説明

合成樹脂シート、基板、回路基板とその製造方法

【課題】信頼性に優れ、且つ生産性良く、特に環境に易しい金属ベース回路基板とその製造方法を提供する。
【解決の手段】本発明は、エポキシ樹脂と、無機フィラー及びカチオン重合開始剤を有し、エポキシ樹脂と無機フィラーの屈折率の差が±0.1以下である合成樹脂シートである。合成樹脂シートは、エポキシ樹脂100質量部、無機フィラー250質量部以上540質量部以下及びカチオン重合開始剤1.5質量部以上7.0質量部以下であるのが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱放散性に優れ、高い信頼性を有する回路基板の提供とその回路基板を極めて生産性が高く提供できる製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
回路基板として、特許文献1乃至4がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平05−136575号公報
【特許文献2】特開平07−162116号公報
【特許文献3】特開平10−296907号公報
【特許文献4】特開2004−134781号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、回路基板に用いられる合成樹脂シートを、エポキシ樹脂と、無機フィラー及びカチオン重合開始剤で形成し、エポキシ樹脂と無機フィラーの屈折率の差が±0.1以下にしたものである。この樹脂シートを回路基板に用いることにより、回路基板自体の密着性、絶縁信頼性を高めている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、エポキシ樹脂と、無機フィラー及びカチオン重合開始剤を有し、エポキシ樹脂と無機フィラーの屈折率の差が±0.1以下である合成樹脂シートである。
【0006】
この合成樹脂シートを形成する合成樹脂には、カップリング剤や光カチオン重合増感剤を配合するのが好ましい。
【0007】
合成樹脂シートは、エポキシ樹脂100質量部、無機フィラー250質量部以上540質量部以下及びカチオン重合開始剤1.5質量部以上7.0質量部以下であるのが好ましい。
【0008】
無機フィラーは結晶質シリカが好ましい。
【0009】
他の発明は、電子回路基板用の補強板と、補強板の一方の面又は双方の面に積層された上述の合成樹脂シートを有する基板である。この基板における合成樹脂シートは、絶縁層として用いられる。
【0010】
他の発明は、電子回路基板用の補強板と、補強板の一方の面又は双方の面に積層された上述の合成樹脂シートと、合成樹脂シートの表面に積層された金属箔を有する回路基板である。
【0011】
他の発明は、エポキシ樹脂と、無機フィラー及びカチオン重合開始剤を有し、エポキシ樹脂と無機フィラーの屈折率の差が±0.1以下である合成樹脂を混練する混練工程と、混練工程後の合成樹脂を補強板の表面に積層する合成樹脂積層工程と、合成樹脂積層工程後の合成樹脂にカチオン重合開始剤の重合開始作用である光照射又は加熱を行う重合開始工程と、重合開始工程後の合成樹脂に金属箔を積層する金属箔積層工程を有する回路基板の製造方法である。
【0012】
合成樹脂積層工程は、混練工程後の合成樹脂を複数回積層する工程であるのが好ましい。
【0013】
合成樹脂積層工程は、混練工程後の合成樹脂を複数回積層する工程であり、積層された合成樹脂のうちの最上層のみがBステージ状態であるのが好ましい。Bステージ状態とは、25℃では乾いた状態であって、100℃以上に加熱すると再び溶融する状態をいう。具体的には、DSC(示差走査型熱量計;セイコーインスツルメント株式会社製DSC6300)を用いて次の計算式から求められる硬化度が15〜70%、更に好ましくは30〜60%の状態をいう。
硬化率(%)=((X−Y)/X)×100
X:Bステージ状態化処理(加熱、光照射処理)を施す前の合成樹脂層を、DSCを用いて「硬化させた状態」にまで移行させた際に生じた熱量。
