説明

各種血清型のブタ連鎖球菌(Streptococcussuis)細菌から防御するためのワクチン

本発明は、雌豚または若雌豚の初乳を摂取することにより子豚を所定の血清型以外の血清型のブタ連鎖球菌(Streptococcus suis)細菌から生ずる障害から防御するための前記した雌豚または若雌豚への投与用ワクチンの製造における所定の血清型のブタ連鎖球菌に対応するブタ連鎖球菌抗原の使用に関する。本発明は、前記ワクチンの製造において使用するためのブタ連鎖球菌抗原にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に異種菌株に対する交差防御により与えられる子豚を複数の血清型のブタ連鎖球菌(Streptococcus suis)細菌から防御するためのワクチンに関する。
【背景技術】
【0002】
ブタ連鎖球菌は豚における接触伝染性疾患の主な病原体の1つである。この病原体は、髄膜炎、関節炎、心のう炎、多発性漿膜炎、敗血症、肺炎及び突然死を含めた各種の臨床症候群を引き起こし得る。ブタ連鎖球菌は、元々ランスフィールド群R、S、R/SまたはTとして定義されているグラム陽性の通性嫌気性球菌である。後に、細胞中にある型特異性夾膜多糖抗原に基づく新しいタイピングシステムが提案された。これにより、35個の血清型を含むシステム(Rasmussen and Andresen,1998,“16S rDNA sequence variations of some Streptococcus suis serotypes”,Int.J.Syst.Bacteriol.,48,1063−1065)が導かれ、これらの血清型のうち血清型2、1、9、7及び1/2が最も主要なものである。豚の群れにおけるブタ連鎖球菌の防除は、通常複数の血清型に対する防御を与えるワクチンがなく、高い特異性及び感度を有する診断テストもないために妨げられている。これらのツールの利用可能性が制限されている原因は多分存在する血清型の数が多いこと、菌株間がビルレンスが変動すること、及びビルレンス及び防御に寄与する要因についての知識がいまだ乏しいことである。
【0003】
Porcilis Strepsuis(登録商標)は、豚を血清型2のブタ連鎖球菌から防御するために認可されているワクチン(Intervet/Schering−Plough Animal Health)である。また、前記製品は初乳を摂取することにより子孫を血清型2から受動的に防御する。しかしながら、前記製品は他の血清型のブタ連鎖球菌に対する防御のためには認可されていない。実際、ブタ連鎖球菌を能動的に防御するワクチンについて一般的に知られているように、他の血清型の細菌に対する交差防御は生じない。このことは、例えば2001年12月6日に発表された“Streptococcus suis infection in pigs:Use of virulence−associated markers in diagnostics and vaccines”と題するHendrikus Jan Wisselinkの博士論文において確認されている。要約(129ページ)には、「ブタ連鎖球菌に起因する疾患を予防するための戦略はワクチンを使用することによる。死滅全細胞ワクチンは同種血清型の菌株でのチャレンジに対しては有意な防御を誘導するようであるが、この防御は多分血清型特異性である。」と述べられている。
【0004】
上記所見は、Smith(US 7,125,548;2006年10月24日公開)の所見と一致している。彼女は、「抗体は血清型特異性であり、しばしば連鎖球菌の群の内の公知の多くの血清型の1つのみに対する防御を付与するであろう。例えば、通常ブタ連鎖球菌の全細胞−細菌調製物または夾膜を多く含む画分に基づく現在市販されているブタ連鎖球菌ワクチンは異種菌株に対して限定された防御しか付与しない」と述べている(US特許の4欄、42−28行目)。最近、血清型2及び1/2のブタ連鎖球菌細菌に対する防御を報告している研究が発表された(2008年1月:Medycyna Weterynaryjna,64巻,1号,p.113−116)。異なる血清型間で予想されるレベルの交差防御があるならば、これらの血清型は免疫学的に非常に密接に関連しているのでこれらの血清型間で交差防御はあるであろう。