説明

合成擬革の表皮層形成用塗料および合成擬革の製造方法

【課題】従来の上記の課題を解決する合成擬革の表皮層形成用塗料および合成擬革の製造方法を提供すること。
【解決手段】シロキサン変性ウレタン系樹脂(1)と、水系架橋剤(2)とを水性媒体中に含有することを特徴とする合成擬革の表皮層形成用塗料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成擬革の表皮層形成用塗料および合成擬革の製造方法に関し、さらに詳しくは、表皮層や接着剤層を有機溶剤を使用することなく形成することができる合成擬革の表皮層形成用塗料および合成擬革の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリウレタン系樹脂は、耐摩耗性、屈曲性、可撓性、柔軟性、加工性、接着性、耐薬品性などの諸物性に優れ、かつ各種加工法への適性にも優れるため、合成擬革(人工皮革と合成皮革の総称)用材料、各種コーティング剤、インキ、塗料などのバインダーとして、或いはフィルム、シートおよび各種成型物用材料として広く使用されており、種々の用途に適したポリウレタン系樹脂が提案されている。ここで、ポリウレタン系樹脂とは、ポリウレタン樹脂、ポリウレア樹脂およびポリウレタン−ポリウレア樹脂の総称である。
【0003】
これらのポリウレタン系樹脂は、基本的には高分子量ポリオール、有機ポリイソシアネート、さらには必要に応じて鎖伸長剤を反応させて得られるものであり、これら各成分の種類、組み合わせにより種々の性能を有するポリウレタン系樹脂が提供されている。
【0004】
また、特にポリウレタン樹脂を使用した合成擬革は、天然皮革に近い風合いを得ることができることから、衣料用途や家具、車輛内装材などの高級感を求められる分野に多く使用されている。近年、上記に加え、環境保護の観点からエコロジーを考慮した合成擬革のシステム開発が強く求められている。
【0005】
従来から、ポリウレタン系樹脂を用いた合成擬革は、例えば、以下の主工程を経る湿式法などによって製造されている。先ず、例えば、繊維質基材層上に、ポリウレタン系樹脂のN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)を主体とした有機溶剤の溶液を塗布し、水中で凝固させてミクロポーラス層を形成させる。
【0006】
次いで、上記ミクロポーラス層上に、各種有機溶剤に溶解したポリウレタン系樹脂溶液を、グラビアなどの塗布機でダイレクトコートし、乾燥させて表皮層(銀面層)を形成させるか、或いはポリウレタン系樹脂溶液を離型紙上に塗布し、乾燥して形成される皮膜面に接着剤層を形成し、これらの層を上記ミクロポーラス層に転写する方法が挙げられる(非特許文献1、特許文献1、2参照)。
【0007】
このように合成擬革の表皮を製造するポリウレタン系樹脂の殆どは、各種有機溶剤に溶解した溶液として使用されている。そのために、乾燥工程において、有機溶剤は大気中に放出されており、環境問題(VOC対策)、安全衛生、消防対策の観点から、有機溶剤を使用しないポリウレタン系樹脂水系分散体の必要性が高まっている。
【0008】
従来のポリウレタン系樹脂水系分散体からなる皮膜では、耐久性を必要とする自動車関連や家具用関連に使用する素材として、基材との接着性、柔軟性、耐水性、特に、人間の皮脂に対する耐油性、耐摩耗性、耐久性(耐候性、耐加水分解性、耐熱性など)などの合成擬革の要求性能を充分に満足するものではなく、改良が求められている。
【0009】
【非特許文献1】岩田 慶治 編、ポリウレタン樹脂ハンドブック、第571〜599頁、15.ポリウレタン皮革(昭和62年9月25日、日刊工業新聞社発行)
【特許文献1】特開平5−5280号公報
【特許文献2】特開平9−31861号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、合成擬革(人工皮革、合成皮革)や各種コーティング剤などに使用されるポリウレタン系樹脂は、通常、有機溶剤の溶液として使用される溶剤系のポリウレタン系樹脂が多く、環境に対するVOC対策、作業環境の対応がなされていないのが現状である。また、上記の用途でポリウレタン系樹脂に要求される物性は、耐久性としての耐加水分解性、耐光性、耐熱性、耐ガス変色性、耐黴性、耐オレイン酸性(人間の汗成分)などであり、特に合成擬革に同時に要求される物性としては、天然皮革様の外観、ソフトな風合い、高強度、耐摩耗性、低温屈曲性、表面タッチ、耐ブロッキング性や基材との接着性などが挙げられる。
【0011】
上記合成擬革は、自動車内装材や家具材などに適合した各素材独自の優れた特徴があるものの、幾つかの問題があり、前記した全ての機能を満足するものでない。そのうえ、従来よりも高機能である自動車内装材や家具材などに適合した合成擬革が要望されている。
したがって本発明の目的は、従来の上記の課題を解決する合成擬革の表皮層形成用塗料および合成擬革の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的は以下の本発明によって達成される。すなわち、本発明は、シロキサン変性ウレタン系樹脂(1)と、水系架橋剤(2)とを水性媒体中に含有することを特徴とする合成擬革の表皮層形成用塗料(以下単に「塗料」という場合がある)を提供する。
【0013】
上記本発明においては、前記シロキサン変性ウレタン系樹脂(1)が、分子内に少なくとも1個の活性水素含有基と水酸基以外の親水性基とを有する化合物(a)0.01〜30質量%と、少なくとも1個の活性水素含有基を有するポリシロキサン(b)0.1〜50質量%と、ポリオールおよび/またはポリアミン(c)10〜95質量%と、ポリイソシアネート(d)とを、化合物(a)〜(c)の合計の全活性水素含有基と化合物(d)のイソシアネート基とを当量比(OH/NCO)0.9〜1.1で反応させて得られる樹脂であることが好ましい。
【0014】
また、上記本発明においては、前記シロキサン変性ウレタン系樹脂(1)中に占めるポリシロキサンセグメントの割合が、0.01〜50質量%であり、該樹脂の数平均分子量が、2,000〜500,000であること;前記水系架橋剤(2)が、ポリイソシアネート系架橋剤(ブロック型を含む)、メラミン系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、エポキシ系架橋剤、シラノール系架橋剤、無機系架橋剤またはビニルエーテル系架橋剤であること;前記水系架橋剤(2)が、Tgが−5〜90(℃)、オキサゾリン基当量が100〜400のオキサゾリン系架橋剤であることが好ましい。
【0015】
また、本発明は、合成擬革の基材にミクロポーラス層または接着剤層を介して表皮層を形成する擬革の製造方法において、上記表皮層を請求項1に記載の塗料を使用して形成することを特徴とする合成擬革の製造方法を提供する。
【0016】
上記本発明においては、前記接着剤層を、水性ウレタン系接着剤(反応型も含む)、無溶剤ウレタン系接着剤(反応型も含む)、または低分子ポリオールと二塩基酸とを反応させて得られる無溶剤エステル系接着剤(反応型も含む)を使用して形成すること;前記水性ウレタン系接着剤が、水溶性基と水酸基とブロックイソシアネート基とを有する自己硬化型ウレタン系接着剤、またはシラノール基または不飽和基を有する自己硬化型ウレタン系接着剤であること;無溶剤ウレタン系接着剤が、ホットメルト性ポリウレタン接着剤、イソシアネート基、ブロックイソシアネート基、シラノール基または不飽和基を有する自己硬化型ウレタン系接着剤であることが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、前記本発明の塗料からなる皮膜は、ウレタン樹脂がシロキサン変性され、架橋剤により架橋されていることで、通常のウレタン樹脂からなる皮膜と比較して、シロキサンの特徴である滑り性を有し、耐摩耗性が著しく向上しており、加えて低温時の屈曲性や汚染性が向上し、また、架橋効果により耐候性、耐熱性などの耐久性が向上している。このような本発明の塗料を使用することで、意匠性やソフトタッチ性が良好であり、かつ機械強度、耐屈曲性、滑り性、耐加水分解性、耐候性、耐熱性、低温特性、耐溶剤性、耐薬品性、断熱性および耐オレイン酸性(人間の皮脂成分)に優れている合成擬革が得られることを見出した。
【0018】
また、前記事項に加え、本発明では、表皮層および接着剤層(またはミクロポーラス層)を有機溶剤を含まない塗料を用いて形成することで、有機溶剤などの揮発性有機溶剤(VOC)の排出を削減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
次に発明を実施するための最良の形態を挙げて本発明をさらに詳しく説明する。本発明に使用するシロキサン変性ウレタン系樹脂(以下単に「本発明の樹脂」という場合がある)は、分子内に少なくとも1個の活性水素含有基と水酸基以外の親水性基とを有する化合物(以下単に「化合物a」という場合がある)(水酸基以外の親水性基とは、例えば、完全にまたは部分的に中和されたカルボキシル基またはスルホン酸基、完全にまたは部分的に中和された第3級アミノ基である)と、少なくとも1個の活性水素含有基を有するポリシロキサン(以下単に「化合物b」という場合がある)と、ポリオールおよび/またはポリアミン(以下単に「化合物c」という場合がある)と、ポリイソシアネート(以下単に「化合物d」という場合がある)とを反応させて得られる。
【0020】
上記において化合物a〜cの使用量は、化合物aを0.01〜30質量%、好ましくは1〜15質量%、化合物bを0.1〜50質量%、好ましくは1〜20質量%、化合物cを10〜95質量%、好ましくは20〜70質量%とし、かつ化合物dは、化合物a〜cの合計の全活性水素含有基と化合物dのイソシアネート基とを当量比(OH/NCO)が0.9〜1.1、好ましくは1.0となる使用量である。なお、上記化合物a〜cは、上記範囲内でかつ化合物a〜cの合計量が100質量%になる比率にして使用する。
【0021】
本発明の樹脂においては、上記化合物aからなるセグメントの含有量が0.1〜30質量%であることが好ましい。より好ましくは1〜15質量%である。該含有量が0.1質量%未満では、樹脂の乳化安定性や基材との密着性などの点で不十分であり、一方、上記含有量が30質量%を超えると樹脂の耐水性の低下などを引き起こす。また、上記化合物bからなるポリシロキサンセグメントの含有量が0.1〜50質量%であることが好ましい。より好ましくは1〜20質量%である。該含有量が0.1質量%未満では、樹脂の滑性や耐ブロッキング性などの点で不十分であり、一方、上記含有量が50質量%を超えると樹脂の基材(TPOなど)に対する密着不良やシロキサン成分の移行による汚染性などの原因になる場合がある。
【0022】
なお、上記a〜cのセグメントの含有量は、上記範囲内でかつ化合物a〜cの合計量が100質量%になる比率にして使用する。また、上記樹脂の数平均分子量(GPC測定、標準ポリスチレン換算)は、2,000〜500,000であることが好ましい。より好ましくは、10,000〜200,000である。該分子量が2,000未満では、樹脂の耐水性や耐候性に劣る点などが不十分であり、一方、上記分子量が500,000を越えると、本発明の樹脂を塗料化したときに塗料としての塗装適性などが劣る。
【0023】
上記化合物aとしては、スルホン酸系、カルボン酸系、燐酸系、アミン系などの化合物を用いることができる。該化合物aは、本発明の樹脂からなる皮膜の基材、ミクロポーラス層または接着剤層に対する接着強度向上効果を有するとともに、本発明の樹脂に水中への分散、自己乳化性を与える。
【0024】
スルホン酸系の化合物aとしては、下記化合物およびその誘導体などが挙げられる。

