説明

合成擬革、その製造方法、プレポリマーおよび接着剤組成物

【課題】有機溶剤や水を使用することなく、蒸発除去に要するエネルギー消費量を低減し、さらには20℃〜80℃で取り扱うことにより加熱に要するエネルギー消費量も低減し、大気中への揮発性有機物の放出も殆ど起こらない環境対応型の接着剤を用いる合成擬革を提供すること。
【解決手段】基材と接着剤層と表皮層とからなり、該接着剤層が、ラジカル重合性不飽和基と、水酸基とを含有し、ラジカル重合性不飽和基の不飽和当量が、4,000〜200,000である光重合性ウレタンプレポリマーからなることを特徴とする合成擬革。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成擬革(人工皮革、合成皮革、レザー)およびその製造方法に関し、さらに詳しくは環境に対して影響が大きい有機溶剤、および水を使用しない実質的に不揮発分100%のウレタンプレポリマーを接着剤成分として用い、溶剤の蒸発除去に伴うエネルギー消費量の低減がなされる環境対応型の合成擬革およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来合成擬革の製造に使用される環境対応型ウレタン樹脂としては、例えば、水系タイプ、TPUタイプ、ホットメルトタイプ、NCO基ブロックタイプなどが存在し、基材と表皮層とを貼り合わせる接着剤には、水系タイプ(特許文献1)、ホットメルトタイプ(特許文献2)、NCO基ブロックタイプ(特許文献3)が公知である。
【特許文献1】特開2002−088662号公報
【特許文献2】特開2003−049147号公報
【特許文献3】特開2006−070058号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、上記において、水系接着剤は、水の蒸発除去に伴うエネルギー消費量が高く、ホットメルトタイプの接着剤は、120〜150℃の高温加熱が必要であり相当のエネルギー消費量を伴う。また、NCO基ブロックタイプの接着剤は、接着剤硬化時にブロック剤が解離し、解離したブロック剤が放出されるという問題を残す。
【0004】
従って本発明の目的は、有機溶剤や水を使用することなく、蒸発除去に要するエネルギー消費量を低減し、さらには20℃〜80℃で取り扱うことにより加熱に要するエネルギー消費量も低減し、大気中への揮発性有機物の放出も殆ど起こらない環境対応型の接着剤を用いる合成擬革およびその製造方法などを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的は以下の本発明によって達成される。すなわち、本発明は、基材と接着剤層と表皮層とからなり、該接着剤層が、ラジカル重合性不飽和基と、水酸基とを含有し、ラジカル重合性不飽和基の不飽和当量が、4,000〜200,000である光重合性ウレタンプレポリマーからなることを特徴とする合成擬革を提供する。
【0006】
上記においてウレタンプレポリマーが、実質的に不揮発分100%でかつ20〜80℃で液状であること;ウレタンプレポリマーの水酸基価が、5〜200mgKOH/gであること;ラジカル重合性不飽和基が、イソシアネート基含有(メタ)アクリレート由来であること;および接着剤が、上記のウレタンプレポリマー100質量部に対し、多官能性不飽和基含有反応性モノマー0.5〜50質量部、光重合開始剤0.1〜10質量部およびNCO含有率が5〜30質量%のポリイソシアネート架橋剤2〜30質量部からなることが好ましい。
【0007】
また、本発明は、表皮層表面(離型紙に接している面の反対側の面)に、上記の接着剤を塗布し、該接着剤を活性エネルギー線により硬化させた後、該接着剤層面に基材を積層し、加熱熟成して上記接着剤を架橋硬化させることを特徴とする合成擬革の製造方法を提供する。
【0008】
また、本発明は、ラジカル重合性不飽和基と、水酸基とを含有し、ラジカル重合性不飽和基の不飽和当量が、4,000〜200,000であることを特徴とする光重合性ウレタンプレポリマーを提供する。該ウレタンプレポリマーは、実質的に不揮発分100%でかつ20〜80℃で液状であること;およびラジカル重合性不飽和基が、イソシアネート基含有(メタ)アクリレート由来であることが好ましい。
【0009】
また、本発明は、上記のウレタンプレポリマー100質量部に対し、多官能性不飽和基含有反応性モノマー0.5〜50質量部、光重合開始剤0.1〜10質量部およびNCO含有率が5〜30質量%のポリイソシアネート架橋剤2〜30質量部からなることを特徴とする接着剤組成物を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、有機溶剤や水を使用することなく、蒸発除去に要するエネルギー消費量を低減し、さらには20℃〜80℃で取り扱うことにより加熱に要するエネルギー消費量も低減し、大気中への揮発性有機物の放出も殆ど起こらない環境対応型の接着剤を用いる合成擬革およびその製造方法などを提供することができる。
【0011】
