説明

合成樹脂と充填剤を含有する組成物、その製法及びその組成物から得られたフィルム

(a)合成樹脂と(b)充填剤を含有する組成物であって、充填剤が(b1)15m2/g以上の比表面積を有する少なくとも1つの無機物質と(b2)少なくとも1つの界面活性剤及び/又は1つのコーティング剤を含有する前記組成物。その組成物を製造する方法。フィルムを製造するための組成物の使用、及びその組成物から開始して得られたフィルム。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は合成樹脂を含有する組成物に関する。
更に詳細には、少なくとも1つの合成樹脂と少なくとも1つの充填剤を含有する組成物に関する。
【0002】
包装産業では、合成樹脂、特に熱可塑性樹脂が薄膜の形で集中的に使われている。
熱可塑性樹脂のシートを製造するために一般に用いられる方法は、水相におけるモノマーを重合する工程、重合から得られた固形物を分離する工程及び集めた樹脂をインフレーションフィルム押出法に供する工程からなるものである。この方法は、特に、食材をパックすることを意図した、例えば、ポリ塩化ビニリデンから製造された薄膜の製造に適用されている。薄い塩化ビニリデンフィルムは、実際は、ガス透過性、特に周囲空気における酸素透過性が低い利点を有し、このことは食品の良好な保存に有利である。更に、食品の処理や販売に不可欠である特性、例えば、高可撓性や良好な機械強度を備えている。
塩化ビニリデンフィルムのある種の特性を改善するために、これらに鉱物質充填剤、例えば、炭酸カルシウムを組み込むことが知られている。
従って、国際出願第96/22329号においては、ポリマーのエマルジョンが凝固する前に炭酸カルシウムをポリマーのエマルジョンに添加して樹脂を形成する。しかしながら、この既知の方法は実施するのが難しい。特に、炭酸カルシウム粒子の一様な分配がエマルジョンにおいて得られることを可能にせず、これらの粒子はより大きな小滴に損害を与えて小さなポリマー小滴に優先して吸着されている。従って、その方法から得られる樹脂の特性は不均一であり、樹脂のその後の押出しについて有害な影響を有する。
それ故、現在の問題は、食品包装を意図した薄膜を製造するために必要とされる特性、即ち、良好な熱安定性及び低酸素透過性を有する組成物を提供することである。
ここで、これらの特性を同時に有する特別な組成物が見いだされた。
それ故、本発明の目的は、好ましくはインフレーションフィルム押出法によって、良好な熱抵抗と良好な酸素バリヤ特性を有する薄膜を与えるのに最適な能力を有する改良された組成物を提供することである。
【0003】
従って、本発明は、
(a)エチレン、プロピレン、スチレン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、アクリル酸、アルキルアクリレート、メタクリル酸、アルキルメタクリレート、アクリロニトリル、酢酸ビニル、ビニルアルコール、イソプレン、クロロプレン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレンのホモポリマー及びコポリマー、エチレンとα-オレフィンのコポリマー、プロピレンとプロピレン以外のα-オレフィンのコポリマー、塩化ビニリデンと塩化ビニルのコポリマー、塩化ビニリデンとアルキルアクリレートのコポリマー、塩化ビニリデンとアルキルメタクリレートのコポリマー、スチレンとブタジエンとゴムのコポリマー、アクリロニトリルとブタジエンのコポリマー、スチレンとアクリロニトリルのコポリマー、アクリロニトリルとブタジエンとスチレンのコポリマー、フッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンのコポリマー、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリフェニレンエーテル、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリベンズイミダゾール、ポリアルキレンオキシド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリイソシアネート、ポリフェニレンスルフィドより選ばれた少なくとも1つの合成樹脂、及び
(b)(b1)15m2/g以上の比表面積を有する少なくとも1つの無機物質と(b2)少なくとも1つの界面活性剤及び/又は少なくとも1つのコーティング剤を含有する少なくとも1つの充填剤
を含有する組成物に関する。
【0004】
本発明による組成物においては、合成樹脂は重合樹脂である。一般に受け入れられているように、ポリマーという表現が使われ、常にホモポリマー、コポリマー又はホモポリマー及び/又はコポリマーのブレンドを示すものである。“合成樹脂”、“重合樹脂”、“樹脂”及び“ポリマー”という表現は、以後同じ化合物を示すために用いられる。塩化ビニル、塩化ビニリデン、アクリル酸、そのエステル、メタクリル酸、そのエステルに基づくポリマーが好ましい。特に、塩化ビニリデンと塩化ビニルに基づくコポリマーや塩化ビニリデンとメチルアクリレートに基づくコポリマーが好ましい。塩化ビニリデンと塩化ビニルに基づくコポリマーのビニリデン含量は、一般的には40質量%以上、好ましくは45質量%以上、特に70質量%以上である。この含量は、通常は95質量%以下であり、有利には90質量%以下である。85質量%以下の値が特に適切である。塩化ビニリデンとメチルアクリレートに基づくコポリマーのビニリデン含量は、一般的には60質量%以上、好ましくは65質量%以上、特に75質量%以上である。この含量は、通常は99質量%以下であり、有利には95質量%以下である。92質量%以下の値が特に適切である。塩化ビニリデンとマレイン酸無水物又はイタコン酸に基づくコポリマーもまた適切なものである。
【0005】
本発明による組成物に関与する合成樹脂は、あらゆる既知の重合法、例えば、水性乳化重合、水性懸濁重合、溶液重合又は溶融重合によって得ることができる。水性懸濁重合や水性乳化重合が好ましい。水性乳化重合が特に好ましい。種々の重合法の中で、ハロゲン化誘導体又はキサンテート型の誘導体の存在下のラジカル重合法及び制御されたラジカル重合法が好ましい。