Y:Bステージ状態化処理後の合成樹脂層を、DSCを用いて「硬化させた状態」にまで移行させた際に生じた熱量。
「硬化させた状態」:得られたDSC曲線のピークから特定する
【発明の効果】
【0014】
本発明の合成樹脂シートは、カチオン重合開始剤を有し、エポキシ樹脂と無機フィラーの屈折率の差が±0.1以下であるので、光照射により硬化が可能であって、高い放熱性を有しながら、高い絶縁信頼性を持つことができた。
【0015】
本発明の基板は、前記の優れた特性を有する合成樹脂シートを用いて補強板を接合しているので、優れた絶縁性と放熱性を持つことができた。
【0016】
本発明の回路基板は、前記の優れた特性を有する基板を用いて金属箔を接合しているので、高い密着性と優れた絶縁性、放熱性を持つことができた。
【0017】
本発明の回路基板の製造方法は、上述の特性を有する回路基板を効率よく生産できるという効果を有する。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明は、エポキシ樹脂と、無機フィラー及びカチオン重合開始剤を有し、エポキシ樹脂と無機フィラーの屈折率の差が±0.1以下である合成樹脂シートである。
【0019】
エポキシ樹脂と無機フィラーの屈折率の差を±0.1以下としたのは、光照射にて樹脂硬化を行う為、樹脂組成物層の光透過性を向上させるためである。より好ましくい屈折率差は、±0.05である。
【0020】
<エポキシ樹脂>
エポキシ樹脂は、回路基板の合成樹脂層として使用されるものであり、その屈折率は1.4〜1.5である。エポキシ樹脂としては、三員環状エーテル類を有するエポキシ樹脂、四員環状エーテル類を有するオキセタン樹脂、シクロヘキセンオキシド基を有するエポキシ樹脂が好ましい。
【0021】
三員環状エーテル類を有するエポキシ樹脂は、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物が好ましく、具体的には、ノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAのジグリシジルエーテルやその多量体であるエピビス型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、レゾルシン型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、トリアジン環型エポキシ樹脂、シリコーン変性エポキシ樹脂、シリコーン・エポキシのブロックコポリマーが好ましい。三員環状エーテル類を有するエポキシ樹脂のエポキシ当量は、120〜500が好ましい。
【0022】
四員環状エーテル類を有するオキセタン樹脂としては、3−エチル−3−ヒドロキシルメチルオキセタン、1,4−ビス{〔(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ〕メチル}ベンゼン、ビス〔1−エチル(3−オキセタニル)〕メチルエーテル、3−エチル−3−(2−エチルへキシロキシメチル)オキセタン、3−エチル−3−(フェノキシメチル)オキセタン、3−エチル−3−(シクロヘキシロキシ)メチルオキセタン、オキセタニルシルセスキオキサン、オキセタニルシリケート、フェノールノボラックオキセタン、1,3−ビス〔(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ〕ベンゼンが好ましい。四員環状エーテル類を有するオキセタン樹脂のエポキシ当量は、60〜300が好ましい。
【0023】
シクロヘキセンオキシド基を有するエポキシ樹脂としては、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3‘,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、1−エポキシエチル−3,4−エポキシシクロヘキサン、リモネンジエポキシド、アリサイクリックジエポキシアセタール、ビニルシクロヘキセンジオキシドオリゴマー、液状エポキシ化ポリブタジエンが好ましい。シクロヘキセンオキシド基を有するエポキシ樹脂のエポキシ当量は、60〜210が好ましい。
