説明

合成で、規定されたフィブロネクチン模倣ペプチドおよびそれで修飾された表面

【課題】ヒトのフィブロネクチン被覆表面を模倣した、異種不含、ヒトまたは動物の成分不含の合成化学的既知化合物とそれらで修飾された表面を提供する。
【解決手段】柔軟なリンカーで接ぎ合わされたフィブロネクチン細胞結合性ドメインの少なくとも2つの領域を含む化合物。領域は、フィブロネクチンの1または複数の機能的特徴を模倣する様式で互いに相互作用し、このような化合物で被覆された表面は、フィブロネクチンで被覆された表面の細胞接着を模倣する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィブロネクチンの1または複数の機能的特徴を模倣する化合物と、それらで修飾された表面とに関する。より具体的には、本発明は、ヒトのフィブロネクチンの被覆と同等の細胞接着を提供する、異種(xeno)不含、ヒトまたは動物の成分不含、合成で、化学的既知化合物と、それらで修飾された表面とに関する。
【背景技術】
【0002】
関連出願の相互参照
本出願は、その内容が参照により本明細書に組み込まれている、2010年12月8日に出願した米国仮出願第61/420,818号の利益を主張するものである。
【0003】
細胞外基質(ECM)蛋白質で被覆された表面は、細胞培養および移植機器(implanting devices)の被覆において広く用いられている。特に、フィブロネクチンは、細胞培養において用いられ、細胞接着、細胞増殖、細胞遊走および細胞分化を支援する、一般的に用いられるECM蛋白質である。細胞培養のための表面を被覆するために用いられるECM蛋白質は、通常、ヒトまたはその他の動物に由来し、しばしば、ほとんど既知ではない。このようなECM蛋白質の使用は、例えばヒトの治療的用途において問題となり得る。単離されたヒトECM蛋白質を、このような表面に被覆のために用いることができるが、それに用いるいくつかのECMに伴う費用は非常に高い。さらに、組換えのヒトECM蛋白質を用いる場合と同様に、単離されたECM蛋白質の異なるバッチ中に存在する混入物の変動により、単離されたECM蛋白質の異なるバッチは、細胞培養の変動をもたらすことがある。さらに、細胞培養における変動が、単離されたフィブロネクチンと組換えのフィブロネクチンとの両方について通常利用される自己被覆プロセス自体から生じることがある。よって、フィブロネクチン被覆表面を模倣する、異物不含、ヒトまたは動物の成分不含の、合成化学的に既知表面の必要性が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第5,171,318号明細書
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Freundら,FEBS 320:97-100(1993)
【非特許文献2】Gururajaら,J Pept Res,61:163-176(2003)
【非特許文献3】Prehodaら,Science,290:801-806(2000)
【非特許文献4】Wriggersら,Biopolymers,80(6):736-746(2005)
【非特許文献5】Huら,J Biotechnol,107(1):83-90(2004)
【非特許文献6】Mardilovichら,Langmuir,22:3259-3264(2006)
【非特許文献7】Margetaら,Proc Natl Acad Science,106:1632-37(2009)
【非特許文献8】van Dongenら,J Am Chem Soc,129:3494-3495(2007)
【非特許文献9】Katoら,Clinical Cancer Research,8:2455-2462(2002)
【非特許文献10】Nie,Biotechnol. Prog.,25(1):20-31(2009)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、異種不含、ヒトまたは動物の成分不含、合成化学的既知化合物と、それらで修飾された表面とを提供する。有利にも、このような化合物で修飾された表面は、ヒトのフィブロネクチンで被覆された表面を模倣する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
さらに、このような異種不含、ヒトまたは動物の成分不含、合成化学的既知被覆は、ほとんど規定されず、治療的用途において免疫応答を誘発することもある動物に由来する生成物に伴う問題を回避する。さらに、本発明は、本発明に従う化合物で修飾された表面を含む細胞培養容器を提供する。
【0008】
ある態様において、本発明は、柔軟なリンカーで接ぎ合わされたフィブロネクチン細胞結合性ドメインの少なくとも2つの領域を含む化合物であって、少なくとも1つの領域は、アミノ酸配列GRGDSP(配列番号1)を含み、もう一つの領域は、X12345678910111213RX15PX17SRNX2122TLTX26(配列番号2)を含み、式中、X1はKを表すかまたは存在せず、X2はKを表すかまたは存在せず、X3はKを表すかまたは存在せず、X4はKを表すかまたは存在せず、X5はKを表すかまたは存在せず、X6はKを表すかまたは存在せず、X7はS、V、A、Gを表すかまたは存在せず、X8はG、Aを表すかまたは存在せず、X9はRまたはGを表し、X10はP、A、QまたはGを表し、X11はRまたはKを表し、X12はE、Q、W、AまたはGを表し、X13はDまたはEを表し、X15はV、LまたはIを表し、X17はHまたはPを表し、X21はS、TまたはGを表し、X22はIまたはLを表し、X26はNまたはHを表す化合物を提供する。
