説明

台車

【課題】 例えば軽量ワークなどを搭載した台車をコンベアに同期して走行させ、また、台車を任意の場所に簡単に移動させることができるようにする。
【解決手段】 台車1の駆動輪2が取り付けられる駆動軸3に駆動スプロケット5を設け、この駆動軸3とは別個の主軸6に、大径スプロケット7を設けて駆動スプロケット5と大径スプロケット7間にチェーン8を巻き掛ける。また、主軸6に、大径スプロケット7とは別個の小スプロケット11を一体に設け、この小スプロケット11に、錘17が下降することで小スプロケット11を回転させることのできるチェーン16を巻き掛け、台車1を手押し等で後退させると、錘17が巻き上げられ、その後、錘17が自重で降下すると駆動輪2が正回転するようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばコンベアなどで搬送されるワークに組付部品などを組み付けるための組付け用ボルト等を搭載してコンベアと同期して所定距離だけ走行する台車に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コンベア上を低速で搬送される車体などにボルト等で小物部品を組み付ける際、ラインサイドに一定間隔をおいて配置される部品棚や容器などにボルト等を準備しておき、作業者は必要な本数のボルト等を取り出して所持しておき、組付作業を行っている。
しかしながら、このような定置式の棚や容器からボルト等を取り出して作業する方法にあっては、例えば、取り出したボルト等の本数が少なかったり、ボルト等が不良品であったような場合に、再度、棚や容器の場所まで作業者が戻って取りに行かなければならず、比較的早いサイクルタイムで行われるような作業においては非常に厳しいものとなっていた。
【0003】
一方、搬送ラインに沿って走行する台車として、台車に搭載されるワークの荷重を利用して、台車を前進させる力に変換し、台車の前進により蓄えたエネルギーを、台車を後進させる力に変換するような技術(例えば、特許文献1参照。)も知られており、このような台車を、例えば、コンベアと同期して走行させるようにし、台車にボルト等を搭載しておけば、車体の組付作業等において、作業者がボルト等を取りに戻る必要がなくなるため便利であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−331052号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、前記特許文献1の場合、台車に搭載するワークがボルト等のように軽量である場合、前進エネルギーとして有効に活用することが難しく、またワークの重量を利用して台車を動作させるため、機構が複雑化するとともに、台車が大型化するという問題があった。また、同技術では、台車を任意の場所に移動させようとする場合には、搬送手段等を用いて搬送しなければならず、種々の使用状況への対応が難しかった。
【0006】
そこで本発明は、台車に搭載するワークの重量に頼ることなく走行させることができ、台車を任意の場所に簡単に移動できるようにするとともに、コンベアの搬送速度と同期をとり易い簡素な台車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため本発明は、台車の駆動輪が取り付けられる駆動軸に駆動スプロケットを設け、この駆動軸とは別個の主軸に、駆動スプロケットより大径の大径スプロケットを設けるとともに、駆動スプロケットと大径スプロケット間にチェーンを巻き掛け、前記主軸の回転を駆動スプロケットを介して駆動輪に伝達するようにした台車において、前記主軸に、前記大径スプロケットとは別個のスプロケットを一体に設け、このスプロケットに、錘が下降することで該スプロケットを回転させることのできるチェーンを巻き掛け、このチェーンの所定箇所に、主軸の回転を制動するためのパッド部材を取り付け、所定のタイミングでこのパッド部材がブレーキ機構のシュウ部材に摺接するようにした。
【0008】
