説明

合わせガラス用中間膜、その製造方法及びそれを用いた合わせガラス

【課題】 透明性及び遮熱性に優れ、安全で環境負荷の小さい工程によって製造される合わせガラス用中間膜及び合わせガラスを提供する。
【解決手段】 ポリビニルアセタール、ポリビニルピロリドン、無水アンチモン酸亜鉛及び可塑剤を含有する樹脂組成物からなる合わせガラス用中間膜であって、その中間膜を2mm厚のクリアガラス2枚で挟んで接着して作製した合わせガラスにおいて、JIS K7105に準じて測定した場合のヘイズが2%以下である合わせガラス用中間膜によって、上記課題を解決することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明性及び遮熱性に優れた合わせガラス用中間膜に関する。また、その製造方法及びそれを用いた合わせガラスに関する。
【背景技術】
【0002】
合わせガラスは、ガラスの飛散防止など安全性向上のため、自動車等の車両、航空機、建築物等の窓ガラス等に広く利用されている。このような合わせガラスとしては、少なくとも1対のガラス板の間に、可塑化ポリビニルブチラール樹脂などからなる合わせガラス用中間膜を介在させ、貼り合わせたものが挙げられる。しかし、通常の合わせガラス用中間膜を用いた場合、熱的作用の大きな近赤外線(熱線)を遮蔽できないという問題があり、遮熱性の付与が求められていた。
【0003】
熱線遮蔽性を付与する目的で、可塑化ポリビニルブチラール樹脂と複合し易い有機物を用いた樹脂組成物が提案されている。例えば、近赤外線吸収材としてフタロシアニン化合物を配合する方法が提案されている(特許文献1〜3参照)が、有機物では耐候性が悪く、長期の使用において効果が損なわれるなど、基本的に耐久性の問題を抱えていた。
【0004】
一方、遮熱性を付与したガラスとして、熱線カットガラスが市販されている。熱線カットガラスは、金属蒸着、スパッタリング加工等によって、ガラス板の表面に金属又は金属酸化物のコーティングを行ったものである。しかし、近赤外線の遮蔽性を高めるためにコーティング層を厚くすると、可視光透過率が低下するため、実使用において制限が課せられるものであった。また、近年、各種の通信機器、例えば、アマチュア無線や緊急通信機器、VICS(自動車通信システム)、ETC(有料道路自動料金収受システム)、衛星放送等が自動車に搭載されるようになってきているが、上記多層コーティングしたガラスは電磁波の透過を阻害し、携帯電話、カーナビ、ガレージオープナー、料金自動収受システム等の通信システムに悪影響を及ぼすという問題点があった。更には、コーティング法ではコーティング層と中間膜の接着力が不十分であり剥離や白化が起こるという問題があった。
【0005】
他方、錫ドープ酸化インジウム(ITO)微粒子、アンチモンドープ酸化錫(ATO)微粒子、またはアンチモンドープ酸化亜鉛(AZO)微粒子等の近赤外線吸収性能を有する微粒子をポリマー中に含有させることにより、遮熱機能を付与した合わせガラス用中間膜が提案されている(特許文献4〜7参照)。しかし、ITOの使用には資源の枯渇化や価格高騰の問題がある。また、最近、ITO微粒子が人体に悪影響を及ぼすことも報告されている(非特許文献1参照)。一方、ATO、AZOの使用には性能不足などの問題があり、これらの代替材料が望まれている。
【0006】
他の遮熱微粒子として無水アンチモン酸亜鉛が知られているが、これまで樹脂中に微分散させる手法がほとんど見出されていなかった。特許文献8には、紫外線や赤外線を吸収し、無水アンチモン酸亜鉛を含有する樹脂組成物が記載されており、無水アンチモン酸亜鉛の粉末を水又は有機溶媒に分散させてから各種の樹脂と混合することが記載されている。しかしながら、このような方法で製造した場合、無水アンチモン酸亜鉛が樹脂組成物内で凝集するため、可視光が散乱してヘイズが悪化することが避けられず、高度な透明性が要求される用途においては使用することができなかった。また、無水アンチモン酸亜鉛をシランカップリング剤で処理することも記載されているが、無水アンチモン酸亜鉛の表面の反応性が低く表面修飾が充分に進行しないために、凝集の発生が避けられず、透明性が不十分であった。
【0007】
また、特許文献9には、合わせガラス用中間膜に含まれる無機粒子を回収する方法が記載されていて、回収される無機粒子の例示の中に、無水アンチモン酸亜鉛粒子も記載されている。特許文献9の実施例2では、無水アンチモン酸亜鉛粒子、分散剤及び可塑剤を混合してビーズミル中で分散させてから、ポリビニルブチラールを加えて溶融混練して中間膜を製造することが記載されている。しかしながら、用いた分散剤の種類については一切記載はなく、得られた中間膜における無水アンチモン酸亜鉛粒子の分散性についても記載されていない。
【0008】
一方、ITOやATOを含有させた中間膜では、ITOやATOの分散性を向上させるために、リン酸エステル系分散剤や高分子系分散剤の添加が行われていた(特許文献10、11)。しかし、リン酸エステル系分散剤を用いた場合、分散剤がフィルムとガラスの界面にブリードアウトするため、長期的なガラス接着力の安定性という点で問題があった。また、高分子系分散剤を用いた場合、ブリードアウトの懸念は少ないものの、分散剤がポリビニルアセタールと均一に混じることが困難であった。特許文献11には、分散剤の一種としてポリビニルブチラールが記載されている。この場合、前述したようなポリビニルアセタールとの相溶性は十分に期待されるが、ポリビニルブチラールを溶解させるために多量の有機溶媒の添加が必要となり、取り扱い上の安全性や、環境面への影響から考えても好ましい手法とは言えなかった。
【0009】
