説明

合成樹脂フィルム

【課題】ポリオレフィン系合成樹脂フィルムに静防性と耐有機溶剤性を持たせることができ、ナイロンに比べて価格的に廉価で有機溶剤系に侵されない合成樹脂フィルムを提供する。
【解決手段】静電防止剤を加えたポリオレフィン系の合成樹脂フィルム1を放射線の照射装置3に通すことによって合成樹脂フィルム1に30KGy以上、好ましくは250KGy以上の線量の放射線を照射し、合成樹脂フィルム1を架橋することによって、静防性と耐有機溶剤性を与える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、合成樹脂フィルム、特に、静電気による危険性が少なく、有機溶剤系の流体や粘体を収納するのに適した合成樹脂フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
各種流体及び、粘体の収納や搬送の方法としてドラム缶やコンテナー、ローリーのような硬質の保形用外容器に各種流体や粘体を収納する方法が有り、充填物によっては、容器内を汚さないため、合成樹脂フィルム製の容器を用いこの容器を保形用外容器内に収め、前記容器内に各種流体を収納する方法もある。
【0003】
従来、上記のような流体や粘体を収納や運搬において、容器を形成する合成樹脂フィルムの材料としては、ナイロン、PETやポリオレフィン系樹脂フィルムが内容物との相性により用いられている。
【0004】
ここで、収納せんとする内容物がトルエンやキシレンの如き溶融した有機溶剤系のような場合、帯電防止性と対溶剤性が要求されることになる。
【0005】
ところで、合成樹脂製の容器に上記の内容物を収納した場合、内容物や保形用外容器との間で擦れると静電気を蓄える性質があり、収納した内容物に発火性がある場合、たまった静電気の放電による火花が内容物に引火し、火災や爆発が、発生する危険性があり、帯電防止性、耐溶剤性を兼ね備えた合成樹脂フィルムは、現時点では、存在しなかった。
【0006】
ここで、必要とされる帯電防止性、耐溶剤性を兼ね備えた合成樹脂製容器の提案により、硬質製容器の洗浄、焼却等、環境にあまりよくない作業が回避でき、内容物の分別をすれば、再利用ができ、大幅なコストダウンにつながる。
【0007】
従来、放射線を用いたポリオレフィン系樹脂フィルムを改質する手段として、樹脂フィルムに対して放射線を照射し、樹脂フィルムを架橋することで滅菌する方法が知られている(例えば特許文献1参照)
【0008】
しかし、特許文献1のような改質は滅菌を目的とし、樹脂フィルムを滅菌する場合の放射線は、通常25KGyの線量で照射するのが適当とされているが、このような線量の放射線の照射では帯電防止樹脂フィルムに耐有機溶剤性を付与することができないものである。
【特許文献1】特開平10−45959号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
この発明は、上記のような要望に鑑み、価格的に廉価であるポリオレフィン系の合成樹脂フィルムに着目し、鋭意研究の結果、γ線や電子線等の放射線を照射することで、有機溶剤系の収納が可能なポリオレフィン系の容器として使用できる合成樹脂フィルムと、加えて静電防止性を付与した合成樹脂フィルムを提供し、この合成樹脂フィルムを用いた容器を完成するに至った。
【0010】
この発明の課題は、ポリオレフィン系の合成樹脂フィルムとこれを用いた容器に耐有機溶剤性を持たせることができ、価格的に廉価で有機溶剤系の収納が可能な容器の材料として用いることができる合成樹脂フィルムを提供することと、帯電防止剤添加により帯電防止効果も有する合成樹脂フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記のような課題を解決するため、この発明は、ポリオレフィン系の合成樹脂フィルムに放射線を30KGy以上の線量を照射し、このフィルムを架橋することによって耐有機溶剤性を付与した構成を採用した合成樹脂フィルムである。
【0012】
ポリオレフィン系合成樹脂フィルムに対して放射線を30KGy以上、好ましくは250KGy以上の線量を照射すること耐有機溶剤性を付与した構造とすることができる。
【0013】
更に、上記ポリオレフィン系合成樹脂フィルムに静電防止剤(或いは帯電防止剤で呼ばれることもある)を添加した上で放射線を放射することで、帯電防止性(静電防止性)と耐有機溶剤性を兼ね備えた合成樹脂フィルムとすることもできる。
【0014】
また、上記の合成樹脂フィルムを用い様々な形状の容器を作製することができるが、その場合、容器を作製しその後、放射線を照射しなければならない。
【0015】
ここで、ポリオレフィン系合成樹脂フィルムとして、PEやPP等を挙げることができ、このフィルムに照射する放射線は、γ線などの電磁波、アルファ線、ベータ線、中性子線等の粒子線等を例示することができる。
【発明の効果】
【0016】
この発明によると、ポリオレフィン系合成樹脂フィルムに放射線を照射し、架橋によってフィルムに耐有機溶剤性を付与するようにしたので、材料が価格的に廉価なポリオレフィン系合成樹脂フィルムに有機溶剤の収納が可能になり、この合成樹脂フィルムを用いて形成した容器で有機溶剤系の収納が可能になる。
【0017】