【0024】
<無機フィラー>
無機フィラーは、その屈折率をエポキシ樹脂の屈折率との差を±0.1以下であると共に放熱効果を発揮し得る物である。エポキシ樹脂の屈折率が1.4〜1.5であるので、無機フィラーの屈折率を1.3〜1.6にすることにより、合成樹脂シート全体の光透過率を向上させ、光硬化の効果を高めることができる。
【0025】
無機フィラーの配合量は、エポキシ樹脂100質量部に対し、250質量部以上540質量部以下が好ましい。
【0026】
無機フィラーとしては、炭酸カルシウム、非晶質シリカ、結晶質シリカがあり、結晶質シリカが好ましい。
【0027】
<カチオン重合開始剤>
カチオン重合開始剤は、光硬化をさせる作用としての重合を開始させるために必要な構成であり、ルイス酸、オニウム塩が好ましい。オニウム塩としては、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族スルホニウム塩、芳香族ヨードニウム塩、メタロセン系化合物がある。より好ましいカチオン重合開始剤としては、その紫外線吸収波長領域として300nm以上を有しているものが好ましい。具体的には、オニウム塩中の非求核性アニオンが、四フッ化ホウ素、六フッ化リン、六フッ化アンチモン、六フッ化ヒ素であるものが良い。
【0028】
カチオン重合開始剤の配合量は、エポキシ樹脂100質量部に対し、1.5質量部以上7.0質量部以下が好ましい。
【0029】
本発明の合成樹脂シートを構成する合成樹脂には、光カチオン重合増感剤を配合するのが好ましい。光カチオン重合増感剤としては、9,10−ジブトキシアントラセン、イソプロピルチオキサントン、クロロ−4−プロポキシチオキサントンがある。増感剤の紫外線吸収波長領域として、350nm以上を有しているものが無機フィラーの種類に関係なく、良好に樹脂を硬化することが可能なため、好ましい。
【0030】
本発明の合成樹脂シートを構成する合成樹脂に、カップリング剤を配合するのが好ましい。カップリング剤を添加することにより、無機フィラーとエポキシ樹脂の界面密着性が向上する。カップリング剤の配合量は、エポキシ樹脂100質量部に対して0.5質量部以上3.0質量部以下が好ましい。
【0031】
本発明の合成樹脂シートは、光硬化が可能であることが必要であるので、20〜200μmの厚さのものが好ましい。
【0032】
光重合を開始させるための光源は、例えば、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、ケミカルランプ、ブラックライトランプ、マイクロウェーブ励起水銀灯、メタルハライドランプがある。光の波長は、重合を開始させるレベルであれば適宜選択されるものであり、320nm〜370nmが好ましい。低い波長の光は、内部未硬化させるのに時間がかかり、高い波長の光は、硬化し難いためである。
【0033】
他の発明は、電子回路基板用の補強板と、補強板の一方の面又は双方の面に積層された上述の合成樹脂シートを有する基板である。
【0034】
補強板は、電子回路基板用の補強板であり、具体的には、銅、アルミニウム、ニッケル、鉄、錫、銀、チタニウム、金、マグネシウム、シリコン、又は、これら合金で構成することができる。補強板の厚みは合成樹脂層形成が可能であることが必要であり、あまりに薄いと補強効果を得られず、あまりに厚いと重量化し過ぎるため、35μm以上3000μm以下が好ましい。
【0035】
他の発明は、かかる基板の合成樹脂シートの表面に金属箔を積層した回路基板である。
【0036】
金属箔は、合成樹脂シートの上で、その導電性を使って電子回路の配線として用いられるものであり、例えば、銅、アルミニウム、ニッケル、鉄、錫、銀、チタニウム、金、マグネシウム、シリコン、又は、これらの合金、若しくは、これら金属や合金に金属メッキを施したものがある。金属箔の厚みは、あまりに薄いと断線し易い傾向にあり、あまりに厚いと効果が頭打ちになるため、4μm以上300μm以下が良い。
