説明

合成ドロマイト類化合物及びその製造方法

一般式Ca1−xMgCOで表され、(a)0.1≦x≦0.5、(b)10≦Sw1≦500、(c)2.88≦α≦3.00、を満足することを特徴とする。〔但し、Sw1:BET比表面積(m/g)、α:X線回折装置による(104)面の面間隔〕。本発明によれば、白色度が高く、表面積が大きく、粗大粒子が少なく、簡便な方法で合成できる合成ドロマイト類化合物を提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は白色度が高く、表面積が大きく、粗大粒子が少なく、従来よりも簡便な手法で合成することができる合成ドロマイト類化合物及びその製造方法に関する。
本発明で得られる新規な合成ドロマイト類化合物は、食品用カルシウム・マグネシウム強化剤、制酸剤、接着剤・プラスチック・ゴム・塗料・インキ・シーリング材・歯摩用材および製紙の充填剤等の各分野に有用である。また、各種の用途を複合させることにより、更に新規な用途展開も期待される。
【背景技術】
カルシウム、マグネシウムをともに含有するドロマイト[CaMg(CO]は、わが国において栃木県葛生地区に豊富に産出する。
ドロマイト鉱物は代表的な堆積岩の一種で、有機物質を含んでいる。この有機物質は、変成作用、続成作用を通じて主に脱水素反応(石炭化作用)と水素付加反応(石油炭化水素化作用)のいずれかを経て、最終的には石墨とメタンとして存在している。その存在量は産地や採掘層によって異なるが、微量のタンパク質、アミノ酸等の有機物及び低分子炭化水素を含有していることもある。そのために白色度は低く、灰色ないし灰白色を呈している。これらの岩石の色は、概ね遊離炭素含有量に比例している。黒色のドロマイトで0.038%、灰色で0.032%、白色で0.020%程度の遊離炭素を含んでいる。これらの不純物は、ドロマイト鉱物の成因からドロマイト結晶の粒界に粘土鉱物と共存していると推定される。これら遊離炭素及び有機物を含有している場合、ドロマイトを食品素材として利用するに際し、色や安全性などに問題が生じる。
天然ドロマイトの粒度を調整する方法は、機械的に乾式・湿式による粉砕・分級を行い、グレード別に粒度調整され比較的安価に製造できるが、現在の分級技術では粗大粒子と微粒子を完全に分級するのは不可能である。
白色度を向上させる方法として、天然に産するドロマイトを主成分とする鉱物を平均粒子径3.0μm以下、最大粒子径25μm以下に微粉砕したもの、あるいはかかる微粉砕物を酸素含有ガスの存在下100〜450℃の温度範囲で熱処理したものからなる、不純物が少なく、白色度が向上し、かつ安全性に問題がない、カルシウム及びマグネシウムを主成分とする食品素材用組成物が提案されている(日本国特開平11−113532号報)。しかし、白色度を十分に向上させるためには500℃以上が必要であるが、500℃以上になるとドロマイトが熱分解し、酸化マグネシウムと酸化カルシウムが副生する。
常圧下でのドロマイトの合成方法として、水溶性カルシウム塩(塩化カルシウム)、水溶性マグネシウム塩(塩化マグネシウム)及び水溶液中でCO2−を発生する化合物(炭酸水素ナトリウム)を水溶液中で反応させることによりドロマイト類化合物の合成方法が発表されている(Geochemical Journal,Vol.12,115 to 119,1978)。しかし、上記ドロマイト類化合物における合成条件は、溶液中のイオン濃度がCaイオン50mmol/l、Mgイオン2140mmol/lであり、MgイオンがCaイオンの約40倍必要で且つ希薄系であるため、工業的に不利である。
また、ドロマイトの水熱合成方法として、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、炭酸アンモニウムを原料としてドロマイトの合成することが報告されている(Hydrothermal Synthsis of Dolomite,part 3)。しかし、CaイオンとMgイオンの比をMg/Ca=1〜4にした場合は副生物としてアラゴナイト、マグネサイト等が生成し、副生物の少ないドロマイトを合成するためには250℃による水熱合成が必要となる。
また、従来の水熱法で得られる合成ドロマイトは、BET比表面積が約10m/g未満のものしか得られない。
日本国特開平10−182149号報には、水溶性カルシウム源、水溶性マグネシウム源及び水溶液中でCO2−を発生する化合物を水溶液中で攪拌下に反応させることにより均一性と結晶性に優れたドロマイト類似構造を有する複合炭酸塩の製造方法が提案されている。しかし、この方法は、上記文献Geochemical Journal,Vol.12,115 to 119,1978と同様の合成方法でCaイオンとMgイオンの比をMg/Ca=0.11〜9で合成を行っている。従って、上記の文献と同様に、この方法ではドロマイト単一相が得られるとは考えにくい。
本発明は、上記事情に鑑み、10気圧を超えるような高耐圧の設備や高温高圧の特殊な合成条件・操作を必要とすることなく、白色度が高く、表面積が大きく、粗大粒子が少ない合成ドロマイト類化合物を簡便かつ安価に提供するものである。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、反応系にアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、錯体形成物質から選ばれる少なくとも1種を存在させることにより、10気圧を超えるような高温高圧の特殊な設備や反応条件によることなく、常温常圧下でも白色度が高く、表面積が大きく、粗大粒子が少ない合成ドロマイト類化合物が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【発明の開示】
即ち、本発明の第一は、一般式Ca1−xMgCOで表され、下記の式(a)〜(c)を満足することを特徴とする合成ドロマイト類化合物を内容とするものである。
(a)0.1≦x≦0.5
(b)10≦Sw1≦500
(c)2.88≦α≦3.00
但し、
Sw1:窒素吸着法によるBET比表面積(m/g)