なお、十分な防御を得るためにワクチンには両方の血清型が含まれていた。英国に基づくRUMA(Responsible Use of Medicines in agriculture Alliance)は2006年11月に豚生産におけるワクチンの使用及び予防接種について発表されたガイドラインを有している。ブタ連鎖球菌に起因する疾患に関して、上記ガイドラインは(19ページに)雌豚に予防接種をすることにより子豚を防御し得ると述べているが、「他の血清型のブタ連鎖球菌に起因する疾患に対する防御は生じそうもない」と述べている。
【0005】
今までに公知のワクチンの欠点は、最も主要な血清型(すなわち、血清型2及び1)及びそれ程でもない血清型(すなわち、血清型9及び7)に対する防御のために防御を与えるべきすべての血清型をワクチン中に存在させなければならないことである。これは、安全性の観点から(より多くの細菌が存在するとしばしばワクチンのLPS含量が増える)、経済性の観点から不利である。ワクチン中に複数の型の細菌が存在することはワクチンバッチが不足する可能性が高くなり、汚染のリスクが高くなることを伴う。従って、ワクチンバッチが販売のために適さないと判明する可能性が増える。従って、本発明の目的は、現在のワクチンのブタ連鎖球菌に対する欠点を解消乃至少なくとも緩和すること、及びブタ連鎖球菌細菌から生ずる障害を防御し(少なくとも臨床症状を軽減させ、好ましくは感染も軽減させ、より好ましくは死亡率のリスクを低下させ)、該防御が複数の血清型の細菌に対するワクチンを得ることである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第7,125,548号明細書
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Int.J.Syst.Bacteriol.,48,1063−1065,1998
【非特許文献2】Hendrikus Jan Wisselink著,“Streptococcus suis infection in pigs:Use of virulence−associated markers in diagnostics and vaccines”博士論文, 2001年12月6日
【非特許文献3】Medycyna Weterynaryjna著,64巻,1号,p.113−116,2008年1月
【発明の概要】
【0008】
この目的を達するために、(従来技術から公知のような固有の同種防御と並んで)雌豚または若雌豚の初乳を摂取することにより子豚を所定の血清型以外の血清型のブタ連鎖球菌細菌から生ずる障害から防御するための前記した雌豚または若雌豚に対する投与用ワクチンの製造において所定の血清型のブタ連鎖球菌細菌に対応するブタ連鎖球菌を使用できることを知見した。出願人は、雌豚または若雌豚にある血清型のブタ連鎖球菌細菌の抗原に基づくワクチンを予防接種すると、子豚が前記した雌豚または若雌豚の初乳を摂取したときこの子豚は別の血清型のブタ連鎖球菌細菌から生ずる障害から防御されることを見つけた。初乳の摂取による受動免疫化の場合ですら所定の血清型のブタ連鎖球菌細菌の抗原を含有するワクチンが別の血清型のブタ連鎖球菌細菌に対する防御を与えないことを具体的に、繰り返し教示している従来技術を考えれば、このことは全く予期せぬことであった。ひとたび雌豚または若雌豚に所定の血清型のブタ連鎖球菌細菌に対する免疫を付与することにより別の血清型の細菌に対する交差防御が与えられ得ることを知れば、本発明の使用に対して多くの実施形態が考えられることに注目されたい。例えば、細菌をワクチン中にそのまま(生弱毒化または死滅されている)入れてもよく、細菌を使用してワクチン中に入れるための細菌の1つ以上の免疫原性成分の抽出物を得てもよく、または細菌を使用してワクチンそれ自体を処方すべく実際の抗原として使用しようとする細菌の組換えサブユニットを得てもよい。これらの実施形態のすべてが用語「ワクチンの製造におけるブタ連鎖球菌抗原の使用」に包含される。