ本体の電源がOFFのとき、ラベルプリンタ本体の電源がONであってラベル発行待機時、あるいは、バックフィード時には、該ブレーキ内のバネにより制動力が働くスプリング式の無励磁作動電気ブレーキを採用することが好適である。つまり、コイルの電流を断つとアーマチュアは開放されてスプリング力によりディスクをエンドプレートに押しつけ摩擦によりブレーキが掛かるので、無励磁状態では常にブレーキが掛かっている。したがって、台紙レスラベルロール3からラベル用紙3’が引き出される順回転方向にはブレーキが作用せず、ラベル用紙3’がバックフィードされる際はブレーキが作用して台紙レスラベルロール3の回転を止めるものである。例えば、その日のラベル発行が終了し、ラベルプリンタ本体の電源が切れた状態でも、台紙レスラベルロール3のロックが維持されるようになるので、ラベルロールからラベル用紙3’繰り出されてラベル用紙3’が撓むことがない。つまり、翌日の朝一番でラベル発行をする際、押圧部材8とラベル用紙3’とは確実に接するようになるので、ラベル用紙3’がバックフィードする際に、プラテンローラ5aの上流側外周にラベル用紙が巻き付くのを確実に防ぐことができる。
【0023】
また、前記押圧部材8は板部材12で構成された形態に限らず、ロール部材でもよい。例えば、図3に示すように、ローラ17aを揺動杆17bの一側に回転可能に取り付け、揺動杆17bの他側部をケース内の所定位置に揺動可能に軸支し、更に、前記揺動杆17bの軸止部とローラ17aの略中間位置にはスプリング17cが張設され、ラベル用紙3’の引き出し方向への移動により揺動杆17bがラベル用紙3’の移動方向に移動され、それにより前記スプリング17cに弾発力(引き戻し力)が蓄積されるようになっている。
【0024】
図4は、図1に示した台紙レスラベルプリンタの電気的構成を示すブロック図で、抑制手段9としてロール装填部2にブレーキ手段16(電磁ブレーキ27)を備える。
その構成は、CPU18、フラッシュメモリ19、RAM20、操作部21、表示部22、通信部23、印字制御部24、印字発行部25、カッター駆動モータ26、電磁ブレーキ27を備える。
【0025】
前記CPU18は、フラッシュメモリ19に記憶されたプログラムを実行して本台紙レスラベルプリンタAの動作を統括する中央演算処理装置である。
フラッシュメモリ19は、本台紙レスラベルプリンタAの制御プログラムや、制御用データ等を記憶する読み出し専用メモリである。
RAM20は、一時的にデータを呼び出して処理する為のワークエリアがあり、その中には、印字データをドットデータに展開するドット展開エリア、ラベルフォーマットファイルから1つのフォーマットデータを呼び出して記憶する呼出フォーマットエリア、商品データを呼び出して記憶する呼出商品エリア等がある。
【0026】
また、このRAM20には、ラベル印字のフォーマットが設定されたラベルフォーマットファイル、ラベル印字用の各種商品データが設定された商品ファイル等が記憶されており、電源オフ時も商品ファイルやフォーマットファイルを保持するようにバッテリでバックアップされている。
操作部21は、本台紙レスラベルプリンタAの操作を行うための入力装置であり、表示部22と一体に構成されたタッチパネルになっている。
表示部22は、各種のメニュー画面やデータを表示する液晶ディスプレイである。
通信部23は、ホストコンピュータと通信を行い、データの授受を行う。
【0027】
印字制御部24は、CPU18の指令に基づいて印字発行部25の動作を制御する。
印字発行部25は、本実施例ではロール装填部2にセットされた台紙レスラベルロール3からラベル用紙3’を引き出し、選択指定した商品の情報を印字部5で印字するようになっている。
カッター駆動モータ26は、CPU18の指令に基づいて、切断手段6の可動刃6aを駆動させて印字済みのラベル用紙3’を切断し、印字ラベルLを発行する。
電磁ブレーキ27は、スプリング式の無励磁作動電磁ブレーキで、ロール装填部2にセットされる台紙レスラベルロール3の正逆回転を停止させるもので、印字ラベルを切断発行後、ラベル用紙3’の先端(印字ラベルLが切り離された台紙レスラベルロール3に繋がるラベル用紙の先端)が印字位置合わせの為にバックフィードされるが、このバックフィードの際、ブレーキ内のバネにより制動力が働き、台紙レスラベルロール3の回転を止める。つまり、ラベル用紙3’が順方向へ移動する以外はブレーキが作用しており、台紙レスラベルロール3は正逆何れの方向にも回転不可能となる。
