説明

合わせガラス用中間膜及び合わせガラス

【課題】遮熱性が高く、かつ可視光線透過率が高い合わせガラスを得ることができる合わせガラス用中間膜を提供する。
【解決手段】本発明に係る合わせガラス用中間膜2は、熱可塑性樹脂と、可塑剤と、遮熱粒子と、フタロシアニン化合物、ナフタロシアニン化合物及びアントラシアニン化合物の内の少なくとも一種の成分とを含有する。上記熱可塑性樹脂100重量部に対する上記遮熱粒子の含有量を含有量Aとし、上記熱可塑性樹脂100重量部に対する上記成分の含有量を含有量Bとしたときに、合わせガラス用中間膜2における上記含有量Aは0.1〜3重量部の範囲内であり、かつ、上記含有量Aの上記含有量Bに対する比(上記含有量A/上記含有量B)は3〜2000の範囲内である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車又は建築物などの合わせガラスに用いられる合わせガラス用中間膜に関し、より詳細には、合わせガラスの遮熱性を高めることができる合わせガラス用中間膜、並びに該合わせガラス用中間膜を用いた合わせガラスに関する。
【背景技術】
【0002】
合わせガラスは、外部衝撃を受けて破損してもガラスの破片の飛散量が少なく、安全性に優れている。このため、上記合わせガラスは、自動車、鉄道車両、航空機、船舶及び建築物等に広く使用されている。上記合わせガラスは、一対のガラス板の間に合わせガラス用中間膜を挟み込むことにより、製造されている。このような車両及び建築物の開口部に用いられる合わせガラスには、高い遮熱性が求められる。
【0003】
可視光よりも長い波長780nm以上の赤外線は、紫外線と比較して、エネルギー量が小さい。しかしながら、赤外線は熱的作用が大きく、赤外線が物質にいったん吸収されると熱として放出される。このため、赤外線は一般に熱線と呼ばれている。従って、合わせガラスの遮熱性を高めるためには、赤外線を十分に遮断する必要がある。
【0004】
上記赤外線(熱線)を効果的に遮断するために、下記の特許文献1には、錫ドープ酸化インジウム粒子(ITO粒子)又はアンチモンドープ酸化錫粒子(ATO粒子)などの遮熱粒子を含有する合わせガラス用中間膜が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】WO01/25162A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、ITO粒子又はATO粒子を含む従来の中間膜の遮熱性を更に高めることが要求されている。しかし、ITO粒子又はATO粒子は、近赤外線を充分に吸収しない。従って、特許文献1に記載のように、中間膜中にITO粒子又はATO粒子を添加しただけでは、合わせガラスの遮熱性を大きく高めることは困難である。
【0007】
例えば、米国において、カリフォルニア大気資源委員会(CARB(California Air Resources Board))は、温室効果ガスを削減するために、自動車から排出される二酸化炭素の量を減らすことを提案していた。自動車から排出される二酸化炭素の量を減らすために、上記CARBは、合わせガラスを透過して自動車内に流入する熱エネルギーを規制して、エアコンで消費される燃料を低減し、自動車の燃費を改善することを検討していた。具体的には、上記CARBは、クールカー規制(Cool Cars Standards)の導入を予定していた。
【0008】
上記クールカー規制では、具体的には、2012年に、自動車に用いられる合わせガラスのTts(Total Solar Transmittance)が50%以下であることが要求される予定であった。2016年には、上記合わせガラスの上記Ttsが40%以下であることが要求される予定であった。なお、上記Ttsは、熱線の遮蔽性の指標である。
【0009】
なお、一般的に熱反タイプと呼ばれる、金属薄膜を蒸着したガラス又は熱線反射PETを用いた熱線反射合わせガラスは、赤外線だけでなく通信波長領域の通信波を反射する。熱線反射合わせガラスをウインドシールドに用いる場合、多くのセンサー類に対応するため、熱線反射部分をくり抜く必要がある。この結果、Ttsが50%である熱線反射合わせガラスを用いたウインドシールド全面の平均のTtsは約53%となる。従って、通信波を透過し、赤外線を吸収するタイプの合わせガラスでは、Ttsが53%まで許容される見通しであった。
【0010】
2010年8月の時点では、上記クールカー規制の導入は見送られたものの、上記Ttsが低い合わせガラスが求められる傾向にあることに変わりはない。
さらに、上記合わせガラスには、遮熱性が高いだけでなく、可視光線透過率(Visible Transmittance)が高いことも要求される。例えば、可視光線透過率は70%以上であることが望ましい。すなわち、上記可視光線透過率を高く維持したままで、上記Ttsを低くすることが要求される。
【0011】
特許文献1に記載のような遮熱粒子を含有する合わせガラス用中間膜を用いた場合には、高い遮熱性と高い上記可視光線透過率とをいずれも満足する合わせガラスを得ることは極めて困難である。例えば、上記Tts53%以下及び上記可視光線透過率70%以上のいずれも満たす合わせガラスを得ることは極めて困難である。
【0012】
本発明の目的は、遮熱性が高く、かつ可視光線透過率が高い合わせガラスを得ることができる合わせガラス用中間膜、並びに該合わせガラス用中間膜を用いた合わせガラスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の広い局面によれば、熱可塑性樹脂と、可塑剤と、遮熱粒子と、フタロシアニン化合物、ナフタロシアニン化合物及びアントラシアニン化合物の内の少なくとも一種の成分とを含有し、上記熱可塑性樹脂100重量部に対する上記遮熱粒子の含有量を含有量Aとし、上記熱可塑性樹脂100重量部に対する上記成分の含有量を含有量Bとしたときに、上記含有量Aが0.1〜3重量部の範囲内であり、かつ、上記含有量Aの上記含有量Bに対する比(上記含有量A/上記含有量B)が3〜2000の範囲内である、合わせガラス用中間膜が提供される。