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の意味のワクチンは、免疫有効量の(すなわち、野生型微生物のチャレンジの負の作用を少なくとも減らすために標的動物の免疫系を十分に刺激し得る)1つ以上の抗原(例えば、弱毒化または死滅微生物及び/またはそのサブユニット)または他の物質(例えば、生物の代謝産物)を典型的には医薬的に許容され得る担体(例えば、水を含有する液体)と組み合わせて含む(ヒトを含めた)動物に対して適用するのに適した構成であって、動物に投与すると疾患または障害を治療するため、すなわち疾患または障害の予防、回復または治癒を助けるための免疫応答が誘導されることに注目されたい。通常、ワクチンは、基本的に抗原(または、抗原を含有する組成物)を医薬的に許容され得る担体、例えば(場合により緩衝されている)水のような液体担体または凍結乾燥ワクチンを得るべく通常使用されているような固体担体と混合することを含む当業界で公知の方法を用いて製造され得る。場合により、アジュバント、安定化剤、粘度調整剤または他の成分のような他の物質をワクチンの所期使用または所要特性に応じて添加する。予防接種のために、多くの形態、特に(抗原が溶解、乳化または懸濁されている)液体製剤が適当であり、固体製剤、例えばインプラントまたは抗原用固体担体が液体中に懸濁されているような中間形態も適当である。非経口及び経口予防接種、並びに予防接種のための適当な(物理的)形態のワクチンが200年以上にわたり公知である。
【0010】
実施形態において、所定の血清型は血清型1、2、7及び9からなる群から選択され、防御は同一群からの異種血清型の細菌に対して与えられる。これらの血清型のブタ連鎖球菌細菌は最も主要なものであり、よって本発明は4つの最も主要な血清型の細菌に対する防御を得るべく1つの血清型のみのブタ連鎖球菌細菌に対応する抗原を含有するワクチンを処方するオプションを提供する。
【0011】
別の実施形態において、所定の血清型は血清型1及び2からなる群から選択され、防御は血清型1、2、7及び9からなる群からの異種血清型の細菌に対して与えられる。同種防御がなお最も十分なものであると予想される。従って、実際のワクチン中に血清型1及び/または2(この分野で主要である)のブタ連鎖球菌細菌に対応する細菌の抗原を含めることが有利である。こうすると、この分野での十分な防御と製造リスクの低下間でほぼ完全なバランスが得られる。
【0012】
更に別の実施形態において、所定の血清型は血清型2であり、防御は血清型1、7及び9からなる群からの血清型の細菌に対して与えられる。或いは、所定の血清型は血清型1であり、防御は血清型2の細菌に対して与えられる。
【0013】
別の実施形態において、ワクチンはブタ連鎖球菌細菌及び/またはその誘導体の不活化細胞を含む。不活化細胞及び/またはその誘導体を含むワクチンは十分な防御を与えるようである。不活性抗原の利点は安全性である。ブタ連鎖球菌細菌は当業界で公知の方法により、例えば化学的不活化剤(例えば、β−プロピオラクトン、チメロサール(または、別の水銀付与剤)、ホルムアルデヒド等)を使用することにより、物理的方法(例えば、熱、UV光、マイクロ波等)を適用することにより、生物学的方法(例えば、細菌を死滅させるための酵素を用いる方法)を使用することにより、または当業界で一般的に適用されている他の方法により不活化され得る。これらの方法を用いることにより、細菌細胞の一部は細胞との結合を失う恐れがある。特に、これは細胞膜が外膜それ自体または外膜タンパク質のような成分と結合している場合である。こうして、残っている非全死滅細胞は本発明の意味で誘導体と見なされ得る。また、細胞との結合を失った部分も本発明の意味で誘導体と見なされ得る。特に外膜結合成分の場合、これらの成分が標的動物のワクチンに対する有効な免疫学的応答に大きく寄与し得ることは一般的に知られている。よって、これらの成分は多くの場合ワクチン中の単一成分として使用され得る。後者の場合、例えば前記成分を組換え技術により作成することにより、成分を合成することにより、または発酵ブロスから成分を精製することにより前記成分を(実質的に)純粋な形態で得るための各種の当業界で公知の方法を用いることができる。通常、本発明の意味での誘導体は不活化全細胞以外のブタ連鎖球菌細菌の非生成分である。
