説明

合成樹脂シート

【課題】人体から分泌される手油や汗などに含まれるオレイン酸、パルミチン酸、リノール酸、ステアリン酸等の高級脂肪酸あるいはハンドクリームや化粧品に含まれる油類による膨潤起因の変形を長期間抑えることができ、シート表面が傷付きにくいと共に、デスクマット等として好適な合成樹脂シートを提供する。
【解決手段】エチレン−メタクリル酸共重合体からなる基材層の表面に、アイオノマー樹脂を積層することで、傷つき性や耐オレイン酸性に優れた合成樹脂シートとなる。また、前記エチレン−メタクリル酸共重合体のメタクリル酸含有量が9重量%〜12重量%である合成樹脂シートや、エチレン−メタクリル酸共重合体にエチレン−メタクリル酸−アクリル酸エステル三元共重合体を40重量%以下混合した樹脂組成物からなる合成樹脂シートであれば、傷つき性、耐オレイン酸性だけでなく、柔軟性やなじみ性にも優れる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デスクマットやテーブルマット等に好適に使用される合成樹脂シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、デスクマットやテーブルマット等として、透明性や柔軟性に優れた塩化ビニル系合成樹脂製シートが使用されている。しかしながら、印刷紙やコピー紙等を塩化ビニル系合成樹脂製デスクマットの下に挟んで使用すると、塩化ビニル系合成樹脂シートに配合されている可塑剤がシート表面に移行することで、印刷紙やコピー紙等の印刷部分がシートに転写してしまう問題点があった。
【0003】
この問題を解決するために、塩化ビニル系合成樹脂シートの片面あるいは両面に、ウレタン−アクリレート系等のUV硬化型塗料の層を形成する方法が提案されている。この方法では、UV硬化型塗料中の未反応物によるブロッキングの発生や、経時的使用に伴うUV硬化層の亀裂の発生等が見られるため、長期使用においてシートが劣化してしまうという問題点があった。
【0004】
そこで、塩化ビニル系合成樹脂以外の材料として、可塑剤を添加しなくとも柔軟性に優れた、透明性を有するオレフィン系合成樹脂シートからなるデスクマットが提案されている。しかしながら、オレフィン系合成樹脂シートは一般的に表面が傷つきやすく、さらに人体から分泌される手油や汗などに含まれるオレイン酸、パルミチン酸、リノール酸、ステアリン酸等の高級脂肪酸あるいはハンドクリームや化粧品に含まれる油類を吸収して膨潤してしまうので、デスクマット等人の手が触れる用途に利用すると波打つように変形してしまい、デスクマット等の用途には適さないものであった。
【0005】
このような膨潤や傷つきを防ぐため、オレフィン系合成樹脂シートにUV硬化型塗料層を塗布したり、外層としてポリアミド系樹脂層等を積層させる方法が提案されている。しかしながら、前述したように、UV硬化型塗料層を形成する場合では長期使用に適しておらず、またポリアミド系樹脂には吸湿性があるため、ポリアミド系樹脂を積層させたシートはカールしやすいという問題点があった。さらに、これらのバリヤーコート層を設けるには生産工程も増えることから、生産性が悪化するといった問題が残されていた。
【0006】
これらの問題を解決する方法として、アイオノマー樹脂をオレフィン系合成樹脂シートの表面に積層させたデスクマット等が提案されている(特許文献1及び2参照)。アイオノマー樹脂とは、α−オレフィンとカルボキシル基を有するモノマーとの共重合体で、そのカルボキシル基間を金属イオンで架橋されている熱可塑性樹脂であり、透明性が高く、耐油性、耐溶剤性、靭性(傷付き性)に優れたものである。そのため、アイオノマー層を設けることで、オレフィン系合成樹脂シートの問題とされている油類による膨潤やシート表面の傷付きを抑えることが可能となる。また、アイオノマーと相溶性のあるオレフィン系合成樹脂シートを用いれば、共押出成形が可能なので、生産性も改善される。
【0007】
しかし、アイオノマー層を設けたオレフィン系合成樹脂シートであっても、長期間使用していれば、アイオノマー層に浸透した油成分も多くなり、その上、基材であるオレフィン系合成樹脂層の方まで油成分が浸透してしまうと、シートが波打つように変形する問題があった。
【0008】
