説明

台車搬送システム

【課題】軌道の分岐、合流が可能で、且つシステム全体が止まってしまうような故障が発生しない台車搬送システムを提供する。
【解決手段】前方連結アーム37fによって、外側前方ガイドケース32oと内側前方ガイドケース32iとが、同様に首を振りつつ、後方連結アーム37rによって、外側後方ガイドケース32oと内側後方ガイドケース32iとが、同様に首を振り、循環軌道102から分岐部107で補助旋回軌道103に分岐せずに循環軌道102へ通過する際、および合流部108を循環軌道102から循環軌道102へ通過する際には、内側前方昇降輪35iiと内側後方昇降輪35iiとを上昇位置に移動させ、循環軌道102から分岐部107を通じて補助旋回軌道103に分岐する際、および補助旋回軌道103から合流部108を通じて循環軌道102に合流する際には、外側前方昇降輪35ooと外側後方昇降輪35ooとを上昇位置に移動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軌道上を走行する台車によって荷物を搬送する台車搬送システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、台車搬送システムとして、環状に設定された軌道上を台車が循環し、台車が軌道上のある地点から、別の地点へ荷物を運ぶことが行なわれている。台車が軌道から外れることなく走行するために、軌道に沿って1本のガイドレール(モノレール)が環状に敷設されている。また、台車には、前後方向に沿った一方の側縁の前後2箇所に、ガイドユニットが配置されている。ガイドユニットは、ガイドレールを抱えるように左右から挟み込むように対向配置されたガイド輪を備え、台車の裏面に首振自在に設置されている。また、台車の他方の側縁中央に、キャスター輪が配置されている。
【0003】
そして、台車は、軌道を循環する際に、前後のガイドユニットそれぞれが、ガイドレールの湾曲に併せて回転し、軌道から外れることなく走行することができる。(例えば、特許文献1、2参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3474779号公報
【特許文献2】特許第3239939号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述した従来技術の構成では、上記環状の軌道を主軌道とし、途中で分岐したり、合流する補助軌道を設定し、状況に応じて、選択的に台車が主軌道、または補助軌道を走行する構成とする場合には、軌道の分岐部、および合流部にガイドレールを切替える切替機構を設置しなければならない。このような構成とした場合、切替機構が故障した際には、台車搬送システム全体が止まってしまうおそれがある。
【0006】
そこで本発明は、上記事情を考慮し、軌道の分岐、合流が可能で、且つシステム全体が止まってしまうような故障が発生しない台車搬送システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の発明は、走行軌道上を走行する台車であって、該走行軌道は、環状に設定された循環軌道と、分岐部で該循環軌道から分岐、または合流部で該循環軌道に合流する補助旋回軌道と、該分岐部と該合流部とを除く該循環軌道の内周側に、該循環軌道に沿って設置される内側ガイドレールと、オーバーラップ部と該分岐部と該合流部とにおける該循環軌道の外周側に、該循環軌道に沿って設置される外側ガイドレールと、該補助旋回軌道の内周側に配置され、該補助旋回軌道に沿って該内側ガイドレールと滑らかに連続する補助旋回ガイドレールと、で構成され、該台車は、該台車下面の軌道内周側の前方と後方に配置され、内側首振支軸によって該台車下面に首振自在に設置された内側ガイドユニットと、該台車下面の軌道外周側の前方と後方に配置され、外側首振支軸によって該台車下面に首振自在に設置された外側ガイドユニットと、前方の該外側ガイドユニットと該内側ガイドユニット、および後方の該外側ガイドユニットと該内側ガイドユニットとを、それぞれヒンジ構造を介して連結される連結アームと、で構成され、該内側ガイドユニットは、該内側ガイドレールまたは該補助旋回ガイドレールを内側と外側から挟むように該内側ガイドユニットに対向配置され、該内側ガイドレールまたは該補助旋回ガイドレールの内側に位置する第一の内側ガイド輪と、外側に位置する第二の内側ガイド輪と、該内側ガイドレールと接する高さの下降位置と、該内側ガイドレールを乗越える高さの上昇位置との間で該第一の内側ガイド輪を移動させる内側昇降機構と、を備え、該外側ガイドユニットは、該外側ガイドレールを内側と外側から挟むように該外側ガイドユニットに対向配置され、該外側ガイドレールの外側に位置する第一の外側ガイド輪と、内側に位置する第二の外側ガイド輪と、該外側ガイドレールと接する高さの下降位置と、該外側ガイドレールを乗越える高さの上昇位置との間で、該第一の外側ガイド輪を移動させる外側昇降機構と、を備え、該連結アームによって、前方の該外側ガイドユニットと該内側ガイドユニット、および後方の該外側ガイドユニットと該内側ガイドユニットとが、同様に首を振ることを特徴とする。