説明

合体型印鑑

【課題】第1に、内印鑑と外筒印鑑の合体及び分割を容易にし、第2に、両者が合体しなければ1個の印鑑として機能せず、内印鑑と外筒印鑑を分割保有することで、悪用から印鑑を守り、第3に、合体の際の位置決めが正確な合体型印鑑であっても印影の美しい印鑑を提供する。
【解決手段】下面に分割刻印部を形成した円柱部22を有する内印鑑2と、中空部に内印鑑2の円柱部22が合体し、合体時に内印鑑下面と同位置に位置する外筒印鑑下面に分割刻印部を形成した外筒印鑑3を合体させて使用する合体型印鑑において、円柱部22の外周面に位置決め突起23を立設し、中空部内周面に位置決め突起23に対応するガイド溝41をガイド溝構成辺により形成し、ガイド溝構成辺の一方を不動辺とし、相対する辺を位置決め突起23に対し弾性押圧力を付与する板バネ辺43とし、ガイド溝41の末端を位置決め端部とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、刻印部が内印鑑と外筒印鑑とに分割され、該分割された内印鑑と外筒印鑑とを合体してはじめて1個の印鑑として機能する合体型印鑑に関するものである。
【背景技術】
【0002】
合体型印鑑は、勘合符のように合体型になっているので、例えば、マンションの管理組合や厚生年金基金事務所等、責任者が2名以上いる団体や、大勢の方から巨額の資産を預かる事務所において使用することを目的とする印鑑である。このような組織においては、責任者が完全合意しなければ捺印できない印鑑が求められていた。
【0003】
そこで、特許文献1及び2に示される発明や考案が開示された。しかし、いずれの発明や考案も、印鑑を縦あるいは横に分割するものである。即ち、文字そのものが縦横に分割されてしまっている。このため、合体して使用した場合、正確な位置決めが難しく、文字の間にずれが生じるという問題があった。これらは実用に適するものではなく、かつ、正確な位置合わせを求めると複雑で、コストのかかるものとなってしまう問題点を有していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−243698号公開特許公報
【特許文献2】平1−122967号公開実用新案公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、次の課題を解決しようとするものである。
第1に、内印鑑と外筒印鑑との合体及び分割を容易にする。
第2に、使用に際しては内印鑑と外筒印鑑とが合体しなければ1個の印鑑として機能せず、内印鑑と外筒印鑑とを分割保有することで、悪用から印鑑を守る。
第3に、内印鑑と外筒印鑑の合体の際の位置決めが正確で、容易なものとする。その結果、合体型印鑑であっても印影の美しい印鑑となる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、第1の発明は、合体型印鑑に次の手段を採用する。
第1に、下面に分割刻印部が形成された円柱部を有する内印鑑と、内印鑑の円柱部が合体される中空部が形成されると共に、合体時に内印鑑下面と同位置に位置する外筒印鑑下面に分割刻印部が形成された外筒印鑑とを合体させて使用する合体型印鑑である。
第2に、内印鑑の円柱部の外周面に略円柱形の位置決め突起を立設する。
第3に、外筒印鑑の中空部内周面に位置決め突起に対応するガイド溝を相対するガイド溝構成辺により形成し、ガイド溝構成辺の一方を不動辺とし、相対する辺を不動辺側に向かって位置決め突起に対し弾性押圧力を付与する板バネ辺とすると共に、ガイド溝の末端を位置決め端部とする。
【0007】
第2の発明は、第1の発明における、ガイド溝を、外筒印鑑の中空部に固着される別体の位置決めリングに切欠部を設けて、相対するガイド溝構成辺により形成し、ガイド溝構成辺の一方を不動辺とし、相対する辺を不動辺側に向かって位置決め突起に対し弾性押圧力を付与する板バネ辺とすると共に、ガイド溝の末端を位置決め端部とするものとした合体型印鑑である。
【0008】
第3の発明は、第1または第2の発明における、ガイド溝の位置決め端部の溝幅を位置決め突起と同径とすると共に、その直前位置のガイド溝の溝幅が位置決め突起の径より小さくなるよう板バネ辺に対抗する不動辺に向かう凸部を形成したことを付加した合体型印鑑である。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、第1に、使用に際しては内印鑑と外筒印鑑とが合体しなければ1個の印鑑として機能しないため、内印鑑と外筒印鑑とを分割保有することで、悪用から印鑑を守ることができるものとなった。
第2に、内印鑑の位置決め突起を外筒印鑑のガイド溝に沿って摺動させることにより内印鑑と外筒印鑑との合体及び分割ができ、これらの動作が容易となった。更に、板バネ辺により位置決め突起を弾性押圧して位置決めを行うので、内印鑑と外筒印鑑の合体の際の位置決めを正確なものとすることができた。その結果、合体型印鑑であっても印影の美しい印鑑を提供することができた。
【0010】
第2の発明の効果ではあるが、ガイド溝を、外筒印鑑の中空部に固着される別体の位置決めリングで構成することにより、ガイド溝の製作、ひいては、合体型印鑑の製作を容易にすることができた。
