説明

合成マイコトキシン吸着剤ならびにそれを生成および使用する方法

本発明は、一般に、分子鋳型ポリマー(MIP)に関する。詳細には本発明は、比較的多量に製造しうる、再使用可能で環境に優しいMIP、それを製造する方法、およびそれを使用する(例えば、標的化合物(例えば、マイコトキシン)を捕捉および/または吸着する)方法に関する。本発明の組成物および方法は、食餌療法、予防、食物および飲料用の加工および製造に加え、研究、品質管理およびトレーサビリティへの適用をはじめとし、様々な適用において用途を見出す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
〔関連出願の相互参照〕
本願は、その全体が参照により本明細書に組み入れられた、2009年8月27日出願の米国特許仮出願番号第61/237,549号への優先権を主張するものである。
【0002】
〔発明の分野〕
本発明は、一般に、分子鋳型ポリマー(MIP)に関する。詳細には本発明は、再使用可能で環境に優しいMIP、それを製造する方法、およびそれを使用する(例えば、標的(例えば、マイコトキシン)を捕捉および/または吸着する)方法に関する。本発明の組成物および方法は、食事、治療、予防、食物および飲料用の加工および製造に加え、研究および品質管理への適用をはじめとし、様々な適用において用途を見出す。
【背景技術】
【0003】
〔発明の背景〕
マイコトキシンは、様々な真菌により分泌される二次代謝産物であり、多くの場合、穀粒ならびに収穫前、収穫時および収穫後のまぐさ中で生成される。まぐさおよび穀類は、真菌胞子に自然と接触するようになる。植物の真菌汚染および毒素の生合成は、収穫前の植物の健康状態、気象条件、収穫技術、保存用の安定化および飼料加工の前の遅延および水熱条件に依存する。真菌の発育は、真菌にもよるが、遊離水(a)の量、温度、酸素の存在、基質の性質、およびpH条件をはじめとし、複数の物理化学的パラメータにより制御される。マイコトキシンは、収穫前および収穫後の貯蔵中に増殖する。
【0004】
幾つかの真菌は、特定レベルの水分、温度または酸素でしか毒素を生成しない。マイコトキシンの影響は、重症度が大きく変動する。幾つかのマイコトキシンは、致死的であり、同定可能な疾患または健康問題を引き起こすもの、そのマイコトキシンに特異的な症状を生じずに免疫系を減弱させるもの、アレルゲンまたは刺激物質として作用するもの、および動物またはヒトに対して未知の影響を有するものもある。第二次世界大戦時に、ロシア人兵士は、赤カビ属(Fusarium)に汚染された、カビの生えた穀物を食べた後に重度の皮膚壊死、出血および骨髄破壊を起こした。しかし、英国の100,000を超えるシチメンチョウが、致命的肝臓疾患(七面鳥X病)により大量死した1960年代までは、科学者たちがマイコトキシンに関連する負の影響を認識することはなかった(例えば、Biotechnology in the Feed Industry (Lyons T. P and Jacques K.A 編) Nottingham University Press, Loughborough, Leics, UK, pp. 327−349のTrenholm H.L., Charmley L.L., and Prelusky D.B., 1996. Mycotoxin binding agents: An update on what we know.参照)。近年の国連食糧農業機関(FAO)の報告によれば、世界中の穀物供給量の約25%は、マイコトキシンに汚染されている。マイコトキシン汚染は、食物および飼料の生産者、特に穀物および家禽の生産者に対して負の経済的影響を有する。
【0005】
マイコトキシンは、植物製品(例えば、まぐさ、穀物、植物性タンパク質、加工穀物の副生物、粗質食糧および糖蜜製品)の真菌感染の結果、食物連鎖に出現する可能性があり、ヒトに直接食べられるか、または汚染された穀物、生畜もしくは他の動物の食材により導入される可能性がある。マイコトキシンは、消化時の分解に対して非常に抵抗性があるため、食用製品(例えば、肉、魚、卵および乳製品)中で、または摂取された親毒素の代謝産物の形態で、食物連鎖に残留する。料理および凍結などの温度処理は、マイコトキシンの分布を低下させる適切な方法にはならない。つまり、飼料および/または食物連鎖におけるマイコトキシンの有害作用を低減し、そして/または発生を排除するための組成物および/または方法が必要とされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
〔発明の概要〕
本発明は、分子鋳型ポリマー(MIP)に関する。詳細には本発明は、再使用可能で環境に優しいMIP、それを製造する方法、およびそれを使用する(例えば、標的(例えば、マイコトキシン)を捕捉および/または吸着する)方法に関する。本発明の組成物および方法は、食事、治療、予防、食物および飲料用の加工および製造に加え、研究および品質管理への適用をはじめとし、様々な適用において用途を見出す。
【課題を解決するための手段】
【0007】
したがって幾つかの実施形態において、本発明は、マイコトキシンテンプレートを用いて合成された分子鋳型ポリマーを含む組成物を提供する。本発明は、分子鋳型ポリマーを生成させるのに用いられるマイコトキシンテンプレートに限定されない。それどころか、非限定的に、アセトキシスキルペンジオール、アセチルデオキシニバレノール、アセチルニバレノール、アセチルネオソラニオール、アセチルT−2トキシン、アフラトキシン、アフラトキシンB1、B2、G1およびG2、アフラトレム、アルテニュイックアシッド(altenuic acid)、アルターナリオール、アウストジオール、アウスタミド、アウストシスチン、アベナセイン+1、ベアウベリシン+2、ベンテノリド(bentenolide)、ブレビアナミド、ブテノリド、カロネクトリン、ケトグロボシン、ケトシン、ケトミン、シトリニン、シトレオビリジン、コクリオジノール、シトカラシン類、シクロピアゾン酸、デアセチルカロネクトリン、デアセチルネオソラニオール、デオキシニバレノール二酢酸塩、デオキシニバレノール一酢酸塩、ジアセトキシスキルペノール、デストラキシンB、エメストリン、エニアチン類、エルゴットアルカロイドトキシン類およびエンドファイト類、例えばエルギン、エルゴコルニン、エルゴクリスチン、エルゴクリプチン、エルゴメトリン、エルゴニン、エルゴシン、エルゴタミン、エルゴバリン、リセルゴール、リセルグ酸および関連のエピマー、フルクチゲニン+1、フマギリン、フモニシン類、フモニシンA1、A2、B1およびB2およびB3、フサレノン−X、フサロクロマノン、フサル酸、フサリン、グリオトキシン、HT−2トキシン、ヒアロデンドリン、イポメアニン、イスランジトキシン、イソフミガクラビンAおよびB、ラテリチン+1(lacteritin+1)、レプトシン(leptosin)、リコマラスミン+1、マルホルミン、マルトリジン、モニリフォルミン、モノアセトキシスキルペノール、ミコフェノール酸、ネオソラニオール、ニバレノール、NT−1トキシン、NT−2トキシン、オクラトキシン、オオスポレイン、シュウ酸、パスパリトレムAおよびB、パツリン、ペニシリン酸、ペニトレム、ホモプシン類、PR−トキシン、ロリジンE、ロクエフォルチンAおよびB、ルブラトキシン、ルブロスキリン、ルブロスルフィン、ルグロシン、サムブシニン+1(sambucynin+1)、サトラトキシンF、G、H、スキルペントリオール、シロデスミン、スラフラミン、スポリデスミン、ステリグマトシスチン、スワインソニン、T−1トキシン、T−2トキシン、テニュアゾン酸、トリアセトキシスキルペンジオール、トリコテセン類、トリコデルミン、トリコテシン、トリコベリン類、トリコベロール類、トリプトキバレン、ベルカリン、ベルクロゲン、ベルチシリン類、ビオプルプリン、ビオメレイン、ビリジトキシン、ウォルトマンニン、キサントシリン、ヤバニシン+1、ゼアラレノール類、ゼアララノン類、ゼアラレノン、α、βゼアララノン、α、βゼラノール、ならびにそれらのサブファミリーおよび/または誘導体、および/またはコンジュゲートをはじめとし、様々なマイコトキシンテンプレートを用いてもよい。幾つかの好ましい実施形態において、マイコトキシンテンプレートは、OTAである。他の好ましい実施形態において、マイコトキシンテンプレートは、スポリデスミンまたはエルゴットアルカロイドである。幾つかの実施形態において、オクラトキシンテンプレートは、N−(2−ヒドロキシ−3,5−ジクロロベンゾイル)−L−フェニルアラニンである。幾つかの実施形態において、スポリデスミンテンプレートは、5−クロロ−6,7−ジメトキシ−1−メチルイサチンである。しかし本発明は、これらのオクラトキシンまたはスポリデスミンテンプレートに限定されない。それどころか、N−tert−ブトキシカルボニル−2,3−ジメトキシアニリン、2,3−ジメトキシアニリン、エチル3−ヒドロキシ−6,7−ジメトキシ−2−インドロン−3−カルボキシラート、6,7−ジメトキシイサチン、または6,7−ジメトキシ−1−メチルイサチンをはじめとし、様々な異なるテンプレートを用いてもよい。
【0008】
幾つかの実施形態において、本発明は、マイコトキシンテンプレートと、1種以上のモノマーおよび1種以上の架橋剤と、を提供すること;ならびに前記マイコトキシンテンプレートの存在下、前記1種以上のモノマーおよび前記1種以上の架橋剤の重合が可能な条件下で、前記マイコトキシンテンプレートを前記1種以上のモノマーおよび前記1種以上の架橋剤と接触させること、を含む、分子鋳型ポリマーを生成させる方法を提供する。幾つかの実施形態において、マイコトキシンテンプレートは、N−(2−ヒドロキシ−3,5−ジクロロベンゾイル)−L−フェニルアラニンである。幾つかの実施形態において、マイコトキシンテンプレートは、5−クロロ−6,7−ジメトキシ−1−メチルイサチンである。本発明は、用いられるマイコトキシンテンプレートに限定されない。それどころか、天然マイコトキシンの構造、形状および/または他の化学的特徴の1種以上を模倣した様々な合成分子を、マイコトキシンテンプレートとして用いることができる。本発明は同様に、用いられるモノマーのタイプに限定されない。例えば、様々なモノマーが、当業者に公知であり、非限定的に、2−ビニルピリジン、2−ヒドロキシエチルメタクリラートおよびメタクリル酸を包含する。本発明は同様に、用いられる架橋剤のタイプに限定されない。例えば、様々な架橋剤が、当業者に公知であり、非限定的に、エチレングリコールジメタクリラートを包含する。幾つかの実施形態において、重合は、55〜100℃の温度の有機溶媒中でフリーラジカルを形成させることにより開始されるが、より低温(例えば、50、45、40、35、30℃またはそれ未満)およびより高温(例えば、115、120、125、130℃またはそれを超える)を利用してもよい。幾つかの実施形態において、フリーラジカルは、アゾイソブチロニトリル(AIBN)の熱開始分解により形成される。本発明は、用いられる有機溶媒のタイプに限定されない。幾つかの実施形態において、有機溶媒は、トルエン、シクロヘキサン、アセトニトリル、ポリビニルアルコール(PVA)/水溶液、ならびにトルエン、シクロヘキサン、アセトニトリル、およびPVA/水溶液のうちの2種以上の混合物である。幾つかの実施形態において、温度は、55〜75℃である。幾つかの実施形態において、マイコトキシンテンプレートは、1種以上のモノマーおよび1種以上の架橋剤の重合の後、分子鋳型ポリマーから除去される。幾つかの実施形態において、溶液での1回以上の洗浄を利用して、分子鋳型ポリマーからマイコトキシンテンプレートを除去する。本発明は、洗浄に用いられる溶液のタイプに限定されない。幾つかの実施形態において、該溶液は、有機溶媒、緩衝液、水またはそれらの組み合わせである。本発明は、用いられる有機溶媒のタイプに限定されない。幾つかの実施形態において、有機溶媒は、エチルアルコール、メチルアルコール、アセトニトリル、トルエン、および/またはそれらの混合物である。幾つかの実施形態において、緩衝液は、水酸化ナトリウム、クエン酸、コハク酸および酢酸を反応させることにより調製された緩衝液である。幾つかの実施形態において、水は、脱イオン水である。幾つかの実施形態において、分子鋳型ポリマーは、1回以上の洗浄の後に乾燥される。幾つかの実施形態において、分子鋳型ポリマーの、20〜90℃(例えば、60〜80℃、75〜80℃)の温度への曝露を利用して、分子鋳型ポリマーを乾燥させるが、より低温または高温を利用してもよい。
【0009】
幾つかの実施形態において、本発明は、マイコトキシンを含む材料と、マイコトキシンテンプレートの存在下での1種以上のモノマーおよび1種以上の架橋剤の重合により生成された分子鋳型ポリマーと、を提供すること;ならびに前記分子鋳型ポリマーを前記マイコトキシンに結合させることが可能な条件下で、前記分子鋳型ポリマーを、マイコトキシンを含む材料と接触させること、を含む、材料からマイコトキシンを捕捉する方法を提供する。本発明は、材料から捕捉される(例えば、捕捉の標的となる)マイコトキシンのタイプに限定されない。それどころか、非限定的に、アセトキシスキルペンジオール、アセチルデオキシニバレノール、アセチルニバレノール、アセチルネオソラニオール、アセチルT−2トキシン、アフラトキシン、アフラトキシンB1、B2、G1およびG2、アフラトレム、アルテニュイックアシッド、アルターナリオール、アウストジオール、アウスタミド、アウストシスチン、アベナセイン+1、ベアウベリシン+2、ベンテノリド、ブレビアナミド、ブテノリド、カロネクトリン、ケトグロボシン、ケトシン、ケトミン、シトリニン、シトレオビリジン、コクリオジノール、シトカラシン類、シクロピアゾン酸、デアセチルカロネクトリン、デアセチルネオソラニオール、デオキシニバレノール二酢酸塩、デオキシニバレノール一酢酸塩、ジアセトキシスキルペノール、デストラキシンB、エメストリン、エニアチン類、エルゴットアルカロイドトキシン類およびエンドファイト類、例えばエルギン、エルゴコルニン、エルゴクリスチン、エルゴクリプチン、エルゴメトリン、エルゴニン、エルゴシン、エルゴタミン、エルゴバリン、リセルゴール、リセルグ酸および関連のエピマー、フルクチゲニン+1、フマギリン、フモニシン類、フモニシンA1、A2、B1およびB2およびB3、フサレノン−X、フサロクロマノン、フサル酸、フサリン、グリオトキシン、HT−2トキシン、ヒアロデンドリン、イポメアニン、イスランジトキシン、イソフミガクラビンAおよびB、ラテリチン+1、レプトシン、リコマラスミン+1、マルホルミン、マルトリジン、モニリフォルミン、モノアセトキシスキルペノール、ミコフェノール酸、ネオソラニオール、ニバレノール、NT−1トキシン、NT−2トキシン、オクラトキシン、オオスポレイン、シュウ酸、パスパリトレムAおよびB、パツリン、ペニシリン酸、ペニトレム、ホモプシン類、PR−トキシン、ロリジンE、ロクエフォルチンAおよびB、ルブラトキシン、ルブロスキリン、ルブロスルフィン、ルグロシン、サムブシニン+1、サトラトキシンF、G、H、スキルペントリオール、シロデスミン、スラフラミン、スポリデスミン、ステリグマトシスチン、スワインソニン、T−1トキシン、T−2トキシン、テニュアゾン酸、トリアセトキシスキルペンジオール、トリコテセン類、トリコデルミン、トリコテシン、トリコベリン類、トリコベロール類、トリプトキバレン、ベルカリン、ベルクロゲン、ベルチシリン類、ビオプルプリン、ビオメレイン、ビリジトキシン、ウォルトマンニン、キサントシリン、ヤバニシン+1、ゼアラレノール類、ゼアララノン類、ゼアラレノン、α、βゼアララノン、α、βゼラノール、ならびにそれらのサブファミリーおよび/または誘導体をはじめとし、様々なマイコトキシンが捕捉されてもよい。幾つかの好ましい実施形態において、材料から捕捉されたマイコトキシンは、オクラトキシンAである。幾つかの好ましい実施形態において、マイコトキシンは、スポリデスミンである。幾つかの実施形態において、マイコトキシンを含む材料は、飲料、食物原料、動物飼料、医薬組成物、栄養組成物、化粧品組成物、生命を維持するのに必要な物質、または他の材料である。幾つかの実施形態において、生命を維持するのに必要な物質は、水産養殖に使用される媒体、および酸素を含む気体試料である。幾つかの実施形態において、マイコトキシンに結合された分子鋳型ポリマーは、マイコトキシンを含む材料から分離されていない。幾つかの実施形態において、材料からマイコトキシンを捕捉する方法は、更に、マイコトキシンを含む材料から、マイコトキシンに結合された分子鋳型ポリマーを分離することを含む。幾つかの実施形態において、分離は、マイコトキシンを含む材料から、マイコトキシンに結合された分子鋳型ポリマーを抽出、濃縮および単離することを含む。幾つかの実施形態において、分離は、クロマトグラフィーまたは分離用のカラムまたはカートリッジ内で行われる。幾つかの実施形態において、分離の後、分子鋳型ポリマーに結合されたマイコトキシンは、洗浄により分子鋳型ポリマーから除去される。幾つかの実施形態において、マイコトキシンは、分子鋳型ポリマーから除去された後に定性的および定量的に分析される。幾つかの実施形態において、定量および定性分析は、トレーサビリティに(例えば、文書に記録された同定法により、品目の年代、位置、および/または適用(例えば、見出されたマイコトキシンの位置、タイプおよび量)を同定および/または相互に関連づけるために)利用される。幾つかの実施形態において、マイコトキシンを除去された分子鋳型ポリマーは、再使用されて、マイコトキシンを含む材料からマイコトキシンを捕捉する。幾つかの実施形態において、分子鋳型ポリマーは、その重量よりも1〜10倍多い(例えば、1〜5倍多い、1〜2倍多い)水を吸着する。幾つかの実施形態において、マイコトキシンを含む材料から2種以上の特異的マイコトキシンを捕捉するために、2種以上の異なる分子鋳型ポリマーを、その材料と接触させる。
【0010】
本発明は、3,5−ジクロロサリチル酸を2−アセトキシアセトキシ−3,5−ジクロロ安息香酸に変換すること;2−アセトキシアセトキシ−3,5−ジクロロ安息香酸を2−アセトキシアセトキシ−3,5−ジクロロ安息香酸クロリドに変換すること;2−アセトキシアセトキシ−3,5−ジクロロ安息香酸クロリドをL−フェニルアラニンエチルエステルと反応させて、N−(2−アセトキシ−3,5−ジクロロベンゾイル)−L−フェニルアラニンを形成させること;およびN−(2−アセトキシ−3,5−ジクロロベンゾイル)−L−フェニルアラニンをN−(2−ヒドロキシ−3,5−ジクロロベンゾイル)−L−フェニルアラニンに変換すること、を含む、N−(2−ヒドロキシ−3,5−ジクロロベンゾイル)−L−フェニルアラニンを合成する方法も提供する。幾つかの実施形態において、該変換は、N−(2−アセトキシ−3,5−ジクロロベンゾイル)−L−フェニルアラニン内のエステル官能基を加水分解させることを含む。
【0011】
本発明は、2,3−ジメトキシ安息香酸を2,3−ジメトキシ−N−tert−ブトキシカルボニルアニリンに変換すること;2,3−ジメトキシ−N−tert−ブトキシカルボニルアニリンを2,3−ジメトキシアニリンに変換すること;2,3−ジメトキシアニリンをジエチルケトマロナートと反応させて、エチル6,7−ジメトキシ−3−ヒドロキシ−3−(2−インドロン)−カルボキシラートを形成させること;エチル6,7−ジメトキシ−3−ヒドロキシ−3−(2−インドロン)−カルボキシラートを6,7−ジメトキシイサチンに変換すること;6,7−ジメトキシイサチンを6,7−ジメトキシ−1−メチルイサチンに変換すること;および6,7−ジメトキシ−1−メチルイサチンを5−クロロ−6,7−ジメトキシ−1−メチルイサチンに変換すること、を含む、5−クロロ−6,7−ジメトキシ−1−メチルイサチンを合成する方法も提供する。
【0012】
本発明は、マイコトキシンへのMIPの結合を容易にすることが可能なテンプレート化合物を生成させること;非極性非プロトン性溶媒を含む溶媒系中で、MIPモノマーおよび架橋試薬を含む反応物にテンプレート化合物を混和させること;ならびに反応槽を高温に曝露すること、または反応槽をUV線に曝露することからなる群より選択される作用により重合を促進すること、を含むマイコトキシンに特異的な分子鋳型ポリマーを合成する方法も提供する。幾つかの実施形態において、マイコトキシンは、オクラトキシンAを含むが、本発明はそれに限定されない。それどころか、非限定的に、アセトキシスキルペンジオール、アセチルデオキシニバレノール、アセチルニバレノール、アセチルネオソラニオール、アセチルT−2トキシン、アフラトキシン、アフラトキシンB1、B2、G1およびG2、アフラトレム、アルテニュイックアシッド、アルターナリオール、アウストジオール、アウスタミド、アウストシスチン、アベナセイン+1、ベアウベリシン+2、ベンテノリド、ブレビアナミド、ブテノリド、カロネクトリン、ケトグロボシン、ケトシン、ケトミン、シトリニン、シトレオビリジン、コクリオジノール、シトカラシン類、シクロピアゾン酸、デアセチルカロネクトリン、デアセチルネオソラニオール、デオキシニバレノール二酢酸塩、デオキシニバレノール一酢酸塩、ジアセトキシスキルペノール、デストラキシンB、エメストリン、エニアチン類、エルゴットアルカロイドトキシン類およびエンドファイト類、例えばエルギン、エルゴコルニン、エルゴクリスチン、エルゴクリプチン、エルゴメトリン、エルゴニン、エルゴシン、エルゴタミン、エルゴバリン、リセルゴール、リセルグ酸および関連のエピマー、フルクチゲニン+1、フマギリン、フモニシン類、フモニシンA1、A2、B1およびB2およびB3、フサレノン−X、フサロクロマノン、フサル酸、フサリン、グリオトキシン、HT−2トキシン、ヒアロデンドリン、イポメアニン、イスランジトキシン、イソフミガクラビンAおよびB、ラテリチン+1、レプトシン、リコマラスミン+1、マルホルミン、マルトリジン、モニリフォルミン、モノアセトキシスキルペノール、ミコフェノール酸、ネオソラニオール、ニバレノール、NT−1トキシン、NT−2トキシン、オクラトキシン、オオスポレイン、シュウ酸、パスパリトレムAおよびB、パツリン、ペニシリン酸、ペニトレム、ホモプシン類、PR−トキシン、ロリジンE、ロクエフォルチンAおよびB、ルブラトキシン、ルブロスキリン、ルブロスルフィン、ルグロシン、サムブシニン+1、サトラトキシンF、G、H、スキルペントリオール、シロデスミン、スラフラミン、スポリデスミン、ステリグマトシスチン、スワインソニン、T−1トキシン、T−2トキシン、テニュアゾン酸、トリアセトキシスキルペンジオール、トリコテセン類、トリコデルミン、トリコテシン、トリコベリン類、トリコベロール類、トリプトキバレン、ベルカリン、ベルクロゲン、ベルチシリン類、ビオプルプリン、ビオメレイン、ビリジトキシン、ウォルトマンニン、キサントシリン、ヤバニシン+1、ゼアラレノール類、ゼアララノン類、ゼアラレノン、α、βゼアララノン、α、βゼラノール、ならびにそれらのサブファミリーおよび/または誘導体に特異的なMIPをはじめとし、マイコトキシンに特異的な様々な分子鋳型ポリマーを、本明細書に記載された通り合成することができる。幾つかの実施形態において、テンプレートは、N−(2−ヒドロキシ−3,5−ジクロロベンゾイル)−L−フェニルアラニンを含む。幾つかの実施形態において、テンプレートは、5−クロロ−6,7−ジメトキシ−1−メチルイサチンを含む。本発明は、任意の特別なモノマーまたは架橋剤に限定されない。それどころか、本明細書に記載されたものをはじめとし、様々なモノマーおよび架橋剤を用いてもよい。幾つかの実施形態において、該方法は、更に、分子鋳型ポリマーを洗浄して、テンプレートを除去することを含む。幾つかの実施形態において、洗浄は、溶液(例えば、希アルカリ溶液、希酸溶液、または水)で1、2、3、4回またはそれを超える回数洗浄して、テンプレートを除去することを含む。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】オクラトキシンAおよびN−(3,5−ジクロロ−2−ヒドロキシベンゾイル)−L−フェニルアラニン(OTAテンプレート)を示す。
【図2】N−(3,5−ジクロロ−2−ヒドロキシベンゾイル)−L−フェニルアラニン(OTAテンプレート)の合成経路を示す。
【図3】複数の含有率のOTAについてのMIP−OTAの捕捉有効性を示す。
【図4】倍率15,000および3.0keVでの日立S−4300走査電子顕微鏡で観察されたMIP−OTAを示す。
【図5】3種の異なるOTA濃度に対する5種の異なる含有レベルのMIP(トルエン−シクロヘキサン混合物中で合成された)の捕捉親和力を示す。
【図6】機能的モノマーとしてのスチレンおよび2−ビニルピリジンから生成され、熱開始、または低温およびUV開始のいずれかで重合されたMIPによる、OTAの捕捉活性を示す。初期吸着の値、ならびにクエン酸塩緩衝液(pH4.0)洗浄後および100%メタノール洗浄後の残留吸着の値を報告している。
【図7】機能的モノマーとしてのスチレンおよび2−ビニルピリジンから生成され、低温およびUV開始で重合されたMIPによる、ポリフェノールおよび3−インドール酢酸の捕捉活性を示す。初期吸着の値を報告している。
【図8】ワイン中のOTA捕捉のための、MIP−OTAでコートされ、50mLファルコンチューブ中で用いられた繊維ガラスメッシュの写真を示す。
【図9】4種の異なる重合条件を利用し、OTAの添加濃度50、100、200ppbの白ワインで検査された、繊維ガラスメッシュをコートする3つのレベルのMIP−OTAの捕捉検査の結果を示す。
【図10】3種の重合条件を利用し、OTAの添加濃度50、100、200ppbの白ワイン中で検査された、繊維ガラスメッシュをコートする3つのレベルのNIPの捕捉検査の結果を示す。
【図11】蛍光検出器で記録されたOTA標準溶液のクロマトグラフィープロファイル、およびマイコトキシンの保持時間を最適化するために用いられた勾配の選択を示す。
【図12】スポリデスミンおよびスポリデスミンテンプレート(5−クロロ−6,7−ジメトキシ−1−メチルイサチン)の分子構造を示す。
【図13】スポリデスミンテンプレートの合成経路を示す。
【図14】複数の含有率のMIP−スポリデスミンおよびNIPによる、5−クロロ−6,7−ジメトキシ−1−メチルイサチンテンプレートの捕捉有効性を示す。
【図15】熱開始または低温/UV開始重合で合成されたMIPおよびNIPのグリオトキシンへの捕捉活性、ならびにメタノールレベルを上昇させて実施した6回の逐次洗浄後の相互作用の安定性/特異性を示す。
【図16】熱開始または低温/UV開始重合で合成されたMIPおよびNIPの5−クロロ−6,7−ジメトキシ−1−メチルイサチンテンプレートへの捕捉活性、ならびにメタノールレベルを上昇させて実施した6回の逐次洗浄後の相互作用の安定性/特異性を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
〔定義〕