【特許文献1】特開平4−64441号公報
【特許文献2】特開2002−219030号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、本発明は上記の問題点を解決するために、人体から分泌される手油や汗などに含まれるオレイン酸、パルミチン酸、リノール酸、ステアリン酸等の高級脂肪酸あるいはハンドクリームや化粧品に含まれる油類による膨潤起因の変形を長期間抑えることができ、シート表面が傷付きにくいと共に、デスクマット等として好適な合成樹脂シートを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明は、エチレン−メタクリル酸共重合体からなる基材層の表面に、アイオノマー樹脂を積層してなることを特徴とする合成樹脂シートに関するものである。
また、本発明は、前記エチレン−メタクリル酸共重合体のメタクリル酸含有量が9重量%〜12重量%であることが好ましい。
さらに、基材層が、エチレン−メタクリル酸共重合体にエチレン−メタクリル酸−アクリル酸エステル三元共重合体を40重量%以下混合した樹脂組成物からなる合成樹脂シートであってもよい。
また、本発明のアイオノマー樹脂は、エチレン不飽和カルボン酸共重合体が金属イオンで架橋されているものが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、表面層だけでなく、基材層にも耐オレイン酸性の優れた樹脂を使用することで、膨潤による波打つような変形を長期間抑えることができ、表面層に強靭性を有するアイオノマー樹脂を用いたことで、表面の傷つき性も良好な合成樹脂シートが得られた。
なお、本発明で用いる傷つき性とは、傷が付きにくいことを意味する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、エチレン−メタクリル酸共重合体をEMAA、エチレン−メタクリル酸−アクリル酸三元共重合体をEMAAEと表記する。
本発明の基材層として、EMAAからなる樹脂を使用した。なお、請求項1にも同様に記載されているが、「エチレン−メタクリル酸共重合体(EMAA)からなる」とは、EMAAを主成分とした樹脂組成物であって、EMAA単独でもよく、またはEMAAと他の樹脂との混合物であってもよい。なお、主成分とは、樹脂組成物の50重量%以上を占める樹脂のことである。
EMAAは、他のエチレン系樹脂同様、デスクマット等で使用できる適度な柔軟性、透明性を有している。それに加えて、EMAAは、他のエチレン系樹脂よりも、耐オレイン酸性に優れた樹脂である。耐オレイン酸性に優れるとは、人体から分泌される手油や汗などに含まれる成分として代表的なオレイン酸が接触しても、シート等が膨潤し難いことを意味している。すなわち、EMAAからなるシート等は、膨潤して波打つように変形することが少ないということである。
【0013】
また、本発明で使用するEMAAは、適度な柔軟性と共に、膨潤による変形を防ぐのに十分な耐オレイン酸性を有するために、メタクリル酸含有率が9重量%〜12重量%であるものが好ましい。メタクリル酸含有率が9重量%未満であれば、オレイン酸等によって膨潤して波打つように変形する度合いが増してしまう傾向にある。一方、メタクリル酸含有率が12重量%を越える場合であれば、生産時にシートが金属ロール等に強く密着してしまったり、ゲル化したものがシート中に混在してしまう恐れがある。
【0014】
基材層に使用する樹脂としては、EMAAの柔軟性や耐オレイン酸性を損ねない程度に、EMAA以外の樹脂を混合した樹脂組成物であってもよい。EMAA以外の樹脂としては、EMAAE、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体(EMMA)、エチレン−エチルアクリレート共重合体(EEA)、ポリエチレン(PE)等が挙げられる。その中でも、EMAAの柔軟性を高め、かつEMAAとの相溶性に優れたEMAAEが好ましい。
この場合、EMAAに混合できるEMAAEの量としては、基材層を構成する樹脂組成物に対して40重量%以下である。40重量%を越えて混合すると、デスクマット等に適度な柔軟性は得られるが、耐オレイン酸性が劣ってしまい、シートがオレイン酸等によって膨潤して波打つように変形してしまう傾向にある。