そして、例えば台車をコンベア搬路の進路方向とは逆方向に後退させるときは、作業者が手押しにて後退させ、この後退によって駆動スプロケット、大径スプロケットを介して主軸を逆回転させ、錘を上昇させるとともに、台車の位置がコンベア側方の組付作業開始の位置になるようにしておけば、作業者がコンベア上を搬送される車体などに小物部品を組み付ける際、台車は錘の降下によってコンベア上の車体と同期して前進するようになる。そして、例えば、組付作業が終了する位置でパッド部材とシュウ部材が摺接してブレーキがかけられ、台車の走行が停止するようにしておく。
そして、このような台車の後退と前進の繰り返しによって、常に台車をコンベアで搬送される車体の近傍に位置させることができる。
【0009】
この際、錘の降下エネルギーを主軸の回転に変換するための機構を、スプロケットとチェーンから構成するとともに、主軸の回転を駆動輪に伝達するための機構も、スプロケットとチェーンから構成することで構成が簡素となる。この際、台車の走行距離は、錘の降下ストロークや、大径スプロケットと駆動スプロケットの外径比で決定され、また、台車の走行速度は、錘の重量で調整することが可能である。
【0010】
また本発明では、前記ブレーキ機構に、強制的にシュウ部材とパッド部材を摺接させて主軸の回転を制動するためのレバーを設けるようにした。
このようなレバーを設けることにより、例えば緊急時等において、台車の走行を強制的に停止させることができる。
【0011】
また本発明では、前記主軸に、前記大径スプロケットの回転を主軸に伝達したり、遮断したりするためのクラッチ機構を設けるようにした。
これは、例えば、台車を別の任意の場所に移動させるような場合に、クラッチ機構によって駆動輪の回転が主軸に伝達されないようにしておけば、手押し等によって台車を走行させても、錘は上下に移動することなく、台車を任意の場所に移動させることができるようになる。また移動距離に関係なく自由に台車としても利用できるため便利である。
【0012】
また本発明では、前記錘を、台車の移動速度や移動距離を変更可能にするため複数に分割するようにした。
そして錘の重量を調整することで、台車の移動速度や移動距離を調整する。
【発明の効果】
【0013】
駆動軸の駆動スプロケットと、主軸の大径スプロケット間にチェーンを巻き掛け、また、主軸に設けた大径スプロケットとは別個のスプロケットに、錘が下降することで該スプロケットを回転させることのできるチェーンを巻き掛けることで、錘の下降に伴って駆動輪を回転させることができるようになり、コンベアに同期して自動的に走行する台車を簡易に構成することができる。そして、所定のタイミングでパッド部材とシュウ部材を摺接させることで、台車の走行位置を容易に調整することができる。
【0014】
また、ブレーキ機構に、主軸の回転を制動するためのレバーを設ければ、緊急時等において台車の走行を強制的に停止させることができ、また、駆動輪の回転と大径スプロケットの回転を伝達・遮断するためのクラッチ機構を設ければ、台車を任意の場所に移動させるのに便利となり、また、錘を分割することで、台車の移動速度や移動距離を容易に変更できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る台車を側方から見た説明図である。
【図2】同台車を平面方向から見た説明図である。
【図3】同台車を上下方向に縦断して前方から見た説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明に係る台車は、例えば軽量ワークなどを搭載した台車をコンベアに同期して走行させ、また、台車を任意の場所に簡単に移動させることができるようにされており、特に車体組付ラインにおいて、車体に組付部品等を組み付ける際、ボルト等を搭載するのに好適な台車として構成されている。
【0017】
すなわち、図1、図2に示すように、本台車1は、図中右側の車体前方の駆動軸3に取り付けられる駆動輪2と、車体後方の後輪4を備えており、前記駆動軸3には、駆動スプロケット5が取り付けられるとともに、車体後方側の上部には、車幅方向に主軸6が取り付けられ、この主軸6に、駆動スプロケット5より大径の大径スプロケット7が取り付けられている。
【0018】
そして、この駆動スプロケット5と大径スプロケット7間には、チェーン8が噛合巻回されており、このチェーン8の途中には、テンションスプロケット9が噛合している。
【0019】
