説明

合成プローブによる融合タンパク質の標識化

本発明は、O−アルキルグアニン−DNAアルキルトランスフェラーゼに由来するアルキルシトシントランスフェラーゼ(ACTs)と呼ばれる新規なタンパク質、およびこれらのACTsに標識を特異的に移行させるACTsのための基質、およびこれらを含む融合タンパク質に関する。本発明に従う基質は、式(I)(式中、Rは、芳香族もしくはヘテロ芳香族基であるか、またはOCH−に連結された二重結合を有する、場合により置換されている不飽和アルキル、シクロアルキルもしくはヘテロサイクリル基であり;Rはリンカーであり、そしてLは標識または複数の同じまたは異なる標識である)で示される置換されたシトシンである。本発明は、更に式(I)のこれらの基質からACTsおよびACT融合タンパク質に標識Lを移行させる方法に関する。ACT−式(I)の化合物の系は、既知の系O−アルキルグアニン−DNAアルキルトランスフェラーゼ(AGT)−ベンジルグアニンと共に二重標識化研究のために特に適当である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基質から標識を受け入れるように特異的にデザインされたタンパク質部分を有する融合タンパク質に標識を移行させる方法、新規な特異的基質およびこのような方法において適当な特異的基質の標識を受け入れる新規なタンパク質に関する。
【0002】
発明の背景
in vitroまたはin vivo条件下に関心のあるタンパク質を単離および/または追跡するために関心のあるタンパク質を特異的に標識することを可能とする改良された標識化技術に対する要求が絶えずある。1つの具体的な方法は、WO02/083937に開示されており、これは、関心のあるタンパク質をO−アルキルグアニン−DNAアルキルトランスフェラーゼ(AGT)に融合させ、そしてAGT融合タンパク質を、標識を有する特異的AGT基質と接触させ、それにより標識を融合タンパク質に移行させる、関心のあるタンパク質を検出および/または操作するための方法を記載している。次いでAGT融合タンパク質を検出しそして場合により標識を使用して更に操作する。野生型AGTのいくつかの突然変異体は、このような標識化方法において野生型AGTよりも良好に適当であることが示され(WO2004/031404; Juillerat, A. et al., Chem. Biol. 10:313-317, 2003; Gronemeyer, T. et al., Protein Eng. Des. Sel. 19:309-316, 2006)、そしてAGTおよびAGT突然変異体を含む融合タンパク質に標識を移行させるのに使用するための広範囲の置換されたベンジルグアニンおよび関連したヘテロアリールメチルグアニン化合物が記載されている(WO2004/031405)。
【0003】
簡単なO−ベンジル−シトシンが知られている。Freccero, M. et al., J. Am. Chem. Soc. 125:3544-3553, 2003は、シトシンをo−キノンメチドと反応させてO−o−ヒドロキシベンジルシトシンを得た。Ward, A.D. and Baker, B. R., J. Med. Chem. 20:88-92, 1977,は、2−クロロ−4−アミノピリミジンおよびベンジルアルコールのナトリウム塩から得られるO−ベンジルシトシンを記載している。
【0004】
発名の要約
本発明は、O−アルキルグアニン−DNAアルキルトランスフェラーゼに由来するアルキルシトシントランスフェラーゼ(ACTs)と呼ばれる新規なタンパク質、およびこれらのACTsに標識を特異的に移行させるACTsのための基質、およびこのようなACTを含む融合タンパク質に関する。本発明に従う基質は、式(I)
【化1】


(式中、
は、芳香族もしくはヘテロ芳香族基であるか、またはOCH−に連結された二重結合を有する、場合により置換されている不飽和アルキル、場合により置換されている不飽和シクロアルキルもしくは場合により置換されている不飽和ヘテロサイクリル基であり;
は、リンカーであり、そして
Lは、標識または複数の同じまたは異なる標識である)
の置換されたシトシンである。
【0005】
本発明は、更に式(I)のこれらの基質からアルキルシトシントランスフェラーゼ(ACTs)およびACT融合タンパク質に標識を移行させる方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】蛍光標識を有する特異的基質ベンジルグアニン(BG)およびベンジルシトシン(BC)を使用してAGTおよびACTを含む融合タンパク質に関するin vitro二重標識化実験。GST−ACT1および6×HisAGTの等モル混合物をBGFL、BGCy5、BCFL、BCCy5またはBGCy5/BCFLもしくはBGFL/BCCY5の等モル混合物とインキュベーションすることによりアッセイを行った。蛍光染料で標識されたタンパク質混合物をSDS−PAGEにより解析した。実施例12参照。GST−ACT1:ACT1(配列番号1)のグルタチオンS−トランスフェラーゼ(GST)の融合タンパク質。6×His−AGT:AGT(配列番号2)の短いペプチド6×Hisとの融合タンパク質。BGFLおよびBGCy5:それぞれフルオレセインおよびCy5を有するリンカーで置換されたベンジルグアニン、Juillerat, A. et al., Chem. Biol. 10:313-317, 2003および化合物11(実施例9)参照 。BCFL:化合物5(実施例4)。BCCy5:化合物10(実施例8)。
【図2】BCに対する選択性を証明する蛍光標識(FL)を有する基質ベンジルグアニン(BG)およびベンジルシトシン(BC)を使用するACT10に関する標識実験。異なる時間のインキュベーションの後にSDSゲルランの蛍光読み取りを、下部の対応するグラフとともに上部に示す。ACTから形成されたACT−フルオレセインコンジュゲートの百分率(%ACT−FL)をインキュベーション時間(分)に対して示す。GST−ACT10のBGFLまたはBCFLとの0.5μM 混合物をインキュベーションすることによりアッセイを行った。GST−ACT10:ACT10(配列番号12)のグルタチオンS−トランスフェラーゼ(GST)との融合タンパク質。BGFLおよびBCFL:図1の説明参照。見出された結合定数:kBC=1130±150M−1s−1;kBG〜10M−1s−1
【図3】ACT1、ACT9およびACT10の尿素で誘導された変性(unfolding)。形成されたACT−フルオレセインの百分率(%ACT−FL)を示す。0M尿素[(NHCO]で得られた値を100%に設定する。タンパク質(0.5μM)を、尿素(0〜8M)を補充されたカイネティックバッファー(50mM HEPES, pH7.2、1mM DTT)中で30分間インキュベーションした。次いで溶液を20μMBCFLに調節しそして2時間インキュベーションした。次いでサンプルをSDSバッファー中で95℃で5分間煮沸した。蛍光染料で標識したタンパク質混合物を、SDS−PAGEにより解析した。データセットを、Y=100/(1+10^((logC1/2−X)HillSlope))に適合させて、半変性尿素濃度C1/2を得た。C1/2の下記の値が異なる突然変異体について見出された。ACT1 2.8±0.1M;ACT9 4.1±0.1M;ACT10 5.1±0.2M。
【0007】
発明の詳細な説明
本発明は、特に式(I)の基質からの標識の移行に適した、O−アルキルグアニン−DNAアルキルトランスフェラーゼ(AGT)に由来するアルキルシトシントランスフェラーゼ(ACTs)と呼ばれる新規なタンパク質に関する。
【0008】
アルキルシトシントランスフェラーゼ(ACT)は、
(a)170〜220アミノ酸、好ましくは175〜190アミノ酸、最も好ましくは177〜185アミノ酸からなり;
(b)少なくとも1つのシステインを含み;
(c)O−ベンジルシトシンと反応し、それによって同じ条件下にO−ベンジルグアニンとの反応における場合と少なくとも同じに速く(b)のシステインのメルカプト基にベンジル置換基を移行させる、
タンパク質として同定される。
【0009】
本発明のACTsを、AGTのファージディスプレイに基づく定方向進化アプローチ(directed evolution approach)においてAGTをコードするDNAから調製した。ファージディスプレイに基づく定方向進化のための出発点として、突然変異体AGTをコードするDNA(配列番号2、Gronemeyer, T. et al., Protein Eng. Des. Sel. 19:309-316, 2006)を使用した。AGTは、野生型wtAGTよりベンジルグアニン誘導体に対する約50倍高い活性を示し、そしてそれ自体ファージディスプレイおよびベンジルグアニン基質を使用して定方向進化により得られた。残基Tyr114、Lys131、Ser135、Val148、Gly156、Gly157、Glu159のためのコドンを、飽和突然変異誘発(saturation mutagenesis)により無作為化した。ファージミドpAK100におけるトランスフォーメーションは、10の独立したクローンの突然変異体AGTライブラリーをもたらした。選択のために、ファージライブラリーを、ベンジルシトシンと反応する突然変異体を標識するための基質としてフルオレセインを有するベンジルシトシン(化合物5)、BCFLとインキュベーションした。これは、抗フルオレセイン抗体で被覆された磁性ビーズを使用することにより対応するファージのその後の濃縮を可能とした。BCFLに対する活性についての6ラウンドの選択の後、クローンACT1〜クローンACT8を、DNAシーケンシングにより解析した(表1、アミノ酸は1文字コードで示された)。その後の試験において、クローンACT1〜クローンACT8からのタンパク質は、4M尿素による変性に対する限られた安定性しか示さないことが明らかになった。これを改良するために、同じライブラリーを再スクリーニングした。最善の単離されたクローンからのタンパク質は、ACT9としてリストされそして4M尿素における良好な安定性を示したが、ベンジルシトシンに対する限定された反応性を示した。次いでACT9をコードするDNAのエラープローンPCR、続いて、その後のファージ選択によりACT10を得、このファージ選択は、尿素による変性に対する高い反応性および高い安定性を有するACT変異体として残基Met60IIe、Ala121ValおよびLeu153Serの更なる改変をもたらした。クローンを発現させそしてタンパク質をグルタチオンS−トランスフェラーゼ(GST)融合タンパク質として精製した。
【0010】
ベンジルシトシンに対して特異的なこれらの10のタンパク質は、アルキルシトシントランスフェラーゼ(ACT)1〜10と呼ばれ、そして本発明の主題である。
【0011】
本発明で考慮される更なるタンパク質は、
ACT1〜8のホモログでありそして位置114、131、135、148、157および159以外の位置において1、2または3個のアミノ酸がACT1〜8とは異なるACTs;および
ACT1〜10のホモログでありそして位置60、114、121、131、135、148、153、157および159以外の位置において1、2または3個のアミノ酸がACT1〜10とは異なるACTs;
である。
【0012】
位置114のアミノ酸がA、E、N、RまたはSであり;
位置131のアミノ酸がN、S、TまたはVであり;
位置135のアミノ酸がD、NまたはTであり;
位置148のアミノ酸がD、EまたはQであり;
位置157のアミノ酸がA、G、L、T、PまたはWであり;そして
位置159のアミノ酸がE、F、M、RまたはSである、
ACT1(配列番号1)のアナログも考慮される。
【0013】
位置60のアミノ酸がMまたはIであり;
位置114のアミノ酸がA、E、N、RまたはSであり;
位置121のアミノ酸がAまたはVであり;
位置131のアミノ酸がN、S、TまたはVであり;
位置135のアミノ酸がD、NまたはTであり;
位置148のアミノ酸がD、E、QまたはVであり;
位置153のアミノ酸がLまたはSであり;
位置157のアミノ酸がA、G、L、T、PまたはWであり;そして
位置159のアミノ酸がE、F、M、R、SまたはLである、
ACT10(配列番号12)のアナログが同様に考慮される。
【0014】
アルキルシトシントランスフェラーゼ(ACT)1、2、7、8および10と呼ばれるタンパク質が好ましい。配列番号12に示されたアミノ酸配列を有するタンパク質ACT10は特に好ましい。位置60、114、121、131、135、148、153、157および159以外の位置の1つのアミノ酸が異なるACT10のホモログも好ましい。
【0015】
【表1】