【0015】
また、基材層に使用する樹脂組成物には、必要に応じて、酸化防止剤、滑剤、無機物などの各種添加剤を添加することもできる。この添加剤の種類および添加量は、特に限定されるものではなく、従来からこの種の樹脂シートに使用されている添加剤を、基材層が持つ物性を阻害しない範囲で添加することができる。
【0016】
基材層の厚みは、用途に応じて適宜設定されるものであるが、デスクマットやテーブルマット等では、1.0mm〜1.4mmであるのが好ましい。表面層としてアイオノマー樹脂を積層させた合成樹脂シートとしたとき、基材層の厚みが1.0mm未満であると、硬いシートとなってしまう傾向にある。1.4mmを越えると、柔らかく、傷が付き易くなってしまう恐れがある。
【0017】
本発明の表面層として、アイオノマー樹脂を使用した。アイオノマー樹脂とは、α−オレフィンとカルボキシル基を有するモノマーとの共重合体で、そのカルボキシル基間を金属イオンで架橋されている熱可塑性樹脂であり、透明性が高く、耐油性、耐溶剤性、靭性(傷付き性)に優れたものである。
アイオノマー樹脂として、具体的には、エチレン−不飽和カルボン酸の共重合体のカルボキシル基を、金属イオンで架橋したものが使用される。エチレン−不飽和カルボン酸共重合体は、不飽和カルボン酸エステルやビニルエステル等を第3成分として共重合させたもの又は2種以上のこれらの共重合体を混合したものであってもよい。
上記不飽和カルボン酸としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸等、又はそのエステルであってもよく、基材層との相溶性を考慮したものであればよい。
上記金属イオンとしては、ナトリウム、カリウム、亜鉛等のイオンが挙げられる。その中でも、亜鉛イオンで架橋されたアイオノマーは、他の金属イオンで架橋されたものよりも吸水性が低いため、好ましい。
【0018】
また、アイオノマー樹脂には、必要に応じて、酸化防止剤、滑剤、無機物などの各種添加剤を添加することもできる。この添加剤の種類および添加量は、特に限定されるものではなく、従来からこの種の樹脂シートに使用されている添加剤を、アイオノマー樹脂が持つ物性を阻害しない範囲で添加することができる。
【0019】
表面層の厚みは、用途に応じて適宜設定されるものであるが、デスクマット等の表面層としての機能を発揮するには、0.1mm〜0.5mmであるのが好ましい。0.1mm未満であれば、傷つき性、耐オレイン酸性は劣ってしまう傾向にある。0.5mmを越えると、アイオノマー樹脂が硬いので、デスクマット等に適する柔軟性が得られず、取り扱い難く、生産性も悪くなってしまう恐れがある。
【0020】
本発明は、上記EMAAからなる基材層の表面に、上記アイオノマー樹脂を積層してなる合成樹脂シートである。この合成樹脂シートは、EMAAからなる基材層の表面が傷つきやすいため、アイオノマー樹脂のような傷つき性を有する層を積層したものである。また、アイオノマー樹脂は、エチレン不飽和カルボン酸共重合体を金属イオンで架橋したものであり、EMAAと同系の樹脂であるため、接着性に優れ、透明性も保持できるものである。そのため、基材層と表面層は剥離しにくく、なじみ性にも優れた合成樹脂シートが得られる。
【0021】
さらに、この合成樹脂シートは耐オレイン酸性に優れたものである。基材層、表面層ともに耐オレイン酸性に優れるため、長期間使用した場合でも、膨潤による変形の少ないシートが得られる。たとえ基材表面に耐オレイン酸性を有するアイオノマー樹脂を積層させていたとしても、アイオノマー樹脂層で蓄積されたオレイン酸等の油成分が、長期間使用している間に基材層にまで浸透してしまうと、基材層に耐オレイン酸性が無ければ、膨潤して変形してしまう。その点、本発明では、基材層にも耐オレイン酸性を有するEMAAからなる樹脂が用いられているため、たとえ基材層にまで油成分が浸透したとしても、膨潤による波打つような変形が起こり難いシートが得られる。
【0022】
これら合成樹脂シートは、表面層:基材層=1:2〜1:14の層比であるのが好ましい。表面層の割合がこの範囲を越えると、シート全体が硬くなり、なじみ性に劣る傾向にある。表面層の割合がこの範囲未満であれば、傷つき性が得られない恐れがある。
