説明

合成セグメント

【課題】鋼材の使用量が小さく低コストであると共に、薄肉、高強度であって幅広化が可能な合成セグメントを提供する。
【解決手段】合成セグメント1は、その鋼殻2が、略円弧状に湾曲して外周面の対向する二辺に設けられた一対の第一鋼材10,10と、略円弧状に湾曲して内周面の対向する二辺に設けられた一対の第二鋼材13,13と、略円弧状に湾曲して一対の前記第一鋼材10,10の間に設けられた第一中間鋼材17と、略円弧状に湾曲して一対の前記第二鋼材13,13の間に設けられた第二中間鋼材18とを備え、第一中間鋼材17と第二中間鋼材18は対向してラチス(接続部材)19で連結された構成とされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼殻の内部にコンクリートを充填して略円弧板状に形成された合成セグメントに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、地山に掘削穴を掘削しつつ、その内面に円弧板状のセグメントを周方向および軸方向に複数連結して筒状壁体を構築することによりトンネルを形成するシールド工法において、鋼製の円弧板状枠体(鋼殻)内にコンクリートを充填して製造された合成セグメントが用いられることが、例えば、特許文献1、特許文献2によって知られている。
上記特許文献1に記載の合成セグメントは、湾曲形成された主桁板や平面状の継手板が断面視コの字形状の鋼板で形成され、これらをスキンプレートに結合して、スキンプレートの対向側に開口部を有する箱形構造の鋼殻を備えている。
また、特許文献2に記載の合成セグメントは、断面コの字形状の主桁板と継手板とスキンプレートとを結合してスキンプレートの対向側に開口部を有する円弧板状の箱形に形成されると共に、2つの主桁板間に複数の略H字状のずれ止めを配置した構成の鋼殻を備えている。
【0003】
ところで、今後、需要の増大が予測される道路用トンネルを構築する場合、工事全体としてコストの低減が要求されており、そのために掘削機の掘削外径の縮小や掘削土量の低減、工期の短縮等が必要とされている。このような要求を実現するためには、道路トンネルの桁高さを従来より低くすることが必要であり、トンネルの壁面を構成するセグメントも薄肉で高強度のものが要求されている。
【特許文献1】特開平11−159293号公報
【特許文献2】特開2003−27894号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の合成セグメントは、鋼製セグメントより低コストで薄肉高強度のものを製造することができるが、主桁面と継手面の全面を鋼板で覆う構成であるため、セグメントにおける鋼材の使用量が多く、重量が大きくなって取り扱いにくいと共に、製造コストが増大する欠点がある。また、特許文献2に記載の合成セグメントは、開口部以外の周囲全てを鋼材で覆うと共に主桁板間に複数のずれ止めが配置されているので、強度は満足できても、一層、鋼材の使用量が多くなり、取扱性が悪く、コスト低減の要請に応えることが困難である。
そこで、本願の発明者は、先行する特願2004−207350号出願や特願2005−69020号出願によって、鋼殻を構成する外周面と内周面の対向する二辺に、それぞれ略円弧状に湾曲する略L字形状断面または四角形状断面の各一対の第一鋼材と第二鋼材を対向配置すると共に、一対の第一鋼材の両端部どうし、一対の第二鋼材の両端部どうしをそれぞれ継手部材で連結した構成として、鋼殻の鋼材の使用量を少なくし、低コストであると共に薄肉構造であっても高強度である合成セグメントを提案した。