本明細書で用いられる用語「分子鋳型ポリマー」または「MIP」は、特定の化合物に選択的に結合する合成ポリマーを指す。好ましい実施形態において、分子鋳型ポリマーは、テンプレート化合物とも呼ばれる標的化合物の存在下で合成され、特異的な標的化合物(例えば、マイコトキシン)への高い親和力を有するMIPが作製される。一般に該ポリマーは、天然の標的(例えば、天然のマイコトキシン)の構造、形状および/または他の化学的特徴を模倣したテンプレート(例えば、合成的に構築された分子/リガンド/テンプレート(例えば、合成マイコトキシンテンプレート))と、他の成分、例えばモノマーおよび/または架橋試薬とを用いて構築される。例えばテンプレート化合物は、プレポリマー混合物に組み込まれて、モノマーとの会合を形成することができる。その後、混合物は、テンプレート化合物を適所に含みながら重合される。ポリマーが形成されると、テンプレート化合物が除去されて、テンプレート(またはテンプレートに類似した他の組成物(例えば、天然由来のマイコトキシン))への親和力を有する相補的な空洞が後に残される。そのような領域(例えば、空洞または他の領域)は、将来の標的化合物に結合するように適合されており、そのような化合物への高い親和力を生じさせる。
【0015】
特異的な標的化合物を用いて分子鋳型ポリマーを形成させるが、標的化合物とは異なるが類似している化合物類に対して、該ポリマーが高い親和力を有しうることは、留意に値する。例えば、分子鋳型ポリマーは、形状、電荷密度、幾何的または他の物理的もしくは化学的特徴がテンプレート化合物(例えば、合成マイコトキシンテンプレート)と類似した複数の化合物に結合してもよい。
【0016】
本明細書で用いられる用語「ポリマー」は、典型的には化学的共有結合によりつながってネットワークを形成する反復構造単位で構成された分子(巨大分子)を指す。
【0017】
本明細書で用いられる用語「テンプレート化合物」または「標的化合物」は、リガンド(例えば、モノマー)により複合体化され、引き続き重合されて、分子鋳型ポリマーを形成する化合物を指す。テンプレート化合物は、有機化合物(例えば、マイコトキシン、ペプチド、およびタンパク質)および無機化合物(例えば、無機質および重金属)を包含する。本明細書で用いられる用語「マイコトキシンテンプレート」は、天然マイコトキシン(例えば、オクラトキシン、スポリデスミンなど)の構造、形状および/または他の化学的特徴を模倣した、合成的に構築された分子を指す。本発明は、用いられるマイコトキシンテンプレートのタイプに限定されない。それどころか、非限定的に、アフラトキシン類:アフラトキシンB1、B2、G1、G2、M1、P1、Q1、ステリグマトシスチンおよびサブファミリー、アフラトキシコール;トリコテセン類:デオキシニバレノール、ジアセトキシスキルペノール、モノアセトキシスキルペノール、スキルペントリオール、T−2トキシン、HT−2トキシン、T−2テトラオール、フサレノンX、フサリンC、フサル酸、フサロクロマノン、アウロフサリン、フサプロリフェリン、ネオソラニオール、ニバレノール、ならびに代謝産物およびサブファミリー;フモニシン類:フモニシンA1、A2、B1、B2、B3およびサブファミリー;オクラトキシン類:オクラトキシンA、B、α、βおよび代謝産物;ゼアラレノン、αおよびβ−ゼアラレノール、ゼアララノン類、αおよびβ−ゼアララノール、ゼラノールおよび代謝産物;パツリン、グリオトキシン、ミコフェノール酸、モニリフォルミン、シクロピアゾン酸、シトリニン、ベアウベリシン、シトレオビリジン、シトカラシンH;ペニシリン酸、PR−トキシン、ロクエフォルチンAおよびB、ルブラトキシンおよびサブファミリー;エルゴットアルカロイド類:エルゴタミン、クラビンアルカロイド類;イソフミガクラビンAおよびB;パスパリトレムAおよびB、アフラトレム、ペニトレム類およびサブファミリー;ホモプシン類:ホモプシンAおよびサブファミリー;ベルカリンA、ベルクロゲンおよびサブファミリー;スポリデスミンおよびサブファミリー;スラフラミン、スワインソニン、テニュアゾン酸、アルターナリオール、ウォルトマンニン、ならびに本明細書に記載された他のマイコトキシンをはじめとし、様々なマイコトキシンを用いてもよい。
【0018】
本明細書で用いられる用語「モノマー」は、他のモノマーに化学的に結合してポリマーを形成するようになりうる分子を指す。
【0019】
本明細書で用いられる用語「架橋」および「架橋剤」は、二重結合を2、3または4個含有していて、モノマー2個以上に結合し、ポリマーネットワークを形成することが可能な分子を指す。
【0020】
本明細書で用いられる用語「構造単位」は、ポリマー鎖の、反復単位に関連するビルディングブロックを指す。
【0021】
本明細書で用いられる用語「陰イオン性」または「陰イオン」は、負電荷を有するイオンを指す。
【0022】
本明細書で用いられる用語「陽イオン性」または「陽イオン」は、正電荷を有するイオンを指す。この用語は、正電荷を含む、分子鋳型ポリマーなどのポリマー化合物を指すこともできる。
【0023】
本明細書で用いられる用語「酸」は、プロトンを供与することができ、そして/または電子を受容することができる任意の化学化合物を指す。本明細書で用いられる用語「塩基」は、プロトンを受容することができ、そして/または電子もしくは水酸化物イオンを供与することができる任意の化学化合物を指す。本明細書で用いられる用語「塩」は、無機または有機酸および塩基から誘導されうる化合物を指す。
【0024】
本明細書で用いられる用語「ブリーディング(bleeding)」は、MIPの複数回の洗浄段階の後でもMIPに会合した状態にあり、MIPから解離していて収着活性を妨害し続けるテンプレートの残留分画を指す。
【0025】
本明細書で用いられる用語「ポロゲニック/ポロゲン」は、ポリマー上の空洞(例えば、MIPの空洞)の寸法を変化させるのに用いられる物質、分子、緩衝液、溶媒(例えば、トルエン、キシレン、エチルベンゼン)を指し、ポリマー対ポロゲン比は、最終的な構造の多孔性の量に直接相関する。
【0026】
本明細書で用いられる用語「多孔性」は、気体もしくは液体を保持しうるか、またはそれを通過させうる材料中の空隙(例えば、MIPの空洞)の尺度を指す。
【0027】
本明細書で用いられる用語「重合」は、化学反応においてモノマー分子を一緒に反応させて、三次元ネットワークまたはポリマー鎖を形成する工程を指す。
【0028】
本明細書で用いられる用語「沈殿」は、化学反応時の溶液中での固体形成を指す。反応が起こった時に、形成された固体は、沈殿と呼ばれ、固体の上に残留する液体は、上清と呼ばれる。
【0029】
本明細書で用いられる用語「遠心分離」は、物体を固定軸の周りで回転させて、軸に対して垂直方向の力を加える遠沈ローターにより生成された遠心力を利用して、分子を寸法または比重により分離する工程を指す。遠心分離機は、沈降の原理を利用して作動するもので、その場合、向心加速度を利用して、高比重の物質および低比重の物質を異なる比重層に均等に分配させる。
【0030】
本明細書で用いられる用語「濃度」は、定義された空間あたりの物質量を指す。濃度は通常、容量単位あたりの質量に関して表わされる。溶液を希釈するためには、更なる溶媒を添加するか、または溶質量を減少させなければならない(例えば、選択的分離、蒸発、噴霧乾燥、凍結乾燥による)。反対に溶液を濃縮するためには、溶媒量を減少させなければならない。
【0031】
本明細書で用いられる用語「層」は通常、材料の比重特性に関連する遠心分離または沈降により分離された後に得られる、重ね合わせられた部分または区分を形成する材料層の中に組織化された水平方向の堆積物を指す。
【0032】
本明細書で用いられる用語「精製された」または「精製する」は、試料からの外来成分の除去を指す。化学関連で用いられる場合、「精製された」または「精製する」は、外来物質、不適切な物質または汚染物質からの該当する化学物質の物理的分離を指す。有機分子の精製に一般に用いられる方法としては、非限定的に、以下のものが挙げられる:アフィニティー精製、機械的ろ過、遠心分離、蒸発、不純物の抽出、他の成分が不溶性である溶媒への溶解、結晶化、吸着、蒸留、分別、昇華、溶錬、精練、電解および透析。
【0033】
本明細書で用いられる用語「乾燥」は、物質中の液体を減少または排除する、任意の種類の工程を指す。
【0034】
本明細書で用いられる用語「噴霧乾燥」は、高温気体を用いて、液体を含有する物質を乾燥させて液体を蒸発させ、物質中の液体を減少または排除する方法を指す。言い換えれば、加熱した乾燥空気の通風の中に噴霧または微細化することにより、材料を乾燥させる。
【0035】
本明細書で用いられる用語「乾燥した自由流動性粉末」は、自由に流動する乾燥粉末を指す。
【0036】
本明細書で用いられる用語「粉砕」は、衝撃、せん断、または摩擦により粒径を減少させることを指す。
【0037】
本明細書で用いられる用語「洗浄」は、調製物の不純物または可溶性の不適切な成分を除去または洗浄すること(例えば、任意のタイプの溶質(例えば、蒸留水、緩衝液もしくは溶媒、または混合物)を用いて)を指す(例えば、MIPを洗浄して、試料からテンプレート成分を除去してもよい)。
【0038】
本明細書で用いられる用語「分析物」は、原子、分子、物質、または化学構成物を指す。一般に分析物は、それ自体は測定されず、むしろ分析物の態様または特性(物理的、化学的、生物学的など)を、分析手順、例えば高速液体クロマトグラフィー(HPLCと略す)を用いて測定する。例えば一般には、「椅子」(分析物−成分)自体を測定せず、椅子の高さ、幅などが測定される。同様に一般には、マイコトキシンを測定せず、むしろマイコトキシンの1種以上の特性を(例えば、マイコトキシンの蛍光を、例えばその安定性、濃度、または生物活性に関連させて)測定する。
【0039】
本明細書で用いられる用語「試料」は、任意の供給源(例えば、合成試料、生体試料および環境試料)からの標本をはじめとし、広義で用いられる。合成試料は、人工的に生成された任意の材料(例えば、MIP)を包含する。生体試料は、動物(ヒトを含む)から得てもよく、流体、固体、組織、および気体を包含する。生体試料は、血漿、血清などの血液製剤を包含する。環境試料は、表層物質、土壌、水、結晶および工業試料などの環境材料を包含する。
【0040】
本明細書で用いられる用語「高速液体クロマトグラフィー」および用語「HPLC」は、化合物を分離する液体クロマトグラフィーの一形態を指す。該化合物は、溶液に溶解している。溶媒または溶媒混合物が浮遊しているカラムに試料混合物を注入して、混合物の成分をカラムから溶出させることにより、化合物を分離する。HPLC機器は、移動相の貯蔵器、ポンプ、インジェクタ、分離用カラム、および検出器を含む。カラムの流出液中の分析物の存在は、屈折率、設定波長でのUV−VIS吸収、適切な波長で励起された後の蛍光、または電気化学的応答の変化を定量的に検出することにより記録される。
【0041】
本明細書で用いられる用語「シグナル」は一般に、反応が起こったこと(例えば、抗原への抗体の結合)を示す任意の検出可能な工程に関連して用いられる。シグナルは、定性的および定量的に評価することができる。「シグナル」のタイプの例としては、非限定的に、放射線シグナル、蛍光測定シグナル、または比色生成物/試薬シグナルが挙げられる。
【0042】
本明細書で用いられる用語「走査電子顕微鏡」および用語「SEM」は、ラスタースキャンパターンの電子の高エネルギービームで走査することにより、試料表面を映像化する電子顕微鏡のタイプを指す。電子が、試料を構成する原子と相互作用して、試料の表面トポグラフィー、組成および他の特性、例えば電気伝導率に関する情報を含むシグナルを生成する。
【0043】
本明細書で用いられる用語「固定剤」は、既存の形態の物質を「固定」、安定化、または保存して、物質が分解または変化するのを防ぐために、一物質を他の物質へ固定することが可能な化学薬品を指す。多くの場合、固定剤は、走査電子顕微鏡(SEM)において試料を調製するために用いられる。
【0044】
本明細書で用いられる用語「インビボ」は、生存する生物体内で実施され、生物体内で起こる研究および/または実験を指す。
【0045】
本明細書で用いられる用語「インビトロ」は、生存する生物体外の人工的環境、および通常は生物体内で起こるものを人工的環境で起こるように生成させた生物学的工程または反応を指す。インビトロ環境の例としては、試験管および細胞培養が挙げられる。
【0046】
本明細書で用いられる用語「インサイチュ」は、反応混合物の条件において意味する。
【0047】
本明細書で用いられる用語「エクスビボ」は、自然条件の変化が最小限である生物体外の人工的環境において、生存組織内または生存組織表面で実施される研究および/または実験および/または適用を指す。
【0048】
本明細書で用いられる用語「吸収する」は、材料が別の物質を「取入れる」または「吸上げる」工程を指す。例えば「吸収」は、拡散または浸透を介して、物質を細胞内に、または組織および臓器を通して吸収または同化する工程を指す場合もある(例えば、消化器系による栄養素の吸収、または血流内への薬物の吸収)。
【0049】
本明細書で用いられる用語「吸着する」または「吸着」は、材料が組成物(捕捉剤および/または吸着剤)により(例えば、その表面に)捕捉および/もしくは蓄積される場合に起こる工程、または組成物(例えば、MIP)が試料中の標的分子(例えば、マイコトキシン)に結合する(例えば、試料から標的分子を除去するための)工程を指す。
【0050】
本明細書で用いられる用語「収着」は、吸着および吸収の両方を指す。
【0051】
本明細書で用いられる用語「捕捉する」および/または用語「捕捉」は、互いに接触するようになる(例えば、それにより複合体を形成する)2個以上の物体の物理的会合(例えば、結合(例えば、水素結合、イオン結合、共有結合、または他の結合タイプ)を介して)を指す。会合の例示的形態としては、非限定的に、水素結合、配位、およびイオン対形成が挙げられる。捕捉相互作用は、各物体の立体化学および幾何学に応じて(例えば、捕捉の特異性を更に定義する)、様々な数の化学的相互作用(例えば、化学結合)を含んでいてもよい。2個以上の物体が捕捉される場合、それらは化学結合により捕捉されてもよいが、電荷、双極子−双極子または他のタイプの相互作用を介した会合であってもよい。
【0052】
本明細書で用いられる用語「捕捉剤」は、第二の物体と複合体を形成することが可能な物体を指す。
【0053】
本明細書で用いられる用語「複合体」は、2個以上の別個の物体間の会合(例えば、同一または異なる2個以上の物体(例えば、同一または異なる化学種)間の会合)により形成された物体を指す。該会合は、共有結合または非共有結合(例えば、ファンデルワールス相互作用、静電気相互作用、荷電相互作用、疎水性相互作用、双極子相互作用、および/または水素結合力(例えば、ウレタン結合、アミド結合、エステル結合、およびそれらの組み合わせ))を介していてもよい。
【0054】
本明細書で用いられる用語「有効量」は、有利な結果または所望の結果を成就するのに十分な組成物(例えば、MIP)の量を指す。有効量を、1回以上の投与、適用または投薬で、別の材料と共に投与および/または併用することができ、特定の配合剤または投与経路に限定されないものとする。
【0055】
本明細書で用いられる用語「動物」は、動物界のものを指す。これには、非限定的に、生畜、畜類、家畜、愛玩動物、海洋および淡水動物、ならびに野生動物が挙げられる。
【0056】
本明細書で用いられる用語「食材」は、対象(例えば、ヒトおよび/または動物対象(例えば、対象の食事にエネルギーおよび/または栄養素を寄与する))により消費される材料を指す。食材の例としては、非限定的に、牛乳、果汁、穀物、果実、野菜、肉、完全混合飼料(TMR)、まぐさ、ペレット、濃厚飼料、プレミックス、共製品、穀物、醸造かす、糖蜜、繊維、飼い葉、草、干し草、仁、葉、ひき割り粉、可溶性物質、および補助食品が挙げられる。
【0057】
本明細書で用いられる用語「消化器系」は、消化が起こりうる、または起こる系(胃腸系を含む)を指す。
【0058】
本明細書で用いられる用語「消化する」または「消化」は、食物、食材、または他の有機化合物を吸収可能な形態に変換して、熱および水分または化学作用により軟化、分解、または破壊することを指す。
【0059】
本明細書で用いられる用語「生物学的利用能」は、生物体に利用可能であるか、または全身循環に至る分子もしくは成分の割合を指す。分子または成分が静脈内投与された場合、その生物学的利用能は100%になる。しかし、分子または成分が他の経路(例えば、経口)で投与された場合、その生物学的利用能は低下する(不完全な吸収および初回通過代謝のため)。
【0060】
本明細書で用いられる用語「投与」および用語「投与すること」は、薬物、プロドラッグ、もしくは他の薬剤を含む物質を与える行動、または対象(例えば、対象、またはインビボ、インビトロ、もしくはエクスビボでの細胞、組織および臓器)への治療的処置を指す。投与の例示的経路は、目(眼科的)、口(経口)、皮膚(局所または経皮)、鼻(経鼻)、肺(吸入)、口内粘膜(口腔)、耳、直腸、膣を介したもの、注射(例えば、静脈内、皮下、腫瘍内、腹腔内など)などによるものであってもよい。
【0061】
本明細書で用いられる用語「併用投与」および用語「併用投与すること」は、対象および/または材料(例えば、食材)に少なくとも2種の薬剤または治療薬を投与することを指す。2種上の薬剤または治療薬の併用投与は、同時であってもよく、または第二の薬剤/治療薬の前に第一の薬剤/治療薬を投与してもよい。
【0062】
本明細書で用いられる用語「処置」は、疾患(例えば、マイコトキシン中毒症)の徴候または症状の改善および/または回復を指す。用語「処置」は、治療的処置および予防的または防御的手段の両方を指す。例えば、本発明の組成物および方法での処置で利益を得る可能性がある対象は、既に疾患および/または障害(例えば、マイコトキシン中毒症)を有するもの、ならびに疾患および/または障害が予防されるべきもの(例えば、本発明の予防的処置を利用して)を包含する。
【0063】
本明細書で用いられる用語「マイコトキシン」は、様々な真菌類により産生される毒性および/または発癌性化合物を指す。
【0064】
本明細書で用いられる用語「マイコトキシン中毒症」は、マイコトキシンがヒトまたは動物体内の耐性バリアを通過している状態を指す。マイコトキシン中毒症は、感染または疾患のいずれかとみなすことができ、罹患されたものに対して不利益な影響を有しうる。
【0065】
本明細書で用いられる用語「疾患」、「感染」および「病的状態または応答」は、正常な機能の実践を妨害または改変する、生存対象(例えば、ヒトおよび/または動物)またはその任意の臓器もしくは組織の正常状態の障害に関連する状態、徴候、および/または症状を指し、環境要因(例えば、マイコトキシン中毒症をはじめとする栄養障害、工業災害、気候)、特異的感染物質(例えば、蠕虫、アメーバ、細菌、ウイルス、プリオンなど)、生物体の先天的欠損(例えば、様々な遺伝子異常)、またはこれらと他の要因との組み合わせに対する応答であってもよい。
【0066】
本明細書で用いられる用語「疾患のリスク」は、特定疾患に見舞われる素因のある対象を指す。この素因は、遺伝的(例えば、疾患に見舞われる特定の遺伝的傾向、例えば遺伝子障害)、または他の要因(例えば、年齢、体重、環境条件、有害な化合物への曝露(環境などに存在する))によるものであってもよい。
【0067】
本明細書で用いられる用語「疾患に罹っていること」は、特定疾患に見舞われている対象(例えば、動物またはヒト対象)を指し、任意の特定徴候または症状または疾患に限定されない。
【0068】
本明細書で用いられる用語「毒性」は、毒素/毒性物の接触または投与前の同じ細胞または組織に比較した、対象、細胞または組織への任意の有害な、不利益な、損傷的な、または他の負の影響を指す。
【0069】
本明細書で用いられる用語「医薬組成物」は、インビトロ、インビボまたはエクスビボでの診断的また治療的使用に特に適した組成物を生成する、活性剤(例えば、MIPを含む組成物)と不活性または活性の担体との組み合わせを指す。
【0070】
本明細書で用いられる用語「薬学的に許容しうる」および用語「薬理学的に許容しうる」は、公知の有益反応よりも多くの公知の有害反応を実質的に生じない組成物を指す。
【0071】
本明細書で用いられる用語「トレーサビリティ」は、不確かさが全て表記された途切れのない比較の連鎖により、表記された参照、通常は国家または国際基準に関連づけることができる、測定結果または標準値の性質を指す。それは、一般的な計量概念を化学的測定に実践適用するものであり、分析化学測定も確実に比較可能になるための技術用語、概念および方策を提供する。それは、証明可能な方法で、独自に同定可能な物体を測定する。トレーサビリティの測定は、とりわけ、文書に記録された同定法を用いて品目の年代、位置、および/または適用を相互に関連づけるために用いられる。
【0072】
〔発明の詳細な説明〕
様々な真菌群が動物の健康に不利益な影響を有するマイコトキシンを産生する。これらの毒素は、それらの群系が流行するのに好都合な条件であれば、主にアスペルギルス属(Aspergillus)、フザリウム属(Fusarium)およびペニシリウム属(Penicillium)の真菌属により産生される。世界のどの地帯もマイコトキシンから、そして動物およびヒトの健康に対するその負の影響から逃れられない。穀物供給および動物繁殖率に対するマイコトキシン汚染の負の影響は膨大であり、ヒトの健康へのリスクは常に存在する。温暖な気候では、アフラトキシン類およびフモニシン類により病に倒れる傾向があるが、湿度が高く低温の地域は、オクラトキシン、スポリデスミン、ゼアラレノン、デオキシニバレノール、T−2トキシン、およびジアセトキシスキルペノールが流行し易い。
【0073】
マイコトキシンは、カビおよび真菌に汚染された穀粒、まぐさ、果実、飼料および食品、ならびに環境(例えば、土壌、水および空気を通してエアロゾルが獲得したマイコトキシン中毒症(aerosol acquired mycotoxicosis)など)により生成される二次代謝産物である。マイコトキシンは、ヒトおよび動物の健康に危険な影響を有する。マイコトキシンは、食物連鎖全体に存在するため、異なる群の毒素の毒性学的性質に基づいて飼料/食物材料および環境の過剰な汚染を制限する規制を受ける(例えば、Official Journal of the European Union (2006/576/EC)の、動物飼料用の製品の中のデオキシニバレノール、ゼアラレノン、オクラトキシンA、T−2およびHT−2、ならびにフモニシン類の存在に関する2006年8月17日のCommission Recommendationを参照)。これに関しては、世界中の異なる安全機関が、汚染レベルについて検査する限界値および制御手順を確立した。これらの規制は、国および/または大陸の間でまだ一致しておらず、考慮される地理的領域の政治的および経済的状態にも左右される。規制は、入手可能なものについては、モデル状況において結晶形態のマイコトキシンにより生じた急性中毒症例に関する非包括的数の報告を根拠とする。マイコトキシンの理解が進めば、慢性レベルの曝露の影響、曝露の期間、および異なるマイコトキシンに自然に汚染された飼料/食物材料の同時発生、ならびに相乗的毒性作用を発揮しうる環境が、動物およびヒトの健康状態、ならびに様々な他の感染への感受性、つまり免疫状態に重要な役割を担う可能性がある。この推論においては、食物連鎖に侵入し、環境に存在する非規制レベルの毒性化合物を取り扱うための解決策を考慮しなければならない。したがって本発明の幾つかの実施形態において、マイコトキシン(例えば、非限定的に、アフラトキシン類:アフラトキシンB1、B2、G1、G2、M1、P1、Q1、ステリグマトシスチンおよびサブファミリー、アフラトキシコール;トリコテセン類:デオキシニバレノール、ジアセトキシスキルペノール、モノアセトキシスキルペノール、スキルペントリオール、T−2トキシン、HT−2トキシン、T−2テトラオール、フサレノンX、フサリンC、フサル酸、フサロクロマノン、アウロフサリン、フサプロリフェリン、ネオソラニオール、ニバレノール、ならびに代謝産物およびサブファミリー;フモニシン類:フモニシンA1、A2、B1、B2、B3およびサブファミリー;オクラトキシン類:オクラトキシンA、B、α、βおよび代謝産物;ゼアラレノン、αおよびβ−ゼアラレノール、ゼアララノン類、αおよびβ−ゼアララノール、ゼラノールおよび代謝産物;パツリン、グリオトキシン、ミコフェノール酸、モニリフォルミン、シクロピアゾン酸、シトリニン、ベアウベリシン、シトレオビリジン、シトカラシンH;ペニシリン酸、PR−トキシン、ロクエフォルチンAおよびB、ルブラトキシンおよびサブファミリー;エルゴットアルカロイド類:エルゴタミン、クラビンアルカロイド類;イソフミガクラビンAおよびB;パスパリトレムAおよびB、アフラトレム、ペニトレム類およびサブファミリー;ホモプシン類:ホモプシンAおよびサブファミリー;ベルカリンA、ベルクロゲンおよびサブファミリー;スポリデスミンおよびサブファミリー;スラフラミン、スワインソニン、テニュアゾン酸、アルターナリオールならびにウォルトマンニンをはじめとし、マイコトキシン分子の大分類および小分類の全体的ファミリーを含む)を除去するための親和力の高い合成収着媒を調製するための経済的で大規模な方法。
【0074】
オクラトキシンA(OTAと略す)は、カビ類の中でもとりわけAspergillus ochraceusおよびPenicillium verrucosumにより主に産生されるマイコトキシン代謝産物であり、不適切に貯蔵された食品(例えば、Pfohl−Leszkowicz A., and Manderville R.A., 2007. Molecular Nutrition and Food Research, 51: 61−99参照)、汚染された穀物、コーヒー豆(例えば、O’Brien E., and Dietrich D.R. 2005. Critical Reviews in Toxicology, 35: 33−60参照)、ワイン用のブドウ(例えば、Blesa J., Soriano J.M., Molto J.C., Manes J., 2006. Critical Review in Food Science and Nutrition, 46: 473−478参照)で生育する可能性があり、移送されてヒトに消費される液体および固体(例えば、ブドウ果汁、ワイン、ビール、コーヒー、ココア抽出物、ならびに汚染された穀物、肉、および汚染された穀物を消費するか、さもなければマイコトキシンに曝露された動物からの他の副生物(例えば、牛乳、卵など)を利用する食物および飼料)を汚染する可能性があり、ヒトに対して有害となる可能性があり、OTAは発癌性で(グループ2B;例えば、Clark H.A., and Snedeker S.M, 2006. Journal of Toxicology and Environmental Health, Part B: Critical Reviews, 9: 265−96参照)、腎毒性のある化合物であり、免疫抑制を起こす可能性がある(例えば、Al−Anati L., and Petzinger E., 2006. Journal of Veterinary Pharmocology and Therapeutics, 29: 79−90; 先に引用されたPfohl−Leszkowicz and Manderville, 2007;先に引用されたO’Brien and Dietrich, 2005参照)。OTAは、尿排泄の変化などブタの腎臓機能の変化、および尿中へのグルコース排泄の増加を誘導する可能性があり、それはブタ腎症として特徴づけられた。OTAを含む穀物を食べたトリ、シチメンチョウ、コガモは、飼料転換が不良で、産卵率が低下した。ヒトにおいては、OTAの病理が、バルカン腎症として臨床的に記載された(例えば、Vrabcheva T., Petkova−Bocharova T., Grosso F., Nikolov I., Chernozemsky I.N., Castegnaro M., and Dragacci S., 2004. Journal of Agricultural and Food Chemistry, 52:2404−2410参照)。OTAが、胃腸管のレベルで吸収された後、フェニルアラニンとの類似性により腸肝循環に侵入して、血中のアルブミン分画に結合し、これにより動物組織に長期間存続する可能性があることが、動物試験で示された(例えば、Creppy E.E., kane A., Dirheimer G., Lafarge−Frayssinet C., Mousset S., and Frayssinet C., 1985. Toxicology Letters, 28: 29−35参照)。