また、大径スプロケット7が取り付けられる主軸6には、左右一対の小スプロケット11が一体的に取り付けられており、また、前記主軸6の前方の上下には、車幅方向に上軸12と下軸13が設けられ、この上軸12と下軸13には、左右各一対の上スプロケット14と下スプロケット15が取り付けられている。
【0020】
そして、小スプロケット11と上下のスプロケット14、15間には、左右一対のチェーン16が噛合巻回されており、それぞれの上下のスプロケット14、15間のチェーン16には、複数枚の錘17が介装されるとともに、一方側のチェーンの下スプロケット15と小スプロケット11間には、パッド部材18(図1)が介装されている。
【0021】
そして、錘17に対するチェーン16の連結部位は、錘17の前後方向の中間部で且つ幅方向の縁部付近であり、また、錘17の前方側と後方側には、錘17を上下に貫くガイドバー20が幅方向の中間部に設けられ(図1において、後方側のガイドバー20は省略している。)、それぞれの錘17の上部のガイドバー20には、バネ21が巻装されている。
【0022】
また、錘17の下方の車体側には、錘17が下降端付近に近づいたとき、衝撃を吸収するための任意数のダンパ装置22が設けられており、また、錘17を下方端で位置決めするためのストッパ23が設けられている。
なお、錘17は、台車1から部分的に降ろしたりすることで重量を調整できるよう複数に分割して構成されている。
【0023】
前記パッド部材18が連結されるチェーン16の周囲には、ブレーキ機構24(図1)が設けられている。
このブレーキ機構24は、車体側に取り付けられ且つチェーン16を挟んで対向して配設される一対のシュウ部材25a、25bを備えており、このシュウ部材25a、25bは上方が幅狭のハの字状に配置されるとともに、パッド部材18が上昇してくると、パッド部材18が自動的にシュウ部材25a、25bに摺接してチェーン16の回動にブレーキをかけることができるようにされている。
【0024】
また、このブレーキ機構24の一方側のシュウ部材25aは、可動シュウ部材25aとして、他方側の固定された固定シュウ部材25bに向けて揺動可能にされており、不意の事態などにチェーン16の回動を緊急に停止させることができるようにされている。
すなわち、この可動シュウ部材25aは、下端側の揺動軸26によって揺動自在にされるとともに、このシュー部材25aの上部側には、枢支軸27に枢支されるレバー28と一体のカム30が係合しており、このレバー28の後端側を下方に操作すると、可動シュウ部材25aを固定シュウ部材25bに向けて揺動させ、パッド部材18を強制的に挟み込んでその移動を停止させることができるようにされている。
【0025】
なお、可動シュウ部材25aの通常位置の調整は、車体側にバネ31でレバー28を引っ張っておく量を調整するネジ部材32の出し入れ量を調整することで行う。
【0026】
次に、大径スプロケット7の回転を主軸6に伝達したり、遮断したりすることのできるクラッチ機構33について図2に基づき説明する。
【0027】
クラッチ機構33は、大径スプロケット7側と一体の固定クラッチ爪34と、この固定クラッチ爪34に対して主軸6に沿ってスライドすることで係脱自在で且つバネ38によって常時固定クラッチ爪34側に押圧されている可動クラッチ爪35を備えており、この可動クラッチ爪35には、車体側に枢支軸36で枢支され且つ枢支軸36まわりに揺動自在なクラッチレバー37が連結されている。
【0028】
このため、クラッチレバー37を操作して固定クラッチ爪34と可動クラッチ爪35の係合を解くと、大径スプロケット7の回転と主軸6の回転が切り離されるようになり、固定クラッチ爪34と可動クラッチ爪35を係合させると、両者の回転が連動するようにされている。
なお、図3の説明図において、主軸6より下方のクラッチ爪34、35はお互いに離反した状態を示しており、主軸6より上方のクラッチ爪34、35は噛合した状態を表している。
【0029】
以上のような台車1の作用等について説明する。
不図示のコンベアの近傍に配置される台車1を、コンベアの進行方向とは反対側の方向に向けて作業者が手で押して移動させる。このとき、錘17は一番下方に降りきった位置にあるものとする。すると、駆動輪2が床面を回転し、この回転は、駆動スプロケット5や大径スプロケット7を通して主軸6に伝達される。
【0030】