【0016】
本発明は、AGTまたはACTをコードするDNAを10個までのアミノ酸位置において飽和突然変異誘発により無作為化し、得られたライブラリーを適当なファージミドにトランスフォーメーションし、標識を有するベンジルシトシンとの反応により所望のファージを選択し、次いで標識に対する抗体で被覆された磁性ビーズを使用して標識を移行されたファージを単離することを特徴とするアルキルシトシントランスフェラーゼを製造するための方法に関する。本発明は、このような定方向進化の方法の産物にも関する。
【0017】
飽和突然変異誘発は、当技術分野で周知であり、そして例えば、Dube, D. K. and L. A. Biochemistry, 28:5703-5707, 1989により記載のとおりに行われる。
【0018】
ファージおよびファージミドを使用する定方向進化の方法も周知でありそして、例えば、Smith. G.P. and Petrenko, V.A., Chem. Rev. 97:391-410, 1997; Hoess, R.H. et al., Chem. Rev. 101: 3205-3218, 2001に記載されている。好ましい方法は、Krebber, A., Bornhauser, S., Burmester, J., Honegger, A., Willuda, J., Bosshard, H.R. and Pluckthun, A., J. Immunol. Methods 201:35-55, 1997により記載されているシステムにおいてファージミドpAK100を使用する。
【0019】
所望のクローンの選択のために適当な化合物は、式(I)下に記載されそして本発明に供される基質、特に、Rがパラ−置換されたフェニルである式(I)の基質である。所望のACTに移行させられるこのような基質の標識は、それに対する抗体が容易に得られうる任意の標識であることができ、そして蛍光染料標識または任意の他の分光学的標識
に制限されない。
【0020】
特定の標識に対する抗体を有する磁性ビーズを使用する分離も当技術分野で処置されておりそして、例えば、Gronemeyer et al., Protein Eng. Des. Sel. 19:309-316, 2006に記載されている。
【0021】
更なる局面においては、本発明は、式(I)
【化2】