α :x線回折装置による(104)面の面間隔
本発明の第二は、難溶性カルシウムと難溶性マグネシウムが混合した水懸濁液に炭酸ガスを吹き込んでドロマイト類化合物を製造するにあたり、前記水懸濁液にアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、錯体形成物質から選ばれる少なくとも1種を前記難溶性カルシウム100重量部に対し0.1〜1000重量部含有させ、反応温度0〜80℃で炭酸化反応を行い、次いで、熟成することを特徴とする合成ドロマイト類化合物の製造方法を内容とするものである。
【図面の簡単な説明】
図1は、合成ドロマイト類化合物粒子E1のSEM写真(10,000倍)である。
図2は、合成ドロマイト類化合物粒子E1のX線回折パターンである。
図3は、フィルムの摩耗係数を測定するための装置の説明図である。
【発明を実施するための最良の形態】
本発明の合成ドロマイト類化合物は、Ca1−xMgCO(xは、0.1≦x≦0.5)で表される。xが0.1未満の場合、副生物として炭酸カルシウム(カルサイト)が生成し、xが0.5を超えると、副生物として炭酸マグネシウムが生成し、合成ドロマイトの純度が低下するため好ましくない。従って、好ましくは0.15〜0.5、更に好ましくは0.2〜0.5である。
本発明の合成ドロマイト類化合物のxは、難溶性カルシウムと難溶性マグネシウムの仕込み割合で調整される。
本発明の合成ドロマイト類化合物の窒素吸着法によるBET比表面積(Sw1)は、10≦Sw1≦500m/gである。BET比表面積(Sw1)が10m/g未満の場合、インク吸収量が低くなりインク受容体には不向きである。一方、500m/gを超える場合、凝集力が強くなり粗大粒子の原因となる。従って、好ましくは20〜400m/g、更に好ましくは25〜300m/gである。
本発明の合成ドロマイト類化合物のBET比表面積は、化合時に錯体形成物質を添加することにより、大きくすることができる。
本発明の合成ドロマイト類化合物のX線回折装置による(104)面の面間隔(α)は、2.88〜3.00である。αが2.88未満の場合、炭酸マグネシウムが副生し、一方、3.00を超える場合、炭酸カルシウムが副生するため、合成ドロマイトの純度が低下するため好ましくない。従って、より好ましくは2.88〜2.98、更に好ましくは2.88〜2.95である。
面間隔(α)は、上記xの値とリンクしており、従って、xの値を変化することにより面間隔(α)の値も変化する。
本発明の合成ドロマイト類化合物の電子顕微鏡写真により測定した平均体積粒子径(dx1)は特に限定されるものではないが、通常、0.01〜20μmが好ましい。平均体積粒子径が0.01μm未満の場合、粒子自体が小さいことにより凝集力が強くなり、凝集による粗大粒子の原因となる傾向にある。一方、20μmを超える場合は、樹脂に添加した場合透明性が低下しやすい傾向にある。従って、より好ましくは0.03〜15μm、更に好ましくは0.05〜10μmである。
本発明の合成ドロマイト類化合物の平均体積粒子径は、化合時の錯体形成物質の添加量、周速、化合温度により調整される。錯体形成物質の添加量が多いほど該平均体積粒子径は小さくなり、また、周速が速くなるほど小さくなり、更に、化合温度が高いほど小さくなる。
尚、平均体積粒子径の測定方法は、粒子を電子顕微鏡にて観察した後、座標読み取り装置(デジタイザー)を用い、粒子の長径部分と短径部分の読み取り作業を100個の各粒子について行い、平均体積粒子径を算出する。
本発明の合成ドロマイト類化合物のアスペクト比(β)は特に限定されるものではないが、1〜30が好ましい。合成樹脂等に添加した場合、十分な剛性を与え、また混練時の粒子崩壊を防ぐために1.5〜30が好ましく、より好ましくは2.0〜25、更に好ましくは2.5〜20である。また、シーラント等のチクソ性が必要な分野においては1≦β<1.5が好ましく、より好ましくは1〜1.3、更に好ましくは1〜1.2である。
本発明の合成ドロマイト類化合物の白色度(色相)は特に限定されるものではないが、通常、L値70以上、b値5以下が好ましい。
測定方法は日本電色工業製 測色色差計(ND−1001DP型)を用い、粉体に50重量部対しDOPを100重量部の割合で混合し、ペースト状にして測定を行う。
L値が70未満、b値が5を超えると樹脂等に用いた場合、白色度(色相)が低下しやすい傾向があるため好ましくない。従って、より好ましくはL値75以上、b値4未満である。
本発明の合成ドロマイト類化合物は、難溶性カルシウムと難溶性マグネシウムが混合した水懸濁液に炭酸ガスを吹き込んでドロマイト類化合物を製造するにあたり、該水懸濁液にアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、錯体形成物質から選ばれる少なくとも1種を難溶性カルシウム100重量部に対し0.1〜1000重量部含有させ、反応温度0〜80℃で炭酸化反応を行い、しかる後、熟成することにより合成することができる。
本発明で使用する難溶性カルシウムは、特に制限されるものではないが、例えば、水酸化カルシウム、酸化カルシウム、炭酸カルシウム等を挙げることができる。これらの難溶性カルシウムは単独で又は2種以上を併用してもよい。
本発明で使用する難溶性マグネシウムは、特に制限されるものではないが、例えば、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム等を挙げることができる。これら難溶性マグネシウムは単独で又は必要に応じ2種以上を併用してもよい。また、当然のことながら前記難溶性カルシウム、難溶性マグネシウムには、反応容器内で水溶性のカルシウム塩、マグネシウム塩をアルカリ等で難溶性に変換させたものも含まれる。
本発明で使用する難溶性マグネシウムのBET比表面積は、特に制限されるものではないが、通常5〜200m/gが好ましい。難溶性マグネシウムのBET比表面積が5m/g未満の場合、難溶性マグネシウムの反応性が難溶性カルシウムに比べて低いため複合化されにくく、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウムが副生しやすくなる。一方、200m/gを超えると、難溶性カルシウムの反応性が低いため炭酸マグネシウム、炭酸カルシウムが副生しやすくなる。従って、より好ましくは30〜180m/g、更に好ましくは50〜150m/gである。