しかし、先行する特願出願の合成セグメントでは、合成セグメントに作用する外力を外周面と内周面の外端部の二辺に配置された第一鋼材と第二鋼材によって分担して負担するものであるため、合成セグメントが幅広になった場合には、各鋼材が外力の過大な負担を余議されることとなり、高い強度が得られないおそれがある。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、鋼材の使用量が小さく低コストであると共に、薄肉、高強度であって幅広化が可能な合成セグメントを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による合成セグメントは、鋼殻の内部にコンクリートを充填して略円弧板状に形成され、周方向及び軸方向に複数連結されることにより筒状壁体を構成する合成セグメントであって、前記鋼殻は、略円弧状に湾曲して外周面の対向する二辺に設けられた一対の第一鋼材と、略円弧状に湾曲して内周面の対向する二辺に設けられた一対の第二鋼材と、略円弧状に湾曲して一対の前記第一鋼材の間に設けられた第一中間鋼材と、略円弧状に湾曲して一対の前記第二鋼材の間に設けられた第二中間鋼材とを備えていることを特徴とする。
本発明によれば、合成セグメントの鋼殻として、外周面と内周面の各二辺にそれぞれ第一鋼材と第二鋼材が設けられ、一対の前記第一鋼材の間及び一対の前記第二鋼材の間にそれぞれ第一中間鋼材と第二中間鋼材が設けられているので、合成セグメントが幅広になった場合でも、前記第一、第二鋼材及び第一、第二中間鋼材によって合成セグメントに作用する外力が効果的に分担され、第一、第二鋼材の負担が軽減される。これにより、合成セグメントの薄肉、高強度、幅広化構造が確実に実現されると共に、鋼殻として使用する鋼材が、主桁面と継手面の全面を覆うような従来の合成セグメントと比較して少ないために低コストである。また、合成セグメントが軽量化されて取扱性が向上される。
【0007】
前記合成セグメントにおいて、前記鋼殻には、一対の前記第一鋼材の両端部どうしをそれぞれ連結する共に一対の前記第二鋼材の両端部どうしをそれぞれ連結する継手部材が設けられ、前記第一中間鋼材の両端部と前記第二中間鋼材の両端部がそれぞれ前記継手部材に連結されていることが好ましい。
これによって、一対の第一鋼材と第一中間鋼材の鋼材どうし、及び一対の第二鋼材と第二中間鋼材の鋼材どうしがそれぞれ前記継手部材によって連結されて一体性を良好に保つことができる。
前記第二中間鋼材は前記第二鋼材の内周面よりも厚み方向の内側に寄った位置に配置された構成とすることができる。
このようにすると、合成セグメントの内周面側に露出する鋼材が少なくなり、鋼材の防錆処理の面積を減らすことができる。
【0008】
また、前記合成セグメントにおいて、第一鋼材の内側に第一鋼材にそれぞれ連結または分離して円弧状に湾曲する第三鋼材が設けられ、第二鋼材の内側に第二鋼材にそれぞれ連結または分離して円弧状に湾曲する第四鋼材が設けられていてもよい。
このようにすると、第三、第四鋼材は、第一、第二鋼材や第一、第二中間鋼材と共に合成セグメントの構造材を構成し、合成セグメントが薄肉、幅広構造であっても、それを高強度にすることができる。
また、前記合成セグメントにおいて、前記第三鋼材と第四鋼材及び第一中間鋼材と第二中間鋼材が、それぞれ対向して配設されて接続部材によって連結された構成とすることができる。
これにより、広幅化された合成セグメントの強度を一層向上させることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明による合成セグメントによれば、鋼殻を、外周面と内周面の各二辺にそれぞれ第一鋼材と第二鋼材を設け、一対の前記第一鋼材の間及び一対の前記第二鋼材の間にそれぞれ第一中間鋼材と第二中間鋼材を設けた構成としたので、合成セグメントが幅広になった場合でも、前記第一、第二鋼材による外力の負担を軽減することができて、合成セグメントの薄肉、高強度、幅広化構造を確実に実現することができると共に、鋼殻として使用する鋼材を少なくして低コスト化を図ることができ、軽量化による取扱性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
次に、本発明の実施の形態に係る合成セグメントついて添付図面を参照して説明する。