特許文献12には、酸化亜鉛微粒子と六ホウ化物微粒子の分散剤として、ポリビニルピロリドンが多数の例示の中の一つとして記載されているのみである。また、特許文献12では、前記粒子を水溶液中で分散させることについては記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2003−265033号公報
【特許文献2】特開2003−265034号公報
【特許文献3】特開2005−157011号公報
【特許文献4】特開平8−217500号公報
【特許文献5】特開平8−259279号公報
【特許文献6】特開2001−302289号公報
【特許文献7】特開2005−343723号公報
【特許文献8】特開平9−211221号公報
【特許文献9】特開2006−206654号公報
【特許文献10】特開2003−261360号公報
【特許文献11】特開2005−187226号公報
【特許文献12】特開2006−182599号公報
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】J.Aerosol Res.,20(3)、213−218(2005)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、透明性及び遮熱性に優れた合わせガラス用中間膜を提供することを目的とするものである。また、そのようなガラス用中間膜を安全で環境負荷の小さい工程によって製造する方法及びそれを用いた合わせガラスを提供することも、本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題は、ポリビニルアセタール(A)、ポリビニルピロリドン(B)、無水アンチモン酸亜鉛(C)及び可塑剤(D)を含有する樹脂組成物からなる合わせガラス用中間膜であって、該中間膜を2mm厚のクリアガラス2枚で挟んで接着して作製した合わせガラスにおいて、JIS K7105に準じて測定した場合のヘイズが2%以下である合わせガラス用中間膜を提供することによって解決される。このとき、前記合わせガラス用中間膜を2mm厚のクリアガラス2枚で挟んで接着して作製した合わせガラスにおいて、JIS R3106に準じて算出した、波長領域380〜780nmでの可視光透過率が70%以上であり、かつ、波長領域300〜2500nmでの日射透過率が70%以下であることが好ましい。また、ポリビニルアセタール(A)100重量部に対して可塑剤(D)を20〜100重量部含有することが好ましく、ポリビニルアセタール(A)と可塑剤(D)の合計100重量部に対して無水アンチモン酸亜鉛(C)を0.05〜2重量部含有することが好ましい。さらに、無水アンチモン酸亜鉛(C)100重量部に対してポリビニルピロリドン(B)を60〜300重量部含有することが好ましく、ポリビニルピロリドン(B)の重量平均分子量が50000〜1500000であることが好ましい。
【0014】
また上記課題は、前記合わせガラス用中間膜を用いて複数のガラス板を接着してなる合わせガラスを提供することによっても解決される。
【0015】
さらに上記課題は、ポリビニルピロリドン(B)、無水アンチモン酸亜鉛(C)及び水(E)を含有し、ポリビニルピロリドン(B)が溶解した分散液(d2)を予め調製してから、分散液(d2)、可塑剤(D)及びポリビニルアセタール(A)を溶融混合し、フィルム状に成形することを特徴とする前記合わせガラス用中間膜の製造方法を提供することによっても解決される。このとき、ポリビニルピロリドン(B)が水(E)に溶解した水溶液(s1)と、無水アンチモン酸亜鉛(C)を含有する分散液(d1)とを混合して分散液(d2)を調製することが好ましい。また、水溶液(s1)の25℃におけるpH値が4.5以上であることが好ましい。さらには、分散液(d1)及び分散液(d2)の少なくともいずれかに対して粉砕処理を施すことも好適である。
【発明の効果】
【0016】
本発明の合わせガラス用中間膜は、透明性及び遮熱性に優れている。したがって該中間膜を用いることによって、透明性及び遮熱性に優れた合わせガラスを提供することができる。また、本発明の製造方法によれば、そのような合わせガラス用中間膜を安全で環境負荷の小さい工程によって製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明で用いるポリビニルアセタール(A)は、ポリビニルアルコールとアルデヒドとを、水および/または有機溶剤中で、酸触媒の存在下で反応させ、生成したポリビニルアセタール(A)を、場合によっては中和し、洗浄した後、乾燥することにより得ることができる。得られるポリビニルアセタール(A)の構造を下記一般式(I)に示した。
【0018】
【化1】

【0019】
上記一般式(I)において、n、k(n)、l、m、Rの意味は以下に示すとおりである。
n:アセタール化に用いたアルデヒドの種類(整数)
(n):アルデヒド残基Rを含むアセタール単位の割合(モル比)
l:ポリビニルアルコール単位の割合(モル比)
m:ポリビニルアセテート単位の割合(モル比)
ただし、k(1)+k(2)+・・・+k(n)+l+m=1であり、R、R、・・・・Rはアセタール化反応に用いたアルデヒドの残基を示す。また、一般式(I)の構造において、各単位の配列の仕方は特に制限されず、ブロック的であっても、ランダム的であってもよい。
【0020】
ポリビニルアセタール(A)を製造する際のアセタール化反応、中和、洗浄、脱水の各操作は、特に限定されるものではなく、公知の方法で行うことができる。例えば、ポリビニルアルコールの水溶液とアルデヒドとを酸触媒の存在下にアセタール化反応させて樹脂粒子を析出させる水溶媒法、ポリビニルアルコールを有機溶媒中に分散させ、酸触媒の存在下にアルデヒドとアセタール化反応させ、この反応液をポリビニルアセタール(A)に対する貧溶媒である水等に加えて析出させる有機溶媒法などを採用することができる。いずれの方法を用いても、ポリビニルアセタール(A)が媒体中に分散したスラリーが得られる。