主軸6が回転すると、小スプロケット11も一体に回転し、チェーン16が逆回転して錘17が持上げられる。錘17が上昇端付近まで持上げられると、ガイドバー20に巻装されているバネ21が押し縮められる。なお、このバネ21は、錘17が自重で降下を始める初期の段階で、錘17を確実に押し下げるよう作用する。
【0031】
コンベア上の車体等のワークが搬送されてくると、ワークの搬送に合わせて台車1から手を離すと、台車1はコンベアと同期して自走を開始する。すなわち、錘17が降下し、これにつれて上述とは逆の手順で駆動輪2が回転する。その間、作業者はボルト等を手に持ってコンベア上のワークに組付作業を行うが、ボルト数が足りないような場合でも、ボルト等が不良品であるような場合でも、ボルト等を搭載する台車1は近傍を走行しているため、作業者はすぐ対応することができ効率的に作業が行える。
【0032】
そして、作業端に近づくと、パッド部材18がシュウ部材25a、25bに摺接し始め、台車1の速度が徐々に減速されて最終的に大きな反動力を生じることなく停止する。このため、台車に搭載されるボルト等が飛散するような不具合がない。
なお、この間に緊急な事態等が発生したときは、レバー28を操作することにより、台車1を緊急に停止させることができる。
【0033】
また、台車1を別な位置に移動させたり、移動距離に関係なく自由に台車としての機能を発揮させたい場合には、クラッチ機構33により、主軸6と大径スプロケット7の回転を切り離して行えばよい。
【0034】
また、台車1の移動速度や移動距離等を調整するときは、錘17の重量を変化させて調整する。
以上のような要領により、コンベアに同期して走行する台車を簡素に構成することができる。
【0035】
なお、本発明は以上のような実施形態に限定されるものではない。本発明の特許請求の範囲に記載した事項と実質的に同一の構成を有し、同一の作用効果を奏するものは本発明の技術的範囲に属する。
例えば、台車1への搭載品等は例示である。
【産業上の利用可能性】
【0036】
コンベアに沿ってコンベアの搬送に同期して走行する台車を簡素に構成できるため、例えば車体組立ライン等の台車に適用すれば、今後、広い範囲での普及が期待される。
【符号の説明】
【0037】
1…台車、2…駆動輪、3…駆動軸、5…駆動スプロケット、6…主軸、7…大径スプロケット、8…チェーン、11…小スプロケット、16…チェーン、17…錘、18…パッド部材、24…ブレーキ機構、25a、25b…シュウ部材、33…クラッチ機構。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
台車の駆動輪が取り付けられる駆動軸に駆動スプロケットを設け、この駆動軸とは別個の主軸に、駆動スプロケットより大径の大径スプロケットを設けるとともに、駆動スプロケットと大径スプロケット間にチェーンを巻き掛け、前記主軸の回転を駆動スプロケットを介して駆動輪に伝達するようにした台車であって、前記主軸に、前記大径スプロケットとは別個のスプロケットを一体に設け、このスプロケットに、錘が下降することで該スプロケットを回転させることのできるチェーンを巻き掛け、このチェーンの所定箇所に、主軸の回転を制動するためのパッド部材を取り付け、所定のタイミングでこのパッド部材がブレーキ機構のシュウ部材に摺接するようにしたことを特徴とする台車。
【請求項2】
前記ブレーキ機構には、強制的にシュウ部材とパッド部材を摺接させて主軸の回転を制動するためのレバーが設けられることを特徴とする請求項1に記載の台車。
【請求項3】
前記主軸には、前記大径スプロケットの回転を主軸に伝達したり、遮断したりするためのクラッチ機構が設けられることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の台車。
【請求項4】
前記錘は、台車の移動速度や移動距離を変更可能にするため複数に分割されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の台車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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