【0014】
本発明に係る合わせガラス用中間膜のある特定の局面では、上記比(上記含有量A/上記含有量B)は6〜1300の範囲内である。
本発明に係る合わせガラス用中間膜の他の特定の局面では、上記比(上記含有量A/上記含有量B)は25〜600の範囲内である。
【0015】
本発明に係る合わせガラス用中間膜の他の特定の局面では、上記含有量Aは0.2〜2重量部の範囲内である。
本発明に係る合わせガラス用中間膜のさらに他の特定の局面では、上記含有量Bは0.001〜0.02重量部の範囲内である。
【0016】
本発明に係る合わせガラス用中間膜のさらに他の特定の局面では、上記成分は、フタロシアニン、フタロシアニンの誘導体、ナフタロシアニン及びナフタロシアニンの誘導体からなる群から選択される少なくとも一種である。
【0017】
本発明に係る合わせガラス用中間膜の別の特定の局面では、上記遮熱粒子は、金属酸化物粒子である。
本発明に係る合わせガラス用中間膜のさらに別の特定の局面では、上記遮熱粒子は錫ドープ酸化インジウム粒子である。
【0018】
本発明に係る合わせガラスは、第1,第2の合わせガラス構成部材と、該第1,第2の合わせガラス構成部材の間に挟み込まれた中間膜とを備えており、該中間膜が、本発明に従って構成された合わせガラス用中間膜である。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る合わせガラス用中間膜は、熱可塑性樹脂と可塑剤と遮熱粒子と、フタロシアニン化合物、ナフタロシアニン化合物及びアントラシアニン化合物の内の少なくとも一種の成分とを含有し、遮熱粒子の含有量Aが0.1〜3重量部の範囲内であり、かつ遮熱粒子の含有量Aの上記成分の含有量Bに対する比(含有量A/含有量B)が3〜2000の範囲内であるので、遮熱性が高く、かつ上記可視光線透過率が充分に高い合わせガラスを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係る合わせガラス用中間膜を用いた合わせガラスの一例を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の詳細を説明する。
本発明に係る合わせガラス用中間膜は、熱可塑性樹脂と、可塑剤と、遮熱粒子と、フタロシアニン化合物、ナフタロシアニン化合物及びアントラシアニン化合物の内の少なくとも一種の成分とを含有する。以下、フタロシアニン化合物、ナフタロシアニン化合物及びアントラシアニン化合物の内の少なくとも一種の成分を、成分Xと記載することがある。
【0022】
本発明に係る合わせガラス用中間膜では、上記熱可塑性樹脂100重量部に対する上記遮熱粒子の含有量(重量部)を含有量Aとし、上記熱可塑性樹脂100重量部に対する上記成分Xの含有量(重量部)を含有量Bとしたときに、上記含有量Aが0.1〜3重量部の範囲内であり、かつ、上記含有量Aの上記含有量Bに対する比(上記含有量A/上記含有量B)が3〜2000の範囲内である。上記遮熱粒子が金属酸化物粒子である場合には、上記遮熱粒子の含有量Aは、金属酸化物粒子の含有量を示す。上記遮熱粒子が錫ドープ酸化インジウム粒子(ITO粒子)である場合には、上記遮熱粒子の含有量Aは、ITO粒子の含有量を示す。
【0023】
本発明の主な特徴は、遮熱粒子と上記成分Xとが併用されており、かつこれらの含有量が上記関係を満たすことにある。これによって、遮熱性が充分に高く、かつ可視光線透過率(Visible Transmittance)が充分に高い合わせガラスを得ることができる。さらに、上記Tts(Total Solar Transmittance)が充分に低く、かつ可視光線透過率(Visible Transmittance)が充分に高い合わせガラスを得ることができる。すなわち、本発明に係る合わせガラス用中間膜の使用により、合わせガラスの遮熱性及び透明性を高めることができる。
【0024】
また、本発明に係る合わせガラス用中間膜の使用により、例えば、カリフォルニア大気資源委員会(CARB(California Air Resources Board))が導入を予定していたクールカー規制(Cool Cars Standards)の要求性能を満たす合わせガラスを得ることができる。具体的には、合わせガラスの上記Ttsを53%以下にすることができる。さらに、合わせガラスの上記可視光線透過率を70%以上にすることができる。なお、2010年8月の時点では、上記クールカー規制の導入は見送られたものの、上記Ttsが低い合わせガラスが求められる傾向にあることに変わりはない。
【0025】
従来、ITO粒子などの遮熱粒子を含有する合わせガラス用中間膜を用いた場合には、上記Ttsが53%以下かつ上記可視光線透過率が70%以上のいずれも満たす合わせガラスを得ることは極めて困難であった。しかしながら、本発明に係る合わせガラス用中間膜の使用により、上記Ttsが53%以下かつ上記可視光線透過率が70%以上のいずれも満たす合わせガラスを得ることができる。従って、米国において導入が予定されていたクールカー規制に対応した合わせガラスを得ることができる。
【0026】
なお、本明細書において、上記Tts及び上記可視光線透過率の性能は、上記クールカー規制で要求されていた性能である。上記Ttsは、例えば、導入が予定されていたクールカー規制により定められた測定方法により測定される。上記可視光線透過率は、例えば、JIS R3211(1998)に準拠して測定される。