(式中、
は、芳香族もしくはヘテロ芳香族基であるか、またはOCH−に連結された二重結合を有する、場合により置換されている不飽和アルキル、場合により置換されている不飽和シクロアルキルもしくは場合により置換されている不飽和ヘテロサイクリル基であり;
はリンカーであり、そして
Lは標識または複数の同じまたは異なる標識である)
で示される化合物に関する。
【0022】
芳香族基としてのRは、好ましくはフェニルまたはナフチル、特にフェニル、例えばパラ位置またはメタ位置においてRにより置換されたフェニルである。
【0023】
ヘテロ芳香族基Rは、0、1、2、3または4個の環窒素原子および0または1個の酸素原子および0または1個の硫黄原子を含む一環式または二環式ヘテロアリール基であって、但し少なくとも1個の環原子は窒素、酸素または硫黄原子であるものとし、5〜12個、好ましくは5または6個の環原子を有しそして置換基Rを有することに加えて、低級アルキル、例えばメチル、低級アルコキシ、例えばメトキシもしくはエトキシ、ハロゲン、例えば塩素、臭素またはフッ素、ハロゲン化された低級アルキル、例えばトリフルオロメチルまたはヒドロキシからなる群より選ばれる1個以上の、特に1個の更なる置換基により置換されていてもいなくてもよい一環式または二環式ヘテロアリール基である。
【0024】
好ましくは、一環式または二環式ヘテロアリール基Rは、2H−ピロリル、ピロリル、イミダゾリル、ベンズイミダゾリル、ピラゾリル、インダゾリル、プリニル、ピリジル、ピラジニル、ピリミジニル、ピリダジニル、4H−キノリジニル、イソキノリル、キノリル、フタラジニル、ナフチリジニル、キノキサリル、キナゾリニル、キノリニル、プテリジニル、インドリジニル、3H−インドリル、インドリル、イソインドリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、フラザニル、ベンゾ[d]ピラゾリル、チエニルおよびフラニルから選ばれる。更に好ましくは、一環式または二環式ヘテロアリール基は、ピロリル、イミダゾリル、例えば1H−イミダゾール−1−イル、ベンズイミダゾリル、例えば、1−ベンズイミダゾリル、インダゾリル、特に5−インダゾリル、ピリジル、例えば、2−、3−または4−ピリジル、ピリミジニル、特に2−ピリミジニル、ピラジニル、イソキノリニル、特に3−イソキノリニル、キノリニル、特に4−または8−キノリニル、インドリル、特に3−インドリル、チアゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、ベンゾ[d]ピラゾリル、チエニルおよびフラニルから選ばれる。
【0025】
本発明の特に好ましい態様において、ヘテロアリール基Rは、チエニル、特に、3−、4−または5−位置、好ましくは4−位置に更なる置換基Rを有する2−チエニル、または4−位置に更なる置換基Rを有する3−チエニルである。
【0026】
場合により置換されている不飽和アルキル基Rは、1−または2−位置、好ましくは2−位置に更なる置換基Rを有する1−アルケニルまたは1−アルキニルである。1−アルケニルにおいて考慮される置換基は、例えば低級アルキル、例えばメチル、低級アルコキシ、例えばメトキシ、低級アシルオキシ、例えばアセトキシまたはハロゲニル、例えばクロロである。本発明の特に好ましい態様において、Rは1−アルキニルである。
【0027】
場合により置換されている不飽和シクロアルキル基は、任意の位置に更なる置換基Rを有する、1−位置において不飽和の5〜7個の炭素原子を有するシクロアルケニル基、例えば1−シクロペンテニルまたは1−シクロヘキセニルである。考慮される置換基は、例えば低級アルキル、例えばメチル、低級アルコキシ、例えばメトキシ、低級アシルオキシ、例えばアセトキシまたはハロゲニル、例えばクロロである。
【0028】
場合により置換されている不飽和ヘテロサイクリル基は、3〜12個の原子を有し、窒素、酸素および硫黄から選ばれる1〜5個のヘテロ原子を有しそしてOCH−におけるメチレンにヘテロサイクリル基を連結する位置に二重結合を有する。考慮される置換基は、例えば低級アルキル、例えばメチル、低級アルコキシ、例えばメトキシ、低級アシルオキシ、例えばアセトキシまたはハロゲニル、例えばクロロである。
【0029】
特に、場合により置換されている不飽和ヘテロサイクリル基は、ヘテロ芳香族基Rについて前に定義された部分的飽和ヘテロ芳香族基である。このようなヘテロサイクリル基の例は、5−位置に更なる置換基を有するイソオキサゾリジニル、特に3−イソオキサゾリジニル、または3−位置に更なる置換基を有する5−イソオキサゾリジニルである。
【0030】
リンカー基Rは、好ましくは、標識Lまたは複数の同じまたは異なる標識Lを基質に連結する柔軟性リンカーである。リンカー単位は、もくろむ用途において、即ち、ACTを含む融合タンパク質への基質の移行において選ばれる。それらは、適切な溶媒への基質の溶解度も増加させる。使用されるリンカ−は、実際の用途の条件下に化学的に安定である。リンカーは、ACTとの反応を妨害もしなければ、標識Lの検出も妨害しないが、ACTを含む融合タンパク質と式(I)の化合物の反応の後にある時点で切断されるように構築されうる。
【0031】
リンカーRは、1〜300個の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖アルキレン基であって、場合により
(a)1個以上の炭素原子が酸素により置き換えられている、特にすべての第3の炭素原子が酸素で置き換えられている、例えば1〜100のエチレンオキシ単位を有するポリエチレンオキシ基;
(b)1個以上の炭素原子が水素原子を有する窒素で置き換えられており、そして隣接炭素原子がオキソにより置換されており、アミド基−NH−CO−を示す;
(c)1個以上の炭素原子が酸素で置き換えられておりそして隣接炭素原子がオキソにより置換されて、エステル基−O−CO−を示す;
(d)2つの隣接炭素原子間の結合が二重結合または三重結合であり、−CH=CH−または−C≡C−を示す;
(e)1個以上の炭素原子がフェニレン、飽和もしくは不飽和シクロアルキレン、飽和もしくは不飽和ビシクロアルキレン、橋かけヘテロ芳香族または橋かけ飽和もしくは不飽和ビシクロアルキレン、橋かけヘテロ芳香族もしくは橋かけ飽和もしくは不飽和ヘテロサイクリル基で置き換えられている;
(f)2個の隣接炭素原子が、ジスルフィド結合−S−S−で置き換えられている、
1〜300個の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖アルキレン基、または2つ以上の、特に2つまたは3つのアルキレンおよび/または前記(a)〜(f)下に定義された改変されたアルキレン基の組み合わせであり、これらの基は場合により置換基を含有する。
【0032】
考慮される置換基は、例えば低級アルキル、例えばメチル、低級アルコキシ、例えばメトキシ、低級アシルオキシ、例えばアセトキシまたはハロゲニル、例えばクロロである。
【0033】
考慮される更なる置換基は、例えば、α−アミノ酸、特に天然に存在するα−アミノ酸が、炭素原子が(b)で定義されたアミド官能基−NH−CO−により置き換えられているリンカーRに組み込まれるときに得られる置換基である。このようなリンカーにおいて、アルキレン基Rの炭素鎖の一部は、基−(NH−CHR−CO)−(式中、nは1〜100であり、Rはα−アミノ酸の種々の残基を表す)により置き換えられている。
【0034】
更なる置換基は、光切断可能なリンカーRをもたらす置換基、例えばo−ニトロフェニル基である。特にこの置換基o−ニトロフェニルは、アミド結合に隣接した炭素原子に位置しており、例えば基−NH−CO−CH−CH(o−ニトロフェニル)−NH−CO−にあるか、またはポリエチレングリコール鎖における置換基として、例えば基−O−CH−CH(o−ニトロフェニル)−O−にある。考えられる他の光切断可能なリンカ−は、例えばフェナシル、アルコキシベンゾイン、ベンジルチオエーテルおよびピバロイルグリコール誘導体である。
【0035】
先に(e)で定義された炭素原子に取って代わるフェニレン基は、例えば1,2−、1,3−または好ましくは1,4−フェニレンである。特定の態様においては、フェニレン基は、更にニトロ基により置換されておりそして(a)、(b)、(c)、(d)および(f)で上記した他の置き換えと組み合わされて、光切断可能な基を表し、そして例えば、−CO−NH−CH−4−ニトロ−1,3−フェニレン−CH(CH)−O−CO−におけるような4−ニトロ1,3−フェニレン、または、例えば−CH−O−2−メトキシ−5−ニトロ−1,4−フェニレン−CH(CH)−O−におけるような2−メトキシ−5−ニトロ−1,4−フェニレンである。光切断可能なリンカーを表す他の特定の態様は、例えば−1,4−フェニレン−CO−CH−O−CO−CH−(フェナシル基)、−1,4−フェニレン−CH(OR)−CO−1,4−フェニレン−(アルコキシベンゾイン)、または−3,5−ジメトキシ−1,4−フェニレン−CH−O−(ジメトキシベンジル部分)である。先に(e)で定義された炭素原子に取って代わる飽和または不飽和シクロアルキレン基は、3〜7個の炭素原子を有するシクロアルキルに由来し、好ましくはシクロペンチルまたはシクロヘキシルに由来し、そして例えば1,2−もしくは1,3−シクロペンチレン、1,2−、1,3−もしくは好ましくは1,4−シクロヘキシレンであるか、または例えば1−位置もしくは2−位置で不飽和である1,4−シクロヘキシレンでもある。先に(e)で定義された炭素原子に取って代わる飽和または不飽和ビシクロアルキレン基は、7または8個の炭素原子を有するビシクロアルキルに由来し、そして例えばビシクロ[2.2.1]ヘプチレンまたはビシクロ[2.2.2]オクチレン、好ましくは、場合により2−位置で不飽和であるかまたは2−位置および5−位置で二重に不飽和である1,4−ビシクロ[2.2.1]ヘプチレン、および場合により2−位置で不飽和であるかまたは2−位置および5−位置で二重に不飽和である1,4−ビシクロ[2.2.2]オクチレンである。先に(e)で定義された炭素原子に取って代わる橋かけヘテロ芳香族基は、例えばトリアゾリデン、好ましくは1,4−トリアゾリデン、またはイソオキサゾリデン、好ましくは3,5−イソオキサゾリデンである。先に(e)で定義された炭素原子に取って代わる橋かけ飽和もしくは不飽和ヘテロサイクリル基は、例えば上記Rで定義された不飽和ヘテロサイクリルに由来し、例えばイソオキサゾリジネン、好ましくは3,5−イソオキサゾリジネンであるか、または3〜12個の原子を有し、その1〜3個が窒素、酸素および硫黄から選ばれるヘテロ原子である、完全飽和ヘテロサイクリル基、例えばピロリジンジイル、ピペリジンジイル、テトラヒドロフランジイル、ジオキサンジイル、モルホリンジイル、またはテトラヒドロチオフェンジイル、好ましくは2,5−テトラヒドロフランジイルまたは2,5−ジオキサンジイルである。考慮される特定のヘテロサイクリル基は糖部分、例えばα−もしくはβ−フラノシルまたはα−もしくはβ−ピラノシル部分である。
【0036】
リンカーRにおける環状サブ構造は、R内の回転可能な結合の数により評価される分子柔軟性を減少させ、これはすべてのin vivo標識化用途にとって重要な、より良好な膜透過速度をもたらす。
【0037】
リンカーRは、好ましくは、1〜25個の炭素原子を有する直鎖アルキレン基であるか、または場合により−CH=CH−もしくは−C≡C−基によりRに結合した、4〜100個のエチレンオキシ単位を有する直鎖ポリエチレングリコール基である。更なる好ましいものは、炭素原子が場合によりアミド官能基−NH−CO−により置き換えられておりそして場合により光切断可能なサブユニット、例えばo−ニトロフェニルを有する、1〜25個の炭素原子を有する直鎖アルキレン基である。更なる好ましいものは、3〜6個のエチレングリコール単位のポリエチレングリコール基を含み、そして炭素原子がアミド結合により置き換えられているアルキレン基を含みそして更に置換されたアミノおよびヒドロキシ官能基を有する、分岐状リンカーである。他の好ましい分岐状リンカーは、アミン、カルボキサミドおよび/またはエーテル官能基がアルキレン基の炭素原子に取って代わる樹状構造を有する。
【0038】
特に好ましいリンカーRは、1個または2個の炭素原子が窒素により置き換えられており、そして場合により窒素に隣接したオキソにより置換されている、2〜20個の炭素原子の直鎖アルキレン基である。
他の特に好ましいリンカーRは、3〜12個の炭素原子が酸素により置き換えられておりそして1個または2個の炭素原子が窒素により置き換えられており、場合により窒素の隣接したオキソにより置換されている、10〜40個の場合によりオキソにより置換されている炭素原子の直鎖アルキレン基である。
【0039】
リンカーRは、1個以上の同じまたは異なる標識、例えば1〜100個の同じまたは異なる標識、特に1〜5個、好ましくは1、2または3個の、特に1個または2個の同じまたは異なる標識を有することができる。
【0040】
低級アルキルは、1〜7、好ましくは1〜4個のC原子を有するアルキルであり、そして線状または分岐状であり;好ましくは低級アルキルは、ブチル、例えばn−ブチル、sec−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、プロピル、例えばn−プロピルまたはイソプロピル、エチルまたはメチルである。最も好ましくは、低級アルキルはメチルである。
【0041】
低級アルコキシにおいて、低級アルキル基は、前記に定義したとおりである。低級アルコキシは、好ましくはn−ブトキシ、tert−ブトキシ、イソプロポキシ、エトキシまたはメトキシ、特にメトキシを示す。
【0042】
低級アシルオキシ基においては、低級アシルはホルミルまたは低級アルキルが前記に定義されている低級アルキルカルボニルの意味を有する。低級アシルオキシは、好ましくはn−ブチロキシ、n−プロピオノキシ、イソプロピオノキシ、アセトキシまたはホルミルオキシ、特にアセトキシを示す。
【0043】
ハロゲンはフルオロ、クロロ、ブロモまたはヨード、特にクロロである。
【0044】
基質の標識Lは、融合タンパク質の意図する用途に依存して当業者により選ばれうる。標識は、標識Lを有する標識された融合タンパク質が容易に検出されるかまたはその環境から容易に分離されるような標識である。考慮される他の標識は、標識された融合タンパク質および/または基質の環境の変化を感知しおよび誘導することができる標識、または基質の物理的および/または化学的性質により融合タンパク質を操作するのを助けそして特に融合タンパク質に特異的に導入される標識である。本発明の文脈で理解される標識は、水素とは異なるまたは標準官能基と異なる置換基、特に水素、ヒドロキシ、アミノ、ハロゲン、カルボキシラート、カルボキサミド、カルボキシルエステル、ニトリル、シアナート、イソシアナート、スルホナート、スルホンアミド、スルホン酸エステル、アルデヒド、ケトン、エーテル、およびチオエーテル置換基とは異なる置換基である。
【0045】
標識の例は、分光学的プローブ、例えば発蛍光団もしくは発色団、磁性プローブ、またはコントラスト試薬;放射能標識された分子;パートナーに特異的に結合することができる特異的結合ペアの一つの部分である分子;他の生物分子と相互作用する疑いのある分子;他の生物分子と相互作用する疑いのある分子のライブラリー;他の分子に架橋することができる分子;Hおよびアスコルベートに暴露されるとヒドロキシルラジカルを発生することができる分子、例えばつなぎ鎖でつながれた(tethered)金属キレート;光を照射されると反応性ラジカルを発生することができる分子、例えばマラカイトグリーン;ガラススライド、マイクロタイタープレートまたは当業者に知られている任意のポリマーであることができる固体支持体に共有結合された分子;相補鎖と塩基対形成することができる核酸またはその誘導体;膜挿入性を有する脂質または他の疎水性分子;所望の酵素的、化学的または物理的性質を有する生物分子;または上記した性質のいずれかの組み合わせを有する分子を含む。
【0046】
更なる標識Lは、生きている細胞の細胞膜を超えて結合した分子が移動するのを促進することが知られている正に帯電した線状または分岐状ポリマーである。これは、低い細胞膜透過性を有するかまたは生きている細胞の細胞膜に対して事実上非透過性である物質にとって特に重要である。非細胞透過性ACT基質は、このような基Lにコンジュゲーションされると細胞膜透過性となるであろう。このような細胞膜輸送エンハンサー基Lは、例えば、6〜15個のアルギニン残基を有するD−および/またはL−アルギニンの線状ポリアルギニン、各々がグアニジニウム基を有する6〜15サブユニットの線状ポリマー、6〜50サブユニットのオリゴマーまたは短い長さのポリマーであって、該サブユニットの一部がグアニジニウム基に結合しているオリゴマーまたは短い長さのポリマー、および/またはHIV−tatタンパク質の配列の一部、特にサブユニットTat49−Tat57(1字アミノ酸コードで表すとRKKRRQRRR)を含む。ACT基質は、先に定義されたリンカーRを通じてこの基Lに共有結合しており、該リンカーRは、好ましくは生きている細胞の内側で不安定であり、そして例えば細胞内エステラーゼによるエステル基Rの開裂により分解されることができ、直接またはエステル基の開裂により引き起こされる更なる反応において、ACT基質と細胞膜透過性を増強する単位Lの分離をもたらす。
【0047】
標識Lとして好ましいものは、分光学的プローブでありそしてパートナーに特異的に結合することができ特異的結合ペアの一つの部分である分子、いわゆるアフィニティー標識である。固体支持体に共有結合した分子も標識Lとして好ましい。好ましい分光学的プローブは発蛍光団である。
【0048】