乳化重合法はポリマーの製造の領域において周知の技術である(PVDC and vinylidene chloride copolymers, Techniques de l'Ingenieur, Traite Genie des procedes, J. 6570)。ビニルポリマー、特にポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、塩化ビニルと塩化ビニリデンのコポリマーを製造するために一般に用いられている。この手法において用いられる水性ポリマーエマルジョンは、水又は水溶液における前記のポリマーのエマルジョンを示すものである。そのエマルジョンは、乳化重合法によるポリマーの製造に一般に用いられる添加剤を含有することができる。一般に用いられる添加剤は、安定剤、界面活性剤、重合開始剤、可塑剤を含んでいる。樹脂は、あらゆる既知の方法、例えば、ろ過、遠心分離、噴霧、アトマイジングによって分離することができる。これらの分離工程の前に凝固工程があり得る。分離の前に凝固工程がある方法が好ましい。
【0006】
エマルジョンの安定性は、ポリマー粒子の直径に左右される。この直径は、いくつかのパラメータ、特に用いられるポリマー、重合開始剤、用いられる界面活性剤、温度と撹拌、水における共存溶媒又は添加剤の存在、水溶性コモノマー、無機塩又は有機塩、消泡剤又はエマルジョン又は分散液をそれ自体構成する添加剤が存在するか又は存在しないに関係がある。実際には、ポリマー粒子の直径が10μm以下、好ましくは5μm以下であり得る水性エマルジョンによって良好な結果が得られる。特に、直径が1μm以下、好ましくは0.75μm以下、特に0.5μmであるポリマー粒子のによって良好な結果が得られる。直径が0.2μm以下のポリマー粒子が特に適切である。ポリマー粒子の直径は、0.05μm以上であり得る。直径が0.07μm以上の粒子が好ましい。
【0007】
懸濁重合法は、ポリマーの製造に周知の方法である(PVDC and vinylidene chloride copolymers, Techniques de l'Ingenieur, Traite Genie des procedes, J. 6570)。ビニルポリマー、特にポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、塩化ビニルと塩化ビニリデンのコポリマーを製造するのに一般に用いられている。この方法に用いられる水性ポリマー懸濁液は、水又は水溶液における前記ポリマーの懸濁液を示すものである。その懸濁液は、懸濁重合法によって合成樹脂の製造に一般に用いられる添加剤を含有することができる。通常用いられる添加剤は、安定剤、界面活性剤、重合開始剤、可塑剤を含んでいる。
【0008】
ポリマー粒子の直径は、いくつかのパラメーター、特に用いられるポリマー、重合開始剤、用いられる界面活性剤、分散剤、化学的性質と量、温度、撹拌に関してどちらにも関係がある。実際には、ポリマー粒子の直径が750μm以下、好ましくは500μm以下であり得る水性懸濁液によって良好な結果が得られる。直径が300μm以下のポリマー粒子が特に適切である。ポリマー粒子の直径は、10μm以上、特に50μm以上であり得る。直径が80μm以上のポリマー粒子が特に好ましい。
樹脂は、あらゆる既知の方法、例えば、ろ過、遠心脱水、減圧-ドラム脱水、スクリーニング又は遠心分離によって分離することができる。脱水を用いる手法が好ましい。
【0009】
本発明による組成物に用いられる無機物質は、あらゆる鉱物物質であり得る。この物質は、金属炭酸塩、シリカ、クレー、酸化アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、タルク、ゼオライト、金属粒子、ガラス粒子、これらの少なくとも2つの混合物であり得る。
アルカリ土類炭酸塩が好ましい。炭酸カルシウムや炭酸マグネシウムが特に好ましい。炭酸カルシウムが特に好ましい。これは、天然炭酸カルシウムでも合成炭酸カルシウムでもよい。天然炭酸カルシウムは、天然カルサイト又はアラゴナイト、チョーク又は大理石であってもよい。予め粉砕した乾燥したものでも懸濁したものでもよい。合成炭酸カルシウムが好ましい。合成炭酸カルシウムは、あらゆる手段によって得ることができる。これらの手段の中で、石灰乳から開始する二酸化炭素による炭酸カルシウムの沈殿(炭酸飽和法)又は石灰乳から開始するアルカリ金属炭酸塩を添加することによる沈殿(苛性化法)又は塩化カルシウムを含有する溶液から開始するアルカリ金属炭酸塩の添加による沈殿を考慮することができる。
【0010】
本発明の関連の範囲内で好ましい方法によれば、無機物質は、石灰乳の炭酸飽和によって沈殿する炭酸カルシウムである。この好ましい方法は、図1に示されている。容器(1)から石灰石は、ライン(2)を経て容器(3)(窯)に送られる。燃料と燃焼物は、ライン(4)を経て容器(3)に送られる。容器(3)において、石灰石は、生石灰(CaO)と二酸化炭素に変換される。二酸化炭素は、ライン(5)を経て容器(3)を離れ、容器(10)(カーボネータ)に入る。生石灰は、ライン(7)を経て容器(3)を離れ、容器(8)(ハイドレータ)に入る。水は、ライン(6)を経て容器(8)に注入される。容器(8)において、生石灰は、水と反応することによって水酸化カルシウム(Ca(OH)2)に変換される。水酸化カルシウム(石灰乳)の懸濁液は、ライン(9)を経て容器(8)を離れ、容器(10)(カーボネータ)に入る。容器(10)において、水酸化カルシウムは、二酸化炭素と反応することによって炭酸カルシウムに変換される。添加剤は、ライン(11)を経て容器(10)に導入することができる。おそらく添加剤を含有する炭酸カルシウムの懸濁液は、ライン(12)を経て容器(10)を離れ、容器(13)に入り、そこで、ろ過、乾燥、粉砕工程が行われる。そのように処理された炭酸カルシウムは、ライン(14)を経て容器(13)を離れ、容器(15)(貯蔵)に入り、その後、ライン(16)を経て充填領域(17)に送られる。
【0011】
本発明の関連の範囲内で特に好ましい手段によれば、炭酸カルシウムは、二酸化炭素を含有するガスによる石灰乳の炭酸飽和によって沈殿する。この好ましい手段において、石灰乳は、一般的には、水に微粒子の生石灰を分散させることによって得られ、二酸化炭素を含有するガスは、有利にはリッチガス、特に石灰窯ガスである。
このようにして沈殿する炭酸カルシウムは、あらゆる既知の手法、例えば、ろ過、アトマイゼーション、遠心分離によって調製媒体から任意に分離することができる。ろ過や遠心分離による手法が好ましい。
無機物質は、実質的にアモルファス又は実質的に結晶性であり得る。実質的にアモルファス又は結晶性は、X線回折法によって分析される場合に50質量%を超える物質がアモルファス又は結晶性物質の形であることを意味すると理解されている。実質的に結晶性の物質が好ましい。無機物質が炭酸カルシウムである場合には、それは、カルサイト又はアラゴナイト又はこれらの2つの結晶相の混合物からなることができる。カルサイト相が好ましい。
