説明

合成セグメントおよびシールドトンネル

【課題】シールドトンネルを構築するために用いられる合成セグメントにおいて、製造時における二酸化炭素の排出量を低減させることができ、充分な耐久性を有するセグメントを提供する。
【解決手段】鉄を含有する板状物から形成される円弧状に湾曲した中空の型枠10と、ケイ素を含有するフィラーとアルカリ活性剤とを原料とするジオポリマー組成物11とを含んで構成される。合成セグメントの形成は、型枠10内にジオポリマー組成物11を流し入れ、蒸気養生等により、ジオポリマー組成物11に含まれるケイ素と型枠10に含まれる鉄とを化学結合させ、型枠10をジオポリマー組成物11に固着させてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シールド工法における覆工に用いられるセグメントおよびシールドトンネルに関し、より詳細には、ジオポリマー組成物を用いた合成セグメントおよびその合成セグメントを連結して構築されるシールドトンネルに関する。
【背景技術】
【0002】
地下鉄、道路、下水道、地下水路、地下河川等のトンネル工事では、軟弱地盤でも掘削しつつセグメントと呼ばれる部材を用いて覆工を行い、トンネルを構築することができることから、シールド工法が多く採用されている。このシールド工法により掘削された円形の断面をもつトンネルは、シールドトンネルと呼ばれ、円筒状の先端にカッターヘッドという回転する面板を備えるシールドマシンにより構築される。
【0003】
このシールドトンネルは、シールドマシンで地中を掘削すると同時に、シールドマシンの後部でセグメントにより覆工を行い、構築される。セグメントは、シールド工法において覆工として組み立てる円弧状のブロックで、一般的に、鋼製または鉄筋コンクリート(RC)製の部材とされている。このセグメントを組み立てて、シールドマシンで掘削したトンネル内壁をアーチ状に覆うことにより覆工が行われる。
【0004】
このセグメントには、上記の鋼製、RC製のセグメントのほか、鋼板とRCを適切な接合部材で一体化することにより、優れた曲げ剛性と軸圧縮剛性を実現することができる合成セグメントも使用されるようになってきている。
【0005】
この鋼板とRCを接合部材で一体化した合成セグメントとしては、図1および図2に例示するものが知られている。図1に示す合成セグメント1は、型枠を構成する鋼板2の内側表面から上部へ向けて突出する鉄筋である複数のジベル筋3が一定間隔で設けられ、これら複数のジベル筋3により型枠内に流し込まれるコンクリート4との接着面積を増加させ、鋼板2とコンクリート4との付着力を確保している。図1に示す合成セグメントは、4枚の湾曲した鋼板2と図示しない2枚の鋼板とで構成された型枠内にコンクリート4が流し込まれ、養生を行うことにより製造されるが、ここでは、斜線で示されるコンクリート4の表面が露出した図が示されている。
【0006】
図2に示す合成セグメント5は、型枠を構成する鋼板6の内側表面から突出する板状の金物である複数のシアキー金物7が一定間隔で設けられ、これら複数のシアキー金物7により型枠内に流し込まれるコンクリート8との接着面積を増加させ、鋼板2とコンクリート8との付着力を確保している。この図2も同様、図2に示す4枚の湾曲した鋼板6と図示しない2枚の鋼板とで構成された型枠内にコンクリート8が流し込まれ、養生を行い、合成セグメントが製造されるが、斜線で示されるコンクリート8の表面が露出した図が示されている。
【0007】
しかしながら、これらの合成セグメントは、接着面積を充分に確保するために、多数のジベル筋3やシアキー金物7を設ける必要があり、安価で提供することはできないという問題があった。
【0008】
ところで、地球温暖化の問題から、二酸化炭素といった温暖化ガスの排出量を減少させるべく省エネルギー化が進められ、材料も、出来るだけ二酸化炭素の排出量が少ないものが選択されるようになってきている。現在、大量に生産されているセメントは、ポルトランドセメントであり、その主原料は石灰石であることから、焼成時に、酸化カルシウムに分解される際、二酸化炭素を排出する。このため、ポルトランドセメントを使用しないコンクリートを製造する技術として、ジオポリマー法が注目されている。