【0009】
ある実施形態において、X7はSを表す。ある実施形態において、X8はGを表す。ある実施形態において、X9はRを表す。ある実施形態において、X10はGまたはAを表す。ある実施形態において、X11はRを表す。ある実施形態において、X12はE、AまたはGを表す。ある実施形態において、X13はDを表す。ある実施形態において、X15はVを表す。ある実施形態において、X17はHを表す。ある実施形態において、X22はIを表す。ある実施形態において、X26はNを表す。
【0010】
ある実施形態において、X7はSを表し、X8はGを表す。ある実施形態において、X7はSを表し、X8はGを表し、X9はRを表す。ある実施形態において、X7はSを表し、X8はGを表し、X9はRを表し、X10はGまたはAを表す。ある実施形態において、X7はSを表し、X8はGを表し、X9はRを表し、X10はGまたはAを表し、X11はRを表す。ある実施形態において、X7はSを表し、X8はGを表し、X9はRを表し、X10はGまたはAを表し、X11はRを表し、X12はE、AまたはGを表す。ある実施形態において、X7はSを表し、X8はGを表し、X9はRを表し、X10はGまたはAを表し、X11はRを表し、X12はE、AまたはGを表し、X13はDを表す。ある実施形態において、X7はSを表し、X8はGを表し、X9はRを表し、X10はGまたはAを表し、X11はRを表し、X12はE、AまたはGを表し、X13はDを表し、X15はVを表す。ある実施形態において、X7はSを表し、X8はGを表し、X9はRを表し、X10はGまたはAを表し、X11はRを表し、X12はE、AまたはGを表し、X13はDを表し、X15はVを表し、X17はHを表す。ある実施形態において、X7はSを表し、X8はGを表し、X9はRを表し、X10はGまたはAを表し、X11はRを表し、X12はE、AまたはGを表し、X13はDを表し、X15はVを表し、X17はHを表し、X22はIを表す。ある実施形態において、X7はSを表し、X8はGを表し、X9はRを表し、X10はGまたはAを表し、X11はRを表し、X12はE、AまたはGを表し、X13はDを表し、X15はVを表し、X17はHを表し、X22はIを表し、X26はNを表す。
【0011】
ある実施形態において、柔軟なリンカーは、アミノ酸配列SGSGSGSGS(配列番号3)、GGSGGSGGS(配列番号4)、SGTGSGTGS(配列番号5)またはGGGSGGGSGG(配列番号6)を含む。
【0012】
ある実施形態において、X7はSを表し、X8はGを表し、X9はRを表し、X10はGまたはAを表し、X11はRを表し、X12はE、AまたはGを表し、X13はDを表し、X15はVを表し、X17はHを表し、X22はIを表し、X26はNを表し、柔軟なリンカーは、アミノ酸配列SGSGSGSGS(配列番号3)、GGSGGSGGS(配列番号4)、SGTGSGTGS(配列番号5)またはGGGSGGGSGG(配列番号6)を含む。
【0013】
別の態様において、少なくとも一部分が、柔軟なリンカーで接ぎ合わされたフィブロネクチン細胞結合性ドメインの少なくとも2つの領域を含む化合物であって、少なくとも1つの領域は、アミノ酸配列GRGDSP(配列番号1)を含み、別の領域は、X12345678910111213RX15PX17SRNX2122TLTX26(配列番号2)を含み、式中、X1はKを表すかまたは存在せず、X2はKを表すかまたは存在せず、X3はKを表すかまたは存在せず、X4はKを表すかまたは存在せず、X5はKを表すかまたは存在せず、X6はKを表すかまたは存在せず、X7はS、V、A、Gを表すかまたは存在せず、X8はG、Aを表すかまたは存在せず、X9はRまたはGを表し、X10はP、A、QまたはGを表し、X11はRまたはKを表し、X12はE、Q、W、AまたはGを表し、X13はDまたはEを表し、X15はV、LまたはIを表し、X17はHまたはPを表し、X21はS、TまたはGを表し、X22はIまたはLを表し、X26はNまたはHを表す化合物の被覆を表面上に含む表面が提供される。ある実施形態において、表面は、フィブロネクチンで被覆された表面の1または複数の機能的特徴を模倣する。ある実施形態において、少なくとも一部分は、表面上に被覆を含み、X7はSを表し、X8はGを表し、X9はRを表し、X10はGまたはAを表し、X11はRを表し、X12はE、AまたはGを表し、X13はDを表し、X15はVを表し、X17はHを表し、X22はIを表し、X26はNを表し、柔軟なリンカーは、アミノ酸配列SGSGSGSGS(配列番号3)、GGSGGSGGS(配列番号4)、SGTGSGTGS(配列番号5)またはGGGSGGGSGG(配列番号6)を含む。
【0014】