【0027】
(熱可塑性樹脂)
本発明に係る合わせガラス用中間膜に含まれている上記熱可塑性樹脂は特に限定されない。上記熱可塑性樹脂として、従来公知の熱可塑性樹脂を用いることができる。上記熱可塑性樹脂は1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記熱可塑性樹脂としては、ポリビニルアセタール樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、エチレン−アクリル共重合体樹脂、ポリウレタン樹脂及びポリビニルアルコール樹脂等が挙げられる。これら以外の熱可塑性樹脂を用いてもよい。
【0028】
上記熱可塑性樹脂は、ポリビニルアセタール樹脂であることが好ましい。ポリビニルアセタール樹脂と可塑剤との併用により、合わせガラス構成部材に対する中間膜の接着力をより一層高くすることができる。
上記ポリビニルアセタール樹脂は、例えば、ポリビニルアルコールをアルデヒドによりアセタール化することにより製造できる。上記ポリビニルアルコールは、例えば、ポリ酢酸ビニルをけん化することにより得られる。上記ポリビニルアルコールのけん化度は、一般に80〜99.8モル%の範囲内である。
【0029】
上記ポリビニルアルコールの重合度の好ましい下限は200、より好ましい下限は500、好ましい上限は3,000、より好ましい上限は2,500である。上記重合度が低すぎると、合わせガラスの耐貫通性が低下する傾向がある。上記重合度が高すぎると、合わせガラス用中間膜の成形が困難となることがある。
【0030】
上記アルデヒドは特に限定されない。上記アルデヒドとして、一般には、炭素数が1〜10のアルデヒドが好適に用いられる。上記炭素数が1〜10のアルデヒドとしては、例えば、n−ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、n−バレルアルデヒド、2−エチルブチルアルデヒド、n−ヘキシルアルデヒド、n−オクチルアルデヒド、n−ノニルアルデヒド、n−デシルアルデヒド、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド及びベンズアルデヒド等が挙げられる。なかでも、プロピオンアルデヒド、n−ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、n−ヘキシルアルデヒド又はn−バレルアルデヒドが好ましく、プロピオンアルデヒド、n−ブチルアルデヒド又はイソブチルアルデヒドがより好ましく、n−ブチルアルデヒドが更に好ましい。上記アルデヒドは、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0031】
上記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率(水酸基量)は、15〜40モル%の範囲内であることが好ましい。上記水酸基の含有率のより好ましい下限は18モル%、より好ましい上限は35モル%である。上記水酸基の含有率が低すぎると、中間膜の接着性が低くなることがある。また、上記水酸基の含有率が高すぎると、中間膜の柔軟性が低くなり、中間膜の取扱いに問題が生じやすい。
【0032】
上記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率は、水酸基が結合しているエチレン基量を、主鎖の全エチレン基量で除算して求めたモル分率を百分率で示した値である。上記水酸基が結合しているエチレン基量は、例えば、JIS K6726「ポリビニルアルコール試験方法」に準拠して、原料となるポリビニルアルコールの水酸基が結合しているエチレン基量を測定することにより求めることができる。
【0033】
上記ポリビニルアセタール樹脂のアセチル化度(アセチル基量)の好ましい下限は0.1モル%、より好ましい下限は0.3モル%、さらに好ましい下限は0.5モル%、好ましい上限は30モル%、より好ましい上限は25モル%、さらに好ましい上限は20モル%である。上記アセチル化度が低すぎると、上記ポリビニルアセタール樹脂と上記可塑剤との相溶性が低下することがある。上記アセチル化度が高すぎると、中間膜の耐湿性が低くなることがある。
【0034】
上記アセチル化度は、主鎖の全エチレン基量から、アセタール基が結合しているエチレン基量と、水酸基が結合しているエチレン基量とを差し引いた値を、主鎖の全エチレン基量で除算して求めたモル分率を百分率で示した値である。上記アセタール基が結合しているエチレン基量は、例えば、JIS K6728「ポリビニルブチラール試験方法」に準拠して測定できる。
【0035】
上記ポリビニルアセタール樹脂のアセタール化度(上記ポリビニルアセタール樹脂がポリビニルブチラール樹脂である場合にはブチラール化度)の好ましい下限は60モル%、より好ましい下限は63モル%、好ましい上限は85モル%、より好ましい上限は75モル%、さらに好ましい上限は70モル%である。上記アセタール化度が低すぎると、ポリビニルアセタール樹脂と可塑剤との相溶性が低いことがある。上記アセタール化度が高すぎると、ポリビニルアセタール樹脂を製造するために必要な反応時間が長くなることがある。
【0036】
上記アセタール化度は、アセタール基が結合しているエチレン基量を、主鎖の全エチレン基量で除算して求めたモル分率を百分率で示した値である。
上記アセタール化度は、JIS K6728「ポリビニルブチラール試験方法」に準拠した方法により、アセチル化度(アセチル基量)と水酸基の含有率(ビニルアルコール量)とを測定し、得られた測定結果からモル分率を算出し、ついで、100モル%からアセチル化度と水酸基の含有率とを差し引くことにより算出され得る。