【0009】
ジオポリマー法は、ケイ酸の縮重合体をバインダとして利用し、粉末同士を接合して人工の岩石を製造する技術である。例えば、特許文献1には、フィラーと、アルカリ活性剤と、骨材とを原料とし、これらを混合し、その混合物を反応させてジオポリマー組成物を製造することが記載されている。また、この特許文献1には、無水メタ珪酸ナトリウムを添加して練り混ぜることで、アルカリの量を増加させ、水を減らすことができ、これにより、高強度のジオポリマー組成物であるジオポリマーモルタル・コンクリートを得ることができ、長期強度においても、80℃で8時間養生した場合と同程度の強度を得ることができることが記載されている。
【0010】
特許文献2には、活性フィラーとして850℃〜950℃で熱処理した焼成カオリンを配合したフィラーと、ジオポリマーと水とを混合し、成形し、高温で養生することにより硬化するジオポリマー高強度硬化体が記載され、さらに、機能性フィラーを配合することで、脱臭機能、調湿機能、VOC吸着機能、光触媒機能、断熱機能を付与することができることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2008−239446号公報
【特許文献2】特開2008−254939号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上述したジオポリマー組成物は、高い圧縮強度を示すことから、上記のセグメントを、鋼製やRC製のものに代えて、上述したジオポリマー組成物で作製することができる。これにより、その製造時における二酸化炭素の排出量を低減させることができる。
【0013】
しかしながら、ジオポリマー組成物は、温度が一定条件(60℃)以上で型枠に接着され、型枠から脱型することができない。すなわち、ジオポリマー組成物は、型枠への付着力が卓越している材料である。また、ジオポリマー組成物は、引張強度に関しては従来のセメント硬化体と同程度の値であることから、シールドトンネルにおけるセグメントとして使用する場合、耐久性が不足する場合がある。
【0014】
そこで、製造時における二酸化炭素の排出量を低減させることができ、かつ充分な耐久性を有するセグメントの提供が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の発明者は、鋭意検討の結果、鉄を含む材料と、ケイ素を含有するフィラーとアルカリ活性剤とを原料とするジオポリマー組成物とを接触させた状態で保持すると、ジオポリマー組成物に含まれるケイ素と材料に含まれる鉄とが化学結合し、その材料がジオポリマー組成物に固着することで、ジオポリマー構造体全体の耐久性を向上させることができるが、型枠に鉄を含有する材料を用い、脱型することなく、型枠をそのままセグメントの一部として採用したとしても、シールドトンネルにおけるセグメントとして充分な耐久性を有することを見出した。本発明は、このことを見出すことによりなされたものであり、上記課題は、本発明の合成セグメントを提供することにより解決することができる。
【0016】
具体的には、この合成セグメントは、鉄を含有する板状物から形成される円弧状に湾曲した中空の型枠と、ケイ素を含有するフィラーとアルカリ活性剤とを原料とするジオポリマー組成物とを含み、型枠内にジオポリマー組成物を流し入れ、蒸気養生によりジオポリマー組成物に含まれるケイ素と型枠に含まれる鉄とを化学結合させ、型枠をジオポリマー組成物に固着させてなるものである。
【0017】
型枠は、複数の湾曲した鋼板を連結することにより構成され、少なくとも1つの湾曲した鋼板に接合される断面L字形の鋼材を備えることができる。また、鋼板は、縞鋼板等のその表面に凹凸を有するものが好ましい。このように、型枠とジオポリマー組成物とが接触する部分の面積を増加させることで、型枠へのジオポリマー組成物の付着力を増加させ、より高い耐久性を付与することができる。
【0018】
また、型枠は、鋼板に限られるものではなく、鉄アルミニウム合金等の鉄を含有する合金から製造された板により構成することも可能である。
【0019】