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1に記載された台車搬送システムであって、前記内側首振支軸を介して、前記台車下面の軌道内周側の前方に内側前方車輪、後方に内側後方車輪が首振自在に設置されたことを特徴とする。
【0009】
請求項3の発明は、請求項2に記載された台車搬送システムであって、前記内側前方車輪と、前記内側後方車輪の少なくともどちらか一方が、駆動源によって駆動されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、分岐部と合流部で、外側前方昇降輪、内側前方昇降輪、外側後方昇降輪、内側後方昇降輪を選択的に昇降させることで、台車の分岐部での分岐、通過、および合流部での合流、通過を選択的に行なうことができる。これにより、前方昇降機構や後方昇降機構が故障した場合であっても、該当する台車のみを交換、修理することができるため、修理のためにシステム全体を止めてしまうことがない。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態に係る台車搬送システムを示す斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る台車搬送システムを示す平面図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る台車を示す平面図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る台車が分岐部を直進する様子を示し、(a)は正面図、(b)は平面図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る台車が分岐部を分岐する様子を示し、(a)は正面図、(b)は平面図である。
【図6】本発明の一実施形態に係るガイドユニットを示す正面図である。
【図7】本発明の一実施形態に係るガイド部のガイド位置状態を示す模式図で、(a)は正面図、(b)は側面図である。
【図8】本発明の一実施形態に係るガイド部の乗越位置状態を示す模式図で、(a)は正面図、(b)は側面図である。
【図9】本発明の一実施形態に係る台車搬送システムの走行軌道を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態を図面を参照して説明する。
【0013】
本実施形態の台車搬送システム1は、工場建屋内等の所定の敷地内に敷設される走行軌道101と、走行軌道101上を走行する複数の台車10と、台車10の運行を制御する制御装置(図示せず)とから構成されている。
【0014】
走行軌道101は、図1、図2に示すように、循環軌道102、補助旋回軌道103、内側ガイドレール104、外側ガイドレール105、補助旋回ガイドレール106を備えている。
【0015】
循環軌道102は、一定の間隔で配置される一対の軌道102i,102oで構成されるとともに、二重の細長い略長円形状の環状に形成され、所定の経路を一方通行で循環するように設定されている。
【0016】
補助旋回軌道103は、循環軌道102と同一の間隔で配置される一対の軌道103i,103oで構成されるとともに、循環軌道102の往路側102aと復路側102bとを繋ぐように、循環軌道102の環内に配置されている。そして、補助旋回軌道103は、循環軌道102の往路側102aから分岐する分岐部107と、循環軌道102の復路側102bに合流する合流部108と、分岐部107と合流部108とを滑らかに繋ぐ円弧状の旋回部110とで構成されている。
【0017】
内側ガイドレール104は、帯状部材からなり、循環軌道102を構成する内側軌道102iの内周側に、分岐部107と合流部108とを除く部位に、循環軌道102に沿って立設されている。
【0018】