本発明に用いられるアルカリ金属塩としては、塩化ナトリウム、臭化ナトリウム、ヨウ化ナトリウム、硝酸ナトリウム、塩化カリウム、臭化カリウム、ヨウ化カリウム、硝酸カリウム等が挙げられ、これらは単独で又は必要に応じ2種以上組み合わせて用いられる。
本発明に用いられるアルカリ土類金属塩としては、塩化カルシウム、臭化カルシウム、硝酸カルシウム、塩化ストロンチウム、硝酸ストロンチウム、塩化バリウム、硝酸バリウム、塩化マグネシウム、臭化マグネシウム、硝酸マグネシウム等が挙げられ、これらは単独で又は必要に応じ2種以上組み合わせて用いられる。
本発明に用いられる錯体形成物質としては、クエン酸、リンゴ酸、シュウ酸等のヒドロキシカルボン酸とそのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩及びアンモニウム塩;グルコン酸、酒石酸等のポリヒドロキシカルボン酸とそのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩及びアンモニウム塩;イミノジ酢酸、エチレンジアミン4酢酸、ニトリロトリ酢酸等のアミノポリカルボン酸とそのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩及びアンモニウム塩;ヘキサメタリン酸、トリポリリン酸等のポリリン酸とそのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩及びアンモニウム塩;アセルアセトン、アセト酢酸メチル、アセト酢酸アリル等のケトン類;硫酸とそのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩及びアンモニウム塩等が挙げられ、特に食品分野で用いる場合はクエン酸、リンゴ酸が好適である。これらは単独で又は必要に応じ2種以上組み合わせて用いられる。
これらの金属塩及び/又は錯体形成物質の添加量は、難溶性カルシウム100重量部に対し0.1〜1000重量部が好ましい。0.1重量未満では複合化されずに炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムが副成し、一方、1000重量部を超えるても、効果は変わらず、過剰な水洗工程が必要となるため経済的に好ましくない。添加時期においては、炭酸化反応前、炭酸化反応途中いずれでもよく、反応前と反応途中の両方に添加してもかまわない。
反応温度は0〜80℃である。反応温度が0℃より低いと凍結しやすくなり、炭酸化がスムーズに行われず、一方、80℃より高いと炭酸ガスの吸収効率が低下するため、複合化されにくくなり炭酸カルシウムが副成する。反応温度が0〜25℃の範囲ではアスペクト比の大きい合成ドロマイト類化合物が得られやすく、また反応温度が25℃を超え80℃以下の範囲ではアスペクト比の小さい合成ドロマイト類化合物が得られやすい。従って、好ましくは0〜60℃、より好ましくは0〜50℃、更に好ましくは5〜40℃である。
本発明の合成ドロマイト類化合物の製造における熟成時の温度は、特に制限はないが、通常180℃以下が好ましい。180℃を超えると規模の大きい耐圧設備が必要となり、工業的にコスト高になり、また操作も煩雑となりやすいため好ましくない、下限は、あまり低くなると複合化の速度が低下し、時間が長くなるので20℃程度が好ましい。
合成ドロマイト類化合物の好ましい調製条件は下記の通りである。
(化合条件)
▲1▼難溶性カルシウム、難溶性マグネシウム混合水懸濁液濃度:
0.5〜20重量%
▲2▼炭酸ガス流量:500〜40000L/hr
▲3▼反応終了時の懸濁液のpH:6.0〜9.0
▲4▼攪拌羽根の周速:0.1〜50m/秒
▲5▼炭酸ガス濃度:15〜100モル%
▲6▼反応温度:0〜80℃
(熟成条件)
▲7▼熟成温度:20〜180℃
▲8▼熟成時間:0.1〜240時間
上記化合条件及び熟成条件を具体的に説明する。
(化合条件)
▲1▼の難溶性カルシウム、難溶性マグネシウム混合水懸濁液濃度は特に限定されないが通常0.5〜20重量%が好ましい。難溶性カルシウム、難溶性マグネシウム混合水懸濁液濃度が0.5重量%未満の場合、生産性が低くコスト高になりやすい。一方、20重量%を超えると反応時に粘度が高くなりすぎ攪拌が困難になりやすい。従って、より好ましくは1〜15重量%、更に好ましくは2〜10重量%である。
難溶性カルシウム水懸濁液と難溶性マグネシウム水懸濁液の量は、一般式Ca1−xMgCO(0.1≦x≦0.5)を満足するように混合される。
▲2▼の炭酸ガス流量としては、特に限定されないが、難溶性カルシウムと難溶性マグネシウムの合計1kg当たり、通常500〜40000L/hrが好ましい。炭酸ガス流量が500L/hr未満では、炭酸カルシウムや炭酸マグネシウムが副生しやすくなり、一方、40000L/hrを超えるとガス効率が悪くなるため工業的にコスト高になりやすく好ましくない。
▲3▼の反応終了時の懸濁液のpHは特に限定されないが、通常6.0〜9.0が好ましい。pHが6.0未満では炭酸化反応がすでに完結しているため、これ以上炭酸化を行う必要はない。一方、9.0を超えると未反応の難溶性マグネシウムが残存しやすくなるため好ましくない。従って、より好ましくは6.5〜8である。
▲4▼の攪拌羽根の周速は特に限定されないが、通常炭酸化反応の効率を上げるために0.1〜50m/秒が好ましい。周速が0.1m/秒未満では炭酸化反応の効率を上げるには不十分になりやすく、一方、50m/秒を超えるとコスト高になりやすく好ましくない。
▲5▼の炭酸ガス濃度は特に制限されないが、通常炭酸化反応を効率よく行うために15〜100重量%が好ましい。15重量%未満では炭酸化反応に時間がかかるために生産効率が低下しやすく、また複合化の効率も低下するため炭酸マグネシウム、炭酸カルシウムが副生しやすくなる。