【0037】
<製造方法>
他の発明は、エポキシ樹脂と、無機フィラー及びカチオン重合開始剤を有し、エポキシ樹脂と無機フィラーの屈折率の差が±0.1以下である合成樹脂を混練する混練工程と、混練工程後の合成樹脂を補強板の表面に積層する合成樹脂積層工程と、合成樹脂積層工程後の合成樹脂にカチオン重合開始剤の重合開始作用である光照射又は加熱を行う重合開始工程と、重合開始工程後の合成樹脂に金属箔を積層する金属箔積層工程を有する回路基板の製造方法である。
【0038】
<混練工程>
混練工程で用いる混合機は、万能混合攪拌機、遊星式攪拌脱泡装置、加圧ニーダー等の混合機を用いることができる。
【0039】
<合成樹脂積層工程>
合成樹脂積層工程は、混練工程後の合成樹脂を複数回積層する工程であるのが好ましい。
【0040】
合成樹脂積層工程は、混練工程後の合成樹脂を複数回積層する工程であり、積層された合成樹脂のうちの最上層のみがBステージ状態であるのが好ましい。
【0041】
合成樹脂積層工程にあっては、ドクターブレードを用いるロールコーター、円筒状のメッシュを用いたスクリーン印刷機を用いることができる。合成樹脂を複数回積層することによって、組成物の粘性、硬化性等により一度の塗布で所望の厚みの形成ができない場合でも、合成樹脂の塗布と硬化とを複数回繰り返すことによって、所定の厚みを形成し、これにより、合成樹脂層の厚さのばらつきを低減させ、ひいては回路基板の特性の安定化が図れる。
【0042】
<重合開始工程>
重合開始工程にあっては、採用される重合開始剤が光によって重合を開始する場合には光照射、高い熱を受けて重合を開始する場合には加熱をする。光にあっては、上述の光源での説明の通りである。
【0043】
本発明に係る回路基板の製造方法では、枚葉又はロール状の補強板の上に、合成樹脂組成物を塗工し、合成樹脂組成物を光又は熱で重合させてBステージ化を行うのが好ましい。
【0044】
<金属箔積層工程>
金属箔積層工程にあっては、例えば、減圧バック積層、プレス積層、ロール積層がある。
【0045】
金属箔に回路パターンを備えさせる手段としては、回路パターン部分だけを積層する手段、又は、積層後にエッチングによって不要な部分を取り除く手段がある。
【実施例】
【0046】
(実施例1)
本発明の実施例1の合成樹脂シートを形成する樹脂組成物は、表1に示すように、以下のものである。
1)エポキシ樹脂:ビスフェノールA型液状エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン株式会社社製、EP828)100質量部、屈折率1.41
2)無機フィラー:結晶質二酸化ケイ素(株式会社龍森社製、A−1;平均粒子径12μm)250質量部、屈折率1.45(エポキシ樹脂との屈折率差0.04)
3)カチオン重合開始剤:芳香族スルホニウム塩(株式会社ADEKA製、アデカ オプトマー(登録商標)SP−170)3.5質量部
4)光重合増感剤:9,10−ジブトキシアントラセン(川崎化成工業株式会社製、ANTHRACURE(登録商標) UVS−1331)0.5質量部
5)カップリング剤:シランカップリング剤(東レダウコーニング株式会社製、Z−0640N)3.5質量部
【0047】
【表1】



【0048】
<回路基板の製造方法>
この樹脂組成物を、補強板としての金属板の上に200μmの厚さなるように塗工した後、図1に示すように、メタルハライドランプにて金属板より2cm上から、積算光量が800mJ/cmとなるように照射し、樹脂組成物をBステージ状態にした。
【0049】
得られた合成樹脂層付き金属板に対して、「銅箔積層前の合成樹脂層硬化率」を測定した。
【0050】
銅箔積層前の合成樹脂層硬化度:Bステージ状態であるか否かの判断のために用いたものであり、上述のDSCを用いた硬化度である。