【0025】
また、カルボン酸系の化合物aとしては、ジメチロールプロパン酸、ジメチロールブタン酸およびそれらのアルキレンオキシド低モル付加物(数平均分子量500未満)やこれらの化合物のγ−カプロラクトン低モル付加物(数平均分子量500未満)、酸無水物とグリセリンから誘導されるハーフエステル類、水酸基と不飽和基を含有するモノマーとカルボキシル基と不飽和基を含有するモノマーとをフリーラジカル反応により誘導される化合物などが挙げられる。特に好ましい化合物aは、ジメチロールプロパン酸やジメチロールブタン酸(ウレタン樹脂として酸価が5〜40mgKOH/gの範囲で使用する)、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−2−アミノエタンスルホン酸である。
【0026】
以上は本発明において使用される好ましい化合物aの例示であって、本発明はこれらの例示の化合物に限定されるものではない。したがって、上述の例示化合物のみならず、その他現在市販されていて、市場から容易に入手できる化合物aは、いずれも本発明に使用することができる。
【0027】
上記化合物aのセグメントを含む本発明の樹脂は、使用に際し当該樹脂の乳化のためには、化合物aのセグメントが、アニオン性(スルホン酸系、カルボン酸など)である場合には、例えば、有機アミン類(アンモニア、エチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリイソプロピルアミン、トリブチルアミン、トリエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−フェニルジエタノールアミン、モノエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、モルホリン、N−メチルモルホリン、2−アミノ−2−エチル−1−プロパノールなど)、アルカリ金属(リチウム、カリウム、ナトリウムなど)、無機アルカリ類(水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなど)などによって中和され、また、化合物aのセグメントがカチオン性(3級アミン系)である場合には、有機酸、例えば、蟻酸、乳酸、酢酸などによって中和される。
【0028】
前記化合物bは、本発明の樹脂中にポリシロキサンセグメントとして含有され、該ポリシロキサンセグメントは、樹脂の主鎖中に含有或いは分岐した状態で含有されている。すなわち、原料としての化合物bが両末端反応型であれば、化合物bのセグメントは、樹脂の主鎖である幹部分に、化合物bが、片末端或いは分岐反応型であれば樹脂の主鎖から分岐した状態で含有されることとなる。
【0029】
本発明で使用する前記化合物bとしては、例えば、以下のような化合物が挙げられる。この中には活性水素含有基を利用して変性されたエポキシ変性ポリシロキサンも含んでいるが、イソシアネート基と反応してポリウレタン系樹脂中に含有されることとなるので含めている。
【0030】
(1)アミノ変性ポリシロキサン

【0031】

【0032】

【0033】

【0034】

【0035】

【0036】
(2)エポキシ変性ポリシロキサン

【0037】

【0038】

【0039】

【0040】

【0041】

【0042】
上記のエポキシ化合物はポリオール、ポリアミド、ポリカルボン酸などと反応させ末端活性水素含有基を有するようにして使用することができる。
【0043】
(3)アルコール変性ポリシロキサン