標識Lが発蛍光団、発色団、磁性標識、放射能標識等であるとき、検出は標識に適合した標準手段によりそして方法がin vitroで使用されるかまたはin vivoで使用されるかによる。Lが発蛍光団であるならば、方法は関心のあるタンパク質に遺伝子的に融合されそして生きている細胞においてタンパク質の研究を可能とする、グリーン蛍光タンパク質(GFP)の適用に匹敵することができる。標識Lの特定の例は、非線形光学的性質を示すホウ素化合物でもある。特に好ましいものは、1つの基質のL(L)が、2つの相互作用性分光学的プローブL/L(該2つの相互作用性分光学的プローブL/Lにおいては、ドナーとアクセプター(クエンチャー)が極めて近接するとき(10ナノメートル未満の距離)、動的または静的クエンチングによりドナーとアクセプター(クエンチャー)との間でエネルギーが非放射的に移行されうる)の1つのメンバーでありそして他方の基質のL(L)が該2つの相互作用性分光学的プローブL/Lの他方のメンバーであるような標識である。このような標識L/Lのペアは、L1を有する標識された基質のACT融合タンパク質との反応およびLを有する他方のタイプの標識された基質(例えばベンジルグアニン型)の他の対応する融合タンパク質、例えばAGT融合タンパク質との反応時に、その分光学的性質を変える。標識L/Lのこのようなペアの例は、更に詳細に下記で説明するFRETペアである。
【0049】
考慮される特定の発蛍光団は、Alexa Fluor350、488、532、546、555、635および647を含むAlexa Fluor染料(Invitrogen Corp., Carlsbad, CA 92008, USA, Panchuk-Voloshina, N. et al., J. Histochem. & Cytochem. 47:1179-1188, 1999を参照); クマリン、例えば7−ジメチルアミノ−クマリン−4−酢酸(Invitrogen Molecular Probesにより製品D374として供給されたスクシンイミジルエステル)、7−アミノ−4−メチル−クマリン−3−酢酸および7−ジエチルアミノ−クマリン−3−カルボン酸;Cyanine−3(Cy3)、Cyanine5(CY5)、およびCyanine5.5(CY5.5)(Amersham-GE Healthcare, Solingen, Germany);ATTO448、ATTO532、ATTO600およびATTO655(Atto-tec, D57076 Siegen, Germany);DY−505、DY−547、DY−632およびDY−647(Dyomics, Jena, Germany);および5(6)−カルボキシフルオレセインおよびジフルオロ−5(6)−カルボキシフルオレセイン(Oregon Green)である。式(I)の基質上のこれらの特定の標識を、既知のAGT−ベンジルグアニン系と組み合わせることができ、この場合、ベンジルグアニン上の標識は、ACTと反応する式(I)の基質上の発蛍光団とFRETペアを創生するためのクエンチャーである。このようなクエンチャーは、QSY35、QSY9およびQSY21(Invitrogen Molecular Probes);BHQ−1、BHQ−2およびBHQ−3(Biosearch Technologies, Inc., Novato, CA94949, USA のBlack Hole Quencher(商標、);ATTO540QおよびATTO6120Q(Atto-Tec, D57076 Siegen, Germany);4−ジメチルアミノアゾベンゼン−4’−スルホニル誘導体(Dabsyl)および4−ジメチルアミノアゾベンゼン−4’−カルボニル誘導体(Dabcyl)である。
【0050】
標識Lの性質に依存して、関心のあるタンパク質およびACTを含む融合タンパク質は、基質との反応により固体支持体に結合されうる。ACTを含む融合タンパク質と反応する基質の標識Lは、ACTとの反応に入るときは既に固体支持体に結合されていてもよく、またはその後、即ちACTへの移行後に、固体支持体に標識されたACT融合タンパク質を結合させるために使用されうる。標識は、特異的結合ペアの一方のメンバーであることができ、その他方のメンバーは、固体支持体に共有結合によりまたは任意の他の手段により結合されるているかまたは結合可能である。考慮される特異的結合ペアは、例えばビオチンとアビジンまたはストレプトアビジンである。結合ペアのいずれかのメンバーは、基質の標識Lであることができ、他方は固体支持体に結合される。固体支持体への便利な結合を可能とする標識の更なる例は、例えば、マルトース結合タンパク質、糖タンパク質、FLAGタグまたは、反応性置換基であって、このような置換基と固体支持体の表面の相補性官能基との化学選択的反応を可能とする反応性置換基である。反応性置換基と相補性官能基のこのようなペアの例は、例えばアミンおよびアミドを形成する活性化されたカルボキシル基、アジドおよび1,3−二極性環状付加反応を受けるプロピオ−ル酸誘導体、アミンおよび活性化されたビスジカルボン酸のタイプの添加された二官能性リンカー試薬と反応して2つのアミド結合を生じる他のアミン官能基、または当技術分野で知られている他の組み合わせである。
【0051】
便利な固体支持体の例は、例えば、ガラス表面、例えばガラススライド、マイクロタイタープレートおよび適当なセンサーエレメント、特に官能化されたポリマー(例えば、ビーズの形態にある)、化学的に改変された酸化物表面、二酸化ケイ素、五酸化タンタルまたは二酸化チタン、または化学的に改変された金属表面、例えば貴金属表面、例えば金または銀表面である。次いで、不可逆的に結合するおよび/またはスポッティングするACT基質を使用して、空間的に解像される方式で、特にスポッティングにより、タンパク質マイクロアレー、DNAマイクロアレーまたは小分子のアレーを表す固体支持体上にACT融合タンパク質を結合させることができる。
【0052】
標識Lが、外部刺激にさらされると、反応性ラジカル、例えばヒドロキシルラジカルを発生することができる場合には、発生したラジカルは次いでACT融合タンパク質およびACT融合タンパク質に極めて近縁のこれらのタンパク質を不活性化させることができ、これらのタンパク質の役割を研究することを可能とする。このような標識の例は、Hおよびアスコルベートに曝露されるとヒドロキシルラジカルを生成するつなぎ鎖で結ばれた金属キレート錯体(tethered metal-chelate complexes)、および発色団、例えばレーザー照射されるとヒドロキシルラジカルを生成するマラカイトグリーンである。ヒドロキシルラジカルを発生するのに発色団とレーザーを使用することもまた、発色団支援レーザー誘導不活性化(chromophre assisted laser induction inactivation)(CALI)として当技術分野で知られている。本発明において、ACT融合タンパク質を、標識Lとしてマラカイトグリーンなどの発色団を有する基質で標識することおよびその後のレーザー照射は、標識されたACT融合タンパク質およびACT融合タンパク質と相互作用するこれらのタンパク質を、時間的にコントロールされそして空間的に解像された方式で不活性化する。この方法は、in vitroまたはin vivoの両方に適用されうる。更にACT融合タンパク質に極めて近縁のタンパク質は、そのようなものとして特異的抗体によりそのタンパク質のフラグメントを検出することにより、高解像力二次元電気泳動ゲル上のこれらのタンパク質の消失により、または分離および配列決定技術、例えば質量分析法またはN末端分解によるタンパク質配列決定による解裂したタンパク質断片の同定により同定されうる。
【0053】
標識Lが他のタンパク質に架橋することができる分子、例えばマレイミド、活性エステルまたはアジドおよび当業者に知られている他の官能基などの官能基を含有する分子であるとき、このような標識されたACT基質を他のタンパク質と相互作用する(ACT融合タンパク質と接触させるin vivoまたはin vitro)ことは、ACT融合タンパク質のその相互作用性タンパク質との標識を介する共有結合架橋をもたらす。これは、ACT融合タンパク質と相互作用するタンパク質の同定を可能とする。光架橋するための標識Lは、例えば、ベンゾフェノンである。架橋の特定の面においては、標識Lは、ACT融合タンパク質の二量体化をもたらすそれ自体ACT基質である分子である。このような二量体の化学構造は、対称的(ホモ二量体)または非対称的(ヘテロ二量体)であることができる。
【0054】
考慮される他の標識Lは、例えばフラーレン、中性子捕捉処理用のボラン、例えばセルフアドレッシングチップのためのヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド、ペプチド核酸、および金属キレート、例えばDNAに特異的に結合する白金キレートである。
【0055】
望ましい酵素的性質、化学的性質または物理的性質を有する特定の生物分子は、メトトレキセートである。メトトレキセートは、酵素ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)の強力な結合阻害剤である。Lがメトトレキセートである式(I)の化合物は、周知のクラスのいわゆる「二量体化の化学的インデュ−サー」(CIDs)に属する。DNA結合ドメインLexAとのACTの融合タンパク質を使用しそしてLがメトトレキセートである式(I)の化合物によるACT融合タンパク質のin vivo標識化に転写活性化ドメインB42を有するDHFRを加えることは、ACT−LexA融合タンパク質とDHFR−B42融合タンパク質のカップリング(「二量体化」)を誘導し、LexAとB42の空間的近接およびその後の転写の刺激をもたらす。
【0056】
基質が2つ以上の標識を有するならば、これらの標識は、同じであるかまたは異なることができる。特定の好ましい組み合わせは、2つの異なるアフィニティー標識または1つのアフィニティー標識と1つの発色団標識、特に1つのアフィニティー標識と1つの発蛍光団標識、または分光学的相互作用性標識のペアL/L、例えばFRETペアである。
【0057】
好ましいものは、Rがフェニル、特にパラ置換されたフェニルである、式(I)の化合物である。
【0058】
好ましいのは、Lが分光学的プローブ、例えば発蛍光団である、式(I)の化合物である。同様に好ましいのは、Lが特異的結合ペアの1つの部分を表す分子である式(I)の化合物およびLが固体支持体に共有結合で結合した分子である化合物である。
【0059】
最も好ましいのは実施例の化合物である。
【0060】
本発明は、更に関心のあるタンパク質を検出および/または操作するための方法であって、関心のあるタンパク質をACT融合タンパク質に組み込み、ACT融合タンパク質を前記した標識を有する式(I)の化合物と接触させ、そしてACT融合タンパク質を検出しそして場合により更に標識を認識および/またはハンドリングするためにデザインされたシステムにおいて標識を使用して操作する、方法に関する。
【0061】
本発明の方法において、関心のあるタンパク質またはペプチドをACTに融合させる。関心のあるタンパク質またはペプチドは、任意の長さであることができ、そして第二級、第三級または第四級構造を持っていてもいなくてもよく、好ましくは少なくとも12アミノ酸〜2000アミノ酸からなる。このような関心のあるタンパク質またはペプチドの例は、例えば酵素、DNA結合タンパク質、転写調節タンパク質、膜タンパク質、核内レセプタータンパク質、核内局在シグナルタンパク質、タンパク質補因子、小モノマーGTPase、(small monomeric GTPases)、ATP結合カセットタンパク質、細胞内構造タンパク質、特定の細胞区画にタンパク質をターゲティングする責任を担う配列を有するタンパク質、標識またはアフィニティータグとして一般に使用されるタンパク質、および前記したタンパク質のドメインまたはサブドメインである。関心のあるタンパク質またはペプチドは、好ましくは、酵素により、例えばDNA段階で適当な制限酵素により開裂されうるリンカーおよび/またはタンパク質段階で適当な酵素により開裂されうるリンカーによってACTに融合される。
【0062】
ACTは、基質上に、即ち式(I)の化合物上に存在する標識を融合タンパク質のACT形成部分のシステイン残基の1つに移行させる性質を有する。好ましい態様においては、ACTは前記に定義されたACT1〜ACT10およびそのホモログからなる群より選ばれる。特に好ましいのはACT10である。
【0063】
関心のあるタンパク質およびACTを含む融合タンパク質を、式(I)の特定の基質と接触させる。反応の条件は、ACTが基質と反応しそして基質の標識を移行させるように選ばれる。通常の条件は、室温、例えば約25℃で約pH7のバッファー溶液である。しかながら、ACTは種々の他の条件下でも反応しそしてここに述べられたこれらの条件は本発明の範囲を限定するものではないと理解される。
【0064】
基質の標識Lは、融合タンパク質が意図される用途に依存して当業者により選ばれる。ACTを含む融合タンパク質を基質と接触させた後、標識Lは融合タンパク質に共有結合により結合される。標識されたACT融合タンパク質は、次いで更に処理されおよび/または種々の移行した標識により検出される。標識Lは複数の同じまたは異なる標識からなることができる。基質が1つより多くの標識Lを含有するならば、対応する標識されたACT融合タンパク質は、標識された融合タンパク質を更に操作および/または検出するためのより多くの選択を与える1つより多くの標識も含むであろう。
【0065】
本発明の意味における「検出された」は、標識Lを有するACTを有する融合タンパク質は標識の性質により局在させることができそして融合タンパク質の量を直接または標準を参照することにより決定することができることを意味する。本発明の意味で「操作された」は、標識Lを有するACTを有する融合タンパク質が標識の性質により更に反応させることができること、例えばin vitroまたはin vivo系から単離し、濃縮しそして精製し、即ち他のタンパク質および/または非タンパク質性物質から分離し、溶液とし(例えば特に融合タンパク質が可溶性ではないならば)、沈澱させ(例えば特に融合タンパク質が可溶性であるならば)またはそうでなければ固体に固定することができること、そして例えば標識を切り離しそして融合タンパク質を再生するリンカーを開裂することにより更に処理することもできることを意味する。当業者は、標識Lの性質およびLを融合タンパク質に連結するリンカーRの性質による標識Lを有する融合タンパク質を更に操作するための多くの可能性をよく理解する。
【0066】
in vitroでは、本発明の基質とACT融合タンパク質の反応は一般に細胞抽出物中でまたはACT融合タンパク質の精製した形態または濃縮した形態で行うことができる。
【0067】
本発明の基質に関する実験をin vivoまたは細胞抽出物中で行うならば、内在性AGTの反応は、式(I)の基質とACT融合タンパク質の反応を妨害しないであろう。何故ならば、該基質は内在性AGTとは相互作用せず(または少なくとも検出可能には反応しない)、ACTとのみ反応するからである。これは、先行技術に記載のAGT−ベンジルグアニン型基質の標準的組み合わせに対する、本発明のACT−式(I)の基質の組み合わせの実質的な利点である。
【0068】
前記した式(I)の基質上の特定の発蛍光団標識は、ベンジルグアニン上の標識がACTと反応する式(I)の基質上の発蛍光団とFRETペアを創生するためのクエンチャーである、既知のAGT−ベンジルグアニン系と組み合わせることができる。好ましいのは、式(I)の基質のための標識Lとして前記に列挙されたクエンチャーである。
【0069】
または、式(I)の基質上の標識Lは、上記したクエンチャーの1つであることができ、そしてACTとの反応は、ベンジルグアニン上の標識が挙げられた発蛍光団の1つであるAGT融合タンパク質−ベンジルグアニン基質組み合わせとの混合物において達成されうる。
【0070】
本発明の基質は、一般に当技術分野で知られている標準方法により製造される。有用な出発物質は2−クロロピリミジン−4−アミンまたはピリミジン環の位置2に活性化された離脱基を有する他のシトシン誘導体である。この化合物を、次いで式HO−CH−R−R−Lのアルコールまたは類似した化合物HO−CH−R−R’(式中、R’は標識Lの導入を可能とし、それにより残基R−Lを完成するリンカーRの前駆体である)と反応させる。特に有用な前駆体R’は、例えばアミド官能基を組み込んでいるリンカーRを生じさせるスクシンイミジルエステルの形態にある、カルボキシル官能基を有する標識との縮合反応を可能とする、アミノ官能基を有する前駆体である。
【0071】
もくろむ官能性のための適切な保護基は、当業者により選ばれることができ、そして例えばGreen, T. W. and Wuts, P. G. M. in "Protective Groups in Organic Synthesis", John Wiley & Sons, New York 1991に要約されている。
【0072】
本発明は、更に式(I)のこれらの基質からアルキルシトシントランスフェラーゼ(ACTs)およびACT融合タンパク質に標識を移行させる方法に関する。
【0073】
ACT−式(I)の基質の組み合わせは、既知のAGT−ベンジルグアニン型基質と組み合わせて2つの異なるタンパク質を追跡するのに特に適当である。何故ならば、式(I)の基質およびベンジルグアニン型基質は、それらの標識をそれぞれACTおよびAGT融合タンパク質に選択的に移行させるからである。
【0074】
ACTsを使用する特異的二重標識化の実行可能性を証明するために、ヘキサヒスチジンタグ化AGT(6×His−AGT)およびGST−ACT1融合タンパク質の等モル混合物を、BGFL、BGCy5、BCFL、BCCy5あるいはBGCy5/BCFLまたはBGFL/BCCy5の等モル混合物とインキュベーションした。BGFLまたはBGCy5とのインキュベーションは、6×His−AGTの完全な標識化およびGST−ACT1の非常に低い標識化(両方の場合に5%未満であると評価された)をもたらす。反対の方法において、BCFLまたはBCCY5とのインキュベーションは、GST−ACT1の完全な標識化および6×His−AGTの部分的標識化(それぞれ、76%および6%)をもたらす。
【0075】
しかしながら、BGCy5/BCFL(またはBGFL/BCCy5)の等モル混合物とのインキュベーションは、特異的二重カラー標識化、即ちCy5染料(または、それぞれフルオレセイン)による6×His−AGTの特異的標識化ならびにフルオレセイン(またはCy5染料、それぞれ)によるGST−ACT1の特異的標識化をもたらした。両方の場合に、クロス標識化は、1%未満であると評価された。
【0076】
【表2】