本発明では、上記の合成セグメントのほか、この合成セグメントを連結して構築されたシールドトンネルも提供することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の合成セグメントを提供することにより、製造時における二酸化炭素の排出量を低減させることができ、充分な耐久性をもつシールドトンネルを提供することができる。また、断面L字形の鋼材を接合した型枠や、縞鋼板等の凹凸を有する鋼板から構成した型枠を用いることで、ジオポリマー組成物との接触面積が増加し、より高い耐久性を付与することができ、新たなジベル等の接合用鋼材を設置する必要がないことから、上述した従来の合成セグメントに比較して安価で提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】従来のジベル筋により鋼板から構成された型枠とRCとの接合を行った合成セグメントを例示した図。
【図2】従来のシアキー金物により鋼板から構成された型枠とRCとの接合を行った合成セグメントを例示した図。
【図3】本発明の合成セグメントの1つの実施形態を示した図。
【図4】本発明の合成セグメントの別の実施形態を示した図。
【図5】本発明の合成セグメントのさらに別の実施形態を示した図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図3は、本発明の合成セグメントの1つの実施形態を示した図である。合成セグメントは、鉄を含有する板状物から形成される円弧状に湾曲した中空の型枠10と、ケイ素を含有するフィラーとアルカリ活性剤とを原料とするジオポリマー組成物11とから構成される。合成セグメントは、型枠10内にジオポリマー組成物11を流し入れ、ジオポリマー組成物11に含まれるケイ素と型枠10に含まれる鉄とを化学結合させ、型枠10をジオポリマー組成物11に固着させることにより製造される。
【0023】
型枠10は、鉄を含有する材料として鋼板や、鉄を含有する合金から製造された板により形成される。型枠10は、掘削したトンネル坑内の内壁に沿うように、複数の湾曲した鋼板から構成され、それらを連結することにより内部が中空のものとして形成される。例えば、円弧状に湾曲した底板と、底板の外周に沿うように湾曲する外周板と、底板の内周に沿うように湾曲する内周板と、セグメント同士を連結するための雄金具が設けられた第1連結板および雌金具が設けられた第2連結板とをボルトおよびナット等の固定部材により互いに連結して、上部が開放された箱状物を形成し、その箱状物の開放された上部を、底板と同じ形状の上板で覆い、内部が中空の型枠10を形成することができる。
【0024】
この図3では、第1連結板および第2連結板が図示されておらず、斜線で示されるジオポリマー組成物11の表面が露出しているのが示されている。なお、ジオポリマー組成物11は、その箱状物の中に流し込まれ、底板と同じ形状の上板で覆われ、同じくボルトおよびナット等の固定部材により固定されて一体化される。上板は、必ずしも必要ではないが、ジオポリマー組成物11の厚さを一定にし、強度を高める上で、上板を設けることが好ましい。
【0025】
型枠10を構成する鋼板は、炭素鋼、ステンレス鋼等の平板を用いることができる。この平板を適切な形状に切断する等して、上記の底板および上板を作製することができる。また、外周板および内周板は、その底板または上板の外周の長さおよび内周の長さの長方形に切断し、それらを円弧状に湾曲させることにより作製することができる。これらの降板の厚さは、例えば、約1cm〜約3cmの適切な厚さのものを用いることができる。
【0026】
第1連結板には、例えば、ボルトのような、その表面から垂直に延びる軸部、その軸部の先端に設けられる軸部の断面積に比較して拡張した断面積を有する先端部を備える雄金具が設けられる。第2連結板には、例えば、雄金具の先端部が挿入可能な開口部、その開口部に連続し、雄金具の軸部が挿通可能な挿通部、開口部および挿通部に連続していて、拡張した先端部を収納する収納部を備える雌金具が設けられる。第1連結板および第2連結板は、型枠10の両端部を閉鎖するように、底板、外周板、内周板と連結され、これらの板とともに箱状物を構成する。
【0027】
雄金具および雌金具を上記に例示したが、本発明においては上記例示した構成に限定されるものではなく、これまでに知られたいかなる構成であってもよい。
