説明

合成ゴムラテックスの製造方法

【課題】 凝集物等の巨大粒子の少ない合成ゴムラテックスが容易に得られる製造方法を提供すること。
【解決手段】 共役ジエン(a1)、カルボキシル基含有エチレン性不飽和単量体(b1)および前記エチレン性不飽和単量体(b1)以外のエチレン性不飽和単量体(c1)を乳化重合させてシード用重合物を製造する工程と前記シード用重合物の存在下で共役ジエン(a2)、カルボキシル基含有エチレン性不飽和単量体(b2)および前記エチレン性不飽和単量体(b2)以外のエチレン性不飽和単量体(c2)を乳化重合する工程とを含有する合成ゴムラテックスの製造方法であり、前記(a1)と(a2)、(b1)と(b2)および(c1)と(c2)がそれぞれ同一の化合物であることを特徴とする合成ゴムラテックスの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、凝集物等の巨大粒子の少ない合成ゴムラテックスが容易に得られる製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
合成ゴムラテックスは従来より塗料、接着剤等に使用されている。この合成ゴムラテックスは近年、耐水性、耐薬品性等の要求が強くなってきており、その要望に答えるべく重合の際に用いる乳化剤の量を少なくする、架橋性を有するエチレン性不飽和単量体を用いる等の対策がなされてきた。しかしながら、このような対策により得られる合成ゴムラテックスは凝集物等の巨大粒子が多い問題があった。凝集粒子が少ない合成ゴムラテックスを得る方法として、例えば、共役ジエン、カルボキシル基含有エチレン性不飽和単量体、前記エチレン性不飽和単量体以外のエチレン性不飽和単量体をシード用重合物存在下で乳化重合させる方法等が知られている(例えば、特許文献1参照。)。しかしながら、前記特許文献1の方法によっても凝集物等の巨大粒子の少ない合成ゴムラテックスを得るのは困難で、更にろ過等の操作により凝集物等の巨大粒子を除去する必要がある。また、ろ過等を行う際に目詰まりを起こしやすい等の問題もある。
【0003】
【特許文献1】特開平6−248030号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、凝集物等の巨大粒子の少ない合成ゴムラテックスが容易に得られる製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は鋭意検討を行った結果、シード重合法により合成ゴムラテックスを製造するにあたり、シードを得るのに用いた化合物と同じ化合物を用いることにより重合系内を均質化したまま重合を進めることができ、その結果、凝集物等の巨大粒子の発生が抑制できること等を見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
即ち、本発明は、共役ジエン(a1)、カルボキシル基含有エチレン性不飽和単量体(b1)および前記エチレン性不飽和単量体(b1)以外のエチレン性不飽和単量体(c1)を乳化重合させてシード用重合物を製造する工程と前記シード用重合物の存在下で共役ジエン(a2)、カルボキシル基含有エチレン性不飽和単量体(b2)および前記エチレン性不飽和単量体(b2)以外のエチレン性不飽和単量体(c2)を乳化重合する工程とを含有する合成ゴムラテックスの製造方法であり、前記(a1)と(a2)、(b1)と(b2)および(c1)と(c2)がそれぞれ同一の化合物であることを特徴とする合成ゴムラテックスの製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば凝集物等の巨大粒子の少ない合成ゴムラテックスが容易に得ることができる。得られた合成ゴムラテックスは塗料、接着剤、浸浸加工剤、フィルム用塗工剤等に好ましく使用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明において、共役ジエン(a1)と(a2)、カルボキシル基含有エチレン性不飽和単量体(b1)と(b2)及びエチレン性不飽和単量体(C)から選ばれるエチレン性不飽和単量体(c1)と(c2)はそれぞれ同一である必要がある。(a1)と(a2)とが異なる、及び/又は、(b1)と(b2)が異なる、及び/又は(c1)と(c2)が異なる場合には合成ゴムラテックスの製造中に凝集粒子ができやすく好ましくない。
【0009】