【0012】
本発明による方法の効率は、無機物質の粒子の寸法によって影響される。理論的には、方法の効率と方法から得られる組成物の品質は無機物質の粒径が微細なほど良好でなければならない。
本発明によれば、粒径は1μm以下の平均粒子直径を特徴とする無機物質が推奨される。直径が100nm以下の粒子が特に有利であり、50nm以下の直径が好ましい。直径が15nm以上の粒子が特に適切である。粒子の平均径は、リー・ナース法で測定される(NF 11601/11602規格)。
本発明によれば、比表面積は15m2/g以上である無機物質が推奨される。無機物質の粒子の比表面積は、有利には50m2/gより大きい。70m2/g以上の比表面積が特に推奨される。無機物質の粒子の比表面積は、一般的には100m2/g以下であり、90m2/g以下の比表面積の値が特に好ましい。比表面積は、標準BET法で測定される(ISO 9277規格, 1995-05-15)。
【0013】
その粒径に加えて、無機物質の形態は、また、得られる組成物の品質と特性において重要なパラメーターであるとわかる。無機物質が合成炭酸カルシウムである場合には、粒子は、針晶、偏三角面体、菱面体、球、小板又はプリズムの形をもつことができる。擬似立方体又は擬似球になり得る菱面体の形状が好ましい。
無機物質が炭酸カルシウムである場合には、国際出願第03004414号に記載され特許請求される方法によって得られる-ナノスケール構造-ナノ・ファゴット、ナノ・ロザリオ、ナノ・アコーディオンの炭酸カルシウムの種類によって注目すべき結果が得られた。ナノ・ファゴット、ナノ・ロザリオ、ナノ・アコーディオンの定義は、引例の国際出願第03004414号、5頁33行、7頁9行に示され、この明細書の記載は本願明細書に含まれるものとする。
無機物質が炭酸カルシウムである場合には、アトマイゼーションによって得ることができる微小球体物、おそらく中空によっても注目すべき結果が記録された。
【0014】
界面活性剤は、アルキル硫酸塩、アリールスルホン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩及びこれらの少なくとも2つの混合物より選ぶことができる。
アルキル硫酸塩は、アルキル硫酸、対応する塩及びこれらの少なくとも2つの混合物からなる群の化合物を示すとして理解されている。
アルキルという用語は、炭素原子数が1以上である直鎖又は分枝鎖脂肪族炭化水素基を意味する。この炭素原子数は望ましくは6以上である。10以上の多くの炭素原子が非常に適切である。この数は、通常は20以下、特に16以下である。ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸カリウム又はラウリル硫酸アンモニウムが好ましい。ラウリル硫酸ナトリウムが特に好ましい。
アリールスルホン酸塩は、アリールスルホン酸又はアルキルアリールスルホン酸又は対応する塩及びこれらの少なくとも2つの混合物からなる群の化合物を示すものとして理解されている。
アリールという用語は、炭素原子が少なくとも6個で炭素原子が10個を超えない単環又は二環式芳香族炭化水素基、例えば、フェニル基、ナフチル基を意味する。
アルキルアリールという用語は、上で定義したアリール残基に共有結合した上で定義したアルキル基を意味する。
好ましい方法では、界面活性剤は、以下の一般式で表される化合物より選ばれ得る。





【0015】
【化1】

【0016】
(式中、R1、R7、R9、R10は、独立して単結合、-O-、C1-C18アルキレン基又は-C2-C18アルケニレン基(ここで、アルキレン鎖又はアルケニレン鎖において、1つ、2つ又は3つの-CH2-基は、-O-で任意に置換されていてもよい)であり; R2、R3、R4、R5、R6は、独立して-H、-C1-C18アルキル基(ここで、アルキル鎖において、1つ、2つ又は3つの-CH2-基は、-O-で任意に置換されていてもよい)、OH、-F、-Cl、-CN、-CO2H、-CO-C1-C6アルキル、-CO2-C1-C6アルキル、-O-CO-C1-C6アルキル、-NO2、-NH2、-NH-C1-C6アルキル又は-N(C1-C6アルキル)2であり; R8は、-H又はC1-C6アルキルであり; R11、R12は、独立して-H、-C1-C18アルキル基(アルキル鎖において、1つ、2つ又は3つの-CH2-基は、-O-で任意に置換されていてもよい)、-NH2、-NH-C1-C6アルキル又は-N(C1-C6アルキル)2である。
“アルキレン”という用語は、2価の直鎖又は分枝鎖、例えば、-CH2-、-CH2CH2-、-CH2CH2CH2-、-CH2CH2CH2CH2-、-CH(CH3)-、-CH2CH(CH3)-、-CH2CH2CH(CH3)-、-CH=C(CH3)CH2-等を意味すると理解されている。
“アルケニレン”という用語は、2価の直鎖又は分枝鎖、例えば、-CH=CH-、-CH2CH=CH-、-CH2CH2CH=CH-、-CH=C(CH3)-、-CH2CH=C(CH3)-、-CH=C(CH3)CH2-等を意味すると理解されている。
【0017】
好ましい方法では、一般式(I-A)及び(I-B)によって表される化合物において:
R1、R7、R9、R10は、独立して単結合又は-C1-C6アルキレン基(ここで、アルキレン鎖において、1つ、2つ又は3つの-CH2-基は、-O-で任意に置換されていてもよい)であり;
R2、R3、R4、R5、R6は、独立して-H又は-C1-C18アルキル基(ここで、アルキル鎖において、1つ、2つ又は3つの-CH2-基は、-O-で任意に置換されていてもよい)であり;
R8は、-H又はC1-C6アルキルであり;
R11、R12は、独立して-C1-C12アルキル基(ここで、アルキル鎖において、1つ、2つ又は3つの-CH2-基は、-O-で任意に置換されていてもよい)である。
【0018】
特に好ましい方法では:
R1、R7は、単結合であり、
R2、R3、R5、R6は、-Hであり、
R4は、-H又は-C1-C18アルキル基であり、
R8は、-Hであり、
R9、R10は、独立して単結合又は-CH2-であり、
R11、R12は、独立して-C1-C12アルコキシ基である。
“アルコキシ”という用語は、酸素原子に共有結合で結合された上で定義されたアルキル残基、例えば、-OCH3、-OCH2CH3等を意味する。
アリールスルホン酸塩の中で、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムが特に好ましい。
