説明

合わせガラス及び合わせガラスの取り付け方法

【課題】遮熱性が高く、更に耐候性に優れているので高い可視光線透過率を長期間に渡り維持できる合わせガラスを提供する。
【解決手段】本発明に係る合わせガラス1は、中間膜2と、中間膜2の第1の表面2a側に配置された第1の合わせガラス構成部材21と、中間膜2の第1の表面2a側とは反対の第2の表面2b側に配置された第2の合わせガラス構成部材22とを備える。中間膜2は、熱可塑性樹脂と酸化タングステン粒子とを含む。第1の合わせガラス構成部材21は、熱線吸収板ガラスである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車及び建築物などに用いられる合わせガラスに関し、より詳細には、遮熱粒子を含む中間膜を備えており、遮熱性に優れている合わせガラス、並びに該合わせガラスの取り付け方法に関する。
【背景技術】
【0002】
合わせガラスは、外部衝撃を受けて破損してもガラスの破片の飛散量が少なく、安全性に優れている。このため、上記合わせガラスは、自動車、鉄道車両、航空機、船舶及び建築物等に広く使用されている。上記合わせガラスは、一対のガラス板の間に合わせガラス用中間膜を挟み込むことにより、製造されている。このような車両及び建築物の開口部に用いられる合わせガラスには、高い遮熱性が求められる。
【0003】
可視光よりも長い波長780nm以上の赤外線は、紫外線と比較して、エネルギー量が小さい。しかしながら、赤外線は熱的作用が大きく、赤外線が物質に吸収されると熱として放出される。このため、赤外線は一般に熱線と呼ばれている。従って、合わせガラスの遮熱性を高めるためには、赤外線を十分に遮断する必要がある。
【0004】
上記赤外線(熱線)を効果的に遮断するために、下記の特許文献1には、錫ドープ酸化インジウム粒子(ITO粒子)又はアンチモンドープ酸化錫粒子(ATO粒子)を含む中間膜が開示されている。下記の特許文献2には、酸化タングステン粒子を含む中間膜が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】WO2001/025162A1
【特許文献2】WO2005/087680A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ITO粒子、ATO粒子又は酸化タングステン粒子などの遮熱粒子を含む中間膜を用いた合わせガラスには、高い遮熱性と高い可視光線透過率(Visible Transmittance)とを両立することが求められる。すなわち、合わせガラスでは、上記可視光線透過率を高く維持したままで、遮熱性を高くする必要がある。さらに、高い可視光線透過率が長期間に渡り維持されることが要求されている。
【0007】
しかし、特許文献1,2に記載のような従来の合わせガラスでは、高い遮熱性と高い可視光線透過率とを両立できないことがある。さらに、合わせガラスを使用している間に、可視光線透過率が低下することがある。特に、酸化タングステン粒子を含む中間膜を用いた合わせガラスが長期間使用されると、可視光線透過率が大きく低下しやすいという問題がある。
【0008】
本発明の目的は、遮熱性が高く、更に耐候性に優れているので高い可視光線透過率を長期間に渡り維持できる合わせガラス、並びに該合わせガラスの取り付け方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の広い局面によれば、中間膜と、該中間膜の第1の表面側に配置された第1の合わせガラス構成部材と、上記中間膜の第1の表面側とは反対の第2の表面側に配置された第2の合わせガラス構成部材とを備え、上記中間膜が、熱可塑性樹脂と酸化タングステン粒子とを含み、上記第1の合わせガラス構成部材が、熱線吸収板ガラスである、合わせガラスが提供される。
【0010】
本発明に係る合わせガラスのある特定の局面では、上記第2の合わせガラス構成部材は、熱線吸収板ガラスである。
【0011】
本発明に係る合わせガラスの他の特定の局面では、上記酸化タングステン粒子は、セシウムドープ酸化タングステン粒子である。
【0012】
本発明に係る合わせガラスのさらに他の特定の局面では、上記熱可塑性樹脂は、ポリビニルアセタール樹脂である。
【0013】
本発明に係る合わせガラスの別の特定の局面では、上記中間膜は、可塑剤をさらに含む。
【0014】
本発明に係る合わせガラスの他の特定の局面では、上記第1の合わせガラス構成部材は、上記中間膜の上記第1の表面に積層されている。
【0015】
本発明に係る合わせガラスのさらに他の特定の局面では、上記第2の合わせガラス構成部材は、上記中間膜の上記第2の表面に積層されている。
【0016】
また、本発明の広い局面によれば、本発明に従って構成された合わせガラスを、建築物又は車両において外部空間と該外部空間から熱線が入射される内部空間との間の開口部に取り付ける方法であって、上記第1の合わせガラス構成部材が、上記外部空間側に位置するように、かつ上記第2の合わせガラス構成部材が、上記内部空間側に位置するように、上記合わせガラスを開口部に取り付ける、合わせガラスの取り付け方法が提供される。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る合わせガラスは、熱可塑性樹脂と酸化タングステン粒子とを含む中間膜が第1,第2の合わせガラス構成部材の間に配置されており、しかも第1の合わせガラス構成部材が熱線吸収板ガラスであるので、遮熱性を高めることができる。しかも、特定の上記第1の合わせガラス構成部材によって合わせガラスの耐候性が高くなり、高い可視光線透過率を長期間に渡り維持できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係る合わせガラスを示す部分切欠断面図である。
【図2】図2は、本発明の他の実施形態に係る合わせガラスを示す部分切欠断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しつつ、本発明の具体的な実施形態及び実施例を説明することにより本発明を明らかにする。
【0020】
図1に、本発明の一実施形態に係る合わせガラスを部分切欠断面図で示す。
【0021】
図1に示す合わせガラス1は、中間膜2と、中間膜2の第1の表面2a側に配置された第1の合わせガラス構成部材21と、中間膜2の第1の表面2a側とは反対の第2の表面2b側に配置された第2の合わせガラス構成部材22とを備える。第1の合わせガラス構成部材21は、中間膜2の第1の表面2aに積層されている。第2の合わせガラス構成部材22は、中間膜2の第2の表面2bに積層されている。中間膜2は、第1の合わせガラス構成部材21と第2の合わせガラス構成部材22との間に配置されている。中間膜2は、第1,第2の合わせガラス構成部材21,22の間に挟み込まれている。従って、合わせガラス1は、第1の合わせガラス構成部材21と中間膜2と第2の合わせガラス構成部材22とがこの順で積層された多層構造を有する。