【0037】
なお、ポリビニルアセタール樹脂がポリビニルブチラール樹脂である場合は、上記アセタール化度(ブチラール化度)及びアセチル化度(アセチル基量)は、JIS K6728「ポリビニルブチラール試験方法」に準拠した方法により測定された結果から算出され得る。
【0038】
(可塑剤)
本発明に係る合わせガラス用中間膜に含まれている上記可塑剤は特に限定されない。上記可塑剤として、従来公知の可塑剤を用いることができる。上記可塑剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0039】
上記可塑剤としては、例えば、一塩基性有機酸エステル及び多塩基性有機酸エステル等の有機エステル可塑剤、並びに有機リン酸可塑剤及び有機亜リン酸可塑剤などのリン酸可塑剤等が挙げられる。なかでも、有機エステル可塑剤が好ましい。上記可塑剤は液状可塑剤であることが好ましい。
【0040】
上記一塩基性有機酸エステルとしては、特に限定されず、例えば、グリコールと一塩基性有機酸との反応によって得られたグリコールエステル、並びにトリエチレングリコール又はトリプロピレングリコールと一塩基性有機酸とのエステル等が挙げられる。上記グリコールとしては、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール及びトリプロピレングリコール等が挙げられる。上記一塩基性有機酸としては、酪酸、イソ酪酸、カプロン酸、2−エチル酪酸、ヘプチル酸、n−オクチル酸、2−エチルヘキシル酸、n−ノニル酸及びデシル酸等が挙げられる。
【0041】
上記多塩基性有機酸エステルとしては、特に限定されず、例えば、多塩基性有機酸と、炭素数4〜8の直鎖又は分岐構造を有するアルコールとのエステル化合物が挙げられる。上記多塩基性有機酸としては、アジピン酸、セバシン酸及びアゼライン酸等が挙げられる。
【0042】
上記有機エステル可塑剤としては、特に限定されず、トリエチレングリコールジ−2−エチルブチレート、トリエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエート、トリエチレングリコールジカプリレート、トリエチレングリコールジ−n−オクタノエート、トリエチレングリコールジ−n−ヘプタノエート、テトラエチレングリコールジ−n−ヘプタノエート、ジブチルセバケート、ジオクチルアゼレート、ジブチルカルビトールアジペート、エチレングリコールジ−2−エチルブチレート、1,3−プロピレングリコールジ−2−エチルブチレート、1,4−ブチレングリコールジ−2−エチルブチレート、ジエチレングリコールジ−2−エチルブチレート、ジエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエート、ジプロピレングリコールジ−2−エチルブチレート、トリエチレングリコールジ−2−エチルペンタノエート、テトラエチレングリコールジ−2−エチルブチレート、ジエチレングリコールジカプリエート、アジピン酸ジヘキシル、アジピン酸ジオクチル、アジピン酸ヘキシルシクロヘキシル、アジピン酸ヘプチルとアジピン酸ノニルとの混合物、アジピン酸ジイソノニル、アジピン酸ジイソデシル、アジピン酸ヘプチルノニル、セバシン酸ジブチル、油変性セバシン酸アルキド、及びリン酸エステルとアジピン酸エステルとの混合物等が挙げられる。これら以外の有機エステル可塑剤を用いてもよい。上述のアジピン酸エステル以外の他のアジピン酸エステルを用いてもよい。
【0043】
上記有機リン酸可塑剤としては、特に限定されず、例えば、トリブトキシエチルホスフェート、イソデシルフェニルホスフェート及びトリイソプロピルホスフェート等が挙げられる。
上記可塑剤は、トリエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエート(3GO)及びトリエチレングリコールジ−2−エチルブチレート(3GH)の内の少なくとも一種であることが好ましく、トリエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエートであることがより好ましい。
【0044】
本発明に係る合わせガラス用中間膜における上記可塑剤の含有量は特に限定されない。上記熱可塑性樹脂100重量部に対して、上記可塑剤の含有量の好ましい下限は25重量部、より好ましい下限は30重量部、好ましい上限は60重量部、より好ましい上限は50重量部である。上記可塑剤の含有量が上記好ましい下限を満たすと、合わせガラスの耐貫通性をより一層高めることができる。上記可塑剤の含有量が上記好ましい上限を満たすと、中間膜の透明性をより一層高めることができる。
【0045】
(遮熱粒子)
本発明に係る合わせガラス用中間膜に含まれている遮熱粒子は、特に限定されない。上記遮熱粒子は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
可視光よりも長い波長780nm以上の赤外線は、紫外線と比較して、エネルギー量が小さい。しかしながら、赤外線は熱的作用が大きく、赤外線が物質にいったん吸収されると熱として放出される。このため、赤外線は一般に熱線と呼ばれている。上記ITO粒子などの遮熱粒子の使用により、赤外線(熱線)を効果的に遮断できる。なお、遮熱粒子とは、赤外線を吸収することができる粒子を意味する。
【0046】