電磁ブレーキ27は、ロール装填部2にセットされる台紙レスラベルロール3の正逆回転を停止させるもので、印字ラベルを切断発行後、ラベル用紙3’の先端(印字ラベルLが切り離された台紙レスラベルロール3に繋がるラベル用紙の先端)が印字位置合わせの為にバックフィードされるが、このバックフィードの際、通電により台紙レスラベルロール3の回転を止める。ラベル用紙3’をバックフィードする時以外は切電されてブレーキ=作用せず、台紙レスラベルロール3は正逆何れの方向にも回転可能となる。
【0028】
上記の如く構成した台紙レスラベルプリンタAは、操作部21又は表示部22よりラベルの印字発行を入力すると、送出手段4(下流側の用紙送出手段4bとプラテンローラ5a)が駆動してラベル用紙3’を引き出し、印字部5で選択指定した商品情報が印字される。この印字の為にラベル用紙3’が台紙レスラベルロール3から引き出されるが、ラベル用紙3’の引き出し時、ラベル用紙3’の移動経路に配置された押圧部材8の板部材12は、図2(a)に示すように、初期位置(印字開始前の状態における板部材の位置(仮想線の位置))からラベル用紙3’の移動によって同方向に撓み変形される。この撓み変形によって板部材12に引き戻し力(弾発力)が蓄積される。尚、ラベル用紙3’が引き出される時、抑制手段9の押さえ部材13は台紙レスラベルロール3の外周面に当接しているが、送出手段4による引き出し力が勝ってラベル用紙3’は引き出される。
選択指定した商品情報の印字が完了すると、図2(b)に示すように、切断手段6が作動して印字済みのラベル用紙3’を切断し、印字ラベルLを発行する。
【0029】
印字ラベルLを発行後、次の印字ラベルを発行するためにラベル用紙3’の先端は印字開始位置を合わせるために送出手段4の逆回転でバックフィードされ、ラベル用紙3’の先端は所定位置(プラテンローラ5aよりも僅かに下流位置)まで引き戻される。そして、この引き戻される際、裏面に粘着層を設けたラベル用紙3’がサーマルヘッド5aとプラテンローラ5との間に長時間押圧され続けると、ラベル用紙3’がバックフィードする際に、ラベルの一部がプラテンロール5aと付いたままの状態で該プラテンロール5aが回転するようになるので、従来ではラベル用紙3’がプラテンロール5aに巻き付くようになる。しかし、ラベル用紙3’がバックフィードする際、ラベル用紙3’の上流側への移動に伴い、前記板部材12の引き戻し力(弾発力)が作用して、ラベル用紙が引っ張られるようになるので、前記のようにラベルの一部がプラテンロール5aと付いたままの状態で該プラテンロール5aが回転することがなく、ラベル用紙3’がプラテンロール5aに巻き付くことがない。
即ち、ラベル用紙3’がバックフィードされる際、台紙レスラベルロール3は抑制手段9の押さえ部材13によって回転が止められている為、図2(c)に示すように、該台紙レスラベルロール3と印字部5との間に位置するラベル用紙3’は板部材12の引き戻し力(弾発力)で緊張状態に保持される。従って、ラベル用紙3’をバックフィードする際、印字部5のプラテンローラ5aにラベル用紙3’が付着し巻き付くのを防止できる。尚、台紙レスラベルロール3の回転を止める抑制手段9が電磁ブレーキ27であれば、通電によりブレーキが働き、台紙レスラベルロール3の回転を停止し、その状態のもとで押圧部材8(板部材12)が作用し、ラベル用紙3’を緊張状態に保持する。
【0030】
本発明の台紙レスラベルプリンタは図示した実施の形態に限定されず、本発明の要旨を変更しない範囲内で適宜変更可能である。
(1)実施の形態では、印字部と切断手段との間に用紙送出手段を配置した例を示し、ラベル用紙のバックフィードもその用紙送出手段の下流側近傍としたがこれに限定されず、例えば、印字部と切断手段との間に用紙送出手段が存在せず、ラベル用紙のバックフィードにより該ラベル用紙の先端が印字部の下流側近傍位置に引き戻される構造でもよい。
(2)実施の形態では、押圧部材として略S字状に屈曲形成した板部材を示したが、これに限定されず、外力を受けて撓み変形する直線状の板部材でもよい。
(3)実施の形態では、押圧部材の他の例として、弾発揺動する揺動杆にローラが回転可能に取り付けられた例を示したが、これに限らず、前記ローラは順方向(ラベル用紙が引き出される方向)に回転し、逆方向には回転が止められ、その状態で揺動杆がバネ力で戻される構造でもよい。
(4)実施の形態では、スプリング式の無励磁作動電磁ブレーキにて説明したが、励磁作動電磁ブレーキであってもよい。この場合、ラベル用紙のバックフィード時には励磁されブレーキがかかり、台紙レスラベルロール3の回転を止め、それ以外のときには、電気ブレーキは非励磁のため、順方向のラベル用紙発行には支障のない程度の力で台紙レスラベルロール3を抑える押さえ部材により、回転が抑えられるようにしてもよい。