【0028】
型枠10は、鉄を含有する合金であってもよく、この合金としては、例えば、フェロアルミニウム(FeAl)、フェロボロン(FeB)、フェロセリウム(FeCe)、フェロクロム(FeCr)、フェロマグネシウム(FeMg)、フェロマンガン(FeMn)、フェロモリブデン(FeMo)、フェロニオブ(FeNb)、フェロニッケル(FeNi)、フェロシリコン(FeSi)、フェロシリコマンガン(FeSiMn)、フェロチタン(FeTi)、フェロバナジウム(FeV)、フェロタングステン(FeW)等が挙げられる。例えば、FeAlとして、鉄およびアルミニウムのそれぞれの含有率が1:1(質量比)の市販品を用いることができる。
【0029】
ジオポリマー組成物11は、ケイ素を含有するフィラー、アルカリ活性剤、骨材および混和材等を原料とし、従来のジオポリマー法と同様の方法を用いて形成することができ、具体的には、フィラー、アルカリ活性剤、骨材、混和材等の原料を混合し、所定温度(60℃以上)で所定時間処理、例えば蒸気養生することにより、アルカリ活性剤によりフィラーを活性化し、フィラー中に含まれるケイ素成分および金属成分を重合硬化させることによって得ることができる。ここで、蒸気養生は、水蒸気中で行う促進養生である。蒸気養生に用いる蒸気は、飽和蒸気であってもよいし、過熱蒸気、すなわち大気圧下において100℃を超える温度の蒸気であってもよい。
【0030】
フィラーとしては、フライアッシュ、高炉スラグ、下水焼却汚泥等を用いることができる。フライアッシュは、火力発電所において石炭の燃焼時に発生し、電気集塵機により回収されるもので、SiO、Alを主成分とするものである。高炉スラグは、鉄鉱石を石炭で還元、溶融して、銑鉄を製造する溶鉱炉から、銑鉄とともに溶融状態で取り出され、比重差により分離されたもので、CaO、SiO、Alを主成分とし、セメントに類似した化学成分を有するものである。下水汚泥は、その成分が粘土類に類似することから、石灰やケイ石等と焼却融合させた下水焼却汚泥は、セメント原料として利用することができるものである。
【0031】
アルカリ活性剤としては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウムの水溶液を用いることができる。水酸化ナトリウムやケイ酸ナトリウムといったナトリウム系の水溶液を用いると、凝結時間が早くなり、その取り扱いが難しくなることから、水酸化カリウムやケイ酸カリウムといったカリウム系の水溶液を用いることが望ましい。
【0032】
骨材としては、一般にセメントの製造に用いられる砂利や砂等の骨材を用いることができる。混和材としては、SiO、Al、CaOを含み、アルカリ性の下で水和反応する超微粉末、保水性を向上させる水溶性ポリマー、スチレンブタジエンゴム、ラテックス、エチレン酢酸ビニル等の混和用ポリマー、硬化収縮によるひび割れ防止のための膨張材を挙げることができる。
【0033】
ジオポリマー組成物を形成するための各材料の配合は、フィラーとしてフライアッシュを用い、アルカリ活性剤としてケイ酸ナトリウム水溶液を用い、骨材として標準砂を用いる場合、フライアッシュ:ケイ酸ナトリウム:標準砂が、質量比で、1:0.6〜0.8:4〜4.5とすることができる。フィラーとして、フライアッシュと高炉スラグの2つを用いる場合は、フライアッシュ:高炉スラグ:ケイ酸ナトリウム:標準砂を、質量比で、1:0.5〜0.7:0.9〜1.1:5.8〜6.2とすることができる。標準砂は、セメントや練り混ぜ水のJIS(日本工業規格)により規定された試験に使用する砂である。
【0034】
ジオポリマー組成物は、添加剤を添加することができ、この添加剤として、フィラーから溶出する金属イオン以外の金属イオン、例えばAl3+やSi4+等を含む溶液や金属塩、錯体等の固体、金属イオン含有量の異なるフィラーを任意の配合比で添加することができる。この添加剤は、ジオポリマー組成物の硬化開始前から硬化中の間の任意のタイミングで添加することができ、これにより、ジオポリマー組成物の強度を制御することができる。また、溶解度の異なる金属塩、錯体や金属イオン含有量の異なるフィラーを用い、金属イオンの溶出量を制御し、ジオポリマー組成物の硬化時間を制御することができる。