▲6▼反応温度は0〜80℃である。反応温度が0℃より低いと凍結しやすくなり、炭酸化がスムーズに行われず、一方、80℃より高いと炭酸ガスの吸収効率が低下するため、複合化されにくくなり炭酸カルシウムが副成する。
(熟成条件)
▲7▼の熟成温度は特に限定されないが、通常20〜180℃が好ましい。熟成温度が20℃未満では複合化が進みにくく、長時間を必要とする傾向にあるため好ましくない。一方、180℃を超えると10気圧を超えてしまい、高度の耐圧設備を必要とし、操作も煩雑となりコスト高になりやすいので好ましくない。従って、より好ましくは40〜170℃、もっとも好ましくは50〜150℃である。
▲8▼の熟成時間に関しては上記▲1▼〜▲6▼の製造条件により熟成時間が左右されるため、熟成時間は特に限定されないが、通常0.1〜240時間である。熟成時間が0.1時間未満の場合、合成ドロマイト類化合物が得られにくく、一方、240時間を超えると工業的にコスト高になりやすい。従って、より好ましくは0.2〜120時間、更に好ましくは0.5〜60時間である。
上記方法で化合・熟成を行った後、必要に応じて、粒子の分散性や安定性を高めるために表面処理剤を使用することができる。
表面処理量に関しては、合成ドロマイト類化合物のBET比表面積によって左右されるため、特に限定されないが、通常合成ドロマイト類化合物に対して0.1〜200重量%である。表面処理量が0.1重量%未満の場合、合成樹脂に添加した場合、十分な粒子の分散性や安定性が得られにくい、また200重量%を超えると表面処理剤が遊離しやすくなるため好ましくない。
表面処理剤としては、特に限定されないが、通常、水溶性界面活性剤や水溶性安定剤、表面改質剤を用いることができ、これらは単独で又は必要に応じ2種以上組み合わせて用いられる。
水溶性界面活性剤としては、例えば、マレイン酸−オレフィン(炭素数が4〜8)共重合体(ナトリウム、カリウム、アンモニウム等)の塩、マレイン酸−スチレン共重合体(ナトリウム、カリウム、アンモニウム等)の塩、ポリスチレンスフホン酸ナトリウム等の重合物(オリゴマー);ナフタレンスルホン酸ナトリウムホルマリン縮合物、アルキルナフタレンスルホン酸ナトリウムホルマリ縮合物、メラミンスルホン酸ナトリウムホルマリン縮合物等の重縮合物;リグニンスルホン酸ナトリウム等の天然物(誘導体);ポリアクリル酸(ナトリウム、カリウム、アンモニウム等)の塩、アクリル酸−マレイン酸共重合体(ナトリウム、カリウム、アンモニウム等)の塩等のカルボン酸系重合物;トリポリリン酸ナトリウム、ヘキサメタリン酸ナトリウム等の縮合系無機物;その他、上記以外の一般的なアニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、(HLBが8以上の)ショ糖脂肪酸エステル、モノグリセリン、トリグリセリン、ペンタグリセリン、ヘキサグリセリン、デカグリセリン等のグリセリン脂肪酸エステル、大豆及び卵黄由来の粗レシチン、高純度レシチン、酵素分解レシチン等のレシチン、ソルビタン脂肪酸エステル等で表される非イオン性活性剤等が例示でき、これらは単独で又は必要に応じ2種以上組み合わせて用いられる。
また、水溶性安定剤としては、酸処理デンプン、アルカリ処理デンプン、酸化デンプン、シクロデキストリン、デキストリン、酵素処理デンプン、リン酸エステル化デンプン、酢酸エステルデンプン、オクテニルコハク酸デンプン、エーテル化デンプン、架橋デンプン等の加工澱粉、ウェランガム、カラギナン、アルギン酸ソーダ、アルギン酸プロピレングリコールエステル、グァーガム、ジェランガム、カラヤガム、ペクチン、寒天、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、タマリンドガム、ガディガム、トラガントガム、キサンタンガム、プルラン、カシアガム、ローカストビーンガム、アラビアガム、アラビノガラクタン、スクレロガム、キトサン等の増粘多糖類、ガラクトース、ガラクツロン酸、ラムノース、キシロース、フコース、グルコース等の大豆より抽出した大豆多糖類、シュクロース、トレハロース、トレハルロース、マルトース、セロビオース、ラクトース、キシロビオース、イソマルトース、メリビオース、パラチノース、ゲンチビオース、マルトオリゴ糖、イソオリゴ糖、グルコオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、大豆オリゴ糖、キシロオリゴ糖、乳果オリゴ糖、フラクトオリゴ糖、カップリングシュガー等の少糖、中性アミノ酸、酸性アミノ酸、塩基性アミノ酸等のアミノ酸、グリセロール、エリスリトール、キシリトール、リビトール、アラビトール、ガラクチトール、マンニトール、ソルビトール、イジトール、マルチトール、ラクチトール、イソマルト、マルトトリイトール、マルトテトライトール、還元水飴等の糖アルコール、ピロリン酸、トリポリリン酸、テトラポリリン酸、ペンタポリリン酸、ヘキサメタリン酸、ウルトラポリリン酸のナトリウム及びカリウム塩等の縮合リン酸塩、ポリビニルアルコール、アクリル酸系ポリマー、エチレンイミン系ポリマー、ポリエチレンオキシド、ポリアクリルアミド、ポリスチレンスルホン酸塩、ポリアミジン、イソプレン系スルホン酸ポリマー等の合成系水溶性高分子等が例示でき、これらは単独で又は必要に応じ2種以上組み合わせて用いられる。
表面改質剤としては、シランカップリング剤やチタネートカップリング剤等のカップリング剤、ナフテン酸に代表される脂環族カルボン酸、アビエチン酸、ピマル酸、パラストリン酸、ネオアビエチン酸に代表される樹脂酸及びこれらの不均化ロジン、水添ロジン、2量体ロジン、3量体ロジンに代表される変成ロジン、アクリル酸、メタクリル酸、シュウ酸、クエン酸等の有機酸、カプリル酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸に代表される飽和脂肪酸、オレイン酸、エライジン酸、リノール酸、リシノール酸に代表される不飽和脂肪酸、繊維素化合物、シリキサン化合物等が例示できる。またこれらのアルカリ金属塩又はアンモニウム塩でもよい。これらは単独で又は必要に応じ2種以上組み合わせて用いられる。