【0077】
実施例
略号
BC=ベンジルシトシン
BG=ベンジルグアニン
DTT=ジチオトレイトール
DMF=ジメチルホルムアミド
MPLC=中圧液体クロマトグラフィー
PBS=リン酸緩衝化生理食塩水
RT=室温
TFA=トリフルオロ酢酸
TEA=トリエチルアミン
【0078】
実施例1:N−(4−((4−アミノピリミジン−2−イルオキシ)メチル)ベンジル)−2,2,2−トリフルオロアセトアミド(1)
2,2,2−トリフルオロ−N−(4−ヒドロキシメチル−ベンジル)−アセトアミド760mg(3.25ミリモル)を乾燥したジメチルアセトアミド3mL中にアルゴン雰囲気下に溶解し、そしてNaH273mg(8.15ミリモル)を5分間にわたり加える。次いで2−クロロピリミジン−4−アミン211mg(1.63ミリモル)を加えそして溶液を一夜90℃で攪拌する。水1mLを注意深く加えてすべての過剰のNaHをクエンチし、そして混合物を0.5N HCl50ml中に注ぐ。粗生成物を酢酸エチルで抽出し、一緒にした有機相をブラインで洗浄しそしてMgSO上で乾燥する。溶媒の蒸発後、生成物をフラッシュカラムクロマトグラフィー(勾配酢酸エチル:シクロヘキサン1:1〜3:1)により精製する。収率:350mg(52%)。ESI−MSm/z327[M+H]
【0079】
実施例2:2−(4−(アミノメチル)ベンジルオキシ)4−アミノピリミジン(2)
N−(4−((4−アミノピリミジン−2−イルオキシ)メチル)ベンジル)−2,2,2−トリフルオロアセトアミド(1)150mg(0.46ミリモル)をメタノール2mL中に溶解しそしてメチルアミン(エタノール中の33%)5mLで処理する。反応混合物を室温で一夜攪拌しそしてすべての揮発分を真空中で除去する。生成物を次の工程で更なる精製をしないで使用する。ESI−MSm/z231[M+H]
【0080】
実施例3:N−[4−(4−アミノピリミジン−2−イルオキシメチル)−ベンジル]−テトラメチルローダミン−6−カルボキサミド(3)およびN−[4−(4−アミノピリミジン−2−イルオキシメチル)−ベンジル]−テトラメチルローダミン−5−カルボキサミド(4)
【化3】