図1〜図4は本発明の第一の実施の形態による合成セグメント1を示す。この合成セグメント1は、例えば、シールド工法によって大断面の道路用トンネルの内壁に構築されるトンネル覆工体を形成するものであり、薄肉の略長方形板状のものが略円筒周面形状(以下、「円弧板状」という)に湾曲され、図1、図2、図4に示すように、鋼殻2とその内部に充填されるコンクリート3とを有して構成されている。
そして、合成セグメント1の短辺側(トンネルの軸方向に沿う辺側)の側面である継手面4には、トンネルの周方向の連結のためのセグメント間継手5が設けられ、このセグメント間継手5は中継継手部5aとインサート継手部5bとを有している。また、長辺側(トンネルの周方向に沿う辺側)の側面である主桁面6には、トンネルの軸方向の連結のためのリング間継手7の雄部7aが複数個(図示の例では4個)設けられ、対向する主桁面6には雄部7aが嵌合する雌部7bが設けられている。対向する各主桁面6,6には互いに嵌合するほぞ8としてほぞ凸部8aとほぞ凹部8bとが設けられている(図2参照)。
【0011】
次に、合成セグメント1の鋼殻2について図2及び図3により説明する。前記鋼殻2は、図3に示すように、合成セグメント1がトンネル内に装着された状態で地山側に位置する外周面に、合成セグメント1の外周面の枠部を構成する四辺からなる外側枠体部9(第一枠体部)が形成されている。この外側枠体部9は長辺が略円弧板状に湾曲して形成されていて横断面(トンネルの軸方向に沿う断面)が略長方形をなす一対の第一鋼材10,10を備えている。一対の第一鋼材10,10の長辺方向(トンネルの周方向)における両側端部は継手面4に位置する板状の継手板(継手部材)11,11で連結されている。
【0012】
また、前記鋼殻2は、合成セグメント1がトンネル内に装着された状態で内側に位置する内周面には、外側枠体部9に対向して内周面の枠部を構成する四辺からなる内側枠体部12(第二枠体部)が形成されている。この内側枠体部12は長辺が略円弧板状に湾曲して形成されていて横断面が略長方形をなす一対の第二鋼材13,13とされている。一対の第二鋼材13,13の長辺方向における両側端部は継手面4に位置する板状の継手板(継手部材)14,14で連結されている。前記継手板11,14は例えば第一、第二鋼材10,13の厚みと同一幅に設定されている。前記外側枠体部9と内側枠体部12はいずれも鋼材で構成されていて、好ましくは同一寸法とされている。
【0013】
前記各第一鋼材10,10の内側(トンネルの軸方向において対向する側)には、各第一鋼材10に一体に連結された板状の第三鋼材15,15がそれぞれ設けられている。各第三鋼材15,15は好ましくは第一鋼材10と同様な断面形状で同様に湾曲して形成されている。また、各第二鋼材13,13の内側には、各第二鋼材13に一体に連結された板状の第四鋼材16,16が連結されている。各第四鋼材16,16も第二鋼材13,13と同様な横断面形状で同様に湾曲して形成されている。
また、前記鋼殻2の外側枠体部9には、一対の前記第一鋼材10,10の間(一対の第三鋼材15,15の間)に、前記第三鋼材15と同様な横断面形状で同様に湾曲して形成された第一中間鋼材17が、その外周面を第一鋼材10の外周面に一致させて(面一にして)、第一鋼材10に平行に設けられている。
【0014】
前記鋼殻2の内側枠体部12には、一対の前記第二鋼材13,13の間(一対の第四鋼材16,16の間)に、前記第四鋼材16と同様な横断面形状で同様に湾曲して形成された第二中間鋼材18が、その内周面を前記第二鋼材13の内周面に一致させて(面一にして)、第二鋼材13に平行に設けられている。前記第一中間鋼材と第二中間鋼材は、トンネルの軸方向において前記第一鋼材10,10どうしの中間と第二鋼材13,13どうしの中間にそれぞれ対向して配置されるのが好ましい。
そして、前記第一中間鋼材17の長辺方向(トンネルの周方向)の両端部は、それぞれ前記継手板11,11に連結されると共に、前記第二中間鋼材18の長辺方向の両端部は、それぞれ前記継手板14,14に連結されている。
【0015】