【0023】
また、本発明の合成樹脂シートは、基材層の少なくとも片方の面に、表面層を積層させた2種2層のシートに限定されるものではなく、基材層の両面にアイオノマー樹脂を積層させた2種3層又は3種3層のシート、又は他の樹脂を積層させた3種3層のシートであってもよい。他の樹脂としては、デスクマット等に適した柔軟性又は透明性を有していればよく、好ましくはエチレン系樹脂が挙げられる。
【0024】
本発明のような合成樹脂シートの製造方法としては、共押出法、共押出/ラミネート法などを用いて製造することができる。また、カレンダー法、押出法、インフレーション法で基材層と表面層を別々に成形した後に、熱ラミネートや接着剤等を用いて、それらを張り合わせて製造することも可能である。その中でも、共押出法が好ましい。この製造方法を用いれば、Tダイの種類によって、層構成が2種2層だけでなく、2種3層、3種5層等の積層体を一度に成形でき、生産性にも優れている。
【0025】
さらに、上記のように成形した合成樹脂シートの表面に、表面コート層を塗布してもよい。表面コート層としては、シリコーン樹脂等が挙げられるが、特に限定されるものではない。表面コート層を設けることで、より傷つき性の良好な合成樹脂シートが得られる。
【0026】
また、上記のように成形した合成樹脂シートの表面及び/又は裏面に、エンボス加工を施してもよい。エンボス加工を施すことで、シート表面の艶を消すことができ、風合いの異なったシートが得られる。
【実施例】
【0027】
以下に、実施例により本発明を具体的に説明する。
なお、得られたシートを評価するため、以下の方法を採用した。表1に評価結果を示す。
【0028】
(1) 柔軟性・・・分子量1000の塩化ビニル樹脂に、可塑剤としてDOPを45phr添加した樹脂からなる合成樹脂シートと比較して、柔らかい:◎、同等:○、やや硬い:△、硬い:×
(2) 傷つき性・・・学振摩耗試験(摩耗回数:100回)後、傷が付かない又は目立たない:○、傷が付く又は目立つ:×
(3) 耐オレイン酸性・・・6cm×6cmのシートにオレイン酸2gを含浸させた2cm×2cmのキムタオルをのせ、室温で3日間放置してから、40℃で8時間促進後の重量変化率が0.5%未満:○、0.5%以上1%未満:△、1%以上:×
(4) なじみ性:丸めた状態で40℃×1週間促進後広げた時に、著しくカールせず1日後にはほぼ平らな状態に戻る:○、ややカールする:△、戻らない:×
(5) 透明性:シートと印刷物を重ねシート側から印刷物を目視にて確認した時に、著しく白濁していない:○、白濁している:×
上記(3)耐オレイン酸性の評価方法は、シートを長期間使用した状態での耐オレイン酸性を評価するものである。なお、重量変化率が0.5%未満であれば波打つような変形なし、0.5%以上1%未満であれば、波打ったときの波の高さが5mm程度、1%以上であれば、波打ったときの波の高さが10mm程度である。
【0029】
(実施例1)メタクリル酸含有量が9重量%であるエチレン−メタクリル酸共重合体(EMAA;ニュクレル:三井デュポンポリケミカル製)に、亜鉛イオンで架橋されたエチレン不飽和カルボン酸アイオノマー(ハイミラン:三井デュポンポリケミカル製)が積層されてなる2種2層のシートを得た。前記シートは、共押出法によって成形され、表面層であるアイオノマー層の厚みが0.1mm、基材層であるEMAA層の厚みが1.4mmのシートとした。
(実施例2)基材層が、メタクリル酸含有量が4重量%であるエチレン−メタクリル酸共重合体(EMAA;ニュクレル:三井デュポンポリケミカル製)であること以外は、実施例1と同様の2種2層のシートを得た。
(実施例3)基材層が、メタクリル酸含有量が9重量%であるエチレン−メタクリル酸共重合体(EMAA;ニュクレル:三井デュポンポリケミカル製)と、メタクリル酸含有量が10重量%であるエチレン−メタクリル酸−アクリル酸エステルの三元共重合体(EMAAE;ニュクレル:三井デュポンポリケミカル製)の比率が80:20の樹脂組成物からなること以外は、実施例1と同様の2種2層のシートを得た。