2−(4−(アミノメチル)ベンジルオキシ)ピリミジン−4−アミン(2)(3.6mg、0.016ミリモル)および5(6)−カルボキシテトラメチルローダミンスクシンイミジルエステル(8.2mg、0.016ミリモル)をTEA2.4μLを有するDMF800μL中に溶解しそして31℃で一夜加熱する。溶媒を真空中で蒸発させそして化合物を、水:アセトニトリルの線状勾配(20分内に95:5から20:80まで、0.08%TFA)を使用してC18カラム上の逆相MPLC(中圧液体クロマトグラフィー)により単離する。MS(ESI)m/z643[M−Cl]
【0081】
実施例4:N−[4−(4−アミノピリミジン−2−イルオキシメチル)−ベンジル]−フルオレセイン−6−カルボキサミド(5)、BCFL
【化4】


2−(4−(アミノメチル)ベンジルオキシ)ピリミジン−4−アミン(2)(3.9mg、0.017ミリモル)および5(6)−カルボキシフルオレセインスクシンイミジルエステル(8.3mg、0.017ミリモル)をTEA2.6μLを有するDMF800μL中に溶解しそして31℃で一夜加熱する。溶媒を真空中で蒸発させそして生成物を、水:アセトニトリルの線状勾配(20分において95:5から20:80まで、0.08%TFA)を使用してC18カラム上の逆相MPLCにより単離する。MS(ESI)m/z589[M+H]。精製方法に依存して、生成物は対応する異性体5−カルボキサミドも含有することもある。
【0082】
実施例5:N−[4−(4−アミノピリミジン−2−イルオキシメチル)−ベンジル]−ジアセチルフルオレセイン−6−カルボキサミド(6)およびN−[4−(4−アミノピリミジン−2−イルオキシメチル)−ベンジル]−ジアセチルフルオレセイン−5−カルボキサミド(7)
【化5】


2−(4−(アミノメチル)ベンジルオキシ)ピリミジン−4−アミン(2)(4.1mg、0.018ミリモル)および5(6)−カルボキシフルオレセインジアセタートスクシンイミジルエステル(10mg、0.018ミリモル)をTEA2.7μLを有するDMF800μL中に溶解しそして31℃で一夜加熱する。溶媒を真空下に蒸発させそして化合物を、水:アセトニトリルの線状勾配(20分において95:5から20:80まで、0.08%TFA)を使用してC18カラム上の逆相MPLCにより単離する。MS(ESI)m/z673[M+H]
【0083】
実施例6:N−[4−(4−アミノピリミジン−2−イルオキシメチル)−ベンジル]−DY647−カルボキサミド(8)
【化6】


2−(4−(アミノメチル)ベンジルオキシ)ピリミジン−4−アミン(2)(1.5mg、0.007ミリモル)およびDY−547−NHS(Dyomics染料)(5mg、0.007ミリモル)をTEA1.0μLを有するDMF500μL中に溶解しそして31℃で一夜加熱する。溶媒を真空下に蒸発させそして生成物を、水:アセトニトリルの線状勾配(20分において95:5から20:80まで、0.08%TFA)を使用してC18カラム上の逆相MPLCにより単離する。MS(ESI)m/z853[M−Na]
【0084】
実施例7:N−[4−(4−アミノピリミジン−2−イルオキシメチル)−ベンジル]−DY547−カルボキサミド(9)
【化7】