【0035】
鉄を含有する板状物から形成される円弧状に湾曲した中空の型枠10内に、ジオポリマー組成物11が流し込まれ、蒸気養生が行われると、型枠10に接触しているジオポリマー組成物11に含まれるケイ素成分が、型枠10に含まれる鉄成分と化学的に結合し、型枠10とジオポリマー組成物11とが強固に固着される。ジオポリマー組成物11は、型枠10の底板、外周板、内周板、第1連結板、第2連結板の片側の面全体と接触することから、型枠10内に複数のジベル筋やシアキー金物を設けなくても、それらの片側の面全体に強固に固着される。
【0036】
ここで、鋼製の型枠10にジオポリマー組成物11を付着させて形成された合成セグメントの引張強度は、従来の複数のジベル筋やシアキー金物を設けた合成セグメントの引張強度と同程度であった。このことから、シールドトンネルのセグメントとして用いても充分な耐久性を有するものであることを見出すことができた。
【0037】
この合成セグメントを、トンネルの周方向へ連結して形成されるセグメントリングの曲げモーメントが卓越していて、型枠10を構成する鋼板の厚さを大きくしなければならない場合、蒸気養生では温度が一定条件(60℃以上)になりにくく、付着力が不足する可能性がある。このような場合、付着力は、それらが接触する面積を大きくすることにより確保することができる。
【0038】
複数のジベル筋やシアキー金物を設けて接触面積を増加させる方法も考えられるが、それらを接合する時間や手間がかかることから、高価になってしまう。このため、例えば、図4および図5に示すような構成を採用することができる。図4には、型枠10を構成する底板20に、底板20の外周に沿って湾曲した、断面がL字形の鋼材(アングル)21が接合されているのが示されている。底板20には、そのL字形のアングル21の1つの面が溶接され、これにより、その面に対して垂直に延びる部分が形成される。この垂直に延びる部分の両面が、ジオポリマー組成物11と接触し、接着面積を増加させる。ここでは1本のアングル21のみが示されているが、2本以上であってもよい。
【0039】
型枠10を構成する底板、外周板、内周板、上板、第1連結板、第2連結板の少なくとも1つ、あるいはその全部を縞鋼板等の凹凸を有する板により形成することができるが、図5には、その板の一部が例示されている。図5(a)は、断面図を示し、図5(b)は、縞鋼板30の一部の平面図を示している。縞鋼板30は、圧延により表面に連続した滑り止め用の突起31を設けた鋼板であり、チェッカープレートとも呼ばれる。滑り止め用の突起31は、規則的に浮き出たせた模様を構成するように形成される。この鋼板は、腐食等を防止するために、一般にめっきが付されるが、ジオポリマー組成物11と鋼板とを直接接触させるために、めっきが付されていない鋼板が望ましい。この縞鋼板30は、突起31のみを有するが、突起と溝の両方を備える鋼板が好ましい。
【0040】
なお、大量生産によりある程度の数量をまとまって使用する場合に、コストを削減することができることから、この縞鋼板30を使用して型枠10を構成することができる。この縞鋼板30等の凹凸を有する鋼板を用い、上記の断面L字形のアングル21を用いて、ジオポリマー組成物11との接触面積を増加させ、より接触力を増加させて、さらに高い耐久性を付与することができる。
【0041】
ジオポリマー組成物11は、フィラー、アルカリ活性剤、骨材、必要に応じて混和材を混合し、蒸気養生するだけで、型枠10との付着力を確保することができるので、セメントのように、石灰石、粘土、ケイ酸原料、酸化鉄原料といったセメント原料を、ロータリキルンといった焼成窯で1500℃といった高温で焼成し、その後急冷してクリンカーと呼ばれる焼塊を製造する必要がなく、このため、焼成に伴う燃料の燃焼や石灰石の分解による二酸化炭素の発生がない。したがって、製造時における二酸化炭素の排出を低減させることができる。
【0042】
本発明では、円筒状の先端にカッターヘッドという回転する面板を備えるシールドマシンを用い、地山や地下を掘削した後、上記の合成セグメントを、掘削したトンネルの周方向に連結してセグメントリングを構築し、そのセグメントリングをトンネル軸方向へ連設していくことで、トンネルの内壁を覆う覆工を行い、シールドトンネルを構築することができる。