(実施例4)基材層が、メタクリル酸含有量が9重量%であるエチレン−メタクリル酸共重合体(EMAA;ニュクレル:三井デュポンポリケミカル製)と、メタクリル酸含有量が10重量%であるエチレン−メタクリル酸−アクリル酸エステルの三元共重合体(EMAAE;ニュクレル:三井デュポンポリケミカル製)の比率が60:40の樹脂組成物からなること以外は、実施例1と同様の2種2層のシートを得た。
【0030】
(比較例1)基材層が、エチレン−メチルメタクリル酸共重合体(EMMA;アクリフト:住友化学製)であること以外は、実施例1と同様の2種2層のシートを得た。
(比較例2)基材層が、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA;エバフレックス:三井デュポンポリケミカル製)であること以外は、実施例1と同様の2種2層のシートを得た。
(比較例3)基材層が、メタクリル酸含有量が9重量%であるエチレン−メタクリル酸共重合体(EMAA;ニュクレル:三井デュポンポリケミカル製)と、メタクリル酸含有量が10重量%であるエチレン−メタクリル酸−アクリル酸エステルの三元共重合体(EMAAE;ニュクレル:三井デュポンポリケミカル製)の比率が40:60の樹脂組成物からなること以外は、実施例1と同様の2種2層のシートを得た。
(比較例4)基材層が、メタクリル酸含有量が10重量%であるエチレン−メタクリル酸−アクリル酸エステルの三元共重合体(EMAAE;ニュクレル:三井デュポンポリケミカル製)であること以外は、実施例1と同様の2種2層のシートを得た。
【0031】
表1に、樹脂の配合比と評価結果を示す。
【0032】
【表1】

【0033】
*表中の%は、メタクリル酸の重量含有率を示している。
【0034】
表面層だけに耐オレイン酸性を有する層としてアイオノマー層を設けた比較例1及び2では、膨潤による波打つような変形を防ぐことはできなかった。しかしながら、表面層だけでなく、基材層にも耐オレイン酸性に優れたEMAAからなる樹脂層を設けた実施例1及び2では、膨潤による波打つような変形を防止することができた。
【0035】
その上、同じEMAAからなる樹脂であっても、メタクリル酸含有量が9重量%以上であれば、より耐オレイン酸性に優れ、なじみ性も良好なシートが得られた(実施例1及び2参照)。
【0036】
また、EMAAに柔軟性を付与するために、EMAAEを加えた。このEMAAEのみを基材層としたとき、比較例4に示したように、十分な耐オレイン酸性は得られなかったが、基材層がEMAAにEMAAEを40重量%以下加えた樹脂組成物であれば、耐オレイン酸性だけでなく、柔軟性にも優れたシートが得られた(実施例3、4、比較例3参照)。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明は、透明で柔軟性やなじみ性を有するだけでなく、傷つき性や耐オレイン酸性にも優れた合成樹脂シートに関するものであって、デスクマットやテーブルマット等に利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレン−メタクリル酸共重合体からなる基材層の少なくとも一方の表面に、表面層としてアイオノマー樹脂を積層してなることを特徴とする合成樹脂シート。
【請求項2】
前記エチレン−メタクリル酸共重合体のメタクリル酸含有量が9重量%〜12重量%であることを特徴とする請求項1記載の合成樹脂シート。
【請求項3】
基材層が、前記エチレン−メタクリル酸共重合体に、エチレン−メタクリル酸−アクリル酸エステル三元共重合体を40重量%以下混合した樹脂組成物からなることを特徴とする請求項1又は2記載の合成樹脂シート。
【請求項4】
前記アイオノマー樹脂が、エチレン不飽和カルボン酸共重合体を金属イオンで架橋したものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の合成樹脂シート。

【公開番号】特開2010−137459(P2010−137459A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−316848(P2008−316848)
【出願日】平成20年12月12日(2008.12.12)
【出願人】(000000077)アキレス株式会社 (402)
【Fターム(参考)】