さらに別の態様において、表面を含む組成物であって、前記表面の少なくとも一部分は、柔軟なリンカーで接ぎ合わされたフィブロネクチン細胞結合性ドメインの少なくとも2つの領域を含む化合物であって、少なくとも1つの領域は、アミノ酸配列GRGDSP(配列番号1)を含み、別の領域は、X12345678910111213RX15PX17SRNX2122TLTX26(配列番号2)を含み、式中、X1はKを表すかまたは存在せず、X2はKを表すかまたは存在せず、X3はKを表すかまたは存在せず、X4はKを表すかまたは存在せず、X5はKを表すかまたは存在せず、X6はKを表すかまたは存在せず、X7はS、V、A、Gを表すかまたは存在せず、X8はG、Aを表すかまたは存在せず、X9はRまたはGを表し、X10はP、A、QまたはGを表し、X11はRまたはKを表し、X12はE、Q、W、AまたはGを表し、X13はDまたはEを表し、X15はV、LまたはIを表し、X17はHまたはPを表し、X21はS、TまたはGを表し、X22はIまたはLを表し、X26はNまたはHを表す化合物の被覆を表面上に含み、前記表面は、フィブロネクチンで被覆された表面の1または複数の機能的特徴を模倣する組成物が提供される。
【0015】
本発明のこれらおよびその他の特徴は、以下の詳細な説明を熟読することにより、よりよく理解される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1Aは、いずれの細胞外基質蛋白質の被覆も表面上に有さない組織培養表面の上に存在するLNCaPヒト前立腺がん細胞の画像である。図1Bは、本発明の化合物(すなわちKSGRPREDRVPHSRNSITLTNSGSGSGSGSGRGDSP(配列番号7))で表面上が修飾された表面に接着したLNCaPヒト前立腺がん細胞の画像の図である。図1Cは、ヒトフィブロネクチンの被覆(すなわちBD BioCoatフィブロネクチン)を表面上に有する表面に接着したLNCaPヒト前立腺がん細胞の画像である。
【図2】BD BioCoatフィブロネクチンの表面(図中、「HFN」とする)、本発明の化合物(すなわちKSGRPREDRVPHSRNSITLTNSGSGSGSGSGRGDSP(配列番号7))を表面上に有する表面(図中、「模倣」とする)およびいずれの被覆も表面上に有さない対照の組織培養(図中、「TC」とする)表面へのLNCaP細胞の接着の定量のためのMTSアッセイの後の490nmでの吸光度のレベルを示すグラフの図である。
【図3】BD BioCoatフィブロネクチンの表面(図中、「HFN」とする)、本発明の化合物(すなわちKSGRPREDRVPHSRNSITLTNSGSGSGSGSGRGDSP(配列番号7))を表面上に有する表面(図中、「模倣」とする)およびいずれの被覆も表面上に有さない対照の組織培養(図中、「TC」とする)表面へのA−172(ヒト神経膠芽腫株化細胞の)およびRKO(ヒト結腸癌株化細胞)細胞の接着のIncuCyte(Essen)による集密度の定量を示すグラフの図である。
【図4A】図中で「DA2」とするKSGRPREDRVPHSRNSITLTNSGTGSGTGSGRGDSP(配列番号8)、図中で「DA4」とするKSGRPREDRVPHSRNSITLTNGGGSGGGSGGGRGDSP(配列番号9)、図中で「DA1」とするKSGRARADRVPHSRNTITLTNSGSGSGSGSGRGDSP(配列番号10)、図中で「DA3」とするKSGRARADRVPHSRNTITLTNGGSGGSGGSGRGDSP(配列番号11)、図中で「DA5」とするKSGRGRGDRVPHSRNGITLTNSGSGSGSGSGRGDSP(配列番号12)、図中で「模倣ペプチド」とするKSGRPREDRVPHSRNSITLTNSGSGSGSGSGRGDSP(配列番号7)の被覆を表面上に有する表面、図中で「フィブロネクチン」とするBD BioCoatフィブロネクチンの表面、または図中で「ペプチドなし」とするペプチド被覆を有さない表面に接着したA−172ヒト膠芽腫がん細胞の画像の図である。特に、柔軟なリンカーに下線を付す。
【図4B】図中で「DA2」とするKSGRPREDRVPHSRNSITLTNSGTGSGTGSGRGDSP(配列番号8)、図中で「DA4」とするKSGRPREDRVPHSRNSITLTNGGGSGGGSGGGRGDSP(配列番号9)、図中で「DA1」とするKSGRARADRVPHSRNTITLTNSGSGSGSGSGRGDSP(配列番号10)、図中で「DA3」とするKSGRARADRVPHSRNTITLTNGGSGGSGGSGRGDSP(配列番号11)、図中で「DA5」とするKSGRGRGDRVPHSRNGITLTNSGSGSGSGSGRGDSP(配列番号12)、図中で「模倣ペプチド」とするKSGRPREDRVPHSRNSITLTNSGSGSGSGSGRGDSP(配列番号7)の被覆を表面上に有する表面、図中で「フィブロネクチン」とするBD BioCoatフィブロネクチンの表面、または図中で「ペプチドなし」とするペプチド被覆を有さない表面へのA−172ヒト膠芽腫がん細胞の接着のMTSアッセイによる定量分析に基づくグラフの図である。特に、柔軟なリンカーに下線を付す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本明細書で用いる場合、以下の用語は、以下に記載する定義を有するものとする。
【0018】
本明細書で用いる場合、「フィブロネクチン細胞結合性ドメイン」との用語は、ヒトまたはその他の動物に由来するフィブロネクチン蛋白質の領域であって、その領域への細胞結合を特徴とする領域のことをいう。フィブロネクチン細胞結合性ドメインの例示的な領域は、それらに限定されないが、SGRPREDRVPHSRNSITLTN(配列番号13)およびGRGDSP(配列番号1)を含む。
【0019】