【0011】
第3の発明の効果ではあるが、ガイド溝の位置決め端部の溝幅を位置決め突起と同径とすると共に、その直前位置のガイド溝の溝幅が位置決め突起の径より小さくなるよう板バネ辺に不動辺に向かう凸部を形成し、位置決め突起が位置決め端部に収まった上、凸部により確実に押し込まれて、正確な位置決めができるものとなった。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】合体型印鑑の一実施例を示す分解斜視図
【図2】合体型印鑑の分割刻印部を示す図で、(A)は合体状態の合体刻印部を示し、(B)は内印鑑下面の内刻印部を示し、(C)は外筒印鑑下面の外周刻印部を示す。
【図3】内印鑑の説明図で、(A)は正面図であり、(B)は印鑑下面を示す図であり、(C)はA−A線断面図である。
【図4】外筒印鑑の説明図で、(A)は正面図であり、(B)は印鑑下面を示す図であり、(C)はA−A線断面図である。
【図5】位置決めリングの説明図で、(A)は正面図であり、(B)は印鑑上側を示す図であり、(C)はA−A線断面図であり、(D)はB−B線断面図であり、(E)は斜視図である。
【図6】位置決めリングと外筒印鑑との関係を示す図であり、(A)はガイド溝が表れる側を示す断面図であり、(B)はその反対側を示す説明図である。
【図7】位置決めリングと内印鑑の合体状態を示す斜視説明図である。
【図8】位置決めリングと位置決め突起の関係を示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面に従って、実施例と共に本発明を実施するための形態について説明する。図1は本発明に係る合体型印鑑の一実施例を示す分解斜視図である。図中符号1は合体型印鑑であり、合体型印鑑1は内印鑑2と外筒印鑑3と位置決めリング4とよりなる。実施例における合体型印鑑1は、丸寸胴の印鑑形状をしているが、丸天丸の形状等であっても良い。尚、内印鑑2及び外筒印鑑3及び位置決めリング4の素材は同一素材であり、実施例ではチタンを用いている。チタンは位置決め精度を上げるのに適している。尚、素材は硬質のものであればよい。
【0014】
内印鑑2は、図3(A)(B)(C)に示されるように、取っ手部21と円柱部22とを有する。円柱部22の下面24即ち刻印部が形成される面は、内刻印部25とされている。内刻印部25には、刻印の一部、実施例では、図2(B)に示されるように、代表者の印である旨が刻印されている。取っ手部21は、円柱部22より太く形成されている。円柱部22の外径L1(図3(B))は、外筒印鑑3の肉厚部31の内径L2(図4(C))と同一である(L1=L2)。尚、円柱部22の外周面には、略円柱形の位置決め突起23が立設されている。位置決め突起23もチタンで作成されている。
【0015】
外筒印鑑3は、内部が中空部33とされた筒体である。外筒印鑑3の内部は、手前側(図4(C)では上方側)が肉薄の位置決めリング4の装着部32とされ、下面側は肉厚部31とされている。外筒印鑑3は、下面34(肉厚部31の下端面でもある)に図2(C)に示されるように分割刻印部である外周刻印部35が形成される。図2(C)では、会社名が刻印されている。
【0016】
外筒印鑑3の高さL6(図4(A))は、内印鑑2の長さL7(図3(A))と同一である(L6=L7)。従って、中空部33に内印鑑2の円柱部22が合体した場合に、内印鑑2の下面24と外筒印鑑3の下面34が同位置に位置し、図2(A)に示されるように、内刻印部25と外周刻印部35とが合体して、合体刻印部15を形成する。
【0017】
内印鑑2と外筒印鑑3との合体は、内印鑑2の円柱部22の外周面に立設された位置決め突起23と、外筒印鑑3の中空部33に装着された位置決めリング4のガイド溝41により行われる。
【0018】
位置決めリング4は、図6(A)、(B)に表れるように、外径が外筒印鑑3の装着部32の内径L3と等しく、内径が外筒印鑑3の肉厚部31の内径L2と等しく、高さが外筒印鑑3の装着部32の高さに等しいリング状のものであり、同図に示されるように外筒印鑑3の装着部32に固着されている。この結果、内印鑑2の円柱部22の外径L1と位置決めリング4の内径とは等しくなっている。
【0019】
位置決めリング4には、上方側(刻印部と反対方向上部)の一部を切欠して、位置決め突起23が摺動でき、奥の端部が位置決め突起23の位置決め端部44となるガイド溝41が形成されている。位置決め端部44は、ガイド溝41の端部で不動辺42側に、位置決め突起23の形状や大きさに対応して形成される。実際には、位置決め端部44の溝幅を位置決め突起23と同径とし、位置決め端部44の溝の長さを少なくとも位置決め突起23の径の半分以上の長さとして形成される。
【0020】
ガイド溝41は、切欠により生じた相対する2辺で構成される。一辺は、摺動する位置決め突起23により押圧されても位置の変動のない不動辺42とされ、他方、不動辺42と相対する辺を板バネ辺43とし、位置決め突起23に対して不動辺42及び位置決め端部44に向かって弾性押圧可能としている。板バネ辺43は、位置決め端部44の直前位置のガイド溝41の溝幅が位置決め突起23の径より小さくなるよう板バネ辺43に不動辺42に向かう凸部45を形成している。