そして、鋼殻2の厚み方向(トンネルの半径方向)に対向する第三鋼材15と第四鋼材16及び前記第一中間鋼材17と第二中間鋼材18とは、例えば略V字状をなすラチス(接続部材)19によって互いに連結されている。前記ラチス19は第三鋼材15と第四鋼材16及び第一中間鋼材17と第二中間鋼材18の長手方向(鋼殻2の周方向)に連続して複数配列されている。
また、前記鋼殻2の外側枠体部9及び内側枠体部12は、図2及び図3に示すように、第一鋼材10と第二鋼材13の各主桁面6に露出する外端面10a、13aに、その長手方向に沿ってシール溝20、20が形成されている。同様に、前記継手板11、14にも前記外端面10a、13aのシール溝20、20に連続するシール溝21、21が形成されることにより、各シール溝20,21が鋼殻2の四辺の全周に亘って形成され、これらのシール溝20、21に、シール材(図示せず)が嵌合されるようになっている。
【0016】
そして、前記鋼殻2の外側枠体部9においては、図4に示すように、スキンプレート22が前記第一鋼材10,10と前記第一中間鋼材17の外周にそれぞれ溶接により水密に固着されている。また、前記鋼殻2の内側枠体部12においては、前記第二鋼材13、第四鋼材16及び第二中間鋼材18の各内周面には、塗装、その他による防錆処理が施されている。
なお、前記リング間継手7は、例えば、図2に示すように、プッシュグリップで構成され、雄部7aはピンボルト23、袋ナット部24、アンカー筋25等を備え、雌部7bはピンボルト23を嵌合係止させる楔部26、アンカー筋27等を備えている。
また、第一鋼材10と第二鋼材13及び第一中間鋼材17と第二中間鋼材18は例えば圧延によって製造される。即ち、板状の鋼材を加熱圧延ロール間で挟んで繰り出すことにより、鋼材を第一、第二鋼材10,13及び第一、第二中間鋼材17,18を所定厚み及び幅寸法に引き延ばす。これと同時に、第一鋼材10及び第二鋼材13の場合には、鋼材の第一、第二鋼材10,13の前記外端面10a、13aに相当するシール溝形成用の車輪状の圧延部材を押し当てることにより、鋼材の長さ方向に凹溝が形成されて前記シール溝20とされ、この鋼材を所定の曲率で湾曲させることにより、第一鋼材10及び第二鋼材13が形成される。
【0017】
前記のように、実施の形態による合成セグメント1は、合成セグメントの鋼殻2として、外周面と内周面の各二辺にそれぞれ第一鋼材10,10と第二鋼材13,13が設けられ、一対の前記第一鋼材10,10の中間及び一対の前記第二鋼材13,13の中間にそれぞれ第一中間鋼材17と第二中間鋼材18が設けられているので、合成セグメントが幅広になった場合でも、前記第一、第二鋼材10,13及び第一、第二中間鋼材17,18によって合成セグメントに作用する外力が効果的に分担され、第一、第二鋼材10,13の負担が軽減され、これにより、合成セグメント1の薄肉、高強度、幅広化構造が確実に実現される。また、鋼殻2を構成する第一鋼材10、第二鋼材13及び第一中間鋼材17、第二中間鋼材18はいずれも略板状の鋼材であって、従来の合成セグメントのように、主桁面と継手面の全面を鋼殻で覆うものと比較して、鋼材の使用量が少なくてすみ、低コストである。また、合成セグメント1が軽量化されてその取扱性が向上される。
しかも、合成セグメント1の主桁面6において、長手方向(長辺方向)に沿う角部に、第一、第二鋼材10,13を配設して、シール溝20を形成した外端面10a、13aを位置させたから、合成セグメント1の内外周面の角部からシール溝20までの距離が短く、前記外端面10a,13a間の間隔が広くなり、主桁面6に設けるほぞ8やリング間継手7を相対的に大きく形成することができ、合成セグメント1を厚みの小さい薄肉板状に形成してもセグメント1,1どうしの連結強度が高い。
【0018】
