説明

合成エステルワックス

【課題】品質が一定しており、供給安定性もよく、カルナウバワックス等の天然ワックスに近い融点で同等又はそれ以上の硬度や光沢性を有し、従来のワックスの代替として好ましく使用できるエステルワックスであり、かつ、低溶融粘度と低融解熱量の二つの特徴を両立させたエステルワックスを提供することにある。
【解決手段】融点が70℃以上の硬質ラノリン脂肪酸と一価アルコールとの縮合反応によって得られるエステルワックスを用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、融点が70℃以上の硬質ラノリン脂肪酸と一価アルコールとの縮合反応によって得られるエステルワックスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来からワックスには天然ワックスと合成ワックスが知られ、前者としては蜜ロウ、モンタンワックス、カルナウバワックス、パラフィンワックス、ミクロクリスタリンワックス等が挙げられる。後者としては、高圧法やチーグラー法で合成されたポリエチレンワックス、フィッシャー法で合成されたサゾールワックス、熱分解法で合成されたポリプロピレンワックス等が挙げられる。これら公知のワックスは、トナー、熱転写インク、リライトカード、リライトペーパーなどの表示材料の他、艶出し材、電気絶縁材、ホットメルト接着剤用原料、樹脂改質材、樹脂用離型材もしくは滑り材、金型離型材、フィルム離型材料、塗料改質材等の幅広い分野で使用されている。これら公知ワックスのうち、カルナウバワックスを代表とする天然ワックスは、高硬度でかつ比較的低融点の特性を有するため、トナーや熱転写インクバインダー等の分野で広く使用されている。また、高い光沢性を有するため、靴、自動車、家具等の艶出し剤としても広く用いられている。しかしながらこれらは天然成分であるため、供給量に制限がある、品質が安定しない等の問題がある。
【0003】
近年、トナー用途では、待機エネルギーの低減や高速印刷性を要求されており、したがってトナー用ワックスには、高い硬度を有しながら比較的低融点であり、さらに溶融粘度が低く、かつ、融解熱量が低いものが求められている。また、トナー以外の用途、例えば艶出し剤、電気絶縁材、樹脂形成用滑材、ホットメルト接着剤等においても、生産時あるいは使用時の省エネルギー化の観点から、低溶融粘度かつ低融解熱量のワックスが望まれている。しかしながら、上記の公知ワックスで低溶融粘度と低融解熱量の両方を満足するものは得られていない。
【0004】
近年、カルナウバワックス等の天然ワックスの代替として、直鎖飽和脂肪酸と直鎖一価アルコールからなるエステルワックスがトナー用ワックスとして使用されている(特許文献1、2、3)。このようなエステルワックスは、品質が一定しており、供給安定性もよく、また、脂肪酸やアルコールを選択することにより幅広い融点の化合物が得られ、比較的高硬度であり、かつ低溶融粘度のものが得られる点で優れている。しかしながら融解熱量が高く、低溶融粘度と低融解熱量を両立するものではなかった。また、光沢性は期待されないため、艶出し剤等の光沢性を要求される用途としては不適なものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平08−050368号公報
【特許文献2】特開平08−006285号公報
【特許文献3】特開2002−212142号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって本発明の課題は、品質が一定しており、供給安定性もよく、カルナウバワックス等の天然ワックスに近い融点で同等又はそれ以上の硬度や光沢性を有し、従来のワックスの代替として好ましく使用できるエステルワックスであり、かつ、低溶融粘度と低融解熱量の二つの特徴を両立させたエステルワックスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、融点が70℃以上の硬質ラノリン脂肪酸と一価アルコールとの縮合反応によって得られるエステルワックスが、上記課題を解決することを見出し、本発明に到達した。
【発明の効果】
【0008】