前記(a1)と(a2)の使用量としては、(a1)、(b1)および(c1)の重量合計(x)に対する(a1)の重量比{〔(a1)/(x)〕と、(a2)、(b2)および(c2)の重量合計(y)に対する(a2)の重量比〔(a2)/(y)〕}との比{〔(a1)/(x)〕/〔(a2)/(y)〕}が0.9〜1.1であることが好ましく、0.99〜1.01であることがより好ましい。
【0010】
前記(b1)と(b2)の使用量としては、(x)に対する(b1)の重量比〔(b1)/(x)〕と、(y)に対する(b2)の重量比〔(b2)/(y)〕との比{〔(b1)/(x)〕/〔(b2)/(y)〕}が0.9〜1.1であることが好ましく、0.99〜1.01であることがより好ましい。
【0011】
前記(c1)と(c2)の使用量としては、(X)に対する(c1)の重量比〔(c1)/(x)〕と、(y)に対する(c2)の重量比〔(c2)/(y)〕との比{〔(c1)/(x)〕/〔(c2)/(y)〕}が0.9〜1.1であることが好ましく、0.99〜1.01であることがより好ましい。
【0012】
更に、(x)に対する(a1)の重量比〔(a1)/(x)〕と、(y)に対する(a2)の重量比〔(a2)/(y)〕}との比{〔(a1)/(x)〕/〔(a2)/(y)〕}、(x)に対する(b1)の重量比〔(b1)/(x)〕と、(y)に対する(b2)の重量比〔(b2)/(y)〕との比{〔(b1)/(x)〕/〔(b2)/(y)〕}および(x)に対する(c1)の重量比〔(c1)/(x)〕と、(y)に対する(c2)の重量比〔(c2)/(y)〕}との比{〔(c1)/(x)〕/〔(c2)/(y)〕}が同一であっても異なっていてもよく、かつ、0.9〜1.1であることが好ましく、0.99〜1.01であることがより好ましい。
【0013】
本発明で用いる共役ジエン(A)としては、例えば、1,3−ブタジエン、イソプレン、2−クロル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン等の脂肪族共役ジエン系単量体等が挙げられる。
【0014】
本発明で用いるカルボキシル基含有エチレン性不飽和単量体(B)としては、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、マレイン酸及びその無水物、フマル酸、イタコン酸等のエチレン性不飽和カルボン酸;マレイン酸モノメチル、フマル酸モノエチル、イタコン酸モノn−ブチル等の不飽和ジカルボン酸モノアルキルエステル等が挙げられる。
【0015】
本発明で用いる前記エチレン性不飽和単量体(B)以外のエチレン性不飽和単量体(C)としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸オクタデシル等の(メタ)アクリル酸エステル;スチレン、αーメチルスチレン、ビニルトルエン、クロルスチレン、2,4−ジブロムスチレン等のエチレン性不飽和芳香族単量体;(メタ)アクリロニトリル等の不飽和ニトリル;アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、アクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸−2−ヒドロキシエチル等エチレン性不飽和カルボン酸のヒドロキシアルキルエステル;グリシジル(メタ)アクリレート等のエチレン性不飽和カルボン酸のグリシジルエステル;(メタ)アクリルアミド,N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジメタアクリレート、エチレングリコールジアクリレート等が挙げられる。
【0016】
シード用重合物を製造する工程は、例えば、前記共役ジエン(a1)、前記エチレン性不飽和単量体(b1)及び前記エチレン性不飽和単量体(c1)を乳化重合させる工程等が挙げられる。具体的には、例えば、前記(a1)、(b1)及び(c1)、乳化剤、重合開始剤を必須として、必要により、例えば、重合促進剤、連鎖移動剤等を加えて50〜95℃で5〜25時間反応させる工程等が挙げられる。
【0017】
前記乳化剤としては、例えば、陰イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、両性イオン性界面活性剤等が挙げられる。前記陰イオン性界面活性剤としては、例えば、高級アルコールの硫酸エステル及びその塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルジフェニルエーテルスルホン酸塩、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩、コハク酸ジアルキルエステルスルホン酸塩等が挙げられる。