前記表面処理剤による表面処理方法は、特に限定されるものでなく、湿式処理の場合、所定量の合成ドロマイト類化合物水懸濁に均等に撹拌できる撹拌力又は濃度で、前記した表面処理剤を十分混合すればよい。また、さらに機械的な湿式分散処理で粒子の分散性をさらに向上させる調製方法も可能である。湿式分散処理機としては、ダイノーミル、マイクロビーズミル、アッペクスミル、サンドミル、コボールミル等の湿式粉砕機、ホモゲナイザー、マイクロフルイダイザー、ナノマイザー等の高圧乳化分散機、超音波分散機等が例示できる。
また表面処理後、粉体化する場合は、噴霧乾燥機又は箱形乾燥機を用いて乾粉化することにより、本発明が目的とする合成ドロマイト類化合物を調製することができる。
乾式処理の場合、前記した表面処理剤の融点以上の温度で、ヘンシェルミキサー、タンブラーミキサー、ニーダー等を使用し、本廃明の合成ドロマイト類化合物を処理することが可能である。
熟成後もしくは表面処理後、スラリー中に含まれるアルカリ金属イオン等の夾雑イオンを濾過水洗することが望ましい。また、濾過の電気伝導度は特に限定されるもにでないが、通常10mS/cm以下が好ましい。より好ましくは1mS/cm以下、更に好ましくは500μS/cm以下である。
水洗方法に関しては特に制限はなく、シックナー、オリバー、ロータリーフィルター、ラロックスプレス等を用い、水洗・濃縮を行うことができる。
上記の如き、本発明の新規な合成ドロマイト類化合物は、成型用樹脂、塗料用樹脂、インキ用樹脂、シーラント用樹脂、接着剤用樹脂等各種の樹脂に配合され、優れた特性、物性を有する樹脂組成物とされる。
成型用樹脂としては、特に制限されるものではないが、例えばABS樹脂、フッ素樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン又はプロピレンと他のモノマーの共重合体等のポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリル系樹脂、メタクリル系樹脂、塩化ビニル系樹脂、塩化ビニリデン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエーテル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂等に代表される熱可塑性樹脂や、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイミド樹脂等に代表される熱硬化性樹脂を例示することができ、これらは単独で又は必要に応じ2種以上組み合わせて使用することも可能である。
合成ドロマイト類化合物とこれらの樹脂との配合割合は特に限定されず、所望の物性に応じて適宜決定すればよいが、合成ドロマイト類化合物は、通常樹脂100重量部に対し0.05〜70重量部が好適である。樹脂組成物には安定剤等の各種添加剤を添加しても良いことは勿論である。
塗料用樹脂としては、特に限定されるものではないが、アルキド樹脂、アクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、スチレン樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂等に代表される溶剤系塗料用樹脂、水系塗料においては、アルキド樹脂、アクリル樹脂、ラッテクス樹脂、酢酸ビニル樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、スチレン樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂等に代表される一般塗料用エマルジョン樹脂、アルキド樹脂、アミン樹脂、スチレン−アリルアルコール樹脂、アミノアルキド樹脂、ポリブタジエン樹脂等に代表される一般塗料用水溶性樹脂、エマルジョン樹脂と水溶性樹脂とをブレンドした塗料用ディスパージョン樹脂、架橋型水可溶性樹脂を乳化剤としたディスパージョン樹脂、アクリルハイドロゾル等を例示することができ、これらは単独で又は必要に応じ2種以上組み合わせて使用することも可能である。
合成ドロマイト類化合物とこれらの樹脂との配合割合は特に限定されず、所望の物性に応じて適宜決定すればよいが、合成ドロマイト類化合物は、通常樹脂100重量部に対し5〜30重量部が好適である。樹脂組成物には可塑剤、分散剤等の各種添加剤を添加しても良いことは勿論である。
紙用樹脂としては、特に限定されるものではないが、水可溶性、水分散性、アルコール等の溶剤分散性の樹脂が挙げられる。例えばPVAまたはその変性体(カチオン変性、アニオン変性、シラノール変性)、澱粉又はその変性体(酸化、エーテル化)、ゼラチン又はその変性体、カゼイン又はその変性体、カルボキシメチルセルロース、アラビアゴム、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等のセルロース誘導体、SBRラテックス、NBRラテックス、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体等の共役ジエン系共重合体ラテックス、官能基変性重合体ラテックス、エチレン酢酸ビニル共重合体等のビニル系共重合体ラテックス、ポリビニルピロリドン、無水マレイン酸又はその共重合体、アクリル酸エステル共重合体等を例示することができ、これらは単独で又は必要に応じ2種以上組み合わせて使用することも可能である。
合成ドロマイト類化合物とこれらの樹脂との配合割合は特に限定されず、所望の物性に応じて適宜決定すればよく、増粘剤、分散剤等の各種添加剤を添加しても良いことは勿論である。
インキ用樹脂としては特に限定されるものではないが、ロジン変成フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、ケトン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ブチラール樹脂、スチレン−マレイン酸樹脂、塩素化ポリプロピレン、アクリル樹脂、クマロン・インデン樹脂、石油樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ニトロセルロース、エチルセルロース、エチルヒドロキシセルロース、環化ゴム、塩化ゴム等を例示することができ、これらは単独で又は必要に応じ2種以上組み合わせて使用することも可能である。