本発明エステルワックスは、主な原料として工業的に広く生産されているラノリンを用いるものであり、比較的品質が一定しており、供給安定性もよい。また、本発明のエステルワックスは、使用する硬質ラノリン脂肪酸又は一価アルコールの種類を選択することにより幅広い融点のエステルワックスが得られ、カルナウバワックス等の天然ワックスに近い融点のものを得ることが可能であり、かつ、硬度や光沢性の面で天然ワックスと同等又はそれ以上の性能を有する。そして、本発明エステルワックスは、従来のワックスでは困難であった低溶融粘度と低融解熱量を両立させたものあり、トナー用途では、待機エネルギーの低減や高速印刷性の向上が可能であり、また、トナー以外の用途においても、生産時あるいは使用時の省エネルギー化が達成できる。さらに、本発明のエステルワックスは、一般的なワックスとしての特長、すなわち、撥水性、離型性、潤滑性、透明性、顔料分散性を備えており、カルナウバワックスをはじめとする従来のワックスの代替として好ましく使用することが可能である。すなわち、本発明のエステルワックスは、トナー、熱転写インクバインダー、リライトカード、リライトペーパーなどの表示材料、艶出し材、電気絶縁材、ホットメルト接着剤用原料、樹脂改質材、樹脂用離型材もしくは滑り材、金型離型材、フィルム離型材料、塗料改質材等の幅広い分野に使用することが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明に用いられる硬質ラノリン脂肪酸とは、ラノリンをケン化分解して得られたラノリン脂肪酸又はそのエステル誘導体から、蒸留や溶剤分別法により比較的低融点の成分を除くことにより得られる高融点のラノリン脂肪酸である。ラノリン脂肪酸はおおよそノルマル脂肪酸7%、イソ脂肪酸22%、アンテイソ脂肪酸29%、α−ヒドロキシノルマル脂肪酸25%、α−ヒドロキシイソ脂肪酸3%、未確認成分14%などからなり、これらの脂肪酸の炭素数も9から33までと幅広い分布をもった脂肪酸である。本発明の硬質ラノリン脂肪酸としては、融点が70℃以上の物を使用することが好ましく、より好ましくは80℃以上のものである。
【0010】
融点が70℃以上の硬質ラノリン脂肪酸を得る方法として、蒸留法による場合は、ラノリン脂肪酸の低級アルコールエステルを原料とすることが、蒸留温度が低下し熱劣化を防ぐ点で好都合である。蒸留装置としては薄膜減圧蒸留機、分子蒸留機などを用いることができる。蒸留条件に特に制限はなく適時選択することができ、蒸留物と蒸留残渣の比率を変えることにより、得られる脂肪酸の融点を変化させることが可能である。このようにして得られる蒸留残渣をケン化分解することにより目的の硬質ラノリン脂肪酸を得ることができる。また、溶剤分別法による場合は、ラノリン脂肪酸またはそのエステルを有機溶媒、例えばヘキサン、ヘプタン、メチルシクロヘキサン、トルエン、キシレン等の炭化水素系溶媒、ジクロロエタン等のハロゲン系溶媒、メタノール、エタノール、イソプロパノールのようなアルコール系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒、酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル系溶媒、あるいはこれらの混合溶媒などに加熱溶解後、冷却を行い析出してくるロウ状物を遠心分離器や加圧濾過器などにより、分別することにより得ることができる。使用する溶剤の種類や使用量は適宜調整すればよく、これらを調整することにより得られる脂肪酸の融点を変化させることが可能である。本発明に使用される融点が70℃以上の硬質ラノリン脂肪酸としては、市販品としてYOFCO ラノリン脂肪酸HH(日本精化製、融点73〜79℃)、YOFCO ラノリン脂肪酸HHW(日本精化製、融点73〜79℃)、YOFCO ラノリン脂肪酸22H(日本精化製、融点80〜88℃)等が使用できる(JIS K 0064の融点測定法に準拠して測定)。
【0011】
本発明に使用される一価アルコールとしては、炭素数1〜30の飽和若しくは不飽和の、直鎖、分岐、環含有若しくは環状の一価アルコールが包括され、使用する一価アルコールを選択することにより得られるエステルワックスの融点や硬度を変化させることができるが、好ましい融点や硬度が得られる点で炭素数1〜30の飽和直鎖の一価アルコールが好ましい。具体的には、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナノール、デカノール、ウンデカノール、ドデカノール、トリデカノール、テトラデカノール、ペンタデカノール、ヘキサデカノール、ヘプタデカノール、オクタデカノール、ノナデカノール、エイコサノール、ドコサノール、テトラコサノール、トリコサノール等が挙げられる。これらのうち、入手性や好ましい融点、硬度が得られる点で炭素数16〜22の飽和直鎖の一価アルコールが特に好ましい。これらの一価アルコールは、単独で使用してもよく、あるいは2種以上を混合して使用してもよい。