外側ガイドレール105は、内側ガイドレール104と同様の帯状部材からなり、循環軌道102を構成する外側軌道102oのオーバーラップ部109、分岐部107、および合流部108の各外側に、循環軌道102に沿って立設されている。すなわち、オーバーラップ部109においては、循環軌道102に沿って外側ガイドレール105と内側ガイドレール104とが立設している。なお、オーバーラップ部109は分岐部107、合流部108と接し、その上流側、および下流側に位置する。
【0019】
補助旋回ガイドレール106は、内側ガイドレール104と同様の帯状部材からなり、補助旋回軌道103を構成する内側旋回軌道103iの内周側に、内側旋回軌道103iに沿って、内側ガイドレール104と滑らかに連続しつつ、設置されている。
【0020】
また、電力供給ライン(図示せず)が、循環軌道102に沿って配置され、循環軌道102上を走行する台車10に、無線電力供給システムによって電力を供給している。
【0021】
台車10は、車体フレーム11、荷台(図示せず)、車輪、およびガイドを備えている。なお、走行軌道101上を走行する複数の台車10は、それぞれが同様の大きさ、および形状で構成されているが、搬送される物品の大きさや形状に応じて、車体フレーム11の大きさや形状を変更することが可能であるとともに、台車10の台数を変更することができる。
【0022】
車体フレーム11は、図1に示すように、矩形状に組まれた枠体からなり、上面の四隅には、架台11aが設けられている。そして、架台11a上に荷台が設置される。
【0023】
荷台は、上面が開口する箱形状を備えており、搬送される物品の大きさや形状に応じた大きさや形状の物に交換が可能となっている。
【0024】
車輪は、図3に示すように、台車下面の3ヶ所に配置されている。1ヶ所目の車輪は、台車10が走行軌道101上に設置された状態で、台車下面の前方、且つ内側軌道102i上、つまり軌道内側前方に位置し、後述する内側前方ガイドユニット31ifとともに、内側前方車輪12fとして配置されている。2ヶ所目の車輪は、台車10が走行軌道101上に設置された状態で、台車下面の後方、且つ内側軌道102i上、つまり軌道内側後方に位置し、後述する内側後方ガイドユニット31irとともに、内側後方車輪12rとして配置されている。3ヶ所目の車輪は、台車10が走行軌道101上に設置された状態で、台車下面の前後方向の中央、且つ外側軌道102o上、つまり軌道外側中央に位置し、外側中央車輪12cとして配置されている。なお、外側中央車輪12cは、台車下面の軌道外側中央に、下方に突設された外側中央旋回支軸14cによって首振自在に、所謂キャスター輪として配置されている。また、外側中央車輪12cは、車輪を支える車軸と外側中央旋回支軸14cとが平行でなく、且つ交差しない、ねじれの位置に位置するように設定されている。
【0025】
ガイドは、台車下面の四隅に配置される内側前方ガイドユニット(内側ガイドユニット)31if、外側前方ガイドユニット(外側ガイドユニット)31of、内側後方ガイドユニット(内側ガイドユニット)31ir、外側後方ガイドユニット(外側ガイドユニット)31orで構成されている。
【0026】
内側前方ガイドユニット(内側ガイドユニット)31ifは、図6〜図8に示すように、内側ガイドケース32iに収容される内側ガイド輪33i、内側昇降機構34i、および車輪(内側前方車輪12f)とで構成されている。
【0027】
内側ガイドケース32iは、下方に開口する箱形状を備えたガイド輪収容室51と、車輪収容室52とを備え、ガイド輪収容室51に内側ガイド輪33iと内側昇降機構34iが配置され、車輪収容室52に車輪(内側前方車輪12f)が配置されている。内側ガイドケース32iは、車輪収容室52の天井壁54を台車下面から下方に突設された内側前方首振支軸(内側首振支軸)14ifによって、首振自在に支持されている。
【0028】
内側ガイド輪33iは、台車10が走行軌道101上に設置された状態で、内側ガイドレール104を内側と外側から挟むように対向配置された2組計4個のガイド輪で構成されている。内側ガイドレール104の内側に配置される2個のガイド輪(内内ガイド輪35ii)は、内側前方昇降輪(第一の内側ガイド輪)として、内側前方昇降機構(内側昇降機構)34iを介して回転自在に支承されている。内側ガイドレール104の外側に配置される2個のガイド輪(内外ガイド輪35io、第二の内側ガイド輪)は、内側ガイドケース32iに鉛直方向に沿って固定された固定側ガイド軸82によって回転自在に支承されている。
【0029】