【0075】
別の分類の真菌毒である、グリオトキシン、ヒアロデンドリン、シロデスミン、ケトミン、ケトシン、ベルチシリン類、レプトシン、エメストリン、およびスポリデスミンをはじめとするエピポリチオジオキソピペラジン類は、特に該当する。一般には動物生産に対する経済的影響の高い後者は、世界の特定地域、主にニュージーランド牧畜業において見出されたが(例えば、Hohenboken W.D., Morris C.A., Munday R., De Nicolo G., Amyes N.C., Towers N.R. and Phua S.H., 2004. New Zealand journal of Agricultural Research, 47: 119−127参照)、ポルトガルのアゾレス諸島でも報告された。スポリデスミンは、特定の草に寄生するPithomyces chartarumにより合成される疎水性分子である。その毒性は、ジスルフィド架橋の存在により誘導され、チオール基との反応および活性酸素類(スーパーオキシドラジカル、過酸化水素、ヒドロキシルラジカル)の発生によりタンパク質を不活化させる可能性がある。この病理は、顔面湿疹でより公知の、肝臓由来の光過敏症であり、胆管上皮細胞を破壊してフィロエリチン(クロロフィルの代謝産物)を循環血中に蓄積させるために生じ、日光のエネルギーを吸収して、特にヒツジ、ウシ、ウマ、およびシカに影響を及ぼす。臨床徴候としては、牛乳生産量の減少、体重減少、光過敏症および死亡が挙げられる(例えば、Munday R., 1982. Chemico−Biological Interactions, 41: 361−374参照)。動物およびヒトは、飼料、食物、牧草および液体中のマイコトキシンへの曝露に加えて、他の方法でもマイコトキシンと接触するようになり、そして影響を受けるようになる可能性がある。例えば動物は、寝わらの中のマイコトキシンと接触するようになる可能性があり、魚は、水環境のマイコトキシンと接触するようになる可能性があり、他の有機材料はマイコトキシンの影響を受ける可能性がある。
【0076】
マイコトキシン汚染は不可避であり、マイコトキシンの負の影響を低減するために、歴史的には、吸着性に関して公知の、粘土、ベントナイトおよびアルミノケイ酸塩などの無機材料、または活性炭が農業で用いられた(例えば、動物飼料および/もしくは成分と混和されて、カプセル化形態で、またはフィルター装置として)。多量に用いられる粘土は、流体(例えば、動物および/またはヒトの胃腸管内の)中で若干のマイコトキシンを捕捉して、その中毒作用を最小限に抑える(例えば、Ramos A.J., and Hernandez E., 1997. Animal Feed Science and Technology, 65: 197−206; Grant P.G., and Phillips T.D., 1998. Journal of Agricultural and Food Chemistry, 46: 599−605参照)。しかし粘土は、動物およびヒトにとって重要となる多くの有益な栄養素、例えばビタミン、無機質およびアミノ酸の吸収を阻害し、それにより食事の栄養密度を低下させる。その上、粘土は、有益な作用(例えば、マイコトキシン汚染の低減)を有するには、多量に用いられなければならない(例えば、動物に食べられなければならない)不活性材料である。しかし、動物に多量に食べられた粘土は、動物から排泄されると、環境に対して負の影響を有する可能性がある。米国特許番号第6,045,834号に記載された発明をはじめとし、特定のマイコトキシンへの特異性が欠如した他の広範囲のマイコトキシン吸着剤も用いられてきた。
【0077】
一般に分子鋳型ポリマー(MIPと略す)は、テンプレートという分子の存在下で形成されるポリマーであるが、テンプレートはその後抽出され、このため相補的な空洞が後に残される。これらのポリマーは、元の分子に対して特定の化学的親和力を示し、センサー、触媒を組み立てるため、または分離法のために用いることができる。最初の鋳型材料は、ケイ酸ナトリウムに基づくものであった。これらの材料の最初の実験的使用は、1949年に着色剤の分離のためであった(例えば、Andersson H.S., and Nicholls I.A., 2001.のMolecularly Imprinted Polymers: Man−made mimics of antibodies and their application in analytical chemistry, (Sellergen B.,編), Techniques and Instrumentation in Analytical Chemistry, Vol. 23 Elsevier, Amsterdam, the Netherlands, pp. 1−19参照)。
【0078】
本発明は、一般に、分子鋳型ポリマー(MIP)に関する。詳細には本発明は、再使用可能で環境に優しいMIP、それを製造する方法、それを使用する(例えば、標的化合物(例えば、マイコトキシン)を捕捉および/または吸着する)方法、およびその使用を異なる手段で適用する方法(例えば、トレーサビリティの目的でマイコトキシンの存在を検出するため、そして汚染された供給源からマイコトキシンを除去するため)に関する。本発明の組成物および方法は、食事、治療、予防、食物および飲料用の加工および製造、液体ろ過に加えて、研究および品質管理への適用をはじめとし、様々な適用において用途を見出す。
【0079】
従って幾つかの実施形態において、本発明は、標的化合物(例えば、マイコトキシン)に対するMIPの高い収着能および選択性に影響を及ぼすテンプレート化合物(例えば、MIPが合成される際の)を提供する。テンプレート化合物は、MIP合成後にMIPから除去することができる(例えば、それによりMIPを「活性化」して、それを標的化合物(例えば、マイコトキシン)に結合および吸着させることができる)。こうして本発明は、経済的なだけでなく(例えば、経済的に実現可能な手法で、合理的で大規模に製造することができる)、歴史的に用いられたMIPテンプレートよりも容易に入手できる試薬を用いる、テンプレートおよびMIPの大規模製造が可能な方法(例えば、合成法)および材料を提供する。本発明は、幾つかの実施形態において、バイオニュートラル(bio−neutral)である(例えば、環境を損傷しない)組成物(例えば、テンプレート化合物、モノマー、架橋剤およびMIP)も提供する。例えば幾つかの実施形態において、本発明のモノマーおよび架橋剤は、テンプレートと共に(例えば、テンプレートの官能基と共に)親和力の高い可逆的複合体を形成し、それにより標的化合物(例えば、マイコトキシン)に対して高い親和力を有し、環境に正の影響を提供する(例えば、高い水収着性によりMIPがその重量よりも最大10倍多い水分を吸着し、そのため保水により土壌の水分補給に有利となる)MIPを生成させることができる。同様に幾つかの実施形態において、本発明は、標的化合物(例えば、マイコトキシン)に対して親和力が高く、再使用可能である(例えば、標的化合物から分離して再使用することができる)MIPを提供する。
【0080】
〔I.分子鋳型ポリマー(MIP)の合成に用いられるテンプレート〕
MIP合成のための一般的スキームは、MIPネットワーク内の結合部位の形成を指示するテンプレート分子の存在下で、モノマーを重合および架橋させるステップを含む。ロストワックス鋳造の芸術的技法の際に、金型製造のためのワックス彫刻コピーの使用に類似したステップで、MIP結合部位に幾何特異性を付与する。MIPネットワークが形成された後、テンプレートが除去されれば、テンプレートのないMIPを標的化合物の捕捉に利用することができる。幾つかの実施形態において、テンプレートの除去は、一連の洗浄ステップを通して(例えば、以下のセクションIVに記載されたものを用いて)実現される。
【0081】
幾つかの実施形態において、標的化合物が、テンプレートとして用いられる。しかしこれは、試料中にテンプレートがブリーディングする、または残留テンプレートが徐々に浸出するという潜在的問題を生じる。分析の適用例では、テンプレートのブリーディングは、誤って高いバックグランドを生じ、非分析(例えば、捕捉)の適用例では、テンプレートブリーディングは、標的分子を試料中に実際に導入することにより捕捉作業を混乱させる可能性がある。その上、例えば毒性および/または発癌性を有する標的(例えば、マイコトキシン)を対象とするMIPを合成する場合、MIP合成工程の間に危険性の低いテンプレート分子を用いることが、ヒトの安全性の観点から、そして危険な廃棄物を最小限に抑えるために望ましいであろう。好ましい実施形態において、該テンプレート分子は、非危険性であり、そして/または容易に分解され、それゆえ健康または環境へのリスクを現わさない。好ましい実施形態において、該テンプレートは、MIPから放出されると再使用可能である。好ましい実施形態において、該テンプレートは、製造しうるマイコトキシンよりも多量に、そして安全な方法で製造することができる。
【0082】
それゆえ幾つかの実施形態において、MIP合成に用いられるテンプレートは、所望の標的化合物と同じ化合物であってもよい。幾つかの実施形態において、MIP合成に用いられるテンプレートは、所望の標的化合物とは異なっていてもよい。本発明の好ましい実施形態において、所望の標的化合物は、マイコトキシンである。マイコトキシンの例としては、非限定的に、アフラトキシン類:アフラトキシンB1、B2、G1、G2、M1、P1、Q1、ステリグマトシスチンおよびサブファミリー、アフラトキシコール;トリコテセン類:デオキシニバレノール、ジアセトキシスキルペノール、モノアセトキシスキルペノール、スキルペントリオール、T−2トキシン、HT−2トキシン、T−2テトラオール、フサレノンX、フサリンC、フサル酸、フサロクロマノン、アウロフサリン、フサプロリフェリン、ネオソラニオール、ニバレノール、ならびに代謝産物およびサブファミリーおよびコンジュゲート;フモニシン類:フモニシンA1、A2、B1、B2、B3およびサブファミリーおよびコンジュゲート;オクラトキシン類:オクラトキシンA、B、α、βおよび代謝産物;ゼアラレノン、ゼアラレノール、αおよびβ−ゼアララノン、ゼアララノール、αおよびβ−ゼラノールならびに代謝産物およびコンジュゲート;パツリン、ミコフェノール酸、モニリフォルミン、シクロピアゾン酸、シトリニン、ベアウベリシン、シトレオビリジン、シトカラシンH;グリオトキシン、スポリデスミン、ヒアロデンドリン、シロデスミン、ケトミン、ケトシン、ベルチシリン、レプトシン、エメストリン、およびサブファミリー;ペニシリン酸、PR−トキシン、ロクエフォルチンAおよびB、ルブラトキシンおよびサブファミリー;エルゴットアルカロイド類:エルゴタミン、エルゴクリプチン、エルゴバリン、エルゴクリスチン、エルゴメトリン、エルゴシン、エルゴニン、エルゴコルニン、エルギン、リセルゴール、リセルグ酸およびエピマー、クラビンアルカロイド類;イソフミガクラビンAおよびB;パスパリトレムAおよびB、アフラトレム、ペニトレム類およびサブファミリー;ホモプシン類:ホモプシンAおよびサブファミリー;ベルカリンA、ベルクロゲンおよびサブファミリー;スラフラミン、スワインソニン、テニュアゾン酸、アルターナリオール、ならびにウォルトマンニンが挙げられる。特定の実施形態において、標的化合物は、OTA、スポリデスミン、エルゴットアルカロイドである。
【0083】
幾つかの実施形態において、非標的テンプレート化合物の設計および/または決定は、標的分子の注意深い構造分析、構造の最小化、および効果的MIP結合部位形成に不可欠となる構造的特徴および官能基の決定により実施される。構造の最小化の方法は、当該技術分野で公知である(例えば、その全体が参照により本明細書に組み入れられた、Baggiani C., Giraudi G., and Vanni A., 2002. Bioconjugation, 10: 389−394参照)。本発明は任意の特定のメカニズムに限定されず、メカニズムの理解は本発明を実施する上で必要ではないが、テンプレート設計の間に考慮される構造の検討事項としては、非限定的に、キラリティー、平面性、分子の不適当な特性を担う構造の排除(例えば、毒性の分子決定因子の排除)、ならびに/または適切な溶媒接触表面、静電位表面、および/もしくはテンプレート分子の親油性−親水性表面の存在、ならびにテンプレートとモノマーおよび架橋剤との潜在的相互作用に加え、テンプレート合成の簡便性が挙げられる。幾つかの実施形態において、超高速形状認識技術を適用して、性能の優れた二次元構造の認識だけでなく、優先的に最も識別力のあるパターンの1つ、即ち、三次元分子形状に従って、分子に最もよく似た化合物の日常的スクリーニングを可能にする(例えば、Balletser P., and Richards W.G., 2007. Proceedings of the Royal Society A: Mathematical, Physical and Engineering Sciences, 463: 1307−1321参照)。
【0084】
1つの非限定的実施例において、オクラトキシンAのテンプレートは、図1に示されたN−(2−ヒドロキシ−3,5−ジクロロベンゾイル)−L−フェニルアラニンである。
【0085】
N−(2−ヒドロキシ−3,5−ジクロロベンゾイル)−L−フェニルアラニンの合成法の1つの非限定的実施例において、3,5−ジクロロサリチル酸と無水酢酸との反応により合成を開始して、2−アセトキシ−3,5−ジクロロ安息香酸を得て、それを塩化オキサリルの作用によりその酸塩化物に変換する。その後、2−アセトキシ−3,5−ジクロロ安息香酸クロリドをトリエチルアミンの存在下、インサイチュでフェニルアラニンエチルエステル塩酸塩と反応させて、N−(2−アセトキシ−3,5−ジクロロベンゾイル)−L−フェニルアラニンのエチルエステルを得る。その合成法の最終ステップにより、N−(2−アセトキシ−3,5−ジクロロベンゾイル)−L−フェニルアラニンエチルエステルの両方のエステル官能基に新規で特異性の高い加水分解を導入して、OTAテンプレートであるN−(2−ヒドロキシ−3,5−ジクロロベンゾイル)−L−フェニルアラニン(I)を収率98%で得る。この合成反応を、図2に要約する。
【0086】
こうして本発明は、経済的に実現可能な手法で多量に規模拡大することができるテンプレート(例えば、OTAテンプレート)を合成する方法および材料を提供する。
【0087】
〔II.MIPの重合に用いられるモノマーおよび架橋剤〕
MIPの合成に用いられるモノマーの選択では、どのモノマーまたはモノマーの組み合わせがテンプレートとの相互作用(例えば、共有結合、非共有結合、イオン結合、水素結合、疎水性相互作用、ファンデルワールス相互作用)を形成する可能性が最も高いかを評価するために、テンプレート分子の構造的特徴を考慮する。1つの非限定的実施例において、本明細書に記載されたOTAテンプレート(I)(例えば、N−(2−ヒドロキシ−3,5−ジクロロベンゾイル)−L−フェニルアラニン)の重要な構造的特徴としては、(i)2種の酸性官能基(−OHおよび−COH);(ii)1種の高極性ペプチド基(−NHCO−);および(iii)テンプレート構造の複数の低極性炭化水素フラグメント(例えば、それぞれがモノマーおよび架橋剤分子と複合体を形成する能力を有する)が挙げられる。全体が参照により本明細書に組み入れられた米国特許出願番号第10/181435号には、MIPの機能的モノマーおよび計算に基づくモノマー選択の方法が記載されている(例えば、先に引用されたBaggiani et al., 2002参照)。
【0088】
モノマーおよび特異的モノマーの分類(例えば、本発明のMIP合成法に用いられる)としては、非限定的に、以下の分類およびその誘導体が挙げられる:アクリル酸および誘導体(例えば、2−ブロモアクリル酸、塩化アクリロイル、N−アクリロイルチロシン、N−アクリロイルピロリジノン、トランス−2−(3−ピリジル)−アクリル酸)、アクリラート類(例えば、アルキルアクリラート、アリルアクリラート、ヒドロキシプロピルアクリラート)、メタクリル酸および誘導体(例えば、イタコン酸、2−(トリフルオロメチル)プロペン酸)、メタクリラート類(例えば、メチルメタクリラート、ヒドロキシエチルメタクリラート、2−ヒドロキシエチルメタクリラート、3−スルホプロピルメタクリラートナトリウム塩、エチレングリコールモノメタクリラート)、スチレン類(例えば、(2,3および4)−アミノスチレン、スチレン−4−スルホン酸、3−ニトロスチレン、4−エチルスチレン)、ビニル類(例えば、ビニルクロロホルマート、4−ビニル安息香酸、4−ビニルベンズアルデヒド、ビニルイミダゾール、4−ビニルフェノール、4−ビニルアミン、アクロレイン)、ビニルピリジン類(例えば、(2,3,および/または4)−ビニルピリジン、3−ブテン、1,2−ジオール)、ボロン酸類(例えば、4−ビニルボロン酸)、スルホン酸類(例えば、4−ビニルスルホン酸、アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸)、金属キレート化剤(例えば、スチレンイミノ二酢酸)、アクリルアミド類および誘導体(例えば、N−メチルアクリルアミド)、メタクリルアミド類および誘導体(例えば、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−(3−アミノプロピル)メタクリルアミド)、アルケン類(例えば、4−ペンテン酸、3−クロロ−1−フェニル−1−プロペン)、無水(メタ)アクリル酸および誘導体(例えば、無水メタクリル酸)、ケイ素含有モノマー(例えば、(3−メタクリルオキシプロピル)トリメトキシシラン、テトラメチルジシロキサン)、ポリエン類(例えば、イソプレン、3−ヒドロキシ−3,7,11−トリメチル−1,6,10−ドデカトリエン)、アジド類(例えば、4−アジド−2,3,5,6−テトラフルオロ安息香酸)、チオール類(例えば、アリルメルカプタン)が挙げられる。アクリラート末端または他の不飽和ウレタン類、カルボナート類およびエポキシ類も、ケイ素を基にしたモノマーと同様に、本発明の実施形態で用いることができる。
【0089】
好ましい実施形態において、OTAのテンプレート(即ち、N−(2−ヒドロキシ−3,5−ジクロロベンゾイル)−L−フェニルアラニン)の対象となるMIPの合成に用いられるモノマーおよび架橋剤は、2−ビニルピリジン、2−ヒドロキシエチルメタクリラート、および/またはエチレングリコールジメタクリラートを含む。本発明は任意の特定のメカニズムに限定されず、メカニズムの理解は本発明を実施する上で必要ではないが、2−ビニルピリジンはテンプレートの酸性基とイオン結合を形成し、ピリジン環の塩基性窒素原子の付近にビニル結合を含む。テンプレートと2−ビニルピリジンとのこの相互作用が、テンプレート分子に非常に接近したポリマーの形成を促進し、MIP内でMIPとOTAとの強固な結合を可能にする(例えば、テンプレート化合物が除去されて、MIPが標的OTA分子と相互作用することが可能になった後)。本発明は任意の特定のメカニズムに限定されず、メカニズムの理解は本発明を実施する上で必要ではないが、2−ヒドロキシエチルメタクリラートモノマーのヒドロキシル基は、テンプレートの高極性ペプチド結合と更なる水素結合を形成する。更なる試薬が、エチレングリコールジメタクリラートである。本発明は任意の特定のメカニズムに限定されず、メカニズムの理解は本発明を実施する上で必要ではないが、OTAテンプレート分子内に存在する低極性基と相互作用する不飽和ジエステルと同様に、エチレングリコールジメタクリラートは、幾つかの実施形態において、架橋剤としての用途を見出す(以下参照)。幾つかの実施形態において、モノマーの各タイプは、個別に、または他のタイプのモノマーと組合わせて用いられる。
【0090】
架橋剤は、用いられる場合には、好ましくは1種以上のポリマーもしくはオリゴマー化合物、または特異的条件下で開裂を提供する化合物であろう。表題のポリマー化合物に剛性を付与する架橋剤は、当業者に公知であり、非限定的に、二、三、四および五官能性のアクリラート、メタクリラート、アクリルアミド、ビニル、アリル、およびスチレン類を包含する。架橋剤の具体的例としては、非限定的に、p−ジビニルベンゼン、エチレングリコールジメタクリラート(EGDMAと略す)、テトラメチレンジメタクリラート(TDMAと略す)、N,N’−メチレンビスアクリルアミド(MDAAと略す)、N,N’−1,3−フェニレンビス(2−メチル−2−プロペンアミド)(PDBMP)、2,6−ビスアクリロイルアミドピリジン、1,4−ジアクリロイルピペラジン(DAPと略す)、1,4−フェニレンジアクリルアミド、およびN,O−ビスアクリロイル−L−フェニルアラニノールが挙げられる。可逆的で開裂可能な架橋剤の例としては、非限定的に、N,N’−ビス−(アクリロイル)シスタミン、N,N−ジアリルタルタルジアミド、N,N−(1,2−ジヒドロキシエチレン)ビスアクリルアミド、N1−((E)−1−(4−ビニルフェニル)メチリデン)−4−ビニルアニレン、アリルジスルフィド、およびビス(2−メタクリロイルオキシエチル)ジスルフィドが挙げられる。好ましい実施形態において、エチレングリコールジメタクリラートが、架橋剤として用いられる。好ましい架橋モノマーは、エチレングリコールジメタクリラートであるが、本発明の実施形態は、この薬剤に限定されず、他の架橋モノマー、例えば、ジビニルベンゼンおよびトリメチロールプロパントリメタクリラート(TRIMと略す)を用いてもよい。
【0091】
適切な健全性のあるMIP構造を提供するような、例えば、最終的な適用(例えば、食品または飼料製品中、水産養殖用の水の中、インビボなど)に関連して用いることができるような、架橋剤に対する単純なモノマーの任意の比を、用いることができる。当業者は、所望の構造健全性を提供するモノマーの適切な比を選択することができ、それは標的分子の性質および構造、ならびに用いられたテンプレートの性質および構造に密接に関連する。
【0092】
インビボで用いられる(例えば、治療薬もしくは診断薬として、または動物飼料もしくはヒト用の食物原料の消費可能な捕捉成分としての)ポリマーまたはオリゴマー化合物の場合、非毒性であり適切なインビボ安定性および溶解度を示すモノマーを選択することが重要となる。好ましい例としては、非限定的に、アクリルアミドおよびメタクリラートが挙げられる。あるいは該ポリマーは、重合の後に処理して、例えば適切な有機または無機試薬との反応により、テンプレートの溶解度を高めてもよい。
【0093】
フリーラジカル、カチオンおよびアニオン重合をはじめとし、異なる重合法を用いてもよい。相補的ポリマー化合物を生成する化合物の活性コンホメーションに悪影響を与えない重合条件を選択し、本明細書に提供する。特に好ましい実施形態において、フリーラジカル沈殿重合法が用いられる(以下のセクションIII参照)。
【0094】
加えて、MIPの重合は、典型的には開始剤の添加により開始する。開始剤としては、非限定的に、アゾビスイソブチロニトリル(AIBNと略す)、アゾビスジメチルバレロニトリル(ABDVと略す)、ベンジルのジメチルアセタール、ベンゾイルペルオキシド(BPOと略す)、および4,4’−アゾ(4−シアノ吉草酸)が挙げられる。好ましい実施形態において、開始剤は、アゾビスイソブチロニトリルである。
【0095】
好ましい実施形態において、モノマー、架橋剤、および/またはMIPは、好適な安全性および/または環境特性、例えば、低毒性または無毒性、ならびに高度の水収着性および保水性を有する。好ましい実施形態において、MIPは、再使用可能で、経済的に合理性があり/製造可能となりうる。
【0096】
〔III.MIPの合成に用いられる溶媒〕
重合反応が実施される溶媒/溶媒混合物の選択は、標的化合物に対するMIPの結合親和力の範囲、選択性および特異性に顕著な影響を有する。本発明は任意の特定のメカニズムに限定されず、メカニズムの理解は本発明を実施する上で必要ではないが、以下の特性を示すポロゲン溶媒または溶媒混合物により、多孔性が容易になるまたは提供される:モノマー混合物に溶解すること、重合反応に対して不活性であること、および製造されたポリマー(MIP)を溶解しないこと。適切なポロゲン溶媒としては、非限定的に、芳香族炭化水素、例えば、トルエン、キシレン、エチルベンゼンおよびジエチルベンゼン;非極性溶媒、例えばシクロヘキサン;飽和炭化水素、例えばヘキサン、ヘプタン、オクタンおよびデカン;アルコール、例えばイソプロピルおよびイソアミルアルコール;脂肪族ハロゲン化炭化水素、例えばジクロロメタン、ジクロロエタンおよびトリクロロエタン;脂肪族または芳香族エステル、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、フタル酸ジメチルが挙げられる。好ましい実施形態において、芳香族炭化水素溶媒が用いられる。特に好ましい実施形態において、トルエンが単独で用いられる。幾つかの実施形態において、トルエンと他の溶媒との混合物が用いられる。幾つかの実施形態において、トルエンが、シクロヘキサンと組合わせて用いられる。ポロゲン溶媒は、個別に、または2種以上で組み合わせて用いることができる。添加されるポロゲン溶媒の量は、モノマーの総量に基づき約10〜500質量%で変動することができる。本発明は任意の特定のメカニズムに限定されず、メカニズムの理解は本発明を実施する上で必要ではないが、極性溶媒(例えば、水、アセトニトリル)は、モノマーとテンプレートの間の強固な複合体を崩壊させ、それにより結合する標的分子(例えば、トルエンなどの中で)のためのMIP特異性を低下させる。