【0044】

【0045】

【0046】

【0047】

【0048】

【0049】

【0050】
(4)メルカプト変性ポリシロキサン

【0051】

【0052】

【0053】

【0054】
以上列記した化合物bは本発明において使用する好ましい化合物であるが、本発明はこれらの例示の化合物に限定されるものではない。したがって上述の例示の化合物のみならず、その他現在市販されており、市場から容易に入手し得る化合物はいずれも本発明において使用することができる。本発明において特に好ましい化合物bは2個の水酸基またはアミノ基を有するポリシロキサンである。
【0055】
これらの他にもポリシロキサンをラクトンで変性したポリラクトン(ポリエステル)−ポリシロキサンや、アルキレンオキサイドで変性したポリアルキレンオキサイド−ポリシロキサンなども好ましく使用される。ここで使用する好ましいラクトンは、β−プロピオラクトン、γ−ブチロラクトン、δ−バレロラクトン、ε−カプロラクトン、7−ヘプタノリド、8−オクタノリド、γ−バレロラクトン、γ−カプロラクトンおよびδ−カプロラクトンなどである。
【0056】
また、上記アルキレンオキサイドとしては、例えば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、α−ブチレンオキサイド、β−ブチレンオキサイド、ヘキセンオキサイド、シクロヘキセンオキサイド、スチレンオキサイド、α−メチルスチレンオキサイドなどが挙げられる。
【0057】
前記化合物cとしてのポリオールとしては、好ましくはポリウレタン製造に従来から使用されている短鎖ジオール、多価アルコールおよび高分子ポリオールなどの従来公知のものが、また、ポリアミンとしてはポリウレタン製造に従来から使用されている短鎖ジアミンなどが使用できる。これらは特に限定されない。以下に使用するそれぞれの化合物について説明する。
【0058】
前記短鎖ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、1,6−ヘキサメチレングリコールおよびネオペンチルグリコールなどの脂肪族グリコール類およびそのアルキレンオキサイド低モル付加物(数平均分子量500未満)、1,4−ビスヒドロキシメチルシクロヘキサンおよび2−メチル−1,1−シクロヘキサンジメタノールなどの脂環式系グリコール類およびそのアルキレンオキサイド低モル付加物(数平均分子量500未満)、キシリレングリコールなどの芳香族グリコール類およびそのアルキレンオキサイド低モル付加物(数平均分子量500未満)、ビスフェノールA、チオビスフェノールおよびスルホンビスフェノールなどのビスフェノール類およびそのアルキレンオキサイド低モル付加物(数平均分子量500未満)、およびC1〜C18のアルキルジエタノールアミンなどのアルキルジアルカノールアミン類などの化合物が挙げられる。
【0059】
また、多価アルコール系化合物としては、例えば、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、トリス−(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、1,1,1−トリメチロールエタンおよび1,1,1−トリメチロールプロパンなどが挙げられる。これらは単独或いは2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0060】
前記高分子ポリオールとしては、例えば、以下のものが例示される。
(1)ポリエーテルポリオール、例えば、アルキレンオキサイド(エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドなど)および/または複素環式エーテル(テトラヒドロフランなど)を重合または共重合して得られるものが例示され、具体的にはポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール−ポリテトラメチレングリコール(ブロックまたはランダム)、ポリテトラメチレンエーテルグリコールおよびポリヘキサメチレングリコールなど、
【0061】
(2)ポリエステルポリオール、例えば、脂肪族系ジカルボン酸類(例えば、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、グルタル酸およびアゼライン酸など)および/または芳香族系ジカルボン酸(例えば、無水フタル酸、イソフタル酸およびテレフタル酸など)と低分子量グリコール類(例えば、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、1,6−ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコールおよび1,4−ビスヒドロキシメチルシクロヘキサンなど)とを縮重合したものが例示され、具体的にはポリエチレンアジペートジオール、ポリブチレンアジペートジオール、ポリヘキサメチレンアジペートジオール、ポリネオペンチルアジペートジオール、ポリエチレン/ブチレンアジペートジオール、ポリネオペンチル/ヘキシルアジペートジオール、ポリ−3−メチルペンタンアジペートジオールおよびポリブチレンイソフタレートジオールなど、
【0062】
(3)ポリラクトンポリオール、例えば、ポリカプロラクトンジオールおよびポリ−3−メチルバレロラクトンジオールなど、
(4)ポリカーボネートジオール、例えば、ポリヘキサメチレンカーボネートジオール、1,6−、1,5−、または1,4−変性ポリカーボネートジオールなど、
(5)ポリオレフィンポリオール、例えば、ポリブタジエングリコールおよびポリイソプレングリコール、または、その水素化物など、
(6)ポリメタクリレートジオール、例えば、α,ω−ポリメチルメタクリレートジオールおよびα,ω−ポリブチルメタクリレートジオールなどが挙げられる。
【0063】
これらのポリオールの構造および分子量は特に限定されないが、通常数平均分子量は500〜4,000程度が好ましく、これらのポリオールは単独或いは2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0064】
前記ポリアミンとして好ましいポリアミンは、例えば、短鎖ジアミン、脂肪族系、芳香族系ジアミン、長鎖ジアミン類およびヒドラジン類などが挙げられる。短鎖ジアミンとしては、例えば、エチレンジアミン、トリメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミンおよびオクタメチレンジアミンなどの脂肪族ジアミン化合物、フェニレンジアミン、3,3’−ジクロロ−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−メチレンビス(フェニルアミン)、4,4’−ジアミノジフェニルエーテルおよび4,4’−ジアミノジフェニルスルホンなどの芳香族ジアミン化合物、シクロペンタンジアミン、シクロヘキシルジアミン、4,4−ジアミノジシクロヘキシルメタン、1,4−ジアミノシクロヘキサンおよびイソホロンジアミンなどの脂環式ジアミン化合物などが挙げられる。
【0065】
長鎖ジアミンとしては、アルキレンオキサイド(エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドなど)を重合または共重合して得られるものが例示され、具体的にはポリオキシエチレンジアミン、ポリオキシプロピレンジアミンなどが挙げられる。また、ヒドラジン、カルボジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジドおよびフタル酸ジヒドラジドなどのヒドラジン類が挙げられる。
