説明

合成トリテルペノイドおよび疾患の治療における使用方法

【課題】腎/腎臓疾患、インスリン抵抗性/糖尿病、脂肪肝疾患、および/または内皮機能不全/心臓血管疾患を治療および予防するための方法を提供する。
【解決手段】対象に、下記の構造を有する化合物、またはその薬学的に許容される塩、水和物もしくは溶媒和物の薬学的有効量を投与する段階を含む方法。


(式中、R1は、−CN、またはC1〜C5−アシルもしくはC1〜C5−アルキルであって、これらの基のどちらも、ヘテロ原子置換されているか、またはヘテロ原子置換されていない。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2008年1月11日に出願された米国特許仮出願第61/020,624号、および2008年10月28日に出願された同第61/109,114号の優先権の恩典を主張するものであり、これらそれぞれの全ての内容が参照により本明細書に組み入れられる。
【0002】
I. 発明の分野
本発明は、概して、生物学および医薬(medicine)の分野に関する。より特に、腎/腎臓疾患(RKD)、インスリン抵抗性、糖尿病、内皮機能不全、脂肪肝疾患および心臓血管疾患(CVD)を治療および/または予防するための組成物および方法に関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
II. 関連技術の説明
血液からの代謝老廃物の不十分な排泄、および血液中の電解質の異常濃度の原因となる腎不全は、世界全体での、特に先進国における重大な医学的問題である。慢性腎臓疾患(CKD)としても公知である慢性腎不全の最も重要な原因には、糖尿病および高血圧があるが、例えば狼瘡または全身性心臓血管疾患等の他の状態も伴う。血管内皮の機能不全は、通常、このような状態で生じ、慢性腎臓疾患の発症における主な要因であると考えられている。急性腎不全は、ある特定の薬物(例えば、アセトアミノフェン)もしくは有毒化学物質への暴露によって、またはショックもしくは例えば移植等の外科的処置に伴う虚血-再かん流傷害によって起こる場合があり、最終的にCKDを招く場合がある。多くの患者において、CKDは、患者が生存し続けるために腎臓移植または定期的な透析が必要である、末期腎疾患(ESRD)に進行する。これらの処置のいずれも、侵襲性が高く、重大な副作用および生活の質の問題を伴う。腎不全のいくつかの合併症、例えば、副甲状腺機能亢進症および高リン血症等に有効な治療があるが、腎不全の根本的な進行を停止または好転させることが可能であると示された治療はない。従って、腎機能障害(compromised renal function)を改善できる薬剤は、腎不全の治療における重大な進歩を意味すると考えられる。
【0004】
スクアレンの環化により植物中で生合成されるトリテルペノイドは、多くのアジア諸国で医薬用途に用いられ、ウルソール酸およびオレアノール酸のようにそのいくつかは、抗炎症性および抗発がん性があることが公知である(Huangら, 1994(非特許文献1);Nishinoら, 1988(非特許文献2))。しかしながら、これら天然に存在する分子の生物活性は比較的弱く、そのため、それらの効力を増強するための新しい類似体の合成が行われた(Hondaら, 1997(非特許文献3);Hondaら, 1998(非特許文献4))。オレアノール酸類似体およびウルソール酸類似体の、抗炎症活性および抗増殖活性の改善のための継続的な努力が、2-シアノ-3,12-ジオキソオレアン-1,9(11)-ジエン-28-酸(CDDO)および関連化合物の発見につながった(Hondaら, 1997(非特許文献3), 1998(非特許文献4), 1999(非特許文献5), 2000a(非特許文献6), 2000b(非特許文献7), 2002(非特許文献8);Suhら, 1998(非特許文献9);1999(非特許文献10);2003(非特許文献11);Placeら, 2003(非特許文献12);Libyら, 2005(非特許文献13))。メチル-2-シアノ-3,12-ジオキソオレアナ-1,9-ジエン-28-酸(CDDO-Me;RTA 402)を包含する、オレアノール酸の数種の強力な誘導体を同定した。RTA 402は、活性化マクロファージにおける、例えばiNOS、COX-2、TNFαおよびIFNγ等の数種の重要な炎症性メディエータの誘導を抑える。RTA 402は、数種の抗炎症性タンパク質および抗酸化タンパク質、例えば、ヘムオキシゲナーゼ-1(HO-1)等の産生をもたらすKeap1/Nrf2/AREシグナル伝達経路を活性化することも報告されている。これらの特性から、RTA 402は、新生物疾患および増殖性疾患、例えば、がん等の治療のための候補となった。腎臓疾患および心臓血管疾患を治療および/または予防する、この化合物および関連分子の能力は、まだ試験されていないままである。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Huang et al., Cancer Res., 54:701-708, 1994.
【非特許文献2】Nishino et al., Cancer Res., 48:5210-5215, 1988.
【非特許文献3】Honda et al., Med. Chem. Lett., 7:1623-1628, 1997.
【非特許文献4】Honda et al., Bioorg. Med. Chem. Lett., 19:2711-2714, 1998.
【非特許文献5】Honda et al., Bioorg. Med. Chem. Lett., 9:3429-3434, 1999.
【非特許文献6】Honda et al., J. Med. Chem., 43:1866-1877, 2000a.
【非特許文献7】Honda et al., J. Med. Chem., 43:4233-4246, 2000b.
【非特許文献8】Honda et al., Bioorg. Med. Chem. Lett., 12:1027-1030, 2002.
【非特許文献9】Suh et al., Cancer Res., 58:717-723, 1998.
【非特許文献10】Suh et al., Cancer Res., 59(2):336-341, 1999.
【非特許文献11】Suh et al., Cancer Res., 63:1371-1376, 2003.
【非特許文献12】Place et al., Clin. Cancer Res., 9:2798-2806, 2003.
【非特許文献13】Liby et al., Cancer Res., 65:4789-4798, 2005.
【発明の概要】
【0006】
本発明は、腎/腎臓疾患(RKD)、インスリン抵抗性、糖尿病、内皮機能不全、脂肪肝疾患、心臓血管疾患(CVD)、および関連する障害を治療および/または予防するための新しい方法を提供する。以下の一般的な式または具体的な式の範囲に包含される化合物、あるいは具体的に指定される化合物は、本願では「発明の化合物」、「本発明の化合物」または「合成トリテルペノイド」と称される。
【0007】
本発明の一局面において、対象における、腎/腎臓疾患(RKD)、インスリン抵抗性、糖尿病、内皮機能不全、脂肪肝疾患、または心臓血管疾患(CVD)を治療および/または予防するための方法であって、該対象に、下記の構造を有する化合物、またはその薬学的に許容される塩、水和物もしくは溶媒和物の薬学的有効量を投与する段階を含む方法が提供される。

式中、R1は、-CN、またはC1-C15-アシルもしくはC1-C15-アルキルであって、これらの基のどちらも、ヘテロ原子置換されているか、またはヘテロ原子置換されていない。
【0008】
いくつかの態様において、RKDを治療するための方法が提供される。いくつかのバリエーション(variation)において、RKDは、糖尿病性腎症(DN)である。他のバリエーションにおいて、RKDは、毒性損傷(toxic insult)、例えば、画像診断剤または薬物に起因する毒性損傷に起因する。例えば、薬物は、化学療法剤であってもよい。さらなるバリエーションにおいて、RKDは、虚血/再かん流傷害に起因する。さらなるバリエーションにおいて、RKDは、糖尿病または高血圧に起因する。さらなるバリエーションにおいて、RKDは、自己免疫疾患に起因する。他のバリエーションにおいて、RKDは、慢性RKDである。さらなるバリエーションにおいて、RKDは、急性RKDである。
【0009】
いくつかの態様において、対象は、透析を受けていたか、または透析を受けている。いくつかの態様において、対象は、腎臓移植を受けたか、または腎臓移植を受ける候補である。いくつかの態様において、対象は、RKDおよびインスリン抵抗性を患っている。前記態様のいくつかのバリエーションにおいて、対象は、RKD、インスリン抵抗性および内皮機能不全を患っている。いくつかの態様において、対象は、RKDおよび糖尿病を患っている。いくつかの態様において、対象は、インスリン抵抗性を患っている。
【0010】
いくつかの態様において、対象は、糖尿病を患っている。化合物の薬学的有効量は、糖尿病に伴う1つまたは複数の合併症も有効に治療し得る。例えば、合併症は、肥満、高血圧、アテローム硬化、冠動脈性心疾患、脳卒中、末梢血管疾患、高血圧、腎症、神経障害、筋壊死、糖尿病性足部潰瘍および他の糖尿病性潰瘍、網膜症、ならびに代謝症候群(X症候群)からなる群より選択され得る。また、例えば、合併症は、代謝症候群(X症候群)でもあり得る。いくつかのバリエーションにおいて、糖尿病は、インスリン抵抗性に起因する。
【0011】
いくつかの態様において、対象は、RKDおよび内皮機能不全を患っている。他の態様において、対象は、RKDおよび心臓血管疾患を患っている。いくつかの態様において、対象は、CVDを患っている。いくつかのバリエーションにおいて、CVDは、内皮機能不全に起因する。
【0012】
いくつかの態様において、対象は、内皮機能不全および/またはインスリン抵抗性を患っている。いくつかの態様において、対象は、脂肪肝疾患を患っている。いくつかのバリエーションにおいて、脂肪肝疾患は、非アルコール性脂肪肝疾患である。他のバリエーションにおいて、脂肪肝疾患は、アルコール性脂肪肝疾患である。いくつかのバリエーションにおいて、対象は、脂肪肝疾患、および以下の障害の1つもしくは複数を患っている:腎/腎臓疾患(RKD)、インスリン抵抗性、糖尿病、内皮機能不全、および心臓血管疾患(CVD)。
【0013】
いくつかの態様において、方法は、本明細書で列挙される、疾患、機能不全、抵抗性または障害のいずれかの治療を必要としている対象を特定する段階をさらに含む。いくつかの態様において、対象は、本明細書で列挙される、疾患、機能不全、抵抗性または障害のいずれかの家族歴または患者病歴を有する。いくつかの態様において、対象は、本明細書で列挙される、疾患、機能不全、抵抗性または障害のいずれかの症状を呈する。
【0014】
本発明の別の局面において、対象における糸球体濾過率またはクレアチニン・クリアランスを改善するための方法であって、該対象に、式Iの構造を有する化合物、またはその薬学的に許容される塩、水和物もしくは溶媒和物の薬学的有効量を投与する段階を含む方法が提供される。
【0015】
いくつかの態様において、化合物は、局所投与される。いくつかの態様において、化合物は、全身投与される。いくつかの態様において、化合物は、経口的に、脂肪内に(intraadiposally)、動脈内に、関節内に、頭蓋内に、皮内に、病巣内に、筋肉内に、鼻腔内に、眼内に、心膜内に、腹腔内に、胸膜腔内に、前立腺内に、直腸内に、くも膜下腔内に(intrathecally)、気管内に、腫瘍内に、臍帯内に、腟内に、静脈内に、膀胱内に、硝子体内に、リポソーム的に(liposomally)、局所に(locally)、粘膜に、経口的に、非経口的に、直腸に、結膜下に、皮下に、舌下に、局所的に(topically)、経頬的に(transbuccally)、経皮的に、膣に(vaginally)、クリーム剤で、脂質組成物で、カテーテル経由で、洗浄液経由で(via a lavage)、持続注入で、注入で、吸入で、注射で、局所送達で、局所かん流で、標的細胞を直接浸して、またはそれらの任意の組み合わせで投与される。例えば、いくつかのバリエーションにおいて、化合物は、静脈内に、動脈内に、または経口的に投与される。例えば、いくつかのバリエーションにおいて、化合物は、経口投与される。
【0016】
いくつかの態様において、化合物は、硬カプセル剤もしくは軟カプセル剤、錠剤、シロップ剤、懸濁剤、固体分散体、カシェ剤、またはエリキシル剤として製剤化されている。いくつかのバリエーションにおいて、軟カプセル剤は、ゼラチンカプセル剤である。態様において、化合物は、固体分散体として製剤化されている。いくつかのバリエーションにおいて、硬カプセル剤、軟カプセル剤、錠剤またはカシェ剤は、保護被覆剤をさらに含む。いくつかのバリエーションにおいて、製剤化された化合物は、吸収を遅らせる作用物質を含む。いくつかのバリエーションにおいて、製剤化された化合物は、溶解性または分散性を向上させる作用物質をさらに含む。いくつかのバリエーションにおいて、化合物は、リポソーム剤中、水中油型乳剤中、または油中水型乳剤中に分散されている。
【0017】
いくつかの態様において、薬学的有効量は、化合物約0.1 mg〜約500 mgの1日用量である。いくつかのバリエーションにおいて、1日用量は、化合物約1 mg〜約300 mgである。いくつかのバリエーションにおいて、1日用量は、化合物約10 mg〜約200 mgである。いくつかのバリエーションにおいて、1日用量は、化合物約25 mgである。他のバリエーションにおいて、1日用量は、化合物約75 mgである。さらなる他のバリエーションにおいて、1日用量は、化合物約150 mgである。さらなるバリエーションにおいて、1日用量は、化合物約0.1 mg〜約30 mgである。いくつかのバリエーションにおいて、1日用量は、化合物約0.5 mg〜約20 mgである。いくつかのバリエーションにおいて、1日用量は、化合物約1 mg〜約15 mgである。いくつかのバリエーションにおいて、1日用量は、化合物約1 mg〜約10 mgである。いくつかのバリエーションにおいて、1日用量は、化合物約1 mg〜約5 mgである。
【0018】
いくつかの態様において、薬学的有効量は、体重1kg当たり化合物0.01〜25 mgの1日用量である。いくつかのバリエーションにおいて、1日用量は、体重1kg当たり化合物0.05〜20 mgである。いくつかのバリエーションにおいて、1日用量は、体重1kg当たり化合物0.1〜10 mgである。いくつかのバリエーションにおいて、1日用量は、体重1kg当たり化合物0.1〜5 mgである。いくつかのバリエーションにおいて、1日用量は、体重1kg当たり化合物0.1〜2.5 mgである。
【0019】
いくつかの態様において、薬学的有効量は、1日当たり単回で投与される。いくつかの態様において、薬学的有効量は、1日当たり2回またはそれ以上の回数で投与される。
【0020】
いくつかの態様において、治療方法は、二次療法をさらに含む。いくつかの態様において、二次療法は、対象に第二の薬物の薬学的有効量を投与する段階を含む。いくつかの態様において、第二の薬物は、コレステロールを低下させる薬物、抗高脂血症薬、カルシウムチャンネル遮断薬、抗高血圧薬、またはHMG-CoA還元酵素阻害剤である。第二の薬物の限定されない例は、アムロジピン、アスピリン、エゼチミブ、フェロジピン、ラシジピン、レルカニジピン、ニカルジビン、ニフェジピン、ニモジピン、ニソルジピン、およびニトレンジピンである。第二の薬物のさらなる限定されない例は、アテノロール、ブシンドロール、カルベジロール、クロニジン、ドキサゾシン、インドラミン、ラベタロール、メチルドパ、メトプロロール、ナドロール、オクスプレノロール、フェノキシベンザミン、フェントラミン、ピンドロール、プラゾシン、プロプラノロール、テラゾシン、チモロール、およびトラゾリンである。いくつかのバリエーションにおいて、第二の薬物は、スタチンである。スタチンの限定されない例は、アトルバスタチン、セリバスタチン、フルバスタチン、ロバスタチン、メバスタチン、ピタバスタチン、プラバスタチン、ロスバスタチン、およびシンバスタチンである。いくつかのバリエーションにおいて、第二の薬物は、ジペプチジルペプチダーゼ-4(DPP-4)阻害剤である。DPP-4阻害剤の限定されない例は、シタグリプチン、ビルダグリプチン、SYR-322、BMS 477118、およびGSK 823093である。いくつかのバリエーションにおいて、第二の薬物は、ビグアナイドである。例えば、ビグアナイドは、メトホルミンであり得る。いくつかのバリエーションにおいて、第二の薬物は、チアゾリジンジオン(TZD)である。TZDの限定されない例は、ピオグリタゾン、ロシグリタゾン、およびトログリタゾンである。いくつかのバリエーションにおいて、第二の薬物は、スルホニル尿素誘導体である。スルホニル尿素誘導体の限定されない例は、トルブタミド、アセトヘキサミド、トラザミド、クロルプロパミド、グリピジド、グリブリド、グリメピリド、およびグリクラジドである。いくつかのバリエーションにおいて、第二の薬物は、メグリチニドである。メグリチニドの限定されない例とは、レパグリニド、ミチグリニド、およびナテグリニドが挙げられる。いくつかのバリエーションにおいて、第二の薬物は、インスリンである。いくつかのバリエーションにおいて、第二の薬物は、α-グルコシダーゼ阻害剤である。α-グルコシダーゼ阻害剤の限定されない例は、アカルボース、ミグリトール、およびボグリボースである。いくつかのバリエーションにおいて、第二の薬物は、グルカゴン様ペプチド-1類似体である。グルカゴン様ペプチド-1類似体の限定されない例は、エクセナチド、およびリラグルチドである。いくつかのバリエーションにおいて、第二の薬物は、胃抑制ペプチド類似体である。いくつかのバリエーションにおいて、第二の薬物は、GPR40作動薬である。いくつかのバリエーションにおいて、第二の薬物は、GPR119作動薬である。いくつかのバリエーションにおいて、第二の薬物は、GPR30作動薬である。いくつかのバリエーションにおいて、第二の薬物は、グルコキナーゼ活性化剤である。いくつかのバリエーションにおいて、第二の薬物は、グルカゴン受容体拮抗剤である。いくつかのバリエーションにおいて、第二の薬物は、アミリン類似体である。アミリン類似体の限定されない例は、プラムリンチドである。いくつかのバリエーションにおいて、第二の薬物は、IL-1β受容体拮抗剤である。IL-1β受容体拮抗剤の限定されない例は、アナキンラである。いくつかのバリエーションにおいて、第二の薬物は、内在性カンナビノイド受容体拮抗剤、または逆作動薬である。内在性カンナビノイド受容体拮抗剤または逆作動薬の限定されない例は、リモナバンである。いくつかのバリエーションにおいて、第二の薬物は、オルリスタット(Orlistat)である。いくつかのバリエーションにおいて、第二の薬物は、シブトラミン(Sibutramine)である。いくつかのバリエーションにおいて、第二の薬物は、成長因子である。成長因子の限定されない例は、TGF-β1、TGF-β2、TGF-β1.2、VEGF、インスリン様成長因子IもしくはII、BMP2、BMP4、BMP7、GLP-1類似体、GIP類似体、DPP-IV阻害剤、GPR119作動薬、GPR40作動薬、ガストリン、EGF、ベータセルリン、KGF、NGF、インスリン、成長ホルモン、HGF、FGF、FGF相同体、PDGF、レプチン(Leptin)、プロラクチン、胎盤性ラクトゲン、PTHrP、アクチビン、インヒビン、およびINGAPである。成長因子のさらなる限定されない例は、副甲状腺ホルモン、カルシトニン、インターロイキン-6、およびインターロイキン-11である。
【0021】
いくつかの態様において、対象は、霊長類である。いくつかのバリエーションにおいて、霊長類は、ヒトである。他のバリエーションにおいて、対象は、雌ウシ、ウマ、イヌ、ネコ、ブタ、マウス、ラット、またはモルモットである。
【0022】
いくつかの態様において、化合物は、下記として定義される化合物、またはその薬学的に許容される塩、水和物もしくは溶媒和物である。

式中、Yは、-H、ヒドロキシ、アミノ、ハロ、またはC1-C14-アルコキシ、C2-C14-アルケニルオキシ、C2-C14-アルキニルオキシ、C1-C14-アリールオキシ、C2-C14-アラルコキシ、C1-C14-アルキルアミノ、C2-C14-アルケニルアミノ、C2-C14-アルキニルアミノ、C1-C14-アリールアミノ、C3-C10-アリールもしくはC2-C14-アラルキルアミノであって、これらの基のいずれも、ヘテロ原子置換されているか、またはヘテロ原子置換されていない。
【0023】
いくつかの態様において、本発明の化合物が、例えば、下記であるように、Yは、ヘテロ原子非置換C1-C4-アルキルアミノである。

【0024】
いくつかの態様において、本発明の化合物が、例えば、下記であるように、Yは、ヘテロ原子置換またはヘテロ原子非置換のC2-C4-アルキルアミノである。

【0025】
いくつかの態様において、Yは、ヘテロ原子置換またはヘテロ原子非置換のC1-C4-アルコキシ、例えば、ヘテロ原子非置換C1-C2-アルコキシ等である。例えば、このような化合物限定されない一例は、下記である。

【0026】
いくつかの態様において、CDDO-Meの少なくとも一部分は、多形形態として存在し、該多形形態は、約8.8、12.9、13.4、14.2および17.4 °2θに顕著な回折ピークを含むX線回折パターン(CuKα)を有する結晶形態である。限定されない例において、X線回折パターン(CuKα)は、図12Aまたは図12Bに実質的に示されるパターンである。他のバリエーションにおいて、CDDO-Meの少なくとも一部分は、多形形態として存在し、該多形形態は、図12Cに実質的に示される約13.5 °2θにハローピーク(halo peak)を伴う回折ピークを含むX線回折パターン(CuKα)、およびTgを有する非晶形形態である。いくつかのバリエーションにおいて、化合物は、非晶形形態である。いくつかのバリエーションにおいて、化合物は、図12Cに示される約13.5 °2θにハローピークを伴うX線粉末回折パターン、およびTgを有するCDDO-Meのガラス状固体形態である。いくつかのバリエーションにおいて、Tg値は、約120℃〜約135℃の範囲内である。いくつかのバリエーションにおいて、Tg値は、約125℃〜約130℃である。
【0027】
いくつかの態様において、本発明の化合物が、例えば、下記であるように、Yは、ヒドロキシである。

【0028】
いくつかの態様において、化合物は、

である。
【0029】
いくつかの態様において、化合物は、下記として定義される化合物、またはその薬学的に許容される塩、水和物もしくは溶媒和物である。

式中、Y'は、ヘテロ原子置換またはヘテロ原子非置換のC1-C14-アリールである。
【0030】
いくつかの態様において、化合物は、

である。
【0031】
前記方法のいくつかのバリエーションにおいて、化合物は、その光学異性体を実質的に含有しない。前記方法のいくつかのバリエーションにおいて、化合物は、薬学的に許容される塩の形態である。前記方法の他のバリエーションにおいて、化合物は、塩ではない。
【0032】
いくつかの態様において、化合物は、(i) 化合物の治療的有効量、ならびに (ii) (A) 糖質、糖質誘導体もしくは糖質高分子、(B) 合成有機高分子、(C) 有機酸塩、(D) タンパク質、ポリペプチドもしくはペプチド、および (E) 高分子量多糖類からなる群より選択される賦形剤を含む薬学的組成物として製剤化されている。いくつかのバリエーションにおいて、賦形剤は、合成有機高分子である。いくつかのバリエーションにおいて、賦形剤は、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリ[1-(2-オキソ-1-ピロリジニル)エチレンもしくはその共重合体、およびメタクリル酸―メタクリル酸メチル共重合体からなる群より選択される。いくつかのバリエーションにおいて、賦形剤は、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタル酸エステルである。いくつかのバリエーションにおいて、賦形剤は、PVP/VAである。いくつかのバリエーションにおいて、賦形剤は、メタクリル酸―アクリル酸エチル共重合体(1:1)である。いくつかのバリエーションにおいて、賦形剤は、コポビドン(copovidone)である。
【0033】
本発明の一局面に関して、本明細中で論じられる任意の態様は、具体的に言及されない限り、本発明の他の局面に同様に適用される。
【0034】
本発明の他の目的、特徴および利点は、以下の詳細な説明および任意の添付の図面から明らかになると考えられる。しかしながら、本発明の精神および範囲内の種々の変更および改変が、この詳細な説明から当業者には明らかになると考えられることから、提供されるこの詳細な説明ならびに任意の具体的実施例もしくは図面は、本発明の具体的な態様を示すが、単に例証として与えられることを理解するべきである。
[請求項1001]
対象における腎/腎臓疾患(RKD)、インスリン抵抗性、糖尿病、内皮機能不全、脂肪肝疾患または心臓血管疾患(CVD)を治療するための方法であって、該対象に、下記の構造を有する化合物、またはその薬学的に許容される塩、水和物もしくは溶媒和物の薬学的有効量を投与する段階を含む方法:

式中、R1は、
-CN、または
C1-C15-アシルもしくはC1-C15-アルキルであって、これらの基のどちらも、ヘテロ原子置換されているか、またはヘテロ原子置換されていない。
[請求項1002]
対象が、RKDを患っている、請求項1001記載の方法。
[請求項1003]
RKDが、糖尿病性腎症(DN)である、請求項1002記載の方法。
[請求項1004]
RKDが、毒性損傷(toxic insult)に起因する、請求項1002記載の方法。
[請求項1005]
毒性損傷が、画像診断剤(imaging agent)、または薬物に起因する、請求項1004記載の方法。
[請求項1006]
薬物が、化学療法剤である、請求項1005記載の方法。
[請求項1007]
RKDが、虚血/再かん流傷害に起因する、請求項1002記載の方法。
[請求項1008]
RKDが、糖尿病または高血圧に起因する、請求項1002記載の方法。
[請求項1009]
RKDが、自己免疫疾患に起因する、請求項1002記載の方法。
[請求項1010]
RKDが、慢性RKDである、請求項1002記載の方法。
[請求項1011]
RKDが、急性RKDである、請求項1002記載の方法。
[請求項1012]
対象が、透析を受けていたか、または透析を受けている、請求項1001記載の方法。
[請求項1013]
対象が、腎臓移植を受けたか、または腎臓移植を受ける候補である、請求項1001記載の方法。
[請求項1014]
対象が、RKDおよびインスリン抵抗性を患っている、請求項1001記載の方法。
[請求項1015]
対象が、RKD、インスリン抵抗性および内皮機能不全を患っている、請求項1014記載の方法。
[請求項1016]
対象が、RKDおよび糖尿病を患っている、請求項1001記載の方法。
[請求項1017]
対象が、インスリン抵抗性を患っている、請求項1001記載の方法。
[請求項1018]
対象が、糖尿病を患っている、請求項1001記載の方法。
[請求項1019]
化合物の薬学的有効量が、糖尿病に伴う1つまたは複数の合併症も有効に治療する、請求項1018記載の方法。
[請求項1020]
合併症が、肥満、高血圧、アテローム硬化、冠動脈性心疾患、脳卒中、末梢血管疾患、高血圧、腎症、神経障害、筋壊死、網膜症、および代謝症候群(X症候群)からなる群より選択される、請求項1019記載の方法
[請求項1021]
合併症が、代謝症候群(X症候群)である、請求項1020記載の方法。
[請求項1022]
糖尿病が、インスリン抵抗性に起因する、請求項1018記載の方法。
[請求項1023]
対象が、RKDおよび内皮機能不全を患っている、請求項1001記載の方法。
[請求項1024]
対象が、RKDおよび心臓血管疾患を患っている、請求項1001記載の方法。
[請求項1025]
対象が、CVDを患っている、請求項1001記載の方法。
[請求項1026]
CVDが、内皮機能不全に起因する、請求項1025記載の方法。
[請求項1027]
対象が、内皮機能不全を患っている、請求項1001記載の方法。
[請求項1028]
対象が、内皮機能不全およびインスリン抵抗性を患っている、請求項1027記載の方法。
[請求項1029]
対象が、脂肪肝疾患を患っている、請求項1001記載の方法。
[請求項1030]
脂肪肝疾患が、非アルコール性脂肪肝疾患である、請求項1029記載の方法。
[請求項1031]
脂肪肝疾患が、アルコール性脂肪肝疾患である、請求項1029記載の方法。
[請求項1032]
対象が、脂肪肝疾患および以下の障害の1つまたは複数を患っている、請求項1029記載の方法:腎/腎臓疾患(RKD)、インスリン抵抗性、糖尿病、内皮機能不全、および心臓血管疾患(CVD)。
[請求項1033]
列挙された、疾患、機能不全、抵抗性または障害のいずれかの治療を必要としている対象を特定する段階をさらに含む、請求項1001〜1032のいずれか一項記載の方法。
[請求項1034]
対象が、列挙された、疾患、機能不全、抵抗性または障害のいずれかの家族歴または患者病歴を有する、請求項1001〜1032のいずれか一項記載の方法。
[請求項1035]
対象が、列挙された、疾患、機能不全、抵抗性または障害のいずれかの症状を呈する、請求項1001〜1032のいずれか一項記載の方法。
[請求項1036]
対象における糸球体濾過率またはクレアチニン・クリアランスを改善するための方法であって、該対象に、下記の構造を有する化合物、またはその薬学的に許容される塩、水和物もしくは溶媒和物の薬学的有効量を投与する段階を含む方法:

式中、R1は、
-CN、または
C1-C15-アシルもしくはC1-C15-アルキルであって、これらの基のどちらも、ヘテロ原子置換されているか、またはヘテロ原子置換されていない。
[請求項1037]
化合物が、局所投与される、請求項1001〜1036のいずれか一項記載の方法。
[請求項1038]
化合物が、全身投与される、請求項1001〜1036のいずれか一項記載の方法。
[請求項1039]
化合物が、経口的に、脂肪内に(intraadiposally)、動脈内に、関節内に、頭蓋内に、皮内に、病巣内に、筋肉内に、鼻腔内に、眼内に、心膜内に、腹腔内に、胸膜腔内に、前立腺内に、直腸内に、くも膜下腔内に(intrathecally)、気管内に、腫瘍内に、臍帯内に、腟内に、静脈内に、膀胱内に、硝子体内に、リポソーム的に(liposomally)、局所に(locally)、粘膜に、経口的に、非経口的に、直腸に、結膜下に、皮下に、舌下に、局所的に(topically)、経頬的に(transbuccally)、経皮的に、膣に(vaginally)、クリーム剤で、脂質組成物で、カテーテル経由で、洗浄液経由で(via a lavage)、持続注入経由で、注入経由で、吸入経由で、注射経由で、局所送達経由で、局所かん流経由で、標的細胞を直接浸して、またはそれらの任意の組み合わせで投与される、請求項1001〜1036のいずれか一項記載の方法。
[請求項1040]
化合物が、静脈内に、動脈内にまたは経口的に投与される、請求項1039記載の方法。
[請求項1041]
化合物が、経口投与される、請求項1040記載の方法。
[請求項1042]
化合物が、硬カプセル剤もしくは軟カプセル剤、錠剤、シロップ剤、懸濁剤、固体分散体、カシェ剤、またはエリキシル剤として製剤化されている、請求項1041記載の方法。
[請求項1043]
化合物が、固体分散体として製剤化されている、請求項1042記載の方法。
[請求項1044]
軟カプセル剤が、ゼラチンカプセル剤である、請求項1042記載の方法。
[請求項1045]
保護被覆剤をさらに含む、請求項1044記載の方法。
[請求項1046]
吸収を遅らせる作用物質をさらに含む、請求項1044記載の方法。
[請求項1047]
溶解性または分散性を向上させる作用物質をさらに含む、請求項1042記載の方法。
[請求項1048]
化合物が、リポソーム剤中、水中油型乳剤中、または油中水型乳剤中に分散されている、請求項1039記載の方法。
[請求項1049]
薬学的有効量が、化合物約0.1 mg〜約500 mgの日用量である、請求項1001〜1036のいずれか一項記載の方法。
[請求項1050]
日用量が、化合物約1 mg〜約300 mgである、請求項1049記載の方法。
[請求項1051]
日用量が、化合物約10 mg〜約200 mgである、請求項1050記載の方法。
[請求項1052]
日用量が、化合物約25 mgである、請求項1051記載の方法。
[請求項1053]
日用量が、化合物約75 mgである、請求項1051記載の方法。
[請求項1054]
日用量が、化合物約150 mgである、請求項1051記載の方法。
[請求項1055]
日用量が、化合物約0.1 mg〜約30 mgである、請求項1049記載の方法。
[請求項1056]
日用量が、化合物約0.5 mg〜約20 mgである、請求項1055記載の方法。
[請求項1057]
日用量が、化合物約1 mg〜約15 mgである、請求項1056記載の方法。
[請求項1058]
日用量が、化合物約1 mg〜約10 mgである、請求項1057記載の方法。
[請求項1059]
日用量が、化合物約1 mg〜約5 mgである、請求項1058記載の方法。
[請求項1060]
薬学的有効量が、体重1kg当たり化合物0.01〜25 mgの日用量である、請求項1001〜1036のいずれか一項記載の方法。
[請求項1061]
日用量が、体重1kg当たり化合物0.05〜20 mgである、請求項1060記載の方法。
[請求項1062]
日用量が、体重1kg当たり化合物0.1〜10 mgである、請求項1061記載の方法。
[請求項1063]
日用量が、体重1kg当たり化合物0.1〜5 mgである、請求項1062記載の方法。
[請求項1064]
日用量が、体重1kg当たり化合物0.1〜2.5 mgである、請求項1063記載の方法。
[請求項1065]
薬学的有効量が、1日当たり単回で投与される、請求項1001〜1036のいずれか一項記載の方法。
[請求項1066]
薬学的有効量が、1日当たり2回またはそれ以上の回数で投与される、請求項1001〜1036のいずれか一項記載の方法。
[請求項1067]
二次療法をさらに含む、請求項1001〜1036のいずれか一項記載の方法。
[請求項1068]
二次療法が、対象に、第二の薬物の薬学的有効量を投与する段階を含む、請求項1067記載の方法。
[請求項1069]
第二の薬物が、コレステロールを低下させる薬物、抗高脂血症薬、カルシウムチャンネル遮断薬、抗高血圧薬またはHMG-CoA還元酵素阻害剤である、請求項1068記載の方法。
[請求項1070]
第二の薬物が、アムロジピン、アスピリン、エゼチミブ、フェロジピン、ラシジピン、レルカニジピン、ニカルジビン、ニフェジピン、ニモジピン、ニソルジピン、またはニトレンジピンである、請求項1069記載の方法。
[請求項1071]
第二の薬物が、アテノロール、ブシンドロール、カルベジロール、クロニジン、ドキサゾシン、インドラミン、ラベタロール、メチルドパ、メトプロロール、ナドロール、オクスプレノロール、フェノキシベンザミン、フェントラミン、ピンドロール、プラゾシン、プロプラノロール、テラゾシン、チモロール、またはトラゾリンである、請求項1069記載の方法。
[請求項1072]
第二の薬物が、スタチンである、請求項1068記載の方法。
[請求項1073]
スタチンが、アトルバスタチン、セリバスタチン、フルバスタチン、ロバスタチン、メバスタチン、ピタバスタチン、プラバスタチン、ロスバスタチン、またはシンバスタチンである、請求項1072記載の方法。
[請求項1074]
第二の薬物が、ジペプチジルペプチダーゼ-4(DPP-4)阻害剤である、請求項1068記載の方法。
[請求項1075]
DPP-4阻害剤が、シタグリプチン、ビルダグリプチン、SYR-322、BMS 477118、またはGSK 823093である、請求項1074記載の方法。
[請求項1076]
第二の薬物が、ビグアナイドである、請求項1068記載の方法。
[請求項1077]
ビグアナイドが、メトホルミンである、請求項1076記載の方法。
[請求項1078]
第二の薬物が、チアゾリジンジオン(TZD)である、請求項1068記載の方法。
[請求項1079]
TZDが、ピオグリタゾン、ロシグリタゾン、またはトログリタゾンである、請求項1078記載の方法。
[請求項1080]
第二の薬物が、スルホニル尿素誘導体である、請求項1068記載の方法。
[請求項1081]
スルホニル尿素誘導体が、トルブタミド、アセトヘキサミド、トラザミド、クロルプロパミド、グリピジド、グリブリド、グリメピリド、およびグリクラジドからなる群より選択される、請求項1080記載の方法。
[請求項1082]
第二の薬物が、メグリチニドである、請求項1068記載の方法。
[請求項1083]
メグリチニドが、レパグリニド、ミチグリニド、およびナテグリニドからなる群より選択される、請求項1082記載の方法。
[請求項1084]
第二の薬物が、インスリンである、請求項1068記載の方法。
[請求項1085]
第二の薬物が、α-グルコシダーゼ阻害剤である、請求項1068記載の方法。
[請求項1086]
α-グルコシダーゼ阻害剤が、アカルボース、ミグリトール、およびボグリボースからなる群より選択される、請求項1085記載の方法。
[請求項1087]
第二の薬物が、グルカゴン様ペプチド-1類似体である、請求項1068記載の方法。
[請求項1088]
グルカゴン様ペプチド-1類似体が、エクセナチドおよびリラグルチドからなる群より選択される、請求項1087記載の方法。
[請求項1089]
第二の薬物が、胃抑制ペプチド類似体である、請求項1068記載の方法。
[請求項1090]
第二の薬物が、GPR40作動薬である、請求項1068記載の方法。
[請求項1091]
第二の薬物が、GPR119作動薬である、請求項1068記載の方法。
[請求項1092]
第二の薬物が、GPR30作動薬である、請求項1068記載の方法。
[請求項1093]
第二の薬物が、グルコキナーゼ活性化剤である、請求項1068記載の方法。
[請求項1094]
第二の薬物が、グルカゴン受容体拮抗剤である、請求項1068記載の方法。
[請求項1095]
第二の薬物が、アミリン類似体である、請求項1068記載の方法。
[請求項1096]
アミリン類似体が、プラムリンチドである、請求項1095記載の方法。
[請求項1097]
第二の薬物が、IL-1β受容体拮抗剤である、請求項1068記載の方法。
[請求項1098]
IL-1β受容体拮抗剤が、アナキンラである、請求項1097記載の方法。
[請求項1099]
第二の薬物が、内在性カンナビノイド受容体拮抗剤または逆作動薬である、請求項1068記載の方法。
[請求項1100]
内在性カンナビノイド受容体拮抗剤または逆作動薬が、リモナバンである、請求項1099記載の方法。
[請求項1101]
第二の薬物が、オルリスタット(Orlistat)である、請求項1068記載の方法。
[請求項1102]
第二の薬物が、シブトラミン(Sibutramine)である、請求項1068記載の方法。
[請求項1103]
第二の薬物が、成長因子である、請求項1068記載の方法。
[請求項1104]
成長因子が、TGF-β1、TGF-β2、TGF-β1.2、VEGF、インスリン様成長因子IもしくはII、BMP2、BMP4、BMP7、GLP-1類似体、GIP類似体、DPP-IV阻害剤、GPR119作動薬、GPR40作動薬、ガストリン、EGF、ベータセルリン、KGF、NGF、インスリン、成長ホルモン、HGF、FGF、FGF相同体、PDGF、レプチン(Leptin)、プロラクチン、胎盤性ラクトゲン、PTHrP、アクチビン、インヒビン、またはINGAPである、請求項1103記載の方法。
[請求項1105]
成長因子が、副甲状腺ホルモン、カルシトニン、インターロイキン-6、またはインターロイキン-11である、請求項1103記載の方法。
[請求項1106]
対象が、霊長類である、請求項1001〜1036のいずれか一項記載の方法。
[請求項1107]
霊長類が、ヒトである、請求項1106記載の方法。
[請求項1108]
対象が、雌ウシ、ウマ、イヌ、ネコ、ブタ、マウス、ラット、またはモルモットである、請求項1001〜1036のいずれか一項記載の方法。
[請求項1109]
化合物が、下記としてさらに定義される化合物、またはその薬学的に許容される塩、水和物もしくは溶媒和物である、請求項1001〜1108のいずれか一項記載の方法:

式中、Yは、
-H、ヒドロキシ、アミノ、ハロ、または
C1-C14-アルコキシ、C2-C14-アルケニルオキシ、C2-C14-アルキニルオキシ、C1-C14-アリールオキシ、C2-C14-アラルコキシ、C1-C14-アルキルアミノ、C2-C14-アルケニルアミノ、C2-C14-アルキニルアミノ、C1-C14-アリールアミノ、C3-C10-アリール、もしくはC2-C14-アラルキルアミノであって、これらの基のいずれも、ヘテロ原子置換されているか、またはヘテロ原子置換されていない。
[請求項1110]
Yが、ヘテロ原子非置換のC1-C4-アルキルアミノである、請求項1109記載の方法。
[請求項1111]
化合物が、

としてさらに定義される、請求項1110記載の方法。
[請求項1112]
Yが、ヘテロ原子置換またはヘテロ原子非置換のC2-C4-アルキルアミノである、請求項1110記載の方法。
[請求項1113]
化合物が、

としてさらに定義される、請求項1112記載の方法。
[請求項1114]
化合物が、

としてさらに定義される、請求項1112記載の方法。
[請求項1115]
Yが、ヘテロ原子置換またはヘテロ原子非置換のC1-C4-アルコキシである、請求項1109記載の方法。
[請求項1116]
Yが、ヘテロ原子非置換C1-C4-アルコキシである、請求項1115記載の方法。
[請求項1117]
Yが、ヘテロ原子非置換C1-C2-アルコキシである、請求項1116記載の方法。
[請求項1118]
化合物が、

としてさらに定義される、請求項1115記載の方法。
[請求項1119]
請求項1118の化合物の少なくとも一部分が、多形形態として存在し、該多形形態が、約8.8、12.9、13.4、14.2および17.4 °2θに顕著な回折ピークを含むX線回折パターン(CuKα)を有する結晶形態である、請求項1118記載の方法。
[請求項1120]
X線回折パターン(CuKα)が、図12Aまたは図12Bに実質的に示されるパターンである、請求項1119記載の方法。
[請求項1121]
請求項1118の化合物の少なくとも一部分が、多形形態として存在し、該多形形態が、図12Cに実質的に示される約13.5 °2θにハロピーク(halo peak)を伴うX線回折パターン(CuKα)、およびTgを有する非晶形形態である、請求項1118記載の方法。
[請求項1122]
Tg値が、約120℃〜約135℃の範囲である、請求項1121記載の方法。
[請求項1123]
Tg値が、約125℃〜約130℃の範囲である、請求項1122記載の方法。
[請求項1124]
Yが、ヒドロキシである、請求項1109記載の方法。
[請求項1125]
化合物が、さらに

として定義される、請求項1124記載の方法。
[請求項1126]
化合物が、さらに

として定義される、請求項1001〜1108のいずれか一項記載の方法。
[請求項1127]
化合物が、下記としてさらに定義される化合物、またはその薬学的に許容される塩、水和物もしくは溶媒和物である、請求項1001〜1108のいずれか一項記載の方法:

式中、Y'は、ヘテロ原子置換またはヘテロ原子非置換のC1-C14-アリールである。
[請求項1128]
化合物が、さらに

として定義される、請求項1127記載の方法。
[請求項1129]
化合物が、その光学異性体を実質的に含有しない、請求項1001、1036、1109〜1128のいずれか一項記載の方法。
[請求項1130]
化合物が、薬学的に許容される塩の形態である、請求項1001、1036、1109、1110、1112、1115および1127のいずれか一項記載の方法。
[請求項1131]
化合物が、塩ではない、請求項1001、1036、1109、1110、1112、1115および1127のいずれか一項記載の方法。
[請求項1132]
化合物が、
(i) 化合物の治療的有効量、ならびに
(ii) (A) 糖質、糖質誘導体もしくは糖質高分子、(B) 合成有機高分子、(C) 有機酸塩、(D) タンパク質、ポリペプチドもしくはペプチド、または (E) 高分子量多糖類である賦形剤
を含む薬学的組成物として製剤化されている、請求項1001、1036、1109、1110、1112、1115および1127のいずれか一項記載の方法。
[請求項1133]
賦形剤が、合成有機高分子である、請求項1132記載の方法。
[請求項1134]
賦形剤が、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリ[1-(2-オキソ-1-ピロリジニル)エチレンもしくはその共重合体、およびメタクリル酸―メタクリル酸メチル共重合体からなる群より選択される、請求項1133記載の方法。
[請求項1135]
賦形剤が、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタル酸エステルである、請求項1134記載の方法。
[請求項1136]
賦形剤が、PVP/VAである、請求項1134記載の方法。
[請求項1137]
賦形剤が、メタクリル酸―アクリル酸エチル共重合体(1:1)である、請求項1134記載の方法。
[請求項1138]
賦形剤が、コポビドン(copovidone)である、請求項1133記載の方法。
[請求項1139]
対象における糸球体濾過率またはクレアチニン・クリアランスを改善するための方法に使用するための、下記の構造を有する化合物、またはその薬学的に許容される塩、水和物もしくは溶媒和物:

式中、R1は、
-CN、または
C1-C15-アシルもしくはC1-C15-アルキルであって、これらの基のどちらも、ヘテロ原子置換されているか、またはヘテロ原子置換されていない。
[請求項1140]
対象が、腎/腎臓疾患(RKD)、インスリン抵抗性、糖尿病、糖尿病に伴う合併症、内皮機能不全、脂肪肝疾患、または心臓血管疾患(CVD)の治療を必要としている、請求項1139に記載の使用のための化合物。
[請求項1141]
RKDが、
(a) 糖尿病性腎症(DN)であるか、
(b) 慢性RKDであるか、
(c) 急性RKDであるか、
(d) 虚血/再かん流傷害に起因するか、
(e) 糖尿病または高血圧に起因するか、
(f) 自己免疫疾患に起因するか、または
(g) 毒性損傷、特に、画像診断剤、または化学療法剤等の薬物に起因する毒性損傷に起因する、
請求項1140に記載の使用のための化合物。
[請求項1142]
対象が、透析を受けていたか、もしくは透析を受けているか、または対象が、腎臓移植を受けたか、もしくは腎臓移植を受ける候補である、請求項1139〜1141のいずれか一項記載の使用のための化合物。
[請求項1143]
合併症が、肥満、高血圧、アテローム硬化、冠動脈性心疾患、脳卒中、末梢血管疾患、高血圧、腎症、神経障害、筋壊死、網膜症、または代謝症候群(X症候群)である、請求項1140に記載の使用のための化合物。
[請求項1144]
糖尿病が、インスリン抵抗性に起因しており、CDVが、内皮機能不全に起因しており、かつ/または脂肪肝疾患が、非アルコール性もしくはアルコール性脂肪肝疾患である、請求項1140に記載の使用のための化合物。
[請求項1145]
局所投与または全身投与される、請求項1139〜1144のいずれか一項記載の使用のための化合物であって、特に、経口的に、脂肪内に、動脈内に、関節内に、頭蓋内に、皮内に、病巣内に、筋肉内に、鼻腔内に、眼内に、心膜内に、腹腔内に、胸膜腔内に、前立腺内に、直腸内に、くも膜下腔内に、気管内に、腫瘍内に、臍帯内に、腟内に、静脈内に、膀胱内に、硝子体内に、リポソーム的に、局所に、粘膜に、経口的に、非経口的に、直腸に、結膜下に、皮下に、舌下に、局所的に、経頬的に、経皮的に、膣に、クリーム剤で、脂質組成物で、カテーテル経由で、洗浄液経由で、持続注入経由で、注入経由で、吸入経由で、注射経由で、局所送達経由で、局所かん流経由で、標的細胞を直接浸して、またはそれらの任意の組み合わせで投与される、化合物。
[請求項1146]
経口投与される、請求項1145に記載の使用のための化合物であって、かつ硬カプセル剤、または任意で保護被覆剤もしくは吸収を遅らせる作用物質をさらに含んでいてもよいゼラチンカプセル等の軟カプセル剤として製剤化されているか;錠剤、シロップ剤、懸濁剤、固体分散体、カシェ剤、またはエリキシル剤として製剤化されている、化合物。
[請求項1147]
製剤が、溶解性または分散性を向上させる作用物質さらに含む、請求項1146に記載の使用のための化合物。
[請求項1148]
リポソーム剤中、水中油型乳剤中、または油中水型乳剤中に分散されている、請求項1145に記載の使用のための化合物。
[請求項1149]
日用量が、化合物25 mg〜500 mgで、体重1kg当たり化合物0.01〜25 mg、特に、体重1kg当たり化合物0.05〜20 mg、0.10〜10 mg、または0.1〜5 mgである、請求項1139〜1148のいずれか一項記載の使用のための化合物。
[請求項1150]
1日当たり単回で投与されるか、または1日当たり2回もしくはそれ以上の回数で投与される、請求項1139〜1149のいずれか一項記載の使用のための化合物。
[請求項1151]
化合物での治療が、二次療法との組み合わせであって、特に、二次療法が、コレステロールを低下させる薬物、抗高脂血症薬、カルシウムチャンネル遮断薬、抗高血圧薬、またはHMG-CoA還元酵素阻害剤等の第二の薬物での治療、特に、アムロジピン、アスピリン、エゼチミブ、フェロジピン、ラシジピン、レルカニジピン、ニカルジビン、ニフェジピン、ニモジピン、ニソルジピン、ニトレンジピン、アテノロール、ブシンドロール、カルベジロール、クロニジン、ドキサゾシン、インドラミン、ラベタロール、メチルドパ、メトプロロール、ナドロール、オクスプレノロール、フェノキシベンザミン、フェントラミン、ピンドロール、プラゾシン、プロプラノロール、テラゾシン、チモロール、トラゾリン、あるいはアトルバスタチン、セリバスタチン、フルバスタチン、ロバスタチン、メバスタチン、ピタバスタチン、プラバスタチン、ロスバスタチンおよびシンバスタチンを包含するスタチンでの治療を含む、請求項1139〜1150のいずれか一項記載の使用のための化合物。
[請求項1152]
化合物での治療が、シタグリプチン、ビルダグリプチン、SYR-322、BMS 477118もしくはGSK 823093等のジペプチジルペプチダーゼ-4(DPP-4)阻害剤での治療;メトホルミン等のビグアナイドでの治療、またはピオグリタゾン、ロシグリタゾンおよびトログリタゾン等のチアゾリジンジオン(TZD)での治療;トルブタミド、アセトヘキサミド、トラザミド、クロルプロパミド、グリピジド、グリブリド、グリメピリドおよびグリクラジド等のスルホニル尿素誘導体での治療;レパグリニド、ミチグリニドおよびナテグリニド等のメグリチニドでの治療;インスリンでの治療;アカルボース、ミグリトールおよびボグリボース等のα-グルコシダーゼ阻害剤での治療;エクセナチドおよびリラグルチド等のグルカゴン様ペプチド-1類似体での治療;胃抑制ペプチド類似体での治療;GPR40作動薬での治療;GPR119作動薬での治療;GPR30作動薬での治療;グルコキナーゼ活性化剤での治療;グルカゴン受容体拮抗剤での治療;プラムリンチド等のアミリン類似体での治療;アナキンラ等のIL-1β受容体拮抗剤での治療;リモナバン等の内在性カンナビノイド受容体拮抗剤もしくは逆作動薬での治療;オルリスタットでの治療;シブトラミンでの治療;TGF-β1、TGF-β2、TGF-β1.2、VEGF、インスリン様成長因子IもしくはII、BMP2、BMP4、BMP7、GLP-1類似体、GIP類似体、DPP-IV阻害剤、GPR119作動薬、GPR40作動薬、ガストリン、EGF、ベータセルリン、KGF、NGF、インスリン、成長ホルモン、HGF、FGF、FGF相同体、PDGF、レプチン、プロラクチン、胎盤性ラクトゲン、PTHrP、アクチビン、インヒビン、INGAP、副甲状腺ホルモン、カルシトニン、インターロイキン-6、またはインターロイキン-11等の成長因子での治療を含む二次療法との組み合わせである、請求項1139〜1150のいずれか一項記載の使用のための化合物。
[請求項1153]
対象が霊長類、特に、ヒト、雌ウシ、ウマ、イヌ、ネコ、ブタ、マウス、ラット、またはモルモットである、請求項1139〜1152のいずれか一項記載の使用のための化合物。
[請求項1154]
R1が-C(=O)-Yであり、かつYが
-H、ヒドロキシ、アミノ、ハロ、または
C1-C14-アルコキシ、C2-C14-アルケニルオキシ、C2-C14-アルキニルオキシ、C1-C14-アリールオキシ、C2-C14-アラルコキシ、C1-C14-アルキルアミノ、C2-C14-アルケニルアミノ、C2-C14-アルキニルアミノ、C1-C14-アリールアミノ、C3-C10-アリールもしくはC2-C14-アラルキルアミノであって、これらの基のいずれも、ヘテロ原子置換されているか、またはヘテロ原子置換されていない、請求項1139〜1153のいずれか一項記載の使用のための化合物であって、特に、Yが下記である、化合物:
(a) -NHCH3等のヘテロ原子非置換C1-C4-アルキルアミノ;
(b) -NHCH2CH3または-NHCH2CF3等のヘテロ原子置換またはヘテロ原子非置換のC2-C4-アルキルアミノ;
(c) -OCH3等のヘテロ原子非置換のC1-C4-アルコキシ;または
(d) ヒドロキシ。
[請求項1155]
R1が-CNである、請求項1139〜1153のいずれか一項記載の使用のための化合物。
[請求項1156]
R1が-C(=O)-Y'であり、かつY'がヘテロ置換またはヘテロ非置換のC1-C14-アリールである、請求項1139〜1153のいずれか一項記載の使用のための化合物であって、特に