【0097】
MIP合成のための媒体として用いられる溶媒または溶媒混合物は、MIPの膨張性および三次元MIPネットワーク内の孔径への影響も有する。特定の実施形態において、MIP膨張の増加およびMIP孔径の増加が望ましい場合には、極性溶媒、例えばアセトニトリルが、MIP重合のための溶媒または共溶媒として用いられ、あるいはMIP膨張およびMIPの孔径の増加が望ましくない場合には(例えば、MIPがクロマトグラフィーカラムとして用いられ、膨張により流速が阻害され、分析物の溶出および運転するHPLC機器の能力が妨げられる場合)、そのような溶媒を避ける。
【0098】
溶媒系の賢明な選択が、MIP孔径に直接影響を及ぼす場合がある。非限定的実施例において、OTAのテンプレートの対象となるMIPの合成時に、シクロヘキサンおよび/またはトルエンのような低極性溶媒中では最小の粒子(1〜20μm)が形成され、アセトニトリルまたは水のような極性溶媒中ではかなり大きな寸法および比較的小さな寸法の均質な粒子(10〜170μm)が形成された。更に、高濃度のモノマーでは、重合反応により大きなMIPクラスターが得られ、それは粉砕により容易に分散され、MIPモノリスの粉砕時に生成される超微粒子は生成されない(以下のセクションIVの詳細な議論を参照)。例えばMIPがカラム樹脂として用いられる適用例において(微粒子が流速を阻害しうる)、あるいは微粒子の存在が遠心分離もしくはろ過の際のMIP採取を阻害もしくは複雑化する、またはろ過の例ではMIPの適切な閉じ込め(confinement)を妨害する場合、フィルターが封入されたMIPの量を保持しなければならないならば、結果としてろ過がMIPを取込む特異的メッシュフィルターの孔径に左右されるため、超微粒子は不適当となる可能性がある。分散されたMIPクラスターをふるいに掛けて、定義された均一な寸法の生成物を提供してもよい。それゆえ、重合溶媒、モノマー濃度、および物理的取扱い方法の選択により、所望の孔径および粒径を有するMIPの最適な収率が得られ、同時に微粒子の形成が回避されうる。
【0099】
溶媒系の選択は、重合工程の間に形成されるMIPの物理的形態を決定づける。例えば、幾つかの溶媒系(非限定的に、低極性溶媒、例えば、シクロヘキサンおよび/またはトルエンを含む)は、先に記載された通り、沈殿重合と呼ばれる工程の間に固体MIPクラスターを生じる。他の溶媒系(非限定的に、極性溶媒、例えば水中のポリビニルアルコールを含む)は、乳化重合と呼ばれる動力学的に異なる工程を促進する(Vivaldo−Lima E., Wood P.E., Hamielec A.E., 1997. Industrial and Engineering Chemistry Research, 36: 939−965)。一般に、重合の性質は、MIPネットワークの物理的形態と、更に加工されうる場合の容易性の両方に影響を及ぼす(例えば、粉砕の必要性;粒径の均一性;収率;緩衝液または溶媒の交換の容易性;安定性)。重合工程は、全体が参照により本明細書に組み入れられた、Yan H., and Ho Row K., 2006. International Journal of Molecular Science, 7: 155−178に検討されている。好ましい実施形態において、沈殿重合が用いられる。特定の実施形態において、沈殿重合により、均一で容易に管理可能な粒径の粉末として形成されるMIP生成物が得られる。比較すると、非限定的にバルク重合をはじめとする他の重合法は、MIPの大きなモノリスを生成する可能性があり、それは更なる加工または使用の前に破砕しなければならず、不規則な粒径が得られ、その結果、性能が低下する。
【0100】
〔IV.MIP合成およびMIPの物理的加工に続く、MIPからのテンプレートの除去方法〕
新たに合成されたMIPからのテンプレートの解離に用いられる技術は、一般に、テンプレート−MIP相互作用の性質により決定される。例えば、テンプレートとMIPネットワークの間に共有結合が形成されている場合、MIPからのテンプレートの化学的開裂が必要となる。反対に、テンプレートとMIPネットワークの間の相互作用が非共有結合的であれば、テンプレートを除去するのに、溶媒抽出で十分となる場合がある(例えば、先に引用され、全体が参照により本明細書に組み入れられた、Yan H., and Ho Row K., 2006; Molecularly Imprinted Polymers: Man−made mimics of antibodies and their application in analytical chemistry, (Sellergen B.,編), Techniques and Instrumentation in Analytical Chemistry, Vol. 23 Elsevier, Amsterdam, the Netherlands, pp. 113−184の、Sellergren B., 2001. The non−covalent approach to molecular imprinting.参照)。MIPの合成後の加工は、MIP活性化と呼ぶこともできる。好ましい実施形態において、MIP活性化の第一のステップは、デカンテーションを行い、その後、わずかな減圧下でMIP材料から溶媒を蒸発(リサイクル)させることを含む(例えば、ロータリーエバポレータ装置を用いる)。第二のステップは、MIP粒子を粉砕して、より小さな粒径を得ることを含む(例えば、乳鉢と乳棒、またはミリング機器を用いて)。第三のステップは、例えば0.2w/v%水酸化ナトリウムを用いた、MIPの反復洗浄を含む。OTA MIPが合成される実施形態において、テンプレートの検出用のFeCl溶液を用いて、陰性の検査が得られるまで、洗浄の完全性を追跡してもよい(実施例2〜実施例4参照)。幾つかの実施形態において、1%酢酸を用いた単回洗浄および水を用いた単回洗浄の後、溶媒の全ての痕跡が除去されるまで、最終的なMIP生成物を乾燥させる(例えば、乾燥オーブン内で80℃で6〜8時間)。最後に、MIP粒子をふるいにかけて、定義された粒径の生成物を提供してもよい。好ましい実施形態において、MIPの物理的形態により使用前の大規模な粉砕が必要とならず、例えばMIPは分散させるために破砕または粉砕を必要とするモノリシックブロックを形成しない。好ましい実施形態において、MIPの大部分が、球状物を形成し、それは乾燥の際に粉末を形成する。
【0101】
好ましい実施形態において、洗浄ステップは、MIPネットワークからテンプレート分子の少なくとも95%を除去するのに十分である。特に好ましい実施形態において、洗浄ステップは、MIPネットワークからテンプレート分子の少なくとも99%を除去するのに十分である。最も好ましい実施形態において、洗浄ステップは、MIPネットワークからテンプレート分子の少なくとも99.9%を除去するのに十分である。
【0102】
〔V.MIP組成物の適用〕
本発明の組成物および方法は、食事、治療、予防、食物および飲料用の加工および製造に加え、研究および品質管理への適用をはじめとし、様々な適用において用途を見出す。例えば幾つかの実施形態において、合成テンプレート(例えば、本明細書に記載された方法を用いて生成された)が、MIP合成に用いられる。本発明は、任意の特定の合成テンプレートおよび/または合成されたMIPに限定されない。それどころか、非限定的に、OTAテンプレート(例えば、N−(3,5−ジクロロ−2−ヒドロキシベンゾイル)−L−フェニルアラニン、実施例1参照)、アフラトキシン用テンプレート、トリコテセンテンプレート(例えば、セスキテルペンアルコールテンプレート(例えば、デオキシニバレノール(DON)テンプレート))、ゼアラレノンテンプレート、スポリデスミンテンプレート、ステリグマトシスチンテンプレート、フモニシンテンプレート、パツリンテンプレート、シトリニンテンプレート、および/またはエンドファイト関連エルゴットテンプレートをはじめとし、様々な合成テンプレートを生成および使用することができる。幾つかの実施形態において、本発明は、マイコトキシンに類似した外部官能基を含む合成テンプレート(例えば、MIP OTA合成に用いられる)を生成させるための組成物および方法を提供するが(例えば、テンプレートを用いて本発明の工程においてMIPを生成し、次にそれから除去するが、MIPは、外部官能基に類似したマイコトキシンに対して高い親和力を示す)、ここでマイコトキシンは、アセトキシスキルペンジオール、アセチルデオキシニバレノール、アセチルニバレノール、アセチルネオソラニオール、アセチルT−2トキシン、全てに及ぶアフラトキシン類、アフラトキシンB1、B2、G1およびG2、アフラトレム、アルテニュイックアシッド、アルターナリオール、アウストジオール、アウスタミド、アウストシスチン、アベナセイン+1、ベアウベリシン+2、ベンテノリド、ブレビアナミド、ブテノリド、カロネクトリン、ケトグロボシン、ケトシン、ケトミン、シトリニン、シトレオビリジン、コクリオジノール、シトカラシン類、シクロピアゾン酸、デアセチルカロネクトリン、デアセチルネオソラニオール、デオキシニバレノール二酢酸塩、デオキシニバレノール一酢酸塩、ジアセトキシスキルペノール、デストラキシンB、エメストリン、エニアチン類、全てに及ぶエルゴットアルカロイドトキシン類およびエンドファイト類、例えばエルギン、エルゴコルニン、エルゴクリスチン、エルゴクリプチン、エルゴメトリン、エルゴニン、エルゴシン、エルゴタミン、エルゴバリン、リセルゴール、リセルグ酸および関連のエピマー、フルクチゲニン+1、フマギリン、フモニシン類、フモニシンA1、A2、B1およびB2およびB3、フサレノン−X、フサロクロマノン、フサル酸、フサリン、グリオトキシン、HT−2トキシン、ヒアロデンドリン、イポメアニン、イスランジトキシン、イソフミガクラビンAおよびB、ラテリチン+1、レプトシン、リコマラスミン+1、マルホルミン、マルトリジン、モニリフォルミン、モノアセトキシスキルペノール、ミコフェノール酸、ネオソラニオール、ニバレノール、NT−1トキシン、NT−2トキシン、全てに及ぶオクラトキシン類、オオスポレイン、シュウ酸、パスパリトレムAおよびB、パツリン、ペニシリン酸、ペニトレム、ホモプシン類、PR−トキシン、ロリジンE、ロクエフォルチンAおよびB、ルブラトキシン、ルブロスキリン、ルブロスルフィン、ルグロシン、サムブシニン+1、サトラトキシンF、G、H、スキルペントリオール、シロデスミン、スラフラミン、スポリデスミン、ステリグマトシスチン、スワインソニン、T−1トキシン、T−2トキシン、テニュアゾン酸、トリアセトキシスキルペンジオール、全てに及ぶトリコテセン類、トリコデルミン、トリコテシン、トリコベリン類、トリコベロール類、トリプトキバレン、ベルカリン、ベルクロゲン、ベルチシリン類、ビオプルプリン、ビオメレイン、ビリジトキシン、ウォルトマンニン、キサントシリン、ヤバニシン+1、ゼアラレノール類、ゼアララノン類、ゼアラレノン、α、βゼアララノン、α、βゼラノール、ならびにそれらのサブファミリーおよび/または誘導体、および/またはコンジュゲートを含む群から選択される。特定の実施形態において、標的化合物は、OTA、スポリデスミン、またはエルゴットアルカロイド類である。
【0103】
同様に、非限定的に、上述の合成テンプレートの任意の1種、または任意の他の有機分子(例えば、ビタミンなどの栄養素、薬物、抗生物質、汚染物質、ホルモン、酵素、タンパク質など)をテンプレートとして用いて生成されたMIPをはじめとし、様々なMIPを生成および使用することができる。
【0104】
本明細書に記載されたMIPは、様々な適用において用途を見出す。例えば幾つかの実施形態において、MIPは、液体の精製に用いられる。例えば幾つかの実施形態において、MIPは、液体から標的化合物(例えば、1種以上のマイコトキシン)を選択的に除去するのに用いられる。本発明は、液体から除去される標的化合物(例えば、1種以上のマイコトキシン)に限定されない。それどころか、非限定的に、本明細書に記載されたマイコトキシンをはじめとし、様々な標的化合物を除去してもよい。同様に本発明は、標的化合物が除去される液体の種類に限定されない。それどころか、非限定的に、飲料(例えば、ヒトに消費される(例えば、ジュース、ワイン(例えば、白ワイン、赤ワインなど)、水、ビール、茶、コーヒーなど))、水(例えば、水産養殖、飲料水などに用いられる)、食材の製造に用いられる液体(例えば、ヒト、動物用食物原料)、生体液(例えば、血液、こぶ胃液、胃液など)などをはじめとし、様々な異なる液体溶液から、標的化合物(例えば、マイコトキシン)を1種以上除去させることができる(例えば、1種以上の異なるタイプのMIPを溶液に加えることによる)。
【0105】
例えば幾つかの実施形態において、本明細書に記載された組成物および方法は、液体から標的化合物(例えば、マイコトキシン)を選択的に除去するMIPを提供する。液体は、飲料、水、生体試料、供給飲用水、血液、こぶ胃液、または標的化合物を含有する他のタイプの液体であってもよい。加えて標的化合物は、他のタイプの流体から除去することができる。幾つかの実施形態において、本明細書に記載されたMIPを液体と十分な時間接触させて(例えば、混合して)、MIPを標的化合物(例えば、マイコトキシン)と相互作用および結合させる。メカニズムの理解は本発明を実施する上で必要とならず、本発明は任意の特定のメカニズムに限定されないが、幾つかの実施形態において、液体をMIPと相互作用させた後、MIPに含まれる複合/結合空洞(例えば、テンプレート分子がMIPから除去された後に残された空洞)が接触時に標的化合物に結合し、液体から標的化合物を効果的に除去する。その後、液体は、更に加工、包装、または消費(例えば、ヒトの消費、動物の消費、または動物の生育用)に適合させることができる。幾つかの実施形態において、本明細書で生成および/または提供されたMIPは、除去/捕捉工程に関連する物理的および化学的力に耐える剛性構造を有する。例えば好ましい実施形態において、本明細書で提供されたMIPは、標的化合物に選択的に結合し、それにより物質(例えば、液体、固体、表面、生体液(例えば、血液、こぶ胃液など)、生命を維持するのに必要な物質(例えば、空気または水産養殖の媒体)など)から標的化合物を除去し、MIP−標的化合物複合体が物質から採取および/または除去されると(例えば、フィルターを通して液体をポンプ輸送する、フィルターを通して液体を注ぐ、液体にフィルターを浸漬する、容器の表面にMIPをコーティングする、遠心分離、フィルター表面にMIPをコーティングする、動物の糞の排泄など)、標的化合物との会合を保持する。
【0106】
一実施形態において、液体から標的化合物を除去する方法は、高度の選択性がある。例えば液体は、多数の標的化合物を含有してもよく、そこでMIPは、1つのみの特異的標的化合物(例えば、マイコトキシン)を選択的に除去するが、この場合の「1つ」は、標的化合物のタイプを指し、除去される標的化合物の数ではない。幾つかの実施形態において、複数のMIP(例えば、複数の異なる集合のMIP(例えば、ここでのMIPの一集合は、1つのタイプのマイコトキシン(例えば、オクラトキシン)に特異的であり、第二の集合のMIPは、第二のタイプのマイコトキシン(例えば、アフラトキシン)に特異的である)を液体に加えて、十分な時間、相互作用させ、液体から複数の異なるタイプの標的化合物(例えば、マイコトキシン)を選択的に除去させる。本発明は、複数の異なるタイプの標的化合物(例えば、マイコトキシン)を含む液体に加えられるMIPの異なるタイプの数に限定されない。幾つかの実施形態において、液体は、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12またはそれを超える異なるタイプの標的化合物(例えば、マイコトキシン)を含み、複数の標的化合物のうちの1種への特異性を有する2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12またはそれを超える異なるタイプのMIPを含む組成物を、MIPが標的化合物と相互作用してそれを捕捉する条件下で、該液体に加える。幾つかの実施形態において、MIPは、単一の標的分子/化合物に対して特異的親和力を示す。幾つかの実施形態において、MIPは、共通する化学的または物理的特性を有する分子の群に対して特異的親和力を示す。幾つかの実施形態において、MIPの加工の際に複数の標的分子/化合物を使用した後は、MIPは、異なる標的化合物用の複数の異なる複合/結合空洞を有するため、複数の標的化合物と選択的に結合することができる。
【0107】
幾つかの実施形態において、本発明は、複数の異なるタイプの標的化合物(例えば、マイコトキシンまたは他の有機分子の標的分子/化合物(例えば、ビタミンなどの栄養素、薬物、抗生物質、汚染物質、ホルモン、酵素、タンパク質など))を含む液体から標的化合物を除去する方法を提供する。幾つかの実施形態において、該方法は、異なる標的化合物に結合するように設計された異なるタイプのMIPの群を含む。例えば幾つかの実施形態において、液体の試料が提供され、そこでアッセイが実施されて、液体試料中の1種以上の標的化合物の存在を同定する。どのマイコトキシンが存在するかを決定するために、特異的マイコトキシンの存在を検出することができる。液体試料中に存在する1種以上のタイプの標的化合物を同定する際には(例えば、液体試料が、試料を採取した液体の特徴を表す場合)、1種以上のMIPが生成(例えば、本明細書に記載された方法により)および/または混和され、その後、1種以上のMIPが液体溶液に加えられて標的化合物を除去する。幾つかの実施形態において、1種以上のタイプの標的化合物の同定は、標的化合物に特異的なMIPを1種以上含むカラムおよび/またはフィルターの使用を含む。幾つかの実施形態において、MIPが試料(例えば、液体試料)からの標的化合物の除去に使用されると、標的化合物がMIPから除去されて、MIPが再使用される。幾つかの実施形態において、MIPは適切な手法で廃棄される。例えば、MIPの合成反応および物理的加工などの後、テンプレートからMIPを解離させる方法で用いられる溶媒(例えば、非限定的に、アセトニトリル、トルエン、メタノール、水酸化ナトリウム、酢酸など)から選択しうる適切な溶媒および/または溶液での洗浄を通して、標的化合物をMIPから除去することができる(例えば、MIPを再使用可能にするために)。リサイクルされたMIPは、その後、使用に戻される。
【0108】
液体から標的化合物を除去する方法は、MIPの選択的性質のために、高い回収率を生じる可能性がある。幾つかの実施形態において、除去方法は、液体中に存在する標的化合物を約25%〜約99%回収する。幾つかの実施形態において、除去方法は、液体中に存在する標的化合物を約35%〜約99%回収する。幾つかの実施形態において、除去方法は、液体中に存在する標的化合物を約50%〜約99%回収する。幾つかの実施形態において、除去方法は、液体中に存在する標的化合物を約75%〜約99%回収する。他の実施形態において、除去方法は、得られた液体の標的化合物濃度をパートパービリオン(ppb)のレベルにまで(例えば、ヒトおよび/または動物の消費に適した濃度にまで)低下させる。除去の方法は、当業者に公知の現行および提案の規制計画に見出される特異的濃度レベルを提供するように適合させることができる。幾つかの実施形態において、除去方法は、特異的pHレベルの液体で利用される。例えば本発明の組成物および方法は、約1〜13のpHを有する液体で利用することができる。
【0109】
幾つかの実施形態において、MIPは、表面から標的化合物を除去するのに用いられる。例えば本発明の特定の実施形態は、表面を、MIPを含む組成物と接触させることを含む、表面上の標的化合物(例えば、マイコトキシン)の存在を減少させる方法を提供する。特別な実施形態において、接触は、MIPが標的化合物に結合し、そして/またはそれを捕捉するのに十分な時間実施される。他の実施形態において、本発明は、標的化合物を宿す環境表面を除染する方法を提供する。そのような一実施形態において、標的化合物は、環境表面と会合しており、該方法は、環境表面を表面の除染に十分な組成物(例えば、MIPを含む)の量と接触させることを含む。非常に望ましい場合もあるが、除染により標的化合物を完全に排除する必要はない。幾つかの実施形態において、該組成物(例えば、MIPを含む)および方法は更に、染色剤、塗料、ならびに他の標識および同定化合物を含むことで、処理された表面が確実に本発明の組成物で十分に処理される。
【0110】
幾つかの実施形態において、MIPは、標的化合物が表面または他の化合物(例えば、土壌)と接触するようになるのを防ぐために用いられる。例えば本発明の特定の実施形態は、MIPを他の材料(例えば、プラスチックまたはデンプンタイプの製品)と混和して植物(例えば、農業用植物の生育)に適用し、生育時に植物を表面化合物(例えば、マイコトキシン)から保護し、更に該化合物に他の化合物(例えば、土壌)が混入するのを防ぐ組成物を生成する方法を企図する。
【0111】
特定の実施形態において、対象(例えば、ヒトまたは動物)の表面(例えば、外部または内部表面)を、本発明の組成物で処理する(例えば、外部または内部を)。他の実施形態において、接触は、経口、経鼻、口腔、経直腸、経膣または局所投与を介する。本発明の組成物が医薬品として投与される場合、該組成物が更に、薬学的に許容しうる佐剤、賦形剤、安定化剤、希釈剤などを含むことが企図される。更なる実施形態において、本発明は、追加の薬学的に許容しうる生物活性分子(例えば、抗体、抗生物質、核酸トランスフェクションの手段、ビタミン、無機質、コファクター、マイコトキシンに結合し、そして/またはそれを捕捉することが可能な因子(例えば、酵母細胞壁抽出物(例えば、粘土材料と混和された酵母細胞壁抽出物、および/または粘土を含有する酵母細胞壁抽出物、および/または酵母細胞壁に一体化された、そして/もしくは組み込まれた粘土粒子)など)を更に含む組成物を提供する。幾つかの実施形態において、対象は、疾患または状態(例えば、足部汗ぼう白癬)を治療的に処置するために、本発明の組成物(例えば、MIPを含む)を投与される。他の実施形態において、対象は、疾患または状態(例えば、足部汗ぼう白癬)を予防的に処置する(例えば、徴候または症状の発生を防ぐ)ために、本発明の組成物(例えば、MIPを含む)を投与される。幾つかの実施形態において、組成物(例えば、MIPを含む)および方法は、任意のタイプの領域または表面に適用される。例えば幾つかの実施形態において、領域は、固体表面(例えば、医療装置)、溶液、生物体の表面(例えば、ヒトの外部または内部)、または食品を含む。
【0112】
本発明は、液体または固体(例えば、標的化合物の除去のために)に加えられる(例えば、混合される)1種以上のMIPの量に限定されない。幾つかの実施形態において、液体または固体1リットルあたりに、約0.10mg、0.50mg、1.0mg、2.0mg、5.0mg、10.0mg、20.0mg、50.0mg、100.0mg、500.0mgまたはそれを超えるMIPを加える。
【0113】
幾つかの実施形態において、本発明のMIPは、血液灌流などの毒素排出法に用いられる。血液灌流は、血液から毒性物質を除去するために、多量の対象血液を吸着物質(例えば、MIP)に通す処置技術である。
【0114】
通常、血液灌流に最も一般的に用いられる収着剤は、樹脂、および様々な形態の活性炭素または活性炭である。しかしこれらの材料の結合特異性は、比較的不良であり、それらは重要な血液因子および標的分子を吸着する場合もある。したがって幾つかの実施形態において、本発明は、標的分子に対してより特異的で親和力の高い収着剤としての、本発明のMIPの使用を提供する。
【0115】
血液灌流は、動脈カテーテルを通して採取された血液を、収着剤を含むカラムまたはカートリッジにポンプ輸送することにより実行される(例えば幾つかの実施形態において、本発明は、用いられた収着材料が本明細書に記載されたMIPであることを示す)。血液がカラム内の炭素または樹脂粒子を通過すると、毒性分子または粒子が収着剤粒子の表面に引き付けられ、カラム内に閉じ込められる。血液がカラムの先端を流れ出て、静脈カテーテルに取り付けられた管を通して対象に戻される。血液灌流は、血液透析または他のろ過法よりも多量の血液から毒素を浄化することができ、例えばそれは、1分間あたり血液300mLを処理することができる。
【0116】
本発明のMIPは、血液灌流に用いられてもよい。幾つかの実施形態において、本発明のMIPは、血液灌流を用いて対象の血液から1種以上のマイコトキシンを除去するのに用いられる。
【0117】
最適な所望の応答(例えば、治療または予防的応答)を提供するように、投薬レジメンを適合させてもよい。例えばMIPを含有する単一のボーラスを、動物に投与してもよく、複数に分割された用量を経時的に投与してもよく、またはその用量を治療状況の緊急性が示すとおり、比例的に減少または増加させてもよい。投与の容易性および投薬量の均一性のためには、非経口組成物を投与単位形態で配合させることが有利である。本発明のMIPの投薬量は、一般に、(a)活性化合物の特有の性質および実現される個々の治療的または予防的効果、ならびに(b)個体におけるマイコトキシンへの感受性を処置するためにそのような活性化合物を調合する技術分野に特有の限定条件、に依存する。投与される投薬量はもちろん、公知の因子、例えば、個々の薬剤の薬力学的性質、投与様式および経路;レシピエントの年齢、健康、および体重;症状の性質および範囲;併用処置の種類、処置の頻度、ならびに所望の効果、に応じて変動するであろう。
【0118】
本発明のMIPは、対象への投与に適した医薬組成物に組み込ませることができる。例えば該医薬組成物は、MIPおよび薬学的に許容しうる担体を含んでいてもよい。本明細書で用いられる「薬学的に許容しうる担体」は、生理学的に適合性のある溶媒、分散媒、コーティング、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤などを包含する。薬学的に許容しうる担体の例としては、水、生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水、デキストロース、グリセロール、エタノールなど、ならびにそれらの組み合わせのうちの1種類以上が挙げられる。多くの場合、組成物中に等張剤、例えば糖、マンニトールなどのポリアルコール、ソルビトール、または塩化ナトリウムを含むことが好ましい。薬学的に許容しうる担体は更に、MIPの有効期限または効果を高める、微量の補助物質、例えば湿潤もしくは乳化剤、防腐剤または緩衝液を含んでいてもよい。
【0119】