本発明者等は、前記目的を達成するうえにおいて、20〜80℃で液状である固形分ほぼ100質量%のラジカル重合性不飽和基を含有するウレタンプレポリマーを接着剤として使用し、表皮層を、不織布、織物、編み物などの基材と貼り合わせる前に、活性エネルギー線の照射で接着剤が当該基材に含浸しない程度の架橋被膜を形成させ、基材と貼り合わせた後に上記プレポリマーの高分子量化を行って合成擬革を作製する工程を見出した。
【0012】
一般にウレタンプレポリマーを固形分100%で20℃において液状に設定するには、20℃で非結晶体のポリオールやジイソシアネート化合物を使用し、かつ分子量を短くする制約があり、このようにして得られたプレポリマーをそのままの状態で接着剤として塗工すると短分子由来の上記プレポリマーの流動性により、塗膜の流れ現象が起こり、また、プレポリマーの基材への過度の含浸から表皮層と基材との接着強度の低下や合成擬革の硬化を引き起こす。
【0013】
従って表皮層へ接着剤をコーティングした後、該表皮層を基材に貼り合わせるまでの短時間の間に、基材との貼り合わせに好適な膜を表皮層表面に形成させる必要があるが、本発明者等は、接着剤用ウレタンプレポリマーにラジカル反応機構を導入することによってこの問題を解決した。
【0014】
すなわち、本発明では、表皮層に塗工されたウレタンプレポリマー(接着剤)をラジカル反応による従来の架橋構造で短分子由来のプレポリマーの流動性を抑制し、表皮層表面に好適な接着剤膜に仕上げた後に、該表皮層を上記接着剤により基材と貼り合わせる工程を取り入れた。表皮層を基材に貼り合わせた後、上記プレポリマーの水酸基或はウレタン基とポリイソシアネート架橋剤とを反応させる方法で、プレポリマー(接着剤)を高分子量化することにより優れた合成擬革を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
次に好ましい実施の形態を挙げて本発明をさらに詳しく説明する。本発明では、合成擬革の製造において、表皮層を基材と貼り合わせる前に、表皮層に塗布した接着剤組成物をラジカル架橋反応させ、表皮層を基材に貼り合せた後、接着剤層を架橋反応(高分子量化)させる二段階硬化を行うことにより、20〜80℃において液状の無溶剤プレポリマーを接着剤として使用して、高剥離強度かつ柔軟性に優れる合成擬革が得られる。
【0016】
表皮層表面に接着剤層を形成する場合には、上記プレポリマーの他に、さらに多官能性不飽和基含有反応性モノマー、光重合開始剤およびポリイソシアネート架橋剤などを含む接着剤組成物を表皮層表面に塗布し、該接着剤層を紫外線や電子線などの活性エネルギー線を照射して基材との貼り合わせに好適な架橋被膜を形成する。その後表皮層を基材と貼り合わせ、熟成工程(例えば、60℃/5日)により、基材との接着性に優れる接着剤層を形成し、剥離強度と風合いに優れる合成擬革を得ることができる。
【0017】
本発明では、不飽和基含有ウレタンプレポリマーには、多官能性不飽和基含有反応性モノマーを混合することが好ましい。すなわち、ウレタンプレポリマーへの不飽和基導入に伴う該プレポリマーの粘度上昇を抑え、該プレポリマーを用いて表皮層面に基材との貼り合わせに好適な接着剤層膜を形成させるためには、上記プレポリマーの架橋に加え、反応性モノマーでの架橋補足が必要であり、反応性モノマーの混合量を変えることで、表皮層と基材との接着強度や風合いの調整が可能となる。接着剤組成物の好ましい組成は、ラジカル重合性不飽和基を有する光重合性ウレタンプレポリマー100質量部に対し、多官能性不飽和基含有反応性モノマー0.5〜50質量部、光重合開始剤0.1〜10質量部およびNCO含有率が5〜30質量%のポリイソシアネート架橋剤2〜30部である。
【0018】
上記プレポリマーは、活性エネルギー線で架橋可能なラジカル重合性不飽和基を分子内に有するプレポリマーであれば特に限定されない。また、不飽和当量より理論的に不飽和基を含まないプレポリマーが混在しても、プレポリマー全体として本発明の不飽和当量の範囲内であれば特に問題とならない。上記の不飽和当量は、4,000〜200,000の範囲であることが必要である。なお、ここでいう不飽和当量とは、不飽和結合1個あたりのウレタンプレポリマーの理論分子量を意味している。
【0019】
好ましい不飽和基含有プレポリマーとしては、ラジカル重合性不飽和基として、例えば、アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニルエーテル基、アリル基などの不飽和基を有するプレポリマーが挙げられる。好ましいプレポリマーは、アクリロイル基またはメタクリロイル基を有するプレポリマーである。
【0020】
上記プレポリマーの数平均分子量は1,500〜10,000が好ましく、特に3,000〜6,000が好ましい。数平均分子量が1,500未満では、接着剤の塗工後に液流れ現象が発生し均一な被膜を形成することができない。一方、数平均分子量が10,000を超えると、常温では、接着剤が固形化して接着剤の塗布時に接着剤の高温加熱が必要となり、エネルギー消費量が増大するために好ましくない。
【0021】
前記プレポリマーは、分子鎖内に不飽和結合を有するウレタンプレポリマーであり、20〜80℃で液状となることを特徴とするが、特に粘度で規定されるものではない。
【0022】