【0022】
なお、中間膜2と第1の合わせガラス構成部材21との間、及び中間膜2と第2の合わせガラス構成部材22との間にはそれぞれ、他の層が配置されていてもよい。第1の合わせガラス構成部材21と中間膜2とは直接積層されていることが好ましく、中間膜2と第2の合わせガラス構成部材22とは直接積層されていることが好ましい。上記他の層は、中間膜であってもよい。上記他の層としては、ポリビニルアセタール樹脂などの熱可塑性樹脂を含む層、並びにポリエチレンテレフタレートなどを含む層等が挙げられる。
【0023】
中間膜2は、熱可塑性樹脂と酸化タングステン粒子とを含む。中間膜2は、合わせガラス用中間膜である。
【0024】
本実施形態では、第1の合わせガラス構成部材21として、熱線吸収板ガラスが用いられる。第2の合わせガラス構成部材22も、熱線吸収板ガラスであることが好ましい。
【0025】
従来、中間膜を用いた合わせガラスの遮熱性が低いことがあり、日射透過率が高いことがあった。さらに、従来の合わせガラスでは、低い日射透過率と高い可視光線透過率(Visible Transmittance)とを両立することは困難であるという問題があった。
【0026】
合わせガラスの遮熱性及び可視光線透過率を充分に高めるために、本実施形態の主な特徴の1つは、中間膜2が、熱可塑性樹脂と酸化タングステン粒子とを含むことである。特に、酸化タングステン粒子は、合わせガラスの遮熱性を効果的に高める。さらに、熱可塑性樹脂と酸化タングステン粒子とを含む中間膜2の使用により、遮熱性の指標である日射透過率が低い合わせガラスを得ることができ、更に可視光線透過率が高い合わせガラスを得ることができる。例えば、合わせガラスの波長300〜2500nmでの日射透過率(Ts2500)を65%以下にし、かつ可視光線透過率を65%以上にすることができる。さらに、日射透過率(Ts2500)を50%以下にすることもでき、更に可視光線透過率を70%以上にすることができる。
【0027】
さらに、本発明者らが検討した結果、熱可塑性樹脂と酸化タングステン粒子とを用いて、合わせガラスを作製しただけでは、合わせガラスが長期間使用されたときに、可視光線透過率が低下することがわかった。そこで、本発明者らが更に検討した結果、高い可視光線透過率を長期間維持することが可能な合わせガラスの構成も見出した。
【0028】
本実施形態の他の主な特徴は、熱可塑性樹脂と酸化タングステン粒子とを含む中間膜2の第1の表面2a側に配置されている第1の合わせガラス構成部材21として、熱線吸収板ガラスを用いることである。これによって、第1の合わせガラス構成部材21側から中間膜2に入射する光線の内、熱線が効果的に遮断される。すなわち、第1の合わせガラス構成部材21により、熱線が吸収される。このため、中間膜2に至る熱線の量を効果的に低減できる。従って、中間膜2に含まれている酸化タングステン粒子の化学変化等に伴う遮熱性の低下を抑制できると考えられる。結果として、合わせガラス1の耐候性が高くなり、優れた可視光線透過率を長期間にわたり維持できる。
【0029】
自動車又は建築物の開口部に、合わせガラス1を取り付ける際には、第1の合わせガラス構成部材21が、合わせガラス1に熱線が入射する側となるように、合わせガラス1を取り付ければよい。これによって、第1の合わせガラス構成部材21によって、熱線が吸収され、中間膜2に至る熱線の量を効果的に低減できる。この場合に、第2の合わせガラス構成部材22側から中間膜2に光線を入射しないようにすることが可能であることなどから、第2の合わせガラス構成部材22として、熱線吸収板ガラスは必ずしも用いられなくてもよい。
【0030】
図2に、本発明の他の実施形態に係る合わせガラスを部分切欠正面断面図で示す。
【0031】
図2に示す合わせガラス11は、多層中間膜12と、第1,第2の合わせガラス構成部材21,22とを備える。多層中間膜12は、中間膜13、中間膜14及び中間膜15の3つの中間膜がこの順で積層された構造を有する。中間膜14は、遮熱層であり、熱可塑性樹脂と酸化タングステン粒子とを含む。中間膜13,15は、保護層であり、上述の他の層(他の中間膜)である。中間膜13,15として、熱可塑性樹脂と酸化タングステン粒子とを含む中間膜を用いてもよい。中間膜13が熱可塑性樹脂と酸化タングステン粒子とを含む中間膜であり、中間膜14,15が上述の他の層であってもよい。中間膜15が熱可塑性樹脂と酸化タングステン粒子とを含む中間膜であり、中間膜13,14が上述の他の層であってもよい。中間膜13〜15は、合わせガラス用中間膜である。
【0032】
多層中間膜12は、第1,第2の合わせガラス構成部材21,22の間に挟み込まれている。中間膜13の外側の表面13aに第1の合わせガラス構成部材21が積層されている。中間膜15の外側の表面15aに第2の合わせガラス構成部材22が積層されている。
【0033】
図2に示す合わせガラス11でも、中間膜13が熱可塑性樹脂と酸化タングステン粒子とを含むので、遮熱性が充分に高くなる。さらに、熱線吸収板ガラスである第1の合わせガラス構成部材21が用いられているので、合わせガラス11の耐候性が高くなり、高い可視光線透過率を長期間に渡り維持できる。
【0034】
以下、先ず、本発明に係る合わせガラスにおける中間膜を構成する材料の詳細を説明する。以下の説明では、熱可塑性樹脂と酸化タングステン粒子とを含む中間膜を、中間膜Aと略記することがある。
【0035】
(熱可塑性樹脂)
中間膜Aに含まれている熱可塑性樹脂は特に限定されない。熱可塑性樹脂として、従来公知の熱可塑性樹脂を用いることができる。熱可塑性樹脂は1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0036】
上記熱可塑性樹脂としては、ポリビニルアセタール樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、エチレン−アクリル共重合体樹脂、ポリウレタン樹脂及びポリビニルアルコール樹脂等が挙げられる。これら以外の熱可塑性樹脂を用いてもよい。
【0037】
上記熱可塑性樹脂は、ポリビニルアセタール樹脂であることが好ましい。ポリビニルアセタール樹脂と可塑剤との併用により、合わせガラス構成部材又は他の層(他の中間膜)に対する中間膜Aの接着力をより一層高くすることができる。