アルキルスルホコハク酸塩の中で、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウムが特に好ましい。
【0019】
充填剤の界面活性剤含量は、一般的には0.1質量%以上、好ましくは0.5質量%以上、特に1質量%以上である。この含量は、通常は20質量%以下、特に15質量%以下である。5質量%以下の含量が特に適切である。
コーティング剤は、飽和又は不飽和脂肪酸、対応する塩又はこれらの少なくとも2つのあらゆる混合物より選ばれることができる。脂肪酸は、炭素原子数が一般的には6以上、好ましくは12以上、特に14以上である。この炭素原子数は、通常は26以下、特に22以下である。18以下の炭素原子数が特に適切である。ステアリン酸、パルミチン酸、オレイン酸を含有する混合物が特に好ましい。このような混合物は、“ステアリン”とも呼ばれ、特に商品名Priplus、Edenor、Pristerene、Undesa、Prifac、Radiacid、Safacid、Cremerとして市販されている。このような混合物、例えば、いわゆる工業銘柄ステアリン酸は、ステアリン酸約60-65wt.%とパルミチン酸約40-35wt.%を含有し、残部は主にオレイン酸である。
充填剤のコーティング剤含量は、一般的には0.5質量%以上、好ましくは1質量%以上、特に2.5質量%以上である。この含量は、通常は25質量%以下、特に20質量%以下である。15質量%以下の含量が特に適切である。
組成物の充填剤含量は、0.5質量%以上であり得る。この含量は好ましくは1質量%以上、特に2質量%以上である。この含量は、通常は10質量%以下、特に5質量%以下である。3質量%以下の含量が特に適切である。
【0020】
本発明による組成物は、種々の方法によって得ることができる。結果として、それ故、本発明は、また、少なくとも1つの合成樹脂と少なくとも1つの充填剤を含有する組成物を製造するための方法であって、ポリマーを調製し、それに少なくとも1つの充填剤を添加し、充填剤が(a)比表面積が15m2/g以上の少なくとも1つの無機物質と(b)少なくとも1つの界面活性剤及び/又は少なくとも1つのコーティング剤を含有する、前記方法に関する。
本発明による方法では、合成樹脂は固体又は水性エマルジョン又は水性懸濁液の形で使用し得る。固体又は水性エマルジョンの形で合成樹脂を用いることが好ましい。
固体合成樹脂は、あらゆる既知の手法、例えば、ろ過、遠心分離、噴霧又はアトマイジングによって重合媒体から分離される樹脂を意味すると理解され、これらの操作の前に凝固工程が可能である。固体は、ポリマー自体以外の化合物、例えば、重合工程中に用いられる1つ以上の添加剤を含有することができる。固体の水分は、1.5質量%以下であり得る。この含量は、好ましくは0.8質量%以下、特に0.3質量%以下である。
樹脂の水性エマルジョンは、上記のような乳化重合法から得られる水相を意味すると理解されている。
樹脂の水性懸濁液は、上記のような懸濁重合法から得られる水相を意味すると理解されている。
本発明による方法では、無機物質と界面活性剤又はコーティング剤を含有する充填剤は、乾燥固体又は湿潤ケーク又は水性スラリーとして形成することができる。乾燥固態における適用又は水性スラリー状態における適用が好ましい。
乾燥固体は、上記のようにその調製媒体から分離される固体充填剤を意味すると理解され、その水分は10質量%以下であり得る。この含量は、好ましくは5質量%以下、特に3質量%以下である。1質量%以下の含量が特に適切である。
【0021】
湿潤ケークは、上記のようにその調製媒体から分離される固体充填剤を意味すると理解され、その水分は70質量%以下であり得る。この含量は、好ましくは50質量%以下である。この水分は、通常は10質量%以上、特に30質量%以上である。
水性スラリーは、湿潤フィルタケーキとは別にポンプで送ることができる固体物質の水性懸濁液を意味すると理解されている。本発明による方法では、安定なスラリーを製造するのに最適な充填剤含量は、いくつかの要因、特に作業温度や無機物質の粒径に左右される。一般に、スラリーにおける無機物質の濃度は、30g/l以上、好ましくは180g/l以上であり得る。この濃度は、一般的には250g/l以下、特に180g/l以下である。
充填剤が含有する界面活性剤は、固体又は溶液又はエマルジョン又は懸濁液の形で使われ得る。好ましくは、溶液又はエマルジョンの形で用いられる。充填剤の調製媒体における界面活性剤を導入することが可能である。界面活性剤は、好ましくは溶液又はエマルジョンの形で導入される。
充填剤が含有するコーティング剤は、固体又は液体又は溶液又はエマルジョン又は懸濁液の形で使われ得る。エマルジョン又は融解した固体の形で用いることが好ましい。充填剤を調製するための媒体に導入することができる。コーティング剤は、好ましくは、エマルジョン又は固体の形で導入される。
【0022】
本発明による第1変形例によれば、ポリマーは固体の形で分離され、充填剤が乾燥固体の形でそれに添加され、ブレンドが液体の非存在下で実質的に混合される。実質的に液体の非存在下は、混合物における液体含量が、一般的には混合物の15g/kg以下、好ましくは8g/kg以下、特に3g/kg以下であることを意味すると理解されている。無機物質とコーティング剤を含有する充填剤を添加することが好ましい。特に、無機物質とステアリンを含有する充填剤を添加することが好ましい。
混合は、あらゆる種類の周知の手段によって行われる。低速型、高速型又はプラネタリ型のミキサにおける混合又は単軸又は2軸型の押出機における混合が好ましい。低速ミキサーにおける混合が特に好ましい。
【0023】
本発明による第2変形例によれば、ポリマーの水性エマルジョンが調製され、充填剤がそれに添加され、エマルジョンが凝固する。
充填剤は、乾燥固体、湿潤ケーク又は水性スラリーの形で添加することができる。水性スラリーの形の充填剤の添加が好ましい。
水性エマルジョンの凝固は、サイズが10〜1200μmである物質に集合するにつれて沈降するポリマー粒子の凝固を生じることによってエマルジョンのコロイド安定を砕壊することからなる。エマルジョンの凝固を生じる種々の手段が知られている。好ましい手段は、エマルジョンに凝結剤を添加することからなる。これは、一般的には適切な金属塩、例えば、アルミニウム塩である。水性エマルジョンと充填剤の水性スラリーの混合物における凝固剤の濃度は、5質量%以下、好ましくは2質量%以下、特に1.5質量%以下であり得る。この濃度は、一般的には0.05質量%以上、特に0.10質量%以上である。0.15質量%以上の濃度が特に適切である。
凝固後に集められる組成物は、通常は乾燥に供され、その後、使用のために貯蔵される。