【0018】
前記非イオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンジフェニルエーテル、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロック共重合体、アセチレンジオール系界面活性剤等が挙げられる。
【0019】
前記陽イオン性界面活性剤としては、例えば、アルキルアンモニウム塩等が挙げられる。前記両性イオン性界面活性剤としては、例えば、アルキル(アミド)ベタイン、アルキルジメチルアミンオキシド等が挙げられる。また、上記の界面活性剤の他に、特殊界面活性剤として、フッ素系界面活性剤や、シリコーン系界面活性剤を使用することもできる。
【0020】
更に、一般的に「反応性乳化剤」と称される重合性不飽和基を分子内に有する乳化剤も使用することが出来る。本発明で使用出来る反応性乳化剤としては、例えば、スルホン酸基及びその塩を有する「ラテムルS−180」〔花王(株)製〕、「エレミノールJS−2、RS−30」〔三洋化成工業(株)製〕等;硫酸基及びその塩を有する「アクアロンHS−10、HS−20」〔第一工業製薬(株)製〕、「アデカリアソープSE−10、SE−20」〔旭電化工業(株)製〕等;リン酸基を有する「ニューフロンティアA−229E」〔第一工業製薬(株)製〕等;非イオン性親水基を有する「アクアロンRN−10、RN−20、RN−30、RN−50」〔第一工業製薬(株)製〕等が挙げられ、前記した乳化剤は単独で使用しても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0021】
前記重合開始剤としては、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩系開始剤;クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド等の有機過酸化物;過酸化水素等を挙げることができる。重合開始剤は単独で使用しても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0022】
前記重合促進剤としては、例えば、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、硫酸第一鉄、グルコース、ホルムアルデヒド、L−アスコルビン酸、ナトリウムスルホキシレート等の還元剤、グリシン、アラニン、エチレンジアミン四酢酸アンモニウム塩、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム塩等のキレート剤等が挙げられる。重合促進剤は単独で使用しても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0023】
前記連鎖移動剤としては、例えば、t−ドデシルメルカプタン、n−トデシルメルカプタン、オクチルメルカプタン、n−テトラデシルメルカプタン、n−ヘキシルメルカプタン等のメルカプタン類;ターピノーレン、t−テルピネン、α−メチルスチレンダイマー、エチルキサントゲンジスルフィド、ジイソプロピルキサントゲンスルフィド、アミノフェニルスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド等が挙げられる。連鎖移動剤は単独で使用しても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0024】
前記シード用重合物を製造する工程は、シードとしての機能をなし、凝集物が少なく、成膜欠陥のない薄膜皮膜を有する合成ゴムラテックスを製造しやすいことから、シード用重合物の粒子径が50〜250nmとなるように行うのが好ましく、100〜200nmとなるように行うのが好ましい。
【0025】
また、前記シード用重合物を製造する工程は、シードラテックスのゲル分率が30重量%以上となるように行うのが好ましく、40重量%以上となるように行うのがより好ましい。具体的には、例えば、原料や反応条件を適宜選択することにより行うことができる。ここで、本発明において、シード用重合物および合成ゴムラテックスのゲル分率の測定は下記方法により行う。
【0026】
<ゲル分率の測定方法>
ガラス板上に乾燥後の膜厚が0.5mmとなるように試料を塗工し、80℃で2時間乾燥した後、ガラス板から剥離し、更に140℃で5分間乾燥したものを直径29mmの円形に切り取り、試料とした。次に、予め試料の溶剤浸漬前の重量(G1)を測定しておき、トルエン溶剤中に常温で24時間浸漬した後の試料の溶剤不溶解分を80メッシュ金網で濾過することにより分離し、110℃で1時間乾燥した後の重量(G2)を測定し、以下の式に従ってゲル分率を求める。