合成ドロマイト類化合物とこれらの樹脂との配合割合は特に限定されず、所望の物性に応じて適宜決定すればよいが、合成ドロマイト類化合物は、通常樹脂100重量部に対し25〜200重量部が好適である。樹脂組成物には安定剤、ドライヤ等の各種添加剤を添加しても良いことは勿論である。
シーラント用樹脂としては特に限定されるものではないが、ポリウレタン樹脂、ポリサルファイド樹脂、シリコーン樹脂、変成シリコーン樹脂、ポリイソブチレン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂等を例示することができ、これらは単独で又は必要に応じ2種類以上組み合わせて使用することも可能である。
合成ドロマイト類化合物とこれらの樹脂との配合割合は特に限定されず、所望の物性に応じて適宜決定すればよいが、合成ドロマイト類化合物は、通常樹脂100重量部に対し50〜120重量部が好適である。樹脂組成物には着色剤、安定剤等の各種添加剤を添加しても良いことは勿論である。
接着剤用樹脂としては特に限定されるものではないが、ユリア樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂等を例示することができ、これらは単独で又は必要に応じ2種類以上組み合わせて使用することも可能である。
合成ドロマイト類化合物とこれらの樹脂との配合割合は特に限定されず、所望の物性に応じて適宜決定すればよいが、合成ドロマイト類化合物は(通常樹脂100重量部に対し50〜120重量部が好適である。樹脂組成物には安定剤、可塑剤等の各種添加剤を添加しても良いことは勿論である。
本発明の合成ドロマイト類化合物には、合成樹脂の粘性、その他の物性を調整するために、コロイド炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、コロイド状シリカ、タルク、カオリン、ゼオライト、樹脂バルーン、ガラスバルーン等の充填剤、及び、例えばジオクチルフタレート、ジブチルフタレート等の可塑剤、トルエン、キシレン等の石油系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、セロソルブアセテート等のエーテルエステル等に例示される溶剤、或いはシリコーンオイル、脂肪酸エステル変成シリコーンオイル等の添加剤、着色剤等を1種又は2種以上組み合わせて添加することが可能である。
本発明の合成ドロマイト類化合物は、例えばシーラント、接着剤に代表される硬化型樹脂に添加した場合には、優れた粘性・チキソ性及び耐スリップ性、並びに目地追従性を有する。例えば塗料に配合した場合は、優れた防タレ性、高光沢、高い透明性、高い塗膜強度を有し、また印画用シートに配合した場合は、優れたインク定着性を有する。また、例えば成形用樹脂に配合した場合は、ウエルドライン面の強度低下が防止され、優れた強度を有し、またフィルムに配合した場合は、優れた透明性、耐ブロッキング性、耐スクラッチ性、耐摩耗性を有する。
本発明の合成ドロマイト類化合物は、カルシウム・マグネシウム強化剤として牛乳、加工乳、乳飲料、果汁、コーヒー、紅茶、クリーム等の液状食品、ワイン、酒等のアルコール飲料、米飯、プリン、ゼリー、ヨーグルト、キャンデー、スナック菓子、パン、麺等の食品に配合されて好適に使用される。また、乳化剤、有機酸、アミノ酸、着色料、香料、調味料等のその他の成分を配合することも可能である。
更に、本発明の合成ドロマイト類化合物は、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム等の水難溶性カルシウム塩の分散体や乳酸カルシウム、塩化カルシウム等の水可溶性カルシウム塩及び/又は炭酸マグネシウム、リン酸マグネシウム、水酸化マグネシウムの分散体や塩化マグネシウム、硝酸マグネシウム、硫酸マグネシウム等の水可溶性マグネシウム塩と併用しても何ら差し支えない。
以下、実施例及び比較例を示し、本発明をさらに具体的に説明するが、これらは本発明を何ら制限するものではない。
【実施例1〜8】
表2記載の反応条件で炭酸化反応を行った後、更に表2記載の熟成条件で熟成を行い、しかる後、脱水・水洗を行い、700℃以下の乾燥雰囲気下で乾燥し、解砕仕上げを行い、合成ドロマイト類化合物粒子E1〜E8を得た。合成ドロマイト類化合物粒子E1〜E8の特性を表1に示す。
また、図1に合成ドロマイト類化合物粒子E1のSEM写真を示し、図2に合成ドロマイト類化合物E1のX線回折パターンを示す。
比較例1
炭酸ナトリウム4モルを水に溶解し2リットルに調整し、40℃に保ちながら攪拌した。これに塩化カルシウム2モルと塩化マグネシウム2モルを水に溶解し2リットルとした液を10リットル/hの流量で添加した。さらに80℃で5時間熟成後、脱水・水洗を行い、700℃以下の乾燥雰囲気下で乾燥し、解砕仕上げを行い、合成ドロマイト類化合物粒子C1を得た。合成ドロマイト類化合物粒子C1の特性を表3に示す。得られた粒子は合成ドロマイトと炭酸カルシウム(アラゴナイト)の混合物であった。
比較例2
天然ドロマイト(清水工業製)を水に20重量%の濃度で懸濁した。次に、この懸濁液をダイノーミルを用いて湿式粉砕し、700℃以下の乾燥雰囲気下で乾燥し、解砕仕上げを行い天然ドロマイト粒子C2を得た。天然ドロマイト粒子の特性を表3に示す。
比較例3
表2記載の反応条件で炭酸化反応を行った後、更に表2記載の熟成条件で熟成を行い、しかる後、脱水・水洗を行い、700℃以下の乾燥雰囲気下で乾燥し、解砕仕上げを行い、合成ドロマイト類化合物粒子C3を得た。合成ドロマイト類化合物粒子C3の特性を表3に示す。
得られた粒子は炭酸カルシウム(カルサイト)と炭酸マグネシウムの混合物であった。
比較例4