【0024】
全て他の条件が同じなら、本発明による方法において、凝固後に得られる組成物の品質及び特性は、いくつかのパラメータ、特に、エマルジョンにおけるポリマーの含量、スラリーにおける充填剤の濃度、用いられるスラリーの量の組合せに左右される。
本発明による方法の有利な実施態様においては、ポリマーエマルジョンは、少なくとも30g/lを含有し、450g/l以下のポリマー、好ましい方法では250g/l以下のポリマーを含有し、スラリーは水性懸濁液1kgにつき少なくとも25gで且つ250g以下の充填剤を含有し、スラリーは組成物が一般的には少なくとも0.5質量%、好ましくは少なくとも1質量%、特に少なくとも2質量%の充填剤を含有し、また、組成物が10質量%以下、特に5質量%以下、更に特に3質量%以下の充填剤を含有するのに充分な量で用いられる。
更に、全て他の条件が同じなら、ポリ塩化ビニリデンを含有する組成物の製造の場合、上記のようにナノメートル規模で構成された炭酸カルシウムの結晶形態は、組成物における最適取込み効率を可能にする。取込み効率は、スラリーに使われた組成物に実際に取込まれた炭酸カルシウムの質量の比率を意味すると理解されている。
【0025】
上述したように、本発明による方法に用いられる充填剤のスラリーは、無機物質と界面活性剤及び/又はコーティング剤を含有する。いかなる特定の理論にも縛られることを望まないが、この物質はポリマーエマルジョンにおいて充填剤の分散粒子を容易にする機能を有すると考えられる。しかしながら、物質の選択が組成物の特性について、また、この組成物によって製造された製品の特性について影響をもち得ることが認められた。特に、ポリ塩化ビニリデンを含有する組成物の場合、その物質に適していない選択は組成物によって製造されたシートの特性について、特に熱抵抗や空中の酸素に対する不透過性について負の影響をもち得る。
従って、本発明による方法の有利な実施態様においては、無機物質が沈降炭酸カルシウムである場合、スラリーはイオン化合物である界面活性剤を含有する。この化合物は、好ましくは、スラリーが添加されるエマルジョンと適合できるものである。樹脂がポリ塩化ビニリデンを含有する場合には、界面活性剤は、有利には、アリールスルホン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩、アルキル硫酸塩及びこれらの少なくとも2つの混合物より選ばれる。
【0026】
本発明に従って得られる組成物は、既知の組成物より優れた注目すべき特性を有する。これらの注目すべき特性は、特に塩化ビニリデンを含む組成物に見ることができ、組成物における炭酸カルシウムの分散のより良好な均一性と改良された多孔性によって特により良好な押出成形性に関する。組成物の多孔性は、一方では、凝固法における急速な乾燥に有利であり、一方では、押出機におけるその後の処理の間での添加剤の改良された吸着を可能する。その上、組成物に測定される多孔性における増加にもかかわらず、得られた分散液の注目すべき均一性によって、得られたフィルムは良好な酸素バリヤ特性を維持する。より良好な外観も有する。これらの特性は、食品業界で用いるのに特によく適したものにする。得られたフィルムはまた、特に医療用途に適している感触を有する。
従って、本発明は、また、フィルムを製造するための本発明による組成物の使用に関する。好ましい方法では、それらのフィルムはインフレーションフィルム押出法によって得ることができる。
従って、本発明は、また、本発明による組成物から開始して得られるフィルムに関する。
以下の実施例は、本発明を具体的に説明するために役立つが、以下の請求項の範囲を制限しない。
【実施例】
【0027】
乳化重合法によって固体重合体を調製する方法
容積が67リットルのエナメルオートクレーブ(AC)は、12リットル容量ジャケットを備え、反応混合液において測定される温度に従って作動する2つの調整弁を通って3バールの蒸気と水を導入することによってその温度を調節し、
- 12リットルの脱イオン水を導入し、
- 2.26モルのドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムを導入し、
- 4gのアスコルビン酸を導入し、
- 無水140ミリバール絶対圧まで10分間かけて減圧を加え、
- 0.5バールの相対圧まで10分間窒素を導入することによってオートクレーブを加圧し、
- 容器のジャケットの温度を15℃まで調節しつつ、140ミリバール絶対圧まで減圧を加え、
- 8kgの未安定化塩化ビニリデン(純度=少なくとも99.97%)と
- 2kgの塩化ビニルを導入した。
反応混合物をImpeller 3C型のスターラによって40rpmで撹拌した。同時に、反応混合液を43℃の温度にした。温度が41℃に達したとき、過酸化水素(0.7g)を導入した。
30分間後、5g/lの過酸化水素溶液と20g/lアスコルビン酸溶液を同時に添加して、13℃と25℃間のオートクレーブの内部温度とジャケットの内部温度間の温度差を維持した。重合の少なくとも1時間後で12時間以内に、ACにおける圧力が少なくとも0.35バールだけ低下したときに過酸化水素の注入を停止し、圧力の低下が0.55バールに達したときに過酸化水素の導入を停止した。
【0028】
次に、反応混合液を50℃に加熱し、ACを減圧下に置いて、残存モノマーを除去して、食品用途におけるその使用と適合するレベルを得た。この工程の間、撹拌を20rpmに減少させた。次に、反応混合液を25℃に冷却した。
凝固工程によって反応混合液からポリマーを分離した。3リットルの反応混合について、操作手順は以下の通りにした。
- 凝固溶液を添加して、温度を水浴によって維持した容器の底部を覆った。この1リットルの容積は、0.17gの硝酸アルミニウムの濃度を含有した。目標とする最終粒径に従って温度を10℃〜14℃に維持した。反応混合物と凝固溶液の残りを、温度を維持しながら、また、6枚のブレードを有する曲刃スターラを用いて125rpmで連続して撹拌しながら同じ時間かけて同時に添加した。これは、以下に対応した。
- 200g/lの濃度の3リットルの反応混合液、
- 1リットルの0.34g/l硝酸アルミニウム溶液。
この二重添加を30分かけて行い、凝固容器において相互に反対側に直径に沿って反応混合液と凝固溶液のための入口を配置するように注意した。この工程が完了するとすぐに、また、凝固の品質を証明した後に、樹脂を90分間かけて70℃にすることによって熱処理工程を行った。次に、樹脂を30℃に冷却した後、減圧下にブフナー漏斗で取り出した。樹脂を2リットルの脱イオン水に2回溶解して、完全にすすぐとともにそのつどブフナー漏斗で取り出した。減圧下この3回目の取り出しの終わりに、ケークをRetschブランドの小さな流動床乾燥機のボウルに導入し、次に、30℃で空気を通過させることによって乾燥した。2時間後、樹脂は乾燥し、揮発分(水)含量は、質量/質量に基づいて0.3%未満であった。