ゲル分率(重量%)=(G2/G1)×100
【0027】
また、本発明で用いるシード用重合物の粒子径や本願発明の製造方法で得られる合成ゴムラテックスの粒子径は動的光散乱法により測定したものであり、日機装(株)製マイクロトラックUPA型粒度分布測定装置にて測定した粒子径(50%メジアン径)を粒子径とした。
【0028】
本発明の合成ゴムラテックスの製造方法は前記シード用重合物を製造する工程と、前記シード用重合物の存在下で共役ジエン(a2)、エチレン性不飽和単量体(b2)およびエチレン性不飽和単量体(c2)を乳化重合する工程とを含有する。シード用重合物の存在下で(a2)、(b2)および(c2)を乳化重合する工程は、前記前記シード用重合物を製造する工程の後速やかに行っても良いし、前記シード用重合物を製造する工程のみを行いシード用重合物を製造保管しておき、その後、保管したシード用重合物を用いて(a2)、(b2)および(c2)を乳化重合する工程を行っても良い。
【0029】
シード用重合物は乳化重合後pHを6.0〜10.0に調整することにより安定化することができる。pH調製は、例えば、アンモニア、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ブチルアミン等のアルキルアミン類;ジメチルアミノエタノール、ジエタノールアミン、アミノメチプロパノール等のアルコールアミン類;モルホリン、またエチレンジアミン、ジエチレントリアミン等の多価アミン類、水酸化リチウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等の無機塩基性化合物を使用することにより行うことができる。
【0030】
シード用重合物の存在下で(a2)、(b2)および(c2)を乳化重合する工程は、例えば、シード用重合物、前記(a2)、(b2)、(c2)、乳化剤、重合開始剤を必須として、必要により重合促進剤、連鎖移動剤等を加えて50〜95℃で5〜25時間反応させる工程等が挙げられる。
【0031】
シード用重合物の使用量としては、(a2)、(b2)および(c2)の合計100重量部に対し、0.1〜20重量部が、凝集粒子が少なく、成膜欠陥のない薄膜皮膜を有し、粒子径分布が狭い合成ゴムラテックスが製造できることから好ましく、0.5〜7重量部がより好ましい。
【0032】
必要に応じて用いる乳化剤、重合開始剤、重合促進剤、連鎖移動剤は、それぞれ、例えば、前記シード用重合物を製造する際に用いる乳化剤、重合開始剤、重合促進剤、連鎖移動剤等を用いることができる。必要に応じて用いる乳化剤、重合開始剤、重合促進剤、連鎖移動剤等は、前記シード用重合物を製造する際に用いるものと異なっていても良いが、シード用重合物を製造するものと同じものを使用するのが、より凝集粒子の少ない合成ゴムラテックスを製造できるので好ましい。
【0033】
前記シード用重合物の存在下で共役ジエン(a2)、エチレン性不飽和単量体(b2)およびエチレン性不飽和単量体(c2)を乳化重合する工程において、乳化重合後pHを6.0〜10.0に調整することにより合成ゴムラテックスを安定化することができる。pH調製は、例えば、前記シード用重合物を製造する工程で用いることができる塩基性化合物等を用いて行うことができる。塩基性化合物は、前記シード用重合物を製造する工程で用いた塩基性化合物を用いた場合、この塩基性化合物と同じものを用いても良いし異なるものを用いても良いが、同じものを用いるのが好ましい。
【0034】
本発明の合成ゴムラテックスの製造方法では、前記シード用重合物の存在下で共役ジエン(a2)、エチレン性不飽和単量体(b2)およびエチレン性不飽和単量体(c2)を乳化重合する工程の後、未反応の単量体の臭気を低減する等の目的のため、例えば減圧水蒸気蒸留等の方法によって必要とされる固形分含量に濃縮、脱臭する工程も行うことができる。
【0035】
更に、本発明の製造方法で得られた合成ゴムラテックスは更にシード用重合物としてシード重合による合成ゴムラテックスの製造に用いることもできる。この際、シード用重合物として用いる合成ゴムラテックスと同じ原料を用いて合成ゴムラテックスを製造するのが好ましい。
【0036】