である、化合物。
[請求項1157]
実質的に純粋な光学異性体である、請求項1139〜1156のいずれか一項記載の使用のための化合物。
【図面の簡単な説明】
【0035】
以下の図面は、本明細書の一環であり、本発明のある特定の局面をさらに実証するためのものとして包含されます。本発明は、これらの図面の1つまたは複数を、本明細書で提示される具体的な態様の詳細な説明と組み合わせて参照することにより、より良く理解され得る。
【0036】
【図1】図1a〜dは、RTA 402が、虚血再かん流後の腎障害(renal damage)を軽減することを示す。2日目から開始して、1日にRTA 402を2 mg/kgまたは単なる媒体(ゴマ油)を、マウスに強制経口投与した。0日目に、17分間、左腎動脈にクランプを施し、その後、クランプをはずして虚血再かん流を誘導した。(図1a)1日目に、クランピングを受けた動物、および腎動脈のクランピングなしで手術を受けた「疑似(sham)」対照動物から、血液を採取した。腎障害の代替として、血液尿素窒素(BUN)レベルを評価した。(図1b〜d)RTA 402処置または媒体処置したマウスに由来する腎臓の切片を、組織学的障害(図1bおよび1d)および炎症(図1c)に関して評点付けしたスコア。(図1d)黒い矢印(媒体群)は、髄質外部(outer medulla)における重度に損傷した多数の細管のうちの2箇所を示す。赤い矢印(RTA 402群)は、髄質外部における損傷した多数の細管のうちの2箇所を示す。
【図2】図2a〜cは、RTA 402が、シスプラチンで誘導される腎毒性を軽減することを示す。−1日目から開始して、毎日RTA 402を10 mg/kgまたは単なる媒体(ゴマ油)を、ラットに強制経口投与した。0日目に、ラットに、6 mg/kgでシスプラチンの静脈内注射を行った。表示される日に血液試料を採取し、腎障害の指標として、クレアチニンのレベル(図2a)および血液尿素窒素(BUN)レベル(図2b)を評価した。媒体処置群とRTA 402処置群の間の統計的有意差は、3日目(クレアチニン)および5日目(クレアチニンおよびBUN)に認められた。(図2c)媒体処置した動物と比較して、RTA 402処置した動物における近位細管への障害は、より少ないことが認められた。
【図3】図3a〜dは、RTA 402が、サル、イヌおよびラットにおける血清クレアチニンレベルを低減することを示す。(図3a)28日間、1日に1回、表示される用量で、RTA 402をカニクイザルに経口投与した。媒体処置した対照サルに対する、RTA 402処置したサルにおける28日目の血清クレアチニンのパーセント減少を示す。(図3b)3ヶ月間、毎日、表示される用量で、RTA 402をビーグル犬に経口投与した。対照動物は、媒体(ゴマ油)を受けた。3ヶ月の時点での血清クレアチニンにおける、ベースラインに対するパーセント変化を示す。(図3c)1ヶ月の間、1日に1回、表示される用量で、RTA 402をSprague-Dawleyラットに経口投与した。媒体処置した対照ラットに対する、RTA 402処置したラットにおける試験完了時での血清クレアチニンのパーセント減少を示す。(図3d)3ヶ月間、1日に1回、表示される用量で、非晶形形態のRTA 402をSprague-Dawleyラットに経口投与した。媒体処置した対照ラットに対する、RTA 402処置したラットにおける試験完了時での血清クレアチニンのパーセント減少を示す。注記:図3A、3Cおよび3Dにおいて、縦軸上の「%減少」は、パーセント変化を指す。例えば、この軸上の−15の解釈は、血清クレアチニンにおける15%の減少を指す。
【図4】図4A〜Bは、RTA 402が、ヒトがん患者において、血清クレアチニンレベルを低減し、かつ推定糸球体濾過率(eGFR)を増加させることを示す。図4A:がんの治療のための第一相臨床試験に登録した患者であり、RTA 402治療した患者における、血清クレアチニンを評価した。患者には、21日間、1日に1回、5〜1,300 mg/dayの範囲の用量でRTA 402(p.o.)を投与した。表示される試験日に関して、ベースラインに対する血清クレアチニンのパーセント減少を示す。血清クレアチニンレベルにおける有意な低減は、15日目および21日目に認められた。図4B:図4Aにおける患者に関して、推定糸球体濾過率(eGFR)を算出した。eGFRの有意な改善が、両方の群において認められた。全ての患者:n=24;ベースライン≧1.5をもつ患者:n=5。図4Aおよび4Bに関して、はp0.04を指し、†はp=0.01を指し、かつ‡はp≦0.01を指す。注記:図4Aにおいて、縦軸上の「ベースラインから%減少」は、パーセント変化を指す。例えば、この軸上の−15の解釈は、血清クレアチニンにおける15%の減少を指す。
【図5】図5は、RTA 402が、ヒトがん患者におけるGFRを増加させることを示す。がんの治療のための複数月の臨床試験(multi-month clinical trial)に登録した患者であり、RTA 402治療した患者における、推定糸球体濾過率(eGFR)を評価した。解析には、6ヶ月のわたり投薬された全ての患者(n=11)が含まれた。これらの患者の投薬情報を、下記の実施例5に提供する。
【図6】図6は、重症度とのRTA 402活性相関を示す。ヘモグロビンA1cの減少を、初期ベースライン値の比率として提示する。より高いベースライン、例えば、平均ベースライン≧7.0% A1cまたは≧7.6% A1cをもつ群は、より大きな減少を示した。治療意図(ITT)群には、正常A1c値から開始した患者を包含する全ての患者(n=53)が含まれる。
【図7】図7は、RTA 402活性が、用量依存的であることを示す。初期ベースライン値に対するヘモグロビンA1cの減少を提示する。棒グラフは、全ての患者、ベースラインA1c値≧7.0%をもつ全ての患者、≧7.0%群に由来する個々の用量コホート、および病期4期の腎疾患患者(GFR 15〜29 mL/分)に関する平均結果を示しており、ここで、nは、各群における患者の数である。
【図8】図8は、RTA 402が、循環血管内皮細胞(CEC)およびiNOS陽性CECを減少させることを示す。28日RTA治療の前後両方での、治療意図(ITT)群および高ベースライン群(elevated baseline group)に関する、細胞/mLでのCECの平均数における変化を示す。治療意図群に関する減少は約20%であり、高ベースライン群(>5 CEC/ml)における減少は約33%であった。iNOS陽性CECの比率は、約29%に減少した。
【図9】図9は、28日間での可逆的な用量依存性のGFR増加を示す。RTA 402での治療は、用量依存的にGFRを増加させる。全ての評価可能患者を包含する。病期4期の腎疾患患者において、>30%の改善が認められた。
【図10】図10A〜Bは、糖尿病性腎症の重症度の指標の軽減および転帰を示す。糖尿病性腎症(DN)患者において増大し、かつ腎疾患の重症度と相関がある、アディポネクチン(Adiponectin)(図10A)およびアンジオテンシンII(図10B)の改善。アディポネクチンは、DN患者における全死因死亡および末期腎疾患を予測する。全ての利用可能なデータを挙げた。
【図11】図11A〜Cは、RTA 402が、有意に尿毒症性溶質を低減することを示す。グラフは、全ての患者および特定の溶質の高ベースライン値を示している患者に関する、BUN(図11A)、リン(図11B)および尿酸(図11C)の平均変化を提示する。
【図12】図12A〜Cは、RTA 402の形態AおよびBのX線粉末回折(XRPD)スペクトルを示す。図12Aは微粉末化されていない形態Aを示し、図12Bは微粉末化された形態Aを示し、図12Cは形態Bを示す。
【図13】図13は、形態AであるRTA 402の変調示差走査熱量測定(MDSC)曲線を示す。拡大図に示される曲線の部分は、ガラス転移温度(Tg)と一致している。
【図14】図14は、形態BであるRTA 402の変調示差走査熱量測定(MDSC)曲線を示す。拡大図に示される曲線の部分は、ガラス転移温度(Tg)と一致している。
【図15】図15は、カニクイザルにおける形態B(非晶形)の改善されたバイオアべイラビリティを示す。図は、カニクイザルへの4.1 mg/kg経口投与後の、形態Aおよび形態Bに関する曲線下面積の代表的なグラフを示す。各データ点は、8匹の動物におけるCDDOメチルエステルの平均血漿中濃度を表す。エラーバーは、標本抽出された母集団内での標準偏差を表す。
【発明を実施するための形態】
【0037】
例示的な態様の説明
I. 本発明
本発明は、腎疾患、ならびに糖尿病および心臓血管疾患を包含する関連疾患を治療および予防するための新しい方法であって、トリテルペノイドの使用を含む方法に関する。
【0038】
II. 定義
本明細書で用いられる場合、「アミノ」という用語は、-NH2を意味し、「ニトロ」という用語は、-NO2を意味し、「ハロ」という用語は、-F、-Cl、-Brまたは-Iを指し、「メルカプト」という用語は、-SHを意味し、「シアノ」という用語は、-CNを意味し、「シリル」という用語は、-SiH3を意味し、「ヒドロキシ」という用語は、-OHを意味する。
【0039】
「ヘテロ原子置換(heteroatom-substituted)」という用語は、有機遊離基(例えば、アルキル、アリール、アシル等)の類(class)を修飾するために用いられる場合、該遊離基の1個または複数の水素原子が、ヘテロ原子またはヘテロ原子を含有する基で置き換えられていることを意味する。ヘテロ原子およびヘテロ原子を含有する基の例としては、ヒドロキシ、シアノ、アルコキシ、=0、=S、-NO2、-N(CH3)2、アミノ、または-SHが挙げられる。具体的なヘテロ原子置換有機遊離基を、以下に、より詳しく定義する。
【0040】
「ヘテロ原子非置換(heteroatom-unsubstituted)」という用語は、有機遊離基(例えば、アルキル、アリール、アシル等)の類を修飾するために用いられる場合、該遊離基のどの水素原子も、ヘテロ原子またはヘテロ原子を含有する基で置き換えられていないことを意味する。炭素原子で、あるいは炭素原子および水素原子のみからなる基で、水素原子を置換することは、基をヘテロ原子置換させるのには十分ではない。例えば、-C6H4Fがヘテロ原子置換アリール基の例であるが、一方、-C6H4C≡CHという基は、ヘテロ原子非置換アリール基の例である。具体的なヘテロ原子非置換有機遊離基を、以下に、より詳しく定義する。
【0041】
「アルキル」という用語には、直鎖アルキル基、分枝鎖アルキル基、シクロアルキル(脂環式)基、アルキル-ヘテロ原子置換シクロアルキル基(alkyl heteroatom-substituted cycloalkyl group)、およびシクロアルキル-ヘテロ原子置換アルキル基(cycloalkyl heteroatom-substituted alkyl group)が包含される。「ヘテロ原子非置換Cn-アルキル」という用語は、直鎖状または分枝状の、環式または非環式の構造を有し、炭素-炭素二重結合または炭素-炭素三重結合をさらに有さず、これらの全てが非芳香性である計n個の炭素原子、3個またはそれ以上の水素原子をさらに有するが、ヘテロ原子は有しない遊離基のことをいう。例えば、ヘテロ原子非置換C1-C10-アルキルは、1〜10個の炭素原子を有する。-CH3、-CH2CH3、-CH2CH2CH3、-CH(CH3)2、-CH(CH2)2(シクロプロピル)、-CH2CH2CH2CH3、-CH(CH3)CH2CH3、-CH2CH(CH3)2、-C(CH3)3、-CH2C(CH3)3、シクロブチル、シクロペンチル、およびシクロヘキシルという基は、全て、ヘテロ原子非置換アルキル基の例である。「ヘテロ原子置換Cn-アルキル」という用語は、ただ1個の飽和炭素原子を結合点として有し、炭素-炭素二重結合または炭素-炭素三重結合を有さず、直鎖状または分枝状の、環式または非環式構造をさらに有し、これらの全てが非芳香性である計n個の炭素原子、0個、1個または複数の水素原子、少なくとも1個のヘテロ原子をさらに有する遊離基であって、それぞれのヘテロ原子がN、O、F、Cl、Br、I、Si、PおよびSからなる群より独立して選択される遊離基のことをいう。例えば、ヘテロ原子置換C1-C10-アルキルは、1〜10個の炭素原子を有する。以下の基は、全て、ヘテロ原子置換アルキル基の例である:トリフルオロメチル、-CH2F、-CH2Cl、-CH2Br、-CH2OH、-CH2OCH3、-CH2OCH2CH3、-CH2OCH2CH2CH3、-CH2OCH(CH3)2、-CH2OCH(CH2)2、-CH2OCH2CF3、-CH2OCOCH3、-CH2NH2、-CH2NHCH3、-CH2N(CH3)2、-CH2NHCH2CH3、-CH2N(CH3)CH2CH3、-CH2NHCH2CH2CH3、-CH2NHCH(CH3)2、-CH2NHCH(CH2)2、-CH2N(CH2CH3)2、-CH2CH2F, -CH2CH2Cl、-CH2CH2Br, -CH2CH2I、-CH2CH2OH、-CH2CH2OCOCH3、-CH2CH2NH2、-CH2CH2N(CH3)2、-CH2CH2NHCH2CH3、-CH2CH2N(CH3)CH2CH3、-CH2CH2NHCH2CH2CH3、-CH2CH2NHCH(CH3)2、-CH2CH2NHCH(CH2)2、-CH2CH2N(CH2CH3)2、-CH2CH2NHCO2C(CH3)3、および-CH2Si(CH3)3
【0042】
「ヘテロ原子非置換Cn-アルケニル」という用語は、直鎖状または分枝状の、環式または非環式構造を有し、少なくとも1個の非芳香性炭素-炭素二重結合をさらに有するが、炭素-炭素三重結合を有さず、計n個の炭素原子、3個またはそれ以上の水素原子を有するが、ヘテロ原子を有しない遊離基のことをいう。例えば、ヘテロ原子非置換C2-C1O-アルケニルは2〜10個の炭素原子を有する。ヘテロ原子非置換アルケニル基としては、-CH=CH2、-CH=CHCH3、-CH=CHCH2CH3、-CH=CHCH2CH2CH3、-CH=CHCH(CH3)2、-CH=CHCH(CH2)2、-CH2CH=CH2、-CH2CH=CHCH3、-CH2CH=CHCH2CH3、-CH2CH=CHCH2CH2CH3、-CH2CH=CHCH(CH3)2、-CH2CH=CHCH(CH2)2、および-CH=CH-C6H5が挙げられる。「ヘテロ原子置換Cn-アルケニル」という用語は、結合点としてのただ1個の非芳香性炭素原子、および少なくとも1個の非芳香性炭素-炭素二重結合を有するが、炭素-炭素三重結合を有さず、直鎖状または分枝状の、環式または非環式構造をさらに有し、計n個の炭素原子、0個、1個または複数の水素原子、および少なくとも1個のヘテロ原子をさらに有する遊離基であって、それぞれのヘテロ原子がN、O、F、Cl、Br、I、Si、PおよびSからなる群より独立して選択される遊離基のことをいう。例えば、ヘテロ原子置換C2-C10-アルケニルは、2〜10個の炭素原子を有する。-CH=CHF、-CH=CHCl、および-CH=CHBrという基は、ヘテロ原子置換アルケニル基の例である。
【0043】
「ヘテロ原子非置換Cn-アルキニル」という用語は、直鎖状または分枝状の、環式または非環式構造を有し、少なくとも1個の炭素-炭素三重結合をさらに有し、計n個の炭素原子、少なくとも1個の水素原子を有するが、ヘテロ原子を有しない遊離基のことをいう。例えば、ヘテロ原子非置換C2-C10-アルキニルは2〜10個の炭素原子を有する。-C≡CH、-C≡CCH3、および-C≡CC6H5という基は、ヘテロ原子非置換アルキニル基の例である。「ヘテロ原子置換Cn-アルキニル」という用語は、結合点としてのただ1個の非芳香性炭素原子、および少なくとも1個の炭素-炭素三重結合を有し、直鎖状または分枝状の、環式または非環式構造をさらに有し、計n個の炭素原子、0個、1個または複数の水素原子、および少なくとも1個のヘテロ原子をさらに有する遊離基であって、それぞれのヘテロ原子がN、O、F、Cl、Br、I、Si、PおよびSからなる群より独立して選択される遊離基のことをいう。例えば、ヘテロ原子置換C2-C10-アルキニルは2〜10個の炭素原子を有する。-C≡CSi(CH3)3という基は、ヘテロ原子置換アルキニル基の例である。
【0044】
「ヘテロ原子非置換Cn-アリール」という用語は、炭素原子のみを含有する芳香環構造の一部である、ただ1個の炭素原子を結合点として有し、計n個の炭素原子、5個またはそれ以上の水素原子をさらに有するが、ヘテロ原子を有しない遊離基のことをいう。例えば、ヘテロ原子非置換C6-C10-アリールは、6〜10個の炭素原子を有する。ヘテロ原子非置換アリール基の例としては、フェニル、メチルフェニル、(ジメチル)フェニル、-C6H4CH2CH3、-C6H4CH2CH2CH3、-C6H4CH(CH3)2、-C6H4CH(CH2J2、-C6H3(CH3)CH2CH3、-C6H4CH=CH2、-C6H4CH=CHCH3、-C6H4C≡CH、-C6H4C≡CCH3、ナフチル、およびビフェニルから誘導される遊離基が挙げられる。「ヘテロ原子非置換アリール」という用語には、炭素環式アリール基、ビアリール基、および多環式縮合炭化水素(PAH)から誘導される遊離基が包含される。「ヘテロ原子置換Cn-アリール」という用語は、ただ1個の芳香性炭素原子か、ただ1個の芳香性ヘテロ原子かのどちらかを結合点として有し、計n個の炭素原子、少なくとも1個の水素原子、および少なくとも1個のヘテロ原子をさらに有する遊離基であって、さらに、それぞれのヘテロ原子がN、O、F、Cl、Br、I、Si、PおよびSからなる群より独立して選択される遊離基のことをいう。例えば、ヘテロ原子非置換C1-C10-アリールは、1〜10個の炭素原子を有する。「ヘテロ原子置換アリール」という用語には、ヘテロアリール基が包含される。該用語には、ピロール、フラン、チオフェン、イミダゾール、オキサゾール、イソオキサゾール、チアゾール、イソチアゾール、トリアゾール、ピラゾール、ピリジン、ピラジン、ピリダジン、およびピリミジン等の化合物から誘導されるこれらの基も包含される。ヘテロ原子置換アリール基のさらなる例としては、以下の基が挙げられる:-C6H4F、-C6H4Cl、-C6H4Br、-C6H4I、-C6H4OH、-C6H4OCH3、-C6H4OCH2CH3、-C6H4OCOCH3、-C6H4OC6H5、-C6H4NH2、-C6H4NHCH3, -C6H4NHCH2CH3、-C6H4CH2Cl、-C6H4CH2Br、-C6H4CH2OH、-C6H4CH2OCOCH3、-C6H4CH2NH2、-C6H4N(CH3)2、-C6H4CH2CH2Cl、-C6H4CH2CH2OH、-C6H4CH2CH2OCOCH3、-C6H4CH2CH2NH2、-C6H4CH2CH=CH2、-C6H4CF3、-C6H4CN、-C6H4C≡CSi(CH3)3、-C6H4COH、-C6H4COCH3、-C6H4COCH2CH3、-C6H4COCH2CF3、-C6H4COC6H5、-C6H4CO2H、-C6H4CO2CH3、-C6H4CONH2、-C6H4CONHCH3、-C6H4CON(CH3)2、フラニル、チエニル、ピリジル、ピロリル、ピリミジル、ピラジニル、イミダゾイル、キノリル、およびインドリル。
【0045】
「ヘテロ原子非置換Cn-アラルキル」という用語は、ただ1個の飽和炭素原子を結合点として有し、炭素原子のうちの少なくとも6個が、炭素原子のみを含有する芳香環構造を形成する、計n個の炭素原子、7個またはそれ以上の水素原子をさらに有するが、ヘテロ原子を有しない遊離基のことをいう。例えば、ヘテロ原子非置換C7-C10-アラルキルは、7〜10個の炭素原子を有する。ヘテロ原子非置換アラルキルの例としては、フェニルメチル(ベンジル)、およびフェニルエチルが挙げられる。「ヘテロ原子置換Cn-アラルキル」という用語は、結合点としてただ1個の飽和炭素原子を有し、計n個の炭素原子、0個、1個または複数の水素原子、および少なくとも1個のヘテロ原子をさらに有する遊離基であって、該炭素原子のうちの少なくとも1個が芳香環構造に組み込まれており、さらに、それぞれのヘテロ原子がN、O、F、Cl、Br、I、Si、PおよびSからなる群より独立して選択される、遊離基のことをいう。例えば、ヘテロ原子置換C2-C10-アラルキルは、2〜10個の炭素原子を有する。
【0046】
「ヘテロ原子非置換Cn-アシル」という用語は、カルボニル基のただ1個の炭素原子を結合点として有し、直鎖状または分枝状の、環式または非環式構造をさらに有し、計n個の炭素原子、1個または複数の水素原子、計1個の酸素原子をさらに有するが、さらなるヘテロ原子を有しない遊離基のことをいう。例えば、ヘテロ原子非置換C1-C10-アシルは、1〜10個の炭素原子を有する。-COH、-COCH3、-COCH2CH3、-COCH2CH2CH3、-COCH(CH3)2、-COCH(CH2)2、-COC6H5、-COC6H4CH3、-COC6H4CH2CH3、-COC6H4CH2CH2CH3、-COC6H4CH(CH3)2、-COC6H4CH(CH2)2、および-COC6H3(CH3)2という基は、ヘテロ原子非置換アシル基の例である。「ヘテロ原子置換Cn-アシル」という用語は、ただ1個の炭素原子、すなわちカルボニル基の一部分である炭素原子を結合点として有し、直鎖状または分枝状の、環式または非環式構造をさらに有し、計n個の炭素原子、0個、1個または複数の水素原子、カルボニル基の酸素に加えて少なくとも1個のさらなるヘテロ原子をさらに有する遊離基であって、それぞれのさらなるヘテロ原子がN、O、F、Cl、Br、I、Si、PおよびSからなる群より独立して選択される、遊離基のことをいう。例えば、ヘテロ原子置換C1-C10-アシルは、1〜10個の炭素原子を有する。ヘテロ原子置換アシルという用語には、カルバモイル基、チオカルボン酸エステル基、およびチオカルボン酸基が包含される。-COCH2CF3、-CO2H、-CO2CH3、-CO2CH2CH3、-CO2CH2CH2CH3、-CO2CH(CH3)2、-CO2CH(CH2)2、-CONH2、-CONHCH3、-CONHCH2CH3、-CONHCH2CH2CH3、-CONHCH(CH3)2、-CONHCH(CH2)2、-CON(CH3)2、-CON(CH2CH3)CH3、-CON(CH2CH3)2、および-CONHCH2CF3という基は、ヘテロ原子置換アシル基の例である。
【0047】
「ヘテロ原子非置換Cn-アルコキシ」という用語は、構造-ORを有する基のことをいい、ここで、Rは、その用語が前記で定義されるヘテロ原子非置換Cn-アルキルである。ヘテロ原子非置換アルコキシ基としては、-OCH3、-OCH2CH3、-OCH2CH2CH3、-OCH(CH3)2、および-OCH(CH2)2が挙げられる。「ヘテロ原子置換Cn-アルコキシ」という用語は、構造-ORを有する基のことをいい、ここで、Rは、その用語が前記で定義されるヘテロ原子置換Cn-アルキルである。例えば、-OCH2CF3は、ヘテロ原子置換アルコキシ基である。
【0048】
「ヘテロ原子非置換Cn-アルケニルオキシ」という用語は、構造-ORを有する基のことをいい、ここで、Rは、その用語が前記で定義されるヘテロ原子非置換Cn-アルケニルである。「ヘテロ原子置換Cn-アルケニルオキシ」という用語は、構造-ORを有する基のことをいい、ここで、Rは、その用語が前記で定義されるヘテロ原子置換Cn-アルケニルである。
【0049】
「ヘテロ原子非置換Cn-アルキニルオキシ」という用語は、構造-ORを有する基のことをいい、ここで、Rは、その用語が前記で定義されるヘテロ原子非置換Cn-アルキニルである。「ヘテロ原子置換Cn-アルキニルオキシ」という用語は、構造-ORを有する基のことをいい、ここで、Rは、その用語が前記で定義されるヘテロ原子置換Cn-アルキニルである。
【0050】
「ヘテロ原子非置換Cn-アリールオキシ」という用語は、構造-OArを有する基のことをいい、ここで、Arは、その用語が前記で定義されるヘテロ原子非置換Cn-アリールである。ヘテロ原子非置換アリールオキシの例は、-OC6H5である。「ヘテロ原子置換Cn-アリールオキシ」という用語は、構造-OArを有する基のことをいい、ここで、Arは、その用語が前記で定義されるヘテロ原子置換Cn-アリールである。
【0051】
「ヘテロ原子非置換Cn-アラルキルオキシ」という用語は、構造-ORArを有する基のことをいい、ここで、RArは、その用語が前記で定義されるヘテロ原子非置換Cn-アラルキルである。「ヘテロ原子置換Cn-アラルキルオキシ」という用語は、構造-ORArを有する基のことをいい、ここで、RArは、その用語が前記で定義されるヘテロ原子置換Cn-アラルキルである。
【0052】
「ヘテロ原子非置換Cn-アシルオキシ」という用語は、構造-OAcを有する基のことをいい、ここで、Acは、その用語が前記で定義されるヘテロ原子非置換Cn-アシルである。ヘテロ原子非置換アシル基には、アルキルカルボニルオキシ基、およびアリールカルボニルオキシ基が包含される。例えば、-OCOCH3は、ヘテロ原子非置換アシル基の例である。「ヘテロ原子置換Cn-アシルオキシ」という用語は、構造-OAcを有する基のことをいい、ここで、Acは、その用語が前記で定義されるヘテロ原子置換Cn-アシルである。ヘテロ原子置換アシル基には、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基、カルボキシラート基、アルキルカルボニル基、アルコキシカルボニル基、アミノカルボニル基、およびアルキルチオカルボニル基が包含される。
【0053】
「ヘテロ原子非置換Cn-アルキルアミノ」という用語は、ただ1個の窒素原子を結合点として有し、該窒素原子に結合する1個または2個の飽和炭素原子をさらに有し、直鎖状または分枝状の、環式または非環式構造をさらに有し、これらの全てが非芳香性である計n個の炭素原子、4個またはそれ以上の水素原子、計1個の窒素原子を含有するが、さらなるヘテロ原子は含有しない遊離基のことをいう。例えば、ヘテロ原子非置換C1-C10-アルキルアミノは、1〜10個の炭素原子を有する。「ヘテロ原子非置換Cn-アルキルアミノ」という用語には、構造-NHRを有する基が包含され、ここで、Rは、その用語が前記で定義されるヘテロ原子非置換Cn-アルキルである。ヘテロ原子非置換アルキルアミノ基としては、-NHCH3、-NHCH2CH3、-NHCH2CH2CH3, -NHCH(CH3)2、-NHCH(CH2)2、-NHCH2CH2CH2CH3、-NHCH(CH3)CH2CH3、-NHCH2CH(CH3)2、-NHC(CH3)3、-N(CH3)2、-N(CH3)CH2CH3、-N(CH2CH3)2、N-ピロリジニル、およびN-ピペリジニルが挙げられると考えられる。「ヘテロ原子置換Cn-アルキルアミノ」という用語は、ただ1個の窒素原子を結合点として有し、該窒素原子に結合する1個または2個の飽和炭素原子をさらに有するが、炭素-炭素二重結合または三重結合を有さず、直鎖状または分枝状の、環式または非環式構造をさらに有し、これらの全てが非芳香性である計n個の炭素原子、0個、1個もしくは複数の水素原子、および少なくとも1個のさらなるヘテロ原子、すなわち、結合点にある窒素原子に加えてヘテロ原子をさらに有する遊離基であって、それぞれのさらなるヘテロ原子がN、O、F、Cl、Br、I、Si、PおよびSからなる群より独立して選択される、遊離基のことをいう。例えば、ヘテロ原子置換C1-C10-アルキルアミノは、1〜10個の炭素原子を有する。「ヘテロ原子置換Cn-アルキルアミノ」という用語には、構造-NHRを有する基が包含され、ここで、Rは、その用語が前記で定義されるヘテロ原子置換Cn-アルキルである。
【0054】
「ヘテロ原子非置換Cn-アルケニルアミノ」という用語は、ただ1個の窒素原子を結合点として有し、該窒素原子に結合する1個または2個の炭素原子をさらに有し、直鎖状または分枝状の、環式または非環式構造をさらに有し、少なくとも1個の非芳香性炭素-炭素二重結合、計n個の炭素原子、4個またはそれ以上の水素原子、計1個の窒素原子を含有するが、さらなるヘテロ原子は含有しない遊離基のことをいう。例えば、ヘテロ原子非置換C2-C10-アルケニルアミノは、2〜10個の炭素原子を有する。「ヘテロ原子非置換Cn-アルケニルアミノ」という用語には、構造-NHRを有する基が包含され、ここで、Rは、その用語が前記で定義されるヘテロ原子非置換Cn-アルケニルである。ヘテロ原子非置換Cn-アルケニルアミノ基の例には、ジアルケニルアミノ基、およびアルキル(アルケニル)アミノ基も包含される。「ヘテロ原子置換Cn-アルケニルアミノ」という用語は、結合点としてのただ1個の窒素原子、および少なくとも1個の非芳香性炭素-炭素二重結合を有するが、炭素-炭素三重結合は有さず、該窒素原子に結合する1個または2個の炭素原子をさらに有し、直鎖状または分枝状の、環式または非環式構造をさらに有し、計n個の炭素原子、0個、1個もしくは複数の水素原子、および少なくとも1個のさらなるヘテロ原子、すなわち、結合点にある窒素原子に加えてヘテロ原子をさらに有する遊離基であって、それぞれのさらなるヘテロ原子がN、O、F、Cl、Br、I、Si、PおよびSからなる群より独立して選択される、遊離基のことをいう。例えば、ヘテロ原子置換C2-C10-アルケニルアミノは、2〜10個の炭素原子を有する。「ヘテロ原子置換Cn-アルケニルアミノ」という用語には、構造-NHRを有する基が包含され、ここで、Rは、その用語が前記で定義されるヘテロ原子置換Cn-アルケニルである。
【0055】
「ヘテロ原子非置換Cn-アルキニルアミノ」という用語は、ただ1個の窒素原子を結合点として有し、該窒素原子に結合する1個または2個の炭素原子をさらに有し、直鎖状または分枝状の、環式または非環式構造をさらに有し、少なくとも1個の炭素-炭素三重結合、計n個の炭素原子、少なくとも1個の水素原子、計1個の窒素原子を含有するが、さらなるヘテロ原子は含有しない、遊離基のことをいう。例えば、ヘテロ原子非置換C2-C10-アルキニルアミノは、2〜10個の炭素原子を有する。「ヘテロ原子非置換Cn-アルキニルアミノ」という用語には、構造-NHRを有する基が包含され、ここで、Rは、その用語が前記で定義されるヘテロ原子非置換Cn-アルキニルである。アルキニルアミノ基には、ジアルキニルアミノ基、およびアルキル(アルキニル)アミノ基が包含される。「ヘテロ原子置換Cn-アルキニルアミノ」という用語は、結合点としてのただ1個の窒素原子を有し、該窒素原子に結合する1個または2個の炭素原子をさらに有し、少なくとも1個の非芳香性炭素-炭素三重結合をさらに有し、直鎖状または分枝状の、環式または非環式構造をさらに有し、かつ計n個の炭素原子、0個、1個もしくは複数の水素原子、および少なくとも1個のさらなるヘテロ原子、すなわち、結合点にある窒素原子に加えてヘテロ原子をさらに有する遊離基であって、それぞれのさらなるヘテロ原子がN、O、F、Cl、Br、I、Si、PおよびSからなる群より独立して選択される、遊離基のことをいう。例えば、ヘテロ原子置換C2-C10-アルキニルアミノは、2〜10個の炭素原子を有する。「ヘテロ原子置換Cn-アルキニルアミノ」という用語には、構造-NHRを有する基が包含され、ここで、Rは、その用語が前記で定義されるヘテロ原子置換Cn-アルキニルである。
【0056】
「ヘテロ原子非置換Cn-アリールアミノ」という用語は、ただ1個の窒素原子を結合点として有し、該窒素原子に結合する少なくとも1個の芳香環構造をさらに有し、該芳香環構造が炭素原子のみを含有し、計n個の炭素原子、6個またはそれ以上の水素原子、計1個の窒素原子をさらに含有するが、さらなるヘテロ原子は含有しない遊離基のことをいう。例えば、ヘテロ原子非置換C6-C10-アリールアミノは、6〜10個の炭素原子を有する。「ヘテロ原子非置換Cn-アリールアミノ」という用語には、構造-NHRを有する基が包含され、ここで、Rは、その用語が前記で定義されるヘテロ原子非置換Cn-アリールである。ヘテロ原子非置換アリールアミノ基には、ジアリールアミノ基、およびアルキル(アリール)アミノ基が包含される。「ヘテロ原子置換Cn-アリールアミノ」という用語は、ただ1個の窒素原子を結合点として有し、計n個の炭素原子、少なくとも1個の水素原子、少なくとも1個のさらなるヘテロ原子、すなわち、結合点にある窒素原子に加えてヘテロ原子をさらに有する遊離基であって、該炭素原子のうちの少なくとも1個が1個または複数の芳香環構造に組み込まれており、さらに、それぞれのさらなるヘテロ原子がN、O、F、Cl、Br、I、Si、PおよびSからなる群より独立して選択される、遊離基のことをいう。例えば、ヘテロ原子置換C6-C10-アリールアミノは、6〜10個の炭素原子を有する。「ヘテロ原子置換Cn-アリールアミノ」という用語には、構造-NHRを有する基が包含され、ここで、Rは、その用語が前記で定義されるヘテロ原子置換Cn-アリールである。ヘテロ原子置換アリールアミノ基には、ヘテロアリールアミノ基が包含される。
【0057】
「ヘテロ原子非置換Cn-アラルキルアミノ」という用語は、ただ1個の窒素原子を結合点として有し、該窒素原子に結合する1個または2個の飽和炭素原子をさらに有し、炭素原子のうちの少なくとも6個が、炭素原子のみを含有する芳香環構造を形成する、計n個の炭素原子、8個またはそれ以上の水素原子、計1個の窒素原子をさらに有するが、ヘテロ原子を有しない遊離基のことをいう。例えば、ヘテロ原子非置換C7-C10-アラルキルアミノは、7〜10個の炭素原子を有する。「ヘテロ原子非置換Cn-アラルキルアミノ」という用語には、構造-NHRを有する基が包含され、ここで、Rは、その用語が前記で定義されるヘテロ原子非置換Cn-アラルキルである。アラルキルアミノ基には、ジアラルキルアミノ基が包含される。「ヘテロ原子置換Cn-アラルキルアミノ」という用語は、ただ1個の窒素原子を結合点として有し、該窒素原子に結合する少なくとも1個または2個の飽和炭素原子をさらに有し、計n個の炭素原子、0個、1個もしくは複数の水素原子、少なくとも1個のさらなるヘテロ原子、すなわち、結合点にある窒素原子に加えてヘテロ原子をさらに有する遊離基であって、該炭素原子のうちの少なくとも1個が芳香環に組み込まれており、さらに、それぞれのさらなるヘテロ原子がN、O、F、Cl、Br、I、Si、PおよびSからなる群より独立して選択される、遊離基のことをいう。例えば、ヘテロ原子置換C7-C10-アラルキルアミノは、7〜10個の炭素原子を有する。「ヘテロ原子置換Cn-アラルキルアミノ」という用語には、構造-NHRを有する基が包含され、ここで、Rは、その用語が前記で定義されるヘテロ原子置換Cn-アラルキルである。「ヘテロ原子置換アラルキルアミノ」という用語には、「ヘテロアラルキルアミノ」という用語が包含される。
【0058】
アミドという用語には、N-アルキル-アミド基、N-アリール-アミド基、N-アラルキル-アミド基、アシルアミノ基、アルキルカルボニルアミノ基、アリールカルボニルアミノ基、およびウレイド基が包含される。-NHCOCH3という基は、ヘテロ原子非置換アミド基の例である。「ヘテロ原子非置換Cn-アミド」という用語は、ただ1個の窒素原子を結合点として有し、その炭素原子を介して該窒素原子に結合するカルボニル基をさらに有し、直鎖状または分枝状の、環式または非環式構造をさらに有し、計n個の炭素原子、1個または複数の水素原子、計1個の酸素原子、計1個の窒素原子をさらに有するが、さらなるヘテロ原子を有しない、遊離基のことをいう。例えば、ヘテロ原子非置換C1-C10-アミドは、1〜10個の炭素原子を有する。「ヘテロ原子非置換Cn-アミド」という用語には、構造-NHRを有する基が包含され、ここで、Rは、その用語が前記で定義されるヘテロ原子非置換Cn-アシルである。「ヘテロ原子置換Cn-アミド」という用語は、ただ1個の窒素原子を結合点として有し、その炭素原子を介して該窒素原子に結合するカルボニル基をさらに有し、直鎖状または分枝状の、環式または非環式構造をさらに有し、計n個の芳香性または非芳香性の炭素原子、0個、1個または複数の水素原子、カルボニル基の酸素および結合点の窒素原子に加えて少なくとも1個のさらなるヘテロ原子さらに有し、それぞれのさらなるヘテロ原子がN、O、F、Cl、Br、I、Si、PおよびSからなる群より独立して選択される、遊離基のことをいう。例えば、ヘテロ原子置換C1-C10-アミドは、1〜10個の炭素原子を有する。「ヘテロ原子置換Cn-アミド」という用語には、構造-NHRを有する基が包含され、ここで、Rは、その用語が前記で定義されるヘテロ原子非置換Cn-アシルである。-NHCO2CH3という基は、ヘテロ原子置換アミド基の例である。
【0059】
さらに、本発明の化合物を構成する原子は、このような原子の全ての同位体形態を包含することが意図される。本明細書で用いられる同位体としては、同じ原子番号を有するが、質量数が異なる原子が挙げられる。一般的な例示であり、限定されないが、水素の同位体としては、トリチウムおよび重水素が挙げられ、炭素の同位体としては、13Cおよび14Cが挙げられる。同様に、本発明の化合物の1個または複数の炭素原子は、ケイ素原子で置き換えられ得ることが意図される。同様に、本発明の化合物の1個または複数の酸素原子は、硫黄原子またはセレン原子で置き換えられ得ることが意図される。
【0060】
本願で示される構造の原子上の、任意の未定義原子価は、該原子に結合した水素原子を暗黙的に表す。
【0061】
特許請求の範囲および/または明細書において、「含む(comprising)」という用語とともに用いられる場合、「1つの(a)」または「1つの(an)」という単語の使用は「1つの(one)」を意味し得るが、「1つまたは複数の(one or more)」、「少なくとも1つの」、および「1つまたは複数の(one or more than one)」の意味とも一致する。
【0062】
本願全体を通して、「約」という用語は、値には、装置に関する誤差の固有のばらつき、値を決定するために使用している方法、または試験対象間に存在するばらつきが包含されることを指し示すために用いられる。
【0063】
「含む(comprise)」、「有する(have)」および「包含するinclude)」という用語は、非限定的連結動詞である。例えば、「含む(comprises)」、「含む(comprising)」、「有する(has)」、「有する(having)」、「包含する(includes)」および「包含する(including)」等のこれらの動詞のうちの1つまたは複数の、任意の形または時制も、非限定的である。例えば、1つまたは複数の工程を「含む(comprises)」、「有する(has)」または「包含する(includes)」任意の方法は、それら1つまたは複数の工程のみを持つことに限定されず、他の記載されていない工程も範囲に含む。
【0064】
特許請求の範囲および/または明細書において用いられる、「有効(effective)」という用語は、所望、期待または意図された結果を達成するのに適していることを意味する。
【0065】
「水和物」という用語は、化合物を修飾するものとして用いられる場合、化合物が、例えば化合物の固体形態等にある各化合物分子に会合した、1個よりも少ない水分子(例えば、半水和物)、1個の水分子(例えば、1水和物)、または1個よりも多い水分子(例えば、2水和物)を有することを意味する。
【0066】
本明細書で用いられる「IC50」という用語は、得られた最大反応の50%である阻害用量のことをいう。
【0067】
第一の化合物の「異性体」は、各分子が、第一の化合物と同じ構成要素の原子を含有するが、三次元におけるそれらの原子の立体配置が異なる場合である、異なる化合物である。
【0068】
本明細書で用いられる「患者」または「対象」という用語は、例えばヒト、サル、雌ウシ、ヒツジ、ヤギ、イヌ、ネコ、マウス、ラット、モルモット、またはそれらのトランスジェニック種等の、生きている哺乳類有機体(living mammalian organism)のことをいう。ある特定の態様において、患者または対象は霊長類である。ヒト対象の限定されない例は、成人、若年(juvenile)、乳児、および胎児である。
【0069】
「薬学的に許容される」とは、一般に安全で、無毒であり、かつ生物学的にも他の点にも望ましくないものではない薬学的組成物を調製するのに有用であることを意味し、かつ人間への医薬用途だけでなく獣医学用途に許容されることを包含する。
【0070】
「薬学的に許容される塩」とは、前記で定義されるように薬学的に許容され、かつ所望の薬理活性を持っている、本発明の化合物の塩を意味する。このような塩としては、例えば塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、およびリン酸等の無機酸;または例えば1,2-エタンジスルホン酸、2-ヒドロキシエタンスルホン酸、2-ナフタレンスルホン酸、3-フェニルプロピオン酸、4,4'-メチレンビス(3-ヒドロキシ-2-エン-1-カルボン酸)、4-メチルビシクロ[2.2.2]オクタ-2-エン-1-カルボン酸、酢酸、脂肪族モノおよびジカルボン酸、脂肪族硫酸(aliphatic sulfuric acid)、芳香族硫酸(aromatic sulfuric acid)、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、カンファースルホン酸、炭酸、ケイ皮酸、クエン酸、シクロペンタンプロピオン酸、エタンスルホン酸、フマル酸、グルコヘプトン酸、グルコン酸、グルタミン酸、グリコール酸、ヘプタン酸、ヘキサン酸、ヒドロキシナフトエ酸、乳酸、ラウリル硫酸、マレイン酸、リンゴ酸、マロン酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、ムコン酸、o-(4-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸、シュウ酸、p-クロロベンゼンスルホン酸、フェニル置換アルカン酸、プロピオン酸、p-トルエンスルホン酸、ピルビン酸、サリチル酸、ステアリン酸、コハク酸、酒石酸、第三ブチル酢酸、およびトリメチル酢酸等の有機酸と形成される酸付加塩が挙げられる。薬学的に許容される塩としては、存在する酸性プロトンが無機塩基または有機塩基と反応することができる場合に形成され得る塩基付加塩も挙げられる。許容される無機塩基としては、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アルミニウム、および水酸化カルシウムが挙げられる。許容される有機塩基としては、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トロメタミン、およびN-メチルグルカミン等が挙げられる。本発明の任意の塩の一部を形成している特定の陰イオンまたは陽イオンは、全体として塩が薬理学的に許容される限り、重大ではないことを認識するべきである。薬学的に許容される塩、ならびにそれらの調製および使用の方法さらなる例は、Handbook of Pharmaceutical Salts: Properties, and Use(P. H. Stahl & C. G. Wermuth eds., Verlag Helvetica Chimica Acta, 2002)に提示されている。
【0071】
本明細書で用いられる「大部分が1種の鏡像体」とは、化合物が、1種の鏡像体を少なくとも約85%、またはより好ましくは1種の鏡像体を少なくとも約90%、またはさらにより好ましくは1種の鏡像体を少なくとも約95%、または最も好ましくは1種の鏡像体を少なくとも約99%含有することを意味する。同様に、「実質的に他の光学異性体を含まない」という文言は、組成物が、もう一方の鏡像体またはジアステレオマーを多くとも約15%、より好ましくはもう一方の鏡像体またはジアステレオマーを多くとも約10%、さらにより好ましくはもう一方の鏡像体またはジアステレオマーを多くとも約5%、最も好ましくはもう一方の鏡像体またはジアステレオマーを多くとも約1%含有することを意味する。
【0072】
「予防」または「予防する」とは、(1) 疾患の危険性があるかもしれない、および/または疾患にかかりやすいかもしれないが、該疾患の病状または総体的症状のいずれかまたは全てを、まだ経験していないか、または見せていない、対象または患者における疾患の発現を抑制すること、ならびに/あるいは (2) 疾患の危険性があるかもしれない、および/または疾患にかかりやすいかもしれないが、該疾患の病状または総体的症状のいずれかまたは全てを、まだ経験していないか、または見せていない、対象または患者における疾患の病状または総体的症状の発現を遅くすることを包含する。
【0073】
「飽和」という用語は、原子のことをいう場合には、単結合によってのみ、原子が他の原子とつながっていることを意味する。
【0074】
「立体異性体」または「光学異性体」は、同じ原子が同じ他の原子に結合しているが、三次元におけるこれらの原子の立体配置が異なる場合である、ある特定の化合物の異性体である。「鏡像体」は、左手と右手のように互いに鏡像である、ある特定の化合物の立体異性体である。「ジアステレオマー」は、鏡像体ではない、ある特定の化合物の立体異性体である。
【0075】
「治療的有効量」または「薬学的有効量」とは、疾患の治療のために対象または患者に投与される場合に、疾患のこのような治療を果たすのに十分である量を意味する。
【0076】
「治療」または「治療する」とは、(1) 疾患の病状または総体的症状を経験または見せている、対象または患者における疾患を抑制すること(例えば、病状および/または総体的症状のさらなる発症を阻止すること)、(2) 疾患の病状または総体的症状を経験または見せている、対象または患者における疾患を寛解させること(例えば、病状および/または総体的症状を好転させること)、ならびに/あるいは (3) 疾患の病状または総体的症状を経験または見せている、対象または患者における疾患における、任意の無視できないほどの軽減を果たすことを包含する。
【0077】
本明細書で用いられる「水溶性」という用語は、化合物が、少なくとも0.010 モル/リットルの程度まで水に溶解するか、文献の先例(literature precedence)に従って、可溶であると分類されていることを意味する。
【0078】
本明細書で用いられる他の略号は以下の通りである:DMSO、ジメチルスルホキシド;NO、一酸化窒素;iNOS、誘導型一酸化窒素合成酵素、COX-2、シクロオキシゲナーゼ-2;NGF、神経成長因子;IBMX、イソブチルメチルキサンチン;FBS、ウシ胎児血清;GPDH、グリセロール3-リン酸脱水素酵素;RXR、レチノイドX受容体;TGF-β、形質転換成長因子-β;IFNγまたはIFN-γ、インターフェロン-γ;LPS、細菌内毒素リポ多糖類;TNFαまたはTNF-α、腫瘍壊死因子-α;IL-1β、インターロイキン-1β;GAPDH、グリセルアルデヒド-3-リン酸脱水素酵素;MTBE、メチル-tert-ブチルエーテル;MTT、臭化3-[4,5-ジメチルチアゾール-2-イル]-2,5-ジフェニルテトラゾリウム;TCA、トリクロロ酢酸;HO-1、誘導性ヘムオキシゲナーゼ。
【0079】
前記定義は、参照により本明細書に組み入れられる、いずれかの参考文献における任意の矛盾する定義に優先する。
【0080】
III. 合成テルペノイド
スクアレンの環化により植物中で生合成されるトリテルペノイドは、多くのアジア諸国で医薬用途に用いられ、ウルソール酸およびオレアノール酸のようにそのいくつかは、抗炎症性および抗発がん性があることが公知である(Huangら, 1994;Nishinoら, 1988)。しかしながら、これら天然に存在する分子の生物活性は比較的弱く、そのため、それらの効力を増強するための新しい類似体の合成が行われた(Hondaら, 1997;Hondaら, 1998)。その後の研究で、天然に存在するトリテルペノイドと比較して改善された活性を有する、多数の合成化合物が同定されている。
【0081】
オレアノール酸類似体およびウルソール酸類似体の、抗炎症活性および抗増殖活性の改善のための継続的な努力が、2-シアノ-3,12-ジオキソオレアン-1,9(11)-ジエン-28-酸(CDDO、RTA 402)および関連化合物(例えば、CDDO-Me、TP-225、CDDO-Im)の発見につながった(Hondaら, 1997, 1998, 1999, 2000a, 2000b, 2002;Suhら, 1998;1999;2003;Placeら, 2003;Libyら, 2005)。Keap1-Nrf2-抗酸化応答配列(antioxidant response element)(ARE)シグナル伝達を介して細胞保護遺伝子を誘導する場合、15種のトリテルペノイドの最近の構造活性評価は、A環とC環の両方にあるMichael受容体基、A環のC-2にあるニトリル基の重要性、およびC-17にある置換基がインビボでの薬力学作用に影響を及ぼしたことを指摘した(Yatesら, 2007)。