【0038】
上記ポリビニルアセタール樹脂は、例えば、ポリビニルアルコールをアルデヒドによりアセタール化することにより製造できる。上記ポリビニルアルコールは、例えば、ポリ酢酸ビニルをけん化することにより製造できる。上記ポリビニルアルコールのけん化度は、一般に70〜99.9モル%の範囲内である。
【0039】
上記ポリビニルアルコールの平均重合度は、好ましくは200以上、より好ましくは500以上、好ましくは3000以下、より好ましくは2500以下である。上記平均重合度が上記下限以上であると、合わせガラスの耐貫通性がより一層高くなる。上記平均重合度が上記上限以下であると、中間膜Aの成形が容易になる。
【0040】
上記ポリビニルアセタール樹脂に含まれているアセタール基の炭素数は特に限定されない。上記ポリビニルアセタール樹脂を製造する際に用いるアルデヒドは特に限定されない。上記ポリビニルアセタール樹脂におけるアセタール基の炭素数は3又は4であることが好ましい。上記ポリビニルアセタール樹脂におけるアセタール基の炭素数が3以上であると、中間膜Aのガラス転移温度が充分に低くなる。
【0041】
上記アルデヒドは特に限定されない。上記アルデヒドとして、一般には、炭素数が1〜10のアルデヒドが好適に用いられる。上記炭素数が1〜10のアルデヒドとしては、例えば、プロピオンアルデヒド、n−ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、n−バレルアルデヒド、2−エチルブチルアルデヒド、n−ヘキシルアルデヒド、n−オクチルアルデヒド、n−ノニルアルデヒド、n−デシルアルデヒド、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド及びベンズアルデヒド等が挙げられる。なかでも、プロピオンアルデヒド、n−ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、n−ヘキシルアルデヒド又はn−バレルアルデヒドが好ましく、プロピオンアルデヒド、n−ブチルアルデヒド又はイソブチルアルデヒドがより好ましく、n−ブチルアルデヒドが更に好ましい。上記アルデヒドは、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0042】
上記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率(水酸基量)は、好ましくは15モル%以上、より好ましくは18モル%以上、好ましくは40モル%以下、より好ましくは35モル%以下である。上記水酸基の含有率が上記下限以上であると、中間膜Aの接着力がより一層高くなる。また、上記水酸基の含有率が上記上限以下であると、中間膜Aの柔軟性が高くなり、中間膜Aの取扱いが容易になる。
【0043】
上記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率は、水酸基が結合しているエチレン基量を、主鎖の全エチレン基量で除算して求めたモル分率を百分率で示した値である。上記水酸基が結合しているエチレン基量は、例えば、JIS K6726「ポリビニルアルコール試験方法」に準拠して、原料となるポリビニルアルコールの水酸基が結合しているエチレン基量を測定することにより求めることができる。
【0044】
上記ポリビニルアセタール樹脂のアセチル化度(アセチル基量)は、好ましくは0.1モル%以上、より好ましくは0.3モル%以上、更に好ましくは0.5モル%以上、好ましくは30モル%以下、より好ましくは25モル%以下、更に好ましくは20モル%以下である。上記アセチル化度が上記下限以上であると、ポリビニルアセタール樹脂と可塑剤との相溶性が高くなる。上記アセチル化度が上記上限以下であると、中間膜A及び合わせガラスの耐湿性が高くなる。
【0045】
上記アセチル化度は、主鎖の全エチレン基量から、アセタール基が結合しているエチレン基量と、水酸基が結合しているエチレン基量とを差し引いた値を、主鎖の全エチレン基量で除算して求めたモル分率を百分率で示した値である。上記アセタール基が結合しているエチレン基量は、例えば、JIS K6728「ポリビニルブチラール試験方法」に準拠して測定できる。
【0046】
上記ポリビニルアセタール樹脂のアセタール化度(ポリビニルブチラール樹脂の場合にはブチラール化度)は、好ましくは60モル%以上、より好ましくは63モル%以上、好ましくは85モル%以下、より好ましくは75モル%以下、更に好ましくは70モル%以下である。上記アセタール化度が上記下限以上であると、ポリビニルアセタール樹脂と可塑剤との相溶性が高くなる。上記アセタール化度が上記上限以下であると、ポリビニルアセタール樹脂を製造するために必要な反応時間が短くなる。
【0047】
上記アセタール化度は、アセタール基が結合しているエチレン基量を、主鎖の全エチレン基量で除算して求めたモル分率を百分率で示した値である。
【0048】
上記アセタール化度は、JIS K6728「ポリビニルブチラール試験方法」に準拠した方法により、アセチル化度と水酸基の含有率とを測定し、得られた測定結果からモル分率を算出し、次いで、100モル%からアセチル化度と水酸基の含有率とを差し引くことにより算出され得る。
【0049】
なお、ポリビニルアセタール樹脂がポリビニルブチラール樹脂である場合は、上記水酸基の含有率(水酸基量)、上記アセタール化度(ブチラール化度)及び上記アセチル基量は、JIS K6728「ポリビニルブチラール試験方法」に準拠した方法により測定された結果から算出され得る。
【0050】
(可塑剤)
中間膜Aの接着力をより一層高める観点からは、中間膜Aは、可塑剤を含むことが好ましい。中間膜Aに含まれている熱可塑性樹脂が、ポリビニルアセタール樹脂である場合に、中間膜Aは、可塑剤を含むことが特に好ましい。
【0051】
上記可塑剤は特に限定されない。上記可塑剤として、従来公知の可塑剤を用いることができる。上記可塑剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0052】
上記可塑剤としては、例えば、一塩基性有機酸エステル及び多塩基性有機酸エステル等の有機エステル可塑剤、並びに有機リン酸可塑剤及び有機亜リン酸可塑剤などのリン酸可塑剤等が挙げられる。なかでも、有機エステル可塑剤が好ましい。上記可塑剤は液状可塑剤であることが好ましい。
【0053】