2−(4−(アミノメチル)ベンジルオキシ)ピリミジン−4−アミン(2)(1.5mg、0.007ミリモル)およびDY−547−NHS(Dyomics染料)(5mg、0.007ミリモル)をTEA1.0μLを有するDMF500μL中に溶解しそして31℃で一夜加熱する。溶媒を真空下に蒸発させそして生成物を、水:アセトニトリルの線状勾配(20分において95:5から20:80まで、0.08%TFA)を使用してC18カラム上の逆相MPLCにより単離する。MS(ESI)m/z827[M−Na]
【0085】
実施例8:N−[4−(4−アミノピリミジン−2−イルオキシメチル)−ベンジル−Cy5−カルボキサミド(10)BCCy5
【化8】


2−(4−(アミノメチル)ベンジルオキシ)ピリミジン−4−アミン(2)(1.5mg、0.007ミリモル)およびCy5−NHS(GE healthcare染料)(5.4mg、0.007ミリモル)をTEA1.0μLを有するDMF500μL中に溶解しそして31℃で一夜加熱する。溶媒を真空下に蒸発させそして生成物を、水:アセトニトリルの線状勾配(20分において95:5から20:80まで、0.08%TFA)を使用してC18カラム上の逆相MPLCにより単離する。MS(ESI)m/z868[M−Na]
【0086】
実施例9:O−[4−(Cy5)−アミノメチチル]−ベンジルグアニン(11)、BGCy5
【化9】


−4−アミノメチル−ベンジル−グアニン(1.9mg、0.007ミリモル)およびCy5−NHS((GE healthcare染料)(5.4mg、0.007ミリモル)をTEA1.0μLを有するDMF500μL中に溶解しそして31℃で一夜加熱する。溶媒を真空下に蒸発させそして生成物を、水:アセトニトリルの線状勾配(20分において95:5から20:80まで、0.08%TFA)を使用してC18カラム上の逆相MPLCにより単離する。MS(ESI)m/z908[M−Na]
【0087】
実施例10
実施例3と同様にして2−(4−(アミノメチル)ベンジルオキシ)ピリミジン−4−アミン(2)から下記の化合物を製造する。
式12のBC−ビオチン:
【化10】


式13のBC−PEG−ビオチン
【化11】


式14のBC−360
【化12】


式15のBC−430
【化13】


式16の化合物の混合物からなるBC−Oregon Green
【化14】


式17の化合物の混合物からなるBC−Oregon Greenジピバロイルエステル
【化15】


式18の化合物の混合物からなるBC−505
【化16】

【0088】
実施例11:ライブラリー構築およびファージ選択
プライマー1〜5およびテンプレートとしてAGT遺伝子(配列番号2)を使用するオーバーラップ伸長PCR(overlap extension PCR)は、AGTの残基114、131、135、148、156、157および159を無作為化することを可能とした。AGTは、最後の25アミノ酸が欠失しておりそして突然変異K32I、L33F、C62A、Q115S、Q116H、K125A、A127T、R128A、G131K、G132T、M134L、R135S、N150Q、I151G、N152D、G153L、A154D、N157GおよびS159Eを有するwtAGTの182アミノ酸突然変異体である(Gronemeyer et al., Protein Eng. Des. Sel. 19:309-316,2006)。プライマー1(N,AGT、配列番号3)およびプライマー2(C,AGT、配列番号4)はSfi1制限部位を含有し;プライマー3(配列番号5)は、位置114に無作為化のための無作為化された塩基を含有し;プライマー4(配列番号6)は、位置131および135に無作為化のための無作為化された塩基を含有し;プライマー5(配列番号7)は、位置148、156、157および159に無作為化のための無作為化された塩基を含有する。PCR生成物を、ファージディスプレイベクターpAK100にライゲーションしそして得られる構築物をE.coli XL1-blue(Stratagene, USA)にエレクトロポレーションした。これは約10クローンを含有するライブラリーをもたらした。
【0089】
ライブラリー細胞を2YT培地(25μg/mLクロラムフェニコール、1%グルコース、1mM MgCl)中で37℃で光学密度OD600が0.6に達するまで成長させた。次いで2×1010VCSM13ヘルパーファージを加え、そして培養物を、振とうすることなく37℃で30分間および170rpmにて37℃で3時間インキュベーションした。
【0090】
細胞を遠心(4000rpm、5分、室温)により回収し、SB−MOPS(50mM3−モルホリノプロパンスルホン酸、25μg/mLクロラムフェニコール、70μg/mLカナマイシン、1mM MgCl)中に再懸濁させ、220rpmで37℃にて1〜4時間インキュベーションし、次いで220rpmで24℃で一夜インキュベーションした。細胞をペレット化し、ファージを含有する上清を1mM DTTに調節しそして選択前に4℃で貯蔵した。選択のために、BCFL(化合物5)を5μMの最終濃度となるようにファージ溶液(1mL)に加え、室温で30分間穏やかに回転させた。反応を8μM BCおよび200μM BGの添加によりクエンチした。ファージを、ポリエチレングリコール8000(4%重量/重量)およびNaCl(3%重量/重量)を使用して4℃で沈殿させ、卓上遠心器(13000rpm、4℃)において遠心しそして500μL PBS中に再懸濁させた。この溶液に、PBSMM(4%脱脂粉乳を有するPBS)500μLを加え、溶液を室温で60分間穏やかに回転させた。抗フルオレセイン抗体で覆われた磁性ビーズ200μL(PBSで2回洗浄されそしてPBSMMで60分間ブロックされた)をファージ調製物に加え、4℃で30分間回転させた。標識されたファージの固定化後、ビーズをPBSMMで3回、PBST(0.05%Tween−20を有するPBS)で5回、PBSで2回洗浄した。ビーズを0.1Mグリシン100μL、pH2.5と5分間インキュベーションすることによりファージを溶離し、溶液を50μLの1MTris−HClpH8で中和した。E.coli JM101を溶離したファージで感染させ、1%グルコースおよび25μg/mLのクロラムフェニコールを補充された2YTプレート上でプレートし、次いで37℃で一夜インキュベーションした。次の日、コロニーをプレートから掻き取り、アリクォートを採り、次のラウンドの選択の前に−80℃で貯蔵した。6ラウンドの選択を行った。
【0091】
実施例12:GST融合タンパク質としての選ばれたACTsの特徴付け
実施例9に従う選択の後に単離された突然変異体の遺伝子を、それぞれ、pGEX−2Tベクター(Amersham Bioscience, Otelfingen,Switzerland)へのその後のサブクローニングのためのBamH1およびEcoR1制限部位を含有するプライマー6(N,AGT、配列番号8)および7(C,AGT,配列番号9)を使用するPCRにより増幅させた。GST−ACT融合タンパク質としてのタンパク質の発現および精製を、AGT融合タンパク質について前に記載したとおりに行った(A.Juillerat, T.Gronemeyer, A. Keppler, S. Grendreizig, H. Pick, H. Vogel, K. Johnson, Chem. Biol. 10:313,2003)。BCFL(化合物5)およびフルオレセインを有するBG(BGFL、WO02/08397)による標識化の反応速度を、反応バッファー(50mM HEPES、pH7.2、1mMDTT、200μg/mLのBSA)中で対応するACTタンパク質(0.2〜0.4μM)を適切な蛍光源基質(fluorogenic substrate)(2〜20μM)と24℃でインキュベーションすることにより決定した。サンプルを異なる時間に採取し、そして標識反応を、4×SDSバッファー(8%SDS、10%β−メルカプトエタノール、240mM Tris pH6.8、40%グリセロール)の添加および95℃で5分間のインキュベーションによりクエンチした。反応の進行をSDS−PAGEゲルにおける蛍光染料で標識されたタンパク質の検出およびPharox FX(商標)分子イメージャーを使用する蛍光強度の定量により決定した。データは、擬一次反応モデルに適合した。次いで擬一次定数を蛍光源基質の濃度で割ることにより、二次速度定数を得た。
【0092】
実施例13:in vitro特異的二重標識化アッセイ
GST−ACT1と6×His−AGTの等モル混合物(0.5μM最終濃度)を、BGFL(フルオレセインを有するベンジルグアニン、WO02/08397)、BGCy5(蛍光染料Cy5を有するベンジルグアニン、化合物11、実施例9)、BCFL(化合物5、実施例4)、BCCy5(化合物10、実施例8)(5μM)またはBGCy5/BCFLもしくBGFL/BCCy5の等モル混合物(各々5μM)と、反応バッファー(50mM HEPES、pH7.2、1mM DTT、200μg/mLのBSA)中で24℃にて60分間インキュベーションすることにより、in vitro二重標識化アッセイを行った。標識化反応を、4×SDSバッファー(8%SDS、10%β−メルカプトエタノール、240mM Tris pH6.8、40%グリセロール)の添加および95℃で5分間のインキュベーションによりクエンチした。蛍光染料で標識されたタンパク質混合物を、前記したとおりSDS−PAGEにより分析した。
【0093】
実施例14:哺乳動物細胞発現ベクターの構築
哺乳動物細胞における融合タンパク質AGT−NLS3、AGT−βGal、ACT1−NLS3およびACT1βGalの発現のために、AGTおよびACT1遺伝子を、プライマー8(N,AGT、配列番号10)およびプライマー9(C,AGT、配列番号11)を使用してPCR増幅させ、そして哺乳動物発現ベクターpECFP−Nuc(Clontech)またはβ−ガラクトシダーゼ遺伝子を含有する哺乳動物発現プラスミドのNhel/BglII制限部位に挿入した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)
【化17】