(5)実施の形態では、ラベルが発行するとき、つまりラベル用紙3’がサーマルヘッドへ向けての移動(ラベル用紙への印字に伴う該ラベル用紙の移動であり順方向への移動)によりラベル用紙を逆方向に引き戻す引き戻し力を押圧部材8に蓄積することで、ラベル用紙3’がバックフィードするときにその力が解放される説明をしたがこれに限らず、ラベル用紙3’が順方向への移動の際には作用せず、台紙レスラベルロール3と印字部5との間のラベル用紙3’に対して伸びて接触するバネ部材を設け、そのバネ部材がバックフィードするときのみ作用することで、ラベル用紙3’を用紙搬送と逆方向へ移動させ、それによりプラテンローラ5aの上流側にラベルが巻き付かないようにしてもよい。そして、この場合伸びたバネ部材は、ラベル用紙3’が順方向に移動する際に、ラベル用紙3’と接触しない位置に例えばソレノイドの動作により押し戻されるようにしてもよい。この場合でも、バネ部材の移動のみにより、バックフィードするとき、ラベル用紙3’を用紙搬送の逆方向へ移動させることができるのでプラテンローラ5aの上流側にラベルが巻き付かないようにすることができる。
つまり、従来のように、駆動するローラ部材を設ける必要がないのでモータやローラ部材を不要にできコストを抑えることができる。また、駆動ローラ部材を追加する方法の場合には、その駆動するローラ部材にもラベル用紙3’が巻き付く恐れがあるという二重の問題を招来するが、本実施の形態では、バネ部材であり、しかも、バックフィードする際にのみ接触し、ラベル用紙の非粘着面である印字面と接触させることで当該バネ部材への巻き付きは生じない。
【符号の説明】
【0031】
A…台紙レスラベルプリンタ L…印字ラベル
2…ロール装填部 3…台紙レスラベルロール
3’…ラベル用紙 5…印字部
8…押圧部材 9…抑制手段
12…板部材 13…押さえ部材
16…ブレーキ手段(電磁ブレーキ27)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
台紙レスラベルロールからラベル用紙を引き出し、該ラベル用紙に印字部で所定事項を印字し、枚葉状のラベルを発行する台紙レスラベルプリンタにおいて、
前記台紙レスラベルロールからプラテンローラとサーマルヘッドからなる印字部に至るラベル用紙の移動経路に、前記ラベル用紙を所定量バックフィードする際、該ラベル用紙を台紙レスラベルロール側へ引き戻し前記ラベル用紙の発行方向と逆方向に弾発揺動する押圧部材と、
前記ラベル用紙が、少なくともバックフィードされる際、前記台紙レスラベルロールの回転を抑える抑制手段と、
を設けたことを特徴とする台紙レスラベルプリンタ。
【請求項2】
前記押圧部材は、前記ラベル用紙に接触し、ラベル用紙への印字に伴う該ラベル用紙の移動により前記ラベル用紙を逆方向に引き戻す引き戻し力を蓄積することを特徴とする請求項1記載の台紙レスラベルプリンタ。
【請求項3】
前記押圧部材は、撓み変形し得る板部材で構成され、その一方側部が固定され、他方側部の自由端側は前記ラベル用紙に接触され、該ラベル用紙の印字方向への移動により撓み変形して引き戻し力を蓄積し、前記ラベル用紙のバックフィード時、前記引き戻し力で前記ラベル用紙を緊張状態に保持することを特徴とする請求項1、又は2記載の台紙レスラベルプリンタ。
【請求項4】
前記抑制手段は、前記台紙レスラベルロールの外周面に弾性的に接する押さえ部材で構成されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の台紙レスラベルプリンタ。
【請求項5】
前記抑制手段は、前記台紙レスラベルロールの回転部に装着したブレーキ手段で、該ロールからラベル用紙が引き出される順回転方向にはブレーキが作用せず、ラベル用紙がバックフィードされる際は、台紙レスラベルロールの回転を止めることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の台紙レスラベルプリンタ。
【請求項6】
前記抑制手段を構成する押さえ部材は、前記台紙レスラベルロールの軸方向移動を規制する部材を支持する軸に取り付けられていることを特徴とする請求項4記載の台紙レスラベルプリンタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−75484(P2013−75484A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−217979(P2011−217979)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(000145068)株式会社寺岡精工 (317)
【Fターム(参考)】