上記一塩基性有機酸エステルとしては、特に限定されず、例えば、グリコールと一塩基性有機酸との反応によって得られたグリコールエステル、並びにトリエチレングリコール又はトリプロピレングリコールと一塩基性有機酸とのエステル等が挙げられる。上記グリコールとしては、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール及びトリプロピレングリコール等が挙げられる。上記一塩基性有機酸としては、酪酸、イソ酪酸、カプロン酸、2−エチル酪酸、ヘプチル酸、n−オクチル酸、2−エチルヘキシル酸、n−ノニル酸及びデシル酸等が挙げられる。
【0054】
上記多塩基性有機酸エステルとしては、特に限定されず、例えば、多塩基性有機酸と、炭素数4〜8の直鎖又は分岐構造を有するアルコールとのエステル化合物が挙げられる。上記多塩基性有機酸としては、アジピン酸、セバシン酸及びアゼライン酸等が挙げられる。
【0055】
上記有機エステル可塑剤としては、特に限定されず、トリエチレングリコールジ−2−エチルブチレート、トリエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエート、トリエチレングリコールジカプリレート、トリエチレングリコールジ−n−オクタノエート、トリエチレングリコールジ−n−ヘプタノエート、テトラエチレングリコールジ−n−ヘプタノエート、ジブチルセバケート、ジオクチルアゼレート、ジブチルカルビトールアジペート、エチレングリコールジ−2−エチルブチレート、1,3−プロピレングリコールジ−2−エチルブチレート、1,4−ブチレングリコールジ−2−エチルブチレート、ジエチレングリコールジ−2−エチルブチレート、ジエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエート、ジプロピレングリコールジ−2−エチルブチレート、トリエチレングリコールジ−2−エチルペンタノエート、テトラエチレングリコールジ−2−エチルブチレート、ジエチレングリコールジカプリエート、アジピン酸ジヘキシル、アジピン酸ジオクチル、アジピン酸ヘキシルシクロヘキシル、アジピン酸ヘプチルとアジピン酸ノニルとの混合物、アジピン酸ジイソノニル、アジピン酸ジイソデシル、アジピン酸ヘプチルノニル、セバシン酸ジブチル、油変性セバシン酸アルキド、及びリン酸エステルとアジピン酸エステルとの混合物等が挙げられる。これら以外の有機エステル可塑剤を用いてもよい。
【0056】
上記有機リン酸可塑剤としては、特に限定されず、例えば、トリブトキシエチルホスフェート、イソデシルフェニルホスフェート及びトリイソプロピルホスフェート等が挙げられる。
【0057】
上記可塑剤は、下記式(1)で表されるジエステル可塑剤であることが好ましい。
【0058】
【化1】

【0059】
上記式(1)中、R1及びR2はそれぞれ、炭素数5〜10の有機基を表し、R3は、エチレン基、イソプロピレン基又はn−プロピレン基を表し、pは3〜10の整数を表す。上記式(1)中のR1及びR2はそれぞれ、炭素数6〜10の有機基であることが好ましい。
【0060】
上記可塑剤は、トリエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエート(3GO)及びトリエチレングリコールジ−2−エチルブチレート(3GH)の内の少なくとも一種を含むことが好ましく、トリエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエートを含むことがより好ましい。
【0061】
上記可塑剤の含有量は特に限定されない。上記熱可塑性樹脂100重量部に対して、上記可塑剤の含有量は、好ましくは25重量部以上、より好ましくは30重量部以上、好ましくは60重量部以下、より好ましくは50重量部以下である。上記可塑剤の含有量が上記下限以上であると、合わせガラスの耐貫通性がより一層高くなる。上記可塑剤の含有量が上記上限以下であると、中間膜Aの透明性がより一層高くなる。
【0062】
(酸化タングステン粒子)
中間膜Aに含まれている酸化タングステン粒子は、遮熱粒子である。
【0063】
上記酸化タングステン粒子は、下記式(X1)又は下記式(X2)で一般に表される。中間膜Aでは、下記式(X1)又は下記式(X2)で表される酸化タングステン粒子が好適に用いられる。
【0064】
WyOz ・・・式(X1)
上記式(X1)において、Wはタングステン、Oは酸素を表し、y及びzは2.0<z/y<3.0を満たす。
【0065】
MxWyOz ・・・式(X2)
上記式(X2)において、Mは、H、He、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類元素、Mg、Zr、Cr、Mn、Fe、Ru、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、B、F、P、S、Se、Br、Te、Ti、Nb、V、Mo、Ta及びReからなる群から選択される少なくとも1種の元素、Wはタングステン、Oは酸素を表し、x、y及びzは、0.001≦x/y≦1、及び2.0<z/y≦3.0を満たす。
【0066】
中間膜A及び合わせガラスの遮熱性をより一層高くする観点からは、酸化タングステン粒子は、金属ドープ酸化タングステン粒子であることが好ましい。上記「酸化タングステン粒子」には、金属ドープ酸化タングステン粒子が含まれる。上記金属ドープ酸化タングステン粒子としては、具体的には、ナトリウムドープ酸化タングステン粒子、セシウムドープ酸化タングステン粒子、タリウムドープ酸化タングステン粒子及びルビジウムドープ酸化タングステン粒子等が挙げられる。
【0067】
中間膜A及び合わせガラスの遮熱性をより一層高くする観点からは、セシウムドープ酸化タングステン粒子が特に好ましい。中間膜A及び合わせガラスの遮熱性を更に一層高くする観点からは、該セシウムドープ酸化タングステン粒子は、式:Cs0.33WOで表される酸化タングステン粒子であることが好ましい。
【0068】
上記酸化タングステン粒子の平均粒子径は、好ましくは0.01μm以上、より好ましくは0.02μm以上、好ましくは0.1μm以下、より好ましくは0.05μm以下である。平均粒子径が上記下限以上であると、熱線の遮蔽性が充分に高くなる。平均粒子径が上記上限以下であると、中間膜Aの透明性が高くなる。
【0069】
上記「平均粒子径」は、体積平均粒子径を示す。平均粒子径は、粒度分布測定装置(日機装社製「UPA−EX150」)等を用いて測定できる。
【0070】
上記酸化タングステン粒子の含有量は特に限定されない。中間膜A100重量%中、酸化タングステン粒子の含有量は、好ましくは0.001重量%以上、より好ましくは0.01重量%以上、更に好ましくは0.05重量%以上、好ましくは3重量%以下、より好ましくは1重量%以下、更に好ましくは0.5重量%以下である。酸化タングステン粒子の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、遮熱性を充分に高めることができ、かつ可視光線透過率を充分に高くすることができる。例えば、合わせガラスの可視光線透過率を70%以上にすることができる。