本明細書で用いる場合、「フィブロネクチンで被覆された表面の1または複数の機能的特徴」との語句は、それらに限定されないが、フィブロネクチンに依存性の細胞型の細胞接着、細胞成長、細胞遊走および細胞分化を含む。例示的なフィブロネクチンに依存性の細胞型は、それらに限定されないが、LNCAP細胞、MIA−Paca−2細胞、A−172細胞およびRKO細胞を含む。ある実施形態において、フィブロネクチンで被覆された表面の1または複数の機能的特徴は、LNCaP細胞を用いて特徴づけられる。別の実施形態において、フィブロネクチンで被覆された表面の1または複数の機能的特徴は、MIA−PaCa−2細胞を用いて特徴づけられる。さらに別の実施形態において、フィブロネクチンで被覆された表面の1または複数の機能的特徴は、A−172細胞を用いて特徴づけられる。まださらに別の実施形態において、フィブロネクチンで被覆された表面の1または複数の機能的特徴は、RKO細胞を用いて特徴づけられる。望ましくは、表面は、フィブロネクチンで被覆された表面の細胞接着を模倣する。
【0020】
本明細書で用いる場合、本発明の化合物で被覆された細胞培養表面とフィブロネクチンで被覆された細胞培養表面との比較に関する「模倣する(mimic)」および「模倣する(mimics)」との用語は、評価される1または複数の機能的特徴における相対的類似性のことをいう。望ましくは、相対的類似性の定量は、少なくとも1つの機能的特徴における少なくとも90%の類似性を示す。
【0021】
本明細書で用いる場合、「柔軟なリンカー」との用語は、アミノ酸配列の2つの領域を、接ぎ合わされた領域の相対的柔軟性を提供し、そのことによりこれらの領域の動きを可能にする様式で一緒に接続するように機能する化学的化合物のことをいう。例えば、柔軟なリンカーにおけるねじれ角の変化は、柔軟なリンカーと結合した領域が旋回することを可能にする)。本発明において、柔軟なリンカーは、フィブロネクチン細胞結合性ドメインの2つの領域を一緒に接ぎ合わせるために用いられる。リンカーは、一緒に連結されるアミノ酸配列の立体構造に影響を与え、その結果、化合物全体の結果として得られる活性に影響を与えることがあるが、リンカーは、リンカー内およびリンカーの生物活性を有するとはみなされない。むしろ、リンカーは、接ぎ合わされたアミノ酸配列の機能を支持するように設計される。リンカーは、組換え技術または合成技術(例えば固相合成)のいずれかにより生成され、天然に存在するアミノ酸、天然に存在しないアミノ酸および/またはペプチド模倣物を含んでよい。典型的に、リンカーは、1〜15アミノ酸の鎖長である。あるいくつかの実施形態において、リンカーは、5〜10アミノ酸の鎖長である。リンカーは、当該技術において公知であり、それらに限定されないが、非特許文献1、非特許文献2(リンカーGSGS(配列番号14)およびGSGSGSGSGS(配列番号15))、非特許文献3、非特許文献4および非特許文献5、非特許文献6、非特許文献7(リンカーGSGSGSGSGS)、非特許文献8(2〜9のGGSGGS(配列番号16)リピートを含有するリンカー)を含む多数の出版物に記載されている。
【0022】
本発明において用いるために適切な柔軟なリンカーは、それらに限定されないが、SGSGSGSGS(配列番号3)、GGSGGSGGS(配列番号4)、SGTGSGTGS(配列番号5)およびGGGSGGGSGG(配列番号6)を含む。
【0023】
フィブロネクチンは、高分子量(約440kDa)のECM糖蛋白質であり、これは、インテグリンとよばれる膜貫通受容体蛋白質、ならびにECMの成分であるコラーゲン、フィブリンおよびヘパラン硫酸プロテオグリカン(例えばシンデカン類)と結合する。フィブロネクチンは、細胞接着、細胞成長、細胞遊走および細胞分化を支持し、創傷治癒、胚発生、およびある型の発癌において重要な役割を演じることが示されている。
【0024】
構造として、フィブロネクチンは、C末端ジスルフィド結合の対で連結された2つのほぼ同一のポリペプチド鎖からなる二量体として存在する。それぞれのフィブロネクチン単量体は、230〜250kDaの分子量を有し、I型、II型およびIII型の3つの型のモジュールを含有する。モジュールは、フィブロネクチン単量体の長さ方向に沿っていくつかの機能的な蛋白質結合性ドメインに配置される。4つのフィブロネクチン結合性ドメインが存在し、フィブロネクチンが他のフィブロネクチン分子と会合することを可能にする。これらのフィブロネクチン結合性ドメインの1つであるI1~5は、「集合ドメイン」とよばれ、これは、フィブロネクチンマトリクスの集合の開始のために必要である。モジュールIII9~10は、フィブロネクチンの「細胞結合性ドメイン」に相当する。RGD配列(Arg−Gly−Asp)は、III10にあり、細胞表面上のα5β1インテグリンおよびαVβ3インテグリンを介する細胞接着の部位である。「相乗作用部位」(synergy site)は、III9にあり、α5β1インテグリンとのフィブロネクチンの会合の調節において役割を有する。フィブロネクチンは、フィブリン結合(I1~5、I10~12)、コラーゲン結合(I6~9)、フィビュリン−1結合(III13~14)、ヘパリン結合およびシンデカン結合(III12~14)のためのドメインも含有する。
【0025】
主題の発明がいずれの理論によっても制限されることを意味しないが、本発明の化合物は、柔軟なリンカーで接ぎ合わされたフィブロネクチン細胞結合性ドメインの少なくとも2つの領域を含む。領域は、フィブロネクチンの1または複数の機能的特徴を模倣する様式で互いに相互作用すると考えられる。特に、このような化合物で被覆された表面は、フィブロネクチンで被覆された表面の細胞接着を模倣する。
【0026】