また、アミノ変性タイプのシランカップリング剤を使用すれば、自己硬化反応型の塗料が設計ができる。例えば、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシランなどが挙げられる。これらは単独で或いは2種類以上を組み合わせて使用することができる。ポリオールおよびポリアミンとしては、エチレンオキサイドおよびプロピレンオキサイドなどのポリエーテル系のジオール化合物およびジアミン化合物が好ましい。
【0066】
前記化合物dとしては、従来公知のポリウレタンの製造に使用されているものがいずれも使用でき特に限定されない。ポリイソシアネート化合物として好ましいものは、例えば、トルエン−2,4−ジイソシアネート、トルエン−2,6−ジイソシアネート、4−メトキシ−1,3−フェニレンジイソシアネート、4−イソプロピル−1,3−フェニレンジイソシアネート、4−クロル−1,3−フェニレンジイソシアネート、4−ブトキシ−1,3−フェニレンジイソシアネート、2,4−ジイソシアネートジフェニルエーテル、4,4’−メチレンビス(フェニレンイソシアネート)(MDI)、ジュリレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)、1,5−ナフタレンジイソシアネート、ベンジジンジイソシアネート、o−ニトロベンジジンジイソシアネートおよび4,4’−ジイソシアネートジベンジルなどの芳香族ジイソシアネート、メチレンジイソシアネート、1,4−テトラメチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートおよび1,10−デカメチレンジイソシアネートなどの脂肪族ジイソシアネート、1,4−シクロヘキシレンジイソシアネート、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、1,5−テトラヒドロナフタレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加MDIおよび水素添加XDIなどの脂環式ジイソシアネートなど、自己硬化型PUDの設計も可能な3−イソシアネートプロピルトリエトキシシランなど、或いはこれらのジイソシアネート化合物と低分子量のポリオールやポリアミンを末端がイソシアネートとなるように反応させて得られるポリウレタンプレポリマーなども当然使用することができる。
【0067】
前記化合物a〜dを用いる本発明の樹脂の製造方法については特に限定されず、従来公知のポリウレタンの製造方法を用いることができる。例えば、分子内に活性水素含有基を含まない有機溶剤の存在下、または不存在下に、前記化合物aと化合物bと化合物cと化合物dとを、必要に応じて低分子ジオールなどを鎖伸長剤として使用し、イソシアネート基と活性水素含有基との当量比が、通常、1.0またはその前後(0.9〜1.1)となる配合で、ワンショット法、または多段法により、通常、20〜150℃、好ましくは60〜110℃で、生成物が理論NCO%となるまで反応し、生成した樹脂を水と中和剤で乳化した後、低分子ジアミンで鎖伸長してイソシアネート基が殆どなくなるまで反応させ、必要に応じて脱溶剤工程を経て本発明の樹脂(またはその水中乳化体)を得ることができる。
【0068】
本発明では、上記ウレタン合成において、必要に応じて触媒を使用できる。例えば、ジブチルチンラウレート、ジオクチルチンラウレート、スタナスオクトエート、オクチル酸鉛、テトラn−ブチルチタネートなどの金属と有機および無機酸の塩、および有機金属誘導体、トリエチルアミンなどの有機アミン、ジアザビシクロウンデセン系触媒などが挙げられる。
【0069】
なお、本発明の樹脂は無溶剤で合成しても、必要であれば有機溶剤を用いて合成してもよい。有機溶剤として好ましい溶剤としては、イソシアネート基に不活性であるか、または反応成分よりも低活性なものが挙げられる。例えば、ケトン系溶媒(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなど)、芳香族系炭化水素溶剤(トルエン、キシレン、スワゾール(コスモ石油株式会社製の芳香族系炭化水素溶剤)、ソルベッソ(エクソン化学株式会社製の芳香族系炭化水素溶剤)など)、脂肪族系炭化水素溶剤(n−ヘキサンなど)、アルコール系溶剤(メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコールなど)、エーテル系溶剤(ジオキサン、テトラヒドロフランなど)、エステル系溶剤(酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチルなど)、グリコールエーテルエステル系溶剤(エチレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、エチル−3−エトキシプロピオネートなど)、アミド系溶剤(ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなど)、ラクタム系溶剤(N−メチル−2−ピロリドンなど)が挙げられる。これらの内、好ましくは、溶媒回収、ウレタン合成時の溶解性、反応性、沸点、水への乳化分散性を考慮すれば、メチルエチルケトン、酢酸エチル、アセトン、およびテトラヒドロフランなどがよい。
【0070】
本発明では、樹脂合成工程においては、ポリマー末端に、イソシアネート基が残った場合、イソシアネート末端の停止反応を加えてもよい。例えば、モノアルコールやモノアミンのように単官能性の化合物ばかりでなく、イソシアネートに対して異なる反応性をもつ2種の官能基を有するような化合物であっても使用することができ、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、tert−ブチルアルコールなどのモノアルコール;モノエチルアミン、n−プロピルアミン、ジエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン、ジ−n−ブチルアミンなどのモノアミン;モノエタノールアミン、ジエタノールアミンなどのアルカノールアミンなどが挙げられ、このなかでもアルカノールアミン類が反応制御しやすいという点で好ましい。
【0071】
本発明の樹脂の製造に当たり、必要に応じて添加剤を加えてもよい。例えば、酸化防止剤(ヒンダードフェノール系、ホスファイト系、チオエーテル系など)、光安定剤(ヒンダードアミン系など)、紫外線吸収剤(ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系など)、ガス変色安定剤(ヒドラジン系など)、金属不活性剤などやこれら2種類以上が挙げられる。
【0072】
次に、本発明で使用する水系架橋剤(2)としては、ポリイソシアネート系架橋剤(ブロック型を含む)、メラミン系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、エポキシ系架橋剤、シラノール系架橋剤、無機系架橋剤、ラジカル重合系架橋剤((メタ)アクリロイル基含有架橋剤)、カチオン重合系架橋剤(エポキシ、オキセタン、ビニルエーテル系架橋剤)などが挙げられる。特に本発明では、ウレタン基および/またはカルボキシル基などの親水性基の反応性を利用した架橋方法が好ましいが、特に限定されない。
【0073】
ウレタン基を利用する架橋方法としては、例えば、ポリイソシアネート架橋剤による架橋が挙げられるが、ポリイソシアネート架橋剤としては、従来から使用されている公知のものが使用でき特に限定されない。例えば、水分散型多官能芳香族イソシアネート、水分散型多官能脂肪族イソシアネート、水分散型脂肪酸変性多官能脂肪族イソシアネート、水分散型ブロック化多官能脂肪族イソシアネートなどのブロック型ポリイソシアネート、水分散型ポリイソシアネートプレポリマーなどが挙げられる。これらのポリイソシアネート架橋剤は、適量であれば塗膜と基材シートとの密着性が向上し有効であるが、使用量が多すぎると未反応イソシアネートが残留して問題となるため、本発明の樹脂100質量部に対して120質量部以下、好ましくは1〜50質量部の範囲内である。