また、上記ポリオレフィン系合成樹脂フィルムに静電防止剤を添加しておいてから放射線による架橋を行うことにより、合成樹脂フィルム及びこれを用いて形成した容器には、耐有機溶剤性と共に帯電防止性を付与することができ、使用時に静電気がたまることがなく、静電気による危険性が低下することで、発火性のある内容物の収納が可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、この発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0019】
この実施形態は、静電防止性(以下、静防性)と耐有機溶剤性を持たせた合成樹脂フィルムとこれを用いた容器に関するものである。
【0020】
図1は、例えばPEやPP等のポリオレフィン系の合成樹脂フィルムに静防性と耐有機溶剤性を付与する場合の処理工程を示している。
【0021】
図1(a)に示すように、予め周知の静電防止剤を加えたポリオレフィン系の合成樹脂フィルム1を用い、この合成樹脂フィルム1を、図1(b)のように、箱2の中に積み重ね、図1(c)に示すように、放射線の照射装置3に通すことによって合成樹脂フィルム1に放射線を照射する。
【0022】
上記放射線は、γ線などの電磁波、電子線、アルファ線、ベータ線、中性子線等の粒子線等を用い、合成樹脂フィルム1に対する放射線の照射線量は、通常ポリオレフィン系の合成樹脂フィルムに滅菌性を生じさせるための線量である25KGyに対して、30KGy以上の線量を照射する。
【0023】
上記のような線量の放射線を、ポリオレフィン系の合成樹脂フィルム1に照射すると、合成樹脂フィルム1が架橋することで合成樹脂フィルム1に静防性と耐有機溶剤性を付与することができる。
【0024】
上記のような放射線の照射による架橋によって、ポリオレフィン系の合成樹脂フィルム1の耐有機溶剤性を向上させることができ、合成樹脂フィルム1がこのような耐有機溶剤性を備えることにより、材料価格がナイロンに比べて廉価なポリオレフィン系の合成樹脂フィルム1で製作した容器で有機溶剤の収納が可能になる。
【0025】
また、合成樹脂フィルム1に静電防止剤を加えてあるので、これを用いて形成した容器は、使用時に静電気がたまることがなく、静電気による危険性が低下することで、発火性のある内容物の収納が可能になる。
【0026】
図1(b)と図1(c)のように、放射線の通過が可能な材質で形成した箱2の中に合成樹脂フィルム1を積み重ねて複数枚収納し、この箱2を放射線の照射装置3に通すことによって、複数枚の合成樹脂フィルム1に対して一度に放射線を照射することができ、放射線を照射するための作業効率を向上させることができ、処理コストの低減が図れることになる。
【0027】
上記実施形態は、シート状の合成樹脂フィルム1に対して放射線を放射したものであったが、放射線照射前の合成樹脂フィルム1を用い様々な形状の容器を作製しておき、その後、その容器に放射線を照射することにより架橋し、有機溶剤の収納を可能としたり、更に、前もって添加された静電防止剤により使用時に静電気がたまることがなく、静電気による危険性が低下することで、発火性のある内容物の収納が可能になる容器を得ることもできる。
【0028】
また、合成樹脂フィルム1に放射線を与えると共に熱を加えることにより、耐有機溶剤性が更に向上することが分かった。
【0029】
加える熱の温度は合成樹脂フィルム1の厚みや材料により異なり、特に温度範囲が限定されるものではないが、一般的に100〜300度の範囲内であって、合成樹脂フィルム1が溶融する直前の温度であれば良く、また、温度はその範囲内で高ければ高いほど効果がある。
【0030】
なお、合成樹脂フィルム1に熱を加えるタイミングは、合成樹脂フィルム1に対する放射線の照射前、放射線の照射中、又は放射線の照射後のいずれであっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】(a)は合成樹脂シートの平面図、(b)は合成樹脂シートの折り畳み状態を示す側面図、(c)は合成樹脂シートを収納した箱を放射線の照射装置に通し、照射している状態を示す説明図である。
【符号の説明】
【0032】
1 合成樹脂フィルム
2 箱
3 放射線の照射装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオレフィン系の合成樹脂フィルムに放射線を30KGy以上の線量を照射し、このフィルムを架橋することによって耐有機溶剤性を付与した合成樹脂フィルム。
【請求項2】
上記放射線が250KGy以上の線量を照射する請求項1に記載の合成樹脂フィルム。
【請求項3】
上記合成樹脂フィルムに静電防止剤を添加したことで帯電防止性と耐有機溶剤性を付与した請求項1又は2に記載の合成樹脂フィルム。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れかの項に記載の合成樹脂フィルムを用い、袋状に形成した容器。

【図1】
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【公開番号】特開2007−246908(P2007−246908A)
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−71385(P2007−71385)
【出願日】平成19年3月19日(2007.3.19)
【出願人】(507089241)
【Fターム(参考)】