内側前方昇降機構(内側昇降機構)34iは、昇降カム71、昇降フレーム72、およびガイド輪フレーム73を備えている。また、内側前方昇降機構34iの駆動源である昇降モータ74が、内側ガイドケース32iの内側壁38を挟んでケース外側に配置されている。そして、昇降モータ74の出力軸75が、内側壁38を貫通してガイド輪収容室51内に突出し、昇降カム71に連結されている。なお、昇降モータ74には、内側前方昇降機構34iの昇降制御を行なう制御手段であるエンコーダ91が、一体に配置されている。
【0030】
昇降カム71は、円盤状の部材からなり、円盤の一面側回転中心に昇降モータ74の出力軸75が接続されている。また、円盤の他面側には、回転中心から離れた位置に円柱状のカム突起76が突設されている。
【0031】
昇降フレーム72は、断面長方形形状の角筒形状を備え、ガイド輪収容室51内を昇降可能に配置されている。また、昇降フレーム72は、側壁外面にカム受孔77が形成されている。このカム受孔77には、カム突起76が挿入され、昇降カム71が回転することによって、カム突起76がカム受孔77を移動しつつ、当接し、昇降フレーム72が昇降する。
【0032】
ガイド輪フレーム73は、長方形の枠形状を備え、長辺73bが台車10前後方向に、短辺73aが台車10上下方向に沿うように昇降フレーム72内に配置されている。また、ガイド輪フレーム73は、短辺73aの中央部が、昇降フレーム72に揺動軸78を介して、軌道幅方向に揺動自在に支持されている。そして、短辺73aの上部には、揺動突起79が、ガイド輪収容室51の内側面に形成されたクランク状の昇降溝80内を移動可能に設けられている。ガイド輪フレーム73の下側長辺73bには、昇降側ガイド軸81を介して、内内ガイド輪35iiが、回動自在に支承されている。
【0033】
内側前方車輪12fは、軌道幅方向に沿って配置される車軸15fを介して、車輪収容室52に収容されている。また、車軸15fには、車輪を駆動する前側走行モータ(駆動源)16の出力軸が歯車等を介して連結されている。前側走行モータ16は、内側ガイドケース32iの外側壁39を挟んでケース外側に配置されている。
【0034】
外側前方ガイドユニット(外側ガイドユニット)31ofは、外側ガイドケース32oに収容される外側ガイド輪33o、外側昇降機構34oとで構成されている。なお、外側前方ガイドユニット31ofは、車輪(内側前方車輪12f)と前側走行モータ16が存在しないことを除き、内側前方ガイドユニット31ifと同一の構成で、昇降モータ74が外側ガイドレール105の外側に位置するように、台車10に配設される。つまり、外側ガイドケース32oは、内側ガイドケース32iに相当し、内側ガイドケース32iと同様に、車輪収容室52の天井壁54を台車下面から下方に突設された外側前方首振支軸(外側首振支軸)14ofによって、首振自在に支持されている。
【0035】
内側ガイド輪33iに相当する外側ガイド輪33oを構成し、外側ガイドレール105の外側に配置される2個のガイド輪(外外ガイド輪35oo)は、外側前方昇降輪(第一の外側ガイド輪)として、内側前方昇降機構34iに相当する外側前方昇降機構(外側昇降機構)34oを介して回転自在に支承される。また、外側ガイド輪33oを構成し、外側ガイドレール105の内側に配置される2個のガイド輪(外内ガイド輪35oi、第二の外側ガイド輪)は、外側ガイドケース32oに鉛直方向に沿って固定された固定側ガイド軸82によって回転自在に支承される。
【0036】
内側前方ガイドユニット31ifと外側前方ガイドユニット31ofとは、図3〜図5に示すように、内側ガイドケース32iの天井部に矩形状に張出された内側フランジ部36iと、外側ガイドケース32oの天井部に矩形状に張出された外側フランジ部36oとを前方連結アーム(連結アーム)37fによって連結されている。前方連結アーム37fと各フランジ部36i,36oとを、ヒンジ構造で連結し、各首振支軸とヒンジ構造までの距離を等間隔に設定することで、内側ガイドケース32iと外側ガイドケース32oが同様の首振り角度で揺動するように構成されている。
【0037】