【0071】
(酸化防止剤)
中間膜Aは酸化防止剤を含むことが好ましい。該酸化防止剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0072】
上記酸化防止剤としては、フェール系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤及びリン系酸化防止剤等が挙げられる。上記フェノール系酸化防止剤はフェノール骨格を有する酸化防止剤である。上記硫黄系酸化防止剤は硫黄原子を含有する酸化防止剤である。上記リン系酸化防止剤はリン原子を含有する酸化防止剤である。
【0073】
上記酸化防止剤は、フェノール系酸化防止剤であることが好ましい。該フェノール系酸化防止剤としては、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール(BHT)、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノール、ステアリル−β−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,2’−メチレンビス−(4−メチル−6−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス−(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデン−ビス−(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、1,1,3−トリス−(2−メチル−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、テトラキス[メチレン−3−(3’,5’−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、1,3,3−トリス−(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェノール)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、及びビス(3,3’−t−ブチルフェノール)ブチリックアッシドグリコールエステル及びペンタエリトリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオナート]等が挙げられる。これらの酸化防止剤の内の1種又は2種以上が好適に用いられる。
【0074】
合わせガラスの高い可視光線透過率をより一層効果的に長期間に渡り維持する観点からは、上記酸化防止剤は、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール(BHT)、テトラキス[メチレン−3−(3’,5’−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン又はペンタエリトリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオナート]であることが好ましく、上記BHT又は2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール(BHT)、テトラキス[メチレン−3−(3’,5’−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンであることがより好ましい。
【0075】
上記酸化防止剤の市販品としては、例えば住友化学工業社製の商品名「スミライザーBHT」、チバガイギー社製の商品名「イルガノックス1010」等が挙げられる。
【0076】
合わせガラスの高い可視光線透過率を長期間に渡りより一層効果的に維持するために、中間膜A100重量%中、酸化防止剤の含有量は好ましくは0.01重量%以上である。また、酸化防止剤の添加効果が飽和するので、中間膜A100重量%中、酸化防止剤の含有量は好ましくは2重量%以下である。なお、合わせガラスの経時後の可視光線透過率を高く維持するためには、酸化防止剤の含有量は多いほどよい。
【0077】
合わせガラスの遮熱性及び可視光線透過率、並びに合わせガラスの経時後の可視光線透過率をより一層高める観点からは、中間膜A100重量%中、酸化防止剤の含有量は、より好ましくは0.02重量%以上、更に好ましくは0.05重量%以上である。また、酸化防止剤の影響による中間膜Aの着色を抑制するために、中間膜A100重量%中、酸化防止剤の含有量は、より好ましくは1.8重量%以下、更に好ましくは1.5重量%以下である。
【0078】
中間膜Aは、上記酸化タングステン粒子と上記酸化防止剤とを重量比(酸化タングステン粒子:酸化防止剤)で、10:1〜1:100で含むことが好ましく、5:1〜1:50で含むことがより好ましい。上記酸化タングステン粒子と上記酸化防止剤との重量比が上記範囲内であると合わせガラスの遮熱性及び可視光線透過率、並びに合わせガラスの経時後の可視光線透過率をより一層高めることができる。なお、上記重量比とは、中間膜A100重量%中の上記酸化タングステン粒子の含有量(重量%)と、中間膜A100重量%中の上記酸化防止剤の含有量(重量%)との比を示す。
【0079】
(紫外線遮蔽剤)
中間膜Aは、紫外線遮蔽剤を含むことが好ましい。紫外線遮蔽剤の使用により、合わせガラスが長期間使用されても、可視光線透過率がより一層低下し難くなる。該紫外線遮蔽剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0080】
紫外線遮蔽剤には、紫外線吸収剤が含まれる。紫外線遮蔽剤は、紫外線吸収剤であることが好ましい。
【0081】
従来広く知られている一般的な紫外線遮蔽剤としては、例えば、金属系紫外線遮蔽剤、金属酸化物系紫外線遮蔽剤、ベンゾトリアゾール系紫外線遮蔽剤、ベンゾフェノン系紫外線遮蔽剤、トリアジン系紫外線遮蔽剤及びベンゾエート系紫外線遮蔽剤等が挙げられる。
【0082】
上記金属系紫外線遮蔽剤としては、例えば、白金粒子、白金粒子の表面をシリカで被覆した粒子、パラジウム粒子及びパラジウム粒子の表面をシリカで被覆した粒子等が挙げられる。紫外線遮蔽剤は、遮熱粒子ではないことが好ましい。紫外線遮蔽剤は、好ましくはベンゾトリアゾール系紫外線遮蔽剤、ベンゾフェノン系紫外線遮蔽剤、トリアジン系紫外線遮蔽剤又はベンゾエート系紫外線遮蔽剤であり、より好ましくはベンゾトリアゾール系紫外線遮蔽剤又はベンゾフェノン系紫外線遮蔽剤であり、更に好ましくはベンゾトリアゾール系紫外線遮蔽剤である。