実施例1の「銅箔積層前の合成樹脂層硬化度」は、40%であり、樹脂組成物をBステージ状態にしたものであることを確認した。
【0051】
<屈折率>
エポキシ樹脂及び無機フィラーの屈折率は、それぞれ次の方法を用いて測定した。
【0052】
エポキシ樹脂の屈折率は、屈折計(株式会社アタゴ製HSR−500)を用いた。無機フィラーの屈折率は、液浸法(ベッケ線法)を用いた。液浸法とは、測定する無機フィラーを屈折率が既知な浸液に入れスライドガラスの上にのせ、カバーガラスをし、絞りを絞った顕微鏡で観察し、無機フィラーの周囲に光る線の目盛りを読んだものである。数種類の浸液と無機フィラーの屈折率を比較し、無機フィラーの屈折率を測定する。同測定の浸液は株式会社島津製作所製の接触液を用いた。
【0053】
表1にある密着性、絶縁信頼性、引剥強度、熱抵抗値、熱伝導率は以下の要領で測定した。
【0054】
<密着性>
密着性の試験体は、図3に示すように、上述の合成樹脂層2付き金属板1の上に厚さ70μmの銅箔を積層し、更にホットプレスにより、100℃2時間、10kgf/cmで加圧・加熱して硬化を完了させ、さらにエッチングで一部除去されて回路パターンを有する銅箔5からなる回路基板2cm×10cmである。この試験体を90度の角度に折り曲げ、その際に、アルミと合成樹脂層に剥がれが生じない物を良好、剥がれが生じた物を不良とした。
【0055】
<絶縁信頼性>
絶縁信頼性での試験体は、上述の試験体とはエッチングの部位が異なり、試験体の周囲となる部分の銅箔をエッチングにより除去し、直径20mmの円形部分を残したものである。
試験は、温度85℃、相対湿度85%の環境下、金属板を陰極、銅箔を陽極として直流電圧を1.0kV印加し、3000時間に渡り連続印加試験を行った。試験中に、総数18枚中1枚でも絶縁破壊が生じた場合を不良、1枚も破壊が生じなかった場合を良好とした。電圧印加には、菊水電子工業株式会社製TOS−8700を用いた。
【0056】
<引剥強度>
試験体として、上述の試験体のうち、銅箔が、幅10mm残るように加工したものを用いた。銅箔と基板を90度の角度にし、50mm/分の引張速度で剥離した。その他の条件はJIS C6481に基づいた。測定機としてはオートグラフ(株式会社島津製作所製AG−500)を用いた。
剥離強度は、1.0kgf/cm以上が必要である。
【0057】
<熱抵抗値>
試験体を3cm×4cmに切断し、10mm×15mmの銅箔を残した。銅箔の上にTO−220型トランジスターを半田付けし、水冷した放熱フィン上に放熱グリースを介して固定した。トランジスターに通電し、トランジスターを発熱させ、トランジスター表面と金属基裏面の温度差を測定し、熱抵抗値を測定し、放熱グリースの熱抵抗値を補正する事により、求める試験片の熱抵抗値A(単位:K/W)を測定した。
熱抵抗値は、1.5℃/W以下が必要である。
【0058】
<熱伝導率>
熱伝導率H(単位:W/mK)は、前記の熱抵抗値Aと、試片の合成樹脂層の厚みB(単位:m)及びトランジスター実装面積C(単位:m)から、H=B/(A×C)の式を用いて、算出した。
熱伝導率は、1.8W/mK以上が必要である。
【0059】
実施例1は、全ての評価において良好であった。
【0060】
(実施例2、3)
無機フィラーの配合量を表1に示す値にした以外は実施例1と同様の方法で作製し、評価した。
【0061】
(実施例4)
合成樹脂層の厚さを表1に示す値にした以外は実施例1と同様の方法で作製し、評価した。
【0062】
(実施例5、6)
カチオン重合開始剤の配合量を表1に示す値にした以外は実施例1と同様の方法で作製し、評価した。
【0063】
(実施例7)
合成樹脂層を、表1、図2及び図4に示すように、二層にした以外は実施例1と同様の方法で作製し、評価した。
【0064】
(比較例1、2)