本発明の製造方法によって得られた合成ゴムラテックスは、例えば、薄膜形成用の塗料として有用である。従来の塗料は、薄板鋼板、例えば、亜鉛メッキ鋼板の防錆処理を行う際に、0.5〜2g/mの塗布量で塗布されるが、この場合、0.5〜2μmの粒子が存在すると塗膜面から突出することにより、成膜欠陥を引き起こし、点錆の原因となる。これを防ぐためには、0.5〜2μm程度の濾過材を用いて、0.5〜2μmの粒子を排除するという手間のかかる工程を行わなければならない。本発明の製造方法で得られる合成ゴムラテックスは、このような手間のかかる工程をなさずとも薄膜形成用の塗料として使用できる。即ち本発明の製造方法によって得られた合成ゴムラテックスを用いることによって、濾過操作が容易になり、工業的に有用である。また、キャスティング等の方法により薄膜のフイルムを製造する際にも有用である。
【実施例】
【0037】
実施例及び比較例により、本発明を具体的に説明する。なお、実施例中の「部」、「%」は断りのない限りそれぞれ重量部、重量%を示す。
【0038】
参考例1(シード用重合物の製造)
撹拌装置を備えた耐圧重合容器に、水120g、ニューコール271A〔アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム、日本乳化剤(株)製〕1.6g、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム0.15g、1,3−ブタジエン29g、スチレン68g、アクリル酸3g及びt−ドデシルメルカプタン0.5gを仕込み、撹拌を開始し、重合容器内温度が60℃に達したとき、過硫酸アンモニウム0.15gを添加して反応を開始した。攪拌しながら60℃で4時間反応させた後、70℃に昇温し、さらに7時間反応させた。その後、得られた重合物の冷却を行なって重合物を得た。この重合物は、重合率が99.1%であった。この重合物のpHを25%アンモニア水で8.5に調整した。水蒸気蒸留を行った後、pHを再度8.5に、固形分を44.5%に調整し本発明で用いるシード用重合物(1)を得た。シード用重合物(1)の粒子径は125nm、ゲル分率は73%であった。また、下記方法に従い濾過テストを行った所、結果は127秒であった。
【0039】
<濾過テストの方法>
420メッシュナイロン製濾布を、47mm内径のガラス製フィルターホルダーに装着して、シード用重合物を200gを入れて、100g濾過するのに要する時間(秒)を25℃で測定する。要する時間が短いほど凝集物等の巨大粒子が少ない。
【0040】
参考例2(同上)
撹拌装置を備えた耐圧重合容器に、水1400g、反応性乳化剤ラテムルS−180〔花王(株)製不飽和アルキル硫酸塩〕2.9g、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム0.15g、1,3−ブタジエン15.5g、スチレン80g、アクリル酸3g、グリシジルメタアクリレート1g及びジビニルベンゼン0.5部を仕込み、撹拌を開始し、反応温度を65℃に昇温し、重合容器内温度が65℃に達したとき、過硫酸アンモニウム0.1gを添加して反応を開始させた。攪拌しながら65℃で7時間反応させた後、70℃に昇温し、さらに3時間反応させた。その後、得られた重合物の冷却を行なって重合物を得た。この重合物は、重合率98.9%であった。この重合物のpHを25%アンモニア水で9.0に調整した。水蒸気蒸留を行った後、pHを再度9.0、固形分を44.5%に調整し、本発明で用いるシード用重合物(2)を得た。シード用重合物(2)の粒子径は132nm、ゲル分率は96%、濾過テストは153秒であった。ここで、参考例1及び2はシード用重合物の製造例であるが、シード用重合物を用いて合成ゴムラテックスを製造していないので比較例でもある。
【0041】
実施例1
撹拌装置を備えた耐圧重合容器に、水120g、ニューコール271A 1.6g、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム0.15g、1,3−ブタジエン29g、スチレン68g、アクリル酸3g、t−ドデシルメルカプタン0.5g及びシード用重合物(1)2gを仕込み、撹拌を開始し、重合容器内温度が60℃に達したとき、過硫酸アンモニウム0.15gを添加して反応を開始した。攪拌しながら60℃で4時間反応させた後、70℃に昇温し、さらに7時間反応させた。その後、得られた重合物の冷却を行なった。この重合物は、重合率が99.1%であった。この重合物のpHを25%アンモニア水で8.5に調整した。水蒸気蒸留を行った後、pHを再度8.5に、固形分を44.5%に調整し合成ゴムラテックス(1)を得た。合成ゴムラテックス(1)の粒子径は130nm、ゲル分率は72%であった。また、濾過テストを行った所、結果は23秒であった。
【0042】
実施例2