【0074】
親水性基、例えば、カルボキシル基を利用する架橋方法としては、エポキシ系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、オキセタン系架橋剤、ビニルエーテル系架橋剤または金属錯体系架橋剤などの従来から使用されている公知のものが使用でき、特に限定されない。例えば、エポキシ系架橋剤としては、「エピコート」(油化シェルエポキシ社製)などの従来公知の市販されているエポキシ樹脂が挙げられる。カルボジイミド系架橋剤としては、「カルボジライト」の商品名(日清紡社製)の市販品を入手して使用することができる。前記架橋剤は、カルボジイミド基とカルボキシル基が反応してN−アシルウレアを形成し塗膜性能が向上する。また、シラノール系架橋剤(シリル型架橋剤)においては自己縮合により塗膜性能が向上する。
【0075】
特に本発明では、オキサゾリン系架橋剤を使用することは、塗料の乾燥時における低温領域(80〜100℃)では反応が遅く、一方で熱処理時の高温領域で反応が完結するので塗料の1液化が可能であるなどの理由で好ましい。オキサゾリン系架橋剤としては、「エポクロス」の商品名(日本触媒社製)、WS−300、WS−500、WS−700、WS−R10などの市販品を入手して使用することができる。これらの架橋剤は、架橋剤のオキサゾリン基と樹脂のカルボキシル基が反応してアミドエステルを形成し架橋構造をとる。オキサゾリン系架橋剤としては、Tg=−5〜90℃、オキサゾリン基当量=100〜400程度のものが使用できるが、特に好ましいのはTg=−5〜25℃(室温以下)、オキサゾリン基当量=200〜350のものである。Tgが上記範囲よりも低いとブロッキングの懸念があり、一方、Tgが上記範囲よりも高いと皮膜に割れが発生する。また、オキサゾリン基当量が上記範囲よりも低いと架橋剤の添加量を増やさないと目的とする性能の効果が発現せず、一方、オキサゾリン基当量が上記範囲よりも高いと、オキサゾリン基が隣接して反応性が低下し、未反応のオキサゾリン基が残存する。これらのオキサゾリン系架橋剤は、本発明の樹脂100質量部に対して0.1〜50質量部以下、好ましくは1〜40質量部の範囲内である。上記架橋剤の使用量が、上記範囲よりも低いと架橋剤の効果が得られず、一方、架橋剤の使用量が上記範囲よりも高いとブロッキングの発生、成膜性の低下およびコストアップとなる。
【0076】
金属錯体系架橋剤としては、チタン有機化合物系、「オルガチックス」の商品名(松本製薬工業社製)で市販されているジルコニウム有機化合物系が入手可能であり、アルミニウム、クロム、コバルト、銅、鉄、ニッケル、バナジウム、亜鉛、インジウム、カルシウム、マグネシウム、マンガン、イットリウム、セリウム、ストロンチウム、パラジウム、バリウム、モリブデニウム、ランタン、「ナーセム」の商品名(日本化学産業社製)で市販されているスズのアセチルアセトン錯体が入手して使用できる。オキセタン系架橋剤としては、「エタナコール」の商品名(宇部興産社製)の市販品を入手して使用することができる。ビニルエーテル系架橋剤としては、BASF社、アイエスピー・ジャパン社、丸善石油化学社、日本触媒社などの市販品を入手して使用することができる。前記架橋剤は、カチオン重合で反応したり、マイケル付加反応にてアルコキシエステル体を形成する。
【0077】
また、シランカップリング架橋剤としては、「KBM−、KBE−シリーズ」の商品名(信越化学社製)で市販されている。これらの架橋剤は、適量であれば耐久性の向上に特に有効であるが、使用量が多すぎると著しい可使時間の短命化や皮膜の脆化を引き起こすため、該ポリウレタン系樹脂100質量部に対して40質量部以下、好ましくは0.5〜20質量部の範囲内の使用が好ましい。
【0078】
また、カチオン重合系架橋剤であるビニルエーテル系架橋剤は、ウレタン基やカルボキシル基と反応することが可能である。無論、電子線を照射することで硬化することができる。
【0079】
本発明の塗料は、無溶剤で調製してもよいが、好ましくは水系媒体中、より好ましくは、イオン交換水中に前記本発明の樹脂および前記水系架橋剤を添加して溶解または分散することで得られる。該塗料固形分中における前記成分の含有量は、本発明の樹脂が、10〜80質量%、より好ましくは20〜70質量%、および水系架橋剤が0.1〜50質量%、好ましくは1〜40質量%である。なお、調製した塗料の固形分は、特に限定されないが、通常、5〜100質量%程度である。
【0080】
本発明の塗料の必須成分は上記の通りであるが、本発明の目的達成を妨げない範囲で、従来公知の樹脂や各種の添加剤、例えば、酸化防止剤(ヒンダードフェノール系、ホスファイト系、チオエーテル系など)、光安定剤(ヒンダードアミン系など)、紫外線吸収剤(ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系など)、ガス変色安定剤(ヒドラジン系など)、金属不活性剤などやこれら2種類以上の併用が挙げられる。さらに意匠性付与剤(有機微粒子、無機微粒子)、防黴剤、難燃剤やその他の添加剤を適宜使用することができる。有機微粒子、無機微粒子としては、例えば、シリカ、シリコーン樹脂微粒子、フッ素樹脂微粒子、アクリル樹脂微粒子、ウレタン系樹脂微粒子、シリコーン変性ウレタン系樹脂微粒子、ポリエチレン微粒子、反応性シロキサンなどを含み得る。
【0081】
本発明の合成擬革の製造方法は、従来公知の方法でよく、製造方法自体は特に限定されない。例えば、(1)基材シート上に、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)を主体とした有機溶剤中で合成した高分子量タイプのウレタン系樹脂の溶液を塗布し、塗布層を水中で凝固させて厚み200〜2,000μmのミクロポーラス層を形成させ、乾燥させた後、次いで上記ミクロポーラス層上に、前記本発明の塗料を、グラビアなどの塗布機でダイレクトコートし、乾燥させて厚み100〜1,500μmの表皮層(銀面層)を形成させる方法(最終的にDMFは回収されるシステム)、(2)前記本発明の塗料を離型紙上に塗布し、乾燥して形成される厚み20〜100μm皮膜上に、水性ウレタン系接着剤、ウレタン系樹脂やエステル系樹脂の100%ソリッドからなる接着剤(反応型も含む)を塗布してウエットラミネートまたはドライラミネートの条件に合わせて転写造面を行って表皮層を形成させる。
【0082】
本発明で使用する合成擬革の基材としては、従来公知の合成擬革の基材がいずれも使用でき、例えば、綾織り、平織りなどからなる綿生地を機械的に起毛して得られる起毛布、レーヨン布、ナイロン布、ポリエステル布、ケブラー布、不織布(ポリエステル、ナイロン、各種ラテックス)、各種フィルム、シートなどが挙げられる。
【0083】
上記接着剤層を形成する好ましい材料としては、水性ウレタン系接着剤(e)、無溶剤ウレタン系接着剤(反応型も含む)(f)、または低分子ポリオールと二塩基酸とを反応して得られる無溶剤エステル系接着剤(反応型も含む)(g)が挙げられる。
【0084】
上記水性ウレタン系接着剤(e)としては、水溶性基と水酸基とブロックイソシアネート基を有する自己硬化型ウレタン系接着剤、シラノール基または不飽和基を有する自己硬化型ウレタン系接着剤が挙げられる。前記無溶剤ウレタン系接着剤としては、ホットメルト性ウレタン接着剤、イソシアネート基、ブロックイソシアネート基、シラノール基または不飽和基を有する自己硬化型ウレタン系接着剤が挙げられる。