【0021】
上記方法により得られたスラリーは、酸触媒により酸性を呈しているため、必要に応じて水酸化ナトリウムや炭酸ナトリウムなどのアルカリ中和剤などを添加して、pHが4.5以上、好ましくは6〜9、さらに好ましくは6〜8となるように調整する。
【0022】
ポリビニルアセタール(A)の製造に用いられるポリビニルアルコールとしては、一般に、粘度平均重合度500〜4000、好ましくは1000〜2500のものが用いられる。ポリビニルアセタール(A)の粘度平均重合度は、原料のポリビニルアルコールの粘度平均重合度と実質的に同じである。原料のポリビニルアルコールの粘度平均重合度が500未満であるときには、力学物性が不足し、本発明の合わせガラス用中間膜の力学物性、特に靭性が不足する。一方、原料のポリビニルアルコールの粘度平均重合度が4000を超えると溶融成形する際の溶融粘度が高くなりすぎるとともに、製造工程にも問題が生じる。なお、ポリビニルアセタール(A)として、2種類以上のポリビニルアセタールを用いるときには、配合量を勘案した平均値が上記範囲を満足すればよい。ここで、ポリビニルアルコールの重合度は、JIS K 6726に準じて測定することができる。具体的には、ポリビニルアルコールを再けん化し、精製した後、30℃の水中で測定した極限粘度から求めることができる。
【0023】
上記ポリビニルアルコールとしては特に限定されず、ポリ酢酸ビニル等をアルカリ、酸、アンモニア水等によりけん化することにより製造されたもの等の従来公知のポリビニルアルコールを用いることができる。完全にけん化されたポリビニルアルコールであってもよく、また、部分的にけん化されたポリビニルアルコールであってもよく、ポリビニルアルコールのけん化度は80モル%以上であることが好ましい。上記ポリビニルアルコールとしては、単独であってもよいし、2種類以上を混合したものであってもよい。2種類以上のポリビニルアルコールを用いるときには、配合量を勘案した平均値が上記けん化度の範囲を満足すればよい。
【0024】
また、上記ポリビニルアルコールとしては、エチレン−ビニルアルコール共重合体、部分けん化エチレン−ビニルアルコール共重合体等の、ビニルアルコールと共重合可能なモノマーとの共重合体も用いることができる。さらに、カルボン酸等で変性された変性ポリビニルアルコールも用いることができる。
【0025】
ポリビニルアルコールをアセタール化するのに用いられるアルデヒドとしては特に限定されず、例えば、ホルムアルデヒド(パラホルムアルデヒドを含む)、アセトアルデヒド(パラアセトアルデヒドを含む)、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、アミルアルデヒド、ヘキシルアルデヒド、ヘプチルアルデヒド、2−エチルヘキシルアルデヒド、シクロヘキシルアルデヒド、フルフラール、グリオキザール、グルタルアルデヒド、ベンズアルデヒド、2−メチルベンズアルデヒド、3−メチルベンズアルデヒド、4−メチルベンズアルデヒド、p−ヒドロキシベンズアルデヒド、m−ヒドロキシベンズアルデヒド、フェニルアセトアルデヒド、β−フェニルプロピオンアルデヒド等が挙げられる。これらのアルデヒドは単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。これらアルデヒドのうち、製造の容易度の観点から、ブチルアルデヒドが好ましく用いられる。
【0026】
ポリビニルアルコールのアセタール化を、ブチルアルデヒドを用いて行って得られるポリビニルアセタール(A)を、特にポリビニルブチラールと呼ぶ。本発明では、ポリビニルアセタール(A)中に存在するアセタール単位のうち、ブチラール単位の割合(下式参照)が0.9を超えて有するポリビニルブチラールが好ましい。すなわち、前記式(I)に示されるポリビニルアセタール(A)の構造式において、R=C(ブチルアルデヒドの残基)であるとき、k(1)/(k(1)+k(2)+・・・+k(n))>0.9であるものが好ましい。
【0027】
アセタール化反応の酸触媒としては特に限定されず、例えば、酢酸、p−トルエンスルホン酸等の有機酸、硝酸、硫酸、塩酸等の無機酸が挙げられる。また、上記アセタール化反応の中和剤としては、特に限定されないが、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア、酢酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ;エチレンオキサイド等のアルキレンオキサイド類;エチレングリコールジグリシジルエーテル等のグリシジルエーテル類が挙げられる。
【0028】
ポリビニルアセタール(A)のアセタール化度は、以下の式で定義することができる。
アセタール化度(モル%)=[(k(1)+k(2)+・・・+k(n))×2]/[(k(1)+k(2)+・・・+k(n))×2+l+m]×100
【0029】
ポリビニルアセタール(A)のアセタール化度は、好ましくは55〜83モル%である。アセタール化度が55モル%未満のポリビニルアセタール(A)は、製造コストが高いこと、入手が困難であること、また溶融加工性にも乏しいことから好ましくない。83モル%を超えるポリビニルアセタール(A)は、アセタール化反応の時間を長くする必要があるので経済的でない。ポリビニルアセタール(A)は、1種を単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。2種類以上のポリビニルアセタールを用いる場合、配合量を勘案した平均値が上記アセタール化度の範囲を満足すればよい。
【0030】