特定の実施形態において、本発明のMIPは、例えば不活性希釈剤または同化性食用担体と共に、経口投与されてもよい。該化合物(および所望なら他の成分)は、ハードもしくはソフトシェルゼラチンカプセルに封入されていても、打錠されていても、または対象の食事に直接組み込まれていてもよい。経口治療投与では、該化合物は、賦形剤を組み込まれていてもよく、摂取可能な錠剤、舌下錠、トローチ、カプセル、エリキシル、懸濁物、シロップ、ウエハー、ペレットなどの形態で用いられてもよい。非経口投与以外により本発明の化合物を投与するために、該化合物を、不活化を防ぐ材料でコーティングする、またはそれと併用投与することが必要となる場合がある。
【0120】
補助的な活性化合物を、該組成物に組み込むこともできる。特定の実施形態において、本発明のMIPは、1種以上の更なる治療薬と共配合(co−formulated)および/または併用投与される。
【0121】
本発明の医薬組成物は、「治療上効果的な量」または「予防上効果的な量」の本発明のMIPを含んでいてもよい。「治療上効果的な量」は、所望の治療結果を実現するのに必要となる投薬量および期間で効果的となる量を指す。治療上効果的な量は、因子、例えば個体の疾患状態、年齢、性別、および体重、ならびに個体において所望の応答を誘導する鋳型ナノ粒子の能力に応じて変動してもよい。治療上効果的な量は、鋳型ナノ粒子の毒性または有害作用が治療上有益な効果を下回るものでもある。「予防上効果的な量」は、所望の予防結果を実現するのに必要となる投薬量および期間で効果的となる量を指す。典型的には、予防的用量は疾患の前または初期段階で利用されるため、予防上効果的な量は治療上効果的な量よりも少なくなる。
【0122】
幾つかの実施形態において、有機物質(例えば、食材)および/もしくは液体(例えば、水、ワインまたは他の飲料)と混和され、そして/または対象に直接食べられる場合、本発明の組成物は、対象によるマイコトキシンの吸収または取込みを減少させ(例えば、それにより、対象において、生産力の低下を軽減し、健康を向上させ、そして/またはマイコトキシン関連疾患もしくは病的応答の発生率を低下させ)、肉、魚、卵、牛乳およびヒト食物連鎖への侵入が予測される他の製品の中のマイコトキシンまたはその代謝産物の付着を減少および/または予防する。
【0123】
幾つかの実施形態において、本発明は、物理的および化学的特徴に基づいて不純物の混合物から固体または半固体化合物を除去するのに用いられ、入手可能な従来の分離装置(例えば、順相、逆相、またはイオン交換−固相抽出)とは異なる、分離装置(例えば、固相抽出(SPEと略す))の製作に用いられる。幾つかの実施形態において、分離装置をカートリッジに組み込んで、抽出時に作動させ、その結果、製造されたMIPの特異的な対応するテンプレートおよびテンプレート類似体を精製することができる。
【0124】
幾つかの実施形態において、本発明は、液体クロマトグラフィーで用いられるクロマトグラフィーカラムのパッキングのため、そして用いられたMIPの対応するテンプレートおよびテンプレート類似体の特異的溶出を可能にするために作動することができる。製造されたMIPカラムは、当該技術分野で公知の入手可能な他の技術および材料(例えば、ペプチドおよび小分子と相互作用する様々な寸法の疎水性アルキル鎖(非限定的に、nが4、8、18である−(CH−CH)を含む、順相、イオン交換、逆相シリカカラム、)よりも特異的な相互作用を可能にするが、製造されたMIPの対応するテンプレートおよびテンプレート類似体をより特異的に指向する。幾つかの実施形態において、それぞれが特異的マイコトキシンまたはマイコトキシン群に専用の、複数の異なるタイプのMIPを、カラムのパッキングに用いることができる。
【0125】
幾つかの実施形態において、本発明は、マイコトキシンを分離および定量する材料を提供する。本発明はその後、試料中に存在するマイコトキシンを測定して一般に許容される参照化合物(例えば、UV検出器、蛍光検出器または質量分析検出器などに連結されたHPLCを用いて溶出されたマイコトキシン標準材料)と比較する目的で、飼料/食物材料、または液体供給源のトレーサビリティの測定に用いることができる。
【0126】
幾つかの実施形態において、マイコトキシンレベルのトレーサビリティは、単一タイプのMIPまたは複数の異なるタイプのMIPを用いて実現することができ、それぞれを特異的マイコトキシンまたはマイコトキシン群に適合させること、そして飼料または食物試料(例えば、穀物試料(例えば、トウモロコシ、小麦など)、果実(例えば、リンゴ、ナシ、ブドウなど)、コーヒー、茶、ココアなど)で構成された試料材料中での検出に適用することができる。
【0127】
幾つかの実施形態において、それぞれが特異的マイコトキシンまたはマイコトキシン群に適合されている、単一MIPまたは複数の異なるタイプのMIPを用いたマイコトキシンレベルのトレーサビリティは、マイコトキシンが試料中に存在するか、そしてもし存在するならどのマイコトキシンが存在し、そしてどのレベルであるかを決定する分析研究(例えば、HPLC)に適用される。幾つかの実施形態において、マイコトキシンの検出に用いられる分析ツール(例えば、HPLC)は、飼料中のマイコトキシン汚染の危険度を予測するために用いることができる。他の実施形態において、マイコトキシンの検出に用いられる分析ツールは、存在するマイコトキシンを減少させる、または排除するために、どのMIPまたはMIPの組み合わせが試料を採取した材料への適用に必要かを決定するために用いることができる。
【0128】
幾つかの実施形態において、それぞれが特異的マイコトキシンまたはマイコトキシン群に専用の、単一MIPまたは複数の異なるタイプのMIPを用いたマイコトキシンレベルのトレーサビリティは、動物生産システムで用いられる、または動物およびヒトに消費される飲料(例えば、水、牛乳、果汁、ワイン、ビールなど)として用いられる、液体のマイコトキシン含量の検出に適用される。
【0129】
幾つかの実施形態において、マイコトキシン含量に関するトレーサビリティを、飼料/食物加工(食肉加工、生鮮食品の加工)に適用して、全体的な製造流れの間にマイコトキシンの存在を検査して、汚染の問題が生じている場所、およびリコールが必要な場所を決定することができる。したがって、バーコードおよび他の追跡媒体、製品の全ての動き、ならびに製造工程内のステップを参照して、分析された試料のトレーサビリティを可能にしなければならない。
【0130】
幾つかの実施形態において、それぞれが特異的マイコトキシンまたはマイコトキシン群に専用の、単一MIPまたは複数の異なるタイプのMIPを用いたマイコトキシンレベルのトレーサビリティは、血液のマイコトキシン含量の検出に適用される。例えば本発明は、輸血の実践に用いて、連続監査証跡を促進し、マイコトキシンレベルのトレーサビリティにより、ドナーからの初期採取からレシピエントに輸血されるか、または廃棄されるまでの全ての時点で、加工、検査、貯蔵などに関係する血液製剤の行方およびその現在の状態を評価することができる。
【0131】
幾つかの実施形態において、本発明は、本明細書に記載されたMIPを、組成物中で用いるために本明細書に記載された1種以上の方法および/もしくは材料、ならびに/またはマイコトキシンを減少、除去および/もしくは排除する方法(例えば、本明細書に記載された物理的、混合的、化学的、微生物学的方法(例えば、毒素を吸着および/または捕捉するため))と組合わせて用いる。例えば幾つかの実施形態において、本明細書に記載されたMIPは、マイコトキシンを捕捉するための、1種以上の物理的、混合的、化学的、または微生物学的方法と共に用いられる。機械的分離(例えば、Dickens J.W., and Whitaker T.B., 1975. Peanut Science, 2: 45−50参照)、密度偏析(例えば、Huff W.E., and Hagler W.M., 1982. Cereal Chemistry, 59: 152−153参照)、水または炭酸ナトリウムで洗浄してトウモロコシの汚染(例えば、フサリウム毒素による)を低減することによる穀物の洗浄、汚染された穀物の仕分け(例えば、マイコトキシンの存在を検出する物理的分離または蛍光による)、熱失活(例えば、Lee L.S., 1989. Journal of American Oil Chemistry Society, 66: 1398−1413参照)、UV照射、X線またはマイクロ波照射(例えば、Task Force Report 139 (Niyo K.編), Council for Agricultural Science and Technology, Ames, Iowa, USA: pp. 1−199のCAST, 2003. Mycotoxins: Risk inplant, animal, and human systems.参照)、および毒素の溶媒抽出(例えば、Scott P.M., 1998. Review of Veterinary Medicine, 149: 543−548参照)などの様々な物理的手段が、マイコトキシンの存在を減少させるのに用いられる。様々な化学剤、例えば、酸、塩基(例えば、アンモニア、苛性ソーダ)、酸化剤(例えば、過酸化水素、オゾン)、還元剤(例えば、重亜硫酸塩)、塩素化剤およびホルムアルデヒドが、汚染された飼料中のマイコトキシン、詳細にはアフラトキシンを分解するために用いられた(例えば、Mycotoxins, Cancer and Health. (Bray G. and Ryan D.編) Lousiana State University Press, Baton Rouge, LN, USAのHagler W.M, Jr., 1991.; The toxicology of aflatoxins: Human health, veterinary agriculture significance (Eaton L.D. and Groopman J.D.編), Academic Press, New York, NY, USA: pp. 383−406のPhillips T.D., Clement B.A., and Park D.L., 1994. Approaches to reduction of aflatoxin in foods and feeds参照)。フィルター(例えば、ろ過カラム)および類似の装置を、同様にマイコトキシンを除去するのに用いることができる。
【0132】
本発明は、製品(例えば、本発明の製品および/もしくはその成分、ならびに/または本発明を利用するサービス)の様々な態様を提供するシステムおよび方法も提供する。本発明は、会社の外部関係者へ会社の製品を提供するシステムおよび方法、例えば、1種以上のMIP(例えば、特異的なマイコトキシン標的MIP)などの会社の製品を、顧客または製品流通業者に提供するシステムおよび方法も提供する。例えば幾つかの実施形態において、本発明は、トレーサビリティシステムから分離する、またはそれと組合わせることができる製品管理システムを提供する。例えば材料の試料を、マイコトキシンが材料中に存在するか、または存在しないかを決定するために分析することができ、マイコトキシンが存在する場合には、特異的マイコトキシンを同定することができる。この情報は、トレーサビリティに用いることができる(例えば、全ての、または特定のマイコトキシンが存在しないことを実証するため)。この情報は、MIP製品管理のためのシステムを提供するために用いることもでき、それによりMIPの特異的組み合わせを作り出して、試料材料中に存在するマイコトキシンを特異的に標的とするように組み合わせることができる。
【0133】
幾つかの実施形態において、会社は、会社の外部関係者(例えば、流通業者および/または顧客)から注文部門への入力情報(例えば、注文、情報、または材料(例えば、生体試料(例えば、標的化合物を含む疑いのある液体試料))の形態で)を受け取り、出力情報(例えば、運送部門から(例えば、流通業者および/または顧客へ)輸送された製品の形態で、またはデータ報告(例えば、検査室分析サービスとしてのトレーサビリティ)の形態で)を提供する。幾つかの実施形態において、製品管理システムは、注文の受け取りおよび会社の外部関係者への製品(例えば、1種以上のMIP(例えば、マイコトキシン特異性MIP)を含む組成物)の輸送(例えば、コスト効率的手法で)を最適化するため、そしてその関係者からそのような製品への支払いを得るために組織化されている。幾つかの実施形態において、製品管理システムは、会社の外部関係者へのデータシート報告(例えば、MIP(例えば、マイコトキシン特異性MIP)で構成されたMIP−SPEまたはHPLC−カラムの使用により分析された複数のマイコトキシンのレベル)の分析および輸送(例えば、コスト効率的手法で)を依頼された試料または材料をバーコード化するため、そして関係者からそのようなサービスへの支払いを得るために組織化されている。
【0134】
幾つかの実施形態において、会社は、製造および運営管理を含む。本発明の組成物は、製造関係者において、そして/もしくは第三者に製造させることができ、材料貯蔵庫および/もしくは他の成分貯蔵庫(例えば、製品貯蔵庫)内などで別個に貯蔵することができ、そして/または更に組立てて(例えば、組合わせる(例えば、1種以上のMIPを1種以上の他のタイプのMIPおよび/または他の成分(例えば、担体および/または本明細書に記載された他の生物活性成分)と組合わせることができる))、そして貯蔵する(例えば、装置内で、そして/または製品貯蔵庫内で)ことができる。幾つかの実施形態において、運営管理は、注文部門(例えば、製品の注文の形態で顧客および/または流通業者から入力情報を受け取る)を含む。注文部門は、その後、指示の形態で運送部門に出力情報を提供して、注文に応じることができる(即ち、顧客または流通業者に要求された製品を発送するために)。幾つかの実施形態において、運送部門は、製品またはサービスの注文に応じることに加えて、情報/データを経理部門に提供することもできる。幾つかの実施形態において、会社の他の構成部署が、顧客サービス部門(例えば、顧客からの入力情報を受け取ることができ、そして/またはフィードバックもしくは情報の形態の出力情報を顧客に提供することができ、そして/または入力情報を受け取るか、もしくは出力情報を会社の任意の他の構成部署に提供することができる)を含んでいてもよい。例えば顧客サービス部門は、例えば本発明の製品および方法が顧客の個々の要件に適合することを確認するために、入力情報を要求された技術情報の形態で顧客から受け取ってもよく、そして出力情報を要求された技術情報への応答の形態で顧客へ提供することができる。
【0135】
つまり幾つかの実施形態において、会社の構成部署(components)は、互いに連絡するように適宜、構成されて、会社の内部および外部での材料および部材、装置、他の部品、製品、データシートならびに情報の授受を容易にする。例えば、適切な入力情報を注文部門から受け取れば、製品貯蔵庫から運送部門へ製品の授受を行う、または早急の分析要請を受ければ、試料貯蔵庫から分析部門へ製品の授受を行うために、物理的通路を利用することができる。比較すると注文部門は、例えば通信網(例えば、ネットワーク(インターネットおよび/またはイントラネット))により、会社内の他の構成部署と電子的につながることができ、更に、例えば顧客から電話のネットワークにより、メールもしくは他の媒体サービスにより、またはインターネットを介して、入力情報を受け取るように構成させることができる。
【0136】
幾つかの実施形態において、製品管理システムは更に、1種以上のデータ収集システムを含む。
【0137】
幾つかの実施形態において、会社は、複数のソフトウェアアプリケーションを利用して、会社の構成部署に情報を提供し、そして/または会社の外部関係者に会社の1つ以上の構成部署へのアクセス(例えば、注文部門および/または顧客サービス部門および/またはデータ収集/保存へのアクセス)を提供することができる。そのようなソフトウェアアプリケーションは、通信網、例えばインターネット、ローカルエリアネットワーク、またはイントラネットを含んでいてもよい。例えばインターネットに基づくアプリケーションでは、顧客は注文部門と協調する適切なウェブサイトおよび/またはウェブサーバーにアクセスすることができるため、顧客は入力情報を注文の形態の注文部門に提供することができる。応答では、注文部門は顧客と連絡して、注文を受け取ったことを確認することができ、更に運送部門と連絡して、本発明の製品(例えば、1種以上の異なるタイプのMIP(例えば、マイコトキシン特異性MIP)を含む組成物)を顧客または分析部門に運送しなければならないという入力情報を提供することができ、本発明の製品(例えば、1種以上の異なるタイプのMIP(例えば、マイコトキシン特異性MIP)を含む組成物)を用いた分析を実施しなければならないという入力情報を提供することができる。つまりこの手法では、会社のビジネスを、効率的な手法で進めることができる。
【0138】
つまり幾つかの実施形態において、ネットワーク化された配置では、会社の様々な部(subcomponents)(例えば、貯蔵、分析、経理部門および運送部門)が、各コンピュータシステムを用いて互いに連絡することができる。幾つかの実施形態において、本発明は、製品(例えば、本発明の製品および/またはその部品)の様々な態様、および本発明の製品の様々な態様に関する情報(例えば、性能データ、利用統計など)を、関係者(例えば、顧客/ユーザー、流通業者、第三者(例えば、政府機関(例えば、国立衛生研究所および/または疾病管理予防センター)など))に提供する方法を提供する。幾つかの実施形態において、製品が、例えば運送部門により、製品貯蔵庫から取り出されて、必要とする関係者、例えば顧客または流通業者に届けられる。典型的にはそのような運送は、注文を出した関係者に応答して行われ、その後、組織内で処理されて(例えば、適切な関係者に発送されて)、注文の製品をその関係者に届けるか、またはサービスを関係者に提供することになる。関係者への製品の運送に関するデータまたは分析サービスのデータシートは、更に組織内で、例えば運送または分析部門から経理部門へ、渡すことができ、同様に、製品もしくはデータシートと共に、または製品もしくはデータシートが届けられた後のある時点で、請求書を関係者へ渡すことができる。本発明は、本発明の製品および/またはその部品を用いて、技術サービスを関係者に提供する方法も提供する。そのような機能が製品研究および開発に関与する個人により実施されてもよいが、技術サービスに関連する照会は、一般に、組織の運営管理部門(例えば、顧客サービス部門)により処理、捜索、および/または指揮させることができる。技術サービス(例えば、製品の使用または製品の各部品の使用に関連する問題の解決)の連絡では、ユーザー(例えば、顧客)と顧客サービス部門の間の情報交換が必要となる場合がある。
【0139】
上述の通り、製品(例えば、本明細書に記載された製品および/またはその部品)および/またはサービスをユーザーに提供する方法では任意の数の変動が可能であり、本発明の範囲に含まれる。したがって本発明は、(1)製品(例えば、本明細書に記載された製品および/またはその部品)の製造;(2)これらの製品の注文を受け取ること;(3)そのような注文を出した関係者に製品を届けること;(4)そのように届けられた製品の支払い義務のある関係者に、請求書を届けること;および/または(5)関係者に届けられた製品の支払いを受け取ること、を含む方法(例えば、ビジネス方法)を含む。例えば、以下のステップ:(a)供給業者から部材、材料、および/または部品を得るステップ;(b)1種以上の第一の製品(例えば、本明細書に記載された部品1つ以上(例えば、本明細書に記載されたMIPテンプレート、および/またはMIPテンプレートを用いて生成された1種以上の異なるタイプのMIP))を調製するステップ;(c)ステップ(b)の1種以上の第一の製品を貯蔵するステップ;(d)ステップ(b)の1種以上の第一の製品を1種以上の他の部品と組合わせて、1種以上の第二の製品(例えば、2種以上の異なるタイプのMIPを含む組成物)を形成させるステップ;(e)ステップ(b)の1種以上の第一の製品またはステップ(d)の1種以上の第二の製品を貯蔵するステップ;(f)ステップ(b)の第一の製品またはステップ(d)の第二の製品の注文を得るステップ;(g)ステップ(b)の第一の製品またはステップ(d)の第二の製品のいずれかを、ステップ(f)の注文を出した関係者に運送するステップ;(h)ステップ(g)において製品を運送された関係者が支払う義務のある金額に関するデータを記録するステップ;(i)ステップ(g)において製品が運送された関係者に請求書を届けるステップ;(j)ステップ(g)において運送された製品について支払いを得るステップ(必ずではないが一般に、支払いはステップ(g)において製品が運送された関係者によって行われる);ならびに(k)組織と、ステップ(d)において運送された製品を所有する関係者(典型的には、ステップ(g)において製品を運送された関係者)との間で技術情報を交換するステップ、の2つ以上を含む方法が提供される。
【0140】
購入者が、1種または複数の異なるタイプのMIPの購入を希望してもよい。幾つかの実施形態において、複数の異なるタイプのMIPを含む組成物が、購入者にカスタマイズされる(例えば、排除および/または捕捉される1つ以上のタイプの標的化合物の存在に関する情報に基づいて)。これの利点は、顧客が特定の製品を要件に合わせてカスタマイズしうることである(例えば、1種のみのMIPを含む組成物を別個に購入し、その後、各組成物を他と組合わせて利用するよりむしろ、各標的化合物に特異的な複数の異なるタイプのMIPを含む組成物を購入する)。
【0141】
本発明は更に、カスタム製品の設計に関連した方法を提供する。これらの方法は、例えば、(1)特定のサブコンポーネントおよび/またはそれを操作する方法論を有する製品について、顧客から注文を得ること;(2)特異的なサブコンポーネントおよび/またはそれを操作する方法論を用いた製品の調製;(3)ならびに(b)の製品を顧客に提供すること(例えば、運送すること)、を含む。
【実施例】
【0142】
〔実験〕
以下の実施例は、本発明の特定の好ましい実施形態および態様を実証し、更に例示するために提供しており、本発明の範囲を限定するものではない。
【0143】
〔実施例1:オクラトキシンAテンプレートの合成〕
2−アセトキシ−3,5−ジクロロ安息香酸の調製。機械的撹拌装置と、サーモメータと、圧力平衡管付き125mL滴下漏斗とを装備した1L三つ口丸底フラスコを、65℃に保持された水浴に入れた。次に、効率的に撹拌しながら、以下の試薬をフラスコに充填した:乾燥トルエン250mL、濃硫酸2.5mL、および移動性懸濁液(mobile suspension)を形成する、十分に粉砕された固体3,5−ジクロロサリチル酸 207g。この一定して撹拌された混合物の温度が60℃に達したら(65℃に保持された水浴の温度により)、無水酢酸 108g(100mL)の滴加を開始して、30分以内に完了した。無水酢酸の添加の間、反応混合物の温度が、75℃を超えないようにした。添加が完了した後、混合物を撹拌して、更に4時間、70℃まで加熱した。この時間の後、撹拌を停止して、混合物を一晩かけて室温まで冷却した。混合物から分離された白色結晶をろ別し、氷冷したトルエン10mLで2回洗浄して、50℃で真空乾燥し、2−アセトキシ−3,5−ジクロロ安息香酸 206g(収率82.7%)を得た。ろ液を元の容量の1/2に濃縮し、溶液を氷水浴で冷却し、結晶生成物をろ別し、そしてそれを50℃で真空乾燥することにより、生成物の更なる30.6g(収率12.3%)を回収した。
【0144】
2−アセトキシ−3,5−ジクロロ安息香酸クロリドのインサイチュ調製およびN−(2−アセトキシ−3,5−ジクロロベンゾイル)−L−フェニルアラニンエチルエステルの調製におけるその使用(担当者の安全性のため、工程をヒュームフード内で実施した)。
【0145】
製造システムを、効率的な機械的撹拌装置(ケンタッキー州ルイビルのAce Glass Inc. カタログ#13650−12/23)と、250mL滴下漏斗と、酸性蒸気吸収装置に取り付けられた出口を有するCaCl乾燥管付き還流冷却器と、乾燥窒素ガス入口とを装備した3L反応器、ならびに22℃の水浴に入れられたサーモメータで構成させた。乾燥トルエン 1L、ジメチルホルムアミド 5mLおよび2−アセトキシ−3,5−ジクロロ安息香酸 103gを、撹拌しながら反応器に充填した。撹拌しながら2.5時間にわたり、二塩化メチレン中の2M塩化オキサリル溶液 217mL(1.05当量)を反応混合物に一滴ずつ添加した。反応中に生成された有毒ガス混合物:HCl、COおよびCOの流れを、水道水で冷却されたトラップ装置に入れた10%水酸化ナトリウム溶液 1L中に吸収させた。固体の完全な解離を伴いながら塩化オキサリルの添加が完了した後、乾燥窒素の強い流れを溶液に1時間通して、反応混合物に溶解された状態の酸性気体(HCl、CO)のほとんどを除去した。この時間の後、フラスコの内容物を氷水浴中で15℃未満に冷却して、固体L−フェニルアラニンエチルエステル塩酸塩 95g(1.0当量)を混合物に添加した。新しい500mL滴下漏斗を250mL漏斗の代わりに設置して、トルエン 350mL中のトリエチルアミン 145mLの溶液(2.55当量)を充填した。その後、トリエチルアミン溶液を冷却された氷水浴に2時間かけて添加し、反応混合物を撹拌した。添加時間の間、混合物の温度を25℃未満に保持した。この温度を、トリエチルアミン添加の完了後4時間保持し、その後、トリエチルアミン塩酸塩をろ別して、白色ろ塊をトルエン 100mLずつで2回洗浄した。その後、ろ液を3L分液漏斗に移して、水 500mLずつで2回、そしてブライン 500mLで1回洗浄した。その後、トルエン層を500mL容量まで濃縮して、結晶化のために冷却装置内で一晩放置した。白色結晶をフィルターに採取して、氷冷トルエン 100mLで1回洗浄し、N−(2−アセトキシ−3,5−ジクロロベンゾイル)−L−フェニルアラニンのエチルエステル 108.7g(収率62%)を得た。
H NMR (重水素化クロロホルム (CDClと略す),ppm): 7.78 δ, J 2.8, 1H; 7.55 δ, J 2.4, 1H; 7.30−7.27 m, 3H; 7.11 幅広 δ, J 8.0, 1H; 7.08 δq, J 8.0 および 1.6, 1H; 4.99 q, J 6.0, 1H; 4.24 q, J 7.0, 2H; 3.29 dd, J 5.6 および 14.4, 1H; 3.21 dd, J 9.2 および14.0, 1H; 2.11 s, 3H; 1.31 t, J 7.2, 3H。
【0146】