内側後方ガイドユニット31irと、外側後方ガイドユニット31orは、それぞれが内側前方ガイドユニット31if、外側前方ガイドユニット31ofと同一の構成からなり、後方連結アーム(連結アーム)37rによって連結されている。つまり、内側後方車輪12rは、内側前方車輪12fに相当する。そして、内側後方首振支軸14irは、内側前方首振支軸14ifに相当するとともに、外側後方首振支軸14orは、外側前方首振支軸14ofに相当する。なお、内側前方首振支軸14if、内側後方首振支軸14irは、車輪を首振自在に支持する内側前方旋回支軸、内側後方旋回支軸をそれぞれ兼ねている。さらに、内側ガイドケース32iは、内側前方ガイドケースを構成するとともに、内側後方ガイドケースを構成し、外側ガイドケース32oは、外側前方ガイドケースを構成するとともに、外側後方ガイドケースを構成している。また、内側昇降機構34iは、内側前方昇降機構を構成するとともに、内側後方昇降機構を構成し、外側昇降機構34oは、外側前方昇降機構を構成するとともに、外側後方昇降機構を構成している。したがって、内内ガイド輪35iiは、内側前方昇降輪を構成するとともに、内側後方昇降輪を構成し、外外ガイド輪35ooは、外側前方昇降輪を構成するとともに、外側後方昇降輪を構成している。
【0038】
なお、本実施形態では、内側後方ガイドユニット31irを構成し、車輪(内側後方車輪12r)を駆動する後側走行モータ(駆動源)17は、搬送される物品の重量に応じて、設置する構成としたり(図2参照)、設置しない構成(図3〜図5参照)にできる。そして、内側後方ガイドユニット31irに後側走行モータ17を設置した場合にも、内側前方ガイドユニット31ifの車輪12fと、内側後方ガイドユニット31irの車輪12rの2つの駆動輪が、直列に配置されることになる。これにより、2つの駆動輪が、軌道の同一の走行ライン上を走行するため、同一モデルの走行モータ16,17を同様に作動させるだけで、台車10は内側ガイドレール104に沿って、ガタ付くこと無く滑らかに走行する。
【0039】
これに対して、後側走行モータ17を内側後方ガイドユニット31irには設けずに、外側前方ガイドユニット31ofに車輪と走行モータを設ける場合には、外側ガイドレールを軌道の外側全体に敷設する必要が出てくる。また、軌道の旋回部分では、内側の車輪の走行ラインと外側の車輪の走行ラインとでは、走行する距離が異なるため、台車10の速度に合わせて、内側と外側の走行モータの回転を高い精度で制御する制御手段が必要になる。もし、内側の車輪と外側の車輪の回転を上手く制御できない場合には、台車は内側ガイドレールと外側ガイドレールとにぶつかりながら走行することになり、搬送する物品が破損、故障する原因となるおそれがある。
【0040】
このため、内側の車輪と外側の車輪を駆動輪とした場合には、外側ガイドレールの敷設区間が拡がるとともに、走行モータの制御手段が必要となるために、コストの高騰をもたらすとともに、システムが複雑化することになる。
【0041】
次に、台車10が軌道上を走行する際の動作を説明する。まず、台車10が、本線、または支線上を走行する際には、内側前方ガイドユニット31ifと内側後方ガイドユニット31irの内内ガイド輪35iiが下降したガイド位置に位置し、内側ガイド輪33iが内側ガイドレール104を挟んで対向することで、台車10は内側ガイドレール104に沿って走行する。ここで、外側前方ガイドユニット31ofと外側後方ガイドユニット31orの外外ガイド輪35ooは外側ガイドレール105を乗越え可能な上昇位置に位置している。
【0042】
なお、本線とは循環軌道102上のオーバーラップ部109、分岐部107、合流部108を除いた部分を意味し、支線とは補助旋回軌道103上の分岐部107、合流部108を除いた部分を意味するものとする。
【0043】
次に、図4に示すように、台車10が、本線走行中に分岐部107に差掛かった際に、分岐部107をそのまま通過して、本線を走行する場合を説明する。まず、図2に示すように、台車10は、図の左側旋回部分から時計回りで走行し、分岐部107上流側のオーバーラップ部109に入ったところで、内側前方ガイドユニット31ifと内側後方ガイドユニット31irのエンコーダ91が、分岐部107の手前で、内側ガイドレール104脇に設置されたマーカ(図示せず)を順に検知する。検知されたマーカが「本線から本線へ通過」を指示するものであることをエンコーダ91からの信号によって制御装置(図示せず)が判定すると、外側昇降機構34oの昇降モータ74が駆動し、昇降カム71が半回転する。昇降カム71が半回転することで、カム突起76が上死点から下死点へ移動して、昇降フレーム72を下降させる。昇降フレーム72が下降する際に、ガイド輪フレーム73の揺動突起79が昇降溝80内を移動することで、ガイド輪フレーム73が揺動する。昇降フレーム72が下降しつつ、ガイド輪フレーム73が揺動することで、外外ガイド輪35ooが、軌道幅方向に外側ガイドレール105から近接しつつ、下降し、ガイド位置へ移動する。
【0044】