【0085】
上記で使用する自己硬化型ウレタン系接着剤は、ポリイソシアネートと、ポリオールおよび/またはポリアミンと、同一分子内に少なくとも1個のアミノ基と少なくとも1個の水酸基とを有する化合物とを(必要に応じて鎖伸長剤と)フリーのイソシアネート基が残るように反応させ、残ったフリーのイソシアネート基をブロックして得られる。同一分子内に少なくとも1個のアミノ基と少なくとも1個の水酸基とを有する化合物としては、例えば、2−(ヒドロキシメチルアミノ)エタノール、アミノプロパノール、アミノブタノール、4−メチルアミノブタノール、2−ヒドロキシエチルアミノプロパノール、ジエタノールアミノプロピルアミン、1−アミノプロパンジオール、1−(メチルアミノ)プロパンジオール、N−メチルジエタノールアミン、N−メチルエタノールアミン、N−エチルエタノールアミン、N−n−ブチルエタノールアミン、N−t−ブチルエタノールアミン、N−(β−アミノエチル)イソプロパノールアミンなどの脂肪族アミノアルコール類、3−ピペラジンメタノール、2−ピペラジンエタノル、4−ピペラジノールなどのヒドロキシエチルピペラジン系などの化合物が挙げられる。これらは単独或いは2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0086】
前記自己硬化型ウレタン系接着剤のイソシアネート基のブロック剤は特に制限されず、公知のものから1種以上のものを使用することができる。該ブロック剤としては、例えば、オキシム系、アルコール系、フェノール系、活性メチレン系、ラクタム系、酸アミド系、酸イミド系などが使用できる。例えば、上記ブロック剤として、オキシム系化合物(ホルムアルドオキシム、アセトアルドオキシム、アセトンオキシム、メチルエチルケトオキシム、メチルイソブチルケトオキシム、シクロヘキサノンオキシムなど)、アルコール系化合物(2−ヒドロキシピリジン、ブチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコール、ベンジルアルコール、メタノール、エタノール、n−ブタノール、イソブタノール、2−エチルヘキサノールなど)、フェノール系化合物(フェノール、クレゾール、エチルフェノール、ブチルフェノールなど)、活性メチレン系化合物(マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセチルアセトンなど)、ラクタム系化合物(ε−カプロラクタム、δ−バレロラクタム、γ−ブチロラクタムなど)、酸アミド系化合物(酢酸アミドなど)、酸イミド系化合物(マレイン酸イミなど)が挙げられる。
【0087】
前記シラノール基含有ウレタン系接着剤の合成に使用されるシランカップリング剤は特に制限されず、公知のものから1種以上のものを使用することができる。例えば、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシランなどが挙げられる。
【0088】
前記不飽和基含有ウレタン系接着剤(紫外線硬化、電子線硬化)においては、同一分子内に不飽和基を導入する方法は特に制限されず、公知のものから1種以上のものを使用することができる。例えば、末端イソシアネートプレポリマーを合成した後、同一分子内に水酸基とビニル基とを含有する化合物を反応させる手法がある。同一分子内に水酸基とビニル基とを有する化合物としては、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、グリセリンモノアリルエーテル、トリメチロールプロパンジアリルエーテル、ペンタエリスリトールトリアリルエーテルなどが挙げられる。
【0089】
また、反応中および/または反応後に希釈する反応性希釈剤としては、前記の化合物の他に、ラジカル重合系の単官能アクリレート化合物類、多官能アクリレート化合物類またはカチオン重合系化合物類などがあるが、ラジカル重合系の単官能アクリレート化合物類としては、例えば、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、N−ビニルピロリドン、フェニル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、アクリロイルモルフォリンなどが挙げられる。また、多官能アクリレート化合物類は、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリトリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ペンタトリスリトールテトラ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。また、カチオン重合系希釈剤としてエポキシ化合物、オキタセン化合物、ビニルエーテル化合物などが挙げられる。
【0090】
前記不飽和基含有ウレタン系接着剤を使用する場合には、光重合開始剤を使用する。光によりラジカルを発生しラジカルが重合性不飽和化合物と反応するものが望ましい。特に限定するものではないが、例えば、ベンゾフェノン、アセトフェノン、ベンゾイン、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、2,4−ジメチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、エチルアントラキノン、4,4’−ビスジメチルアミノベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、ベンジルメチルケタノールなどが挙げられる。また、カチオン系重合開始剤としては、例えば、ジアゾニウム塩型化合物、スルホニウム塩型化合物、ヨードニウム塩型化合物などが挙げられる。これら化合物の配合は併用してもかまわない。また、電子線照射の場合には、特に光重合開始剤を使用する必要はない。
【0091】
前記無溶剤ポリエステル系接着剤としては、特に制限されず、公知のものから1種以上のものを使用することができる。例えば、低分子ポリオールの場合は、エチレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコールなど、二塩基酸は、アジピン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸から公知の縮合反応により得られるものが使用できる。
【実施例】
【0092】
以下に製造例、実施例および比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。また、以下の文中の「部」は質量部、「%」は質量%を示す。
【0093】
[合成例1〜3]
本発明に使用するウレタン系樹脂の合成例1〜3を示す。
攪拌機、還流冷却管、温度計、窒素吹き込み管およびマンホールを備えた反応容器を窒素ガスで置換した後、親水性基含有化合物(化合物a)、高分子ジオール(化合物c)、鎖伸長剤(短鎖ジオール成分:化合物E)、および両末端または片末端に水酸基を有するポリシロキサン(化合物b)およびアセトンを所定量加え、均一に溶解させ、溶液濃度を調節した。続いてヘキサメチレンジイソシアネート(化合物d)を所定量(NCO/OH=2.0)の当量比で加えて80℃で反応を行い、理論NCO%となるまで反応を行い、50℃に冷却し、固形分を30%または20%とするイオン交換水と、中和剤を所定量(COOHと当量となる量)加え、系内を均一に乳化させ、エチレンジアミン成分(残存NCO%と当量となる量)を投入して鎖伸長した。最後に、系内のアセトンを真空脱気して回収し、3種の本発明で使用するウレタン系樹脂を得た。該ウレタン系樹脂の原料組成配合を表1に示す。
【0094】