上記遮熱粒子の具体例としては、アルミニウムドープ酸化錫粒子、インジウムドープ酸化錫粒子、アンチモンドープ酸化錫粒子(ATO粒子)、ガリウムドープ酸化亜鉛粒子(GZO粒子)、インジウムドープ酸化亜鉛粒子(IZO粒子)、アルミニウムドープ酸化亜鉛粒子(AZO粒子)、ニオブドープ酸化チタン粒子、ナトリウムドープ酸化タングステン粒子、セシウムドープ酸化タングステン粒子、タリウムドープ酸化タングステン粒子、ルビジウムドープ酸化タングステン粒子、錫ドープ酸化インジウム粒子(ITO粒子)、錫ドープ酸化亜鉛粒子、珪素ドープ酸化亜鉛粒子等の金属酸化物粒子や、六ホウ化ランタン(LaB)粒子等が挙げられる。これら以外の遮熱粒子を用いてもよい。なかでも、熱線の遮蔽機能が高いため、金属酸化物粒子が好ましく、ATO粒子、GZO粒子、IZO粒子、ITO粒子又はセシウムドープ酸化タングステン粒子がより好ましく、ITO粒子が特に好ましい。
【0047】
特に、熱線の遮蔽機能が高く、かつ入手が容易であるので、錫ドープ酸化インジウム粒子(ITO粒子)が好ましい。
合わせガラスの透明性及び遮熱性をより一層高める観点からは、上記遮熱粒子の平均粒子径の好ましい下限は10nm、より好ましい下限は20nm、好ましい上限は80nm、より好ましい上限は50nm、更に好ましい上限は25nmである。平均粒子径が上記好ましい下限を満たすと、熱線の遮蔽性を充分に高めることができる。平均粒子径が上記好ましい上限を満たすと、遮熱粒子の分散性を高めることができる。
【0048】
上記「平均粒子径」は、体積平均粒子径を示す。平均粒子径は、粒度分布測定装置(日機装社製「UPA−EX150」)等を用いて測定できる。
上記遮熱粒子の含有量を示す上記含有量Aは0.1〜3重量部の範囲内である。上記含有量Aが上記範囲内である場合には、遮熱性を充分に高くすることができ、上記Ttsを充分に低くすることができ、かつ上記可視光線透過率を充分に高くすることができる。例えば、上記Ttsを53%以下にすることができ、かつ上記可視光線透過率を70%以上にすることができる。また、上記含有量Aが3重量部を超えると、得られる合わせガラスのヘーズ値が高くなる。上記含有量Aの好ましい下限は0.14重量部、より好ましい下限は0.2重量部、更に好ましい下限は0.55重量部、特に好ましい下限は0.6重量部、好ましい上限は2重量部、より好ましい上限は1.8重量部、更に好ましい上限は1.65重量部である。上記含有量Aが上記好ましい下限を満たすと、遮熱性をより一層高くすることができ、上記Ttsをより一層低くすることができる。上記含有量Aが上記好ましい上限を満たすと、上記可視光線透過率をより一層高くすることができる。
【0049】
本発明の合わせガラス用中間膜は、上記遮熱粒子を0.1〜12g/mの割合で含有することが好ましい。上記遮熱粒子の割合が上記範囲内である場合には、遮熱性を充分に高くすることができ、上記Ttsを充分に低くすることができ、かつ上記可視光線透過率を充分に高くすることができる。上記遮熱粒子の割合の好ましい下限は、0.5g/m、より好ましい下限は0.8g/m、さらに好ましい下限は1.5g/m、特に好ましい下限は3g/mであり、好ましい上限は11g/m、より好ましい上限は10g/m、さらに好ましい上限は9g/m、特に好ましい上限は7g/mである。上記割合が上記好ましい下限を満たすと、遮熱性をより一層高くすることができ、上記Ttsをより一層低くすることができる。上記割合が上記好ましい上限を満たすと、上記可視光線透過率をより一層高くすることができる。
【0050】
(成分X)
上記成分Xは、フタロシアニン化合物、ナフタロシアニン化合物及びアントラシアニン化合物の内の少なくとも一種の成分である。
上記成分Xは特に限定されない。上記成分Xとして、従来公知のフタロシアニン化合物、ナフタロシアニン化合物及びアントラシアニン化合物を用いることができる。上記成分Xは、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0051】
上記遮熱粒子と上記成分Xとの併用により、赤外線(熱線)を充分に遮断できる。上記ITO粒子と上記成分Xとの併用により、赤外線をより一層効果的に遮断できる。
上記成分Xとしては、フタロシアニン、フタロシアニンの誘導体、ナフタロシアニン、ナフタロシアニンの誘導体、アントラシアニン及びアントラシアニンの誘導体等が挙げられる。上記フタロシアニン化合物及び上記フタロシアニンの誘導体はそれぞれ、フタロシアニン骨格を有することが好ましい。上記ナフタロシアニン化合物及び上記ナフタロシアニンの誘導体はそれぞれ、ナフタロシアニン骨格を有することが好ましい。上記アントラシアニン化合物及び上記アントラシアニンの誘導体はそれぞれ、アントラシアニン骨格を有することが好ましい。
【0052】
上記合わせガラスの遮熱性をより一層高くし、上記Ttsをより一層低くする観点からは、上記成分Xは、フタロシアニン、フタロシアニンの誘導体、ナフタロシアニン及びナフタロシアニンの誘導体からなる群から選択される少なくとも一種であることが好ましく、ナフタロシアニン及びナフタロシアニンの誘導体の内の少なくとも一種であることがより好ましい。
【0053】
遮熱性を効果的に高め、かつ長期間にわたり可視光線透過率をより一層高いレベルで維持する観点からは、上記成分Xはバナジウム原子又は銅原子を含有することが好ましく、バナジウム原子を含有することがより好ましく、銅原子を含有することもより好ましい。上記成分Xは、銅原子を含有する構造を有することが好ましい。
【0054】
上記遮熱粒子の含有量を示す上記含有量Aの上記成分Xの含有量を示す含有量Bに対する比(上記含有量A/上記含有量B)は、3〜2000の範囲内である。上記比(上記含有量A/上記含有量B)が上記範囲内であることにより、遮熱性を充分に高くすることができ、上記Ttsを充分に低くすることができ、かつ上記可視光線透過率を充分に高くすることができる。例えば、上記Ttsを53%以下にすることができ、かつ上記可視光線透過率を70%以上にすることができる。上記比(上記含有量A/上記含有量B)の好ましい下限は6、より好ましい下限は20、さらに好ましい下限は25、特に好ましい下限は30、好ましい上限は1300、より好ましい上限は600、さらに好ましい上限は250、特に好ましい上限は150である。上記比(上記含有量A/上記含有量B)が上記好ましい下限を満たすと、遮熱性を向上させることができる。上記比(上記含有量A/上記含有量B)が上記好ましい上限を満たすと、可視光線透過率を高くすることができる。