前記プレポリマーを製造する際に使用可能なポリオールとしては、例えば、ポリカーボネート系ポリオール、ポリエーテル系ポリオール、ポリエステル系ポリオール、ポリオレフィン系ポリオール、ブタジエン系ポリオール、ポリアクリルポリオール、油脂変性ポリオール、シリコーン変性ポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリバレロラクトンポリオールなど、またはこれらの混合物が挙げられるが、プレポリマーに20〜80℃での流動性を与えるために、ポリオールとして20℃において液状をなすポリオールまたは当該ポリオールの混合で液状をなす組成とすることが好ましい。また、プレポリマーには、高分子量化被膜の強度と耐久性能の向上のために、短鎖グリコールを共重合させることができる。
【0023】
前記プレポリマーを製造する際に使用可能なイソシアネート化合物としては、例えば、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4−または2,6−トリレンジイソシアネート、1,5−ナフチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、ジフェニルエーテルジイソシアネート、ジフェニルスルホンジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネートや1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンメチルエステルジイソシアネート、メチレンジイソシアネート、イソプロピレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、1,5−オクチレンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネートなどの脂肪族、およびイソホロンジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、4,4’−メチレンジシクロヘキシルジイソシアネート、水添トリレンジイソシアネート、イソプロピリデンジシクロヘキシル−4,4’−ジイソシアネートなどの脂環族ジイソシアネートなどが挙げられる。
【0024】
プレポリマーに20〜80℃での流動性を与えるために、20〜80℃で非結晶体の1,6−ヘキサンジイソシアネート、イシホロンジイソシアネート、4,4’−メチレンジシクロヘキシルジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート/2,6−トリレンジイソシアネート=80/20(以下TDI(−80)と記載)などが好ましい。
【0025】
前記プレポリマーを製造する際に使用可能なポリエーテル系ポリオールとしては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレンポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリヘキサメチレンエーテルグリコールなどの他、低分子ポリオールやグリコール類とエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、テトラヒドロフランなどの単独または混合物から公知の方法により付加重合することで得られる共重合体などが挙げられるが、プレポリマーに20〜80℃での流動性を与えるために、20℃において液状をなすポリオールまたは当該ポリオールとの混合で液状をなす組成とすることが好ましい。
【0026】
前記短鎖グリコール類としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、ネオペンチルグリコールなどの脂肪族グリコール、ビスヒドロキシメチルシクロヘキサン、シクロヘキサン−1,4−ジオールなどの脂環族グリコール、キシリレングリコールなどの芳香族グリコールなどが挙げられる。
【0027】
前記プレポリマーを製造する際に使用可能なポリカーボネート系ポリオールとしては、例えば、前記短鎖グリコール類とジアルキルカーボネートやアルキレンカーボネートなどの単独または混合物との縮合反応により得られるポリオールなどが挙げられるが、プレポリマーに20〜80℃での流動性を与えるために、20℃において液状をなすポリオールまたは当該ポリオールとの混合で液状をなす組成とすることが好ましい。
【0028】
前記プレポリマーを製造する際に使用可能なポリエステル系ポリオールとして、例えば、前記短鎖グリコール類と二塩基酸との縮合物の他、前記ポリオール類、前記グリコール類を開始剤としてラクトンを開環重合させて得られるポリラクトンジオール、ポリカプロラクトンジオール、ポリメチルバレロラクトンジオールなどのラクトン系ポリオールなどが挙げられる。前記二塩基酸としてはコハク酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、フマル酸、マレイン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、酒石酸、シュウ酸、マロン酸、ピメリン酸、スベリン酸、グルタコン酸、アゼライン酸、1,4−シクロヘキシルジカルボン酸、α−ハイドロムコン酸、β−ハイドロムコン酸、α−ブチル−α−エチルグルタル酸、α,β−ジエチルサクシン酸などの単独または二種以上が挙げられるが、プレポリマーに20〜80℃での流動性を与えるために、20℃において液状をなすポリオールまたは当該ポリオールとの混合で液状をなす組成とすることが好ましい。