本発明の化合物は、従来の組換え技術または合成技術(例えば固相合成)を用いて生成できる。同様に、このような化合物は、従来の技術を用いて、所定の用途のために適切な程度まで精製できる。有利には、本発明の化合物の合成による合成は、少なくとも70%以上のレベルの純度を提供できる。ある実施形態において、化合物は、少なくとも90%のレベルの純度を有する。望ましくは、本発明の化合物は、90%以上のレベルの純度を有する。治療薬のようなあるいくつかの用途において、化合物は合成されることが特に好ましい。
【0027】
本発明の化合物は、柔軟なリンカーで接ぎ合わされたフィブロネクチン細胞結合性ドメインの少なくとも2つの領域を含む。望ましくは、本発明の化合物は、100未満のアミノ酸の長さである。あるいくつかの実施形態において、本発明の化合物は、約25アミノ酸と約50アミノ酸との間の鎖長である。本発明の化合物は、天然に存在するアミノ酸、天然に存在しないアミノ酸および/またはペプチド模倣物を含んでよい。
【0028】
当業者は、フィブロネクチン細胞結合性ドメインの領域および/またはリンカーについての本明細書に記載されるアミノ酸配列のうちの1または複数のアミノ酸を、細胞培養用の表面の上を被覆する場合に、結果として得られる化合物の、フィブロネクチンで被覆された表面の1または複数の機能的特性を模倣する能力を損なうことなく置換できると理解される。
【0029】
特に、本発明の化合物は、天然に存在するフィブロネクチン細胞結合性ドメインと比較して、1または複数のアミノ酸の保守的置換(同類置換)を有してよい。保守的置換(同類置換)は、それぞれのアミノ酸の側鎖が、類似の化学構造および極性の、遺伝子によりコードされるかもしくは遺伝子によりコードされないアミノ酸に由来する側鎖で置き換えられることと定義される。類似の側鎖を有するこの種類のアミノ酸のファミリーが、当該技術において知られている。これらは、例えば、塩基性側鎖(リジン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖(アスパラギン酸、グルタミン酸)、非荷電極性側鎖(グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、トレオニン、チロシン、システイン)、非極性側鎖(アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、ベータ分岐側鎖(トレオニン、バリン、イソロイシン)および芳香族側鎖(チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)を有するアミノ酸を含む。
【0030】
本発明は、柔軟なリンカーで接ぎ合わされたフィブロネクチン細胞結合性ドメインの少なくとも2つの領域を含む化合物であって、少なくとも1つの領域は、アミノ酸配列GRGDSP(配列番号1)を含み、別の領域は、X12345678910111213RX15PX17SRNX2122TLTX26(配列番号2)を含み、式中、X1はKを表すかまたは存在せず、X2はKを表すかまたは存在せず、X3はKを表すかまたは存在せず、X4はKを表すかまたは存在せず、X5はKを表すかまたは存在せず、X6はKを表すかまたは存在せず、X7はS、V、A、Gを表すかまたは存在せず、X8はG、Aを表すかまたは存在せず、X9はRまたはGを表し、X10はP、A、QまたはGを表し、X11はRまたはKを表し、X12はE、Q、W、AまたはGを表し、X13はDまたはEを表し、X15はV、LまたはIを表し、X17はHまたはPを表し、X21はS、TまたはGを表し、X22はIまたはLを表し、X26はNまたはHを表す化合物を提供する。
【0031】
あるいくつかの実施形態において、X1は存在せず、X2は存在せず、X3は存在せず、X4は存在せず、X5は存在せず、X6はKを表す。さらに別の実施形態において、X1は存在せず、X2は存在せず、X3は存在せず、X4は存在せず、X5は存在せず、X6は存在しない。
【0032】
ある実施形態において、X1はKを表すかまたは存在せず、X2はKを表すかまたは存在せず、X3はKを表すかまたは存在せず、X4はKを表すかまたは存在せず、X5はKを表すかまたは存在せず、X6はKを表すかまたは存在せず、X7はSを表し、X8はGを表し、X9はRを表し、X10はPを表し、X11はRを表し、X12はEを表し、X13はDを表し、X15はVを表し、X17はHを表し、X21はSを表し、X22はIを表し、X26はNを表す。よって、X123456SGRPREDRVPHSRNSITLTN(配列番号17)。ある実施形態において、X1は存在せず、X2は存在せず、X3は存在せず、X4は存在せず、X5は存在せず、X6はKを表し、X7はSを表し、X8はGを表し、X9はRを表し、X10はPを表し、X11はRを表し、X12はEを表し、X13はDを表し、X15はVを表し、X17はHを表し、X21はSを表し、X22はIを表し、X26はNを表す。よって、KSGRPREDRVPHSRNSITLTN(配列番号18)。
【0033】