また、前記合成セグメント1において、割れや欠けが生じやすい外周面及び内周面の四辺の角部を断面略長方形状の第一鋼材10及び第二鋼材13によって構成しているので、合成セグメント1の全体を鋼材で覆わなくても所望の強度を得ることができる。また、第一鋼材10及び第二鋼材13の内側に同様な湾曲形状を有する第三鋼材15及び第四鋼材16を一体形成したので、トンネルを形成した場合、地山側等からの円弧方向の外力及び合成セグメント1の外周面から内周面に向かう方向への外力に対し、更に高い強度を発揮することができる。
更に、第三鋼材15と第四鋼材16、及び第一中間鋼材17と第二中間鋼材18をそれぞれラチス19で接続すると共に、第一鋼材10と第三鋼材15、及び第二鋼材13と第四鋼材16をそれぞれ一体化する構成としているので、合成セグメント1の製造時に型枠内での構造部材の位置ずれを生じることが無く、合成セグメント1を安価に安定して製造することができる。
また、第一鋼材10及び第二鋼材13と継手板11,14にシール溝20,21をそれぞれ形成してシール材を設けることにより、他の合成セグメント1と連結して道路用トンネル等の内側への地下水等の漏水を確実に防止することができる。しかも、この合成セグメント1を道路用トンネルに適用するとセグメント1の厚み分だけ桁高を小さくできる。
【0019】
次に、図5は本発明の第二の実施の形態に係る合成セグメント1Aを示す。
この第二の実施形態に係る合成セグメント1Aは、第一の実施の形態に係る合成セグメント1では、前記第二中間鋼材18が、その内周面を合成セグメント1(鋼殻2)の厚み方向において前記第二鋼材13の内周面と一致させて(面一にして)配置されているのに対して、中間鋼材18Aが、その内周面を合成セグメント1(鋼殻2)の厚み方向(トンネルの半径方向)において前記第二鋼材13の内周面の位置からずらして、合成セグメント1Aの内側へ寄った位置に配置されている。
その他の構成は、前記合成セグメント1と同様であるので、同一または同様の構成部分には同一の符号を付してそれらについての説明は省略する。
この実施の形態に係る合成セグメント1Aによれば、前記合成セグメント1と同様な作用、効果が奏されるほかに、前記第二中間鋼材18Aがコンクリート3で覆われるので、合成セグメント1Aの内周面側に露出する鋼材が少なくなり、鋼材の防錆処理の面積を減らすことができる。
【0020】
次に、図6は第三の実施の形態による合成セグメント1Bを示す。
この第三の実施の形態に係る合成セグメント1Bは、第一の実施の形態に係る合成セグメント1では、第一鋼材10と第三鋼材15が、また、第二鋼材13と第四鋼材16がそれぞれ一体に連結された構成とされているのに対して、第一鋼材10と第三鋼材15が、また、第二鋼材13と第四鋼材16がそれぞれ分離された構成とされている。
その他の構成は、前記合成セグメント1と同様であるので、同一または同様の構成部分には同一の符号を付してそれらについての説明は省略する。
この第三の実施の形態に係る合成セグメント1Bによれば、前記合成セグメント1と同様な作用、効果が奏されるほかに、合成セグメント1Bの中央部で発生する応力を、第一、第二鋼材10,13とは分離して設けられた第三、第四鋼材15,16によって分担させることができるので、より幅広の合成セグメントに好適に採用することができる。
【0021】
次に、図7は第四の実施の形態による合成セグメント1Cを示す。
この第四の実施の形態に係る合成セグメント1Cは、第一の実施の形態に係る合成セグメント1では、第一鋼材10と第二鋼材13が横断面が長方形の比較的厚肉の鋼材で形成されて、それらの外端面10a,13aにシール溝20が設けられた構成とされているのに対して、第一鋼材30及び第二鋼材31が、前記第一、第二鋼材10,13より薄肉に形成された鋼板からなり、合成セグメント1Cの短辺方向(トンネルの軸方向)にそれぞれ延出する第一プレート部30a及び第二プレート部31aと、合成セグメント1Cの厚み方向にそれぞれ延出する第三プレート部30b及び第四プレート部31bとをそれぞれ結合して横断面がL字形状に形成されたものである。
【0022】
また、前記第三、第四鋼材33,34及び第一、第二中間鋼材(図示せず)も、前記第一、第二鋼材30,31の板厚に合わせて薄肉に形成されている。