【0029】
また、プレポリマー合成において、反応を促進させるため、従来公知のアミン系および有機金属系ウレタン反応触媒を単独または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0030】
前記プレポリマーは、ラジカル重合性不飽和基を有することが特徴であり、ラジカル重合性不飽和基を導入する方法は、末端水酸基プレポリマーを合成した後、同一分子内にイソシアネート基と不飽和基を含有する化合物を反応させる手法が挙げられる。同一分子内にイソシアネート基と不飽和基を含有する化合物としては、例えば、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート、2−アクリロイルオキシエチルイソシアネートなどが挙げられる。なお、この方法においては、得られるプレポリマー中には、後述のポリイソシアネート架橋剤により架橋が容易であるように、水酸基が残るように反応させる。プレポリマー中の好ましい水酸基価は5〜200mgKOH/gであり、より好ましくは10〜100mgKOH/gである。プレポリマーの水酸基価が5mgKOH/g未満ではプレポリマーの架橋性が不足し、一方、水酸基価が200mgKOH/gを超えると得られる接着剤膜の強度及び伸度が低下するためである。
【0031】
前記プレポリマーの不飽和当量は、4,000〜200,000の範囲とすることが必要で、特に10,000〜100,000とすることが好ましい。プレポリマーの不飽和当量が小さすぎると、接着剤として使用するときに、接着剤は高粘度になるので使用に際して高温加熱が必要となり、エネルギー消費量が増大するために好ましくない。また、不飽和当量が大きすぎると、不飽和基の導入による光重合性が充分に付与されないため、基材への接着剤の含浸が起こり、本発明の目的を達成できない場合がある。
【0032】
前記プレポリマー単独でも、表皮層と基材との貼り合わせは可能であるが、合成擬革としての製品価値を付与させるために、前記プレポリマーに反応性モノマーを加えて接着剤の架橋補足による基材との剥離強度と風合いの向上が必要である。
【0033】
本発明で使用される反応性モノマーとしては、従来から感光性樹脂の分野で使用されている多官能性不飽和基含有有機化合物がいずれも使用できるが、特に多官能性アクリルモノマーが適する。
【0034】
多官能性アクリル系モノマーとしては、例えば、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートおよびこれらの誘導体が挙げられる。
【0035】
本発明において使用される光重合開始剤は、光によりラジカルを発生し、不飽和基含有ウレタンポリマー、多官能性モノマーのラジカル重合を開始させるものが好ましく、感光性樹脂分野で従来公知のラジカル反応型光重合開始剤がいずれも使用でき、特に限定されない。例えば、ベンゾフェノン、アセトフェノン、ベンゾイソブチルエーテル、ベンゾインメチルエーテル、2,4−ジメチルチオキサントン、エチルアントラキノン、4,4’−ビスメチルアミノベンゾフェノン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、ベンジルジメチルケタールなどが挙げられる。
【0036】
これらの光重合開始剤は、使用する不飽和基含有ウレタンポリマーや多官能性モノマーのタイプに合わせて、単独または2種以上を組み合わせて使用することができる。光重合開始剤の使用量は特に限定されず、通常、紫外線や電子線などの活性エネルギー線で架橋させる不飽和基含有ポリマー100質量部あたり0.1〜10質量部程度の割合で使用される。
【0037】
また、使用目的によって、紫外線吸収剤、酸化防止剤、着色剤、難燃剤、シリカ、アルミナなどの無機フィラーなどを併用できる。
【0038】
次に、表皮層と基材との貼り合わせ後の接着剤の高分子量化架橋反応で使用する架橋剤としては、例えば、ポリイソシアネート(ブロック型を含む)架橋剤、メラミン架橋剤、エポキシ架橋剤、カルボジイミド架橋剤などが挙げられるが、特に本発明の塗料からなる塗膜の架橋方法は、水酸基やウレタン基との反応性を利用したポリイソシアネートによる架橋方法が好ましく、さらには大気中への揮発性有機物質の放出抑制を考慮し、非ブロック型とするのが好ましい。
【0039】
ポリイソシアネート架橋剤としては、従来から使用されている公知のものが使用でき特に限定されない。HDI、TDI、MDIなどのビュレットタイプ、イソシアヌレートタイプ、アダクトタイプ、変性液状タイプなどから、単独または2種以上を組み合わせて使用することができる。ポリイソシアネート架橋剤のNCO含有率は5〜30質量%が好ましく、特に15〜25%が好ましい。ポリイソシアネート架橋剤の使用量は特に限定されないが、ウレタンプレポリマー100質量部あたり2〜30質量部程度の割合で使用するのが好ましい。