【0021】
位置決めリング4の切欠部には、ガイド溝41へ至る挿入口46及び挿入口46へ位置決め突起23を誘導する誘導段部48が形成されている。誘導段部48は、位置決めリング4の上端部を挿入口46に向かって切欠して形成されている。尚、図中47は板バネ辺43の弾性力を調整するための板厚調整溝部である。板厚調整溝部47と同様に誘導段部48の深さや長さの変更は、板バネ辺43の弾性力の調整に用いられる。
【0022】
以下、合体型印鑑1の利用方法について説明する。合体型印鑑1は、分割された状態で、好ましくは異なる責任者により別個に保管される。捺印に関し、完全なる合意がなされると内印鑑2と外筒印鑑3が図1に示されるように準備され、内印鑑2の円柱部22が、外筒印鑑3の位置決めリング4装着側の中空部33から挿入される。具体的には位置決めリング4に円柱部22が挿入される。
【0023】
このとき内印鑑2の円柱部22の外径と位置決めリング4の内径は同じであるため、円柱部22を挿入すると、位置決めリング4の端部に円柱部22に立設されている位置決め突起23が衝突してしまう。衝突は、誘導段部48の場合と、それ以外の位置決めリング4の端部の場合がある。いずれの場合も、内印鑑2を押しながらθ方向にひねって回転させる。
【0024】
位置決め突起23は、位置決めリング4の端部より誘導段部48へ、誘導段部48より挿入口46へ誘導される。挿入口46で押し込み方向の力を受けると位置決め突起23は、図8に示すようにガイド溝41に押し込まれ、ガイド溝41に入った位置決め突起23は、反対方向への回転力を受けることによりガイド溝41内を、板バネ辺43及びそこに形成された凸部45と当接し、板バネ辺43の弾性押圧力を受けながら位置決め端部44へと移動する。
【0025】
位置決め突起23が、板バネ辺43の凸部45を乗り越え、位置決め端部44に収まった状態では、凸部45が位置決め突起23に図8中斜め上方に向かった押圧力を与え、位置決め端部44に押しつけるように保持する。このため位置決め端部44で位置決めされた内印鑑2と外筒印鑑3はずれることなく固定される。
【0026】
この際、内印鑑2の下面には図2(B)の内刻印部25が刻印されており、外筒印鑑3の下面には図2(C)の外周刻印部35が刻印されているため、合体の結果、図2(A)に示す合体刻印部15となり正規の印鑑として使用できるのである。
【符号の説明】
【0027】
1・・・・・合体型印鑑
2・・・・・内印鑑
3・・・・・外筒印鑑
4・・・・・位置決めリング
15・・・・合体刻印部
21・・・・取っ手部
22・・・・円柱部
23・・・・位置決め突起
24、34・下面
25・・・・内刻印部
31・・・・肉厚部
32・・・・装着部
33・・・・中空部
35・・・・外周刻印部
41・・・・ガイド溝
42・・・・不動辺
43・・・・板バネ辺
44・・・・位置決め端部
45・・・・凸部
46・・・・挿入口
47・・・・板厚調整溝部
48・・・・誘導段部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下面に分割刻印部が形成された円柱部を有する内印鑑と、
内印鑑の円柱部が合体される中空部が形成されると共に、合体時に内印鑑下面と同位置に位置する外筒印鑑下面に分割刻印部が形成された外筒印鑑とを合体させて使用する合体型印鑑において、
内印鑑の円柱部の外周面に略円柱形の位置決め突起を立設し、
外筒印鑑の中空部内周面に位置決め突起に対応するガイド溝を相対するガイド溝構成辺により形成し、ガイド溝構成辺の一方を不動辺とし、相対する辺を不動辺側に向かって位置決め突起に対し弾性押圧力を付与する板バネ辺とすると共に、ガイド溝の末端を位置決め端部とすることを特徴とする合体型印鑑。
【請求項2】
上記ガイド溝を、外筒印鑑の中空部に固着される別体の位置決めリングに切欠部を設けて、相対するガイド溝構成辺により形成し、ガイド溝構成辺の一方を不動辺とし、相対する辺を不動辺側に向かって位置決め突起に対し弾性押圧力を付与する板バネ辺とすると共に、ガイド溝の末端を位置決め端部とすることを特徴とする請求項1記載の合体型印鑑。
【請求項3】
ガイド溝の位置決め端部の溝幅を位置決め突起と同径とすると共に、その直前位置のガイド溝の溝幅が位置決め突起の径より小さくなるよう板バネ辺に対抗する不動辺に向かう凸部を形成したことを特徴とする請求項1または2記載の合体型印鑑。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−86422(P2012−86422A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−234188(P2010−234188)
【出願日】平成22年10月19日(2010.10.19)
【出願人】(598011352)有限会社カセダエンジニアリング (2)
【出願人】(510277888)株式会社ディープロジェクト (2)