【0014】
別の実施形態において、雌豚または若雌豚に第1回予防接種をした後、第2回予防接種をし、第1回及び第2回予防接種は雌豚または若雌豚が分娩する前に実施する。この予防接種スキームにより、子豚に最適の防御がもたらされた。好ましい実施形態において、第1回予防接種は分娩予定日の4〜8週前に実施し、第2回予防接種は分娩予定日の1〜4週前に実施する。
【0015】
本発明は、雌豚または若雌豚の初乳を摂取することにより子豚を所定の血清型以外の血清型のブタ連鎖球菌細菌から生ずる障害から防御するための前記した雌豚または若雌豚への投与用ワクチンの製造において使用するための所定の血清型のブタ連鎖球菌細菌に対応するブタ連鎖球菌抗原にも関する。
【0016】
本発明の好ましい実施形態に関する以下の実施例により本発明を説明する。
【実施例】
【0017】
4匹の雌豚(SPF豚、ブタ連鎖球菌感染に典型的な臨床兆候なし)に市販されているワクチンPorcilis Strepsuisを分娩予定日の6〜8週前に(筋肉内,2ml)、4週後に(再び筋肉内,2ml)予防接種をした。このワクチンはオランダ国ボクスメールに所在のIntervet Schering−Plough Animal Healthから入手可能である。ワクチンは血清型2のブタ連鎖球菌細菌のホルムアルデヒドで不活化した全細胞を含み、活性成分がDiluvac Forte(水中油型)アジュバント中に懸濁されている。ワクチンは、標準または100% ワクチン濃度として定義されるOD600が18の5%(w:w)抗原を含有している。また、他の群の4匹の雌豚の各々には以下の実験ワクチンを予防接種した:
血清型1,2,7及び9を含有する100% ワクチン;
50% ワクチン(1,2,7,9);
100% ワクチン(2,7,9);
100% ワクチン(1,7,9);
100% ワクチン(1,2,9);及び
100% ワクチン(1,2,7);
表1を参照されたい。
【0018】
一般的に、ブタ連鎖球菌抗原を含む他のワクチンは、基本的にブタ連鎖球菌(生または不活化、全細胞、抽出物、精製画分またはサブユニット)の適当な抗原を医薬的に許容され得る担体、例えば(場合により緩衝されている)水のような液体担体または凍結乾燥ワクチンを得るべく通常使用されているような固体担体と混合することを含む当業界で公知の方法を用いて製剤化され得る。場合により、他の物質、例えばアジュバント、安定化剤、粘度調整剤または他の成分をワクチンの所期用途または所要特性に応じて添加する。本実施例では、上記した市販されているワクチン及び実験ワクチンを使用した。
【0019】
血清型毎に、4匹の予防接種を受けていない雌豚をネガティブコントロールとして含めた。約3週齢で、各雌豚からの2匹の子豚を実験農場に移した。その後、これらの子豚(治療群毎に全部で8匹の子豚)を血清型1、2、7または9のブタ連鎖球菌でチャレンジした。群治療(チャレンジ群)は表1に記載されているように実施した。チャレンジから7日目(血清型1、7及び9)または14日目(血清型2)に、或いは動物が死亡したりまたは動物の健康上の理由で安楽死させなければならなかった場合にはそれよりも早くに死後検査を実施した。
【0020】
チャレンジ菌株は、血清型1、2、7または9のいずれかブタ連鎖球菌の野外単離物(生菌株)である。チャレンジ培養物はチャレンジ前に新たに作成した。ブタ連鎖球菌をTodd Hewitt寒天プレート上で培養し、37℃で一晩インキュベートした。細菌を5ml/プレートの(0.1%(w:v)システイン含有する)Todd Hewittブロスを用いて収集し、40mlの同一ブロスを接種するために1mlの細菌懸濁液を使用した。OD600が0.1〜0.2に達するまで細菌懸濁液をブロスに添加した。この後、37℃で4〜5時間インキュベートした。次いで、適切なワクチン濃度を得るために培養物を濃縮または希釈した(表1を参照されたい)。チャレンジ材料は使用するまで融解氷上に保持し、2時間以内に使用した。8匹の子豚の群の各々をDevilbisネブライザーを用いてエアゾールボックス中のエアゾールルートにより血清型2でチャレンジした(16匹の子豚につき40mlのチャレンジ培養物)。子豚をエアゾールボックス中に約30分間放置した。8匹の子豚の群の各々を2mlの適切なODを有するチャレンジ培養物を気管内注射することにより血清型1、7または9でチャレンジした。治療群及び用量については表1を参照されたい。チャレンジ血清型毎に、予防接種を受けていないコントロール群を使用した。