【0012】
本発明のエステルワックスは、上記の硬質ラノリン脂肪酸と一価アルコールとをエステル化することにより製造できる。エステル化の方法は特に限定されず、一般に用いられる方法、すなわち、原料の脂肪酸とアルコールを無溶媒で150〜260℃で反応させる方法、触媒と溶媒を用いて50〜180℃で反応させる方法などにより製造できる。触媒を使用する場合は、パラトルエンスルホン酸、硫酸、塩酸、メタンスルホン酸、三フッ化硼素ジエチルエーテル錯体、チタンアルコラート、固体酸触媒等の一般的な酸触媒を用いることができる。溶媒を用いる場合には、トルエン、ヘプタン等の一般的に使用される溶剤を使用することができる。エステル化反応終了後、脱色、脱酸、減圧蒸留、水洗、水蒸気蒸留脱臭、活性炭処理等の通常の精製方法で精製してもよい。
【0013】
本発明のエステルワックスの有利な特徴として、溶融粘度が低い点が挙げられる。本発明のエステルワックスの溶融粘度に特に制限はないが、各種用途に使用した際に好ましく効果を発揮させる点で、100℃における溶融粘度が、25mPa・s以下であることが好ましく、より好ましくは20mPa・s以下である。ここでの粘度は、ブルックフィールド型回転粘度計により測定される。
【0014】
本発明のエステルワックスの有利な特徴として、融解熱量が低い点が挙げられる。本発明のエステルワックスの融解熱量に特に制限はないが、各種用途に使用した際に好ましい効果を発揮させる点で、融解熱量は120J/g以下であることが好ましく、より好ましくは100J/g以下である。ここでの融解熱量は、示差走査熱量分析により得られる示差熱曲線において、高温側のベースラインを低温側に延長したとき、その延長線と示差熱曲線の2線で囲まれた面積と測定試料量より求められる熱量のことである。
【0015】
本発明のエステルワックスは、使用する硬質ラノリン脂肪酸又は一価アルコールの種類を選択することにより幅広い融点のエステルワックスが得られ、カルナウバワックス等の天然ワックスに近い融点のものを得ることが可能である。カルナウバワックス等の天然ワックスは比較的融点の低いワックスであるが、本発明のエステルワックスは、このような比較的低い融点においても、カルナウバワックス等の天然ワックスと同等又はそれ以上の硬度を有する。具体的には、針入度(JIS K 2235の針入度試験方法に準拠して測定)を硬度の指標とした場合、25℃の測定条件における針入度が5以下のエステルワックスを得ることが可能である。
【実施例】
【0016】
以下、本発明につき実施例を用いてより詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0017】
本実施例で採用した各種評価の方法を次に示す。
(1)エステルワックスの酸価:JIS K 0070に準拠した。
(2)エステルワックスの融点:JIS K 0064に準拠した。
(3)エステルワックスの針入度:JIS K 2235の針入度試験方法に準拠した。
(4)エステルワックスの粘度:ブルックフィールド型回転粘度計を用いて100℃での粘度(mPa・s)を測定した。
(5)エステルワックスの融解熱量:示差走査熱量分析計として、理学電機(株)製の「DSC8230」を使用した。測定は、リファレンスとしてアルミナ5mgを用い、約5mgのエステルワックスを試料ホルダーに入れ、5℃/分で20℃から120℃まで昇温することにより行い、得られた示差熱曲線より融解熱量を算出した。
【0018】
製造例1(高融点硬質ラノリン脂肪酸の製造)
市販の硬質ラノリン脂肪酸(YOFCOラノリン脂肪酸HHW 酸価95、融点75℃、日本精化(株)製)200gにMEKを800ml加え、攪拌しながら50℃に加温し完溶させた。次いで緩やかに攪拌しながら30℃まで冷却後、1時間静置し結晶を沈殿させた。デカンテーションで上澄みを除去した後、結晶成分を脱溶剤し目的の脂肪酸(酸価90、融点80℃)を得た。