本発明の合わせガラス用中間膜では、無水アンチモン酸亜鉛(C)を遮熱性付与の目的で配合する。本発明で用いられる無水アンチモン酸亜鉛(C)は、酸化亜鉛成分と酸化アンチモン成分を含む複合酸化物である。この無水アンチモン酸亜鉛(C)を中間膜に分散させることにより、電磁波透過率が良好な中間膜を得ることができる。
【0031】
本発明の合わせガラス用中間膜は、可塑剤(D)により可塑化される。可塑剤(D)としては、ポリビニルアセタール(A)に使用されている公知の可塑剤(D)を用いることができる。好適には、脂肪族ポリオールの一塩基酸エステルや、直鎖あるいは分枝状アルコールの多塩基酸エステル等の有機系可塑剤群から一種もしくは二種以上が用いられる。
【0032】
脂肪族ポリオールの一塩基酸エステルとしては特に限定されるものではないが、脂肪族ジオールの一塩基酸エステルが好適である。また、脂肪族ジオールの一塩基酸エステルの中でもポリアルキレングリコールの一塩基酸エステルが好ましく、特にポリエチレングリコールの一塩基酸エステルが好適である。ここで、ポリアルキレングリコールの一塩基酸エステルとしては、ジ、トリ、テトラアルキレングリコールと、炭素数4〜10の一塩基酸とから成るエステルが好適に用いられる。
【0033】
直鎖あるいは分枝状アルコールの多塩基酸エステルとしては特に限定されるものではないが、例えばアジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、リン酸と、炭素数4〜10の直鎖あるいは分枝状のアルコールから成るエステルが好適に用いられる。
【0034】
上記可塑剤群の中でも、例えばトリエチレングリコール−ジ−2−エチルブチレート、トリエチレングリコール−ジ−2−エチルヘキサノエート、トリエチレングリコール−ジ−n−ヘプタノエート、テトラエチレングリコール−ジ−2−エチルヘキサノエート、テトラエチレングリコール−ジ−n−ヘプタノエート、オリゴエチレングリコール−ジ−2−エチルヘキサノエート、トリエチレングリコール−ジ−イソノナネート、トリエチレングリコール−ジ−2−プロピルヘキサノエート、ジ−プロピレングリコールベンゾエート、ジヘキシルアジペート、ジ−2−ブトキシエチルアジペート、ジ−2−ブトキシエトキシエチルアジペート、ジ−2−エチルヘキシルアジペート、ジブチルセバケート、ジ−2−ブトキシエチルセバケート、ジ−2−エチルヘキシルセバケート、ジ−2−エチルヘキシルフタレート、ジ−イソノニルフタレート、トリス2−エチルヘキシルホスフェート、ジイソノニルシクロヘキサンジカルボキシレート等の一種もしくは二種以上が好適に用いられる。
【0035】
可塑剤(D)の添加量はポリビニルアセタール100重量部に対して、20〜100重量部であることが好ましい。20重量部未満では、得られる中間膜や合わせガラスの耐衝撃性が不十分となることがあり、逆に100重量部を超えると、可塑剤がブリードアウトして、得られる中間膜や合わせガラスの透明性が低下したり、ガラスと中間膜との接着性が損なわれたりすることがある。
【0036】
無水アンチモン酸亜鉛(C)の含有量は、ポリビニルアセタール(A)と可塑剤(D)の合計100重量部に対して、0.05〜2.0重量部であることが好ましい。無水アンチモン酸亜鉛(C)の最適な含有量は中間膜の厚みによっても異なり、適宜調整される。無水アンチモン酸亜鉛(C)の含有量が2.0重量部を超えると、可視光透過率が低下することがあり、1.5重量部以下がより好ましく、1.2重量部以下がさらに好ましい。一方、無水アンチモン酸亜鉛(C)の含有量が0.05重量部未満であると、熱線遮断性が不十分になることがあり、0.1重量部以上がより好ましく、0.15重量部以上がさらに好ましく、0.2重量部以上が特に好ましく、0.25重量部以上が最も好ましい。
【0037】
本発明の合わせガラス用中間膜では、ポリビニルピロリドン(B)を無水アンチモン酸亜鉛(C)の分散剤として添加する。分散剤として水溶性高分子化合物を用いた場合には、溶媒として水を使用することができ、取り扱い上の容易性・安全性は増大する。しかしながら、通常、水溶媒中で粒子を分散させる場合、化合物が電離し易い環境にあるために、電解質の溶解により分散粒子表面の電荷層が圧縮され、粒子の凝集が促進されてしまうことがある。粒子の微細化を考える場合、このような表面電荷の安定性を維持することは非常に困難であり、超微粒子化された無機化合物を水溶媒中で分散安定化することは実際に容易ではない。ここで、ポリビニルピロリドン(B)はその分子構造に環状アミドであるピロリドン骨格を有しており、その構造の剛直性に由来して高い配位能を示すため、水溶性であると同時に無機化合物との良好な親和性を有する。このため、無水アンチモン酸亜鉛(C)を水溶媒中で有効に分散安定化できると考えられる。また、ポリビニルピロリドン(B)は種々の天然樹脂、合成樹脂と高い親和性を有するため、ポリビニルアセタール(A)との相溶性も良好であると考えられる。さらに、高分子化合物であるから、合わせガラス用中間膜とガラスの接着後に分散剤がブリードアウトし、ガラス接着力が低下するといった問題も解決できる。したがって、本発明の合わせガラス用中間膜では、従来困難であった無水アンチモン酸亜鉛(C)の水溶媒中での分散安定化を、ポリビニルピロリドン(B)の特異的性質によって解決し、取り扱い上容易で安全な製造工程によって種々の性能に優れた合わせガラス用中間膜を製造する方法を構築したものである。
【0038】
ポリビニルピロリドン(B)は、無水アンチモン酸亜鉛(C)100重量部に対して60〜300重量部添加することが好ましい。添加量が60重量部未満の場合、無水アンチモン酸亜鉛(C)に対する水溶媒中での分散剤としての効果が十分でない場合がある。より好ましくは80重量部以上である。300重量部を超える場合は、ポリビニルピロリドン(B)を溶解させるために必要な水(E)の添加量が増大し、中間膜を成形する際に水を揮発させることが困難になり、フィルム中に気泡が発生する等の問題が生じる場合がある。より好ましくは180重量部以下である。