【0083】
上記金属酸化物系紫外線遮蔽剤としては、例えば、酸化亜鉛、酸化チタン及び酸化セリウム等が挙げられる。さらに、上記金属酸化物系紫外線遮蔽剤として、表面が被覆されていてもよい。上記金属酸化物系紫外線遮蔽剤の表面の被覆材料としては、絶縁性金属酸化物、加水分解性有機ケイ素化合物及びシリコーン化合物等が挙げられる。
【0084】
上記絶縁性金属酸化物としては、シリカ、アルミナ及びジルコニア等が挙げられる。上記絶縁性金属酸化物は、例えば5.0eV以上のバンドギャップエネルギーを有する。
【0085】
上記ベンゾトリアゾール系紫外線遮蔽剤としては、例えば、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール(BASF社製「TinuvinP」)、2−(2’−ヒドロキシ−3’、5’−ジ−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール(BASF社製「Tinuvin320」)、2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール(BASF社製「Tinuvin326」)、及び2−(2’−ヒドロキシ−3’、5’−ジ−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール(BASF社製「Tinuvin328」)等のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤が挙げられる。紫外線を吸収する性能に優れることから、上記紫外線遮蔽剤はハロゲン原子を含むベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤であることが好ましく、塩素原子を含むベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤であることがより好ましい。
【0086】
上記ベンゾフェノン系紫外線遮蔽剤としては、例えば、オクタベンゾン(BASF社製「Chimassorb81」)等が挙げられる。
【0087】
上記トリアジン系紫外線遮蔽剤としては、例えば、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−[(ヘキシル)オキシ]−フェノール(BASF社製、「Tinuvin1577FF」)等が挙げられる。
【0088】
上記ベンゾエート系紫外線遮蔽剤としては、例えば、2,4−ジ−tert−ブチルフェニル−3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート(BASF社製、「tinuvin120」)等が挙げられる。
【0089】
合わせガラスの経時後の可視光線透過率の低下をより一層抑制する観点からは、紫外線遮蔽剤は、2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール(BASF社製「Tinuvin326」)、又は2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール(BASF社製「Tinuvin328」)であることが好ましく、2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾールであることがより好ましい。
【0090】
中間膜Aにおける紫外線遮蔽剤の含有量は特に限定されない。合わせガラスの経時後の可視光線透過率の低下をより一層抑制する観点からは、中間膜A100重量%中、紫外線遮蔽剤の含有量は、好ましくは0.1重量%以上、より好ましくは0.2重量%以上、さらに好ましくは0.3重量%以上、特に好ましくは0.5重量%以上、好ましくは2.5重量%以下、より好ましくは2重量%以下、さらに好ましくは1重量%以下、特に好ましくは0.8重量%以下である。特に、中間膜A100重量%中、紫外線遮蔽剤の含有量が0.2重量%以上であることにより、合わせガラスの経時後の可視光線透過率の低下を顕著に抑制できる。
【0091】
(他の成分)
中間膜Aは、必要に応じて、光安定剤、難燃剤、帯電防止剤、顔料、染料、接着力調整剤、耐湿剤、蛍光増白剤及び赤外線吸収剤等の添加剤を含んでいてもよい。これらの添加剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0092】
(中間膜Aの詳細)
中間膜Aの厚みは特に限定されない。実用面の観点、並びに遮熱性を充分に高める観点からは、中間膜Aの厚みは、好ましくは0.1mm以上、より好ましくは0.25mm以上、好ましくは3mm以下、より好ましくは1.5mm以下である。中間膜Aの厚みが上記下限以上であると、合わせガラスの耐貫通性が高くなる。
【0093】
中間膜Aの製造方法は特に限定されない。中間膜Aの製造方法として、従来公知の方法を用いることができる。例えば、熱可塑性樹脂と酸化タングステン粒子と必要に応じて配合される他の成分とを混練し、中間膜Aを成形する製造方法等が挙げられる。連続的な生産に適しているため、押出成形する製造方法が好ましい。
【0094】
上記混練の方法は特に限定されない。この方法として、例えば、押出機、プラストグラフ、ニーダー、バンバリーミキサー又はカレンダーロール等を用いる方法が挙げられる。なかでも、連続的な生産に適しているため、押出機を用いる方法が好適であり、二軸押出機を用いる方法がより好適である。
【0095】
熱可塑性樹脂と酸化タングステン粒子とを含む中間膜Aは単層で用いることができる。さらに、中間膜Aを複数積層して、多層中間膜として用いてもよい。さらに、中間膜Aの少なくとも一方の表面に、他の中間膜を積層して、多層中間膜として用いてもよい。この場合には、中間膜Aの片面に他の中間膜が積層された多層中間膜、及び中間膜Aの両面に他の中間膜が積層された多層中間膜の内のいずれも用いることができる。上記他の中間膜は、例えば、合わせガラスにおいて保護層として用いることができる。
【0096】
上記他の中間膜の厚みは、好ましくは0.1mm以上、より好ましくは0.2mm以上、好ましくは1mm以下、より好ましくは0.5mm以下である。上記他の中間膜の厚みが上記下限以上及び上記上限以下であると、多層中間膜の厚みが厚くなりすぎず、かつ多層中間膜及び合わせガラスの遮熱性がより一層高くなる。
【0097】
(合わせガラスの詳細)