【0019】
実施例1(本発明のエステルワックスの製造)
温度計、窒素導入管、攪拌機および冷却管を取り付けた4つロフラスコに、硬質ラノリン脂肪酸(YOFCOラノリン脂肪酸HHW 酸価95、融点75℃、日本精化(株)製)300gおよび一価アルコールとしてステアリルアルコール(カルコール8098 水酸基価207、花王(株)製)137gを加え、窒素気流下、220℃で反応水を留去しつつ、15時間以上常圧で反応し、溶融時透明な黄色で、光沢のあるエステルワックスを得た。
【0020】
実施例2(本発明のエステルワックスの製造)
実施例1のステアリルアルコールの代わりにベヘニルアルコール(カルコール220 水酸基価175、花王(株)製)162gを用いた以外は実施例1と同様に反応を行い、溶融時透明な黄色で、光沢のあるエステルワックスを得た。
【0021】
実施例3(本発明のエステルワックスの製造)
実施例1のYOFCOラノリン脂肪酸HHWの代わりに製造例1に記載の高融点硬質ラノリン脂肪酸(酸価90、融点80℃)316gを用いた以外は実施例1と同様に反応を行い、溶融時透明な黄色で、光沢のあるエステルワックスを得た。
【0022】
実施例4(本発明のエステルワックスの製造)
実施例1のステアリルアルコールの代わりにセチルアルコール(カルコール6098 水酸基価232、花王(株)製)122gを用いた以外は実施例1と同様に反応を行い、溶融時透明な黄色で、光沢のあるエステルワックスを得た。
【0023】
比較例1(ベヘニン酸とベヘニルアルコールのエステルの製造)
実施例2の硬質ラノリン脂肪酸の代わりにベヘニン酸(NAA−222S 酸価165、日油(株)製)172gを用いた以外は実施例2と同様に反応を行い、目的のエステルワックスを得た。
【0024】
比較例2(硬質ラノリン脂肪酸とペンタエリスリトールのエステルの製造)
温度計、窒素導入管、攪拌機および冷却管を取り付けた4つロフラスコに、硬質ラノリン脂肪酸(YOFCOラノリン脂肪酸HHW 酸価95、融点75℃、日本精化(株)製)300gおよびアルコールとしてペンタエリスリトール37gを加え減圧下に250℃で10時間加熱撹拌してエステル化を行ない、目的のエステルワックスを得た。
【0025】
物性評価
実施例1〜4のエステルワックス、比較例1〜2のエステルワックス、及び、市販のカルナウバワックスNo.1(株式会社加藤洋行製)について各種の物性を評価した。結果を表1に示す。
【0026】
【表1】

【0027】
表1から明らかなように、実施例1〜4のエステルワックスは、カルナウバワックスに近い融点、針入度を有し、かつ、カルナウバワックスより低い溶融粘度、融解熱量を有することが分かった。また、直鎖飽和脂肪酸と直鎖一価アルコールからなる比較例1の従来の合成エステルワックス(ベヘニン酸ベヘニル)では、溶融粘度は低いが融解熱量は非常に高いものであった。比較例2の硬質ラノリン脂肪と多価アルコールとのエステルワックスでは、溶融熱量は低いものであったが溶融粘度が高いものであった。以上より、本発明のエステルワックスは、カルナウバワックスと同等の性能を有し、かつ、低溶融粘度と低融解熱量を両立させたエステルワックスであることが分かった。
【0028】
製造例2(ホットメルトインク組成物)
実施例1のワックス 45g、サゾールワックスH1(サゾールワックス社製) 30g、ベヘニン酸(日油(株)製) 25g、カーボンブラックMA−100(三菱化成株式会社製) 3gを加熱混合しホットメルトインク組成物を作製した。また、比較として実施例1のワックスの代わりにカルナウバワックス(株式会社加藤洋行製カルナウバワックス1号)を使用したホットメルトインク組成物を、ブランクとして実施例1のワックスを含有しないホットメルトインク組成物を作製した。
【0029】
(評価1)顔料分散性
上記で得られたホットメルトインク組成物をプレパラートにとり、倍率20倍の光学顕微鏡で観察した。ブランクは顔料の凝集が見られたが、製造例2及びカルナウバワックス配合のホットメルトインク組成物は同様に分散性が良好であった。このことより、本発明のエステルワックスは、顔料分散性を向上させる効果があり、その効果はカルナウバワックスと同等であることが分かった。
【0030】
製造例3(水系塗料組成物)