(式中、
は、芳香族もしくはヘテロ芳香族基であるか、またはOCH−に連結された二重結合を有する、場合により置換されている不飽和アルキル、場合により置換されているシクロアルキルもしくは場合により置換されているヘテロサイクリル基であり;
は、リンカーであり、そして
Lは、標識または複数の同じまたは異なる標識である)
の化合物。
【請求項2】
が、フェニルである、請求項1に記載の式(I)の化合物。
【請求項3】
が、パラ−置換されたフェニルである、請求項2に記載の式(I)の化合物。
【請求項4】
が、1〜300個の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖アルキレン基であって、場合により
(a)1個以上の炭素原子が、酸素で置き換えられている、特に3番目毎の炭素原子が、酸素で置き換えられている、例えば1〜100のエチレンオキシ単位を有するポリエチレンオキシ基;
(b)1個以上の炭素原子が、水素原子を有する窒素で置き換えられており、そして隣接炭素原子が、オキソにより置換されており、アミド官能基−NH−CO−を示す;
(c)1個以上の炭素原子が、酸素で置き換えられておりそして隣接炭素原子がオキソにより置換されており、エステル官能基−O−CO−を示す;
(d)2つの隣接炭素原子間の結合が、二重結合または三重結合であり、官能基−CH=CH−または−C≡C−を示す;
(e)1個以上の炭素原子が、フェニレン、飽和もしくは不飽和シクロアルキレン、飽和もしくは不飽和ビシクロアルキレン、橋かけヘテロ芳香族または橋かけ飽和もしくは不飽和ヘテロサイクリル基で置き換えられている;
(f)2個の隣接炭素原子が、ジスルフィド結合−S−S−で置き換えられている;
1〜300個の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖アルキレン基、または2つ以上の、特に2つもしくは3つの、アルキレンおよび/または前記(a)〜(f)下に定義された改変されたアルキレン基の組み合わせであり、これらの基は場合により置換基を含有する、請求項1に記載の式(I)の化合物。
【請求項5】
が、炭素原子が場合によりアミド官能基−NH−CO−で置き換えられている、1〜25個の炭素原子を有する直鎖アルキレン基である、請求項4に記載の式(I)の化合物。
【請求項6】
Lが、分光学的プローブ、特異的結合ペアの1つの部分を表す分子、または固体支持体に共有結合により結合した分子である、請求項1に記載の式(I)の化合物。
【請求項7】
Lが、発蛍光団である、請求項6に記載の式(I)の化合物。
【請求項8】
請求項7に記載の化合物N−[4−(4−アミノピリミジン−2−イルオキシメチル)−ベンジル]−テトラメチルローダミン−5−もしくは6−カルボキサミドまたはその混合物。
【請求項9】
請求項7に記載の化合物N−[4−(4−アミノピリミジン−2−イルオキシメチル)−ベンジル]−フルオレセイン−5もしくは6−カルボキサミドまたはその混合物。
【請求項10】
請求項7に記載の化合物N−[4−(4−アミノピリミジン−2−イルオキシメチル)−ベンジル]−ジアセチルフルオレセイン−5もしくは6−カルボキサミドまたはその混合物。
【請求項11】
式8
【化18】


のN−[4−(4−アミノピリミジン−2−イルオキシメチル)−ベンジル]−DY647−カルボキサミドである、請求項7に記載の化合物。
【請求項12】
式9
【化19】


のN−[4−(4−アミノピリミジン−2−イルオキシメチル)−ベンジル]−DY547−カルボキサミドである、請求項7に記載の化合物。
【請求項13】
式10
【化20】


のN−[4−(4−アミノピリミジン−2−イルオキシメチル)−ベンジル]−Cy5−カルボキサミドである、請求項7に記載の化合物。
【請求項14】
式12
【化21】


の請求項7に記載の化合物BC−ビオチン。
【請求項15】
式13
【化22】


の請求項7に記載の化合物BC−PEG−ビオチン。
【請求項16】
式14
【化23】


の請求項7に記載の化合物BC−360。
【請求項17】
式15
【化24】


の請求項7に記載の化合物BC−430。
【請求項18】
式16
【化25】


の1つの請求項7に記載の化合物BC−Oregon Greenまたはその混合物。
【請求項19】
式17
【化26】


の1つの請求項7に記載の化合物BC−Oregon Greenジピバロイルエステ
またはその混合物。
【請求項20】
式18
【化27】


の1つの請求項7に記載の化合物BC−505またはその混合物。
【請求項21】
(a)170〜220アミノ酸からなり;
(b)少なくとも1つのシステインを含み;
(c)O−ベンジルシトシンと反応し、それによって同じ条件下にO−ベンジルグアニンとの反応における場合と少なくとも同じに速く(b)のシステインのメルカプト官能基にベンジル置換基を移行させる、
タンパク質であるアキルシトシントランスフェラーゼ(ACT)。
【請求項22】
177〜185アミノ酸を含む、請求項21に記載のアルキルシトシントランスフェラーゼ(ACT)。
【請求項23】
配列番号1に記載のタンパク質;
下記の置換、
R114A、S131V、E148Q、G157WおよびM159R、
R114S、S131T、D135T、E148D、G157PおよびM159E、
R114N、S131N、G157AおよびM159S、
R114A、S131T、D135S、G157KおよびM159E、
R114E、S131R、D135A、G157EおよびM159E、
R114S、S131V、E148Q、G157LおよびM159R、
R114E、S131N、D135N、G157TおよびM159F、
により配列番号1とは異なるタンパク質;
および位置114、131、135、148、157および159以外の位置で1個、2個または3個のアミノ酸が異なるこのようなタンパク質;
からなる群より選ばれる、請求項21に記載のアキルシトシントランスフェラーゼ(ACT)。
【請求項24】
配列番号1の請求項21に記載のタンパク質。
【請求項25】
配列番号12に記載のタンパク質;
位置60のアミノ酸が、MまたはIであり、
位置114のアミノ酸が、A、E、N、RまたはSであり、
位置121のアミノ酸が、AまたはVであり、
位置131のアミノ酸が、N、S、TまたはVであり、
位置135のアミノ酸が、D、NまたはTであり、
位置148のアミノ酸が、D、E、QまたはVであり、
位置153のアミノ酸が、LまたはSであり、
位置157のアミノ酸が、A、G、L、T、PまたはWであり、そして
位置159のアミノ酸が、E、F、M、R、SまたはLである、
配列番号12のタンパク質;
および位置60、114、121、131、135、148、153、157および159以外の位置で1個、2個または3個のアミノ酸が異なるこのようなタンパク質;
からなる群より選ばれる、請求項21に記載のアキルシトシントランスフェラーゼ(ACT)。
【請求項26】
配列番号12に記載のタンパク質および位置60、114、121、131、135、148、153、157および159以外の位置で1個のアミノ酸が異なるこのようなタンパク質からなる群より選ばれる、請求項25に記載のアキルシトシントランスフェラーゼ(ACT)。
【請求項27】
配列番号12配列の請求項25に記載のタンパク質。
【請求項28】
−アルキルグアニン−DNAアルキルトランスフェラーゼ、O−アルキルグアニン−DNAアルキルトランスフェラーゼ突然変異体またはアキルシトシントランスフェラーゼをコードするDNAを、10個までのアミノ酸位置において飽和突然変異誘発により無作為化し、得られたライブラリーを適当なファージミドにトランスフォーメーションし、標識を有するベンジルシトシンとの反応により所望のファージを選択し、次いで標識に対する抗体で被覆された磁性ビーズを使用して標識が移行されたファージを単離することを特徴とする、請求項21に記載のアキルシトシントランスフェラーゼ(ACT)を製造するための方法。
【請求項29】
請求項1に記載の式(I)の化合物から、標識Lを、請求項21に記載のアルキルシトシントランスフェラーゼ、または請求項21に記載のアルキルシトシントランスフェラーゼを含む融合タンパク質に移行させる方法。
【請求項30】
関心のあるタンパク質を請求項21に記載のアルキルシトシントランスフェラーゼを含む融合タンパク質に組み込み、該アルキルシトシントランスフェラーゼ融合タンパク質を請求項1に記載の式(I)の化合物と接触させ、そして標識Lを認識および/または処理するためにデザインされたシステムにおいて標識Lを使用して、前記アルキルシトシントランスフェラーゼ融合タンパク質を検出しそして場合により更に操作する、関心のあるタンパク質を検出および/または操作するための方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2009−544660(P2009−544660A)
【公表日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−521246(P2009−521246)
【出願日】平成19年7月24日(2007.7.24)
【国際出願番号】PCT/EP2007/057597
【国際公開番号】WO2008/012296
【国際公開日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【出願人】(503183293)ウペエフエル・エコル・ポリテクニック・フェデラル・ドゥ・ローザンヌ (11)
【氏名又は名称原語表記】EPFL ECOLE POLYTECHNIQUEFEDERALE DE LAUSANNE
【Fターム(参考)】