本発明に係る合わせガラスは、第1の合わせガラス構成部材と、第2の合わせガラス構成部材と、上記第1,第2の合わせガラス構成部材の間に挟み込まれた単層又は多層の中間膜とを備えており、該単層又は多層の中間膜が、中間膜Aを含む。
【0098】
本発明に係る合わせガラスには、中間膜Aが単層で、第1,第2の合わせガラス構成部材に挟み込まれている合わせガラスだけでなく、中間膜Aが2層以上積層された多層中間膜が、第1,第2の合わせガラス構成部材に挟み込まれている合わせガラスも含まれる。さらに、本発明に係る合わせガラスには、中間膜Aと、中間膜Aの少なくとも一方の表面に積層された他の中間膜とを有する多層中間膜が、第1,第2の合わせガラス構成部材に挟み込まれている合わせガラスも含まれる。この場合には、中間膜Aの片面に他の中間膜が積層された多層中間膜、及び中間膜Aの両面に他の中間膜が積層された多層中間膜の内のいずれも用いることができる。
【0099】
合わせガラスの経時後の可視光線透過率をより一層高める観点からは、中間膜Aの少なくとも一方の表面に積層された他の中間膜(第2の中間膜)は、上述した紫外線遮蔽剤を含むことが好ましい。また、該他の中間膜は、熱可塑性樹脂と可塑剤とを含むことが好ましい。該他の中間膜は、酸化防止剤を含んでいてもよい。上記他の中間膜における熱可塑性樹脂、可塑剤、酸化防止剤及び紫外線遮蔽剤の好ましい種類及び好ましい含有量は、中間膜Aにおける熱可塑性樹脂、可塑剤、酸化防止剤及び紫外線遮蔽剤の好ましい種類及び好ましい含有量と同様である。
【0100】
上記第1の合わせガラス構成部材は、熱線吸収板ガラスである。上記第2の合わせガラス構成部材としては、ガラス板及びPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム等が挙げられる。上記第2の合わせガラス構成部材は、熱線吸収板ガラスであることが好ましい。この場合には、合わせガラスの両面から入射される光線における熱線を、効果的に遮断することができる。
【0101】
上記熱線吸収板ガラスは、JIS R3208に準拠した熱線吸収板ガラスである。
【0102】
第2の合わせガラス構成部材として、熱線吸収板ガラス以外のガラス板を用いる場合に、該ガラス板としては、無機ガラス及び有機ガラスが挙げられる。上記無機ガラスとしては、フロート板ガラス、磨き板ガラス、型板ガラス、網入り板ガラス、線入り板ガラス及びクリアガラス等が挙げられる。上記有機ガラスは、無機ガラスに代用される合成樹脂ガラスである。上記有機ガラスとしては、ポリカーボネート板及びポリ(メタ)アクリル樹脂板等が挙げられる。上記ポリ(メタ)アクリル樹脂板としては、ポリメチル(メタ)アクリレート板等が挙げられる。
【0103】
合わせガラスには、2枚のガラス板の間に中間膜Aが配置されている合わせガラスだけでなく、ガラス板とPETフィルム等との間に中間膜Aが配置されている合わせガラスも含まれる。合わせガラスは、ガラス板含有積層体であり、少なくとも1枚のガラス板が用いられていることが好ましい。
【0104】
上記合わせガラス構成部材の厚みは、特に限定されないが、好ましくは1mm以上、好ましくは5mm以下、より好ましくは3mm以下である。また、合わせガラス構成部材がガラス板である場合に、該ガラス板の厚みは、好ましくは1mm以上、好ましくは5mm以下、より好ましくは3mm以下である。合わせガラス構成部材がPETフィルムである場合に、該PETフィルムの厚みは、好ましくは0.03mm以上、好ましくは0.5mm以下である。
【0105】
上記合わせガラスの製造方法は特に限定されない。例えば、第1,第2の合わせガラス構成部材の間に、中間膜A又は中間膜Aを含む多層中間膜を挟んで、押圧ロールに通したり、又はゴムバックに入れて減圧吸引したりして、第1,第2の合わせガラス構成部材と中間膜A又は多層中間膜との間に残留する空気を脱気する。その後、約70〜110℃で予備接着して積層体を得る。次に、積層体をオートクレーブに入れたり、又はプレスしたりして、約120〜150℃及び1〜1.5MPaの圧力で圧着する。このようにして、合わせガラスを得ることができる。合わせガラスは、自動車、鉄道車両、航空機、船舶及び建築物等に使用できる。合わせガラスは、これらの用途以外にも使用できる。合わせガラスは、自動車のフロントガラス、サイドガラス、リアガラス又はルーフガラス等に使用できる。
【0106】
透明性により一層優れた合わせガラスを得る観点からは、合わせガラスの上記可視光線透過率は、好ましくは65%以上、より好ましくは70%以上である。合わせガラスの可視光線透過率は、JIS R3211(1998)に準拠して測定できる。
【0107】
合わせガラスの日射透過率(Ts2500)は、好ましくは65%以下、より好ましくは50%以下である。合わせガラスの日射透過率は、JIS R3106(1998)に準拠して測定できる。
【0108】
合わせガラスのヘーズ値は、好ましくは2%以下、より好ましくは1%以下、更に好ましくは0.5%以下、特に好ましくは0.4%以下である。合わせガラスのヘーズ値は、JIS K6714に準拠して測定できる。
【0109】
(合わせガラスの取り付け方法)
本発明に係る合わせガラスの取り付け方法は、上述した合わせガラスを、建築物又は車両において外部空間と該外部空間から熱線が入射される内部空間との間の開口部に取り付ける方法である。
【0110】
具体的には、第1の合わせガラス構成部材が、外部空間側に位置するように、かつ第2の合わせガラス構成部材が、内部空間側に位置するように、合わせガラスを開口部に取り付ける。すなわち、外部空間/第1の合わせガラス構成部材/(他の層/)中間膜A/(他の層/)第2の合わせガラス構成部材/内部空間の順に配置されるように、合わせガラスを取り付ける。上記積層構造において、他の層は存在していてもよく、存在していなくてもよい。外部空間から熱線を含む太陽光が合わせガラスに入射され、合わせガラスを通過した熱線を含む太陽光は内部空間に導かれる。上記のように合わせガラスを開口部に取り付けた場合には、第1の合わせガラス構成部材の外側の表面が熱線の入射面となる。この結果、中間膜Aに至る熱線の量を、熱線吸収板ガラスである第1の合わせガラス構成部材により効果的に低減できる。
【0111】
以下、実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明する。本発明は以下の実施例のみに限定されない。
【0112】
実施例及び比較例では、中間膜Aを作製するために、以下の材料を用いた。
【0113】
(実施例1)
(1)中間膜の作製
トリエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエート(3GO)40重量部と、セシウムドープ酸化タングステン粒子を得られる中間膜100重量%中で0.030重量%となる量とを水平型のマイクロビーズミルにて混合し、分散液を得た。
【0114】
ポリビニルブチラール樹脂(PVB、n−ブチルアルデヒドによりアセタール化されているポリビニルブチラール樹脂、平均重合度1700、水酸基の含有率30.5モル%、アセチル化度1モル%、ブチラール化度68.5モル%)100重量部に対し、得られた分散液全量と、酸化防止剤(2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール(BHT)、住友化学工業社製の商品名「スミライザーBHT」)を得られる中間膜100重量%中で0.57重量%となる量と、紫外線遮蔽剤であるTinuvin326を得られる中間膜100重量%中で0.57重量%となる量とを添加し、ミキシングロールで充分に混練し、組成物を得た。
【0115】
2枚のフッ素樹脂シートの間に、クリアランス板(得られる中間膜と同じ厚み)を介して、得られた組成物を挟み込み、150℃で30分間プレス成形し、厚み760μmの中間膜を得た。
【0116】
(2)合わせガラスの作製
得られた中間膜を、縦30cm×横30cmの大きさに切断した。次に、2枚の熱線吸収板ガラス(JIS R3208に準拠、縦30cm×横30cm×厚み2mm)を用意した。この2枚の熱線吸収板ガラスの間に、得られた中間膜を挟み込み、真空ラミネーターにて90℃で30分間保持し、真空プレスし、積層体を得た。積層体において、ガラス板からはみ出た中間膜部分を切り落とし、合わせガラスを得た。
【0117】
(実施例2〜3)
酸化タングステン粒子(遮熱粒子)、酸化防止剤及び紫外線遮蔽剤の含有量を下記の表1に示すように設定したこと以外は実施例1と同様にして、中間膜を作製した。得られた中間膜を用いて、実施例1と同様にして、中間膜及び合わせガラスを作製した。
【0118】
(比較例1)
合わせガラスの作製において、2枚の熱線吸収板ガラス(JIS R3208に準拠、縦30cm×横30cm×厚み2mm)を、2枚のフロートガラス(クリアガラス、JIS 3202に準拠、縦30cm×横30cm×厚み2mm)に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、合わせガラスを得た。
【0119】
(比較例2)
酸化タングステン粒子(遮熱粒子)を用いなかったこと以外は実施例1と同様にして、中間膜及び合わせガラスを作製した。
【0120】
(評価)
(1)可視光線透過率(A光Y値、初期A−Y(380〜780nm))の測定
分光光度計(日立ハイテク社製「U−4100」)を用いて、JIS R3211(1998)に準拠して、得られた合わせガラスの波長380〜780nmにおける上記可視光線透過率を測定した。
【0121】
(2)日射透過率(初期Ts2500(300〜2500nm))の測定
分光光度計(日立ハイテク社製「U−4100」)を用いて、JIS R3106(1998)に準拠して、得られた合わせガラスの波長300〜2500nmでの日射透過率Ts(Ts2500)を求めた。
【0122】
(3)長期安定性(耐光性)
紫外線照射装置(スガ試験機社製「HLG−2S」)を用いて、JIS R3205に準拠して、紫外線(石英ガラス水銀灯(750W))を、合わせガラスに500時間及び1000時間照射した。500時間照射後及び1000時間照射後の合わせガラスのA−Yを上記の方法により測定した。
【0123】
得られた測定値から、ΔA−Y((紫外線の照射後のA−Y)−(初期のA−Y))を求めた。
【0124】
結果を下記の表1に示す。下記の表1において、セシウムドープ酸化タングステン粒子(遮熱粒子)、酸化防止剤及び紫外線遮蔽剤の含有量は、中間膜100重量%中での含有量(重量%)を示す。
【0125】
【表1】

【符号の説明】
【0126】
1…合わせガラス
2…中間膜
2a…第1の表面
2b…第2の表面
11…合わせガラス
12…多層中間膜
13〜15…中間膜
13a…外側の表面
15a…外側の表面
21…第1の合わせガラス構成部材
22…第2の合わせガラス構成部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中間膜と、
前記中間膜の第1の表面側に配置された第1の合わせガラス構成部材と、
前記中間膜の第1の表面側とは反対の第2の表面側に配置された第2の合わせガラス構成部材とを備え、
前記中間膜が、熱可塑性樹脂と酸化タングステン粒子とを含み、
前記第1の合わせガラス構成部材が、熱線吸収板ガラスである、合わせガラス。
【請求項2】
前記第2の合わせガラス構成部材が、熱線吸収板ガラスである、請求項1に記載の合わせガラス。
【請求項3】
前記酸化タングステン粒子が、セシウムドープ酸化タングステン粒子である、請求項1又は2に記載の合わせガラス。
【請求項4】
前記熱可塑性樹脂が、ポリビニルアセタール樹脂である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の合わせガラス。
【請求項5】
前記中間膜が、可塑剤をさらに含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の合わせガラス。
【請求項6】
前記第1の合わせガラス構成部材が、前記中間膜の前記第1の表面に積層されている、請求項1〜5のいずれか1項に記載の合わせガラス。
【請求項7】
前記第2の合わせガラス構成部材が、前記中間膜の前記第2の表面に積層されている、請求項1〜6のいずれか1項に記載の合わせガラス。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の合わせガラスを、建築物又は車両において外部空間と該外部空間から熱線が入射される内部空間との間の開口部に取り付ける方法であって、
前記第1の合わせガラス構成部材が、前記外部空間側に位置するように、かつ前記第2の合わせガラス構成部材が、前記内部空間側に位置するように、前記合わせガラスを開口部に取り付ける、合わせガラスの取り付け方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−131659(P2012−131659A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−284248(P2010−284248)
【出願日】平成22年12月21日(2010.12.21)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】