ある実施形態において、X1はKを表すかまたは存在せず、X2はKを表すかまたは存在せず、X3はKを表すかまたは存在せず、X4はKを表すかまたは存在せず、X5はKを表すかまたは存在せず、X6はKを表すかまたは存在せず、X7はSを表し、X8はGを表し、X9はRを表し、X10はAを表し、X11はRを表し、X12はEを表し、X13はDを表し、X15はVを表し、X17はHを表し、X21はSを表し、X22はIを表し、X26はNを表す。よって、X123456SGRAREDRVPHSRNSITLTN(配列番号19)。ある実施形態において、X1は存在せず、X2は存在せず、X3は存在せず、X4は存在せず、X5は存在せず、X6はKを表し、X7はSを表し、X8はGを表し、X9はRを表し、X10はAを表し、X11はRを表し、X12はEを表し、X13はDを表し、X15はVを表し、X17はHを表し、X21はSを表し、X22はIを表し、X26はNを表す。よって、KSGRAREDRVPHSRNSITLTN(配列番号20)。
【0034】
ある実施形態において、X1はKを表すかまたは存在せず、X2はKを表すかまたは存在せず、X3はKを表すかまたは存在せず、X4はKを表すかまたは存在せず、X5はKを表すかまたは存在せず、X6はKを表すかまたは存在せず、X7はSを表し、X8はGを表し、X9はRを表し、X10はAを表し、X11はRを表し、X12はAを表し、X13はDを表し、X15はVを表し、X17はHを表し、X21はSを表し、X22はIを表し、X26はNを表す。よって、X123456SGRARADRVPHSRNSITLTN(配列番号21)。ある実施形態において、X1は存在せず、X2は存在せず、X3は存在せず、X4は存在せず、X5は存在せず、X6はKを表し、X7はSを表し、X8はGを表し、X9はRを表し、X10はAを表し、X11はRを表し、X12はAを表し、X13はDを表し、X15はVを表し、X17はHを表し、X21はSを表し、X22はIを表し、X26はNを表す。よって、KSGRARADRVPHSRNSITLTN(配列番号22)。
【0035】
ある実施形態において、X1はKを表すかまたは存在せず、X2はKを表すかまたは存在せず、X3はKを表すかまたは存在せず、X4はKを表すかまたは存在せず、X5はKを表すかまたは存在せず、X6はKを表すかまたは存在せず、X7はSを表し、X8はGを表し、X9はRを表し、X10はAを表し、X11はRを表し、X12はAを表し、X13はDを表し、X15はVを表し、X17はHを表し、X21はTを表し、X22はIを表し、X26はNを表す。よって、X123456SGRARADRVPHSRNTITLTN(配列番号23)。ある実施形態において、X1は存在せず、X2は存在せず、X3は存在せず、X4は存在せず、X5は存在せず、X6はKを表し、X7はSを表し、X8はGを表し、X9はRを表し、X10はAを表し、X11はRを表し、X12はAを表し、X13はDを表し、X15はVを表し、X17はHを表し、X21はTを表し、X22はIを表し、X26はNを表す。よって、KSGRARADRVPHSRNTITLTN(配列番号24)。
【0036】
ある実施形態において、X1はKを表すかまたは存在せず、X2はKを表すかまたは存在せず、X3はKを表すかまたは存在せず、X4はKを表すかまたは存在せず、X5はKを表すかまたは存在せず、X6はKを表すかまたは存在せず、X7はSを表し、X8はGを表し、X9はRを表し、X10はGを表し、X11はRを表し、X12はGを表し、X13はDを表し、X15はVを表し、X17はHを表し、X21はGを表し、X22はIを表し、X26はNを表す。よって、X123456SGRGRGDRVPHSRNGITLTN(配列番号25)。ある実施形態において、X1は存在せず、X2は存在せず、X3は存在せず、X4は存在せず、X5は存在せず、X6はKを表し、X7はSを表し、X8はGを表し、X9はRを表し、X10はGを表し、X11はRを表し、X12はGを表し、X13はDを表し、X15はVを表し、X17はHを表し、X21はGを表し、X22はIを表し、X26はNを表す。よって、KSGRGRGDRVPHSRNGITLTN(配列番号26)。
【0037】
ある実施形態において、X1はKを表すかまたは存在せず、X2はKを表すかまたは存在せず、X3はKを表すかまたは存在せず、X4はKを表すかまたは存在せず、X5はKを表すかまたは存在せず、X6はKを表すかまたは存在せず、X7はSを表し、X8はGを表し、X9はRを表し、X10はAを表し、X11はRを表し、X12はAを表し、X13はDを表し、X15はVを表し、X17はHを表し、X21はGを表し、X22はIを表し、X26はNを表す。よって、X123456SGRARADRVPHSRNGITLTN(配列番号27)。ある実施形態において、X1は存在せず、X2は存在せず、X3は存在せず、X4は存在せず、X5は存在せず、X6はKを表し、X7はSを表し、X8はGを表し、X9はRを表し、X10はAを表し、X11はRを表し、X12はAを表し、X13はDを表し、X15はVを表し、X17はHを表し、X21はGを表し、X22はIを表し、X26はNを表す。よって、KSGRARADRVPHSRNGITLTN(配列番号28)。
【0038】
本発明の化合物は、フィブロネクチンの1もしくは複数の機能的特性が望まれるか、またはフィブロネクチンと関連する1もしくは複数のシグナル伝達特性の改変が望まれる用途のために有用である。例えば、本発明の化合物は、細胞シグナル伝達を阻害するための治療薬として利用してよい。フィブロネクチンに由来するペプチドの転移抑制性の効果は、例えば、非特許文献9に記載される。
【0039】
同様に、本発明の化合物を用いて修飾された表面は、フィブロネクチンの1もしくは複数の機能的特性が望まれるか、またはフィブロネクチンと関連する1もしくは複数のシグナル伝達特性の改変が望まれる用途のために有用である。このような用途は、in vitroでの細胞培養およびin vivoでの細胞増殖の助長を含む。例えば、フィブロネクチンで被覆された人工装具デバイスは、新しい上皮組織の成長および遊走を助長することが望まれる。フィブロネクチンで被覆された人工装具デバイスの調製は、当業者に公知である(例えば、特許文献1を参照されたい)。