【0040】
本発明では、上記組成の活性エネルギー線反応型接着剤用組成物を、離型紙上に形成されたポリウレタン表皮層上に塗工したうえで、100〜1,500mJ/cm2の紫外線または1〜10Mradの電子線などの活性エネルギー線を照射してラジカル架橋反応させ、基材との貼り合わせに好適な膜を形成させる。その後、基材と貼り合わせ、与熱熟成工程(例えば60℃/5日)後に、離型紙より剥離して合成擬革を得る。
【0041】
なお、ポリイソシアネートとの架橋反応を促進させるため、従来公知のアミン系および有機金属系ウレタン架橋触媒を単独または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0042】
以上の如くして得られる本発明の合成擬革は、表皮層の基材に対する接着性と風合いに優れるとともに、ウレタンプレポリマーの合成に際し、ポリオール、短鎖グリコール、イソシアネート化合物の組み合わせにより、接着剤層に耐加水分解性、耐光性、耐熱性、耐ガス変色性、耐オレイン酸性、耐寒性、耐溶剤性の付与が可能であり、靴、鞄、衣料、椅子やソファーなどの家具、車輌シートなど、あらゆる合成擬革製品の製造に好適である。
【0043】
本発明の合成擬革の表皮層形成用塗料は、溶剤系ポリウレタン、水系ポリウレタン、TPUなど特に限定されないが、水系ポリウレタンまたはTPUとの組み合わせにより環境負荷を低減する合成擬革の提供が可能となる。
【実施例】
【0044】
以下に合成例、実施例および比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、以下の文中の「部」および「%」は質量基準である。
【0045】
(実施例1)
数平均分子量が2,000のポリプロピレングリコール(20℃で液状)100部と、1,4−ブタンジオール1.5部とに、TDI(−80)5.8部とジブチルチンジラウレート0.025部とを加え105℃で3時間反応させた後、2−メタクロイルオキシエチルイソシアネート1部を加えてさらに105℃で2時間反応させ、水酸基およびメタクリロイル基を有する固形分100%、水酸基価31.4mgKOH/gのウレタンプレポリマーを得た。
【0046】
(実施例2)
数平均分子量が1,800のTHF−ネオペンチルグリコール共重合ポリオール(20℃で液状)100部と1,4−ブタンジオール1.5部とに、TDI(−80)6.28部を加え、105℃で2時間反応させた後、2−メタクロイルオキシエチルイソシアネート1部を加えてさらに105℃で2時間反応させ、水酸基およびメタクリロイル基を有する固形分100%、水酸基価34.1mgKOH/gのウレタンプレポリマーを得た。
【0047】
(実施例3)
数平均分子量が1,800のTHF−ネオペンチルグリコール共重合ポリオール(20℃で液状)100部と1,6−ヘキサンジオール1.97部とに、HDI6.07部を加え80℃で2時間反応させた後、2−アクロイルオキシエチルイソシアネート1部を加えてさらに105℃で2時間反応させ、水酸基およびアクリロイル基を有する固形分100%、水酸基価33.7mgKOH/gのウレタンプレポリマーを得た。
【0048】
(実施例4)
数平均分子量が2,000の1,5−ペンタンジオール/1,6−ヘキサンジオール=50/50(モル比)のコーポリカーボネートジオール(20℃で液状)100部と1,4−ブタンジオール1.5部とに、TDI(−80)5.8部を加え105℃で1.5時間反応させた後、2−メタクロイルオキシエチルイソシアネート1部を加えてさらに105℃で2時間反応させ、水酸基およびメタクリロイル基を有する固形分100%、水酸基価31.4mgKOH/gのウレタンプレポリマーを得た。
【0049】
(実施例5)
数平均分子量が2,000の1,5−ペンタンジオール/1,6−ヘキサンジオール=50/50(モル比)のコーポリカーボネートジオール(20℃で液状)70部と数平均分子量が1,800のTHF−ネオペンチルグリコール共重合ポリオール(20℃で液状)30部と1,4−ブタンジオール1.5部との混合物に、TDI(−80)5.95部を加え105℃で1.5時間反応させた後、2−メタクロイルオキシエチルイソシアネート1部を加えてさらに105℃で2時間反応させ、水酸基およびメタクリロイル基を有する固形分100%、水酸基価32.2mgKOH/gのウレタンプレポリマーを得た。
【0050】
(実施例6)
数平均分子量が2,000の1,5−ペンタンジオール/1,6−ヘキサンジオール=50/50(モル比)のコーポリカーボネートジオール(20℃で液状)70部と数平均分子量が1,800のTHF−ネオペンチルグリコール共重合ポリオール(20℃で液状)30部と1,4−ブタンジオール1.5部との混合物に、MDI8.54部を加え75℃で1.5時間反応させた後、2−メタクロイルオキシエチルイソシアネート1部を加えてさらに105℃で2時間反応させ、水酸基およびメタクリロイル基を有する固形分100%、水酸基価31.4mgKOH/gのウレタンプレポリマーを得た。
【0051】
(実施例7)