【0095】
註)
化合物a:
・a−1:ジメチロールブタン酸
・a−2:ジメチロールプロパン酸
【0096】
化合物c:
・PCD:プラクセルCD220、ポリカーボネートジオール(ダイセル化学工業社製、平均分子量2,000)

【0097】
鎖伸長剤E:
・1,3BD:1,3−ブタンジオール
【0098】
化合物b:
・b−1:(両末端ポリシロキサンジオール、nは整数、平均分子量1,900)

【0099】
・b−2:(片末端ポリシロキサンジオール、nは整数、平均分子量3,000)

【0100】
TEA:トリエチルアミン
HDI:ヘキサメチレンジイソシアネート
EDA:エチレンジアミン
【0101】
[合成例4:ミクロポーラス層用ウレタン系樹脂の合成]
攪拌機、還流冷却管、温度計、窒素吹き込み管およびマンホールを備えた反応容器を窒素ガスで置換した後、カーボネートジオール(水酸基価=56)150部、エチレングリコール10部および1,4−ブチレングリコール10部を所定量のN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)に溶解させ、溶液濃度を調節した。続いて4,4’−メチレンビス(フェニレンイソシアネート)(MDI)を所定量(NCO/OH=1.0)加えて80℃で反応を行い、IRスペクトルにてNCO%が消出するまで反応を行って、ミクロポーラス層用の高分子量タイプのウレタン系樹脂(A−1)は、該樹脂溶液は、不揮発分30%、粘度1,200dPa・sであった。
【0102】
[合成例5:水系ウレタン系接着剤の合成]
攪拌機、還流冷却管、温度計、窒素吹き込み管およびマンホールを備えた反応容器を窒素ガスで置換した後、親水基含有化合物としてジメチロールプロピオン酸10.72部、高分子ジオールとして数平均分子量1000のポリヘキサメチレンカーボネートジオール100.0部、鎖伸長剤(短鎖ジオール)として1,3−ブチレングリコール1.80部およびアセトン108.6部を加えた。続いてポリイソシアネートとしてヘキサメチレンジイソシアネート50.4部を加えて80℃にてジブチルチンジラウレートを触媒として加え、樹脂のNCO%が理論値となるまで反応を行った。
【0103】
次いで、ブロック剤としてメチルエチルケトオキシム3.48部を投入し、80℃にて樹脂のNCO%が理論量となるまで反応を継続した。得られた反応物を50℃に冷却し、固形分が40%となるイオン交換水60.7部、中和剤としてトリエチルアミン8.10部を所定量加え、攪拌条件下で系内を均一になるまで乳化させた。得られたウレタン水分散体に、少なくとも1個のアミノ基と少なくとも1個の水酸基が共存する化合物としてアミノプロパノール3.00部、ポリアミンとしてイソホロンジアミン9.85部を各々等量の水で希釈し加え、ウレタン水分散体のNCO基と反応させた。反応は赤外吸収スペクトルで2,270cm-1の遊離イソシアネート基による吸収が消失するまで行った。最後に、系内のアセトンを真空脱気して回収した。
【0104】
得られた自己硬化型水系ウレタン接着剤は、固形分40.3%、酸価25mgKOH/g、水酸基価13mgKOH/g、平均粒径20nmであった。この水系ウレタン系接着剤をB−1とする。
【0105】
[合成例6:水系ウレタン系接着剤の合成]
攪拌機、還流冷却管、温度計、窒素吹き込み管およびマンホールを備えた反応容器を窒素ガスで置換した後、親水基含有化合物としてジメチロールプロピオン酸10.72部、高分子ジオールとして数平均分子量1000のポリヘキサメチレンカーボネートジオール100.0部、鎖伸長剤(短鎖ジオール)として1,3−ブチレングリコール1.80部およびアセトン108.6部を加えた。続いてポリイソシアネートとしてヘキサメチレンジイソシアネート50.4部を加えて80℃にてジブチルチンジラウレートを触媒として加え、樹脂のNCO%が理論値となるまで反応を行った。
【0106】
得られた反応物を50℃に冷却し、固形分が40%となるイオン交換水と、中和剤としてトリエチルアミン8.10部を所定量加え、攪拌条件下で系内を均一になるまで乳化させた。得られたウレタン水分散体に、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン17部、ポリアミンとしてイソホロンジアミン9部を加え、反応は赤外吸収スペクトルで2,270cm-1の遊離イソシアネート基による吸収が消失するまで行った。最後に、系内のアセトンを真空脱気して回収した。この水系ウレタン系接着剤をB−2とする。
【0107】
[合成例7:紫外線硬化型接着剤の合成]
攪拌機、還流冷却管、温度計、窒素吹き込み管およびマンホールを備えた反応容器を窒素ガスで置換した後、数平均分子量2000のポリヘキサメチレンカーボネートジオール100.0部、水酸基とビニル基とを同一分子内に含有する化合物としてグリセリンモノアリルエーテル6.6部、希釈剤であるN,N−ジメチルアクリルアミドを52部仕込み、60℃に昇温し均一となったらポリイソシアネートとしてヘキサメチレンジイソシアネート15部を加えて80℃にてジブチルチンジラウレートを触媒として加え、赤外吸収スペクトルで2,270cm-1の遊離イソシアネート基による吸収がないことを確認した後、50℃に冷却し、光開始剤であるイルガキュアー651を5部加えた。得られた紫外線硬化型ウレタン系接着剤をB−3とする。
【0108】
[合成例8:ウレタン変性反応型エステル接着剤の合成]
攪拌機、還流冷却管、温度計、窒素吹き込み管およびマンホールを備えた反応容器を窒素ガスで置換した後、アジピン酸20部、テレフタル酸30部および1,6−ヘキサンジオール53部を仕込み210℃まで昇温を行った。反応は200℃到達時点より3時間行った。100℃まで冷却後、所定量(NCO/OH=2.0)のイソホロンジイソシアネートを加え、さらに3時間行った。得られた反応型ウレタン変性エステル接着剤は、不揮発分100%、融点93℃であった。このウレタン変性反応型エステル接着剤をB−4とする。
【0109】
実施例1〜3、比較例1
下記表1に記載の成分を配合して本発明および比較例の塗料を作成した。これらの塗料の固形分はイオン交換水の量を調製して20%とした。

【0110】
・合成例1:非シロキサン変性ウレタン樹脂
・C−1:カルボジライトV−02(日清紡社製、カルボジイミド系架橋剤)
・C−2:エポクロスWS−500(日本触媒社製、オキサゾリン系架橋剤)
・C−3:WB40−100(旭化成ケミカルズ社製、水分散型イソシアネート)
・着色剤:セイカセブンDW−794ブラック(大日精化工業社製、水分散型着色剤)
【0111】
実施例4
生地上に、ミクロポーラス層用ウレタン系樹脂(合成例4)100部をDMF100部で希釈した配合液を1,000g/m2・Wet塗布し、凝固槽(DMF/水=5/95)で10分間凝固させ、水洗浄/マングルを通して脱DMF工程を5回経た後に130℃、10分間乾燥してミクロポーラス層を仕上げ、その上に前記塗料例1を膜厚40μmとなる量を塗布し120℃、3分間乾燥して合成擬革を作製した。
【0112】
実施例5
離型紙(EV130 TPD-R8、リンテック社製)上に、前記塗料例2を塗布(20μm・Dryとなる量)および乾燥後(120℃、3分間乾燥)、前記接着剤(B−1)を塗布(40μm・Dryとなる量)および乾燥後(120℃、3分間乾燥)、塗布したものと生地とをラミネーターにて貼り合わせ、40℃、2日熟成して合成擬革を作製した。
【0113】
実施例6
離型紙(EV130 TPD-R8、リンテック社製)上に、前記塗料例3を塗布(20μm・Dryとなる量)および乾燥後(120℃、3分間乾燥)、前記接着剤(B−2)を塗布(40μm・Dryとなる量)および塗布したものと生地とをラミネーターにて貼り合わせて後、熱処理(140℃、5分間乾燥)し、離型紙を剥離して合成擬革を作製した。
【0114】
実施例7
離型紙(EV130 TPD-R8、リンテック社製)上に、前記塗料例1を塗布(20μm・Dryとなる量)および乾燥後(120℃、3分間乾燥)、前記接着剤(B−3)100部にエポクロスWS−500(日本触媒社製、オキサゾリン系架橋剤)を5部添加したものを塗布(40μmDryとなる量)後、紫外線を80mJ/cm2照射処理をした後、塗布物と生地とをラミネーターにて貼り合わせ、離型紙を剥離して合成擬革を作製した。
【0115】
実施例8
離型紙(EV130 TPD-R8、リンテック社製)上に、前記塗料例2を塗布(20μm・Dryとなる量)および乾燥後(120℃、3分間乾燥)、あらかじめ100℃に加温しておいた接着剤(B−4)を塗布(40μm・Dryとなる量)後、塗布物と生地とをラミネーターにて貼り合わせ、40℃、2日熟成し、離型紙を剥離して合成擬革を作製した。
【0116】
実施例9
離型紙(EV130 TPD-R8、リンテック社製)上に、前記塗料例3を塗布(20μm・Dryとなる量)後、前記接着剤(B−3)100部にPHDI(HDIのビウレット型、商品名:デュラネート24A−100、旭化成ケミカルズ(株)製)を5部添加したものを塗布(40μm・Dryとなる量)後、紫外線を80mJ/cm2照射処理をした後、塗布物と生地とをラミネーターにて貼り合わせ、40℃、2日熟成し、離型紙を剥離して合成擬革を作製した。
【0117】
比較例2
離型紙(EV130 TPD-R8、リンテック社製)上に、前記塗料例4を塗布(20μm・Dryとなる量)および乾燥後(120℃、3分間乾燥)、あらかじめ100℃に加温しておいた接着剤(B−4)を塗布(40μm・Dryとなる量)後、塗布物と生地とをラミネーターにて貼り合わせ、40℃、2日熟成し、離型紙を剥離して合成擬革を作製した。
【0118】
上記実施例4〜9および比較例2で作製した合成擬革の構成を下記表3に纏めた。