【0029】
懸濁重合法によって固体重合体を調製する方法
容積が67リットルのエナメルオートクレーブ(AC)は、12リットル容量ジャケットを備え、反応混合液において測定される温度に従って作動する2つの調整弁を通って3バールの蒸気と水を導入することによってその温度を調節し、
- 17リットルの脱イオン水を導入し、
- ラウロイルペルオキシド薄片(100 g)を導入し、
- 30gのメチルプロポキシセルロール型分散剤、例えば、Culminal C3550を導入し、脱イオン水で調製して、10g/lの濃度を得、
- 無水140ミリバール絶対圧まで10分間かけて減圧を加え、
- 0.5バールの相対圧まで10分間窒素を導入することによってオートクレーブ(AC)を加圧し、
- 容器のジャケットの温度を15℃まで調節しつつ、140ミリバール絶対圧まで減圧を加え、
- 9kgの未安定化塩化ビニリデン(純度=少なくとも99.97%)と
- 1kgの塩化ビニルを導入した。
【0030】
反応混合物をImpeller 2B型のスターラによって40rpmで撹拌した。同時に、反応混合液を75℃の温度にした。反応が完了したとき、ジャケットと反応混合液間の温度差が2℃未満になるまで減少させ、15分間放置した後、反応混合液を冷却した。樹脂が得られるとすぐに、ストリッピングによって残存モノマーを除去する工程を行い、スラリー、水と樹脂の混合液を加熱によって100℃にし、オートクレーブ内を減圧にした。2時間ストリッピングした後、水をジャケットに導入することによって反応混合液を冷却し、減圧下ブフナー漏斗によるフィルタで取り出した。樹脂を2リットルの脱イオン水に2回溶解して、完全にすすぐとともにそのつどブフナー漏斗で取り出した。減圧下この3回目の取り出しの終わりに、ケークをRetschブランドの小さな流動床乾燥機のボウルに導入し、次に、30℃で空気を通過させることによって乾燥した。2時間後、樹脂は乾燥し、揮発分(水)含量は、質量/質量に基づいて0.3%未満であった。
【0031】
被覆されていない乾燥沈降炭酸カルシウム(PCC)を調製する手順
30容積%のCO2を含有する炭素ガスの流れを石灰濃度が180g/l、温度が20℃、流量が16m3/hの石灰乳を含有する40リットルの反応器に導入した。約90分後、水酸化カルシウムの100%が炭酸カルシウムに変換された。PCCをろ過によって回収し、約105℃で乾燥し、次に、固体をAlpine型グラインダで粉砕した。固体の比表面積は、約20m2/gであった。
反応混合物における種々の量のクエン酸の存在下に同じ方法で進行させて、比表面積が約66m2/g又は約80m2/gの固体を得た。
【0032】
被覆された乾燥PCCを調製する手順
30容積%のCO2を含有する炭素ガスの流れを石灰濃度が180g/l、温度が20℃、流量が16m3/hの石灰乳を含有する40リットルの反応器に導入した。約90分後、水酸化カルシウムの100%が炭酸カルシウムに変換された。得られたPCCの懸濁液を約80℃にし、次に、80℃にしたステアリンの水性エマルジョンを添加した。エマルジョンのステアリン含量を算出して、乾燥炭酸カルシウムに基づき約3〜12質量%の含量を得た。系を約30分間撹拌した後、ろ過し、次に、105℃で乾燥し、最後に粉砕した。ステアリンの水性エマルジョンを、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムの溶液で置き換えることができ、乾燥炭酸カルシウムに基づき約1〜4質量%の含量を得るようにこの濃度を算出した。
【0033】
フィルムを製造する手順
樹脂を、まず第一に種々の添加剤、例えば、可塑剤、液体熱安定剤、ワックスの存在下で予備混合した。次に、このプレミックスをパリソンを備えた押出機に導入した。150℃に加熱した押出機から集めた管状パリソンを吹込み成形によってフィルムに変換した。
押出しの前に
4質量%のセバシン酸ジブチル;
1.2%エポキシド化大豆油を
70℃で混合することができた。
【0034】
樹脂及びフィルムの特性を分析する方法
取込み効率
用いられる(乾燥状態で又はスラリーで)炭酸カルシウム(乾燥状態で)の質量パーセントで表される、組成物における炭酸カルシウムの取込み効率(IE)。
60℃に加熱したテトラヒドロフランのアリコートに樹脂を溶解し、次に、塩酸水溶液を添加することによる、混合物のカルシウム含量を求めることによって、取込み効率を算出した。得られた水相をろ過によって分離し、次に、ICP-AESによって又は比色分析によって分析した。
【0035】
DOP多孔性
組成物の孔における可塑剤(ジオクチルフタレート)の吸着によってDOP多孔性を測定した。可塑剤を吸着するとともに押出しを受ける組成物の能力は、DOP多孔性と比例する。組成物の既知の質量アリコートをジオクチルフタレートの同じ量と接触して配置した。周囲温度で30分間の接触時間の後、ろ過閾値がポリマー粒子を保持するフィルタカートリッジに全体を配置した。ろ過は、遠心分離(30秒)によって行い、回収したDOPの量を量り、示された多孔性は最初の混合物に用いられた量に関して樹脂に組み込まれたDOPのパーセントに対応した。
【0036】
FFD又は自由流動密度
これは、250gの樹脂の質量をシリンダにある高さに配置することを含み、旋回するディスクによって閉じた。既知の容積を有するシリンダをこのチューブの下に配置し、樹脂の受器として作用し、ディスクストッパーが片側に動いたときに重力によって流動した。受容試験管の端に依存するルールを通ることによって樹脂の余りをこすり取った。次に、含有する樹脂の質量を量り、受容試験管の樹脂の質量/容積の比からFFDを推論した。
【0037】
粒子径分布
樹脂エマルジョンの場合、閾値が最も粗いものから最も微細なもの、850μm、500μm、350μm、250μm、104μm、44μmである一連のスクリーンによって樹脂をスクリーニングすることにより粒子径分布を得た。
球状の粒子を有する樹脂懸濁液の場合には、マルバーン又はクールターブランドの装置を使って用いられた光散乱とした。d10、d50、d90データを抜き取ることが可能な曲線を得た。d10は、例えば、樹脂質量の10%だけを通過させることを可能にするスクリーンの所要径を示すとして理解されている。平均径は、d50と呼ばれる。分布は、比(d90 - d10)/d50に従って得られる指数に対応する範囲のデータによって示される。