【0039】
本発明で用いられるポリビニルピロリドン(B)は特に限定されず、市販のものを用いることができる。ポリビニルピロリドン(B)の重量平均分子量は、好ましくは50000〜1500000である。重量平均分子量が50000未満であると、低分子量であるためにポリビニルピロリドン(B)の立体反発力に起因する保護コロイド効果が発現せず、無水アンチモン酸亜鉛(C)を水溶媒中に分散させる際の分散効果が十分でない場合がある。より好ましくは100000以上である。重量平均分子量が1500000を超えると、水溶液にした場合の溶液粘度が高く、粘度を下げるためにはより多量の水が必要となり、フィルム成形時に気泡発生等の問題があることから好ましくない場合がある。また、高粘度の場合は、無水アンチモン酸亜鉛(C)及びポリビニルピロリドン(B)を含有する分散液(d2)を粉砕する際に、粉砕しにくくなるおそれもある。より好ましくは1000000以下である。ポリビニルピロリドン(B)は、1種を単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。また、他の水溶性高分子化合物と併用して使用してもよい。
【0040】
本発明の合わせガラス用中間膜には、上記ポリビニルアセタール(A)、ポリビニルピロリドン(B)、無水アンチモン酸亜鉛(C)及び可塑剤(D)以外にも、発明の効果を阻害しない範囲で必要に応じて各種の添加剤、例えば、酸化防止剤、安定剤、紫外線吸収剤、滑剤、難燃剤、加工助剤、帯電防止剤、着色剤、熱線反射剤、熱線吸収剤、耐衝撃助剤、接着力調整剤、充填剤、耐湿剤、等が添加されても良い。
【0041】
本発明の合わせガラス用中間膜は、その中間膜を2mm厚のクリアガラス2枚で挟んで接着して作製した合わせガラスにおいて、JIS R3106に準じて算出した場合のヘイズが2%以下である。具体的には、前記中間膜を2mm厚のクリアガラス2枚を用いて挟んだ後、減圧下、140℃で90分保持することにより、クリアガラス同士を接着して合わせガラスを作製して測定する。また、前記合わせガラス用中間膜は、それを2mm厚のクリアガラス2枚で挟んで接着して作製した合わせガラスにおいて、JIS R3106に準じて算出した、波長領域380〜780nmでの可視光透過率が70%以上であり、かつ、波長領域300〜2500nmでの日射透過率が70%以下であることも好ましい。
【0042】
以下、本発明の合わせガラス用中間膜の製造方法について説明する。合わせガラス用中間膜は、ポリビニルアセタール(A)、ポリビニルピロリドン(B)、無水アンチモン酸亜鉛(C)及び可塑剤(D)を含有する樹脂組成物からなり、その中間膜を2mm厚のクリアガラス2枚で挟んで接着して作製した合わせガラスにおいて、JIS R3106に準じて算出した場合のヘイズが2%以下である。従って、このような中間膜が得られるように無水アンチモン酸亜鉛(C)を分散させることができる方法を採用することが重要である。
【0043】
無水アンチモン酸亜鉛(C)を分散させるためには、無水アンチモン酸亜鉛(C)が細かく分散した分散液を予め調製し、それをポリビニルアセタール(A)に配合することが好ましい。最終的に樹脂組成物中において高度に分散できるためには、分散液中でも同様に細かく分散している必要があると考えられる。無水アンチモン酸亜鉛(C)は市販のゾルとして入手することができるが、その状態では一次粒子が凝集していて、その平均粒子径は100nm前後あるいはそれ以上であることが多い。したがって、分散液を市販ゾルの状態で使用した場合には、得られる合わせガラスが高ヘイズになることもあり、ヘイズ低減のために分散液に対して機械的に粉砕する操作を施すことが好ましい。
【0044】
無水アンチモン酸亜鉛(C)を、分散液中で粉砕して細かく分散させるための装置としては、サンドミル、ボールミル、ジェットミル、ホモジナイザー、アトライター、ペイントシェーカー、高速攪拌機、超音波分散機、ビーズミルなどが挙げられる。これらの装置を用いて凝集した無水アンチモン酸亜鉛(C)の粒子を粉砕して分散させることができる。効率良く、細かい平均粒子径に到達させるためにはビーズミルが好ましい。
【0045】
具体的な合わせガラス用中間膜の製造方法としては、ポリビニルピロリドン(B)、無水アンチモン酸亜鉛(C)及び水(E)を含有し、ポリビニルピロリドン(B)が溶解した分散液(d2)を予め調製してから、分散液(d2)、可塑剤(D)及びポリビニルアセタール(A)を溶融混合し、フィルム状に成形する方法が好適な方法として挙げられる。こうすることによって、ポリビニルピロリドン(B)が無水アンチモン酸亜鉛(C)に対して保護コロイド(分散剤)として働くことができると考えられる。ポリビニルピロリドン(B)が溶解していない分散液とポリビニルアセタール(A)を溶融混合した場合には、溶融混練時に、無水アンチモン酸亜鉛(C)の粒子が凝集して、フィルムのヘイズが増大し、目的とする透明性が得られないおそれがある。ここで、分散液(d2)、可塑剤(D)及びポリビニルアセタール(A)を溶融混合する順序は特に限定されない。
【0046】
分散液(d2)に含まれる水の重量は、ポリビニルピロリドン(B)の重量の1〜100倍であることが好ましい。一定量以上の水を含有することによって、ポリビニルピロリドン(B)を溶解させることが容易となる。水の含有量は、ポリビニルピロリドン(B)の重量の4倍以上であることがより好ましい。一方、水の含有量が多すぎると、中間膜の成形までに除去しなければならず、エネルギー的に不利であるし、溶融成形性も低下する場合がある。水の含有量は、ポリビニルピロリドン(B)の重量の50倍以下であることがより好ましく、20倍以下であることがさらに好ましい。