【0055】
本発明の合わせガラス用中間膜は、上記成分Xを0.01〜0.5g/mの割合で含有することが好ましい。上記成分Xの割合が上記範囲内である場合には、遮熱性を充分に高くすることができ、上記Ttsを充分に低くすることができ、かつ上記可視光線透過率を充分に高くすることができる。上記成分Xの割合の好ましい下限は、0.05g/m、より好ましい下限は0.08g/m、さらに好ましい下限は0.1g/m、特に好ましい下限は0.12g/mであり、好ましい上限は0.4g/m、より好ましい上限は0.3g/m、さらに好ましい上限は0.25g/m、特に好ましい上限は0.2g/mである。上記割合が上記好ましい下限を満たすと、上記Ttsをより一層低くすることができる。上記割合が上記好ましい上限を満たすと、上記可視光線透過率をより一層高くすることができる。
【0056】
上記熱可塑性樹脂100重量部に対する上記成分Xの含有量(含有量B)は特に限定されないが、上記成分Xの含有量Bの好ましい下限は0.001重量部、より好ましい下限は0.0014重量部、さらに好ましい下限は0.002重量部、特に好ましい下限は0.0025重量部、好ましい上限は0.05重量部、より好ましい上限は0.025重量部、さらに好ましい上限は0.02重量部、特に好ましい上限は0.01重量部である。上記含有量Bが上記好ましい下限を満たすと、遮熱性をより一層高くすることができ、上記Ttsをより一層低くすることができる。上記含有量Bが上記好ましい上限を満たすと、上記可視光線透過率をより一層高くすることができる。また、上記含有量Bが上記好ましい上限を満たすと、合わせガラスの彩度を低くすることができる。なお、彩度は、JIS Z8729に準拠して測定することができる。合わせガラスの上記彩度の好ましい上限は65、より好ましい上限は50、さらに好ましい上限は40、特に好ましい上限は35である。上記彩度が上記好ましい上限を満たすと、合わせガラスの着色を抑制することができる。
【0057】
(他の成分)
本発明に係る合わせガラス用中間膜は、必要に応じて、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤、難燃剤、帯電防止剤、顔料、染料、接着力調整剤、耐湿剤、蛍光増白剤及び赤外線吸収剤等の添加剤を含有していてもよい。本発明に係る合わせガラス用中間膜は、酸化防止剤を含有することが好ましい。本発明に係る合わせガラス用中間膜は、紫外線吸収剤を含有することが好ましい。
【0058】
(合わせガラス用中間膜及び合わせガラス)
図1に、本発明の一実施形態に係る合わせガラス用中間膜を用いた合わせガラスの一例を模式的に断面図で示す。
図1に示す合わせガラス1は、中間膜2と、第1,第2の合わせガラス構成部材3,4とを備える。中間膜2は、合わせガラスを得るために用いられる。中間膜2は、合わせガラス用中間膜である。中間膜2は、第1,第2の合わせガラス構成部材3,4の間に配置されている。中間膜2は、第1,第2の合わせガラス構成部材3,4の間に挟み込まれている。従って、合わせガラス1は、第1の合わせガラス構成部材3と、中間膜2と、第2の合わせガラス構成部材4とがこの順で積層されて構成されている。
【0059】
中間膜2は、熱可塑性樹脂と、可塑剤と、ITO粒子5と、ナフタロシアニン化合物とを含有する。ナフタロシアニン化合物にかえて、ナフタロシアニン化合物以外の成分Xを用いてもよく、例えばフタロシアニン化合物等を用いてもよい。中間膜2は、複数のITO粒子5を含有する。ITO粒子5以外の他の遮熱粒子を用いてもよい。中間膜2は、2層以上の多層構造を有していてもよい。
【0060】
第1,第2の合わせガラス構成部材3,4としては、ガラス板及びPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム等が挙げられる。合わせガラス1には、2枚のガラス板の間に中間膜が挟み込まれている合わせガラスだけでなく、ガラス板とPETフィルム等との間に中間膜が挟み込まれている合わせガラスも含まれる。合わせガラス1は、ガラス板含有積層体であり、少なくとも1枚のガラス板が用いられていることが好ましい。
【0061】
上記ガラス板としては、無機ガラス及び有機ガラスが挙げられる。上記無機ガラスとしては、フロート板ガラス、熱線吸収板ガラス、熱線反射板ガラス、磨き板ガラス、型板ガラス、網入り板ガラス、線入り板ガラス及びグリーンガラス等が挙げられる。上記有機ガラスは、無機ガラスに代用される合成樹脂ガラスである。上記有機ガラスとしては、ポリカーボネート板及びポリ(メタ)アクリル樹脂板等が挙げられる。上記ポリ(メタ)アクリル樹脂板としては、ポリメチル(メタ)アクリレート板等が挙げられる。
【0062】
第1,第2の合わせガラス構成部材3,4の厚みは、好ましくは1mm以上、好ましくは5mm以下、より好ましくは3mm以下である。また、合わせガラス構成部材3,4がガラス板である場合に、該ガラス板の厚みは、好ましくは1mm以上、好ましくは5mm以下、より好ましくは3mm以下である。合わせガラス構成部材3,4がPETフィルムである場合に、該PETフィルムの厚みは、0.03〜0.5mmの範囲内であることが好ましい。
【0063】