数平均分子量が2,000のポリプロピレングリコール(20℃で液状)100部と1,4−ブタンジオール1.5部との混合物に、TDI(−80)7.73部とジブチルチンジラウレート0.05部を加え105℃で4時間反応させた後、2−メタクロイルオキシエチルイソシアネート3部を加えてさらに105℃で2時間反応させ、水酸基およびメタクリロイル基を有する固形分100%、水酸基価12.6mgKOH/gのウレタンプレポリマーを得た。
【0052】
(比較例1)
グリコール成分が1,6−ヘキサンジオールである数平均分子量が2,000のポリカーボネートポリオール(20℃で固体)100部と1,4−ブタンジオール1.5部との混合物に、TDI(−80)5.8部を加え105℃で1.5時間反応させた後、2−メタクロイルオキシエチルイソシアネート1部を加えてさらに105℃で2時間反応させ、水酸基およびメタクリロイル基を有する固形分100%、水酸基価31.4mgKOH/gのウレタンプレポリマーを得た。
【0053】
(比較例2)
数平均分子量が1,800のTHF−ネオペンチルグリコール共重合ポリオール(20℃で液状)100部と1,4−ブタンジオール1.5部との混合物に、TDI(−80)10.77部を加え105℃で4時間反応させた後、2−メタクロイルオキシエチルイソシアネート1部を加えてさらに105℃で2時間反応させ、水酸基およびメタクリロイル基を有する固形分100%、水酸基価7.0mgKOH/gのウレタンプレポリマーを得た。
【0054】
(比較例3)
数平均分子量が1,800のTHF−ネオペンチルグリコール共重合ポリオール(20℃で液状)100部と1,4−ブタンジオール1.5部との混合物に、TDI(−80)6.28部を加え105℃で2時間反応させた後、2−メタクロイルオキシエチルイソシアネート5.5部を加えてさらに105℃で2時間反応させ、水酸基およびメタクリロイル基を有する固形分100%、水酸基価18.2mgKOH/gのウレタンプレポリマーを得た。
【0055】
(比較例4)
数平均分子量が1,800のTHF−ネオペンチルグリコール共重合ポリオール(20℃で液状)100部と1,4−ブタンジオール1.5部との混合物に、TDI(−80)6.28部を加え105℃で2時間反応させた後、2−メタクロイルオキシエチルイソシアネート0.08部を加えてさらに105℃で2時間反応させ、水酸基およびメタクリロイル基を有する固形分100%、水酸基価37.4mgKOH/gのウレタンプレポリマーを得た。
【0056】
(比較例5)
数平均分子量が500のポリ[(3−メチル−1,5−ペンタンジオール)−alt−(アジピン酸)]ポリオール(20℃で液状)100部に、TDI(−80)17.4部を加え105℃で1.5時間反応させた後、2−メタクロイルオキシエチルイソシアネート1部を加えてさらに105℃で2時間反応させ、水酸基およびメタクリロイル基を有する固形分100%、水酸基価92.1mgKOH/gのウレタンプレポリマーを得た。
【0057】
以上の実施例および比較例で得られたウレタンプレポリマーの外観、20℃および80℃での粘度、塗布適性、数平均分子量および不飽和当量を下記表1に纏めた。
【0058】

【0059】

【0060】
(応用例)
本発明で得られた接着剤を使用して表皮層と基材(トリコット)を貼り合わせ、合成皮革を作成した。なお、離型紙にはDNTP−155T−FLAT(大日本印刷社製)を使用して次の条件で表皮層を作成した。
<調液>レザミンPUD−6029SPA(大日精化工業社製 水系樹脂)100部、レザミンD−52架橋剤(大日精化工業社製)10部、D−87増粘剤(大日精化工業社製)3部
<塗布量>150μm/wet
<乾燥条件>100℃/5分
<膜厚>約45μm
【0061】
(応用例1)
実施例7で得られたウレタンプレポリマー100部に反応性モノマーとしてトリメチロールプロパントリアクリレート10部、光重合開始剤として2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン1部、ポリイソシアネート架橋剤として24A−100(旭化成ケミカルズ社製)22部および架橋反応促進剤として1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7のオクチル酸塩0.05部を混合撹拌し接着剤組成物を調液した。粘度は20℃において80dPa・sであった。
【0062】
次に当該接着剤組成物を表皮層上に100μmの厚みで塗布し、光量5Mradの電子線を照射して基材との貼り合わせに好適な架橋被膜を得た。次に該表皮層を基材とラミネート機(クリアランス0μm、ロール温度25℃)にて貼り合わせた後60℃/5日の熟成をかけ、当該接着剤組成物を高分子量化させて接着性能および風合いに優れる合成皮革を得た。
【0063】
(応用例2)
実施例2で得られたウレタンプレポリマー100部に反応性モノマーとしてトリメチロールプロパンジアクリレート8部、光重合開始剤として2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン0.5部、ポリイソシアネート架橋剤としてD−101(旭化成ケミカルズ社製)20部および架橋反応促進剤としてオクチル酸第一錫0.03部を混合撹拌し接着剤組成物を調液した。粘度は20℃において80dPa・sであった。