【0082】
概して、CDDOは、様々な状況で有用性を示してきた薬剤の系統群における、多数の化合物の基本型である。例えば、CDDO-MeおよびCDDO-Imは、数種類の細胞における形質転換成長因子-β(TGF-β)/Smadシグナル伝達を調節する能力を持つことが報告されている(Suhら, 2003;Minnsら, 2004;Mixら, 2004)。両方とも、ヘムオキシゲナーゼ-1およびNrf2/AREシグナル伝達の強力な誘導物質であることが公知であり(Libyら, 2005)、オレアノール酸の一連の合成トリテルペノイド(TP)類似体は、第2相反応の強力な誘導物質、すなわち酸化ストレスおよび求電子性ストレスに対する細胞の主要な保護物質であるNAD(P)H-キノン酸化還元酵素およびヘムオキシゲナーゼ1(HO-1)の上昇の強力な誘導物質であることも示されている(Dinkova-Kostovaら, 2005)。これまでに同定された第2相誘導物質のように、TP類似体は、抗酸化応答配列-Nrf2-Keap1シグナル伝達経路を用いることが示された。
【0083】
本発明の方法で使用するための化合物のうちの1つである、RTA 402(バルドキソロンメチル)は、炎症組織における酸化還元ホメオスタシスの回復により免疫介在性の炎症を抑制する、炎症およびがん関連の適用に関して臨床開発中のAntioxidant Inflammation Modulator(アンチオキシダント・インフラメーション・モジュレータ)(AIM)である。それは、細胞保護の転写因子Nrf2を誘導し、酸化促進性および炎症誘発性の転写因子NF-κBおよびSTAT3の活性を抑える。インビボで、RTA 402は、例えば、シスプラチンモデルでの腎障害、および虚血-再かん流モデルでの急性腎傷害(acute renal injury)等の数種の炎症動物モデルでの単剤の有意な抗炎症活性を実証した。さらに、有意な血清クレアチニンの減少が、RTA 402で処置した患者で認められた。
【0084】
本発明の一局面において、本発明の化合物は、腎障害、または1つまたは複数の組織における酸化ストレスレベルの上昇により引き起こされる状態を有する対象を治療するために用いられ得る。酸化ストレスは、急性炎症か慢性炎症かのどちらかを付随し得る。酸化ストレスは、例えば電離放射線もしくは細胞毒性の化学療法剤(例えば、ドキソルビシン)等の外部作用物質への急性暴露により、外傷もしくは他の急性組織傷害により、虚血/再かん流傷害により、血行不良もしくは貧血により、局所性もしくは全身性の低酸素症もしくは高酸素症により、または例えば高血糖もしくは低血糖等の他の正常でない生理学的状態により、引き起こされ得る。
【0085】
従って、酸化ストレス単独で関与するか、または炎症により悪化した酸化ストレスに関与する病状において、治療は、例えば前記で、または本明細書全体を通して記載されるような、本発明の化合物の治療的有効量を患者に投与する段階を含んでもよい。治療では、酸化ストレスが予想される状態(例えば、臓器移植またはがん患者への療法の適用)に先立って、予防的に投与してもよいし、あるいは、既存の酸化ストレスおよび炎症に関与する状況において、治療的に投与してもよい。
【0086】
CDDOのより新しい誘導体は、例えば血液脳関門を通過するそれらの能力に関して期待がもてる薬剤であることも、今では判明している。Hondaら(2002)で報告されているCDDOのメチルアミド(CDDO-MA)に加えて、本発明は、例えばエチルアミド(CDDO-EA)等のさらなるCDDOのアミド誘導体、ならびに、例えばCDDOの2,2,2-トリフルオロエチルアミド誘導体(CDDO-TFEA)等のCDDOのフッ素化アミド誘導体の使用を提供する。
【0087】
本発明の化合物は、Hondaら(1998)、Hondaら(2000b)、Hondaら(2002)、Yatesら(2007)、ならびに米国特許第6,326,507号および同第6,974,801号で教示される方法に従って、調製することができ、これらは、参照により本明細書に組み入れられる。
【0088】
本発明の方法に従って用いられ得るトリテルペノイドの限定されない例を、ここに示す。