上記実施例4〜9および比較例2で作製した合成擬革を下記の項目で評価して、評価結果を表4に示した。
【0119】
ここで、各試験項目の内容を示す。
<VOC対策>
○:使用溶剤が0の場合
△:5%未満
×:5%以上
【0120】
<外観>
○:見ための感性がよく、天然皮革調に近いもの
×:そうでないもの
【0121】
<風合い>
○:ボリューム感がありソフトなもの
△:ややハードなもの
×:ハードなもの
【0122】
<耐寒屈曲>
フレキソ試験機にて0℃、屈曲回数2万回試験を行った。
○:変化がないもの
△:若干の亀裂があるもの
×:亀裂がひどいもの
【0123】
<磨耗性試験>
塗布した面を、平面摩耗試験機を使用して、6号帆布、荷重500gにて外観変化するまでの摩耗回数を測定した。
○:2000回以上
△:1000〜2000回未満
×:1000回未満
【0124】
<接着性試験>
塗布した面々を接着剤にて貼り合せた試験片を、新東科学(株)製のHEIDON−14DRを使用して180度剥離力を測定した。
○:1.2kg/cm以上
△:0.8kg/cm以上1.2kg/cm未満
×:0.8kg/cm未満
【0125】
<耐加水分解性>
ジャングル試験(温度:70℃、相対湿度95%、3週間)後の基材との接着強度を測定し、初期強度と比較した。
○:保持率が70%以上
△:69〜40%
×:40%未満
【0126】
<耐光性>
サンシャインウェザオメーター試験(温度:63℃、水無、120時間)後の基材との接着強度を測定し、初期強度と比較した。
○:保持率が70%以上
△:69〜40%
×:40%未満
【0127】
<耐熱性>
ギァオーブンにて試験を実施し、温度は、120℃、150時間後の基材との接着強度を測定し、初期強度と比較した。
○:保持率が70%以上
△:69〜40%
×:40%未満
【0128】

【0129】
なお、表皮層において、カルボジイミド系架橋剤および水分散イソシアネート系架橋剤は、水中に乳化するために導入したエチレンオキサイドセグメントが耐光性や耐熱性で劣化する傾向にある。また、水分散イソシアネート系架橋剤は、加工中に、一部水と反応してイソシアネート基が失活し耐久性がやや劣る。
【産業上の利用可能性】
【0130】
以上のように、本発明によれば、耐加水分解性、耐光性、耐熱性、風合い、接着強度、耐寒屈曲、耐磨耗性に優れたエコロジー素材である表皮層が、シロキサン変性ウレタン系樹脂と水系架橋剤とから得られ、接着剤層が、水性ウレタン系接着剤やウレタン系接着剤(反応型も含む)や、低分子ポリオールと二塩基酸とを反応して得られるエステル系樹脂の100%ソリッドからなる接着剤(反応型も含む)を利用した高耐久な合成擬革が提供される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シロキサン変性ウレタン系樹脂(1)と、水系架橋剤(2)とを水性媒体中に含有することを特徴とする合成擬革の表皮層形成用塗料。
【請求項2】
前記シロキサン変性ウレタン系樹脂(1)が、分子内に少なくとも1個の活性水素含有基と水酸基以外の親水性基とを有する化合物(a)0.01〜30質量%と、少なくとも1個の活性水素含有基を有するポリシロキサン(b)0.1〜50質量%と、ポリオールおよび/またはポリアミン(c)10〜95質量%と、ポリイソシアネート(d)とを、化合物(a)〜(c)の合計の全活性水素含有基と化合物(d)のイソシアネート基とを当量比(OH/NCO)0.9〜1.1で反応させて得られる樹脂である請求項1に記載の塗料。
【請求項3】
前記シロキサン変性ウレタン系樹脂(1)中に占めるポリシロキサンセグメントの割合が、0.01〜50質量%であり、該樹脂の数平均分子量が、2,000〜500,000である請求項1に記載の塗料。
【請求項4】
前記水系架橋剤(2)が、ポリイソシアネート系架橋剤(ブロック型を含む)、メラミン系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、エポキシ系架橋剤、シラノール系架橋剤、無機系架橋剤またはビニルエーテル系架橋剤である請求項1に記載の塗料。
【請求項5】
前記水系架橋剤(2)が、Tgが−5〜90(℃)、オキサゾリン基当量が100〜400のオキサゾリン系架橋剤である請求項4に記載の塗料。
【請求項6】
合成擬革の基材にミクロポーラス層または接着剤層を介して表皮層を形成する擬革の製造方法において、上記表皮層を請求項1に記載の塗料を使用して形成することを特徴とする合成擬革の製造方法。
【請求項7】
前記接着剤層を、水性ウレタン系接着剤(反応型も含む)、無溶剤ウレタン系接着剤(反応型も含む)、または低分子ポリオールと二塩基酸とを反応させて得られる無溶剤エステル系接着剤(反応型も含む)を使用して形成する請求項6に記載の製造方法。
【請求項8】
前記水性ウレタン系接着剤が、水溶性基と水酸基とブロックイソシアネート基とを有する自己硬化型ウレタン系接着剤、またはシラノール基または不飽和基を有する自己硬化型ウレタン系接着剤である請求項7に記載の製造方法。
【請求項9】
無溶剤ウレタン系接着剤が、ホットメルト性ポリウレタン接着剤、イソシアネート基、ブロックイソシアネート基、シラノール基または不飽和基を有する自己硬化型ウレタン系接着剤である請求項7に記載の製造方法。

【公開番号】特開2009−275173(P2009−275173A)
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−129758(P2008−129758)
【出願日】平成20年5月16日(2008.5.16)
【出願人】(000002820)大日精化工業株式会社 (387)
【出願人】(000238256)浮間合成株式会社 (99)
【Fターム(参考)】