【0064】
次に当該接着剤組成物を前記表皮層上に100μmの厚みで塗布し、光量390mj/cm2のメタルハライドランプを光源とする紫外線を照射して基材との貼り合わせに好適な架橋被膜を得た。次に該表皮層を基材とラミネート機(クリアランス0μm、ロール温度25℃)にて貼り合わせた後60℃/5日の熟成をかけ、当該接着剤組成物を高分子量化させて接着性能および風合いに優れる合成皮革を得た。
【0065】
(応用例3)
実施例4で得られたウレタンプレポリマー100部に反応性モノマーとしてペンタエリスリトールトリアクリレート2部、光重合開始剤として2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン0.5部およびポリイソシアネート架橋剤としてD−101 25部を混合撹拌し接着剤組成物を調液した。粘度は80℃において150dPa・sであった。次に当該接着剤組成物を前記表皮層上に100μmの厚みで塗布し、光量390mj/cm2のメタルハライドランプを光源とする紫外線を照射して基材との貼り合わせに好適な架橋被膜を得た。
【0066】
次に該表皮層を基材とラミネート機(クリアランス0μm、ロール温度25℃)にて貼り合わせた後60℃/5日の熟成をかけ、当該接着剤組成物を高分子量化させて接着性能および風合いに優れる合成皮革を得た。
【0067】
(応用例4)
実施例5で得られたウレタンプレポリマー100部に反応性モノマーとしてペンタエリスリトールトリアクリレート4部、光重合開始剤として2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン0.5部、ポリイソシアネート架橋剤としてD−101 10部およびTHA−100(旭化成ケミカルズ社製)5部を混合撹拌し接着剤組成物を調液した。粘度は80℃において140dPa・sであった。
【0068】
次に当該接着剤組成物を前記表皮層上に100μmの厚みで塗布し、光量390mj/cm2のメタルハライドランプを光源とする紫外線を照射して基材との貼り合わせに好適な架橋被膜を得た。次に該表皮層を基材とラミネート機(クリアランス0μm、ロール温度25℃)にて貼り合わせた後60℃/5日の熟成をかけ、当該接着剤組成物を高分子量化させて接着性能および風合いに優れる合成皮革を得た。
【0069】
(比較応用例1)
実施例4で得られたウレタンプレポリマー100部に、ポリイソシアネート架橋剤としてD−101 25部および光重合開始剤として2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン0.5部を混合撹拌し、反応性モノマーを除いて接着剤組成物を調液した。粘度は80℃において160dPa・sであった。
【0070】
次に当該接着剤組成物を前記表皮層上に100μmの厚みで塗布し、光量390mj/cm2のメタルハライドランプを光源とする紫外線を照射したが被膜形成が不充分であった。基材とラミネート機(クリアランス0μm、ロール温度25℃)にて貼り合わせた後60℃/5日の熟成をかけ、当該接着剤組成物を高分子量化させたが接着強度および風合いともに性能不足の合成皮革となった。
【0071】
(比較応用例2)
実施例5で得られたウレタンプレポリマー100部に反応性モノマーとしてペンタエリスリトールトリアクリレート4部、光重合開始剤として2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン0.5部、およびポリイソシアネート架橋剤としてD−101 1部を混合撹拌し接着剤組成物を調液した。粘度は80℃において190dPa・sであった。次に当該接着剤組成物を前記表皮層上に100μmの厚みで塗布し、光量390mj/cm2のメタルハライドランプを光源とする紫外線を照射して基材との貼り合わせに好適な架橋被膜を得た。
【0072】
次に該表皮層を基材とラミネート機(クリアランス0μm、ロール温度25℃)にて貼り合わせた後60℃/5日の熟成をかけ、当該接着剤組成物を高分子量化させて得られた合成皮革は風合いが良好であるが、接着強度不足であった。
【0073】
(比較応用例3)
比較例4で得られたウレタンプレポリマー100部に反応性モノマーとしてトリメチロールプロパンジアクリレート20部、光重合開始剤として2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン2部、ポリイソシアネート架橋剤としてD−101 20部および架橋反応促進剤としてオクチル酸第一錫0.03部を混合撹拌し接着剤組成物を調液した。粘度は20℃において60dPa・sであった。
【0074】
次に当該接着剤組成物を前記表皮層上に100μmの厚みで塗布し、光量390mj/cm2のメタルハライドランプを光源とする紫外線を照射したが流動性のある樹脂を含む硬い被膜となった。基材とラミネート機(クリアランス0μm、ロール温度25℃)にて貼り合わせた後60℃/5日の熟成をかけ、当該接着剤組成物を高分子量化させたが接着強度および風合いともに性能不足の合成皮革となった。
【0075】
(比較応用例4)