合わせガラス1の製造方法は特に限定されない。例えば、第1,第2の合わせガラス構成部材3,4の間に、中間膜2を挟んで、押圧ロールに通したり、又はゴムバックに入れて減圧吸引したりして、第1,第2の合わせガラス構成部材3,4と中間膜2との間に残留する空気を脱気する。その後、約70〜110℃で予備接着して積層体を得る。次に、積層体をオートクレーブに入れたり、又はプレスしたりして、約120〜150℃及び1〜1.5MPaの圧力で圧着する。このようにして、合わせガラス1を得ることができる。
【0064】
合わせガラス1は、自動車、鉄道車両、航空機、船舶及び建築物等に使用できる。合わせガラス1は、自動車のフロントガラス、サイドガラス、リアガラス又はルーフガラス等に使用できる。合わせガラス1は、これらの用途以外にも使用できる。遮熱性が高く、上記Ttsが低くかつ上記可視光線透過率が高いので、合わせガラス1は、自動車に好適に用いられる。
【0065】
遮熱性により一層優れた合わせガラスを得る観点からは、合わせガラス1の上記Ttsは、53%以下であることが好ましく、50%以下であることが好ましく、40%以下であることが好ましい。さらに、透明性により一層優れた合わせガラスを得る観点からは、合わせガラス1の上記可視光線透過率は、70%以上であることが好ましい。
【0066】
本発明の合わせガラス用中間膜を、厚さ2.0mmの2枚のガラス板の間に挟み込むことにより得られた合わせガラスの可視光線透過率は、70%以上であることが好ましい。さらに、本発明の合わせガラス用中間膜を、厚さ2.0mmの2枚の熱線吸収板ガラスの間に挟み込むことにより得られた合わせガラスの可視光線透過率は、70%以上であることが好ましい。上記熱線吸収板ガラスは、JIS R3208に準拠した熱線吸収板ガラスであることが好ましい。特に、厚さ0.76mmの合わせガラス用中間膜を、厚さ2.0mmの2枚の熱線吸収板ガラスの間に挟み込むことにより得られた合わせガラスの可視光線透過率は、70%以上であることが好ましい。なお、上記可視光線透過率とは、JIS R3211(1998)に準拠して測定され、得られた合わせガラスの波長380〜780nmにおける上記可視光線透過率を意味する。上記可視光線透過率を測定する装置として、特に限定されないが、例えば、分光光度計(日立ハイテク社製「U−4100」)を用いることができる。
【0067】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明する。本発明はこれら実施例のみに限定されない。
【0068】
(実施例1)
(1)分散液の作製
トリエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエート(3GO)40重量部、ITO粒子(三菱マテリアル社製)0.98重量部、及び、ナフタロシアニン化合物(銅ナフタロシアニン化合物、富士フイルム社製「FF IRSORB203」)0.0182重量部を混合し、さらに、分散剤であるリン酸エステル化合物を添加した後、水平型のマイクロビーズミルにて混合し、混合液を得た。その後、混合液にアセチルアセトン0.1重量部を撹拌下で添加し、分散液を作製した。なお、リン酸エステル化合物の含有量は遮熱粒子の含有量の1/10となるように調整した。
【0069】
(2)合わせガラス用中間膜の作製
ポリビニルブチラール樹脂(ブチラール化度68.5モル%、水酸基量30.5モル%)100重量部に対し、得られた分散液全量を添加し、ミキシングロールで充分に溶融混練した後、押出機を用いて押出して、厚み0.76mmの中間膜を得た。
【0070】
(3)合わせガラスの作製
得られた合わせガラス用中間膜を、その両端からJIS R3208に準拠した2枚の熱線吸収板ガラス(縦30cm×横30cm×厚さ2.0mm)で挟み込み、積層体を得た。この積層体をゴムバック内に入れ、2.6kPaの真空度で20分間脱気した後、脱気したままオーブン内に移し、更に90℃で30分間保持して真空プレスし、積層体を予備圧着した。オートクレーブ中で135℃及び圧力1.2MPaの条件で、仮圧着された積層体を20分間圧着し、合わせガラスを得た。
【0071】
(実施例2〜13、及び比較例1〜4)
合わせガラス用中間膜の組成(配合量)を下記の表1に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様にして、分散液、合わせガラス用中間膜、及び、合わせガラスを作製した。なお、実施例2〜13及び比較例1〜2,4でも、リン酸エステル化合物の含有量は遮熱粒子の含有量の1/10となるように調整した。比較例3では、リン酸エステル化合物を用いなかった。
【0072】
(実施例1〜13及び比較例1〜4の評価)
(1)Tts、及び、Tds(Solar Direct Transmittance)の測定
導入が予定されていた上記クールカー規制により定められた測定方法に従って、得られた合わせガラスの上記Tts及び上記Tdsを測定した。具体的には、分光光度計(日立ハイテク社製「U−4100」)を用いて、JIS R3106(1998)に準拠して、上記Tts及び上記Tdsを測定した。
【0073】
(2)可視光線透過率の測定
分光光度計(日立ハイテク社製「U−4100」)を用いて、JIS R3211(1998)に準拠して、得られた合わせガラスの波長380〜780nmにおける上記可視光線透過率を測定した。
【0074】
(3)へーズ値の測定
ヘーズメーター(東京電色社製「TC−HIIIDPK」)を用いて、JIS K6714に準拠して、得られた合わせガラスのヘーズ値を測定した。
【0075】
(4)彩度の測定
分光光度計(日立ハイテク社製「U−4100」)を用いて、JIS R3211(1998)に準拠して、得られた合わせガラスの波長380〜780nmにおける上記可視光線透過率を測定した。次に、JIS Z8729に準拠して、L表色系におけるaおよびbを算出した。算出したaおよびbを基に、以下の数式を用いて、Lh表色系における彩度Cを算出した。