本発明による第2変形例から得られる組成物の粒子径分布を、上記のスクリーニング法によって求めた。組成物の平均径dm、直径d50及び粒径の広がりηを算出した。
これらの3つのパラメータは次式によって定義される。
dm = Σnidi/n
η= (d90 - d10)/d50
(式中、niは、直径diの粒子の質量であり;
nは、組成物の全質量であり(= Σni);
d90は、組成物の質量の90%が通過するスクリーンの直径であり;
d10は、組成物の質量の10%が通過するスクリーンの直径であり;
d50は、組成物の質量の50%が通過するスクリーンの直径である。)
【0038】
熱安定性
熱安定性(TS)を、Brabenderブランドのツインカムミキサ(1つのマスタと1つのスレーブ)において160℃で測定した。混合物の色の変化と従属カムが受けるトルクの変化を記録した。分で測定される熱安定性は、トルクの減少勾配において見出される破壊、生成物の三次元再構築、従って、炭になる前の不可逆的分解を示す破壊に必要な期間に対応したものである。
【0039】
酸素透過性
フィルムが得られるとすぐに、その厚みを光回折(赤外分光学)で測定した。フィルムを、二重網目構造に含まれるセルの上側に密封して配置した。純粋な酸素の流れは下に循環し、窒素の流れは上に循環し、フィルムを通って移動した酸素を伴出した。次に、この酸素を電量分析的に分析し、一時的な期間は別として、24時間の間に移動した量に、膜厚、ミクロンを掛けて、固有の透過性、酸素/日μmのg、また、25℃、85%湿度におけるそれを定義した(ASTM規格D-3985-81)。
【0040】
本発明による第1変形例
各々の実施例において、前に詳述された手順に従って、懸濁重合から固体重合体が得られた。固体重合体と充填剤を以下の手順によって混合した。
500gの粉末状ポリマーを、容量が1kgの、混合物の温度を維持するための系を備えた緩慢なプレミキサに入れた。この樹脂を30分間撹拌して、温度を50℃にし、次に、7.5gの乾燥充填剤(沈降炭酸カルシウム、PCC)を添加し、その温度を6時間維持しつつ撹拌を連続して行った。混合が完了するとすぐに、生成物を移すときに注意して、本質的にミキサーのブレード上に形成したものである硬い凝集体をスクリーニングした。混合する前に、エポキシド化大豆油(ESO, Edenol(登録商標) D82)が上記の化合物に任意に添加されてもよい。
次に、混合物から得られた組成物を用いて以下に記載される手順に従ってフィルムを製造した。
【0041】
実施例1(本発明によらない)
混合物から得られた組成物はエポキシド化大豆油又は充填剤を含有しなかった。
実施例2(本発明によらない)
混合物から得られた組成物はエポキシド化大豆油だけを含有した。
実施例3(本発明による)
樹脂を、エポキシド化大豆油と、比表面積が約80m2/gの沈降炭酸カルシウムとコーティング剤として12質量%(PCCに対して)のステアリンを含有する充填剤と混合した。
実施例4(本発明による)
樹脂を、エポキシド化大豆油と、比表面積が約20m2/gの沈降炭酸カルシウムとコーティング剤として3質量%(PCCに対して)のステアリンを含有する充填剤と混合した。
実施例5(本発明による)
樹脂を、エポキシド化大豆油と、比表面積が約66m2/gの沈降炭酸カルシウムと界面活性剤として9.9質量%(PCCに対して)のドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムを含有する充填剤と混合した。
実施例6(本発明による)
樹脂を、比表面積が約66m2/gの沈降炭酸カルシウムとコーティング剤として3.3質量%(PCCに対して)のドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムを含有する充填剤と混合した。
実施例7(本発明による)
樹脂を、比表面積が約20m2/gの沈降炭酸カルシウムとコーティング剤として12質量%(PCCに対して)のステアリンを含有する充填剤と混合した。
表1は、混合物の異なる成分の濃度(質量部で)並びに混合物から得られた組成物の特性及びこれらの組成物から開始して得られたフィルムの特性を示すものである。
【0042】
【表1】

フィルム外観: (a)正常、(b)半透明、(c)波形。
【0043】
本発明の第2変形例
各実施例において、前に詳述した手順に従い乳化重合法によって脱イオン水においてポリ塩化ビニリデンの水性エマルジョンを調製した。得られたエマルジョンは、1リットルにつき200gの樹脂(乾燥物質の質量)を含有した。
同時に、前に詳述した手順に従って1リットルにつき100gの炭酸カルシウム(乾燥物質の質量)を含む炭酸カルシウムのスラリーを調製した。
次に、1リットルにつき0.2gのアルミニウム塩(凝固剤)をエマルジョンに添加し、エマルジョンが2.5質量%の乾燥物質に実質的に等しい炭酸カルシウムの量を含有するようにスラリーの量を調整した。その混合液を、13℃の温度でラテックスの完全な凝固を得るのに必要な時間維持した。次に、凝固後に集めた組成物を、70℃で90分間の加熱処理に供した。次に、組成物を脱イオン水で洗浄し、その後、60℃で周囲空気における流動化によって乾燥した。
次に、得られた組成物について以下のパラメータを分析した。
- 取込み効率(IE)
- DOP多孔性
- 自由流動密度(FFDに略される)
- 組成物の粒子径分布
- 組成物の熱安定性(TS)。
組成物をインフレーションフィルム押出試験に供して、その酸素透過性を測定した。押出しの前に、以下の成分を70°で混合しつつ組成物に添加した。
- 4質量%のセバシン酸ジブチル;
- 1.2%のエポキシド化大豆油。
【0044】
実施例8(本発明によらない)
本実施例では、樹脂は炭酸カルシウムの不在下で凝固した。
実施例9(本発明による)。
超微細形態で、平均径が15nm、比表面積が80m2/gの炭酸カルシウムを用い、界面活性剤としてドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムを水性スラリーに導入した。
実施例10(本発明による)
実施例1と同じ炭酸カルシウムは用いたが、ラウリル硫酸ナトリウムを界面活性剤として水性スラリに導入した。
実施例11(本発明による)
水性スラリーに以前に導入されたドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムを含有する、比表面積が25m2/gの国際出願第03/004414号に記載される方法に従って得られた、ナノメートル規模で構成された、炭酸カルシウムを用いた。