【0040】
本発明の化合物で修飾された表面は、受動(すなわち非共有結合)被覆、化合物の共有結合による固定化または化合物の沈着(deposition)の任意のその他の方法のいずれかを利用してよい。
【0041】
細胞培養で用いるための本発明の化合物で修飾された表面は、細胞培養容器、細胞培養デバイスおよびマイクロキャリアを含む。本発明で用いるために適切な細胞培養容器は、当業者に公知である。適切な容器の例は、それらに限定されないが、ディッシュ、フラスコ、マルチウェルプレートおよび顕微鏡スライド、細胞培養インサートを含む。細胞培養のために適切なマイクロキャリアも、当業者に公知である。例えば、非特許文献10を参照されたい。
【0042】
有利には、本発明の表面を用いて培養された細胞は、治療的用途(例えば創傷治癒において)のために適切であり、そうでなければ免疫原性応答を誘発し、移植された細胞の拒絶さえ導くことがある、異なる供給源からの単離されたフィブロネクチンの使用に固有の問題を回避する。
【実施例】
【0043】
アミノ酸配列KSGRPREDRVPHSRNSITLTNSGSGSGSGSGRGDSP(配列番号7)を有する本発明の化合物を、商業的に利用可能なカスタムペプチド合成サービスを用いて合成した。この化合物を、次いで、表面の上に付加して表面を修飾した。
【0044】
本発明の化合物により修飾された表面が、フィブロネクチンで被覆された表面の1または複数の機能的特徴を模倣する能力を探索するために、細胞を播種し、このような両方の表面で同じ培養条件下で監視した。簡単に述べると、ATCCからのLNCaP細胞、MIA−PaCa−2細胞、A−172細胞またはRKO細胞を、供給元の使用説明に従って培養した。LNCaPは、10%ウシ胎児血清を補ったRPMI−1640培地(ATCCカタログ番号30−2001)で培養した。MIA−PaCa−2細胞およびA−172細胞は、10%ウシ胎児血清を補ったDMEM(Invitrogenカタログ#11885−084)で成長させた。RKO細胞は、10%ウシ胎児血清を補ったEMEM(ATCCカタログ#30−2003)で培養した。細胞は、加湿インキュベータ中で5%CO2を用いて37℃で培養した。播種のために培地を除去し、細胞をPBSで洗浄し、3mlの0.25%トリプシン−EDTAをT−75フラスコ中の細胞に加えた。フラスコを顕微鏡下で調べ、細胞が表面から一旦脱着したら、10mlの培養培地を加えてトリプシンを中和した。細胞を15mlのBD Falconチューブに移し、200×gで10分間遠心分離した。上清を除去し、細胞ペレットを、200マイクログラム/mlのBSAを有するDMEM(Invitrogenカタログ#11885−084)で1回洗浄した。細胞を、200マイクログラム/mlのBSAを有するDMEMに再懸濁し、50,000細胞/cm2にて24ウェルプレートのウェルあたり1.0mlの培地に播種した。培養表面は、化合物KSGRPREDRVPHSRNSITLTNSGSGSGSGSGRGDSP(配列番号7)、または陽性対照として貢献するBD BioCoatフィブロネクチンにより修飾されたいずれかの表面であった。さらに、BDの組織培養用の処理済み表面は、陽性対照としての役割を果たした。細胞を、加湿インキュベータ中で5%CO2を用いて37℃で24時間インキュベートした。
【0045】
播種の後の24時間のインキュベーションの後に、LNCaP細胞を顕微鏡で視覚化し、画像を取得した。特に、細胞接着および伸展は、本発明の化合物KSGRPREDRVPHSRNSITLTNSGSGSGSGSGRGDSP(配列番号7)により修飾した表面(図1Bを参照されたい)と、BD BioCoatフィブロネクチン(図1Cを参照されたい)により修飾した表面との間で同等であった。これとは対照的に、細胞接着および伸展は、陰性対照として役割を果たす表面上に被覆を有さない組織培養用の処理済み表面において著しく低減した(図1Aを参照されたい)。
【0046】
上記の視覚的な分析に加えて、MTS分析を行って、細胞接着の程度の定量を行った。簡単に述べると、プレートを逆さまにすることにより培地を除去し、MTS(Promegaカタログ#G3582)を含有する300μlの完全培地を、24ウェルプレートの各ウェルに加えた。細胞を加湿インキュベータ中で5%CO2にて37℃でインキュベート1時間した。インキュベーションの後に、0.1mlの培地をBD Falcon(商標)96ウェルプレートに移し、吸光度を490nmにて測定した。
【0047】
図2に示すように、化合物KSGRPREDRVPHSRNSITLTNSGSGSGSGSGRGDSP(配列番号7)で処理した表面およびBD BioCoatフィブロネクチンで処理した表面は、同等のLNCaP細胞の接着を支持したが、未処理の組織培養表面へのLNCaPの接着は、著しく低減した。
【0048】
同様に、化合物KSGRPREDRVPHSRNSITLTNSGSGSGSGSGRGDSP(配列番号7)で処理した表面およびBD BioCoatフィブロネクチンで処理した表面上へのA−172細胞およびRKO細胞のIncuCyte(Essen)による集密度の定量は、同等であった(図3を参照されたい)。これとは対照的に、未処理の組織培養表面への集密度の定量は、著しく低減した。