炭酸カルシウム(カルサイト)0.05モルと塩化マグネシウム0.025モルと塩化カルシウム0.025モルを水に懸濁させ0.4リットルとした液を230℃で20時間水熱合成を行った後、脱水.水洗を行い、700℃以下の乾燥雰囲気下で乾燥し、解砕仕上げを行い、合成ドロマイト類化合物粒子C4を得た。合成ドロマイト類化合物粒子C4の特性を表3に示す。



応用実施例1:インク定着性試験
合成ドロマイト類化合物E1をイオン交換水に分散させ15重量%水溶液とした。次に、ポリビニルアルコール(日本合成化学工業製 ゴーセノールGH17)をイオン交換水に溶解させ10重量%水溶液を得た。上記イオン定着化合物水溶液とポリビニルアルコール水溶液を重量比で4.5:1になるように混合・攪拌して塗工液を得た。
この塗工液を100μm厚の透明ポリエチレンテレフタレートフィルムの片面にコート機及び熱風乾燥炉を用いてダイコート後、120℃で乾燥することによって10μm厚のインク受容層を形成した印画シートを作成した。
応用実施例2〜8、応用比較例1〜4
応用実施例1の合成ドロマイト類化合物E1をE2〜E8、C1〜C4に変更する以外は同様にして印画紙シートを作成した。
応用実施例1〜8及び応用比較例1〜4で得られた印画紙シートの透明性、表面性、印字特性を下記方法により評価した。結果を表4に示す。
(評価)
(1)透明性
印画シートの全光線透過率(%)をJIS K−7105に従ってヘイズメーター(日本電色工業製 NDH−100DO)を用いて測定した。
(2)表面性
黙視により印画シートの表面上のクラックの有無を下記の基準により確認した。
○:黙視によりクラックが観察できない。
×:クラックが観察できる。
(3)印字特性
作成された印字シートをプリンタ(HP社製 デスクジェット1200C)の給紙トレイに装着し、単色又は3原色のカラー印刷モードでインクジェット記録を行った。
(用いたインク染料)
イエロー:C.I.アシッドイエロー23
マゼンタ:C.I.アシッドレッド52
シアン:C.I.アシッドブルー9
(インク液組成)
染料 3重量部
ジエチレングリコール 5重量部
ポリエチレングリコール 10重量部
水 82重量部
上記のインクを用いて以下の印字特性(滲み、ブリーディング、ビーディング、モットリングの有無)に関する評価を行った。即ち、単色又は3原色のカラー印刷でベタ印字を行い、滲み、ブリーディング、ビーディング、モットリングの有無を黙視にて観察した。
◎:3原色のカラー印刷で発生せず。
○:単色で発生せず。
×:単色で発生する。

表4から明かなように、本発明の合成ドロマイト類化合物を用いた印画用シートは、インク定着性が極めて優れている。
応用実施例9〜16、応用比較例5〜10
応用実施例9〜16はE1〜E8のエチレングリコールスラリーを、応用比較例5〜8はC1〜C4のエチレングリコールスラリーを、応用比較例9は市販のA型ゼオライト(商品名:合成A型ゼオライト、水澤化学株式会社製)、応用比較例10は市販の合成シリカ(商品名:アエロジル#130、日本アエロジル株式会社製)のエチレングリコールスラリーをポリエステル化反応前に添加してポリエステル化反応を行い、粒子を0.1重量%含有した極限粘度数(オルソクロロフェノール、35℃)0.62dl/gのポリエチレンテレフタレートを調製した。該ポリエチレンテレフタレートを160℃で乾燥した後290℃で溶融押し出し、40℃に保持したキャスティングドラム状に急冷固化せしめて未延伸フィルムを得た。引き続き、該未延伸フィルムを加熱ローラーで70℃に予熱した後、赤外線ヒーターで加熱しながら縦方向に3.6倍延伸した。続いて90℃の温度で横方向に4.0倍に延伸した後200℃で熱処理を行い、厚さ15μmの二軸配向フィルムを得た。
このようにして得られたフィルムの品質を、以下に示す方法で評価し、その結果を表5に示す。
▲1▼フィルム表面粗さ(Ra)
中心線平均粗さ(Ra)としてJIS−B0601で定義される値であり、本発明では株式会社小坂研究所の触針式表面粗さ計(SURFCORDER SF−30C)を用いて測定する。測定条件等は次の通りである。
(1)触針先端半径:2μm
(2)測定圧力:30mg
(3)カットオフ:0.25mm
(4)測定長:0.5mm
(5)同一試料について5回繰り返し測定し、最も大きい値を1つ除き、残り4つのデーターの平均値を表す。
▲2▼フィルムの摩耗係数(μk)
図3に示した装置を用いて下記のようにして測定する。図3中、1は巻きだしリール、2はテンションコントローラー、3,5,6,8,9及び11はフリーローラー、4はテンション検出機(入口)、7はステンレス網SUS304製の固定棒(外径5mm)、10はテンション検出機(出口)、12はガイドローラー、13は巻取りリールをそれぞれ示す。
温度20℃、湿度60%の環境で、幅1/2インチに裁断したフィルムを、7の固定棒(表面粗さ0.3μm)に角度θ=(152/180)πラジアン(152°)で接触させて毎分200cmの速さで移動(摩擦)させる。入口テンションT1が35gとなるようにテンションコントローラーを調整したときの出口テンション(T2:g)をフィルムが90m走行した後に出口テンション検出機で検出し、次式で走行摩耗係数μkを算出する。
μk=(2.303/θ)log(T2/T1)
=0.86log(T2/35)
▲3▼摩耗性評価−I
1/2インチ幅のフィルム表面を直径5mmのステンレス製固定ピン(表面粗さ0.58)に角度150°で接触させ、毎分2mの速さで約15cm程度往復移動、摩擦させる(この時入口テンションT1を60gとする)。この操作を繰り返し、往復40回後の摩擦面に生じたスクラッチの程度を目視判定する。この時スクラッチの殆ど生じないものをA、スクラッチの発生のわずかなものをB、スクラッチの発生が全面に多数生じたものをD、スクラッチの発生が前2者の中間のものをC、と4段階に判定する。
▲4▼摩耗性評価−II
フィルムの走行面の削れ性を5段のミニスーパーカレンダーを使用して評価する。カレンダーはナイロンロールとスチールロールの5段カレンダーであり、処理温度は80℃、フィルムにかかる線圧は200kg/cm、フィルムスピードは50m/分で走行させる。走行フィルムは全長4000m走行させた時点でカレンダーのトップロールに付着する汚れでフィルムの削れ性を評価する。