シード用重合物(1)の代わりに合成ゴムラテックス(1)を用いる以外は実施例1と同様にして合成ゴムラテックス(2)を得た。合成ゴムラテックス(2)の粒子径は127nm、ゲル分率は74%であった。また、濾過テストを行った所、結果は24秒であった。
【0043】
実施例3
撹拌装置を備えた耐圧重合容器に、水1400g、反応性乳化剤ラテムルS−180 2.9g、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム0.15g、1,3−ブタジエン15.5g、スチレン80g、アクリル酸3部、グリシジルメタアクリレート1g、ジビニルベンゼン0.5部及びシード用重合物(2)6gを仕込み、撹拌を開始し、反応温度を65℃に昇温し、重合容器内温度が65℃に達したとき、過硫酸アンモニウム0.1gを添加して反応を開始させた。攪拌しながら65℃で7時間反応させた後、70℃に昇温し、さらに3時間反応させた。その後、得られた重合物の冷却を行なった。この重合物は、重合率98.9%であった。この重合物のpHを25%アンモニア水で9.0に調整した。水蒸気蒸留を行った後、pHを再度9.0、固形分を44.5%に調整し、合成ゴムラテックス(3)を得た。合成ゴムラテックス(3)の粒子径は130nm、ゲル分率は97%、濾過テストは29秒であった。
【0044】
実施例4
シード用重合物(2)の代わりに合成ゴムラテックス(3)を用いる以外は実施例3と同様にして合成ゴムラテックス(4)を得た。合成ゴムラテックス(4)の粒子径は129nm、ゲル分率は96%であった。また、濾過テストを行った所、結果は21秒であった。
【0045】
比較例1
シード用重合物(1)の代わりにシード用重合物(2)を用いる以外は実施例1と同様にして比較対照用合成ゴムラテックス(1′)を得た。合成ゴムラテックス(1′)の粒子径は135nm、ゲル分率は75%であった。また、濾過テストを行った所、結果は95秒であった。
【0046】
比較例2
シード用重合物(2)の代わりにシード用重合物(1)を用いる以外は実施例3と同様にして比較対照用合成ゴムラテックス(2′)を得た。合成ゴムラテックス(2′)の粒子径は130nm、ゲル分率は93%であった。また、濾過テストを行った所、結果は130秒であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
共役ジエン(a1)、カルボキシル基含有エチレン性不飽和単量体(b1)および前記エチレン性不飽和単量体(b1)以外のエチレン性不飽和単量体(c1)を乳化重合させてシード用重合物を製造する工程と前記シード用重合物の存在下で共役ジエン(a2)、カルボキシル基含有エチレン性不飽和単量体(b2)および前記エチレン性不飽和単量体(b2)以外のエチレン性不飽和単量体(c2)を乳化重合する工程とを含有する合成ゴムラテックスの製造方法であり、前記(a1)と(a2)、(b1)と(b2)および(c1)と(c2)がそれぞれ同一の化合物であることを特徴とする合成ゴムラテックスの製造方法。
【請求項2】
前記(a1)、(b1)および(c1)の重量合計(x)に対する(a1)の重量比〔(a1)/(x)〕と、前記(a2)、(b2)および(c2)の重量合計(y)に対する(a2)の重量比〔(a2)/(y)〕}との比{〔(a1)/(x)〕/〔(a2)/(y)〕}、(x)に対する(b1)の重量比〔(b1)/(x)〕と、(y)に対する(b2)の重量比〔(b2)/(y)〕との比{〔(b1)/(x)〕/〔(b2)/(y)〕}および(x)に対する(c1)の重量比〔(c1)/(x)〕と、(y)に対する(c2)の重量比〔(c2)/(y)〕}との比{〔(c1)/(x)〕/〔(c2)/(y)〕}が同一であっても異なっていてもよく、かつ、0.9〜1.1である請求項1記載の合成ゴムラテックスの製造方法。
【請求項3】
前記シード用重合物の使用量が固形分換算で共役ジエン(a2)、エチレン性不飽和単量体(b2)およびエチレン性不飽和単量体(c2)との合計100重量部に対し0.1〜20重量部である請求項1または2記載の合成ゴムラテックスの製造方法。

【公開番号】特開2006−28396(P2006−28396A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−211443(P2004−211443)
【出願日】平成16年7月20日(2004.7.20)
【出願人】(000002886)大日本インキ化学工業株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】