N−(3,5−ジクロロ−2−ヒドロキシベンゾイル)−L−フェニルアラニン(OTAテンプレート)の調製。N−(2−アセトキシ−3,5−ジクロロベンゾイル)−L−フェニルアラニンのエチルエステル 108gを、無水エチルアルコール1Lに溶解し、磁気撹拌棒を装備した2L丸底フラスコに入れて、周囲温度の水浴に入れた。この混合物に、水 37.2mL中の水酸化ナトリウム 33.33gの溶液を一度に添加して、混合物を周囲温度で17時間(一晩)撹拌した。濃塩酸 68.6mL容量を撹拌しながら添加して、更に2時間保持した。沈殿した塩化ナトリウムをろ別して、ろ液を60℃および圧力30Tの下、蒸発乾固した。残渣 88.9g(収率98%)を冷却後に無色ガラス状生成物の形態で固化させて、それはトルエンまたはアセトニトリルに十分に可溶性であり、それによりOTAテンプレートを製造した(例えば、MIP−OTA製造に使用される)。MS: M 354 および 356 H NMR (CDCl, ppm): 12.2 非常に幅広 s, 1H; 7.49 d, J 2.4, 1H; 7.35−7.28 m, 3H; 7.20 d, J 2.0, 1H; 7.18−7.16 m, 2H; 6.80 br d, J 6.4, 1H; 6.4非常に幅広s, 1H; 5.07 dd, 5.2 および 5.2, 1H; 3.34 dd, J 14.0 および 5.2, 1H; 3.27 dd, J 13.6 および 5.2, 1H。
【0147】
〔実施例2:トルエン−シクロヘキサン混合物中でのMIP−OTAの合成〕
トルエン 500mL、OTAテンプレート 35.42g(0.1M)、2−ビニルピリジン 16.18mL(0.15M)、2−ヒドロキシエチルメタクリラート 12.13mL(0.1M)、エチレングリコールジメタクリラート 235.75mL(1.25M)およびAIBN 2.46g(15mM)を、機械的撹拌装置と、還流冷却器と、サーモメータと、窒素入口/出口とを装備した3L四つ口フラスコに入れた。得られた透明溶液を室温で1時間撹拌し、窒素の一定した流れをその容器に通した(例えば、重合を阻害する可能性がある酸素を除去するため)。その後、フラスコを60℃に加熱して、混合物を激しく撹拌した。溶液の温度が約55℃に上昇すると、重合が起こった(例えば、溶液の粘度の上昇により観察された)。重合開始の15分後に、(1:1)シクロヘキサン/トルエン混合物 600mLを一度に添加して、溶液からのポリマー球状物の分離を促進した。混合物の激しい撹拌を保持し、30分後にトルエンを更に500mL添加して、比較的低容量の溶媒中で容量が依然として増加している固体MIP懸濁物の全体的撹拌を改善した。60℃の温度および撹拌を更に5時間保持し、その後、撹拌を停止して、MIP球状物を沈降させた。上清をデカンテーションして、ペレットを2Lロータリーエバポレータフラスコに移して、40℃および30Tの減圧下でMIP球状物から残留溶媒を除去した。乾燥させた球状物を約140メッシュまで粉砕して、0.2w/v%水酸化ナトリウム溶液 1.5Lで30分間撹拌し、デカンテーションすることにより、5回洗浄した。MIP−OTA球状物の最終的な部分を0.5v/v%酢酸 1.5Lと混合し、デカンテーションも行い、脱イオン水1.5Lと混合した。得られた、テンプレート不含の湿性MIP−OTA球状物(約1.0L容量)を、ガラストレー4枚を用いて80℃の実験室用オーブンで4時間乾燥させた。白色粉末状MIP−OTAは、248gと計量された(収率93%)。以下の表1に同定された様々な試料は、この方法を用いて合成した。
【0148】
これおよび次の合成手順については、重合に用いられる前に、真空蒸留により、重合阻害剤をモノマーおよび架橋剤から除去し、重合に用いられる溶媒はACS純度のものであった。テンプレートのFe3+錯体の赤橙色のλmax385nmでの強度を、10μg/mL〜1mg/mLのテンプレート濃度で作成された検量線と比較することにより、連続洗浄におけるテンプレート濃度を得た。
【0149】
【表1】

【0150】
〔実施例3:アセトニトリル中でのOTA MIPの合成〕
アセトニトリル 500mL、OTAテンプレート 17.71g(50mM)、2−ビニルピリジン 8.1mL(75mM)、2−ヒドロキシエチルメタクリラート 6.1mL(50mM)、エチレングリコールジメタクリラート 117.9mL(625mM)およびAIBN1.23g(15mM)を、機械的撹拌装置と、圧力平衡管付き500mL滴下漏斗と、サーモメータと、窒素入口/出口とを装備した3L四つ口フラスコに入れて、電気式加熱マントルで加熱した。得られた透明溶液を室温で1時間撹拌し、窒素の一定した流れをその容器に通した(例えば、重合を阻害する可能性がある酸素を除去するため)。その後、フラスコを60℃に加熱して、混合物を激しく撹拌した。溶液の温度が約55℃に上昇すると、重合が起こった(例えば、溶液の粘度の上昇により観察された)。重合開始の30分後に(例えば、ゲルの形成が観察できたら)、アセトニトリル 1.5L(55℃で予備加熱して窒素で洗浄し、酸素を除去した)を500mL滴下漏斗から3回に分けて迅速に添加して、ブロックポリマーの形成を回避し、そして溶液からのポリマー球状物の分離を促進した。混合物の激しい撹拌および加熱を、更に17時間(一晩)保持した。その後、加熱および撹拌を停止して、MIP球状物を沈降させた。上清をデカンテーションして、ペレットを2Lロータリーエバポレータフラスコに移して、40℃および30Tの減圧下でMIP球状物から溶媒の残留物を除去した。乾燥させた球状物を約140メッシュまで粉砕して、0.2w/v%水酸化ナトリウム溶液 1.5Lで30分間撹拌し、デカンテーションすることにより、5回洗浄した。MIP−OTA球状物の最終的な部分を0.5v/v%酢酸 1.5Lと混合し、デカンテーションも行い、脱イオン水 1.5Lと混合した。得られた、テンプレート不含の湿性MIP−OTA球状物(約1.2L容量)を、ガラストレー4枚を用いて80℃の実験室用オーブンで6時間乾燥させた。白色粉末状MIP−OTAは、115gと計量された(収率86.2%)。以下の表2に同定された様々な試料は、この方法を用いて合成された。
【0151】
【表2】

【0152】
〔実施例4:トルエン中での大規模MIP−OTA調製〕
底部および中腹に設置された2枚のプロペラを有する機械的撹拌装置と、電気式加熱マントルと、サーモメータと、空気平衡管(air equilibration)および窒素ガス入口付き1.5L滴下漏斗と、窒素気流を制御するバブルメータを装備した還流冷却器とを装備した四つ口の蓋付き3L反応器で、調製を実施した。以下の試薬を反応器に充填した。N−(3,5−ジクロロ−2−ヒドロキシベンゾイル)−L−フェニルアラニン(OTAテンプレート) 54.54g(154mM)、2−ビニルピリジン 25mL(231mM)、エチレングリコールモノメタクリラート 18.7mL(154.0mM)、エチレングリコールジメタクリラート 363g(1.925M)、トルエン 770mLおよびAIBN 5.0g(30.8mM)。トルエンの更なる1.5Lを、滴下漏斗に入れた。反応混合物を激しく撹拌し、窒素の強い気流を、周囲温度で45分間、最初は滴下漏斗に入れられたトルエンに通し、その後、反応器の空隙容積に通すことにより、溶解した気体を除去した。重合時間の間、弱い窒素気流を保持した。反応混合物を最大55℃で加熱することにより、重合を開始させた。15分後に、混合物の粘度が上昇し、撹拌の効率が低下した。この時点で、更なる容量のトルエン(周囲温度の)を滴下漏斗から添加した。そしてポリマー球状物の形成および分離の時間に、反応の発熱性による混合物の過熱を防ぐのに十分高速で運転し、反応混合物の粘度が効率的に撹拌されるのに十分低く保持されるよう、添加を設定した。温度60〜70℃および撹拌を更に5時間保持し、その後、混合物を撹拌せずに周囲温度で翌日まで放置した。その後、トルエン層1.75LをMIP粒子からデカンテーションして、トルエン湿性MIP粒子を粉砕して、2.0Lロータリーエバポレータフラスコに移した。MIP粒子の内部に封入されたトルエンのほとんど(約0.45L)を、わずかな減圧下および温度70℃未満でMIP球状物から留去させた。トルエン除去の終了時に、形成された粉末状生成物は、粉じんを生成する傾向を示した。この時点で、蒸発を停止させて、MIP粒子をエタノール 500mLずつで2回洗浄した。その後、エタノール約0.75Lを固体からデカンテーションして蒸発させ、再生OTAテンプレート 30g(55%)および再生エタノール700mLを得た。その後、白色の微細な固体を0.2w/v%NaOH 0.5Lずつで4回洗浄し、次に1v/v%酢酸 500mLで1回、そして脱イオン水 500mLずつで1回洗浄した。その後、得られた「湿性」OTA−MIPを、80℃の実験室用オーブンで24時間乾燥させた。白色粉末状生成物を411.4g量(収率96.6%)得て、標準のふるいを用いて分別した。この方法論を用いて、表3に同定された様々な試料を合成した。サイズ再分配の詳細を、表4に提供している。
【0153】
【表3】

【0154】
【表4】

【0155】
〔実施例5:低温およびUV開始によるMIP−OTAおよびNIPの重合/合成〕
光化学反応セット。450ワットUVランプ(ACE Glass、カタログ#7825−34)および450ワット電源箱(ACE Glass、カタログ#7830−58)を装備した水晶製光化学性浸漬型UVウェル(Quartz, photochemical UV immersion well)(Ace Glass、カタログ#7856−10)を、循環冷却装置WKL 230 LAUDA(Brinkmann Instuments, Inc.より供給)に取り付けて、UVランプが点灯している時に4℃冷却水をウェルマントルに貫流させる。
【0156】
重合(表5)。モノマー、テンプレート、開始剤(IABN)および架橋剤を、半透明のポリエチレンボトル(Nalgene(登録商標)スタイル2105)に入れ、アルゴン気流を混合物に15分間通して、フリーラジカル重合を阻害することで知られる酸素を全て除去する。その後、ボトルを閉じて、浸漬ウェルにUVランプの中心の高さで取り付け、光化学反応セットと共に氷水浴に浸漬させる。光が点灯している時に冷却水をランプマントルに貫流させて、反応混合物の照射を4時間保持する(UVランプを点灯している時間は、UV保護眼鏡が必要となる)。UV重合の途中で更に氷を供給し、過剰な水を水浴から排出して、冷却浴の温度を4℃に保持する。重合が完了した後、ボトルを開口して、ポリマーを破砕し小片に粉砕して、エタノールで1回、0.2%水酸化ナトリウムで10回、1%酢酸で1回、そしてエタノールで3回洗浄して、テンプレートをポリマーから除去し、MIPの最大活性を確保して、最終的に実験室用オーブンで乾燥させてエタノール残渣を除去する。MIP−OTAの収率は、#555−54Aおよび555−54Bでそれぞれ、56.7%および49%であった。
【0157】
【表5】

【0158】
〔実施例6:マイコトキシンに対するMIPの捕捉能−OTAへの適用〕
トルエン−シクロヘキサン、アセトニトリルまたはトルエンのいずれかの中で製造されたMIPポリマーを、OTA(Sigma−Aldrich、米国ミズーリ州セントルイス)マイコトキシンに対して、化学的相互作用を介した液体または半液体媒体からのOTAマイコトキシンの除去について検査した。製造されたMIPは、本明細書では、OTAマイコトキシンの捕捉の親和力の差を示すため、そして材料の特異性を評価するために用いた。MIP 12.5mg量を、Amicon超遠心式フィルター装置(ultracentrifuge filter device)(5,000Da)に入れた。MIP材料を含有しないブランク試料および検査されるOTA毒素のみを含有する陽性対照と共に、調製を実施した。pH4.0に調整された50mMクエン酸塩緩衝液中で、捕捉検査を実施した。試料は全て、37℃の温度に保持された150rpmのオービタルロータリーシェーカー(Brunswick、米国イリノイ州シャンペーン)で90分間インキュベートした。最終容量12.5mL中に50、100、250パートパービリオン(ppb)という3種の最終濃度のOTAを、その系で検査した。インキュベーション後に、マイクロ遠沈管を10,000rpmで10分間遠心分離した。上清をコハク色のシラン化HPLCバイアルに採取して、マイコトキシンとバイアルとの任意の相互作用を予防し、標準法(例えば、Entwisle A.C., Williams A.C., Mann P.J., Slack P.T., Gilbert J., 1995. Liquid chromatography method with immunoaffinity column cleanup for determination of ochratoxin A in barley: Collaborative study. Journal of AOAC, 83: 1377−1383参照)に従い、蛍光分光およびダイオードアレー検出器シグナル(例えば、マイコトキシンおよび捕捉されたマイコトキシンの量を検出するため)に連結されたHPLC(Alliance, Waters Corp.,米国マサチューセッツ州ミルフォード)から計算した。
【0159】
結果(表5参照)から、1.00g/Lの濃度の、OTA−テンプレートを用いて調製されたMIPとテンプレートを用いずに調製されたMIP(NIP)の両方が、pH4.0のOTAマイコトキシン分子に対して非常に高い親和力を有することが示された。調製方法に従い、沈殿重合の後に生成されたMIP(トルエン中で合成された#523−31、トルエン−シクロヘキサン混合物中で合成された#523−34、−35、−36、およびトルエン−アセトニトリル混合物中で合成された#523−48として同定)は、98.8%を超える捕捉有効性を有していたが、乳化重合の後に生成されたMIP(水およびポリビニルアルコール中で合成された#523−40および−41、ならびにアセトニトリル中で合成された49)は、63%未満の低い親和力を有している。NIP分子も、98.8%の捕捉有効性で相互作用することができる。この段階で、沈殿重合の群は、NIPとMIPの間に統計学的な差を示さなかったが、乳化重合の群は、MIPとNIPの間、そしてMIP間でも有意差を示した。
【0160】
15%エタノール/水酸化ナトリウム、1%酢酸溶液の下での2回の逐次洗浄ステップを利用して、2つのMIP群が相互作用を防ぐ能力、および捕捉強度を担う能力を評価した(表6参照)。乳化重合の群では、MIPからのOTAの安定した(robust)放出およびOTAマイコトキシンと同時に溶出される残留テンプレートの放出が示され、マイナス%の吸着率が説明された。したがって本発明は、乳化重合の方法論がOTA分子への効率的な吸着剤を生成するのに適さなかったことを示す。本発明は、沈殿重合の群がOTAに対して有意に高い親和力を有し、トルエン−アセトニトリル混合物中で合成されたMIPではOTA分子の最大脱離率がわずか26.3%であり、任意の残留テンプレートでの任意の妨害が認められなかったことも示す。
【0161】
【表6】

【0162】
〔実施例7:オクラトキシンAの捕捉についてのMIP量の滴定〕
MIPの含有率0.01g/L〜1.00g/L(または含有率0.001〜0.1%)を研究するために、滴定実験を実施した。MIP材料を含有しないブランク試料および検査されるOTA毒素のみを含有する陽性対照と共に、調製を実施した。pH4.0に調整された50mMクエン酸塩緩衝液中で、捕捉検査を実施した。試料は全て、37℃の温度に保持された150rpmのオービタルロータリーシェーカー(Brunswick、米国イリノイ州シャンペーン)で90分間インキュベートした。最終容量12.5mL中に50、100、250ppbという3種の最終濃度のOTAを、その系で検査した。インキュベーション後に、マイクロ遠沈管を10,000rpmで10分間遠心分離した。上清をコハク色のシラン化HPLCバイアルに採取して、マイコトキシンとバイアルとの任意の相互作用を予防し、標準法(例えば、先に引用されたEntwisle et al., 2000参照)に従い、蛍光分光およびダイオードアレー検出器シグナル(例えば、マイコトキシンおよび捕捉されたマイコトキシンの量を検出するため)に連結されたHPLC(Alliance, Waters Corp.,米国マサチューセッツ州ミルフォード)から計算した。
【0163】
図3に示す通り、0.05g/Lでの最適な有効性は、捕捉率80%を超えており、平均で捕捉率86.4±1.5%に達した。酸性緩衝条件(pH4.0)でのOTA 50、100、200ppbに対するMIP#523−34(トルエン−シクロヘキサン混合物中で合成)および#523−60(アセトニトリル中で合成)0.010、0.025、0.050、0.075、0.100、0.50、および1.00g/Lの捕捉活性を検査することにより、MIP化合物の含有レベルの範囲を評価した。粒径45〜106μmは最良の捕捉結果を与え、合成MIP生成物全体のうちの最大割合の粒径であることから、MIPサイズを粒径45〜106μmに設定した。
【0164】
それぞれMIP#523−34および#523−60は、含有レベルとは独立した合計捕捉率の平均として、OTAをそれぞれ91.53±10.86%および81.75±23.67%吸着することができた。捕捉曲線において、#523−34および#523−60試料でそれぞれMIP含有レベル0.05および0.10g/Lに偏向点が見出された。#523−34では含有率0.05〜1.00g/Lおよび0.10〜1.00g/Lでの平均捕捉親和力が、それぞれ96.31±2.23%および97.39±0.70%であった。#523−60では含有量0.05〜1.00g/Lおよび0.10〜1.00g/Lでの平均捕捉親和力が、それぞれ94.51±6.54%および97.76±0.91%であった。こうして本発明は、トルエン−シクロヘキサン混合物中で合成されたMIPが、含有率0.01g/Lで親和率72.42±2.58%であり、OTA捕捉でより高い親和率を得るのに好適であったが、アセトニトリル中で製造された試料は、効果がより低く、生成物の含有率0.01および0.05g/Lでそれぞれ親和率47.40±6.08および84.77±1.96であったことを示している。
【0165】
〔実施例8:オクラトキシンAに対する異なるMIPおよびNIPの親和力ならびに特異性の特徴づけ〕
重合に用いられる溶媒としてアセトニトリルまたはトルエンのいずれかの中で合成された異なるNIP/MIPの親和力を評価するために、本発明の実施形態の開発時に、実験を実施した。試料#523−31(トルエン)および#523−59(アセトニトリル)を、OTAの任意のテンプレートを用いずに合成し(非鋳型ポリマーとして定義)、試料#523−34(トルエン−シクロヘキサン混合物)および#523−60(アセトニトリル)を、OTA類似テンプレートの周囲で重合させた。その後、異なるカットオフサイズのふるいを用いて、試料をふるいにかけた。検査された粒径の範囲は、実施例4に記載されたとおりであった。MIPの製造では、径が約45〜106μmの寸法の粒子が主に製造された(図4に示す)。MIP材料を含有しないブランク試料および検査されるOTA毒素のみを含有する陽性対照と共に、調製を実施した。pH4.0に調整された50mMクエン酸塩緩衝液中で、捕捉検査を実施した。試料は全て、37℃の温度に保持された150rpmのオービタルロータリーシェーカー(Brunswick、米国イリノイ州シャンペーン)で90分間インキュベートした。最終容量12.5mL中に50、100、250ppbという3種の最終濃度のOTAを、その系で検査した。インキュベーション後に、マイクロ遠沈管を10,000rpmで10分間遠心分離した。上清をコハク色のシラン化HPLCバイアルに採取して、マイコトキシンとバイアルとの任意の相互作用を予防し、蛍光分光およびダイオードアレー検出器シグナル(例えば、マイコトキシンおよび捕捉されたマイコトキシンの量を検出するため)に連結されたHPLC(Alliance, Waters Corp.,米国マサチューセッツ州ミルフォード)から計算した。
【0166】
OTA親和力の比較から、3種の異なる濃度(50、100、250ppb)の毒素で、逐次洗浄ステップなしで実施された1回の捕捉で評価された差がわずかであることが示された。ふるいを行なわずにNIPで生成された試料#523−59だけが、各pH濃度のOTAでより低い捕捉能を示した。低い捕捉値は、OTAの濃度値50ppbに対するMIP試料#523−34でも、特に粒径20〜45μm、そしてより少ない程度に45〜106μmで見出された。つまり幾つかの実施形態において、本発明は、本発明の方法により製造されたMIP粒子の粒径が、OTAに対する吸着親和力の合計にほとんど影響を有さず、親和力が最低の例で捕捉率78〜99%で変動することを示している。NIPは、MIPよりも捕捉性の効果が低く、OTAマイコトキシンと相互作用するMIPの特異性が説明される。
【0167】
〔実施例9:MIPを用いたワイン中の添加OTAの封入およびMIP固相抽出(SPE)類似ろ過装置を用いたワイン中の添加オクラトキシンAの直接ろ過〕
免疫アフィニティーカラムを用いた白ワイン(Chardonnay 2005−California)の試料についての標準抽出手順を検査した。純粋なワイン試料および純粋な結晶OTA5、10、20ppbを添加されたワイン試料について、抽出を行った。元々の平均ワイン中濃度は、OTA 1.676±0.269ppbであった(例えば、標準的抽出手順に従って決定)。5ppbを添加した試料の回収率は100%であり、10ppbでは約77.7%であった。
【0168】
MIP材料を含有しないブランク試料および検査されるOTA毒素のみを含有する陽性対照と共に、調製を実施した。pH4.0に調整された50mMクエン酸塩緩衝液中で、捕捉検査を実施した。試料は全て、37℃の温度に保持された150rpmのオービタルロータリーシェーカー(Brunswick、米国イリノイ州シャンペーン)で90分間インキュベートした。最終容量12.5mL中に50、100、250ppbという3種の最終濃度のOTAを、その系で検査した。インキュベーション後に、マイクロ遠沈管を10,000rpmで10分間遠心分離した。上清をコハク色のシラン化HPLCバイアルに採取して、マイコトキシンとバイアルとの任意の相互作用を予防し、蛍光分光およびダイオードアレー検出器シグナル(例えば、マイコトキシンおよび捕捉されたマイコトキシンの量を検出するため)に連結されたHPLC(Alliance, Waters Corp.,米国マサチューセッツ州ミルフォード)から計算した。
【0169】
ワインからのOTAの捕捉率は、本来は最良の性能を有するMIP#523−34(フェノール−シクロヘキサン混合物)でのマイコトキシン捕捉について、標準的手順を用いて評価した。捕捉率は、含有レベル0.05、0.10、0.50、1.00g/Lで、それぞれ平均で43.29±4.08%〜67.15±4.94%〜91.75±1.59%〜95.612±1.201%で変動した。MIPの滴定で、含有レベル0.5mg/mLおよび1.0mg/mLを用いた場合の最適親和力を決定した(図5参照)。
【0170】
つまり幾つかの実施形態において、本発明は、ワインからマイコトキシン(例えば、OTA)を封入/吸着するための組成物およびそれを用いる方法を提供する(例えば、ワインからのマイコトキシンに効果的に結合し、それを吸着するのに用いられる(例えば、振とう条件下で)MIP粒子)。
【0171】
例えば幾つかの実施形態において、本発明は、マイコトキシン(例えば、1種または複数の異なるタイプのマイコトキシン(例えば、複雑なマトリックス(例えば、飼料、食物、野菜、動物など)からの液体媒体または抽出溶液に存在する))を封入/吸着するためのMIP(例えば、本明細書に記載された方法により生成された)を提供する。
【0172】
MIPの含有率0.1g/Lに相当するよう、固相抽出類似(SPE類似)ろ過装置を製作した。水性溶媒中のOTAの安定性を確保するため、そしてOTAとガラスバイアルとの任意の非特異的相互作用を防ぐために、シラン化ガラスバイアルが必要であった。シラン化の方法を、当該技術分野で一般に用いられる方法(例えば、先に引用されたEntwisle et al., 2000参照)に基づいて、ナイロンおよびPTFE/PEフィルターおよび試験管に適用した。バイアルおよびフィルターにシラン化試薬(SURFASIL)を充填するか、またはそれらをシラン化試薬に浸漬させることにより、それらを調製した。1分後に、それらをトルエンで1回すすぎ、その後、メタノールで2回、その後水で3回すすいで、乾燥させた。シラン化を実施すると、当該分野で実施される通り、材料とOTA分子との相互作用の劇的減少が得られた。例えば、5%未満の妨害が観察された(例えば、PE/PTFEフィルターを用いた場合、材料の予備的シラン化を行わなかった場合の約16〜26%妨害と対照的に)。ナイロンは、シラン化に適さなかった。ポリプロピレン管を全て、シラン化ガラスバイアルと交換した。
【0173】
試料をカラムで直接ろ過した後、ワインからOTAを封入するために、SPE類似ろ過装置を製作した。OTA 5および10ppbを添加されたワイン(Chardonnay 2005−California)からのOTAの浄化について、MIPの有効性を検査した。結果は、添加されたOTA 5および10ppbで、ワインのOTA含量の即時減少がそれぞれ55.41±5.542%および56.937±5.739%であることを実証した。したがって幾つかの実施形態において、本発明は、マイコトキシンを含む液体(例えば、ワイン)からマイコトキシンを除去するためのSPEまたはSPE類似ろ過装置と共に用いられるマイコトキシン特異性MIP(例えば、本明細書に記載された方法により生成された)を提供する。
【0174】
〔実施例10:熱開始および低温UV開始のMIP固相抽出(SPE)類似ろ過装置を用いたオクラトキシンAの封入ならびにワインの重要な成分に対する選択性の評価〕
MIPの含有率0.1g/Lに相当するよう、固相抽出類似(SPE類似)ろ過装置を製作した。水性溶媒中のOTAの安定性を確保するため、そしてOTAとガラスバイアルとの任意の特異的相互作用を防ぐために、シラン化ガラスバイアルが必要であった。シラン化の方法を、当該技術分野で一般に用いられる方法(例えば、先に引用されたEntwisle et al., 2000参照)に基づいて、ナイロンおよびPTFE/PEフィルターおよび試験管に適用した。バイアルおよびフィルターにシラン化試薬(SURFASIL)を充填するか、またはそれらをシラン化試薬に浸漬させることにより、それらを調製した。1分後に、それらをトルエンで1回すすぎ、その後、メタノールで2回、その後水で3回すすいで、乾燥させた。シラン化を実施すると、当該技術分野で実施される通り、材料とOTA分子との相互作用の劇的減少が得られた。例えば、5%未満の妨害が観察された(例えば、PE/PTFEフィルターを用いた場合、材料の予備的シラン化を行わなかった場合の約16〜26%妨害と対照的である)。ナイロンは、シラン化に適さなかった。ポリプロピレン管を全て、シラン化ガラスバイアルと交換した。
【0175】