実施例12(本発明による)
水性スラリーに以前に導入されたドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムを含有する微小球体構造を有する、ナノメートル規模で構成された炭酸カルシウムを用いた。
試験の結果を下記の表2に示す。
【0045】
【表2】

【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】石灰乳の炭酸飽和によって沈殿する炭酸カルシウムの合成法を示す図である。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)エチレン、プロピレン、スチレン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、アクリル酸、アルキルアクリレート、メタクリル酸、アルキルメタクリレート、アクリロニトリル、酢酸ビニル、ビニルアルコール、イソプレン、クロロプレン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレンのホモポリマー及びコポリマー、エチレンとα-オレフィンのコポリマー、プロピレンとプロピレン以外のα-オレフィンのコポリマー、塩化ビニリデンと塩化ビニルのコポリマー、塩化ビニリデンとアルキルアクリレートのコポリマー、塩化ビニリデンとアルキルメタクリレートのコポリマー、スチレンとブタジエンとゴムのコポリマー、アクリロニトリルとブタジエンのコポリマー、スチレンとアクリロニトリルのコポリマー、アクリロニトリルとブタジエンとスチレンのコポリマー、フッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンのコポリマー、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリフェニレンエーテル、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリベンズイミダゾール、ポリアルキレンオキシド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリイソシアネート、ポリフェニレンスルフィドより選ばれた少なくとも1つの合成樹脂、及び
(b)(b1)15m2/g以上の比表面積を有する少なくとも1つの無機物質と(b2)少なくとも1つの界面活性剤及び/又は少なくとも1つのコーティング剤を含有する少なくとも1つの充填剤
を含有する組成物。
【請求項2】
合成樹脂が、少なくとも40質量%の塩化ビニリデンを含有する塩化ビニリデンと塩化ビニルのコポリマーである、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
合成樹脂が、少なくとも60質量%の塩化ビニリデンを含有する塩化ビニリデンとメチルアクリレートのコポリマーである、請求項1記載の組成物。
【請求項4】
無機物質が、1μm未満の平均径を有する粒子の状態にある、請求項1〜3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
組成物における充填剤の濃度が0.5質量%以上であり且つ10質量%以下である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
無機物質が、石灰乳の炭酸飽和によって沈殿した炭酸カルシウムである、請求項1〜5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
界面活性剤が、アルキル硫酸塩、アリールスルホン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩及びこれらの少なくとも2つの混合物より選ばれる、請求項1〜6のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
コーティング剤が、6以上で且つ26以下の炭素原子数を有する脂肪酸、及びこれらの少なくとも2つの混合物より選ばれる、請求項1〜6のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の組成物を製造する方法であって、合成樹脂を調製し、少なくとも1つの充填剤をそれに添加し、前記充填剤が(a)15m2/g以上の比表面積を有する少なくとも1つの無機物質と(b)少なくとも1つの界面活性剤及び/又は少なくとも1つのコーティング剤を含有する、前記方法。
【請求項10】
合成樹脂が水性乳化重合法によって又は水性の懸濁重合法によって調製される、請求項9記載の方法。
【請求項11】
重合後、樹脂の水性エマルジョン又は樹脂の水性懸濁液が集められるか又は樹脂が固体の形で分離される、請求項9又は10記載の方法。
【請求項12】
充填剤が、固体、湿潤ケーク又は水性スラリーの形で添加される、請求項9〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
樹脂が固体の形で分離され、充填剤が固体の形で実質的に液体の非存在下でそれに添加される、請求項11又は12記載の方法。
【請求項14】
樹脂の水性エマルジョンを集め、充填剤を水性スラリーの形でそれに添加し、エマルジョンを凝固させる、請求項11又は12記載の方法。
【請求項15】
エマルジョンが、凝固剤を添加することによって凝固する、請求項14記載の方法。
【請求項16】
凝固剤が金属塩より選ばれる、請求項15記載の方法。
【請求項17】
凝固剤がアルミニウム塩より選ばれる、請求項16記載の方法。
【請求項18】
フィルムを製造するための請求項1〜8のいずれか1項に記載の組成物の使用。
【請求項19】
インフレーションフィルム押出法によってフィルムを製造するための請求項18記載の使用。
【請求項20】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の組成物から開始して製造されたフィルム。

【公表番号】特表2007−514010(P2007−514010A)
【公表日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−538871(P2006−538871)
【出願日】平成16年11月12日(2004.11.12)
【国際出願番号】PCT/EP2004/052953
【国際公開番号】WO2005/047372
【国際公開日】平成17年5月26日(2005.5.26)
【出願人】(591001248)ソルヴェイ (252)
【Fターム(参考)】