【0089】
本発明の方法で使用するための化合物、例えば前記表の化合物等は、構造的にRTA 402と類似しており、多くの場合、前記で述べてきたような類似の生物学的特性を呈する。さらなる例として、RAW264.7マクロファージを、DMSOまたは薬物を用いて種々の濃度(nM)で2時間前処理し、次いで20 ng/ml IFNγで24時間処理したこれらの化合物のうちの数個に関するインビトロでの結果を、表1に要約する。培地中のNO濃度は、Griess試薬システム(Griess reagent system)を用いて決定し、細胞の生存は、WST-1試薬を用いて決定した。NQO1 CDは、Hepa1c1c7マウス肝癌細胞におけるNQO1、すなわちNrf2で制御される抗酸化酵素の発現の2倍増加を誘導するために必要な濃度で表した(Dinkova-Kostovaら, 2005)。これらの結果は、全て、例えば親オレアノール酸分子よりも桁違いに活性がある。Nrf2活性化に起因する抗酸化経路の誘導が、酸化ストレスおよび炎症に対する重要な保護効果を提供するという一因で、RTA 402に関連する化合物は、本願においてRTA 402関して提示されるものと同様の重大な利点も提供し得、従って、これらの関連化合物は、例えば腎/腎臓疾患(RKD)、インスリン抵抗性、糖尿病、内皮機能不全、脂肪肝疾患、心臓血管疾患(CVD)および関連疾患等の疾患の治療および/または予防のために用いられ得る。
【0090】
(表1)IFNγ誘導NO産生の抑制

【0091】
CDDO-MAの合成は、Hondaら(2002)で論じられており、これは参照により本明細書に組み入れられる。CDDO-EAおよびCDDO-TFEAの合成は、参照により本明細書に組み入れられるYatesら(2007)で提示されており、下記スキーム1に示される。

【0092】
IV. CDDO-Meの多形形態
本発明の化合物の多形形態、例えば、CDDO-Meの形態AおよびBは、本発明の方法に従って用いられ得る。形態Bは、形態Aのバイオアベイラビリティよりも驚くほど良好なバイオアベイラビリティを示す(図15)。具体的には、サルが、2種の形態の等価用量(equivalent dosage)をゼラチンカプセルで、経口でうけた場合には、サルにおける形態Bのバイオアベイラビリティは、形態AであるCDDO-Meのバイオアベイラビリティよりも高かった(2008年8月13日に出願される米国特許出願第12/191,176号)。
【0093】
CDDO-Me(RTA 402)の「形態A」は、非溶媒和(非水和)であり、単位格子の大きさがa=14.2Å、b=14.2Åおよびc=81.6Åの空間群P43212(番号 96)をもつ特有の結晶構造により、かつ3分子が結晶軸bの下方にらせん状で充填されている充填構造により特徴付けることができる。いくつかの態様において、形態Aは、約8.8、12.9、13.4、14.2および17.4 °2θに顕著な回折ピークを含む、X線粉末回折(XRPD)パターン(CuKα)により特徴付けることもできる。いくつかのバリエーションにおいて、形態AのX線粉末回折は、図12Aまたは図12Bに実質的に示されるものである。
【0094】
形態Aとは異なって、CDDO-Meの「形態B」は単相の状態であるが、このような明確な結晶構造には欠ける。形態Bの試料は、長距離、すなわち、おおよそ20Åより長い分子相関は示さない。さらに、形態Bの試料の熱分析は、約120℃〜約130℃の範囲でガラス転移温度(Tg)を示す(図14)。一方、無秩序ナノ結晶性物質は、Tgを示さないが、代わりに、これより上で結晶構造が液体になる融点(Tm)を示す。形態Bは、形態A(図12Aまたは図12B)とは異なるXRPDスペクトル(図12C)で特徴が示される。それが明確な結晶構造を有しないため、同様に、形態Bは、形態Aの特徴を示すようなはっきりしたXRPDピークに欠け、代わりに、一般に「ハロ」XRPDパターンにより特徴付けられる。特に、そのXRPDパターンが、3個またはそれより少ない数の一次回折ハロを示すことから、非結晶性形態Bは「X線非晶形」固体に分類される。この分類内では、形態Bは「ガラス状」物質である。
【0095】
CDDO-Meの形態Aおよび形態Bは、化合物の種々の溶液から容易に調製される。例えば形態Bは、MTBE、THF、トルエンまたは酢酸エチル中での急速な蒸発またはゆっくりとした蒸発により調製することができる。形態Aは、CDDO-Meのエタノールまたはメタノール溶液の、急速な蒸発、ゆっくりとした蒸発、または徐冷による方法を包含する、いくつかの方法で調製することができる。アセトン中でのCDDO-Meの調製は、急速な蒸発を用いて形態Aを生成させるか、またはゆっくりとした蒸発を用いて形態Bを生成させることができる。
【0096】
特性付けの種々の手段を一緒に用いて、お互いから、およびCDDO-Meの他の形態から、形態Aおよび形態BのCDDO-Meを識別することができる。この目的に適した技術の例証は、固体核磁気共鳴(NMR)、X線粉末回折(図12AおよびBを図12Cと比較されたい)、X線結晶解析、示差走査熱量測定(DSC)(図13を図14と比較されたい)、動的水蒸気吸着/脱着(DVS)、カールフィッシャー分析(KF)、ホットステージ顕微鏡法、変調示差スクリーニング熱量測定(modulated differential screening calorimetry)、FT-IR、およびラマン分光法である。特に、XRPDおよびDSCのデータの分析は、CDDO-Meの形態A、形態Bおよびヘミベンゼナートを識別することができる(hemibenzenate)形態(2008年8月13日に出願された米国特許出願第12/191,176号)。
【0097】
CDDO-Meの多形形態に関するさらなる詳細は、2007年8月15日に出願された米国特許仮出願第60/955,939号、および対応する本出願である、2008年8月13日に出願された米国特許出願第12/191,176号に記載されており、これらは両方ともそれらの全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0098】
V. 慢性腎臓疾患、インスリン抵抗性/糖尿病および内皮機能不全/心臓血管疾患の治療のためのトリテルペノイドの使用
本発明の化合物および方法は、急性および慢性の適用の両方が包含される腎/腎臓疾患の種々の局面を治療するために用いられ得る。一般に、方法は、対象に本発明の化合物の薬学的有効量を投与する段階を含むと考えられる。
【0099】
炎症は、慢性腎臓疾患(CKD)の病状の重大な一因となる。酸化ストレスと腎機能不全の間には、強い機構的なつながりもある。最終的に腎臓を傷つける炎症反応をもたらす、単球/マクロファージのリクルートを担うケモカインであるMCP-1の転写をNF-κBが制御するため、NF-κBシグナル伝達経路は、CKDの進行において重要な役割を果たす(Wardle, 2001)。Keap1/Nrf2/ARE経路は、ヘムオキシゲナーゼ-1(HO-1)を包含する抗酸化酵素をコードする数種の遺伝子の転写を調節する。雌性マウスにおけるNrf2遺伝子の除去は、狼瘡様糸球体腎炎の発症を招く(Yohら, 2001;Maら, 2006)。さらに、いくつかの研究で、HO-1発現は、腎障害および炎症に反応して誘導されること、および、この酵素およびその産生物‐ビリルビンおよび一酸化炭素‐は、腎臓での保護的役割を果たすことが実証されている(Nathら, 2006)。
【0100】
糸球体および周囲のボーマン嚢は、腎臓の基本的な機能単位を構成する。糸球体濾過率(GFR)は、腎機能の標準的な尺度である。クレアチニン・クリアランスは、一般に、GFRを評価するために用いられる。しかしながら、血清クレアチニンのレベルは一般に、クレアチニン・クリアランスの代替的尺度として用いられる。例えば、過剰レベルの血清クレアチニンは、不十分な腎機能を示唆することが通常認められており、経時的な血清クレアチニンの減少は、腎機能の改善の指標として認められている。血液中の正常レベルのクレアチニンは、成人男性では1デシリットル(dl)当たり約0.6〜1.2ミリグラム(mg)であり、成人女性では1デシリットル当たり0.5〜1.1ミリグラムである。
【0101】
急性腎臓傷害(AKI)は、虚血-再かん流の後、例えばシスプラチンおよびラパマイシン等のある特定の薬理学的作用物質(pharmacological agent)での処置の後、ならびに医用画像で用いられる放射線造影剤の静脈注射の後に生じる得る。CKDの場合は、炎症および酸化ストレスが、AKIの病状の一因となる。放射線造影剤で誘導される腎症(RCN)の根底にある分子機構は、よく解明されていない。しかしながら、持続性血管収縮、腎臓の自己調節障害、および造影剤の直接毒性を包含する事象の組み合わせは、全て、腎不全の一因となる可能性がある(Tumlinら, 2006)。血管収縮は、腎血流の減少を招き、虚血-再かん流および活性酸素種の産生を引き起こす。HO-1は、これらの状態下で強く誘導され、腎臓を包含するいくつかの異なる臓器での虚血-再かん流傷害を予防することが実証されている(Nathら., 2006)。具体的に、HO-1の誘導は、RCNのラットモデルで保護性があることが示されている(Goodmanら, 2007)。再かん流は、NF-κBシグナル伝達の活性化にもかかわらず、部分的に炎症反応も誘導する(Nichols, 2004)。NF-κBを標的とすることが、臓器障害を予防するための治療方針として提案されてきた(Zingarelliら, 2003)。
【0102】
理論にとらわれずに、本発明の化合物、例えば、RTA 402の効力は、α,β-不飽和カルボニル基の付加から主として誘導される。インビトロアッセイにおいて、化合物のほとんどの活性は、ジチオトレイトール(DTT)、N-アセチルシステイン(NAC)、またはグルタチオン(GSH);α,β-不飽和カルボニル基と相互作用するチオール含有部分の導入により無効にされ得る(Wangら, 2000;Ikedaら, 2003;2004;Shishodiaら, 2006)。RTA 402が、IKKβ(下記参照)上の重大な意味を持つシステイン残基(C179)と直接相互作用し、その活性を阻害することが、生化学分析で証明されている(Shishodiaら, 2006;Ahmadら, 2006)。IKKβは、核へのNF-κB二量体の放出の原因であり、リン酸化で誘導される、IκBの分解が関与する「古典的」経路を介して、NF-κBの活性化を調節する。マクロファージにおいて、この経路は、TNFαおよび他の炎症誘発性刺激に反応する多数の炎症誘発性分子の産生を担う。
【0103】
RTA 402は、多様なレベルで、JAK/STATシグナル伝達経路も阻害する。JAKタンパク質は、例えばインターフェロンおよびインターロイキン等のリガンドによる活性化時に、膜貫通受容体(例えば、IL-6R)にリクルートされる。次いで、JAKは、STAT転写因子のリクルートを引き起こす受容体の細胞内部分をリン酸化する。STATは、次いで、JAKによりリン酸化され、二量体を形成し、核へ移行し、そこで炎症に関与する数種の遺伝子の転写を活性化する。RTA 402は、構成型かつIL-6誘導型STAT3リン酸化、および二量体形成を阻害し、STAT3(C259)中およびJAK1(C1077)のキナーゼ領域中のシステイン残基に直接結合する。生化学アッセイは、トリテルペノイドが、Keap1上の重大な意味を持つシステイン残基と直接相互作用することも証明している(Dinkova-Kostovaら, 2005)。Keap1は、正常状態下で細胞質内に隔離された転写因子Nrf2を保持するアクチン連結タンパク質(actin-tethered protein)である(KobayashiとYamamoto, 2005)。酸化ストレスは、Keap1上の制御システイン残基の酸化を招き、Nrf2の放出を引き起こす。次いで、Nrf2は核へ移行して、多くの抗酸化遺伝子および抗炎症性遺伝子の転写活性化をもたらす抗酸化応答配列(ARE)に結合する。Keap1/Nrf2/ARE経路の別の標的は、ヘムオキシゲナーゼ1(HO-1)である。HO-1は、ビリルビンおよび一酸化炭素にヘム分解され、多くの抗酸化および抗炎症の役割を果たす(MainesとGibbs, 2005)。HO-1は、RTA 402を包含するトリテルペノイドにより強力に誘導されることが最近示された(Libyら, 2005)。RTA 402および多くの構造類似体は、他の第2相タンパク質の発現の強力な誘導物質であることも示された(Yatesら, 2007)。
【0104】
RTA 402は、NF-κB活性化の強力な阻害剤である。さらに、RTA 402は、Keap1/Nrf2/ARE経路を活性化し、HO-1の発現を誘導する。下記のように、RTA 402は、AKIの2つの動物モデルでの活性を実証した。さらに、RTA 402で治療したヒト患者の大多数において、血清クレアチニンレベルの低減および糸球体濾過の改善が認められた(下記実施例を参照されたい)。糖尿病性腎症患者の第二相試験において、有意な改善が現在認められている。この知見は、腎性の炎症の抑制および糸球体濾過の改善により、RTA 402が、糖尿病性腎症患者における腎機能を改善するために用いられ得ることを示唆している。
【0105】
前記で述べたように、糖尿病および本態性高血圧は両方とも、慢性腎臓疾患の発症、および最終的には腎不全の発症に対する主要なリスク因子である。例えば高脂血症等の全身性心臓血管疾患の指標に加えて、これらの状態の両方ともが、特に患者が医学的肥満である場合に、同じ患者に存在することがよくある。統一因子は完全に分かっていないが、血管内皮の機能不全は、全身性心臓血管疾患、慢性腎臓疾患、および糖尿病における重大な病理学的因子に関係があるとされている(例えば、Zoccali, 2006を参照されたい)。血管内皮細胞における急性または慢性の酸化ストレスは、内皮機能不全の発症に関与しており、慢性炎症過程に強く関連している。それゆえ、血管内皮における酸化ストレスおよび随伴性の炎症を緩和する能力がある薬剤は、機能不全の軽減および内皮の恒常性を回復し得る。理論に縛られることなく、Nrf2で制御される内皮の抗酸化機構を刺激することにより、本発明の化合物は、これらのパラメータに関して臨床的異常値を有する患者における、腎機能に関連するパラメータ(例えば、血清クレアチニンおよび推定糸球体濾過率)、血糖コントロールおよびインスリン抵抗性(例えば、ヘモグロビンA1c)、ならびに全身性心臓血管疾患(例えば、循環血管内皮細胞)を改善する非常にまれな能力を示した。現在、通常、このような患者が血糖コントロールおよび心臓血管疾患における尺度の改善を達成するためには、高血圧を軽減し、かつ慢性腎臓疾患の進行を遅くするためのアンジオテンシン変換酵素阻害剤またはアンジオテンシンII受容体遮断薬の使用を包含する、併用療法が必要である。これらのパラメータの全てにおいて、特に腎機能の尺度において、同時に起こりかつ臨床的に意味のある改善を果たすことにより、本発明の化合物は、現在の利用可能な療法を超える有意な改善を示す。いくつかの局面において、本発明の化合物は、単独療法として、または現在用いられていると考えられるより少ない付加療法との組み合わせで、前記状態の組み合わせを治療するために用いてもよい。
【0106】
これらの知見は、RTA 402の投与を、他の状況においてのみならず放射線造影剤で誘導される腎症(RCN)の場合のように、腎臓障害から、例えば放射線造影剤への暴露等から患者を保護するために用いてもよいことも示唆している。一局面において、本発明の化合物を、虚血-再かん流および/または化学療法で誘導される急性腎傷害を治療するために用いてもよい。例えば、下記の実施例2および3で示される結果は、RTA 402が、虚血-再かん流および化学療法で誘導される急性腎傷害の動物モデルにおいて保護性があることを実証する。
【0107】
血清クレアチニンを、RTA 402で処置した数種の動物モデルで評価した。ベースラインレベルまたは対照動物におけるレベルに対する血清クレアチニンレベルの有意な低減が、カニクイザル、ビーグル犬、およびSprague-Dawleyラットで認められた(図3A〜D)。この効果は、RTA 402の両方の形態(結晶形と非晶形)を用いたラットにおいて認められた。
【0108】
RTA 402は、患者における血清クレアチニンを低減する。例えば、RTA 402を受けたがん患者において、改善が認められた。腎毒性は、ヒトにおけるシスプラチン治療の用量規制副作用(dose-limiting side effect)である。シスプラチンで誘導される近位細管への障害は、炎症の増加、酸化ストレスおよびアポトーシスにより媒介されると考えられる(Yaoら, 2007)。血清クレアチニンを、RTA 402の非盲検第二相臨床試験に登録した慢性腎臓疾患(CKD)患者でも評価した(実施例6)。本試験は、インスリン抵抗性、内皮機能不全/CVD、およびCKDの分類で、ヘモグロビンA1c(A1c)の測定、血糖コントロールに関して広く用いられている第3相評価項目を包含する、多数の評価項目を考慮して計画された。
【0109】
A1cは、グルコースが結合するヘモグロビンの微量成分である。A1cは、グリコシル化ヘモグロビンまたはグルコシル化ヘモグロビンとも称される。A1cは、高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて、血中の他のヘモグロビンA成分から、電荷と大きさにより分離され得る。A1cは、血糖濃度の短期変動よる影響、例えば、食事による影響は受けないため、食物をいつ食べたかに関係なく、A1c検査のための血液を採取できる。健康な場合、非糖尿病患者のA1cレベルは、総ヘモグロビンの7%より少ない。正常範囲は4〜5.9%である。コントロール不良の糖尿病において、そのレベルは8.0%またはそれより高い可能性がある。A1cレベルが7%近くに保たれ得る場合、糖尿病の合併症を遅延または予防できることが実証されている。
【0110】
最近承認された薬剤は、一般に、6ヶ月にわたる治療でA1cレベル0.4〜0.80の量を低減するのみであり、28日での改善は一般にもっと少ない。下記表に、2種の承認薬剤、シタグリプチンおよびプラムリンチド酢酸塩による6ヶ月ヘモグロビンA1cの低減を示す(Aschnerら, 2006;Goldsteinら, 2007;Pullmanら, 2006)。