【0043】
合成セグメントは、第1連結板から突出している雄金具の先端部を、隣接する合成セグメントの雌金具の収納部へ挿入し、嵌合することによりトンネルの周方向に連結していき、セグメントリングを構築し、そのセグメントリングをトンネル軸方向へ連設し、延ばしていくことで、シールドトンネルを構築する。このため、合成セグメントのトンネル軸方向に向いた面にも、互いを連結するための上記のような雄金具および雌金具を備える構成とすることができる。これも同様、互いを連結することができれば、これまでに知られたいかなる部材でも用いることができる。
【0044】
これまで本発明の合成セグメントおよびシールドトンネルについて図面に示した実施形態を参照しながら詳細に説明してきたが、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、他の実施形態や、追加、変更、削除など、当業者が想到することができる範囲内で変更することができ、いずれの態様においても本発明の作用・効果を奏する限り、本発明の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0045】
1、5…合成セグメント、2、6…鋼板、3…ジベル筋、4、8・・・コンクリート、7・・・シアキー金物、10・・・型枠、11・・・ジオポリマー組成物、20・・・底板、21・・・アングル、30・・・縞鋼板、31・・・突起

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シールドトンネルを構築するために用いられる合成セグメントであって、
鉄を含有する板状物から形成される円弧状に湾曲した中空の型枠と、
ケイ素を含有するフィラーとアルカリ活性剤とを原料とするジオポリマー組成物とを含み、
前記型枠内に前記ジオポリマー組成物を流し入れ、蒸気養生により前記ジオポリマー組成物に含まれる前記ケイ素と前記型枠に含まれる前記鉄とを化学結合させ、前記型枠を前記ジオポリマー組成物に固着させてなる、合成セグメント。
【請求項2】
前記型枠は、複数の湾曲した鋼板を連結することにより構成され、少なくとも1つの湾曲した前記鋼板に接合される断面L字形の鋼材を備える、請求項1に記載の合成セグメント。
【請求項3】
前記型枠は、複数の湾曲した鉄を含有する合金から製造された板により構成される、請求項1に記載の合成セグメント。
【請求項4】
前記鋼板は、該鋼板の表面に凹凸を有する、請求項2または3に記載の合成セグメント。
【請求項5】
合成セグメントをトンネルの周方向およびトンネル軸方向へ連結して構築されるシールドトンネルであって、前記合成セグメントが、
鉄を含有する板状物から形成される円弧状に湾曲した中空の型枠と、
ケイ素を含有するフィラーとアルカリ活性剤とを原料とするジオポリマー組成物とを含み、
前記型枠内に前記ジオポリマー組成物を流し入れ、蒸気養生により前記ジオポリマー組成物に含まれる前記ケイ素と前記型枠に含まれる前記鉄とを化学結合させ、前記型枠を前記ジオポリマー組成物に固着させてなる、シールドトンネル。
【請求項6】
前記型枠は、複数の湾曲した鋼板を連結することにより構成され、少なくとも1つの湾曲した前記鋼板に接合される断面L字形の鋼材を備える、請求項5に記載のシールドトンネル。
【請求項7】
前記型枠は、複数の湾曲した鉄を含有する合金から製造された板により構成される、請求項5に記載のシールドトンネル。
【請求項8】
前記鋼板は、該鋼板の表面に凹凸を有する、請求項6または7に記載のシールドトンネル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−211453(P2012−211453A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−77118(P2011−77118)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000195971)西松建設株式会社 (329)
【Fターム(参考)】