【0047】
そして、上記分散液(d2)を調製するに際して、ポリビニルピロリドン(B)が水に溶解した水溶液(s1)と、無水アンチモン酸亜鉛(C)を含有する分散液(d1)とを混合する方法が好適である。無水アンチモン酸亜鉛(C)は、粉体よりも分散液(d1)の方が粒子径の小さい粒子を入手しやすいからである。このとき、水溶液(s1)に分散液(d1)を混合することが、均一な分散液(d2)が得られやすい点から好ましい。
【0048】
ポリビニルピロリドン(B)を含む水溶液(s1)を調製する際、水溶液(s1)のpH値を、あらかじめ無水アンチモン酸亜鉛(C)が安定に分散できる値に調整してあることが好ましい。無水アンチモン酸亜鉛(C)及びポリビニルピロリドン(B)以外の添加物が存在する場合を考えれば、水溶液(s1)のpH値は一意的に規定されるものではないが、無水アンチモン酸亜鉛(C)の表面電荷を考慮すれば、ポリビニルピロリドン(B)を含む水溶液(s1)のpH値は4.5以上が好ましく、5.5以上がより好ましい。pH値が4.5未満であると、保護コロイド効果が発現する前に無水アンチモン酸亜鉛(C)が凝集する場合がある。また、pHを調整する際に添加される化合物は特に限定されるものではない。
【0049】
分散液(d1)に含まれる溶媒としては、水又は水に溶解可能な有機溶媒を用いることができる。このような有機溶媒としては、例えばメチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、2−プロピルアルコール、ブチルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ヘキシレングリコール、テトラヒドロフラン、アセトン、γ−ブチロラクトン、ε−カプロラクトン、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド等を用いることができる。
【0050】
上記分散液(d1)及び分散液(d2)の少なくともいずれかに対して粉砕処理を施すことが好ましい。粉砕方法については前述の通りである。なかでも、粉砕処理時の溶液の取り扱い性や製造コストの観点から、分散液(d1)に対して粉砕処理を施すことが好ましい。粘度が高くなく量の少ない分散液(d1)に対して粉砕処理を施すことによって、粉砕の効率が向上する。
【0051】
上記分散液(d2)、可塑剤(D)及びポリビニルアセタール(A)を混合する方法としては、生産性などの観点から溶融混練により混合することが好ましい。混練方法としては特に限定されず、一軸押出機、二軸押出機、ブラベンダー、オープンロール、ニーダーなどの公知の混練機を用いることができる。このとき、水(E)は、混練操作中に除去することが好ましく、例えば押出機であればベントから水(E)を揮発させて除去することができる。
【0052】
フィルム状に成形する方法は公知の方法を採用することができる。上記溶融混練装置に直接Tダイを装着してフィルムを製造することもできるし、一旦樹脂組成物ペレットを製造してから、別途フィルムを成形しても構わない。フィルムの膜厚は、特に限定されるものではないが、合わせガラスとして最小限必要な耐貫通性や耐候性を考慮すると、0.2〜1.2mm、好ましくは0.3〜1.0mmである。
【0053】
こうして得られた本発明の合わせガラス用中間膜を用いて合わせガラスが製造される。用いられるガラスは特に限定されず、一般に使用されているものが使用でき、例えば、フロート板ガラス、磨き板ガラス、型板ガラス、網入りガラス、線入りガラス、着色されたガラス、熱線吸収ガラス等が挙げられる。また、無機ガラス以外に、透明性に優れるポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート等を用いても良い。本発明の合わせガラスを製造する方法としては特に限定されず、従来公知の方法を用いることができる。具体的には、中間膜を少なくとも2枚のガラス板で挟み、加熱溶融させてから冷却固化させることによって合わせガラスが製造される。
【0054】
本発明の合わせガラスは、波長領域380〜780nmでの可視光透過率が70%以上であることが好ましく、75%以上であることがより好ましく、77%以上がさらに好ましい。また、本発明の合わせガラスは、波長領域300nm〜2500nmでの日射透過率が70%以下であることが好ましく、65%以下であることがより好ましく、63%以下であることがさらに好ましい。波長領域380〜780nmでの可視光透過率が70%以上であり、かつ、波長領域300nm〜2500nmでの日射透過率が70%以下であることによって、可視光を透過させながら遮熱効果を得ることができる。可視光透過率が日射透過率よりも10%以上高いことが好ましく、15%以上高いことがより好ましい。また、本発明の合わせガラスのヘイズが2%以下であることが好ましく、それによって透明性の良好な合わせガラスとすることができる。
【0055】
本発明の合わせガラス用中間膜は、透明性及び遮熱性に優れている。したがって、これをガラスと積層することにより得られる合わせガラスは、建築物、車両、航空機、船舶などの窓材などとして広く用いることができる。合わせガラスが用いられる車両としては、自動車、電車などが挙げられ、自動車においては、本発明の合わせガラスを、フロントガラス、サイドガラス、リアガラス、ルーフガラスなどとして用いることができる。
【実施例】
【0056】
以下、実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明は実施例により何ら限定されるものではない。なお、以下の実施例及び比較例において、合わせガラスの可視光透過率、日射透過率及びヘイズは下記の方法に従って測定した。