【0021】
【表1】

【0022】
チャレンジ後、直腸温、全身状態、運動、神経系及び他の異常を毎日評点した。
【0023】
全身状態に対する評点システムは次の通りであった:
0=正常、
1=余り活動的でない、
2=起き上がることができない、
4=死亡/瀕死。
【0024】
運動系に対する評点システムは次の通りであった:
0=正常、
1=腫れ上がった及び/または痛む関節、
2=足が不自由(片足またはそれ以上の足で跛行)
3=片足で立つことができない。
【0025】
神経系に対する評点システムは次の通りであった:
0=正常な挙動
1=斜頸(首が曲がっている)
2=ふらつく足取り、
3=立っていることができない/痙攣。
【0026】
安楽死させた子豚には人道的エンドポイント決定につながった臨床兆候のカテゴリーについて4という毎日のスコアを自動的に付与した。子豚毎の全臨床スコアはチャレンジから死後検査までの毎日のスコアの合計であった。剖検の間、チャレンジ微生物を再分離するためのスワブサンプルを脳、髄膜、脾、両方の肘関節及び両方の膝関節から採取した。スワブをTodd Hewitt寒天プレート上で画線培養した。プレートを37℃で一晩インキュベートした後、プレート上の典型的なブタ連鎖球菌コロニーの数をカウントした。各プレートから、典型的なコロニーの材料を同定(ブタ連鎖球菌)するためにチェックし、抗ブタ連鎖球菌家兎血清を用いて血清型決定した。ブタ連鎖球菌コロニーの数を次のように再分離スコアに変換した:
0=0のコロニー形成単位(CFU)、
1=1〜10 CFU、
2=11〜100 CFU、
3=101〜1000 CFU、
4=>1000 CFU。
【0027】
結果
別々の研究(チャレンジ血清型につき1つの研究)の結果を表2〜5に示す。
【0028】
【表2】

【0029】
【表3】

【0030】
【表4】

【0031】
【表5】

【0032】
表2は、予防接種を受けた雌豚群のすべてからの子豚についての平均臨床スコア(すなわち、子豚1匹あたりの全臨床スコアの全8匹の豚の平均値、すなわちチャレンジから死後検査までの毎日の臨床スコアの合計)がコントロール動物についての平均臨床スコアよりも低いことを示している。同じことが再分離スコアについても当てはまる。このことは、血清型1を含有していない2つのワクチン(血清型2のみを含有しているPorcilis Strepsuis、並びに血清型2,7及び9を含有している三価ワクチン)が血清型1に対して(少なくとも部分的な)交差防御を誘発することを暗示している。
【0033】
表3は、予防接種を受けた雌豚群のすべてからの子豚についての平均臨床スコアがコントロール動物についての平均臨床スコアよりも低いことを示している。同じことが再分離スコアについても当てはまる。死亡率の結果は、血清型1,2,7及び9を含む100% ワクチン及び血清型1,7及び9を含む100% ワクチンの両方が死亡率を有意に低下させることを示している。このことは、血清型2を含まない(血清型1、7及び9を含有している三価ワクチン)が血清型2に対する部分的交差防御を少なくとも誘発したことを暗示している。血清型1チャレンジ研究の結果と合わせて、このことは血清型1及び2の抗原が相互交差防御を与えることを暗示している。
【0034】
表4は、予防接種を受けた雌豚群のすべてからの子豚についての平均臨床スコアがコントロール動物についての平均臨床スコアよりも低いことを示している。同じことが再分離スコアについても当てはまる。死亡率の結果は、3つのワクチンのいずれもが死亡率を有意に低下させないことを示している。これらの結果を合わせると、血清型7を含まないワクチン(血清型1,2及び9を含有している三価ワクチン)が血清型7に対する(少なくとも部分的な)交差防御を誘発することを暗示している。
【0035】