そして、前記第三、第四プレート部30b,31bの外端面30c,31cに前記シール溝20,20が形成されている。
その他の構成は、前記合成セグメント1と同様であるので、同一または同様の構成部分には同一の符号を付してそれらについての説明は省略する。なお、図7では主桁面6に設けるリング間継手は図示が省略されている。
この第四の実施の形態に係る合成セグメント1Cによれば、前記合成セグメント1と同様な作用、効果が奏されるほかに、鋼殻2を構成する鋼材が薄くてその使用量が少なくなり、一層、軽量化することができ、取り扱いも容易である。
【0023】
次に、図8は第五の実施の形態による合成セグメント1Dを示す。
この第五の実施の形態に係る合成セグメント1Dは、第四の実施の形態に係る合成セグメント1Cにおいて、第一鋼材30の第一プレート部30aと第三鋼材33が、また、第二鋼材31の第二プレート部31aと第四鋼材34がそれぞれ一体に連結された構成とされているのに対して、第一鋼材30の第一プレート30aと第三鋼材15が、また、第二鋼材31の第三プレート31aと第四鋼材34がそれぞれ分離された構成とされている。
その他の構成は、前記合成セグメント1Cと同様であるので、同一または同様の構成部分には同一の符号を付してそれらについての説明は省略する。なお、図8では主桁面6に設けるリング間継手は図示が省略されている。
この第四の実施の形態に係る合成セグメント1Dによれば、前記合成セグメント1Cと同様な作用、効果が奏されるほかに、第三の実施の形態に係る合成セグメント1Bと同様に、合成セグメント1Dの中央部で発生する応力を、第一、第二鋼材30,31とは分離して設けられた第三、第四鋼材33,34によって分担させることができるので、より幅広の合成セグメントに好適に採用することができる。
【0024】
なお、前記各実施の形態に係る合成セグメント1〜1Dにおいて、前記第一中間鋼材17と第二中間鋼材18を、合成セグメント1〜1Dの短辺方向において、一対の第一鋼材10,10の中間および一対の第二鋼材13,13の中間にそれぞれ1個だけ設けたが、前記第一中間鋼材17と第二中間鋼材18は、前記中間から多少ずれていても良く、また、1個に限らず、前記短辺方向に略等間隔をあけて2個以上の複数個を並列して設けても良い。複数個設けると、合成セグメント1〜1Dを一層高強度にすることができる。
また、前記各実施の形態に係る合成セグメント1B〜1Dにおいても、前記第二中間鋼材(図示せず)を、その内周面が、前記第二の実施の形態に係る合成セグメント1Aの第二中間鋼材18Aと同様に、合成セグメント1B〜1Dの厚み方向の内側に寄った位置に配置することができる。
また、ラチス19は、合成セグメント1の製造時に型枠内に鋼殻2を配置する際、第三鋼材15と第四鋼材16、及び第一中間鋼材と第二中間鋼材をそれぞれ繋ぐために設けられるものであるが、必ずしも設けなくても良い。また、第三鋼材15,33及び第四鋼材16,34自体も必ずしも設けなくてもよい。
【0025】
また、前記各実施の形態に係る合成セグメント1,1A,1Bにおいては、第一鋼材10及び第二鋼材13の外端面10a,13aに設けたシール溝20は、各鋼材10,13の圧延加工時に車輪状の部材で同時に圧延形成したが、これに代えて第一鋼材10及び第二鋼材13の形成後に切削等の機械加工によって形成してもよい。
また、前記各実施形態に係る合成セグメント1〜1Dにおいて、第一鋼材10,30、第二鋼材13,31、第三鋼材15,33、第四鋼材16,34及び第一中間鋼材17、第二中間鋼材18,18Aは、共に合成セグメントの構造材を構成しており、合成セグメントが薄肉、幅広構造であってもそれに高強度を発揮させる。前記ラチス19は、複数の板状または棒状部材を略V字状に配列した構造とされているが、コンクリート3の充填性が良好な隙間を有する形状であれは、必ずしも当該形状である必要はなく、任意の形状の接続部材を採用することができる。
また、前記各実施の形態に係る合成セグメント1,1A,1Bにおいては、主桁面6,6にほぞ8としてほぞ凸部8aとほぞ凹部8bを配設したが、リング間継手7だけでもよい。