<4段階評価>
A:ロールの汚れが全く認められない。
B:ロールの汚れが殆ど認められない。
C:ロールの汚れがかなり認められる。
D:ロールの汚れが顕著に認められる。
▲5▼フィルム表面の粗大突起数
フィルム表面にアルミニウムを薄く蒸着した後、二光束干渉顕微鏡を用いて四重環以上の粗大突起数(測定面積1mm当たりの個数)をカウントし、粗大突起数により次のランク付けで表す。
1級:16個以上 2級:12〜15個
3級:8〜11個 4級:4〜7個
5級:0〜3個

応用実施例17〜24 応用比較例11〜17
応用実施例17〜24はE1〜E8の粒子、応用比較例11〜14はC1〜C4の粒子、応用比較例15は市販のA型ゼオライト(商品名:合成A型ゼオライト、水澤化学株式会社製)、応用比較例16は市販の合成シリカ(商品名:アエロジル#130、日本アエロジル株式会社製)を用い、また応用比較例17は粒子を添加しないブランクとして下記の要領でポリプロピレン組成物を調製し、二軸延伸ポリプロピレンフィルムを得、その品質を評価した。結果を表6に示す。
(ポリオレフィンフィルムの製造)
メルトフローレートが1.9g/10分であるポリプロピレン樹脂100重量部に酸化防止剤として2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール0.10重量部、イルガノックス1010(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製、登録商標)0.02重量部、塩酸キャッチ剤としてステアリン酸カルシウム0.05重量部、及び本発明にかかる合成樹脂用添加剤を添加し、スーパーミキサーで混合後押し出し機でペレット化した。
このペレットを押し出し機を用いてシート状フィルムにし、縦方向5倍、横方向10倍に延伸して最終的に厚さ30μmの延伸フィルムを得た。延伸フィルムの一面には、コロナ放電処理を施した。
これらの二軸延伸フィルムについて、透明性、ブロッキング性及び耐スクラッチ性を測定した。
フィルム透明性はASTM−D−1003に準拠して、フィルムを4枚重ねて測定した。
フィルムの耐ブロッキング性は、2枚のフィルムの接触面積が10cmとなるように重ねて、2枚のガラス板の間におき、50g/cmの荷重をかけて40℃の雰囲気中に7日間放置後、ショッパー型試験機を用いて、引っ張り速度500mm/分にて引き剥して、その最大荷重を読みとって評価した。
耐スクラッチ性は、ガラス板状に二軸延伸フィルム1枚を固定し、他方接触面積が50cmなる箱型の入れ物にフィルムを固定し、加重を4kg掛けて6回擦り、擦る前後の透明性で評価した。この値が小さいほど耐スクラッチ性が良好となる。

表5、表6から明かなように本発明の合成ドロマイト類化合物は、例えばポリエステルに用いた場合においては、滑り性、耐摩耗性に優れ、粗大突起の少ない良好フィルムが得られ、ポリオレフィンのフィルムに用いた場合は、良好なブロッキング防止機能と共に良好な透明性と耐スクラッチ性を有するポリオレフィンフィルムを得ることができる。
【産業上の利用可能性】
叙上のとおり、本発明の合成ドロマイト類化合物は、白色度が高く、表面積が大きく、粗大粒子が少なく、例えば、印画用シートに用いられた場合、インク定着性に優れた印画用シートを提供することができ、また、プラスチックに添加された場合、透明性、耐ブロッキング性、耐スクラッチ性、耐摩耗性等に優れたフィルムを提供することができる。更に、本発明の合成ドロマイト類化合物は、従来法に比べ低温で製造できるので、設備コストが安価で操作も容易である。更にまた、本発明の製造方法によれば、アスペクト比の大きい紡錘形状のものや、アスペクト比の小さいキュービック形状のもの等の形状を制御したものを容易に得ることができる。
【図1】

【図2】

【図3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式Ca1−xMgCOで表され、下記の式(a)〜(c)を満足することを特徴とする合成ドロマイト類化合物。
(a)0.1≦x≦0.5
(b)10≦Sw1≦500
(c)2.88≦α≦3.00
但し、
Sw1:窒素吸着法によるBET比表面積(m/g)
α :x線回折装置による(104)面の面間隔
【請求項2】
下記の式(d)を満足する請求項1記載の合成ドロマイト類化合物。
(d)0.01≦dx1≦20
但し、
dx1:電子顕微鏡写真により測定した合成ドロマイト類化合物の平均体積粒子径(μm)
【請求項3】
下記の式(e)を満足する請求項1又は2記載の合成ドロマイト類化合物。
(e)1≦β≦30
β:合成ドロマイト類化合物のアスペクト比
【請求項4】
水溶性界面活性剤、水溶性安定剤、表面改質剤より選ばれた少なくとも1種以上を含有してなる請求項1〜3のいずれか1項に記載の合成ドロマイト類化合物。
【請求項5】
難溶性カルシウムと難溶性マグネシウムが混合した水懸濁液に炭酸ガスを吹き込んでドロマイト類化合物を製造するにあたり、前記水懸濁液にアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、錯体形成物質から選ばれる少なくとも1種を前記難溶性カルシウム100重量部に対し0.1〜1000重量部含有させ、反応温度0〜80℃で炭酸化反応を行い、次いで、熟成することを特徴とする合成ドロマイト類化合物の製造方法。
【請求項6】
熟成時の圧力が10気圧以下である請求項5記載の製造方法。

【国際公開番号】WO2004/024628
【国際公開日】平成16年3月25日(2004.3.25)
【発行日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−535920(P2004−535920)
【国際出願番号】PCT/JP2003/011537
【国際出願日】平成15年9月10日(2003.9.10)
【出願人】(390008442)丸尾カルシウム株式会社 (31)
【Fターム(参考)】