表5は、予防接種を受けた雌豚群のすべてからの子豚についての平均臨床スコアがコントロール動物についての平均臨床スコアよりも低いことを示している。同じことが再分離スコアについても当てはまるが、三価ワクチンは再分離スコアを有意に低下させなかった。死亡率の結果は、三価ワクチンが予防接種を受けていないコントロール群に比して死亡率を最大に低下させることを示している。これらの結果から、血清型9を含まない2つのワクチン(血清型2のみを含有しているPorcilis Strepsuis及び血清型1、7及び9を含有している三価ワクチン)が血清型9に対する交差防御を誘発することが暗示される。
【0036】
結論
特定の血清型のブタ連鎖球菌細菌の抗原の予防接種を受けた雌豚の初乳を摂取したとき豚は異種チャレンジ(同種チャレンジと並んで)から防御され得ることが判明した。特に、血清型2のブタ連鎖球菌抗原の予防接種を受けた雌豚の初乳を摂取したとき豚は血清型1、7または9のブタ連鎖球菌細菌でのチャレンジから防御されることが判明した。防御が血清型1、2、7及び9からなる群で立証されたチャレンジ血清型とは無関係に立証された事実及び同じ群内での交差防御が異なる血清型の細菌の予防接種を受けたときに得られるという事実を考えれば、豚が特定の血清型のブタ連鎖球菌の予防接種を受けた雌豚の初乳を摂取したときに、特に同一群からの異種血清型のブタ連鎖球菌細菌に対する防御を得るためにワクチンが血清型1、2、7及び9のいずれかに属する細菌からなる群に属するブタ連鎖球菌細菌の抗原を含有しているときに、豚の異種チャレンジに対する一般的な交差防御があることが理解される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
雌豚または若雌豚の初乳を子豚が摂取することによる所定の血清型以外の血清型のブタ連鎖球菌(Streptococcus suis)細菌から生ずる障害から子豚を防御するための前記した雌豚または若雌豚への投与用ワクチンの製造における所定の血清型のブタ連鎖球菌細菌に対応するブタ連鎖球菌抗原の使用。
【請求項2】
所定の血清型は血清型1、2、7及び9からなる群から選択され、同一群からの異種血清型の細菌に対する防御を提供することを特徴とする請求項1に記載の使用。
【請求項3】
所定の血清型は血清型1及び2からなる群から選択され、血清型1、2、7及び9からなる群からの異種血清型の細菌に対する防御を提供することを特徴とする請求項1または2に記載の使用。
【請求項4】
所定の血清型は血清型2であり、血清型1、7及び9からなる群からの血清型の細菌に対する防御を提供することを特徴とする請求項1、2または3のいずれかに記載の使用。
【請求項5】
ワクチンはブタ連鎖球菌細菌及び/またはその誘導体の不活化細胞を含む請求項1〜4のいずれかに記載の使用。
【請求項6】
雌豚または若雌豚に第1回予防接種後第2回予防接種を実施し、第1回及び第2回予防接種を雌豚または若雌豚が分娩する前に実施することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の使用。
【請求項7】
第1回予防接種を分娩予定日の6〜8週前に実施し、第2回予防接種を分娩予定日の2〜4週前に実施することを特徴とする請求項6に記載の使用。
【請求項8】
雌豚または若雌豚の初乳を子豚が摂取することによる所定の血清型以外の血清型のブタ連鎖球菌細菌から生ずる障害から子豚を防御するための前記した雌豚または若雌豚への投与用ワクチンの製造において使用するための所定の血清型のブタ連鎖球菌細菌に対応するブタ連鎖球菌抗原。

【公表番号】特表2012−521391(P2012−521391A)
【公表日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−501306(P2012−501306)
【出願日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際出願番号】PCT/EP2010/053887
【国際公開番号】WO2010/108977
【国際公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(506196247)インターベツト・インターナシヨナル・ベー・ベー (85)
【Fターム(参考)】