さらに、図8に示すように、内側昇降機構34iの昇降モータ74が駆動し、昇降カム71が半回転する。昇降カム71が半回転することで、カム突起76が下死点から上死点へ移動して、昇降フレーム72を上昇させる。昇降フレーム72が上昇する際に、ガイド輪フレーム73の揺動突起79が昇降溝80内を移動することで、ガイド輪フレーム73が揺動する。昇降フレーム72が上昇しつつ、ガイド輪フレーム73が揺動することで、内内ガイド輪35iiが、軌道幅方向に内側ガイドレール104から離れつつ、上昇し、内側ガイドレール104を乗越え可能な乗越位置へ移動し、台車10は、外側ガイドレール105に沿って走行する。
【0045】
台車10が前進し、内側ガイド輪33iが内側ガイドレール104を乗越え、分岐部107下流側のオーバーラップ部109に入ったところで、図7に示すように、内側昇降機構34iの昇降モータ74が駆動し、昇降カム71が半回転する。昇降カム71が半回転することで、カム突起76が上死点から下死点へ移動して、昇降フレーム72を下降させる。昇降フレーム72が下降する際に、ガイド輪フレーム73の揺動突起79が昇降溝80内を移動することで、ガイド輪フレーム73が揺動する。昇降フレーム72が下降しつつ、ガイド輪フレーム73が揺動することで、内内ガイド輪35iiが、軌道幅方向に内側ガイドレール104から近接しつつ、下降し、内側ガイドレール104を内外ガイド輪35ioとともに挟むガイド位置へ移動する。
【0046】
さらに、外側昇降機構34oの昇降モータ74が駆動し、昇降カム71が半回転する。昇降カム71が半回転することで、カム突起76が下死点から上死点へ移動して、昇降フレーム72を上昇させる。昇降フレーム72が上昇する際に、ガイド輪フレーム73の揺動突起79が昇降溝80内を移動することで、ガイド輪フレーム73が揺動する。昇降フレーム72が上昇しつつ、ガイド輪フレーム73が揺動することで、外外ガイド輪35ooが、軌道幅方向に外側ガイドレール105から離れつつ、上昇し、外側ガイドレール105を乗越え可能な乗越位置へ移動する。これによって、外側前方ガイドユニット31of、および外側後方ガイドユニット31orによるガイドが終了し、内側前方ガイドユニット31ifと内側後方ガイドユニット31irによるガイドによって、内側ガイドレール104に沿って走行する。
【0047】
次に、図5に示すように、台車10が、本線走行中に分岐部107に差掛かった際に、分岐部107で支線に分岐する場合を説明する。まず、分岐部107上流側のオーバーラップ部109に入ったところで、外側前方ガイドユニット31ofと外側後方ガイドユニット31orのエンコーダ91が、外側ガイドレール105脇に設置されたマーカ(図示せず)を順に検知する。検知されたマーカが「本線から支線へ分岐」を指示するものであることをエンコーダ91からの信号によって制御装置(図示せず)が判定すると、本線走行中はすでに外外ガイド輪35ooは外側ガイドレール105を乗越え可能な乗越え位置にあり、内内ガイド輪35iiと内外ガイド輪35ioは内側ガイドレール104を挟むガイド位置にあるため、そのまま、台車10は、内側ガイド輪33iが、内側ガイドレール104と滑らかに連続する補助旋回ガイドレール106をガイドしつつ、旋回しながら前進する。
【0048】
次に、台車10が、支線走行中に合流部108に差掛かって、本線に合流する場合を説明する。なお、この場合は、図4(b)の進行方向を右から左として、符号を前後入れ替えた状態と同様である。まず、外側前方ガイドユニット31ofと外側後方ガイドユニット31orのエンコーダ91が、合流部108の手前で、支線脇に設置されたマーカ(図示せず)を順に検知する。検知されたマーカが「支線から本線へ合流」を指示するものであることをエンコーダ91からの信号によって制御装置(図示せず)が判定すると、そのまま、台車10は、内側ガイド輪33iが、補助旋回ガイドレール106と滑らかに連続する内側ガイドレール104をガイドしつつ、前進する。
【0049】
次に、台車10が、本線走行中に合流部108に差掛かって、合流部108を通過する場合を説明する。なお、この場合は、図5(b)の進行方向を下から上とし、符号を前後入れ替えた状態と同様である。まず、合流部108上流側のオーバーラップ部109に入ったところで、外側前方ガイドユニット31ofと外側後方ガイドユニット31orのエンコーダ91が、外側ガイドレール105脇に設置されたマーカ(図示せず)を順に検知する。検知されたマーカが「本線から本線へ通過」を指示するものであることをエンコーダ91からの信号によって制御装置(図示せず)が判定すると、上記分岐部107で分岐せずに本線から本線へ通過する場合と同様の手順で、外外ガイド輪35ooが下降し、ガイド位置へ移動するとともに、内内ガイド輪35iiが乗越位置へ上昇し、外側ガイドレール105に沿って前進しながら、内内ガイド輪35iiが内側ガイド輪33iを乗越える。そして、内内ガイド輪35iiは、内側ガイド輪33iを乗越えたところで、下降し、ガイド位置へ移動する。一方、外外ガイド輪35ooは乗越位置へ上昇する。