【0057】
(1)可視光透過率・日射透過率
島津製作所株式会社製の分光光度計「SolidSpec−3700」を用い、作製した合わせガラスについて、波長領域280〜2500nmの透過率を測定した。そして、JIS R3106に準じ、380〜780nmまでの可視光透過率(%)を求めた。また、JIS R3106記載の重価係数を用いて300〜2500nmまでの日射透過率(%)を求めた。
【0058】
(2)ヘイズ
日本電色工業株式会社製の濁度計「NDH−5000」を用い、作製した合わせガラスについて、JIS K7105に準じてヘイズ(%)を測定した。
【0059】
実施例1
[分散液の作製]
化学組成比がZnSbである無水アンチモン酸亜鉛(C)の60重量%メタノール分散液(日産化学株式会社製「CX−Z693M−F」)をビーズミルにて粉砕処理して、分散液(d1)を得た。この分散液(d1)0.5gを、ポリビニルピロリドン(B)(東京化成工業株式会社製「ポリビニルピロリドンK−90」重量平均分子量630000)0.3gが溶解したpH6.3の水溶液(s1)3.0gに攪拌しながら加え、分散液(d2)を得た。
【0060】
[合わせガラス用中間膜の作製]
以上のようにして調製した分散液(d2)と、可塑剤(D)としてトリエチレングリコール−ジ−2−エチルヘキサノエート(以下3G8と略す)15.2gを、ポリビニルブチラール(A)(原料ポリビニルアルコールの粘度平均重合度1700、アセタール化度72モル%)40gに添加し混合した。この混合物をラボプラストミルで、170℃で混練した後、プレス機で、140℃、5分間プレス成形することにより1.0mmの合わせガラス用中間膜を作製した。サンプル作製条件を表1に示す。表1中、PVBはポリビニルブチラール(A)、PVPはポリビニルピロリドン(B)を示す。
【0061】
[合わせガラスの作製及び評価]
得られた合わせガラス用中間膜を2mm厚のガラス(Saint Gobain社製、Planilux Clear)2枚を用いて挟んだ後、減圧下、140℃で90分保持することにより、合わせガラスを作製した。得られた合わせガラスについて評価した結果を表2に示す。
【0062】
実施例2
実施例1において、分散液(d2)を調製する際に、ポリビニルピロリドン(B)0.6gが溶解した水溶液(s1)6.0gを添加したこと以外は実施例1と同様にしてサンプルを作製した。サンプル作製条件について表1に示す。また、得られた合わせガラス用中間膜及び合わせガラスについて性能を評価した結果を表2に示す。
【0063】
実施例3
実施例1において、分散液(d2)を調製する際に添加したポリビニルピロリドン(B)水溶液の代わりに、アイエスピー・ジャパン株式会社製ポリビニルピロリドン(B)(重量平均分子量1300000)0.3gを溶解させたpH4.3の水溶液(s1)に、1重量%の水酸化ナトリウム水溶液を添加し、pHを10.3に調整したポリビニルピロリドン水溶液(s1)を添加したこと以外は実施例1と同様にしてサンプルを作製した。サンプル作製条件について表1に示す。また、得られた合わせガラス用中間膜及び合わせガラスについて性能を評価した結果を表2に示す。
【0064】
比較例1
実施例1において、無水アンチモン酸亜鉛を含有する分散剤(d2)を添加しなかったこと以外は実施例1と同様にしてサンプルを作製した。サンプル作製条件について表1に示す。また、得られた合わせガラス用中間膜及び合わせガラスについて性能を評価した結果を表2に示す。
【0065】
比較例2
実施例1において、ポリビニルピロリドン水溶液(s1)を添加しなかったこと以外は実施例1と同様にしてサンプルを作製した。サンプル作製条件について表1に示す。また、得られた合わせガラス用中間膜及び合わせガラスについて性能を評価した結果を表2に示す。
【0066】
比較例3
実施例1において、ポリビニルピロリドン(B)の粉末0.3gを水に溶解させずに、直接無水アンチモン酸亜鉛の分散液(d1)に添加したこと以外は実施例1と同様にしてサンプルを作製した。サンプル作製条件について表1に示す。また、得られた合わせガラス用中間膜及び合わせガラスについて性能を評価した結果を表2に示す。
【0067】
比較例4
実施例1において、分散液(d2)を調製する際に、0.15gのポリビニルピロリドン(B)が溶解した水溶液(s1)1.5gを添加したこと以外は実施例1と同様にしてサンプルを作製した。サンプル作製条件について表1に示す。また、得られた合わせガラス用中間膜及び合わせガラスについて性能を評価した結果を表2に示す。
【0068】
比較例5
実施例1において、分散液(d2)を調製する際に添加したポリビニルピロリドン(B)の種類を、Scientific Polymer Products社製ポリビニルピロリドン(重量平均分子量40000)に変えたこと以外は実施例1と同様にしてサンプルを作製した。サンプル作製条件について表1に示す。また、得られた合わせガラス用中間膜及び合わせガラスについて性能を評価した結果を表2に示す。
【0069】
比較例6
実施例1において、分散液(d2)を調製する際に添加したポリビニルピロリドン(B)の種類を、アイエスピー・ジャパン株式会社製ポリビニルピロリドン(重量平均分子量1300000)に変えたこと以外は実施例1と同様にしてサンプルを作製した。サンプル作製条件について表1に示す。また、得られた合わせガラス用中間膜及び合わせガラスについて性能を評価した結果を表2に示す。
【0070】
【表1】

【0071】
【表2】

【0072】