【0111】
相対的に、標準治療に加えたRTA 402は、28日で難治性糖尿病におけるA1cを減少させる。治療は、治療意図群で0.34(n=21)の減少、および高ベースライン群(ベースラインにおいて≧7.0)で0.50(n=16)の減少を示した。これらの結果は、下記の実施例の節でより詳細に提示される。図6および7も参照されたい。
【0112】
別の局面において、本発明の化合物は、インスリン感受性および/または血糖コントロールを改善するためにも用いられ得る。例えば、実施例6で詳細に述べた試験における高インスリン正常血糖クランプ検査の結果は、RTA 402での治療が血糖コントロールを改善したということを示した。高インスリン正常血糖クランプ検査は、インスリン感受性を調査および定量化するための標準的な方法である。増加したインスリンレベルを、低血糖を引き起こすことなく相殺するために必要なグルコースの量を評価した(DeFronzoら, 1979)。
【0113】
一般的な手順は以下の通りである:末梢静脈経由で、インスリンを、1分間に1m2当たり10〜120 mUで注入する。インスリン注入を相殺するために、グルコース20%を注入して、5〜5.5 mmol/リットルの血糖レベルを維持する。グルコース注入率を、5〜10分ごとに血糖レベルを調べることにより評価する。
【0114】
通常、高用量インスリン注入が、末梢(すなわち、筋肉および脂肪)のインスリン作用を判定するのに有用であるのに対して、低用量インスリン注入は、肝臓の反応を判定するのにより有用である。
【0115】
結果は、通常、以下の通り評価される:検査の最後の30分間のグルコース注入率は、インスリン感受性を決定する。高いレベル(7.5 mg/分またはそれより高い)を必要とする場合、患者はインスリン感受性である。非常に低いレベル(4.0 mg/分またはそれより低い)は、身体がインスリンの作用に抵抗性があることを示唆している。4.0〜7.5 mg/分のレベルは、決定的ではない可能性があり、「耐糖能異常」、すなわちインスリン抵抗性の初期兆候を暗示する可能性がある。
【0116】
本発明の方法は、腎機能を改善するために用いられ得る。実施例6に示すように、RTA 402を用いた治療は、eGFRに基づく血清クレアチニン、クレアチニン・クリアランス、BUN、シスタチンC、アディポネクチン、およびアンジオテンシンIIを包含する、腎機能および状態の6種の尺度を改善することが示された。RTA 402は、用量依存的で、かつ高反応率を伴って、GFRを増加させることが示された(86%;n=22)。図9にも示すように、28日GFRの改善は、薬物を停止した後、可逆性であった。
【0117】
いくつかの態様において、本発明の治療方法は、アディポネクチンおよび/またはアンジオテンシンIIのレベルの改善をもたらす。アディポネクチンおよびアンジオテンシンIIは、通常、DN患者で上昇し、腎疾患の重症度と相関がある。アディポネクチン(Acrp30、apM1とも称される)は、グルコース制御および脂肪酸異化を包含する多数の代謝過程を調節することが公知である、ホルモンである。アディポネクチンは、脂肪組織から血流中に分泌され、多くの他のホルモンと比べて血漿に富む。成人におけるホルモンのレベルは、体脂肪率に逆相関するが、一方、乳児および小児における関連性は、より不明確である。ホルモンは、2型糖尿病、肥満、アテローム硬化および非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)の原因となり得る、代謝異常抑制の役割を果たす。アディポネクチンは、全死因死亡およびDN患者における末期腎疾患を予測するために用いることができる。
【0118】
本発明の化合物および方法は、心臓血管疾患(CVD)の種々の局面を治療するために用いられ得る。本発明の治療方法は、ヒト患者において循環血管内皮細胞(CEC)を減少させることが分かった。CECは、内皮機能不全および血管傷害の指標である。内皮機能不全は、心臓血管および末端器の障害に関連している、全身性の炎症過程である。CECの上昇は、通常、CVDの発症、CVDの進行、およびCVDによる死と相関がある。それらは、通常、慢性腎臓疾患およびGFRの低下とも相関がある。歴史的正常レベル(Historical normal level)は、≦5細胞/mLである。
【0119】
内皮機能不全の典型的特徴には、動脈および細動脈が適当な刺激に反応して十分に拡張できないことが包含される。これは、正常で健康な内皮に対して、内皮機能不全である対象における検出可能な違いをもたらす。このような違いは、アセチルコリンのイオン導入、種々の血管作用薬の動脈内投与、皮膚の局部加熱、または血圧計カフを高圧に膨張させることによる一時的動脈閉塞を包含する種々の方法により検査することができる。検査は、冠状動脈自体で行うこともできる。これらの技術は、内皮を刺激して、一酸化炭素(NO)、およびおそらく血管拡張を引き起こす周囲の血管平滑筋中に拡散するいくつかの他の作用物質を放出すると考えられている。
【0120】
例えば、第二相試験の結果(実施例6)によれば、RTA 402で28日間治療した患者は、循環血管内皮細胞の数の減少という形で、心臓血管炎症の指標における低減を示した。治療意図群(n=20)に関するCECの減少は27%であり、高ベースライン群(n=14)に関する減少は40%(p=0.02)であり、これらの患者のうちの9人は、治療後のCECに関して正常レベルを示した。これらの結果は、内皮機能不全の好転と一致している。
【0121】
本発明の治療方法は、ほとんどの患者における、マトリックス・メタロペプチダーゼ9(matrix metallopeptidase 9)(MMP-9)、可溶性接着分子および腫瘍壊死因子(TNFα)を減少させることが分かっている。これらの高いレベルは、通常、不良な心血管転帰と相関がある。
【0122】
VI. 医薬製剤および投与経路
患者への本発明の化合物の投与は、もしあるなら、薬物の毒性を考慮して、医薬品の投与に関する一般的な手順に従うと考えられる。治療周期は、必要に応じて繰り返されると予想される。
【0123】
本発明の化合物は、種々の方法、例えば、経口的に、または注射(例えば、皮下、静脈内、腹腔内等)により投与してもよい。投与経路に応じて、活性化合物を、酸の作用や化合物を不活性化し得る他の自然状態から化合物を保護する物質で被覆してもよい。それらは、疾患または創傷部の連続かん流/注入によっても投与し得る。改善された経口バイオアべイラビリティを示したCDDO-Meの高分子を基剤とした分散体を包含する、製剤の具体的な例は、2008年8月13日に出願された米国特許出願第12/191,176号で提供され、これはその全体が参照により本明細書に組み入れられる。他の製造方法を、同じ特性および有用性を備えた本発明の分散体を生産するために用いてもよいことは、当業者により認識されると考えられる(Repkaら, 2002およびこれに引用される文献)。このような代替方法としては、溶媒蒸発、例えば熱溶解押出し(hot melt extrusion)等の押出し、および他の技術が挙げられるが、これらに限定されない。
【0124】
非経口投与とは別の方法により治療用化合物を投与するためには、該化合物の不活性化を予防する物質で該化合物を被覆するか、または該化合物の不活性化を予防する物質とともに該化合物を共投与する必要があり得る。例えば、治療用化合物を、適当な担体、例えば、リポソーム、または希釈剤中のものとして、患者に投与してもよい。薬学的に許容される希釈剤としては、生理食塩水および水性緩衝溶液が挙げられる。リポソームとしては、通常のリポソームに加え、水中油中水型(water-in-oil-in-water)CGF乳剤が挙げられる(Strejanら, 1984)。
【0125】
治療用化合物は、非経口的に、腹腔内に、髄腔内に、または脳内に投与され得る。分散体は、例えば、グリセロール、液体ポリエチレングリコール、それらの混合物中で、および油中で調製してもよい。保管および使用の通常の状況下で、これらの調製物は、微生物の増殖を予防するための保存剤を含有してもよい。
【0126】
注射用途に適した薬学的組成物としては、滅菌水溶液(水溶性の場合)または滅菌分散体、および滅菌注射溶液もしくは滅菌分散体の用時調製のための滅菌散剤が挙げられる。全ての場合において、組成物は無菌でなければならず、容易に注射できる程度に流動性がなければならない。組成物は、製造および保管条件下で安定でなければならず、例えば細菌および真菌等の微生物の混入作用に対して保護されなければならない。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、および液体ポリエチレングリコール等)、それらの適した混合物、および植物油を含有する溶媒または分散媒であってもよい。その適切な流動性は、例えば、レシチン等のコーティング剤の使用により、分散体の場合には必要な粒度の維持により、および界面活性剤の使用により維持することができる。微生物の作用の阻止は、種々の抗細菌剤および抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、およびチメロサール等により達成することができる。多くの場合、組成物中に、等張剤、例えば、糖類、塩化ナトリウム、あるいは例えばマンニトールおよびソルビトール等のポリアルコールを含むことが好ましいと考えられる。注射可能な組成物の持続的吸収は、吸収を遅らせる作用物質、例えば、モノステアリン酸アルミニウムまたはゼラチンを組成物中に含むことによりもたらすことができる。
【0127】
滅菌注射溶液を、適当な溶媒中に、治療用化合物を必要量で、上記に挙げた成分の1つまたは組み合わせとともに組み入れた後、必要に応じて、ろ過滅菌することにより調製することができる。一般に、分散体は、基本的な分散媒および上記に挙げたものからの必要な他の成分を含有する滅菌担体の中に、治療用化合物を組み入れることによって調製される。滅菌注射溶液の調製用の滅菌粉末の場合、好ましい調製方法は真空乾燥および凍結乾燥で、それらの方法によってあらかじめ滅菌ろ過した溶液より、任意の付加的な所望の成分を加えた活性成分(すなわち、治療用化合物)の粉末が与えられる。
【0128】
治療用化合物は、例えば、不活性な希釈剤または同化可能な食用担体とともに経口投与することができる。また、治療用化合物および他の成分を、硬殻ゼラチンカプセルまたは軟殻ゼラチンカプセルの中に封入するか、錠剤に圧縮するか、または対象の食餌に直接的に混入してもよい。経口の治療的投与のために、治療用化合物を賦形剤とともに組み入れて、摂取可能な錠剤、バッカル錠剤、トローチ剤、カプセル剤、エリキシル剤、懸濁剤、シロップ剤、およびカシェ剤等の形態で用いてもよい。組成物および調製物中の治療用化合物の割合は、当然、変化してもよい。このような治療的に有用な組成物における治療用化合物の量は、適当な投薬量が得られるような量である。
【0129】
投与の容易さおよび投薬量の均一性のために、非経口組成物を投薬単位剤形(dosage unit form)に製剤化することが特に好都合である。本明細書で用いられる投薬単位剤形とは、処置される対象に対して単位投薬量として適した物理的に個別の単位のことをいい、各単位は、所望の治療効果をもたらすように計算されたあらかじめ定められた量の治療用化合物を、必要な薬学的担体とともに含有する。本発明の投薬単位剤形に関する仕様は、(a) 治療用化合物の独自の特性および達成されるべき特定の治療効果、および (b) 患者における選択された状態の処置のためにこのような治療用化合物を配合することの当技術分野における固有の制限により決定され、かつこれらに直接依存する。
【0130】
治療用化合物を、皮膚、眼または粘膜にも局所投与してもよい。あるいは、肺への局所送達が望ましい場合、治療用化合物を、乾燥粉末製剤またはエアロゾル製剤での吸入により投与してもよい。
【0131】
対象に投与される、本発明の化合物または本発明の化合物を含む組成物の実際の投薬量は、例えば年齢、性別、体重、状態の重症度、治療される疾患の種類、先のまたは同時の治療的介入、対象の特発症および投与の経路等の、身体的および生理的な因子により決定され得る。これらの因子は、当業者により決定され得る。投与の責任を負う従事者が、通常、組成物中の活性成分の濃度、および個々の対象に対する適当な用量を決定すると考えられる。投薬量は、いずれかの合併症が発生した場合に、個々の医師により調整され得る。
【0132】
いくつかの態様において、薬学的有効量は、化合物約0.1 mg〜約500 mgの1日用量である。いくつかのバリエーションにおいて、1日用量は、化合物約1 mg〜約300 mgである。いくつかのバリエーションにおいて、1日用量は、化合物約10 mg〜約200 mgである。いくつかのバリエーションにおいて、1日用量は、化合物約25 mgである。他のバリエーションにおいて、1日用量は、化合物約75 mgである。さらなる他のバリエーションにおいて、1日用量は、化合物約150 mgである。さらなるバリエーションにおいて、1日用量は、化合物約0.1 mg〜約30 mgである。いくつかのバリエーションにおいて、1日用量は、化合物約0.5 mg〜約20 mgである。いくつかのバリエーションにおいて、1日用量は、化合物約1 mg〜約15 mgである。いくつかのバリエーションにおいて、1日用量は、化合物約1 mg〜約10 mgである。いくつかのバリエーションにおいて、1日用量は、化合物約1 mg〜約5 mgである。
【0133】
いくつかの態様において、薬学的有効量は、体重1kg当たり化合物0.01〜25 mgの1日用量である。いくつかのバリエーションにおいて、1日用量は、体重1kg当たり化合物0.05〜20 mgである。いくつかのバリエーションにおいて、1日用量は、体重1kg当たり化合物0.1〜10 mgである。いくつかのバリエーションにおいて、1日用量は、体重1kg当たり化合物0.1〜5 mgである。いくつかのバリエーションにおいて、1日用量は、体重1kg当たり化合物0.1〜2.5 mgである。
【0134】
いくつかの態様において、薬学的有効量は、体重1kg当たり化合物0.1〜1000 mgの1日用量である。いくつかのバリエーションにおいて、1日用量は、体重1kg当たり化合物0.15〜20 mgである。いくつかのバリエーションにおいて、1日用量は、体重1kg当たり化合物0.20〜10 mgである。いくつかのバリエーションにおいて、1日用量は、体重1kg当たり化合物0.40〜3 mgである。いくつかのバリエーションにおいて、1日用量は、体重1kg当たり化合物0.50〜9 mgである。いくつかのバリエーションにおいて、1日用量は、体重1kg当たり化合物0.60〜8 mgである。いくつかのバリエーションにおいて、1日用量は、体重1kg当たり化合物0.70〜7 mgである。いくつかのバリエーションにおいて、1日用量は、体重1kg当たり化合物0.80〜6 mgである。いくつかのバリエーションにおいて、1日用量は、体重1kg当たり化合物0.90〜5 mgである。いくつかのバリエーションにおいて、1日用量は、体重1kg当たり化合物約1 mg〜約5 mgである。
【0135】
有効量は、通常、1日間または数日間の、1日に1回または複数回の投与において、約0.001 mg/kg〜約1,000 mg/kg、約0.01 mg/kg〜約750 mg/kg、約0.1 mg/kg〜約500 mg/kg、約0.2 mg/kg〜約250 mg/kg、約0.3 mg/kg〜約150 mg/kg、約0.3 mg/kg〜約100 mg/kg、約0.4 mg/kg〜約75 mg/kg、約0.5 mg/kg〜約50 mg/kg、約0.6 mg/kg〜約30 mg/kg、約0.7 mg/kg〜約25 mg/kg、約0.8 mg/kg〜約15 mg/kg、約0.9 mg/kg〜約10 mg/kg、約1 mg/kg〜約5 mg/kg、約100 mg/kg〜約500 mg/kg、約1.0 mg/kg〜約250 mg/kg、または約10.0 mg/kg〜約150 mg/kgで変化すると考えられる(もちろん、投与の様式および前記で論じた因子に応じて)。他の適した用量範囲としては、1日当たり1 mg〜10,000 mg、1日当たり100 mg〜10,000 mg、1日当たり500 mg〜10,000 mg 、および1日当たり500 mg〜1,000 mgが挙げられる。いくつかの特定の態様において、量は、1日当たり10,000 mgより少ない範囲、例えば、1日当たり750 mg〜9,000 mgの範囲である。
【0136】
有効量は、1 mg/kg/日未満、500 mg/kg/日未満、250 mg/kg/日未満、100 mg/kg/日未満、50 mg/kg/日未満、25 mg/kg/日未満、10 mg/kg/日未満、または5 mg/kg/日であってもよい。あるいは、有効量は、1 mg/kg/日〜200 mg/kg/日の範囲内であってもよい。例えば、糖尿病患者の治療に関して、単位投薬量は、未処置の対象と比較して少なくとも40%まで、血糖を低下させる量であってもよい。別の態様において、単位投薬量は、糖尿病ではない対象の血糖レベルの±10%の範囲内であるレベルに、血糖を低下させる量であってもよい。
【0137】
他の限定されない例において、用量は、1投与当たり、約1マイクログラム/kg/体重から、約5マイクログラム/kg/体重、約10マイクログラム/kg/体重、約50マイクログラム/kg/体重、約100マイクログラム/kg/体重、約200マイクログラム/kg/体重、約350マイクログラム/kg/体重、約500マイクログラム/kg/体重、約1ミリグラム/kg/体重、約5ミリグラム/kg/体重、約10ミリグラム/kg/体重、約50ミリグラム/kg/体重、約100ミリグラム/kg/体重、約200ミリグラム/kg/体重、約350ミリグラム/kg/体重、約500ミリグラム/kg/体重、約1000 mg/kg/体重またはそれより多いmg/kg/体重まで、ならびに本明細書で導き出せる任意の範囲も構成してもよい。本明細書で列挙した数字から導き出せる範囲の限定されない例において、前記の数字に基づいて、約1 mg/kg/体重〜約5 mg/kg/体重の範囲、約5 mg/kg/体重〜約100 mg/kg/体重の範囲、約5マイクログラム/kg/体重〜約500ミリグラム/kg/体重の範囲等で投与することができる。
【0138】
ある特定の態様において、本発明の薬学的組成物は、例えば、本発明の化合物を少なくとも約0.1%含み得る。他の態様において、本発明の化合物は、構成単位(unit)の重量の約2%〜約75%、または約25%〜約60%、および、例えば、本明細書で導き出せる任意の範囲を構成してもよい。
【0139】
薬剤の単回投与または反復投与が意図される。反復投与の送達のための望ましい時間間隔は、当業者であれば、手順の定まっている実験(routine experimentation)を超えない実験を用いて決定することできる。例として、対象は、約12時間の間隔で1日に2回投与され得る。いくつかの態様において、薬剤は1日に1回投与される。
【0140】
薬剤は、定期スケジュール(routine schedule)で投与され得る。本明細書で用いられる定期スケジュールとは、あらかじめ決められた指定期間のことをいう。スケジュールがあらかじめ決められている限り、定期スケジュールには、全く同じ期間であるか、または長さが異なる期間が包含され得る。例えば、定期スケジュールには、1日に2回、毎日、2日ごとに、3日ごとに、4日ごとに、5日ごとに、6日ごとに、週に1回、月に1回、またはそれらの間の設定されている任意の日数もしくは週数での投与が含まれ得る。あらかじめ決められた定期スケジュールには、第1週目の間は1日に2回、その後数ヶ月間は1日に1回等での投与が含まれ得る。他の態様において、本発明は、薬剤を経口で服用してもよいこと、かつその時期が食物摂取に依存するか否かということを提供する。従って、例えば、対象がいつ食事をしたか、またはいつ食事をするつもりであるかに関わらず、毎朝および/または毎夕に、薬剤を服用することができる。
【0141】
限定されない具体的な製剤としては、CDDO-Me高分子分散体(2008年8月13日に出願された米国特許出願第12/191,176号を参照されたく、これは参照により本明細書に組み入れられる)。本明細書で報告される製剤の中には、微粉末化された形態Aの製剤か、またはナノ結晶性形態Aの製剤よりも高いバイオアべイラビリティを示すものがあった。加えて、高分子分散体を基剤とする製剤は、微粉末化された形態Bの製剤に対して、経口バイオアべイラビリティにおけるさらに驚くべき改善を実証した。例えば、メタクリル酸共重合体、タイプCおよびHPMC-Pは、対象サルにおいて最高のバイオアべイラビリティを示した。
【0142】
VII. 併用療法
本発明の化合物は、単独療法として用いられることに加え、併用療法における使用も見いだし得る。有効な併用療法は、両方の薬剤を含む単独の組成物もしくは薬理学的製剤で達成してもよいし、または一方の組成物は本発明の化合物を含み、かつ他方の組成物は第二の薬剤を含む、同時に投与される2つの異なる組成物もしくは製剤で達成してもよい。あるいは、該療法は、数分から数ヶ月の範囲の間隔で、他の薬剤治療に先行してもよいし、後に続いてもよい。
【0143】
種々の併用を利用してもよく、例えば、本発明の化合物が「A」であり、かつ「B」が第二の薬剤を表す場合等、これらの限定されない例を以下に記載する:

【0144】
他の抗炎症剤を、本発明の治療とともに用いてもよいことが意図される。例えば、アリールカルボン酸(サリチル酸、アセチルサリチル酸、ジフルニサル、トリサリチル酸コリンマグネシウム、サリチラート、ベノリラート、フルフェナム酸、メフェナム酸、メクロフェナム酸およびトリフルム酸(triflumic acid))、アリールアルカン酸(ジクロフェナク、フェンクロフェナク、アルクロフェナク、フェンチアザク、イブプロフェン、フルルビプロフェン、ケトプロフェン、ナプロキセン、フェノプロフェン、フェンブフェン、スプロフェン、インドプロフェン、 チアプロフェン酸、ベノキサプロフェン、ピルプロフェン、トルメチン、ゾメピラク、クロピナク(clopinac)、インドメタシンおよびスリンダク)、およびエノール酸(フェニルブタゾン、オキシフェンブタゾン、アザプロパゾン、フェプラゾン、ピロキシカムおよびイソキシカムを包含する、他のCOX阻害剤を用いてもよい。米国特許第6,025,395号も参照されたく、これは参照により本明細書に組み入れられる。
【0145】
パーキンソン病、アルツハイマー病、多発性硬化症、筋萎縮性側索硬化症、関節リウマチ、炎症性腸疾患、および病因が一酸化窒素(NO)かまたはプロスタグランジンの過剰な産生に関与すると考えられているその他全ての疾患の治療または予防に関する利点が報告されている、食事補助剤および栄養補助剤、例えばアセチル-L-カルニチン、オクタコサノール、月見草油、ビタミンB6、チロシン、フェニルアラニン、ビタミンC、L-ドーパまたは数種の抗酸化剤の組み合わせ等を、本発明の化合物と併せて用いてもよい。
【0146】
他の特定の二次療法には、免疫抑制薬(移植および自己免疫に関連するRKDに対して)、抗高血圧薬(高血圧に関連するRKDに対して、例えば、アンジオテンシン変換酵素阻害剤およびアンジオテンシン受容体遮断薬)、インスリン(糖尿病性RKDに対して)、脂質/コレステロールを低下させる薬剤(例えば、アトルバスタチンまたはシンバスタチン等のHMG-CoA還元酵素阻害剤)、CKDに付随する高リン血症または副甲状腺機能亢進症に対する治療(例えば、セベラマー酢酸塩、シナカルセット)、透析、ならびに食事制限(例えば、タンパク質、塩、液体、カリウム、リン)が包含される。
【0147】
VIII. 実施例
以下の実施例は、本発明の好ましい態様を実証するために挙げられる。以下に続く実施例において開示される技術は、本発明の実践において良好に機能するように本発明者により発見された技術を表しており、従って、その実践の好ましい様式を構成するものと見なすことができることが、当業者により理解されるべきである。しかしながら、当業者は本発明の開示に照らして、本発明の精神および範囲を逸脱することなく、開示された具体的態様において多くの変更を行うことができ、それでもなお同様または類似の結果を得ることができることを理解するべきである。
【0148】
実施例1 - 物質と方法
化学物質 トリテルペノイドを、Hondaら(1998)、Honda ら(2000b)、Hondaら(2002)、およびYatesら(2007)で既に記載されたように合成し、これらは全て参照により本明細書に組み入れられる。
【0149】
実施例2 - マウス虚血-再かん流の結果
虚血性急性腎不全のマウスモデルにおいて、腎動脈を約20分間クランプする。この後、クランプをはずし、腎臓を血液で再かん流させる。虚血-再かん流は、腎障害、および腎機能の低下を招き、これは、腎障害に続いて上昇する血液尿素窒素(BUN)レベルで評価することができる。図1a〜dに示すように、外科的に誘導した虚血-再かん流は、BUNレベルを約2倍まで増加させた。しかしながら、手術の2日前に開始して、経口で1日に1回、2 mg/kg RTA 402で処置した動物において、媒体処置した動物と比べてBUNレベルは有意に低減され(p<0.01)、疑似手術を受けた動物におけるレベルとほぼ同等であった(図1a〜c)。腎臓障害および炎症の組織学的評価も、RTA 402での処置により有意に改善された(図1d)。これらのデータは、RTA 402が、虚血-再かん流で誘導される組織障害を防護することを示唆している。
【0150】
実施例3 - ラットの化学療法で誘導される急性腎傷害の結果
急性腎傷害の別のモデルにおいて、ラットに、抗腫瘍剤シスプラチンを静脈注射した。腎毒性は、ヒトにおけるシスプラチン治療の用量規制副作用である。シスプラチンで誘導される近位細管への障害は、炎症、酸化ストレスおよびアポトーシスの増加により媒介されると考えられる(Yaoら, 2007)。シスプラチン6 mg/kgの単回投与で処置したラットでは、クレアチニンおよびBUNの血中レベルの増加で評価される腎機能不全(renal insufficiency)を発症した。シスプラチンでの処置の1日前に開始し、毎日継続した強制経口による10 mg/kg RTA 402での処置は、クレアチニンおよびBUNの血中レベルを、有意に低減した(図2a〜b)。腎臓の組織学的評価は、媒体処置した動物と比較して、RTA 402処置した動物における近位細管の障害範囲の改善を実証した(図2c)。
【0151】
実施例 4 - 数種類の種における血清クレアチニンレベルの低減
毒性試験の間に、RTA 402で処置した数種類の動物種で、血清クレアチニンを評価した。ベースラインレベルまたは対照動物におけるレベルと比べて、血清クレアチニンレベルの有意な低減が、カニクイザル、ビーグル犬、およびSprague-Dawleyラットにおいて認められた(図3a〜d)。この効果は、RTA 402の結晶形および非晶形を用いたラットにおいて認められた。
【0152】
実施例 5 - がん患者における血清クレアチニンの低減およびeGFRの増加
RTA 402の第一相臨床試験に登録したがん患者においても、血清クレアチニンを評価した。これらの患者は、28日ごとに計21日間、1日に1回、5〜1,300 mg/日の用量でRTA 402を受けた。15%を上回る血清クレアチニンの減少は、早くも治療開始後8日で認められ、周期の終わりまで持続した(図4A)。この減少は、6周期またはそれ以上の周期のRTA 402での治療を受けた患者で維持された。既往の腎障害患者の亜集団(subset)(少なくとも1.5 mg/dlのベースライン血清クレアチニンレベル)でも、RTA 402での治療後の血清クレアチニンレベルが、有意に低減された。これらの患者において、21日目のレベルがベースラインレベルよりも約25%低かったというように、周期全体にわたって血清クレアチニンレベルが次第に低減された(図4A)。これらの結果は、下記の表に示すように要約することができる。

【0153】
推定糸球体濾過率(eGFR)は、RTA 402で治療した患者において、有意に改善された(図4B)。
【0154】
図5に、eGFRがおおよそ連続的に改善されたことを示す、11人のがん患者におけるRTA 402治療の少なくとも6ヶ月後の結果を示す。これらの患者の何人かが、第一相試験に登録されたが、一方、他の患者は、膵臓がん患者におけるRTA 402の試験(ゲムシタビンとの併用)に登録された。結果は、下記表2に示すように要約することができる。
【0155】
(表2)6周期の間RTA 402を受けた患者のeGFR

【0156】
実施例 6 - 糖尿病性腎症患者における第二相試験
血清クレアチニンを、RTA 402の非盲検第二相臨床試験に登録した慢性腎臓疾患(CKD)患者でも評価した。これらの患者は、計28日間、1日1回、3種のレベル、すなわち、25 mg、75 mgおよび150 mgでRTA 402を受けた。
【0157】
本試験は、インスリン抵抗性、内皮機能不全/CVD、およびCKDのカテゴリーで、多数の評価項目を考慮して計画された。これらは、以下の通り要約することができる。

【0158】
本試験に関する主要評価尺度は、3種の用量強度(dose strength)で経口投与されるRTA 402の効果を、糖尿病性腎症患者における糸球体濾過率(MDRD式により推定される)で評価している。
【0159】
副次評価尺度としては、以下が挙げられる:(1) 本患者集団における、3種の異なる用量で経口投与される経口RTA 402の安全性および忍容性の評価;(2) 糖尿病性腎症患者における、血清クレアチニンレベル、クレアチニン・クリアランスおよび尿アルブミン/クレアチニン比での、3種の用量強度で経口投与されるRTA 402の効果の評価;(3) 登録した全ての患者におけるヘモグロビンA1cでの、および試験施設(study center)のうちの1箇所のみで登録した患者における高インスリン正常血糖クランプ検査によるインスリン反応での、3種の用量強度で経口投与されるRTA 402の効果の評価;(4) 炎症、腎傷害、酸化ストレス、および内皮機能不全の指標のパネル(panel)での、3種の用量強度で経口投与されるRTA 402の効果の評価。
【0160】
本試験のために選択された患者集団は全て、CKDを伴う2型糖尿病を患っていた。ほとんどの患者が、20年間、血糖のコントロール不良であると診断されてきた。CKDは、高い血清クレアチニン(SCr)レベルにより立証された。患者のほとんどが心臓血管疾患(CVD)であると診断されており、かつほとんどが、糖尿病、CKDおよびCVDのための標準治療(SOC)処置(例えば、インスリン、ACEI/ARB、β-遮断薬、利尿薬、およびスタチン)を受けていた。ベースライン層(baseline demographic)を以下の通り要約することができる。

1神経障害および網膜症を包含する。
全ての値は平均値を表す;n=10;試験を終えた最初の10人の患者
【0161】
患者選択基準は、以下の通りであった:(1) 2型糖尿病の診断;(2) 血清クレアチニンが、女性で1.3〜3.0 mg/dL(115〜265 μmol/L)含まれ、男性で1. 5〜3.0 mg/dL(133-265 μmol/L)含まれる;(3) 患者は、有効な避妊を実践することに同意しなければならない;(4) 患者は、試験投薬の初回投与前72時間以内の尿の妊娠検査で陰性でなければならない;(5) 患者は、治験実施計画書の全ての局面に協力する意思も能力もあり、効率的に意思疎通する能力がある;(6) 患者は、本臨床試験に参加することへの書面によるインフォームド・コンセントを与える意思も能力もある。
【0162】
患者除外基準は、以下の通りであった:(1) 1型(インスリン依存性;若年発症)糖尿病を患っている患者;(2) 既知の非糖尿病性腎疾患患者(糖尿病性腎症に併発した腎硬化は容認される)、または同種移植腎をもつ患者;(3) 以下の通り、心臓血管疾患を患っている患者:試験参加の3ヶ月以内の不安定狭心症;試験参加の3ヶ月以内の心筋梗塞、大動脈冠動脈バイパス手術、または経皮的冠動脈形成/ステント;試験参加の3ヶ月以内の一過性脳虚血発作;試験参加の3ヶ月以内の脳血管発作;閉塞性心臓弁膜症(obstructive valvular heart disease)または肥大性心筋症;ペースメーカーでの処置不良である第2度または第3度房室ブロック;(4) 試験参加の3ヶ月以内の、副腎皮質ホルモン(吸入または経鼻ステロイドを除く)を包含する、長期にわたる(>2週間)免疫抑制療法を必要とする患者;(5) 総ビリルビン>1.5 mg/dL(>26マイクロモル/L)を包含する肝機能障害の徴候がある患者、または肝トランスアミナーゼ(アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ[AST]またはアラニントランスフェラーゼ[ALT])正常上限の>1.5倍;(6) 女性の場合、患者が妊娠しているか、授乳しているか、または妊娠を計画している;(7) 治験責任医師の判断において、試験に参加する間に患者に健康被害をもたらす可能性があり得るか、または試験結果に影響を及ぼす可能性があり得るかのどちらかである、任意の同時発生的臨床状態がある患者;(8) 試験薬物の任意の構成成分に対する既知の過敏症を有する患者;(9) 既知のヨウ素アレルギーを有する患者;(10) 試験への参加前の最後の30日のうちに、造影剤を必要とする診断手技または介入手技を受けた患者;(11) 以下の投薬のいずれかにおいて、変更または用量調節を伴う患者:3ヶ月以内の、ACE阻害剤、アンジオテンシンII遮断薬、非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)、またはCOX-2阻害剤;試験への参加前6週間以内の、他の抗高血圧薬、および他の抗糖尿病薬の投薬;(12) 薬物またはアルコールの乱用の既往歴を有するか、または任意の乱用薬物に関する検査結果が陽性(尿薬物検査および/またはアルコール呼気分析検査が陽性)である患者;(13) 試験への参加前30日以内に、治験薬または市販品に関わる別の臨床試験に参加していたか、またはこのような試験に同時に参加していたと考えられる患者;(14) 言語の問題、不十分な精神発達または低下した脳機能のために、治験責任医師と意思疎通または協力ができない患者。
【0163】
2008年9月末の時点で、本試験に登録した60人の患者のうち32人がいた。1人を除いた全ての患者が、インスリンおよび標準治療である経口抗高血糖薬を受けていた。
【0164】
難治性糖尿病において、標準治療に加えたRTA 402での治療では、28日でヘモグロビン% A1cの減少が認められた。治療は、治療意図群で約0.25(n=56)の減少、および高ベースライン群(ベースラインにおいて≧7.0)で0.50(n=35)の減少を示した。ベースライン重症度(baseline severity)に応じたヘモグロビン% A1cの減少を図6に示し、投薬量に応じた減少を図7に示す。進行した(病期4期)の腎疾患患者(GFR 15〜29 ml/分から)は、約0.77の平均% A1c減少を示した。全ての減少が、統計学的に有意であった。
【0165】
高インスリン正常血糖クランプ検査の結果は、グルコース処理率(glucose disposal rate)(GDR)により評価した場合、前記28日治療が、患者における血糖コントロールおよびインスリン感受性も改善することを示した。統計学的に有意な改善(p≦0.02)を示している、より重症な障害のある患者(GDR<4)とともに、患者は、前記28日治療後にGDRの改善を示した。高インスリン正常血糖クランプ検査は、ベースライン(−1日目)および試験の終わり28日目に実施した。検査では、低血糖を引き起こすことなく増加したインスリンレベルを相殺するために必要なグルコース注入(GINF)率を評価した。この値を用いてGDRを導き出す。
【0166】
手短にいうと、高インスリン正常血糖クランプ検査には約2時間かかる。末梢静脈経由で、インスリンを1分間に1m2当たり10〜120 mUで注入する。インスリン注入を相殺するためにグルコース20%を注入して、5〜5.5 mmol/Lの間の血糖レベルを維持する。グルコース注入率を、5〜10分ごとに血糖レベルを調べることにより評価する。検査の最後の30分間のグルコース注入率を用いて、mg/kg/分でのグルコース代謝率(M)により評価されるインスリン感受性を評価する。
【0167】
以下の治験実施計画書の指針は、高インスリン正常血糖クランプ検査のためのものである:
1) クランプ手技の前8〜10時間は絶食。
2) クランプの朝は、生命徴候および体重を測定。
3) 試料採取のために、1.25インチ、18〜20ゲージのカテーテルを用いて、片手に逆ライン(retrograde line)を開設(Start)。
4) 2個の三方コックおよびj-ループエクステンションチューブを備えたIVチューブを準備。チューブを0.9% NaClの1リットルバッグに固定して、手技の開始までKVO(静脈確保、約10 cc/時間)で作動。
5) 加温パッドが対象の手から隔離されているパッドを備えた、枕カバーで覆われた加温パッドを利用(静脈カテーテル法でバイパス形成して動脈血化した血液の収集を可能にする)。
6) クランプの前およびクランプの間中、加温パッドにより生じた温度(約150°F/65℃)を監視し、動脈血化を維持。
7) 注入ラインのために、1.25インチ、18〜20ゲージのカテーテルを用いて、前腕遠位で採取側と反対に別のラインを開設。2個の三方コックを備えたIVチューブを準備。
8) 20%デキストロースの500 mlバッグをつるし、注入側にポート(port)を取り付け。
9) 以下のようにインスリン注入剤を調製:
a. 0.9% NaClの500 ccバッグから生理的食塩水53 cc(過充填の50 cc)を取り除き、廃棄。
b. 無菌技術を用いて対象から血液8 ccを採取し、タイガー・トップ・チューブ(tiger top tube)中に注射。
c. タイガー・トップ・チューブを遠心分離。血清2 ccを抜き取り、0.9% NaClの500 ccバッグ中に注射。
d. 100単位のインスリンを血清入りのバッグに添加し、よく混合(0.2 Uインスリン/ml)。
e. デュオ-ベント・スパイク(duo-vent spike)を備えたIVチューブを0.9% NaClバッグに連結。
f. Baxterポンプに設置。
10) 時間を記録し、全ての基礎血液試料(ベースライン絶食時血糖値(baseline fasting blood glucose)は、インスリン刺激の開始前に得られる)を採取。
11) 準備用量および60 mU/m2インスリン注入に関して、インスリン注入率の算出を実施。このバックグラウンド・インスリン(background insulin)は、内因性肝糖産生を抑えるためのものである。脂肪の少ない対象は、40 mU/m2で抑えることができ、肥満でインスリン抵抗性の対象では、80 mU/m2が必要である。60 mU/m2は、27〜40 kg/m2のBMIをもつ、推奨される試験対象母集団を抑えるために十分でのはずである。BMIが修正される場合には、推奨される60 mU/m2インスリン注入を、調整する必要があるかもしれない。
12) 0.5 mL試料を5分ごとに採取し、YSI 血糖分析装置(YSI Blood Glucose Analyzer)からの測定値を、グルコース注入率(mg/kg/分)を定量/調整するために用いる。治験実施計画書により要求される任意の追加の臨床検査は、血液量に追加があると考えられる。インスリン感受性を決定するために十分な持続期間であると考えられる120分間、クランプを持続させる。
13) 元の文書に関する全てのYSI印字出力を、ラベル標示して保存。
14) 正常血糖クランプの最後の30分間のグルコース注入率は、空間補正を用いて調整される。これは、対象のインスリンへの感受性を表すグルコース代謝率(M mg/kg/分)を決定するために用いられると考えられる。
【0168】
図8に示すように、RTA 402は、循環血管内皮細胞(CEC)を減少させる。28日RTA治療の前後両方での、治療意図(ITT)群および高ベースライン群に関する、細胞/mLでのCECの平均数を示す。治療意図群に関する減少は約20%であり、高ベースライン群(>5CEC/ml)における減少は約33%であった。iNOS陽性CECの比率は、約29%に減少した。CEC値の正常化(≦5 細胞/ml)は、高ベースラインをもつ19人の患者のうち11人で認められた。
【0169】
CD146 Ab(内皮細胞および白血球で発現するCD146抗原に対する抗体)を用いることにより、CECを全血から単離した。CECの単離後、FITC(fluorescein isothiocyanate)接合CD 105 Ab(内皮細胞に対する特異的抗体)を、CellSearch(商標)装置を用いてCECを同定するために用いた。CD45 Abの蛍光性接合体を添加して、白血球を染色し、次いでこれらをゲートアウト(gate out)した。この方法の総括に関しては、Blannら(2005)を参照されたく、これは参照によりその全体が明細書に組み入れられる。CEC試料についてのiNOSの存在も免疫染色により評価した。RTA 402での治療は、RTA 402が内皮細胞における炎症を軽減することをさらに示唆する、約29%までiNOS-陽性CECを低減した。
【0170】
RTA 402は、eGFRに基づく血清クレアチニン(図9)、クレアチニン・クリアランス、BUN(図11A)、血清リン(図11B)、血清尿酸(図11C)、シスタチンC、アディポネクチン(図10A)、およびアンジオテンシンII(図10B)を包含する、腎機能および状態の8つの尺度を有意に改善することが示された。アディポネクチンは、全死因死亡およびDN患者における末期腎疾患を予測する。DN患者において上昇する、アディポネクチンおよびアンジオテンシンIIは、腎疾患の重症度と相関がある(図10A〜B)。BUN、リンおよび尿酸に対する効果を図11A〜Cに示す。
【0171】
RTA 402のより高い用量(75または150 mg)で治療した患者は、蛋白尿の穏やかな上昇(約20〜25%)を示した。これは、より良好なGFRの働きが蛋白尿の上昇と相関があることを示唆する試験と矛盾しない。例えば、25,000人より多い患者の長期臨床試験において、ラミプリル(ACE阻害剤)での治療は、テルミサルタン(アンジオテンシン受容体遮断薬)か、またはラミプリルとテルミサルタンの組み合わせのどちらかよりも効果的に、eGFRが低下する速度を遅らせる(Mannら, 2008)。反対に、蛋白尿は、他の2群よりもラミプリル群で増加した。蛋白尿は、併用療法群で最も増加したが、主要な腎臓転帰も、併用療法を用いるよりも、どちらかの薬物を単独で用いるほうが良好であった。他の試験では、GFRを減少させる薬物、例えばACE阻害剤等も、蛋白尿を減少させることを示している(Lozanoら, 2001;Sengulら, 2006)。他の試験では、GFRを急激に増加させる薬物、例えばある特定のカルシウムチャンネル遮断薬等が、短期投薬の間、蛋白尿を最大60%まで増加させることを示している(Agodoaら, 2001;Vibertiら, 2002)
【0172】
本明細書で開示および主張される、組成物および/または方法は、全て、本開示に照らして過度の実験なしに作製され、行われうる。本発明の組成物および方法を好ましい態様によって記載してきたが、本発明の概念、精神および範囲から逸脱することなく、組成物および/または方法に、ならびに本明細書で記載される方法の段階または段階の順序において、バリエーションを適用してもよいことは、当業者には明らかであると考えられる。より具体的には、同じまたは類似の結果を達成すると同時に、本明細書で記載される薬剤の代わりに、化学的にも生理的にも関連するある特定の薬剤を代替し得ることが明らかであると考えられる。当業者には明らかなこのような類似の代替および変更は、全て、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の精神、範囲および概念の範囲内であると見なされる。
【0173】
IX. 参考文献
本明細書において説明したものを補足する、例となる手順または他の詳細を、以下の参考文献は、それらが提供する範囲内で本明細書に具体的に組み入れられる。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象における腎/腎臓疾患(RKD)、インスリン抵抗性、糖尿病、内皮機能不全、脂肪肝疾患または心臓血管疾患(CVD)を治療するための方法であって、該対象に、下記の構造を有する化合物、またはその薬学的に許容される塩、水和物もしくは溶媒和物の薬学的有効量を投与する段階を含む方法:

式中、R1は、
-CN、または
C1-C15-アシルもしくはC1-C15-アルキルであって、これらの基のどちらも、ヘテロ原子置換されているか、またはヘテロ原子置換されていない。
【請求項2】
対象が、RKDを患っている、請求項1記載の方法。
【請求項3】
RKDが、糖尿病性腎症(DN)である、請求項2記載の方法。
【請求項4】
RKDが、毒性損傷(toxic insult)に起因する、請求項2記載の方法。
【請求項5】
毒性損傷が、画像診断剤(imaging agent)、または薬物に起因する、請求項4記載の方法。
【請求項6】
薬物が、化学療法剤である、請求項5記載の方法。
【請求項7】
RKDが、虚血/再かん流傷害に起因する、請求項2記載の方法。
【請求項8】
RKDが、糖尿病または高血圧に起因する、請求項2記載の方法。
【請求項9】
RKDが、自己免疫疾患に起因する、請求項2記載の方法。
【請求項10】
RKDが、慢性RKDである、請求項2記載の方法。
【請求項11】
RKDが、急性RKDである、請求項2記載の方法。
【請求項12】
対象が、透析を受けていたか、または透析を受けている、請求項1記載の方法。
【請求項13】
対象が、腎臓移植を受けたか、または腎臓移植を受ける候補である、請求項1記載の方法。
【請求項14】
対象が、RKDおよびインスリン抵抗性を患っている、請求項1記載の方法。
【請求項15】
対象が、RKD、インスリン抵抗性および内皮機能不全を患っている、請求項14記載の方法。
【請求項16】
対象が、RKDおよび糖尿病を患っている、請求項1記載の方法。
【請求項17】
対象が、インスリン抵抗性を患っている、請求項1記載の方法。
【請求項18】
対象が、糖尿病を患っている、請求項1記載の方法。
【請求項19】
化合物の薬学的有効量が、糖尿病に伴う1つまたは複数の合併症も有効に治療する、請求項18記載の方法。
【請求項20】
合併症が、肥満、高血圧、アテローム硬化、冠動脈性心疾患、脳卒中、末梢血管疾患、高血圧、腎症、神経障害、筋壊死、網膜症、および代謝症候群(X症候群)からなる群より選択される、請求項19記載の方法
【請求項21】
合併症が、代謝症候群(X症候群)である、請求項20記載の方法。
【請求項22】
糖尿病が、インスリン抵抗性に起因する、請求項18記載の方法。
【請求項23】
対象が、RKDおよび内皮機能不全を患っている、請求項1記載の方法。
【請求項24】
対象が、RKDおよび心臓血管疾患を患っている、請求項1記載の方法。
【請求項25】
対象が、CVDを患っている、請求項1記載の方法。
【請求項26】
CVDが、内皮機能不全に起因する、請求項25記載の方法。
【請求項27】
対象が、内皮機能不全を患っている、請求項1記載の方法。
【請求項28】
対象が、内皮機能不全およびインスリン抵抗性を患っている、請求項27記載の方法。
【請求項29】
対象が、脂肪肝疾患を患っている、請求項1記載の方法。
【請求項30】
脂肪肝疾患が、非アルコール性脂肪肝疾患である、請求項29記載の方法。
【請求項31】
脂肪肝疾患が、アルコール性脂肪肝疾患である、請求項29記載の方法。
【請求項32】
対象が、脂肪肝疾患および以下の障害の1つまたは複数を患っている、請求項29記載の方法:腎/腎臓疾患(RKD)、インスリン抵抗性、糖尿病、内皮機能不全、および心臓血管疾患(CVD)。
【請求項33】
列挙された、疾患、機能不全、抵抗性または障害のいずれかの治療を必要としている対象を特定する段階をさらに含む、請求項1〜32のいずれか一項記載の方法。
【請求項34】
対象が、列挙された、疾患、機能不全、抵抗性または障害のいずれかの家族歴または患者病歴を有する、請求項1〜32のいずれか一項記載の方法。
【請求項35】
対象が、列挙された、疾患、機能不全、抵抗性または障害のいずれかの症状を呈する、請求項1〜32のいずれか一項記載の方法。
【請求項36】
対象における糸球体濾過率またはクレアチニン・クリアランスを改善するための方法であって、該対象に、下記の構造を有する化合物、またはその薬学的に許容される塩、水和物もしくは溶媒和物の薬学的有効量を投与する段階を含む方法:

式中、R1は、
-CN、または
C1-C15-アシルもしくはC1-C15-アルキルであって、これらの基のどちらも、ヘテロ原子置換されているか、またはヘテロ原子置換されていない。
【請求項37】
化合物が、局所投与される、請求項1〜36のいずれか一項記載の方法。
【請求項38】
化合物が、全身投与される、請求項1〜36のいずれか一項記載の方法。
【請求項39】
化合物が、経口的に、脂肪内に(intraadiposally)、動脈内に、関節内に、頭蓋内に、皮内に、病巣内に、筋肉内に、鼻腔内に、眼内に、心膜内に、腹腔内に、胸膜腔内に、前立腺内に、直腸内に、くも膜下腔内に(intrathecally)、気管内に、腫瘍内に、臍帯内に、腟内に、静脈内に、膀胱内に、硝子体内に、リポソーム的に(liposomally)、局所に(locally)、粘膜に、経口的に、非経口的に、直腸に、結膜下に、皮下に、舌下に、局所的に(topically)、経頬的に(transbuccally)、経皮的に、膣に(vaginally)、クリーム剤で、脂質組成物で、カテーテル経由で、洗浄液経由で(via a lavage)、持続注入経由で、注入経由で、吸入経由で、注射経由で、局所送達経由で、局所かん流経由で、標的細胞を直接浸して、またはそれらの任意の組み合わせで投与される、請求項1〜36のいずれか一項記載の方法。
【請求項40】
化合物が、静脈内に、動脈内にまたは経口的に投与される、請求項39記載の方法。
【請求項41】
化合物が、経口投与される、請求項40記載の方法。
【請求項42】
化合物が、硬カプセル剤もしくは軟カプセル剤、錠剤、シロップ剤、懸濁剤、固体分散体、カシェ剤、またはエリキシル剤として製剤化されている、請求項41記載の方法。
【請求項43】
化合物が、固体分散体として製剤化されている、請求項42記載の方法。
【請求項44】
軟カプセル剤が、ゼラチンカプセル剤である、請求項42記載の方法。
【請求項45】
保護被覆剤をさらに含む、請求項44記載の方法。
【請求項46】
吸収を遅らせる作用物質をさらに含む、請求項44記載の方法。
【請求項47】
溶解性または分散性を向上させる作用物質をさらに含む、請求項42記載の方法。
【請求項48】
化合物が、リポソーム剤中、水中油型乳剤中、または油中水型乳剤中に分散されている、請求項39記載の方法。
【請求項49】
薬学的有効量が、化合物約0.1 mg〜約500 mgの1日用量である、請求項1〜36のいずれか一項記載の方法。
【請求項50】
1日用量が、化合物約1 mg〜約300 mgである、請求項49記載の方法。
【請求項51】
1日用量が、化合物約10 mg〜約200 mgである、請求項50記載の方法。
【請求項52】
1日用量が、化合物約25 mgである、請求項51記載の方法。
【請求項53】
1日用量が、化合物約75 mgである、請求項51記載の方法。
【請求項54】
1日用量が、化合物約150 mgである、請求項51記載の方法。
【請求項55】
1日用量が、化合物約0.1 mg〜約30 mgである、請求項49記載の方法。
【請求項56】
1日用量が、化合物約0.5 mg〜約20 mgである、請求項55記載の方法。
【請求項57】
1日用量が、化合物約1 mg〜約15 mgである、請求項56記載の方法。
【請求項58】
1日用量が、化合物約1 mg〜約10 mgである、請求項57記載の方法。
【請求項59】
1日用量が、化合物約1 mg〜約5 mgである、請求項58記載の方法。
【請求項60】
薬学的有効量が、体重1kg当たり化合物0.01〜25 mgの1日用量である、請求項1〜36のいずれか一項記載の方法。
【請求項61】
1日用量が、体重1kg当たり化合物0.05〜20 mgである、請求項60記載の方法。
【請求項62】
1日用量が、体重1kg当たり化合物0.1〜10 mgである、請求項61記載の方法。
【請求項63】
1日用量が、体重1kg当たり化合物0.1〜5 mgである、請求項62記載の方法。
【請求項64】
1日用量が、体重1kg当たり化合物0.1〜2.5 mgである、請求項63記載の方法。
【請求項65】
薬学的有効量が、1日当たり単回で投与される、請求項1〜36のいずれか一項記載の方法。
【請求項66】
薬学的有効量が、1日当たり2回またはそれ以上の回数で投与される、請求項1〜36のいずれか一項記載の方法。
【請求項67】
二次療法をさらに含む、請求項1〜36のいずれか一項記載の方法。
【請求項68】
二次療法が、対象に、第二の薬物の薬学的有効量を投与する段階を含む、請求項67記載の方法。
【請求項69】
第二の薬物が、コレステロールを低下させる薬物、抗高脂血症薬、カルシウムチャンネル遮断薬、抗高血圧薬またはHMG-CoA還元酵素阻害剤である、請求項68記載の方法。
【請求項70】
第二の薬物が、アムロジピン、アスピリン、エゼチミブ、フェロジピン、ラシジピン、レルカニジピン、ニカルジビン、ニフェジピン、ニモジピン、ニソルジピン、またはニトレンジピンである、請求項69記載の方法。
【請求項71】
第二の薬物が、アテノロール、ブシンドロール、カルベジロール、クロニジン、ドキサゾシン、インドラミン、ラベタロール、メチルドパ、メトプロロール、ナドロール、オクスプレノロール、フェノキシベンザミン、フェントラミン、ピンドロール、プラゾシン、プロプラノロール、テラゾシン、チモロール、またはトラゾリンである、請求項69記載の方法。
【請求項72】
第二の薬物が、スタチンである、請求項68記載の方法。
【請求項73】
スタチンが、アトルバスタチン、セリバスタチン、フルバスタチン、ロバスタチン、メバスタチン、ピタバスタチン、プラバスタチン、ロスバスタチン、またはシンバスタチンである、請求項72記載の方法。
【請求項74】
第二の薬物が、ジペプチジルペプチダーゼ-4(DPP-4)阻害剤である、請求項68記載の方法。
【請求項75】
DPP-4阻害剤が、シタグリプチン、ビルダグリプチン、SYR-322、BMS 477118、またはGSK 823093である、請求項74記載の方法。
【請求項76】
第二の薬物が、ビグアナイドである、請求項68記載の方法。
【請求項77】
ビグアナイドが、メトホルミンである、請求項76記載の方法。
【請求項78】
第二の薬物が、チアゾリジンジオン(TZD)である、請求項68記載の方法。
【請求項79】
TZDが、ピオグリタゾン、ロシグリタゾン、またはトログリタゾンである、請求項78記載の方法。
【請求項80】
第二の薬物が、スルホニル尿素誘導体である、請求項68記載の方法。
【請求項81】
スルホニル尿素誘導体が、トルブタミド、アセトヘキサミド、トラザミド、クロルプロパミド、グリピジド、グリブリド、グリメピリド、およびグリクラジドからなる群より選択される、請求項80記載の方法。
【請求項82】
第二の薬物が、メグリチニドである、請求項68記載の方法。
【請求項83】
メグリチニドが、レパグリニド、ミチグリニド、およびナテグリニドからなる群より選択される、請求項82記載の方法。
【請求項84】
第二の薬物が、インスリンである、請求項68記載の方法。
【請求項85】
第二の薬物が、α-グルコシダーゼ阻害剤である、請求項68記載の方法。
【請求項86】
α-グルコシダーゼ阻害剤が、アカルボース、ミグリトール、およびボグリボースからなる群より選択される、請求項85記載の方法。
【請求項87】
第二の薬物が、グルカゴン様ペプチド-1類似体である、請求項68記載の方法。
【請求項88】
グルカゴン様ペプチド-1類似体が、エクセナチドおよびリラグルチドからなる群より選択される、請求項87記載の方法。
【請求項89】
第二の薬物が、胃抑制ペプチド類似体である、請求項68記載の方法。
【請求項90】
第二の薬物が、GPR40作動薬である、請求項68記載の方法。
【請求項91】
第二の薬物が、GPR119作動薬である、請求項68記載の方法。
【請求項92】
第二の薬物が、GPR30作動薬である、請求項68記載の方法。
【請求項93】
第二の薬物が、グルコキナーゼ活性化剤である、請求項68記載の方法。
【請求項94】
第二の薬物が、グルカゴン受容体拮抗剤である、請求項68記載の方法。
【請求項95】
第二の薬物が、アミリン類似体である、請求項68記載の方法。
【請求項96】
アミリン類似体が、プラムリンチドである、請求項95記載の方法。
【請求項97】
第二の薬物が、IL-1β受容体拮抗剤である、請求項68記載の方法。
【請求項98】
IL-1β受容体拮抗剤が、アナキンラである、請求項97記載の方法。
【請求項99】
第二の薬物が、内在性カンナビノイド受容体拮抗剤または逆作動薬である、請求項68記載の方法。
【請求項100】
内在性カンナビノイド受容体拮抗剤または逆作動薬が、リモナバンである、請求項99記載の方法。
【請求項101】
第二の薬物が、オルリスタット(Orlistat)である、請求項68記載の方法。
【請求項102】
第二の薬物が、シブトラミン(Sibutramine)である、請求項68記載の方法。
【請求項103】
第二の薬物が、成長因子である、請求項68記載の方法。
【請求項104】
成長因子が、TGF-β1、TGF-β2、TGF-β1.2、VEGF、インスリン様成長因子IもしくはII、BMP2、BMP4、BMP7、GLP-1類似体、GIP類似体、DPP-IV阻害剤、GPR119作動薬、GPR40作動薬、ガストリン、EGF、ベータセルリン、KGF、NGF、インスリン、成長ホルモン、HGF、FGF、FGF相同体、PDGF、レプチン(Leptin)、プロラクチン、胎盤性ラクトゲン、PTHrP、アクチビン、インヒビン、またはINGAPである、請求項103記載の方法。
【請求項105】
成長因子が、副甲状腺ホルモン、カルシトニン、インターロイキン-6、またはインターロイキン-11である、請求項103記載の方法。
【請求項106】
対象が、霊長類である、請求項1〜36のいずれか一項記載の方法。
【請求項107】
霊長類が、ヒトである、請求項106記載の方法。
【請求項108】
対象が、雌ウシ、ウマ、イヌ、ネコ、ブタ、マウス、ラット、またはモルモットである、請求項1〜36のいずれか一項記載の方法。
【請求項109】
化合物が、下記としてさらに定義される化合物、またはその薬学的に許容される塩、水和物もしくは溶媒和物である、請求項1〜108のいずれか一項記載の方法:

式中、Yは、
-H、ヒドロキシ、アミノ、ハロ、または
C1-C14-アルコキシ、C2-C14-アルケニルオキシ、C2-C14-アルキニルオキシ、C1-C14-アリールオキシ、C2-C14-アラルコキシ、C1-C14-アルキルアミノ、C2-C14-アルケニルアミノ、C2-C14-アルキニルアミノ、C1-C14-アリールアミノ、C3-C10-アリール、もしくはC2-C14-アラルキルアミノであって、これらの基のいずれも、ヘテロ原子置換されているか、またはヘテロ原子置換されていない。
【請求項110】
Yが、ヘテロ原子非置換のC1-C4-アルキルアミノである、請求項109記載の方法。
【請求項111】
化合物が、

としてさらに定義される、請求項110記載の方法。
【請求項112】
Yが、ヘテロ原子置換またはヘテロ原子非置換のC2-C4-アルキルアミノである、請求項110記載の方法。
【請求項113】
化合物が、

としてさらに定義される、請求項112記載の方法。
【請求項114】
化合物が、

としてさらに定義される、請求項112記載の方法。
【請求項115】
Yが、ヘテロ原子置換またはヘテロ原子非置換のC1-C4-アルコキシである、請求項109記載の方法。
【請求項116】
Yが、ヘテロ原子非置換C1-C4-アルコキシである、請求項115記載の方法。
【請求項117】
Yが、ヘテロ原子非置換C1-C2-アルコキシである、請求項116記載の方法。
【請求項118】
化合物が、

としてさらに定義される、請求項115記載の方法。
【請求項119】
請求項118の化合物の少なくとも一部分が、多形形態として存在し、該多形形態が、約8.8、12.9、13.4、14.2および17.4 °2θに顕著な回折ピークを含むX線回折パターン(CuKα)を有する結晶形態である、請求項118記載の方法。
【請求項120】
X線回折パターン(CuKα)が、図12Aまたは図12Bに実質的に示されるパターンである、請求項119記載の方法。
【請求項121】
請求項118の化合物の少なくとも一部分が、多形形態として存在し、該多形形態が、図12Cに実質的に示される約13.5 °2θにハロピーク(halo peak)を伴うX線回折パターン(CuKα)、およびTgを有する非晶形形態である、請求項118記載の方法。
【請求項122】
Tg値が、約120℃〜約135℃の範囲である、請求項121記載の方法。
【請求項123】
Tg値が、約125℃〜約130℃の範囲である、請求項122記載の方法。
【請求項124】
Yが、ヒドロキシである、請求項109記載の方法。
【請求項125】
化合物が、さらに

として定義される、請求項124記載の方法。
【請求項126】
化合物が、さらに

として定義される、請求項1〜108のいずれか一項記載の方法。
【請求項127】
化合物が、下記としてさらに定義される化合物、またはその薬学的に許容される塩、水和物もしくは溶媒和物である、請求項1〜108のいずれか一項記載の方法:

式中、Y'は、ヘテロ原子置換またはヘテロ原子非置換のC1-C14-アリールである。
【請求項128】
化合物が、さらに

として定義される、請求項127記載の方法。
【請求項129】
化合物が、その光学異性体を実質的に含有しない、請求項1、36、109〜128のいずれか一項記載の方法。
【請求項130】
化合物が、薬学的に許容される塩の形態である、請求項1、36、109、110、112、115および127のいずれか一項記載の方法。
【請求項131】
化合物が、塩ではない、請求項1、36、109、110、112、115および127のいずれか一項記載の方法。
【請求項132】
化合物が、
(i) 化合物の治療的有効量、ならびに
(ii) (A) 糖質、糖質誘導体もしくは糖質高分子、(B) 合成有機高分子、(C) 有機酸塩、(D) タンパク質、ポリペプチドもしくはペプチド、または (E) 高分子量多糖類である賦形剤
を含む薬学的組成物として製剤化されている、請求項1、36、109、110、112、115および127のいずれか一項記載の方法。
【請求項133】
賦形剤が、合成有機高分子である、請求項132記載の方法。
【請求項134】
賦形剤が、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリ[1-(2-オキソ-1-ピロリジニル)エチレンもしくはその共重合体、およびメタクリル酸―メタクリル酸メチル共重合体からなる群より選択される、請求項133記載の方法。
【請求項135】
賦形剤が、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタル酸エステルである、請求項134記載の方法。
【請求項136】
賦形剤が、PVP/VAである、請求項134記載の方法。
【請求項137】
賦形剤が、メタクリル酸―アクリル酸エチル共重合体(1:1)である、請求項134記載の方法。
【請求項138】
賦形剤が、コポビドン(copovidone)である、請求項133記載の方法。
【請求項139】
対象における糸球体濾過率またはクレアチニン・クリアランスを改善するための方法に使用するための、下記の構造を有する化合物、またはその薬学的に許容される塩、水和物もしくは溶媒和物:

式中、R1は、
-CN、または
C1-C15-アシルもしくはC1-C15-アルキルであって、これらの基のどちらも、ヘテロ原子置換されているか、またはヘテロ原子置換されていない。
【請求項140】
対象が、腎/腎臓疾患(RKD)、インスリン抵抗性、糖尿病、糖尿病に伴う合併症、内皮機能不全、脂肪肝疾患、または心臓血管疾患(CVD)の治療を必要としている、請求項139に記載の使用のための化合物。
【請求項141】
RKDが、
(a) 糖尿病性腎症(DN)であるか、
(b) 慢性RKDであるか、
(c) 急性RKDであるか、
(d) 虚血/再かん流傷害に起因するか、
(e) 糖尿病または高血圧に起因するか、
(f) 自己免疫疾患に起因するか、または
(g) 毒性損傷、特に、画像診断剤、または化学療法剤等の薬物に起因する毒性損傷に起因する、
請求項140に記載の使用のための化合物。
【請求項142】
対象が、透析を受けていたか、もしくは透析を受けているか、または対象が、腎臓移植を受けたか、もしくは腎臓移植を受ける候補である、請求項139〜141のいずれか一項記載の使用のための化合物。
【請求項143】
合併症が、肥満、高血圧、アテローム硬化、冠動脈性心疾患、脳卒中、末梢血管疾患、高血圧、腎症、神経障害、筋壊死、網膜症、または代謝症候群(X症候群)である、請求項140に記載の使用のための化合物。
【請求項144】
糖尿病が、インスリン抵抗性に起因しており、CVDが、内皮機能不全に起因しており、かつ/または脂肪肝疾患が、非アルコール性もしくはアルコール性脂肪肝疾患である、請求項140に記載の使用のための化合物。
【請求項145】
局所投与または全身投与される、請求項139〜144のいずれか一項記載の使用のための化合物であって、特に、経口的に、脂肪内に、動脈内に、関節内に、頭蓋内に、皮内に、病巣内に、筋肉内に、鼻腔内に、眼内に、心膜内に、腹腔内に、胸膜腔内に、前立腺内に、直腸内に、くも膜下腔内に、気管内に、腫瘍内に、臍帯内に、腟内に、静脈内に、膀胱内に、硝子体内に、リポソーム的に、局所に、粘膜に、経口的に、非経口的に、直腸に、結膜下に、皮下に、舌下に、局所的に、経頬的に、経皮的に、膣に、クリーム剤で、脂質組成物で、カテーテル経由で、洗浄液経由で、持続注入経由で、注入経由で、吸入経由で、注射経由で、局所送達経由で、局所かん流経由で、標的細胞を直接浸して、またはそれらの任意の組み合わせで投与される、化合物。
【請求項146】
経口投与される、請求項145に記載の使用のための化合物であって、かつ硬カプセル剤、または任意で保護被覆剤もしくは吸収を遅らせる作用物質をさらに含んでいてもよいゼラチンカプセル等の軟カプセル剤として製剤化されているか;錠剤、シロップ剤、懸濁剤、固体分散体、カシェ剤、またはエリキシル剤として製剤化されている、化合物。
【請求項147】
製剤が、溶解性または分散性を向上させる作用物質さらに含む、請求項146に記載の使用のための化合物。
【請求項148】
リポソーム剤中、水中油型乳剤中、または油中水型乳剤中に分散されている、請求項145に記載の使用のための化合物。
【請求項149】
1日用量が、化合物25 mg〜500 mgで、体重1kg当たり化合物0.01〜25 mg、特に、体重1kg当たり化合物0.05〜20 mg、0.10〜10 mg、または0.1〜5 mgである、請求項139〜148のいずれか一項記載の使用のための化合物。
【請求項150】
1日当たり単回で投与されるか、または1日当たり2回もしくはそれ以上の回数で投与される、請求項139〜149のいずれか一項記載の使用のための化合物。
【請求項151】
化合物での治療が、二次療法との組み合わせであって、特に、二次療法が、コレステロールを低下させる薬物、抗高脂血症薬、カルシウムチャンネル遮断薬、抗高血圧薬、またはHMG-CoA還元酵素阻害剤等の第二の薬物での治療、特に、アムロジピン、アスピリン、エゼチミブ、フェロジピン、ラシジピン、レルカニジピン、ニカルジビン、ニフェジピン、ニモジピン、ニソルジピン、ニトレンジピン、アテノロール、ブシンドロール、カルベジロール、クロニジン、ドキサゾシン、インドラミン、ラベタロール、メチルドパ、メトプロロール、ナドロール、オクスプレノロール、フェノキシベンザミン、フェントラミン、ピンドロール、プラゾシン、プロプラノロール、テラゾシン、チモロール、トラゾリン、あるいはアトルバスタチン、セリバスタチン、フルバスタチン、ロバスタチン、メバスタチン、ピタバスタチン、プラバスタチン、ロスバスタチンおよびシンバスタチンを包含するスタチンでの治療を含む、請求項139〜150のいずれか一項記載の使用のための化合物。
【請求項152】
化合物での治療が、シタグリプチン、ビルダグリプチン、SYR-322、BMS 477118もしくはGSK 823093等のジペプチジルペプチダーゼ-4(DPP-4)阻害剤での治療;メトホルミン等のビグアナイドでの治療、またはピオグリタゾン、ロシグリタゾンおよびトログリタゾン等のチアゾリジンジオン(TZD)での治療;トルブタミド、アセトヘキサミド、トラザミド、クロルプロパミド、グリピジド、グリブリド、グリメピリドおよびグリクラジド等のスルホニル尿素誘導体での治療;レパグリニド、ミチグリニドおよびナテグリニド等のメグリチニドでの治療;インスリンでの治療;アカルボース、ミグリトールおよびボグリボース等のα-グルコシダーゼ阻害剤での治療;エクセナチドおよびリラグルチド等のグルカゴン様ペプチド-1類似体での治療;胃抑制ペプチド類似体での治療;GPR40作動薬での治療;GPR119作動薬での治療;GPR30作動薬での治療;グルコキナーゼ活性化剤での治療;グルカゴン受容体拮抗剤での治療;プラムリンチド等のアミリン類似体での治療;アナキンラ等のIL-1β受容体拮抗剤での治療;リモナバン等の内在性カンナビノイド受容体拮抗剤もしくは逆作動薬での治療;オルリスタットでの治療;シブトラミンでの治療;TGF-β1、TGF-β2、TGF-β1.2、VEGF、インスリン様成長因子IもしくはII、BMP2、BMP4、BMP7、GLP-1類似体、GIP類似体、DPP-IV阻害剤、GPR119作動薬、GPR40作動薬、ガストリン、EGF、ベータセルリン、KGF、NGF、インスリン、成長ホルモン、HGF、FGF、FGF相同体、PDGF、レプチン、プロラクチン、胎盤性ラクトゲン、PTHrP、アクチビン、インヒビン、INGAP、副甲状腺ホルモン、カルシトニン、インターロイキン-6、またはインターロイキン-11等の成長因子での治療を含む二次療法との組み合わせである、請求項139〜150のいずれか一項記載の使用のための化合物。
【請求項153】
対象が霊長類、特に、ヒト、雌ウシ、ウマ、イヌ、ネコ、ブタ、マウス、ラット、またはモルモットである、請求項139〜152のいずれか一項記載の使用のための化合物。
【請求項154】
R1が-C(=O)-Yであり、かつYが
-H、ヒドロキシ、アミノ、ハロ、または
C1-C14-アルコキシ、C2-C14-アルケニルオキシ、C2-C14-アルキニルオキシ、C1-C14-アリールオキシ、C2-C14-アラルコキシ、C1-C14-アルキルアミノ、C2-C14-アルケニルアミノ、C2-C14-アルキニルアミノ、C1-C14-アリールアミノ、C3-C10-アリールもしくはC2-C14-アラルキルアミノであって、これらの基のいずれも、ヘテロ原子置換されているか、またはヘテロ原子置換されていない、請求項139〜153のいずれか一項記載の使用のための化合物であって、特に、Yが下記である、化合物:
(a) -NHCH3等のヘテロ原子非置換C1-C4-アルキルアミノ;
(b) -NHCH2CH3または-NHCH2CF3等のヘテロ原子置換またはヘテロ原子非置換のC2-C4-アルキルアミノ;
(c) -OCH3等のヘテロ原子非置換のC1-C4-アルコキシ;または
(d) ヒドロキシ。
【請求項155】
R1が-CNである、請求項139〜153のいずれか一項記載の使用のための化合物。
【請求項156】
R1が-C(=O)-Y'であり、かつY'がヘテロ置換またはヘテロ非置換のC1-C14-アリールである、請求項139〜153のいずれか一項記載の使用のための化合物であって、特に

である、化合物。
【請求項157】
実質的に純粋な光学異性体である、請求項139〜156のいずれか一項記載の使用のための化合物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−41353(P2012−41353A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−221593(P2011−221593)
【出願日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【分割の表示】特願2010−542411(P2010−542411)の分割
【原出願日】平成21年1月12日(2009.1.12)
【出願人】(508354669)リアタ ファーマシューティカルズ インコーポレイテッド (7)
【出願人】(500579280)トラスティーズ・オヴ・ダートマス・カレッジ (4)
【Fターム(参考)】