【0026】
また、前記各実施の形態に係る合成セグメント1〜1Dにおいて、図示しないが、前記第一鋼材10,30、第二鋼材13,31、第三鋼材15,33、第四鋼材16,34、第一中間鋼材17及び第二中間鋼材18,18Aに、合成セグメント1〜1Dの内側に向けて突出させてボルト、ピン等からなるジベルを固着し、それらの鋼材とコンクリート22との密着性を良くして合成セグメント1〜1Dの強度を高めるようにしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の第一の実施の形態による合成セグメントの斜視図である。
【図2】図1のイ−イ断面図である。
【図3】図1に示す合成セグメントの鋼殻を示す斜視図である。
【図4】図1に示す合成セグメントからスキンプレートを分離した分解斜視図である。
【図5】本発明の第二の実施の形態による合成セグメントの図2に対応する断面図である。
【図6】本発明の第三の実施の形態による合成セグメントの図2に対応する断面図である。
【図7】本発明の第四の実施の形態による合成セグメントの図2に対応する断面図である。
【図8】本発明の第五の実施の形態による合成セグメントの図2に対応する断面図である。
【符号の説明】
【0028】
1,1A,1B,1C,1D 合成セグメント
2 鋼殻
3 コンクリート
4 継手面
6 主桁面
10,30 第一鋼材
13,31 第二鋼材
14 継手板(継手部材)
15,33 第三鋼材
16,34 第四鋼材
17 第一中間鋼材
18,18a 第二中間鋼材
19 ラチス(接続部材)
22 スキンプレート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼殻の内部にコンクリートを充填して略円弧板状に形成され、周方向及び軸方向に複数連結されることにより筒状壁体を構成する合成セグメントであって、
前記鋼殻は、略円弧状に湾曲して外周面の対向する二辺に設けられた一対の第一鋼材と、略円弧状に湾曲して内周面の対向する二辺に設けられた一対の第二鋼材と、略円弧状に湾曲して一対の前記第一鋼材の間に設けられた第一中間鋼材と、略円弧状に湾曲して一対の前記第二鋼材の間に設けられた第二中間鋼材とを備えていることを特徴とする合成セグメント。
【請求項2】
前記鋼殻には、一対の前記第一鋼材の両端部どうしをそれぞれ連結する共に一対の前記第二鋼材の両端部どうしをそれぞれ連結する継手部材が設けられ、前記第一中間鋼材の両端部の両端部と前記第二中間鋼材の両端部がそれぞれ前記継手部材に連結されていることを特徴とする請求項1に記載の合成セグメント。
【請求項3】
前記第二中間鋼材は前記第二鋼材の内周面よりも厚み方向の内側に寄った位置に配置されていることを特徴とする請求項1または2に記載の合成セグメント。
【請求項4】
前記第一鋼材の内側には、該第一鋼材にそれぞれ連結または分離して円弧状に湾曲する第三鋼材が設けられ、前記第二鋼材の内側には、該第二鋼材にそれぞれ連結または分離して円弧状に湾曲する第四鋼材が設けられていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の合成セグメント。
【請求項5】
前記第三鋼材と第四鋼材及び第一中間鋼材と第二中間鋼材は、それぞれ対向して配設されて接続部材によって連結されていることを特徴とする請求項4に記載の合成セグメント。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−270483(P2007−270483A)
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−96585(P2006−96585)
【出願日】平成18年3月31日(2006.3.31)
【出願人】(000198307)石川島建材工業株式会社 (139)
【出願人】(000001373)鹿島建設株式会社 (1,387)
【Fターム(参考)】