[C]=([a+[b0.5
【0076】
結果を下記の表1に示す。なお、下記の表1では、分散液中での遮熱粒子の体積平均粒径を示した。下記の表1において、*1は、熱可塑性樹脂100重量部に対する含有量(重量部)を示し、*2は、合わせガラス用中間膜中での割合(g/m)を示す。また、下記の表1では、リン酸エステル化合物の含有量の記載は省略した。
【0077】
【表1】

【0078】
(実施例14)
ITO粒子(三菱マテリアル社製)をIZO粒子に変更し、更に合わせガラス用中間膜の組成(配合量)を下記の表1に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様にして、分散液、合わせガラス用中間膜、及び、合わせガラスを作製した。なお、実施例14でも、リン酸エステル化合物の含有量は遮熱粒子の含有量の1/10となるように調整した。
【0079】
(実施例15)
ITO粒子(三菱マテリアル社製)をATO粒子に変更し、更に合わせガラス用中間膜の組成(配合量)を下記の表1に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様にして、分散液、合わせガラス用中間膜、及び、合わせガラスを作製した。なお、実施例15でも、リン酸エステル化合物の含有量は遮熱粒子の含有量の1/10となるように調整した。
【0080】
(実施例14〜15の評価)
実施例1〜13及び比較例1〜4と同様の評価項目(1)〜(4)について、評価を実施した。
【0081】
結果を下記の表2に示す。なお、下記の表2では、分散液中での遮熱粒子の体積平均粒径を示した。下記の表2において、*1は、熱可塑性樹脂100重量部に対する含有量(重量部)を示し、*2は、合わせガラス用中間膜中での割合(g/m)を示す。また、下記の表2では、リン酸エステル化合物の含有量の記載は省略した。
【0082】
【表2】

【0083】
なお、2枚の熱線吸収板ガラスのかわりに、2枚の透明なフロートガラス(縦30cm×横30cm×厚さ2.5mm)を用いたこと以外は実施例1〜15及び比較例1〜4と同様にして得られた合わせガラスについて、Tts、Tds、可視光線透過率、へーズ値及び彩度を評価した結果の値は、実施例1〜15及び比較例1〜4の合わせガラスを評価した結果の値と同様の傾向であった。
【符号の説明】
【0084】
1…合わせガラス
2…合わせガラス用中間膜
3…第1の合わせガラス構成部材
4…第2の合わせガラス構成部材
5…ITO粒子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂と、
可塑剤と、
遮熱粒子と、
フタロシアニン化合物、ナフタロシアニン化合物及びアントラシアニン化合物の内の少なくとも一種の成分とを含有し、
前記熱可塑性樹脂100重量部に対する前記遮熱粒子の含有量を含有量Aとし、前記熱可塑性樹脂100重量部に対する前記成分の含有量を含有量Bとしたときに、前記含有量Aが0.1〜3重量部の範囲内であり、かつ、前記含有量Aの前記含有量Bに対する比(前記含有量A/前記含有量B)が3〜2000の範囲内である、合わせガラス用中間膜。
【請求項2】
前記比(前記含有量A/前記含有量B)が6〜1300の範囲内である、請求項1に記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項3】
前記比(前記含有量A/前記含有量B)が25〜600の範囲内である、請求項1に記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項4】
前記含有量Aが0.2〜2重量部の範囲内である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項5】
前記含有量Bが0.001〜0.02重量部の範囲内である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項6】
前記成分が、フタロシアニン、フタロシアニンの誘導体、ナフタロシアニン及びナフタロシアニンの誘導体からなる群から選択される少なくとも一種である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項7】
前記遮熱粒子が、金属酸化物粒子である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項8】
前記遮熱粒子が、錫ドープ酸化インジウム粒子である、請求項7に記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項9】
第1,第2の合わせガラス構成部材と、
前記第1,第2の合わせガラス構成部材の間に挟み込まれた中間膜とを備え、
前記中間膜が、請求項1〜3のいずれか1項に記載の合わせガラス用中間膜である、合わせガラス。

【図1】
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【公開番号】特開2012−126639(P2012−126639A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−49113(P2012−49113)
【出願日】平成24年3月6日(2012.3.6)
【分割の表示】特願2010−533371(P2010−533371)の分割
【原出願日】平成22年8月24日(2010.8.24)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】