【0049】
さらに、KSGRPREDRVPHSRNSITLTNSGSGSGSGSGRGDSP(配列番号7)、KSGRPREDRVPHSRNSITLTNSGTGSGTGSGRGDSP(配列番号8)、KSGRPREDRVPHSRNSITLTNGGGSGGGSGGGRGDSP(配列番号9)、KSGRARADRVPHSRNTITLTNSGSGSGSGSGRGDSP(配列番号10)、KSGRARADRVPHSRNTITLTNGGSGGSGGSGRGDSP(配列番号11)、またはKSGRGRGDRVPHSRNGITLTNSGSGSGSGSGRGDSP(配列番号12)の被覆を表面上に有する表面は、BD BioCoatフィブロネクチン表面と同様に細胞接着および伸展を支持した(図4Aおよび図4Bを参照されたい)。
【0050】
当業者は、上記の実施形態に、本発明の広い発明の概念を逸脱することなく変更を行うことができることを認識しよう。よって、この発明は、開示される特定の実施形態に限定されないが、添付の特許請求の範囲により定義される本発明の精神および範囲内の改変をカバーすることを意図することが理解される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
柔軟なリンカーで接ぎ合わされたフィブロネクチン細胞結合性ドメインの少なくとも2つの領域を含む化合物であって、
少なくとも1つの領域は、アミノ酸配列GRGDSP(配列番号1)を含み、
別の領域は、X12345678910111213RX15PX17SRNX2122TLTX26(配列番号2)を含み、式中、
1はKを表すかまたは存在せず、
2はKを表すかまたは存在せず、
3はKを表すかまたは存在せず、
4はKを表すかまたは存在せず、
5はKを表すかまたは存在せず、
6はKを表すかまたは存在せず、
7はS、V、A、Gを表すかまたは存在せず、
8はG、Aを表すかまたは存在せず、
9はRまたはGを表し、
10はP、A、QまたはGを表し、
11はRまたはKを表し、
12はE、Q、W、AまたはGを表し、
13はDまたはEを表し、
15はV、LまたはIを表し、
17はHまたはPを表し、
21はS、TまたはGを表し、
22はIまたはLを表し、
26はNまたはHを表す
ことを特徴とする化合物。
【請求項2】
7は、Sを表すことを特徴とする請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
8は、Gを表すことを特徴とする請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
9は、Rを表すことを特徴とする請求項3に記載の化合物。
【請求項5】
10は、GまたはAを表すことを特徴とする請求項4に記載の化合物。
【請求項6】
11は、Rを表すことを特徴とする請求項5に記載の化合物。
【請求項7】
12は、E、AまたはGを表すことを特徴とする請求項6に記載の化合物。
【請求項8】
13は、Dを表すことを特徴とする請求項7に記載の化合物。
【請求項9】
15は、Vを表すことを特徴とする請求項8に記載の化合物。
【請求項10】
17は、Hを表すことを特徴とする請求項9に記載の化合物。
【請求項11】
22は、Iを表すことを特徴とする請求項10に記載の化合物。
【請求項12】
26は、Nを表すことを特徴とする請求項11に記載の化合物。
【請求項13】
前記柔軟なリンカーは、アミノ酸配列SGSGSGSGS(配列番号3)、GGSGGSGGS(配列番号4)、SGTGSGTGS(配列番号5)またはGGGSGGGSGG(配列番号6)を含むことを特徴とする請求項1に記載の化合物。
【請求項14】
前記柔軟なリンカーは、アミノ酸配列SGSGSGSGS(配列番号3)、GGSGGSGGS(配列番号4)、SGTGSGTGS(配列番号5)またはGGGSGGGSGG(配列番号6)を含むことを特徴とする請求項12に記載の化合物。
【請求項15】
少なくとも一部分は、請求項1に記載の被覆を表面上に含むことを特徴とする表面。
【請求項16】
少なくとも一部分は、請求項14に記載の被覆を表面上に含むことを特徴とする表面。
【請求項17】
フィブロネクチンで被覆された表面の1または複数の機能的特徴を模倣することを特徴とする請求項15に記載の表面。
【請求項18】
その上に請求項17に記載の表面を含むことを特徴とする組成物。

【図2】
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【図1】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【公開番号】特開2012−140408(P2012−140408A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−269062(P2011−269062)
【出願日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【出願人】(595117091)ベクトン・ディキンソン・アンド・カンパニー (539)
【氏名又は名称原語表記】BECTON, DICKINSON AND COMPANY
【住所又は居所原語表記】1 BECTON DRIVE, FRANKLIN LAKES, NEW JERSEY 07417−1880, UNITED STATES OF AMERICA
【Fターム(参考)】