表1及び2に示す結果から、本発明の合わせガラス用中間膜及び合わせガラス(実施例1〜3)は、高い可視光透過率を保持しながら、日射透過率を低く抑え、かつヘイズがほとんどなく、高い透明性と遮熱性を兼ね備えていることがわかる。一方、比較例1のように無水アンチモン酸亜鉛(C)を含有しない場合は、遮熱性能が十分ではない。比較例2のように分散液にポリビニルピロリドン水溶液(s1)を添加しない場合は、無水アンチモン酸亜鉛(C)の微粒子が凝集し、透明性が十分ではない。比較例3のように、ポリビニルピロリドン(B)を水に溶解させずに粉体のまま分散液に混合した場合、充分な保護コロイド効果が発現せず無水アンチモン酸亜鉛(C)が凝集し、透明性、可視光透過率ともに十分ではない。比較例4のように、ポリビニルピロリドン(B)の添加量が無水アンチモン酸亜鉛(C)100重量部に対して50重量部である場合、充分な保護コロイド効果が発現せず無水アンチモン酸亜鉛(C)が凝集し、透明性、可視光透過率ともに十分ではない。比較例5のように、添加するポリビニルピロリドン(B)の重量平均分子量が50000未満である場合、ポリビニルピロリドン(B)の立体反発力に起因する保護コロイド効果が発現せず無水アンチモン酸亜鉛(C)が凝集し、透明性、可視光透過率ともに十分ではない。比較例6のように、ポリビニルピロリドン水溶液(s1)のpHを調整しなかった場合、保護コロイド効果が発現する前に無水アンチモン酸亜鉛(C)が凝集し、透明性が十分ではない。
【0073】
本発明によれば、透明性に優れ、かつ熱線を効率よく遮蔽した合わせガラス用中間膜を提供することができ、該合わせガラス用中間膜はガラスと積層することにより合わせガラスとすることができる。このようにして得られる合わせガラスは、例えば、自動車のフロントガラス、サイドガラス、リアガラス、ルーフガラス、航空機や電車等の乗り物のガラス部分、建築用ガラス等に好適に用いることができ、温度上昇を抑制することで過剰な冷房設備の可動を低減でき、環境に優しい空間設計を可能とするものである。また、その製造において水を含む溶媒を使用することができるため、取り扱い上安全で環境にも優しい製造工程を実現できる。従って本発明は、製造工程から製品性能に到るまで真の意味で環境配慮型の合わせガラスを提供できるものである。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリビニルアセタール(A)、ポリビニルピロリドン(B)、無水アンチモン酸亜鉛(C)及び可塑剤(D)を含有する樹脂組成物からなる合わせガラス用中間膜であって、該中間膜を2mm厚のクリアガラス2枚で挟んで接着して作製した合わせガラスにおいて、JIS K7105に準じて測定した場合のヘイズが2%以下である合わせガラス用中間膜。
【請求項2】
前記合わせガラス用中間膜を2mm厚のクリアガラス2枚で挟んで接着して作製した合わせガラスにおいて、JIS R3106に準じて算出した、波長領域380〜780nmでの可視光透過率が70%以上であり、かつ、波長領域300〜2500nmでの日射透過率が70%以下である請求項1記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項3】
ポリビニルアセタール(A)100重量部に対して可塑剤(D)を20〜100重量部含有する請求項1または2に記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項4】
ポリビニルアセタール(A)と可塑剤(D)の合計100重量部に対して無水アンチモン酸亜鉛(C)を0.05〜2重量部含有する請求項1〜3のいずれかに記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項5】
無水アンチモン酸亜鉛(C)100重量部に対してポリビニルピロリドン(B)を60〜300重量部含有する請求項1〜4のいずれかに記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項6】
ポリビニルピロリドン(B)の重量平均分子量が50000〜1500000である請求項1〜5のいずれかに記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の合わせガラス用中間膜を用いて複数のガラス板を接着してなる合わせガラス。
【請求項8】
ポリビニルピロリドン(B)、無水アンチモン酸亜鉛(C)及び水(E)を含有し、ポリビニルピロリドン(B)が溶解した分散液(d2)を予め調製してから、分散液(d2)、可塑剤(D)及びポリビニルアセタール(A)を溶融混合し、フィルム状に成形することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の合わせガラス用中間膜の製造方法。
【請求項9】
ポリビニルピロリドン(B)が水(E)に溶解した水溶液(s1)と、無水アンチモン酸亜鉛(C)を含有する分散液(d1)とを混合して分散液(d2)を調製する請求項8記載の合わせガラス用中間膜の製造方法。
【請求項10】
水溶液(s1)の25℃におけるpH値が4.5以上である請求項9記載の合わせガラス用中間膜の製造方法。
【請求項11】
分散液(d1)及び分散液(d2)の少なくともいずれかに対して粉砕処理を施す請求項8〜10のいずれか記載の合わせガラス用中間膜の製造方法。

【公開番号】特開2010−285305(P2010−285305A)
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−138867(P2009−138867)
【出願日】平成21年6月10日(2009.6.10)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.VICS
【出願人】(000001085)株式会社クラレ (1,607)
【Fターム(参考)】