無機フィラーを、表1に示すように、酸化アルミニウム(電気化学工業株式会社製DAW10)、ルチル型酸化チタン(石原産業株式会社製CR−90)にした以外は実施例1と同様の方法で作製し、評価した。比較例1、2の合成樹脂シートは、硬化不足によりBステージ状態にならなかった。そのため、合成樹脂層の厚さ測定を行うことができなかった。また、測定に合成樹脂層の厚みを用いる熱伝導率も同様に測定を行うことができなかった。
【0065】
(比較例3)
無機フィラーの配合量を表1に示す通りにした以外は実施例1と同様の方法で作製し、評価した。比較例3の合成樹脂シートは、硬化不足によりBステージ状態にならなかったため、合成樹脂層厚みの測定を行うことができなかった。また、測定に合成樹脂層の厚みを用いる熱伝導率も同様に測定を行うことができなかった。
【0066】
(比較例4、5)
カチオン重合開始剤の配合量を表1に示す通りにした以外は実施例1と同様の方法で作製し、評価した。比較例4の合成樹脂シートは、硬化不足によりBステージ状態にならなかったため、合成樹脂層厚みの測定を行うことができなかった。また、測定に合成樹脂層の厚みを用いる熱伝導率も同様に測定を行うことができなかった。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】実施例1〜6に係る基板の作製する際のBステージ化を行う製法の概略図
【図2】実施例7に係る基板の作製する際のBステージ化を行う製法の概略図
【図3】実施例1〜6に係る回路基板の縦断面の概略図
【図4】実施例7に係る回路基板の縦断面の概略図
【符号の説明】
【0068】
1 補強板
2 第一合成樹脂層
3 第二合成樹脂層
4 光照射装置
5 銅箔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ樹脂と、無機フィラー及びカチオン重合開始剤を有し、エポキシ樹脂と無機フィラーの屈折率の差が±0.1以下である合成樹脂シート。
【請求項2】
エポキシ樹脂100質量部、無機フィラー250質量部以上540質量部以下及びカチオン重合開始剤1.5質量部以上7.0質量部以下である請求項1記載の合成樹脂シート。
【請求項3】
請求項1記載の合成樹脂シートを形成する合成樹脂に、カップリング剤が配合された合成樹脂シート。
【請求項4】
請求項1又は3記載の合成樹脂シートを形成する合成樹脂に、光カチオン重合増感剤が配合された合成樹脂シート。
【請求項5】
無機フィラーが結晶質シリカである請求項1乃至4のいずれか記載の合成樹脂シート。
【請求項6】
電子回路基板用の補強板と、補強板の一方の面又は双方の面に積層された請求項1乃至5のいずれか記載の合成樹脂シートを有する基板。
【請求項7】
電子回路基板用の補強板と、補強板の一方の面又は双方の面に積層された請求項1乃至5のいずれか記載の合成樹脂シートと、合成樹脂シートの表面に積層された金属箔を有する回路基板。
【請求項8】
エポキシ樹脂と、無機フィラー及びカチオン重合開始剤を有し、エポキシ樹脂と無機フィラーの屈折率の差が±0.1以下である合成樹脂を混練する混練工程と、混練工程後の合成樹脂を補強板の表面に積層する合成樹脂積層工程と、合成樹脂積層工程後の合成樹脂にカチオン重合開始剤の重合開始作用である光照射又は加熱を行う重合開始工程と、重合開始工程後の合成樹脂に金属箔を積層する金属箔積層工程を有する回路基板の製造方法。
【請求項9】
合成樹脂積層工程が、混練工程後の合成樹脂を複数回積層する工程である請求項8記載の回路基板の製造方法。
【請求項10】
合成樹脂積層工程が、混練工程後の合成樹脂を複数回積層する工程であり、積層された合成樹脂のうちの最上層のみがBステージ状態である請求項8又は9記載の回路基板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−63679(P2011−63679A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−214279(P2009−214279)
【出願日】平成21年9月16日(2009.9.16)
【出願人】(000003296)電気化学工業株式会社 (1,539)
【Fターム(参考)】