【0050】
なお、本実施形態の台車搬送システム1では、図9に示すように、補助旋回軌道だけではなく、循環軌道102からなる本線から枝分かれする様々な経路の支線を設定することができる。そして、循環軌道102内に配置された枝状の支線は、台車10の操車場として使用することも可能である。また、本実施形態では、台車10が前進する場合、後進する場合で台車10や走行軌道101の構成を変更する必要がなく、走行モータ16,17の正転、逆転を切替えるのみで進行方向を変えることができる。
【0051】
上記構成の台車搬送システム1によれば、内側前方ガイドケース32iと、外側前方ガイドケース32oのそれぞれに、ヒンジ構造を介して前方連結アーム37fが連結されつつ、内側後方ガイドケース32iと、外側後方ガイドケース32oのそれぞれに、ヒンジ構造を介して後方連結アーム37rが連結され、分岐部107と合流部108で、内側前方昇降輪35ii、外側前方昇降輪35oo、内側後方昇降輪35ii、外側後方昇降輪35ooをそれぞれ選択的に昇降させることで、台車10の分岐部107での分岐、通過、および合流部108での合流、通過を選択的に行なうことができる。これにより、昇降機構34i,34oが故障した場合であっても、該当する台車10のみを交換、修理することができるため、修理のために搬送システム全体を止めてしまうことがない。
【0052】
また、補助旋回軌道103を用いて循環軌道102をショートカットすることで、搬送効率を向上することができるとともに、消費電力を減らせるため、運用コストを削減することができる。
【0053】
内側前方首振支軸が内側前方旋回支軸を兼ねつつ、内側前方車輪が内側前方ガイドケースに設置され、内側後方首振支軸が内側後方旋回支軸を兼ねつつ、内側後方車輪が内側後方ガイドケースに設置される構成としたことで、台車10の構成が簡素化され、コストを低減することができる。
【0054】
内側前方車輪12fと、内側後方車輪12rを駆動輪とすることで、駆動輪が直列に配置される。これにより、2つの駆動輪が、同一の走行ライン上を走行するため、旋回部分でも駆動輪に対して特別な制御を行なうことなく、台車10は内側ガイドレール104に沿って、ガタ付くこと無く滑らかに走行する。したがって、搬送システムを複雑にしたり、コストの高騰をもたらすことなく、単純な構成で重量物を搬送することができる。
【0055】
なお、本実施形態では、走行軌道101のオーバーラップ部109、分岐部107、合流部108にのみ、外側ガイドレール105が配置されているが、搬送される物品が重量物である場合や、旋回部分での台車10の走行速度が高くなる場合などでは、本線や支線の旋回部分にも外側ガイドレール105を設置して、内側ガイドレール104に掛かる荷重を外側ガイドレール105に分散させる構成としても良い。
【0056】
また、本実施形態では、外側ガイドレール105がある場合のみ、外外ガイド輪35ooを下降したガイド位置に移動し、それ以外の場合は外外ガイド輪35ooが外側ガイドレール105を乗越え可能な乗越位置に位置するようにしている。これを外外ガイド輪35ooが外側ガイドレール105を乗越える必要がある場合のみ、乗越え可能な乗越位置に移動し、それ以外の場合は下降したガイド位置に位置するようにしても良い。
【0057】
さらに、本実施形態では、走行軌道101は循環軌道102、補助旋回軌道103、内側ガイドレール104、外側ガイドレール105、および補助旋回ガイドレール106によって構成されるが、台車10が軌道上でなくても平面を走行可能であれば、循環軌道102、補助旋回軌道103をなくして、各々のガイドレールのみとしてもよい。
【0058】
マーカーの切替えは、作業員が手作業で交換する構成としたり、制御手段を別途設け、自動的に切替える構成としても良い。なお、制御手段を別途設けた場合には、台車毎に走行する経路を変えることも可能である。
【符号の説明】
【0059】
1…台車搬送システム
10…台車
12f…内側前方車輪
12r…内側後方車輪
14c…外側中央旋回支軸
14if…内側前方首振支軸、内側前方旋回支軸(内側首振支軸)