ポリフェノールを含む12種の化合物:コーヒー酸(Caf A)、カテキン水和物(CH)、エピカテキン(ECH)、フェルラ酸(Fer)、トランス−3−ヒドロキシ桂皮酸(3−HCA)、2−ヒドロキシ桂皮酸(2−HCA)、マルビジン−3−ガラクトシド塩酸塩(Mal)、ミリセチン(Myr)、ケルセチン脱水物(QH)、トランスレスベラトロール(Res)、ルチン三水和物(Rut)およびインドール−3−酢酸(IAA)(Sigma、米国ミズーリ州セントルイス)の原液を、メタノール(HPLC等級)に溶解し、水および85%o−リン酸を添加して、pHを約3.0に低下させることにより調製した。上清をコハク色のシラン化HPLCバイアルに採取して、分析物とバイアルとの任意の相互作用を予防し、蛍光分光およびダイオードアレー検出器シグナル(例えば、マイコトキシンおよび捕捉されたマイコトキシンの量を検出するため)に連結されたHPLC(Alliance, Waters Corp.,米国マサチューセッツ州ミルフォード)から計算した。サーモスタットで30℃に温度管理されたC18逆相HPLC Spherisorb ODSカラム5μm、4.6μm×250mm(Waters Corp.,米国マサチューセッツ州ミルフォード)を用いた。励起および発光波長を、それぞれ225nmおよび365nmに設定した。UV光ダイオードアレー検出器を、フルスキャンモードの波長210〜799nmに設定した。移動相は、水/リン酸(99.5%:0.5%;v/v)および(B)アセトニトリル(HPLC等級)/水/リン酸(50%/49.5%/0.5%;v/v/v)で構成させた。
【0176】
MIPは全て、緩衝溶液中のOTAへの良好な吸着率を示し、全てが吸着率80%を超えていた。MIP555−52は、ほぼ100%と、最良の吸着率を示した。興味深いこととして、OTAは、全てのMIPの緩衝液洗浄時に吸着されたままであったが、特に熱開始されたMIP#555−52および#523−34、そして最高OTA濃度で有意に、メタノール洗浄時に脱離された。OTAは低温およびUV開始のMIP#555−54Aおよび#555−54Bには、メタノールで洗浄しても吸着されたままで、熱開始MIPよりも良好であり、UV開始のMIPではメタノール洗浄により50%を超える平均吸着率が保持された(図6参照)。
【0177】
ワイン中の抗酸化ポリフェノール化合物の健康利益は、文書で立証されている。液体(例えば、ワイン)中のマイコトキシン、例えばOTAをろ過する方策において、有益な化合物、例えばポリフェノールの一部に対する捕捉材料の影響を評価することも、基本的なことである。幾つかの実施形態において、そして本明細書に文書化された通り(例えば、実施例6〜実施例9参照)、MIP#555−52および#523−34を製造する熱開始重合は、液体媒体中に存在するOTAマイコトキシンと効果的に相互作用することができ、95%を超える吸着レベルであったが、MIP#555−54および#555−54Xを製造する低温およびUV開始重合は、捕捉有効性が80〜92%の範囲となる吸着有効性を与えた(図6)。
【0178】
幾つかの実施形態において、本発明の低温およびUV開始MIP組成物は、異なるポリフェノール、アントシアニンと、インドール−3−酢酸との混合物で評価した場合に、OTAに対するd特異性を示した。この例では、MIP#555−54Aおよび#555−54Bは、OTAの高い吸着率を示し(80%を超える)、同時に、ポリフェノールまたはインドール−3−酢酸(例えば、感覚受容性および抗酸化性(例えば、ワインの)を提供する)の吸着を予防した。UV開始MIPの試験では、インキュベーション時間が排除され、ワイン試料および洗浄液をMIPまたはフィルターを通して直ちに押し出した。非常に低い吸着率が観察された(図7)。つまり幾つかの実施形態において、本発明は、マイコトキシン(例えば、OTA)への特異性を示すが、同時に有益な化合物(例えば、ポリフェノールおよび/またはインドール−3−酢酸)への結合(例えば、吸着)をほとんど、または全く示さないMIPを提供する。ミリセチン、レスベラトロールおよびルチンの定量は、HPLC分析機器の検出限界および定量限界に近い非常に低濃度での存在であるため、結果的に大きな標準偏差および負の値を与え、不確定となる傾向があった。この実施形態において、つまりUV開始MIPは、OTAの封入を効率的に行い、ワイン液体媒体のポリフェノール含量を損なわなかったことから、生成されたMIP材料の特異性が実証された。
【0179】
〔実施例11:ろ過装置として適用するための繊維ガラスメッシュへのMIPのコーティング〕
本発明の実施形態の開発時に、繊維ガラスメッシュへのMIP−OTAのコーティングを検査する実験を実施した(図8参照)。複数の濃度のOTAを用いて、各調製物の親和力を決定した。生成された異なるMIPを、以下の表7に要約した。3種のメッシュスクリーンを様々な濃度の架橋試薬と共にMIPでコーティングして、脆性に影響を与えた。(モノマー溶液1、2、3および1H)。コーティングされたMIPから調製されたメッシュを、MIPのコーティング前および後の重量に基づいて切断し、分別計量(differential weighting)により評価された50、100および200mgのMIPを与えた。20mLファルコンチューブに沈めたMIPコーティングメッシュで捕捉アッセイを実施して、ロータリーシェーカーを用いて90分間インキュベーションした後のワイン媒体中のOTAの捕捉特性を決定した。3種の異なる濃度のOTAを添加したワイン溶液を含有するチューブの1mLを、MIP−OTAメッシュフィルターとのインキュベーション前および後に測定した。試料をコハク色のシラン化HPLCバイアルに採取して、マイコトキシンとバイアルとの任意の相互作用を予防し、蛍光分光およびダイオードアレー検出器シグナル(例えば、マイコトキシンおよび捕捉されたマイコトキシンの量を検出するため)に連結されたHPLC(Alliance, Waters Corp.,米国マサチューセッツ州ミルフォード)で計算した。
【0180】
【表7】

【0181】
結果から、OTAに対する最大捕捉が、MIPの含有レベルに依存することが示された。捕捉の最大値は、テンプレート500mg、ビニルピリジン250mg、およびヒドロキシエチルメタクリラート200mgにより得られ、それらはワイン中の濃度100ppbのOTAを最大46.5%吸着するMIPを製造した(図9参照)。反対に、繊維ガラスにコーティングされた、同等の加工のNIPポリマーで実施した同様の実験では、調製手順に応じて15%未満(1%まで)の捕捉有効性を示し(図10参照)、それによりOTAについてのMIP−OTA材料の特異性が例証された。
【0182】
〔実施例12:MIPのクロマトグラフィー保持能〕
水浴中での音波処理を利用して材料を充填し、その後、カラム(HPLC、WatersのAllianceバイナリーポンプ(Waters Corp.,米国マサチューセッツ州ミルフォード)を用いたMIP)を貫流する流速5.0mL/分のアセトニトリルを連続して一晩加えた後、MIP#523−34(トルエン−シクロヘキサン混合物で合成)を、4.6×150mmHPLCカラムの固定相として用いた。カラムの圧力が、約400psiであることが決定され、他の例で記載された他のHPLC条件と同等であった(例えば、先に引用されたBaggiani et al., 2002; Jodlbauer J., Maier N.M., and Lindner W. Journal of Chromatography A, 945: 45−63; Maier N.M., Buttinger G., Welhartizki S., Gavioli E., Lindner W., 2004. Journal of Chromatography B, 804: 103−11参照)。カラムを流速1.0mL/分のアセトニトリルの下で48時間にわたり安定化させて、99%メタノールおよび1%テトラエチルアミンで大規模に洗浄して、カラムから残留OTAテンプレートを除去した。MIPカラムを用いたOTAのフロンタルHPLC−PDA−FID分析の特徴づけを実施した。
【0183】
30℃の一定温度に保持されたカラムを貫流する異なる移動相条件および異なる勾配設定の下で、カラムの耐久性を評価した。60分間かけた100%水から100%アセトニトリルまたは100%メタノールへの移行、およびその逆など、そしてメタノール中の1%テトラエチルアミンから100%メタノールへの移行も利用して、複数の勾配を検査した。カラムは、1600psiまでの圧力上昇の後、固定相をいずれも改良せずに耐久し、高圧でのカラムの耐久性が説明された。アセトンの注入を利用して、分析物を2分間溶出させて、カラムのボイドボリュームを評価した。標準のODS C18溶出プロファイル(85%アセトニトリル)で用いられるものと同様の条件を利用して、OTAの溶出を評価した。アイソクラティック勾配をかけたMIPカラムで5分間、OTAの保持を評価した。OTAの保持時間を増加させるために、OTAの保持が19.5分に増加させることができる勾配を実施した。
【0184】
選択された最終条件を図11に示し、勾配条件は関連の表に詳述している。2つのピーク、つまり17〜22分に(63%アセトニトリルで)溶出されたOTAの主なピーク、およびカラムへの1%トリエチルアミンの添加により放出された残りの高結合性OTA分画に関連する第二のピークが観察された。
【0185】
〔実施例13:スポリデスミンテンプレートの合成〕
2,3−ジメトキシ安息香酸からのN−tert−ブトキシカルボニル−2,3−ジメトキシアニリンの調製。無水tert−ブチルアルコール 300mL、2,3−ジメトキシ安息香酸 50.0g(274mM)および無水トリエチルエチルアミン 28.33g(280mM、39mL)を、圧力平衡管およびガスバブルメータ(gas bubble meter)付き120mL滴下漏斗と、重い磁気撹拌棒と、サーモメータとを装備した1L二つ口丸底フラスコに充填する。フラスコの内容物を、磁気的に撹拌して、オイルバス内で80℃に加熱する。ジフェニルホスホラジダート 77.04g量(280mM、60.5mL)を、気体生成の進展を制御するのに十分緩やかな速度で、混合物に一滴ずつ添加する。80℃への加熱および磁気撹拌を、一晩保持した。その後、混合物の揮発性成分を30Tの真空下、温度55℃未満で回転蒸発させた。油状生成物を1L分液漏斗に移して、シクロヘキサン500mLと酢酸エチル200mLとの混合物に溶解した。溶液を脱イオン水200mLで3回、および飽和水性塩化ナトリウム200mLで1回洗浄して、無水硫酸ナトリウムで15分間乾燥させてろ過し、30Tの真空下、80℃のロータリーエバポレータで濃縮した。N−tert−ブトキシカルボニル−2,3−ジメトキシアニリン 67.88g(収率98%)を無色油状物として得た。
TLC、SiO、CHCl:シクロヘキサン(c−Hexと略す)(1:2);R=0.66検出UV、高温5%KMnO明黄色。
FT−IRフィルム(cm−1):3319, 2941, 1669, 1601, 1529, 1477, 1459, 1416, 1369 1296, 12581090, 998, 978, 780, 737。
H NMR, (400MHz), CDCl, δ (ppm): 1.53 s, 9H; 3.86 s, 3H; 3.862 s, 3H; 6,593 dd, J=8.4&1.6 Hz, 1H; 7.004 t, J=8.4&8.0, 1H; 7.135 br s, 1H; 7.725 d, J=8.0 Hz。
【0186】
N−tert−ブトキシカルボニル−2,3−ジメトキシアニリンからの2,3−ジメトキシアニリンの調製。メタノール 580mL容量、N−tert−ブトキシカルボニル−2,3−ジメトキシアニリン 67.88g(268mM)および12.1M HCl 66.45mLを、磁気撹拌棒を装備した1Lフラスコに充填して、50℃の水浴に入れた。加熱および撹拌を2時間保持し、その後、周囲温度で一晩撹拌しながら放置した。その後、溶液をアイスバス内で冷却した後、6.16M 水酸化ナトリウム 130.5mL容量を撹拌しながら添加した。
【0187】
温度40℃未満および30Tの真空圧の下、ロータリーエバポレータを用いてメタノールを混合物から蒸発させた。半固体残渣をトルエン 180mLで希釈して、ろ過した。沈殿をトルエン 180mLずつ更に2回洗浄し、ろ液を1L分液漏斗に移した。上層を採取し、硫酸ナトリウムで乾燥させて濃縮し、真空蒸発させた。2,3−ジメトキシアニリン 34.6g量(収率94.0%)を、105〜107℃、8Tで、無色結晶油状物の形態で採取した。
TLC、SiO、c−HeX:テトラヒドロフラン(THFと略す)(6:1);R=0.35検出UV、5%KMnO加熱/緑褐色。
FT−IRフィルム(cm−1):3463, 3368, 2939, 1609, 1497, 1475, 1319, 12621226, 1129, 1085, 1050, 999, 773, 729, 694。
H NMR, (400MHz), CDCl, δ (ppm): 3.75 br s, 2H; 3.83 s, 3H; 3.84 s 3H; 6.34 d, J=8.1 Hz, 1H; 6.38 d, J=8.1Hz, 1H; 6.84 t, J=8.1Hz, 1H。
【0188】
2,3−ジメトキシアニリンおよびジエチルケトマロナートからのエチル3−ヒドロキシ−6,7−ジメトキシ−2−インドロン−3−カルボキシラートの合成。トルエン 250mL中のジエチルケトマロナート 69.33g(398.1mM)の溶液を、氷水浴中に入れた、空気平衡管および磁気撹拌棒を有する滴下漏斗を装備した1L丸底フラスコに入れる。トルエン 200mL中の2,3−ジメトキシアニリン 56.769g(370.6mM)の溶液を、滴下漏斗に充填する。撹拌を開始して、反応混合物を連続して冷却および磁気撹拌しながら、2,3−ジメトキシアニリン溶液をフラスコに緩やかに添加する。4時間以内に添加を完了して、混合物を放置して室温まで昇温させ、撹拌しながら一晩、合計22時間放置した。その後、混合物を2時間の間、80℃まで加熱し、続いて混合物の温度を100℃に上昇させた。蒸留物25mL容量を採取した。水4mLおよびトルエン21mLを含む蒸留物25mL容量を採取した。TLC SiO(PhMe:THF/6:1、UV、高温KMnO)は、ジエチルケトマロナート R0.86;モノエチルケトマロナートの2,3−ジメトキシアニリド R0.66;2,3−ジメトキシアニリン R0.43;ジエチルケトマロナート一水和物 R0.30;および所望の生成物、エチル3−ヒドロキシ−6,7−ジメトキシ−2−インドロン−3−カルボキシラート R0.20の存在を示した。100℃までの加熱を24時間継続し、その後、白色沈殿がフラスコ内に形成された。その後、フラスコの内容物を撹拌して、80〜90℃で更に48時間加熱した。この時間の後に、それを室温まで冷却して、沈殿をろ別し、トルエン 50mLで洗浄した。乾燥させた後、エチル3−ヒドロキシ−6,7−ジメトキシ−2−インドロン−3−カルボキシラート 16.1g(収率24.0%)を得た。濾液をロータリーエバポレータで濃縮して、THF含量が7.5〜20%のc−Hex:THF混合物を用いたSiOでのLCに供した。かなり純粋な生成物を更に12.2g(収率18.2%)採取した。
Mp 150〜151℃。
TLC、SiO、トルエン(PhMeと略す);THF(6:1)、R=0.12 検出UV、5%KMnO加熱/鮮黄色。
FT−IRフィルム(cm−1):3293, 2937, 17281726, 1636, 1505, 1466, 1336, 1236, 1234, 1164, 1084, 1016, 1192, 729。
H NMR, (400 MHz), CDCl, δ (ppm): 1.191 t, J=7.2Hz, 3H; 3.892 s, 3H; 3.898 s, 3H; 4.152−4.319 m, 16本, dqが2本, 全てJ=7.2 Hz、 4.179, 4.205, 4.265, 4.292, 2Hにカルテットの中心を含む; 4.346 br s, 1H; 6.575 d, J=8.4 Hz, 1H, 6.961 dd, J=8.4&0.4 Hz, 1H; 7.744 br s, 1H。
【0189】
エチル3−ヒドロキシ−6,7−ジメトキシ−2−インドロン−3−カルボキシラートからの6,7−ジメトキシイサチンの合成。エタノール 100mL中のエチル3−ヒドロキシ−6,7−ジメトキシ−2−インドロン−3−カルボキシラート 10.67g(40.2mL)の溶液を、周囲温度の水浴中で撹拌した。この混合物に、水 25mL中の水酸化ナトリウム 4.828gの溶液(120.7mM)を一滴ずつ添加した。COを含まない空気流を、反応混合物に通して、激しく撹拌した。周囲温度での混合物の通気および撹拌を、一晩保持した。回収された混合物は、濃い赤褐色であった。濃塩酸5mLの添加により溶液を中和した。形成された無機塩の白色沈殿をろ別し、ロータリーエバポレータで20mL容量に濃縮して、冷却装置に放置して結晶化させた。黄橙色結晶を採取して、風乾した。純粋な6,7−ジメトキシイサチンの2.24g量(収率26.9%)を得た。生成物の更なる0.54g(収率6.5%)を、SiOおよびPhMe:THF(4:1)混合物を用いた液体クロマトグラフィーによりろ液から分離した。
Mp 209〜210℃。
TLC、SiO、PhMe;THF(6:1)、R=0.18黄色スポット、検出UV、5%KMnO加熱/鮮黄色。
FT−IRフィルム(cm−1):3218, 1747170716231507, 1452, 1442, 1337, 1286, 1240, 1184, 1082, 1041, 973, 949, 794, 685, 702, 662。
H NMR, (400 MHz), CDCl, δ(ppm): 3.91 s 3H; 3.98 s 3H; 6.60 d, J=8.4 Hz, 1H; 7.42 d, J=8.4Hz, 1H; 7.74 br s, 1H。
【0190】
6,7−ジメトキシイサチンからの6,7−ジメトキシ−1−メチルイサチンの合成。無水THF 20mL中のカリウムtert−ブタノラート 2.255g(20.1mM)の溶液を、磁気撹拌および氷水浴で冷却しながら、ゴムセプタムによりシリンジから、無水THF 15mL中の6,7−ジメトキシイサチン 2.78g(13.4mM)の溶液を含有する50mL丸底フラスコに添加した。この混合物に、ヨウ化メチル 3.8mL(8.65g、60mM)をシリンジにより添加して、直ちに形成された重い沈殿を含む混合物を35℃で一晩撹拌した。TLC(SiO、PhMe;THF(6:1))により、基質(6,7−ジメトキシイサチン)R=0.18の、6,7−ジメトキシ−1−メチルイサチンR=0.34への完全な変換が確認された。沈殿をろ別し、無水THF 20mLずつで3回洗浄した。ひとまとめにしたろ液を蒸発乾固し、生成物をフラッシュクロマトグラフィーにより明赤色分画として採取した。SiOおよびPhMe;THF(9:1)混合物を用いた。赤色溶離液の蒸発乾固の後、明黄色結晶2.517g(収率84.8%)を採取した。
Mp 190〜191℃。
TLC、SiO、PhMe;THF(6:1)、R=0.34赤橙色スポット、検出UV、5%KMnO加熱/鮮黄色。
FT−IRフィルム(cm−1):2955, 17241614, 1497, 1450, 13731264, 1205, 1168, 1131, 1086, 1044, 1028, 979, 975, 828, 800, 775, 654。
H NMR, (400 MHz), CDCl, δ (ppm): 3.490 s, 3H; 3.877 s, 3H; 3.982 s, 3H; 6.575 d, J=8.4 Hz, 1H; 7.416 d, J=8.4Hz, 1H。
【0191】
5−クロロ−6,7−ジメトキシ−1−メチルイサチンの合成。6,7−ジメトキシ−1−メチルイサチン 2.517g量(11.38mM)およびN−クロロスクシンイミド 1.823g(13.65mM)およびDMF 30mLを、磁気撹拌棒と、空気平衡管付き10mL滴下漏斗とを装備した100mL丸底フラスコに入れて、氷水浴に入れた。DMF中の濃塩酸 1.125mL(13.6mM)の溶液 10mLを滴下漏斗に充填し、撹拌した冷却反応混合物に一滴ずつ添加した。添加が完了した後、溶液を周囲温度で更に2時間混合した。その後、溶媒を8Tの真空下および50℃で回転蒸発させて、残渣をPhMe;THF(19:1)混合物を用いたSiOのフラッシュクロマトグラフィーに供した。生成物のレンガ色のバンドを含む溶離液を採取して、回転蒸発により乾燥させて、5−クロロ−6,7−ジメトキシ−1−メチルイサチンのレンガ色結晶 1.83g(収率62.9%)を得た。
Mp 140〜142℃。
TLC、SiO、PhMe;THF(6:1)、R=0.51赤色スポット、検出UV、5%KMnO加熱/鮮黄色。
UV/VIS(nm)濃度:エタノール中0.143mg/mL:318, e 2.75, 433, e 0.70。
FT−IRフィルム(cm−1):2951, 17261602, 1457, 1442, 1423, 1404, 1359, 1292, 1263, 1232, 1093, 1046, 1005, 979, 941, 897, 881, 797, 766, 668。
H NMR, (400 MHz), CDCl, δ (ppm): 3.475 s, 3H; 3.935 s, 3H; 4.027 s, 3H; 7434 s, 1H。
【0192】
スポリデスミンおよび5−クロロ−6,7−ジメトキシ−1−メチルイサチンテンプレートの分子構造を、図12に見出すことができる。合成経路を、図13に要約する。
【0193】
〔実施例14:スポリデスミンMIPおよびNIPの合成(メタクリル酸を用いる)〕
トルエン 100mL中の、5−クロロ−6,7−ジメトキシ−1−メチルイサチン 1.8g(7.04mM)、メタクリル酸 1.194mL(1.212g、14.08mM)、2−ヒドロキシエチルメタクリラート 3.415mL(3.664g、28.16mM)、エチレングリコールジメタクリラート 39.83mL(41.86g、211.2mM)およびAIBN 1.0g(6.09mM)の溶液を、気体平衡管付き120mL滴下漏斗と、機械的撹拌装置と、バブルメータ付き還流冷却器と、サーモメータとを装備した500mL四つ口丸底フラスコに入れる。トルエン 120mL容量を滴下漏斗に入れ、撹拌装置を始動させ、窒素をトルエン(滴下漏斗内の)およびフラスコ内の混合物表面に通して、バブルメータを通して外部に放出させる。30分間の撹拌および窒素吹込みの後、気体流入の割合を単一気泡に限定し、フラスコを70℃の水浴に浸漬させることによりフラスコ内の温度を65℃に上昇させる。15分以内に重合が開始し、溶液が次第に粘性になる。激しい撹拌を保持することが困難である場合には、滴下漏斗のトルエンを可能な限り急速に添加して、混合物を希釈する。激しい撹拌および加熱を、4時間保持する。この時間の間にMIPの小球が形成される。混合物を撹拌または加熱せずに一晩放置する。翌朝に、MIPの球状物をろ別し、エタノールの各150mLで13回洗浄する。赤橙色ろ液を採取し、回転濃縮する。5−クロロ−6,7−ジメトキシ−1−メチルイサチン(スポリデスミンテンプレート)を、PhMe:THF(98:2)を用いたフラッシュクロマトグラフィーにより回収して、テンプレートのレンガ色バンドを採取する。回転蒸発により、非常に純粋な結晶性5−クロロ−6,7−ジメトキシ−1−メチルイサチン 1.572g(回収率87.3%)を得た。MIPの球状物を周囲温度で一晩、そして実験室用オーブン内で80℃で更に1時間風乾する。
【0194】
スポリデスミンMIP(メタクリル酸)45.362g量が、小さな卵殻色球状物の形態で得られ、MIP#519−98として同定された。
【0195】
同様の手順に従い、スポリデスミンテンプレートを反応混合物に添加せずにエタノール洗浄を3回(各150mL)のみ実施することにより、純白色球状物の形態のスポリデスミンNIP(メタクリル酸)45.883gを得た。そのポリマーは、MIP#555−99として同定された。
【0196】
MIPおよびNIPは両者とも、焼結ガラスフィルター上で容易にろ過および洗浄された。
【0197】
〔実施例15:スポリデスミンMIPおよびNIPの合成(2−ビニルピリジンを用いる)〕
トルエン 80mL中の、5−クロロ−6,7−ジメトキシ−1−メチルイサチン 1.5g(5.86mM)、2−ビニルピリジン 1.260mL(1.232g、11.72mM)、2−ヒドロキシエチルメタクリラート 2.845mL(3.053g、23.46mM)、エチレングリコールジメタクリラート 33.191mL(34.833g、176mM)およびAIBN 0.833g(5.07mM)の溶液を、気体平衡管付き100mL滴下漏斗と、機械的撹拌装置と、バブルメータ付き還流冷却器と、サーモメータとを装備した500mL四つ口丸底フラスコに入れる。トルエン 120mL容量を滴下漏斗に入れ、撹拌装置を始動させ、窒素をトルエン(滴下漏斗内の)およびフラスコ内の混合物表面に通して、バブルメータを通して外部に放出させる。30分間の撹拌および窒素吹込みの後、気体流入の割合を単一気泡に限定し、フラスコを70℃の水浴に浸漬させることによりフラスコ内の温度を65℃に上昇させる。15分以内に重合が開始し、溶液が次第に粘性になる。激しい撹拌を保持することが困難である場合には、滴下漏斗のトルエンを可能な限り急速に添加して、混合物を希釈する。激しい撹拌および加熱を、4時間保持する。この時間の間にMIPの小球が形成される。混合物を撹拌または加熱せずに一晩放置する。その後、MIPの球状物をろ別し、エタノールの各150mLで13回洗浄する。MIPの洗浄から得られたろ液を全て採取し、回転蒸発させて乾燥させる。赤色残渣をトルエン 20mLに溶解し、トルエン中のSiO 200mLを充填した液体クロマトグラフィーカラム(24mm×50cm)の最上部に加える。赤色のバンドをPhMe;THF(5:1)で洗浄する。回転蒸発により、結晶性5−クロロ−6,7−ジメトキシ−1−メチルイサチン 1.489g(回収率99.2%)を得た。MIPの球状物を周囲温度で一晩、そして実験室用オーブン内で80℃で更に2時間風乾する。スポリデスミンMIP(2−ビニルピリジン)37.936g量が、小さな卵殻白色球状物の形態で得られ、MIP#519−101として同定された。
【0198】
スポリデスミンNIP(2−ビニルピリジン)。同様の手順に従い、スポリデスミンテンプレートを反応混合物に添加せずにエタノール洗浄を3回(各150mL)のみ実施することにより、純白色球状物の形態の39.2g量を得た。そのポリマーは、MIP#555−102と同定された。
【0199】
〔実施例16:スポリデスミンMIPのUV開始、低温重合/合成〕
光化学反応セット。450ワットUVランプ(ACE Glass、カタログ#7825−34)および450ワット電源箱(ACE Glass、カタログ#7830−58)を装備した水晶製光化学性浸漬型UVウェル(Ace Glass、カタログ#7856−10)を、循環冷却装置WKL 230 LAUDA(Brinkmann Instuments, Inc.より供給)に取り付けて、UVランプが点灯している時に4℃冷却水をウェルマントルに貫流させる。