比較例5で得られたウレタンプレポリマー100部に反応性モノマーとしてペンタエリスリトールトリアクリレート5部、光重合開始剤として2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン0.5部、ポリイソシアネート架橋剤としてTHA−100 15部を混合撹拌し接着剤組成物を調液した。粘度は20℃にて30dPa・sであった。
【0076】
次に当該接着剤組成物を前記表皮層上に100μmの厚みで塗布したが、液流れ現象が発生し、均一な塗膜が得られなかった。光量390mj/cm2のメタルハライドランプを光源とする紫外線を照射した後、基材とラミネート機(クリアランス0μm、ロール温度25℃)にて貼り合わせ60℃/5日の熟成をかけ、当該接着剤組成物を高分子量化させて得られた合成皮革は風合いは良好であるものの非接着部分のある不良品であった。
【0077】
(参考例)
溶剤型接着剤を使用して表皮層と基材(トリコット)とを貼り合わせ、合成擬革を作製した。なお、離型紙にはDNTP−155T−FLAT(大日本印刷社製)を使用して次の条件で表皮層を作成した。
<調液>レザミンME−8106(大日精化工業社製 溶剤70%含有品)100部、DMF33部
<塗布量>200μm/wet
<乾燥条件>100℃/5分
<膜厚>約45μm
【0078】
(参考例1)
レザミンUD−8358D(大日精化工業社製 溶剤42%含有品)100部にレザミンUD−架橋剤(大日精化工業社製)9部、UD−103促進剤(大日精化工業製)およびトルエン5部を混合撹拌し、溶剤型接着剤配合液を調液した。次に当該接着剤組成物を上記表皮層上に200μm/wetで塗布し、100℃/90秒乾燥して約100μmの接着剤層を形成させた。次に該表皮層を基材とラミネート機(クリアランス0μm、ロール温度120℃)にて貼り合わせた後60℃/5日の熟成をかけ、当該接着剤組成物を高分子量化させて公知の合成皮革を作製した。本発明で得られた環境対応型合成皮革の接着強度と風合いを当該皮革と比較評価したところ同等の結果であった。評価結果を下記表3、表4に示す。
【0079】

【0080】

【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明によれば、有機溶剤や水を使用することなく、蒸発除去に要するエネルギー消費量を低減し、さらには20℃〜80℃で取り扱うことにより加熱に要するエネルギー消費量も低減し、大気中への揮発性有機物の放出も殆ど起こらない環境対応型の接着剤を用いる合成擬革およびその製造方法などを提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と接着剤層と表皮層とからなり、該接着剤層が、ラジカル重合性不飽和基と、水酸基とを含有し、ラジカル重合性不飽和基の不飽和当量が、4,000〜200,000である光重合性ウレタンプレポリマーからなることを特徴とする合成擬革。
【請求項2】
ウレタンプレポリマーが、実質的に不揮発分100%でかつ20〜80℃で液状である請求項1に記載の合成擬革。
【請求項3】
ウレタンプレポリマーの水酸基価が、5〜200mgKOH/gである請求項2に記載の合成擬革。
【請求項4】
ラジカル重合性不飽和基が、イソシアネート基含有(メタ)アクリレート由来である請求項3に記載の合成擬革。
【請求項5】
接着剤が、請求項3に記載のウレタンプレポリマー100質量部に対し、多官能性不飽和基含有反応性モノマー0.5〜50質量部、光重合開始剤0.1〜10質量部およびNCO含有率が5〜30質量%のポリイソシアネート架橋剤2〜30質量部からなる請求項4に記載の合成擬革。
【請求項6】
表皮層表面(離型紙に接している面の反対側の面)に、請求項5に記載の接着剤を塗布し、該接着剤を活性エネルギー線により硬化させた後、該接着剤層面に基材を積層し、加熱熟成して上記接着剤を架橋硬化させることを特徴とする合成擬革の製造方法。
【請求項7】
ラジカル重合性不飽和基と、水酸基とを含有し、ラジカル重合性不飽和基の不飽和当量が、4,000〜200,000であることを特徴とする光重合性ウレタンプレポリマー。
【請求項8】
ウレタンプレポリマーが、実質的に不揮発分100%でかつ20〜80℃で液状である請求項7に記載の光重合性ウレタンプレポリマー。
【請求項9】
ラジカル重合性不飽和基が、イソシアネート基含有(メタ)アクリレート由来である請求項8に記載の光重合性ウレタンプレポリマー。
【請求項10】
請求項7〜9の何れか1項に記載のウレタンプレポリマー100質量部に対し、多官能性不飽和基含有反応性モノマー0.5〜50質量部、光重合開始剤0.1〜10質量部およびNCO含有率が5〜30質量%のポリイソシアネート架橋剤2〜30質量部からなることを特徴とする接着剤組成物。

【公開番号】特開2010−189797(P2010−189797A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−34919(P2009−34919)
【出願日】平成21年2月18日(2009.2.18)
【出願人】(000002820)大日精化工業株式会社 (387)
【出願人】(000238256)浮間合成株式会社 (99)
【Fターム(参考)】