14ir…内側後方首振支軸、内側後方旋回支軸(内側首振支軸)
14of…外側前方首振支軸(外側首振支軸)
14or…外側後方首振支軸(外側首振支軸)
16…前側走行モータ(駆動源)
17…後側走行モータ(駆動源)
31if…内側前方ガイドユニット(内側ガイドユニット)
31ir…内側後方ガイドユニット(内側ガイドユニット)
31of…外側前方ガイドユニット(外側ガイドユニット)
31or…外側後方ガイドユニット(外側ガイドユニット)
33i…内側前方ガイド輪、内側後方ガイド輪(内側ガイド輪)
33o…外側前方ガイド輪、外側後方ガイド輪(外側ガイド輪)
34i…内側前方昇降機構、内側後方昇降機構(内側昇降機構)
34o…外側前方昇降機構、外側後方昇降機構(外側昇降機構)
35ii…内側前方昇降輪、内側後方昇降輪(第一の内側ガイド昇降輪)
35oo…外側前方昇降輪、外側後方昇降輪(第一の外側ガイド昇降輪)
37f…前方連結アーム(連結アーム)
37r…後方連結アーム(連結アーム)
101…走行軌道
102…循環軌道
103…補助旋回軌道
104…内側ガイドレール
105…外側ガイドレール
106…補助旋回ガイドレール
107…分岐部
108…合流部
109…オーバーラップ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行軌道上を走行する台車であって、
該走行軌道は、
環状に設定された循環軌道と、
分岐部で該循環軌道から分岐、または合流部で該循環軌道に合流する補助旋回軌道と、
該分岐部と該合流部とを除く該循環軌道の内周側に、該循環軌道に沿って設置される内側ガイドレールと、
オーバーラップ部と該分岐部と該合流部とにおける該循環軌道の外周側に、該循環軌道に沿って設置される外側ガイドレールと、
該補助旋回軌道の内周側に配置され、該補助旋回軌道に沿って該内側ガイドレールと滑らかに連続する補助旋回ガイドレールと、
で構成され、
該台車は、
該台車下面の軌道内周側の前方と後方に配置され、内側首振支軸によって該台車下面に首振自在に設置された内側ガイドユニットと、
該台車下面の軌道外周側の前方と後方に配置され、外側首振支軸によって該台車下面に首振自在に設置された外側ガイドユニットと、
前方の該外側ガイドユニットと該内側ガイドユニット、および後方の該外側ガイドユニットと該内側ガイドユニットとを、それぞれヒンジ構造を介して連結される連結アームと、
で構成され、
該内側ガイドユニットは、
該内側ガイドレールまたは該補助旋回ガイドレールを内側と外側から挟むように該内側ガイドユニットに対向配置され、該内側ガイドレールまたは該補助旋回ガイドレールの内側に位置する第一のた内側ガイド輪と、外側に位置する第二の内側ガイド輪と、
該内側ガイドレールまたは該補助旋回ガイドレールと接する高さの下降位置と、該内側ガイドレールまたは該補助旋回ガイドレールを乗越える高さの上昇位置との間で、該第一の内側ガイド輪を移動させる内側昇降機構と、
を備え、
該外側ガイドユニットは、
該外側ガイドレールを内側と外側から挟むように該外側ガイドユニットに対向配置され、該外側ガイドレールの外側に位置する第一の外側ガイド輪と、内側に位置する第二の外側ガイド輪と、
該外側ガイドレールと接する高さの下降位置と、該外側ガイドレールを乗越える高さの上昇位置との間で、該第一の外側ガイド輪を移動させる外側昇降機構と、
を備え、
該連結アームによって、前方の該外側ガイドユニットと該内側ガイドユニット、および後方の該外側ガイドユニットと該内側ガイドユニットとが、同様に首を振ることを特徴とする台車搬送システム。
【請求項2】
請求項1に記載された台車搬送システムであって、
前記内側首振支軸を介して、前記台車下面の軌道内周側の前方に内側前方車輪、後方に内側後方車輪が首振自在に設置されたことを特徴とする台車搬送システム。
【請求項3】
請求項2に記載された台車搬送システムであって、
前記内側前方車輪と、前記内側後方車輪の少なくともどちらか一方が、駆動源によって駆動されることを特徴とする台車搬送システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−99990(P2013−99990A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−244184(P2011−244184)
【出願日】平成23年11月8日(2011.11.8)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)