実施例1のワックス70g、イソプロピルアルコール200gを80℃で加熱溶融した。次に、予め氷で冷やしたIPA40gと水440gとの混合溶液中に、上記溶液を攪拌しながら少量ずつゆっくり添加し粗分散物を作製した。この粗分散物を5Lの実験用ボールミルに磁性ボールと共に入れて50時間粉砕させ、分散物を得た。この分散物1.5部を水溶性塗料テクノン#300(大日本塗料製)100部に添加し、充分に攪拌混合し水系塗料組成物とした。比較として実施例1のワックスの代わりにカルナウバワックス(株式会社加藤洋行製カルナウバワックス1号)を使用した水系塗料組成物を、ブランクとして実施例1のワックスを含有しない水系塗量組成物を作製した。
【0031】
(評価2)滑り性
上記で得られた水系塗料組成物を塗布厚10μmとなるようにブリキ板に塗布し、焼付条件160℃×10分で焼き付けて塗膜を形成した。得られた塗膜の表面を指で擦ることで滑り性を評価した。ブランクは滑りが悪かったが、製造例3及びカルナウバワックス配合した水系塗料組成物は同様に良好な滑り性を有していた。このことより、本発明のエステルワックスは、摩擦を下げる効果があり、その効果はカルナウバワックスと同等であることが分かった。
【0032】
製造例4(樹脂組成物)
HP−7200H(エポキシ樹脂、DIC株式会社製)50g、SN−475L(フェノール樹脂、新日鉄化学社製)50g、硬化促進剤としてトリフェニルホスフィン2.5g、実施例1のワックス1gを100℃に加熱して充分に攪拌混合し樹脂組成物とした。比較として実施例1のワックスの代わりにカルナウバワックス(株式会社加藤洋行製カルナウバワックス1号)を使用した樹脂組成物を、ブランクとして実施例1のワックスを含有しない樹脂組成物を作製した。
【0033】
(評価3)離型性
成形金型(大きさ:10mm×10mm×5mmの直方立方体)に上記で得られた樹脂組成物を流し込み成形物を作製した(成形条件:175℃×2分、硬化条件:175℃×5時間)。形成物の金型からの抜き出し易さから離型性を評価した。ブランクは、金型からなかなか外れなかったが、製造例4及びカルナウバワックス配合の樹脂組成物は同様に容易に金型より外すことができた。このことより、本発明のエステルワックスは、離型性においてカルナウバワックスと同等であることが分かった。
【0034】
製造例5(カーワックス組成物)
実施例1のワックス20g、ステアリン酸10g、トリエタノールアミン0.3g、ゼライト500(セライト社製)50g、ペガゾール3040(新日本石油製)80g、水70gを加熱混合してカーワックス組成物を作製した。比較として実施例1のワックスの代わりにカルナウバワックス(株式会社加藤洋行製カルナウバワックス1号)を使用したカーワックス組成物を、ブランクとして実施例1を含有しないカーワックス組成物を作製した。
【0035】
(評価4)光沢性、撥水性
上記で得られたカーワックス組成物を一般的な自家用車の車体に塗布して磨き出しを行い、光沢状態を評価した。また、カーワックス組成物で処理した部分に水をかけ水弾き状態を評価した。ブランクは、光沢がなく、水弾きも悪いが、製造例5及びカルナウバワックス配合のカーワックス組成は同様に良好な光沢と水弾きがあった。このことより、本発明のエステルワックスは、優れた光沢性、撥水性を有し、その効果はカルナウバワックスと同等であることが分かった。
【0036】
製造例2〜5を用いた評価1〜4により、本発明のエステルワックスは、カルナウバワックスと同等の撥水性、離型性、潤滑性、顔料分散性を有することが分かった。




【特許請求の範囲】
【請求項1】
融点が70℃以上の硬質ラノリン脂肪酸と一価アルコールとの縮合反応によって得られるエステルワックス。
【請求項2】
硬質ラノリン脂肪酸の融点が80℃以上であることを特徴とする請求項1に記載のエステルワックス。
【請求項3】
一価アルコールが炭素数16〜22の飽和直鎖の一価アルコールであることを特徴とする請求項1又は2に記載のエステルワックス


【公開番号】特開2011−195528(P2011−195528A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−65696(P2010−65696)
【出願日】平成22年3月23日(2010.3.23)
【出願人】(000231497)日本精化株式会社 (60)
【Fターム(参考)】