【0200】
重合工程。モノマー混合物:メタクリル酸 1.2g(13.95mM)およびエチレングリコールモノメタクリラート 3.631g(13.95mM)、スポリデスミンテンプレート 1.783g(6.97mM)、開始剤(IABN) 0.991g(6.03mM)および架橋剤、エチレングリコールジメタクリラート 41.444g(209.1mM)を、半透明のポリエチレンボトル(Nalgene(登録商標)スタイル2105)に入れ、アルゴン気流を混合物に15分間通して、フリーラジカル重合を阻害することで知られる酸素を全て除去する。その後、ボトルを閉じて、浸漬ウェルにUVランプの中心の高さで取り付け、光化学反応セットと共に氷水浴に浸漬させる。光が点灯している時に冷却水をランプマントルに貫流させて、反応混合物の照射を3時間半保持する(UVランプを点灯している時間は、UV保護眼鏡が必要となる)。UV重合の途中で更に氷を供給し、過剰な水を水浴から排出して、冷却浴の温度を4℃に保持する。重合が完了した後、ボトルを開口して、ポリマーを破砕し小片に粉砕して、エタノールで3回、1:1水−エタノール混合物で2回、3:1水−エタノール混合物で6回、そしてエタノールでもう1回洗浄して、テンプレートをポリマーから除去し、MIPの最大活性を確保して、最終的に実験室用オーブンで乾燥させてエタノール残渣を除去し、生成物41.1g(収率89%)を得る。
【0201】
〔実施例17:マイコトキシンに対するMIPの捕捉能−スポリデスミン類似体への適用〕
トルエン中のメタクリル酸または2−ビニルピリジンモノマーのいずれかを用いた熱開始沈殿重合により製造されたMIPおよびNIPポリマー(例えば、実施例14および15参照)を、5−クロロ−6,7−ジメトキシ−1−メチルイサチンテンプレート(例えば、実施例13参照)と、類似のジスルフィド架橋ピペラジンジオン環系を含むスポリデスミン分子の類似体であるグリオトキシン(Sigma−Aldrich、米国ミズーリ州セントルイス)とに対して、化学的相互作用を介した液体または半液体媒体からのテンプレートおよびグリオトキシンマイコトキシンの除去について検査した。製造されたMIPおよびNIPは、本明細書では、捕捉の親和力の差を示すために用いた。MIP/NIP材料400mgをコハク色のショット瓶に量り取り、検査される分析物の検量線用溶液100mLを添加して、媒体中の捕捉剤の含有率0.4g/Lを得ることにより、捕捉実験を実施した。MIP材料を含有しないブランク試料および、5−クロロ−6,7−ジメトキシ−1−メチルイサチンテンプレートまたはグリオトキシンのいずれかを含有する陽性対照と共に、調製を実施した。pH4.0に調整された50mMクエン酸塩緩衝液中で、捕捉検査を実施した。試料は全て、37℃の温度に保持された150rpmのオービタルロータリーシェーカー(Brunswick、米国イリノイ州シャンペーン)で90分間インキュベートした。500;1,000;1,500;2,000;2,500パートパービリオン(ppb)または1,000;2,000;3,000;4,000;5,000という5種の最終濃度の5−クロロ−6,7−ジメトキシ−1−メチルイサチンテンプレートまたはグリオトキシンを、その系で検査した。インキュベーション後に、調製物を10,000rpmで10分間遠心分離した。上清をコハク色のシラン化HPLCバイアルに採取して、マイコトキシンまたはテンプレートとバイアルとの任意の相互作用を予防し、標準法に従い、フォトダイオードアレイ検出器シグナル(例えば、マイコトキシンおよび捕捉されたマイコトキシンの量を検出するため)に連結されたHPLC(Alliance, Waters Corp.,米国マサチューセッツ州ミルフォード)から計算した。グリオトキシンのHPLC分析は、アセトニトリル/酢酸/トリフルオロ酢酸(34.9:65:0.1、v/v)の混合物を移動相として用いて実施した。5−クロロ−6,7−ジメトキシ−1−メチルイサチンテンプレートの検出のためのHPLC法は、アセトニトリル/水/メタノール(45:45:10、v/v)の混合物からなるスポリデスミン分析の標準的溶出パラメータに従って選択した。全波長走査でのUVフォトダイオードアレイにより、検出を実施した(268.1nmがグリオトキシンの最適シグナルを与え;258.8nmがテンプレートの最適シグナルを与えた)。
【0202】
結果から、MIP#519−98および#519−101ならびにNIP#519−99および#519−10Xが、pH4.0での吸着剤の含有レベル0.4%では、500〜2,500ppbで検査されたグリオトキシンと90.8%を超えて相互作用しうることが示された(表8参照)。5−クロロ−6,7−ジメトキシ−1−メチルイサチンテンプレートの吸着も検討したところ、吸着剤の含有レベル0.4%では、pH4の媒体中に存在するテンプレート分子のテンプレート濃度1,000〜5,000ppbで、MIP#519−98および#519−101ならびにNIP#519−99および#519−10Xに対して94.9%を超える親和力を与えた(表8)。つまり幾つかの実施形態において、本発明は、トルエン中の合成MIPが両者とも、スポリデスミン類似体(例えば、グリオトキシンおよび5−クロロ−6,7−ジメトキシ−1−メチルイサチンテンプレート)の吸着に好適であり、2−ビニルピリジンのモノマーを用いて、pH4.0の下、4g/Lの含有率で添加された場合に合成されたMIP#519−101でわずかに有利であり、捕捉に関する親和力が、グリオトキシンおよび5−クロロ−6,7−ジメトキシ−1−メチルイサチンテンプレートでそれぞれ97.82±4.25%および95.85±1.25%までであった。MIPとNIPとの差は、調製された配合物にいずれについても最小限であった。
【0203】
【表8】

【0204】
〔実施例18:スポリデスミン類似体の捕捉についてのMIPの量の滴定〕
滴定実験を実施して、0.1g/L〜1.00g/L(または含有率0.01〜0.1%)のMIPの含有率を検討した。MIP材料を含有しないブランク試料および、検査される5−クロロ−6,7−ジメトキシ−1−メチルイサチンテンプレートまたはグリオトキシンのいずれかのみを含有する陽性対照と共に、調製を実施した。pH4.0に調整された50mMクエン酸塩緩衝液中で、捕捉検査を実施した。試料は全て、37℃の温度に保持された150rpmのオービタルロータリーシェーカー(Brunswick、米国イリノイ州シャンペーン)で90分間インキュベートした。最終容量100mL中の1,000;2,000;3,000;4,000;5,000ppbという5種の最終濃度の5−クロロ−6,7−ジメトキシ−1−メチルイサチンテンプレートまたはグリオトキシンを、その系で検査した。インキュベーション後に、マイクロ遠沈管を10,000rpmで10分間遠心分離した。上清をコハク色のシラン化HPLCバイアルに採取して、分析物とバイアルとの任意の相互作用を予防し、標準法に従い、ダイオードアレイ検出器シグナルに連結されたHPLC(Alliance, Waters Corp.,米国マサチューセッツ州ミルフォード)から計算した(例えば、実施例17参照)。
【0205】
【表9】

【0206】
図14、表9および表10に示された通り、幾つかの実施形態において、例えば吸着剤の含有レベル0.05g/Lでは、本発明は、捕捉値が70%を超える最適有効性を示し、それは0.10g/Lでの捕捉率がほぼ90%に達した。つまり幾つかの実施形態において、本発明は、メタクリル酸を用いて合成されたMIP/NIPが、スポリデスミン類似体(例えば、グリオトキシンおよび5−クロロ−6,7−ジメトキシ−1−メチルイサチンテンプレート(例えば、pH4.0の下、0.01〜0.1g/Lの含有率で添加された場合))の吸着については、2−ビニルピリジンを用いて合成されたMIP/NIPよりも好適であるということを示す。しかし、低温およびUV開始重合で合成されたNIPが吸着剤の含有レベル10〜15%で吸着値が上昇したことを除き、MIPとNIPとの差は、調製された配合にいずれについても最小限であった。
【0207】
【表10】

【0208】
〔実施例19:スポリデスミン類似体に対する異なるMIPおよびNIPの親和力ならびに特異性の特徴づけ〕
熱開始沈殿重合で用いられる溶媒としてのトルエン中で合成された異なるNIP/MIPの親和力を評価するために、本発明の実施形態の開発時に実験を実施した。製造されたMIPは、本明細書では、スポリデスミン類似体(例えば、グリオトキシンおよび5−クロロ−6,7−ジメトキシ−1−メチルイサチンテンプレート)の捕捉の親和力の差を示すため、そして材料の特異性を評価するために用いた。MIP 30mg量を、シラン化ポリエチレン固相抽出フリットを取り付けたSEP−PAKカラムに入れた。水性溶媒中の分析物の安定性を確保するため、そして分析物とガラスバイアルとの任意の特異的相互作用を防ぐために、シラン化ガラスバイアルを用いた。シラン化の方法を、当該技術分野で一般に用いられる方法に基づいて、ナイロンおよびPTFE/PEフィルターおよび試験管に適用した。MIP材料を含有しないブランク試料、および5−クロロ−6,7−ジメトキシ−1−メチルイサチンテンプレートまたはグリオトキシンのいずれかを含有する陽性対照と共に、調製を実施した。5−クロロ−6,7−ジメトキシ−1−メチルイサチンテンプレートまたはグリオトキシンの溶液 1mLを材料 30mgでろ過することにより、MIPの含量率 0.1g/Lに相当するよう、固相抽出類似(SPE類似)ろ過装置を製作した。バイアルおよびフィルターにシラン化試薬(SURFASIL)を充填するか、またはそれらをシラン化試薬と共に浸漬させることにより、それらを調製した(例えば、実施例9参照)。SPE類似ろ過装置に、2,000ppbの単一濃度で用いられた5−クロロ−6,7−ジメトキシ−1−メチルイサチンテンプレートまたはグリオトキシンいずれかの1mL溶液をロードした。試料と共に、対照の検量線用溶液を保持した。試料および対照を両者とも、間欠的に振とうさせながら37℃で2分間インキュベートした。インキュベーション時間の後、試料をシリンジを通して押し出し、15mL遠沈管に採取して、10,0000gで10分間遠心分離した。上清をコハク色のシラン化HPLCバイアルに採取して、分析した。標的分子の脱離の特異性を評価するために、MIPポリマーを含む材料で6回の洗浄ステップを実施した。洗浄液をそれぞれ15mLの遠沈管に採取して、HPLCでの分析前に10,0000gで10分間遠心分離した。50mMクエン酸塩緩衝液での最初の洗浄と、それぞれ水中の20、40、60、80、100%メタノール(v/v)での5回の連続洗浄とを含む、濃度を上昇させた有機溶媒での洗浄を6回実施した。実験では、これまでに熱開始沈殿重合させたMIP#519−98および#519−101ならびにNIP#519−99および#519−10X(粉末形態)を、低温およびUV重合で生成された#519−47および#519−47Xとして同定されたMIPおよびNIPの結晶形態と共に用いた(例えば、実施例5参照)。上清をコハク色のシラン化HPLCバイアルに採取して、マイコトキシンまたはテンプレートとバイアルとの任意の相互作用を予防し、標準法に従い、蛍光分光およびフォトダイオードアレー検出器シグナル(例えば、マイコトキシンおよび捕捉されたマイコトキシンの量を検出するため)に連結されたHPLC(Alliance, Waters Corp.,米国マサチューセッツ州ミルフォード)から計算した。アセトニトリル/酢酸/トリフルオロ酢酸(34.9:65:0.1、v/v)の混合物を移動相として用いて、グリオトキシンのHPLC分析を実施した。5−クロロ−6,7−ジメトキシ−1−メチルイサチンテンプレートを検出するためのHPLC法は、アセトニトリル/水/メタノール(45:45:10、v/v)の混合物からなるスポリデスミン分析の標準的溶出パラメータに従って選択した。全波長走査でのU.V.フォトダイオードアレイにより、検出を実施した(268.1nmがグリオトキシンの最適シグナルを与え;258.8nmがテンプレートの最適シグナルを与えた)。
【0209】
結果から(図15および表11参照)、グリオトキシンの吸着については、40%メタノールでの洗浄時に、MIP#519−101および#519−98が、各NIP#519−10Xおよび#519−99に比較して低い脱離値を有することが示された。しかし、60%を超えるメタノールを含む洗浄液は、捕捉されたグリオトキシンのほぼ全量を除去することができた。幾つかの実施形態において、2−ビニルピリジンのモノマーを用いて合成されたMIP#519−101は、20%メタノールを用いた洗浄を系に適用した場合に、対応するNIP#519−10X、NIP#519−99、MIP#519−98、NIP#519−47XおよびMIP519−47よりも高い特異性を有した。ポリマー519−47Xおよび519−47は、25%を超えるグリオトキシンを吸着することができなかった。緩衝洗浄液の適用は、任意の吸着されたグリオトキシンを除去することができた。
【0210】
結果から(図16および表11参照)、20および40%メタノールで洗浄した場合、MIP#519−101が、各NIP#519−10Xに比較して低い脱離値を有することが示された。しかし、MIP#519−98およびNIP#519−99は、5−クロロ−6,7−ジメトキシ−1−メチルイサチンテンプレートの吸着への特異性に差がなく、特異性は同等であった。しかし、60%を超えるメタノールを含む洗浄液は、捕捉された5−クロロ−6,7−ジメトキシ−1−メチルイサチンテンプレートのほぼ全量を除去することができた。幾つかの実施形態において、そしてグリオトキシンで見出された通り、20および40%メタノールを用いた洗浄を系に適用した場合に、2−ビニルピリジンのモノマーを用いて合成されたMIP#519−101は、対応するNIP#519−10X、NIP#519−99、MIP#519−98、NIP#519−47XおよびMIP519−47よりも高い特異性を有した。ポリマー519−47Xおよび519−47は、MIP化合物に好適となる捕捉特異性の差を示した。しかし、5−クロロ−6,7−ジメトキシ−1−メチルイサチンテンプレートの吸着率が50%を下回っていたにもかかわらず、それはグリオトキシンで見出されたものよりも良好な親和力を示しており、5−クロロ−6,7−ジメトキシ−1−メチルイサチンテンプレートについてはMIPでより良好な特異性が示された。
【0211】
【表11】

【0212】
〔実施例20:マイコトキシンに対するMIPの捕捉能−スポリデスミンへの適用〕
化学的相互作用を介した液体または半液体媒体からのスポリデスミン(A93%;B、D、E2〜17%)マイコトキシンの除去について、トルエン中の2−ビニルピリジンモノマーを用いて製造されたMIPポリマー(例えば、実施例15参照)を、スポリデスミン(AgResearch Limited, Ruakura Research Centre、ニュージーランド、ハミルトン)に対して検査した。製造されたMIPは、捕捉の親和力を特徴づけるため、そして材料の特異性を評価するために用いた。MIP材料 50および400mgをショット瓶に量り取り、スポリデスミン混合物の検量線用溶液 100mLを添加して、媒体中の吸着剤の含有率 0.5および4.0g/Lを得ることにより、捕捉実験を実施した。MIP材料を含有しないブランク試料および、スポリデスミンのみを含有する陽性対照と共に、調製を実施した。こぶ胃の生理学的条件に適合するpH6.0に調整された50mMコハク酸塩緩衝液中で、捕捉検査を実施した。試料は全て、37℃の温度に保持された150rpmのオービタルロータリーシェーカーで90分間インキュベートした。500;1,000;2,000ppbという3種の最終濃度のスポリデスミンを、その系で検査した。インキュベーション後に、調製物を10,000rpmで10分間遠心分離した。上清をHPLCバイアルに採取して、標準法に従い、UV検出器シグナル(例えば、マイコトキシンおよび捕捉されたマイコトキシンの量を検出するため)に連結されたHPLCから計算した。スポリデスミンの検出のためのHPLC法では、アセトニトリル/水/メタノール(45:45:10、v/v)の混合物を用いて、分析物およびC18カラム(4.6mm×25cm)の溶出を実施した。UV検出器で検出を実施した(280nmは、スポリデスミンの最適シグナルを与えた)。
【0213】
500;1,000;および2,000ppbで存在するスポリデスミンの含有率0.5g/Lで用いられた場合、MIP#519−98生成物は、80.5〜85.7%吸着し、含有率4g/Lで利用された場合には98.5%を超えた(例えば、表12参照)。反復による変動は、吸着率の1%未満を占めた。含有率0.5g/Lでは、スポリデスミンの検討された範囲全体で吸着率の低下が得られ、わずかな飽和作用を観察することができた。
【0214】
【表12】

【0215】
本明細書に挙げられた発行物および特許は全て、参照により本明細書に組み入れられる。本明細書に記載された組成物および方法の様々な改良および変更は、本発明の範囲および精神を逸脱せず、当業者には明白となろう。本発明を特定の好ましい実施形態に関連して記載したが、特許請求の範囲に記載された発明をそのような特定の実施形態に不当に限定すべきではないことを理解しなければならない。事実、本発明を実施するために記載された様式の様々な改良が、関連の分野の当業者には自明であり、それらは本発明の範囲に含まれるものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイコトキシンテンプレートを用いて合成された分子鋳型ポリマーを含む、組成物。
【請求項2】
前記マイコトキシンテンプレートが、オクラトキシンテンプレートである、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
前記オクラトキシンテンプレートが、N−(2−ヒドロキシ−3,5−ジクロロベンゾイル)−L−フェニルアラニンである、請求項2記載の組成物。
【請求項4】
前記マイコトキシンテンプレートが、スポリデスミンテンプレートである、請求項1記載の組成物。
【請求項5】
前記スポリデスミンテンプレートが、5−クロロ−6,7−ジメトキシ−1−メチルイサチンである、請求項4記載の組成物。
【請求項6】
前記スポリデスミンテンプレートが、エチル3−ヒドロキシ−6,7−ジメトキシ−2−インドロン−3−カルボキシラート、6,7−ジメトキシイサチン、および6,7−ジメトキシ−1−メチルイサチンからなる群より選択される、請求項4記載の組成物。
【請求項7】
a)i.マイコトキシンテンプレートと、
ii.1種以上のモノマーおよび1種以上の架橋剤と、
を提供すること、ならびに
b)前記マイコトキシンテンプレートの存在下にて、前記1種以上のモノマーおよび前記1種以上の架橋剤の重合が可能な条件下で、前記マイコトキシンテンプレートを前記1種以上のモノマーおよび前記1種以上の架橋剤と接触させること、
を含む、分子鋳型ポリマーを生成させる方法。
【請求項8】
前記マイコトキシンテンプレートが、N−(2−ヒドロキシ−3,5−ジクロロベンゾイル)−L−フェニルアラニンである、請求項7記載の方法。
【請求項9】
前記マイコトキシンテンプレートが、5−クロロ−6,7−ジメトキシ−1−メチルイサチンである、請求項7記載の方法。
【請求項10】
前記1種以上のモノマーが、2−ビニルピリジン、2−ヒドロキシエチルメタクリラートおよびメタクリル酸からなる群より選択される、請求項7記載の方法。
【請求項11】
前記1種以上の架橋剤が、エチレングリコールジメタクリラートを含む、請求項7記載の方法。
【請求項12】
前記重合が、55〜110℃の温度の有機溶媒中でフリーラジカルを形成させることにより開始される、請求項7記載の方法。
【請求項13】
前記フリーラジカルが、アゾイソブチロニトリル(AIBN)の熱開始分解により形成される、請求項12記載の方法。
【請求項14】
前記有機溶媒が、トルエン、シクロヘキサン、アセトニトリル、ポリビニルアルコール(PVA)/水溶液、ならびにトルエン、シクロヘキサン、アセトニトリル、およびPVA/水溶液のうちの2種以上の混合物からなる群より選択される、請求項12記載の方法。
【請求項15】
前記温度が、55〜75℃である、請求項12記載の方法。
【請求項16】
前記マイコトキシンテンプレートが、前記1種以上のモノマーおよび前記1種以上の架橋剤の重合後に前記分子鋳型ポリマーから除去される、請求項7記載の方法。
【請求項17】
有機溶媒、緩衝液、水およびそれらの組み合わせからなる群より選択される溶液での1回以上の洗浄を利用して、前記分子鋳型ポリマーから前記マイコトキシンテンプレートを除去する、請求項16記載の方法。
【請求項18】
前記有機溶媒が、エチルアルコール、メチルアルコール、アセトニトリル、トルエン、およびそれらの混合物からなる群より選択される、請求項17記載の方法。
【請求項19】
前記緩衝液が、水酸化ナトリウム、クエン酸、コハク酸および酢酸を反応させることにより調製された緩衝液である、請求項17記載の方法。
【請求項20】
前記水が、脱イオン水である、請求項17記載の方法。
【請求項21】
前記分子鋳型ポリマーが、前記1回以上の洗浄の後に乾燥される、請求項17記載の方法。
【請求項22】
前記分子鋳型ポリマーの、20〜90℃の温度への曝露を利用して、前記分子鋳型ポリマーを乾燥させる、請求項21記載の方法。
【請求項23】
前記温度が、60〜80℃である、請求項22記載の方法。
【請求項24】
前記温度が、75〜80℃である、請求項23記載の方法。
【請求項25】
a)i)マイコトキシンを含む材料と、
ii)マイコトキシンテンプレートの存在下で1種以上のモノマーおよび1種以上の架橋剤の重合により生成された分子鋳型ポリマーと、
を提供すること、ならびに
b)前記分子鋳型ポリマーを前記マイコトキシンに結合することが可能な条件下で、前記分子鋳型ポリマーを、マイコトキシンを含む前記材料と接触させること、
を含む、材料からマイコトキシンを捕捉する方法。
【請求項26】
前記材料からオクラトキシンAを捕捉する、請求項25記載の方法。
【請求項27】
前記材料からスポリデスミンを捕捉する、請求項25記載の方法。
【請求項28】
マイコトキシンを含む前記材料が、飲料、食物原料、動物飼料、医薬組成物、栄養組成物、化粧品組成物、および生命を維持するのに必要な物質からなる群より選択される、請求項25記載の方法。
【請求項29】
前記生命を維持するのに必要な物質が、水産養殖に使用される媒体、および酸素を含む気体試料からなる群より選択される、請求項28記載の方法。
【請求項30】
マイコトキシンに結合された分子鋳型ポリマーが、マイコトキシンを含む前記材料から分離されていない、請求項25記載の方法。
【請求項31】
更に、c)マイコトキシンを含む前記材料から、マイコトキシンに結合された分子鋳型ポリマーを分離することを含む、請求項25記載の方法。
【請求項32】
前記分離が、マイコトキシンを含む前記材料から、マイコトキシンに結合された前記分子鋳型ポリマーを抽出、濃縮および単離することを含む、請求項31記載の方法。
【請求項33】
前記分離が、クロマトグラフィーまたは分離用のカラムもしくはカートリッジ内で行われる、請求項32記載の方法。
【請求項34】
分離の後、前記分子鋳型ポリマーに結合されたマイコトキシンが、洗浄により前記分子鋳型ポリマーから除去される、請求項32記載の方法。
【請求項35】
前記マイコトキシンが、前記分子鋳型ポリマーから除去された後に定性的および定量的に分析される、請求項34記載の方法。
【請求項36】
定量分析および定性分析が、トレーサビリティに利用される、請求項35記載の方法。
【請求項37】
マイコトキシンが除去された前記分子鋳型ポリマーが再使用されて、マイコトキシンを含む材料からマイコトキシンを捕捉する、請求項34記載の方法。
【請求項38】
前記分子鋳型ポリマーが、その重量よりも1〜10倍多い水を吸着する、請求項25記載の方法。
【請求項39】
前記分子鋳型ポリマーが、その重量よりも1〜5倍多い水を吸着する、請求項38記載の方法。
【請求項40】
前記分子鋳型ポリマーが、その重量よりも1〜2倍多い水を吸着する、請求項38記載の方法。
【請求項41】
前記材料から2種以上の特異的マイコトキシンを捕捉するために、2種以上の異なる分子鋳型ポリマーを、マイコトキシンを含む前記材料と接触させる、請求項25記載の方法。
【請求項42】
a)3,5−ジクロロサリチル酸を2−アセトキシアセトキシ−3,5−ジクロロ安息香酸に変換すること;
b)2−アセトキシアセトキシ−3,5−ジクロロ安息香酸を2−アセトキシアセトキシ−3,5−ジクロロ安息香酸クロリドに変換すること;
c)2−アセトキシアセトキシ−3,5−ジクロロ安息香酸クロリドをL−フェニルアラニンエチルエステルと反応させて、N−(2−アセトキシ−3,5−ジクロロベンゾイル)−L−フェニルアラニンを形成させること;および
d)N−(2−アセトキシ−3,5−ジクロロベンゾイル)−L−フェニルアラニンをN−(2−ヒドロキシ−3,5−ジクロロベンゾイル)−L−フェニルアラニンに変換すること、
を含む、N−(2−ヒドロキシ−3,5−ジクロロベンゾイル)−L−フェニルアラニンを合成する方法。
【請求項43】
前記変換が、N−(2−アセトキシ−3,5−ジクロロベンゾイル)−L−フェニルアラニン内のエステル官能基を加水分解させることを含む、請求項42記載の方法。
【請求項44】
a)2,3−ジメトキシ安息香酸を2,3−ジメトキシ−N−tert−ブトキシカルボニルアニリンに変換すること;
b)2,3−ジメトキシ−N−tert−ブトキシカルボニルアニリンを2,3−ジメトキシアニリンに変換すること;
c)2,3−ジメトキシアニリンをジエチルケトマロナートと反応させて、エチル6,7−ジメトキシ−3−ヒドロキシ−3−(2−インドロン)−カルボキシラートを形成させること;
d)エチル6,7−ジメトキシ−3−ヒドロキシ−3−(2−インドロン)−カルボキシラートを6,7−ジメトキシイサチンに変換すること;
e)6,7−ジメトキシイサチンを6,7−ジメトキシ−1−メチルイサチンに変換すること、および
f)6,7−ジメトキシ−1−メチルイサチンを5−クロロ−6,7−ジメトキシ−1−メチルイサチンに変換すること、
を含む、5−クロロ−6,7−ジメトキシ−1−メチルイサチンを合成する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公表番号】特表2013−503251(P2013−503251A)
【公表日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−527045(P2012−527045)
【出願日】平成22年8月27日(2010.8.27)
【国際出願番号】PCT/US2010/047032
【国際公開番号】WO2011/031562
【国際公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【出願人】(505404655)オルテック インコーポレイテッド (7)
【Fターム(参考)】