説明

合成樹脂モノフィラメント製の土木用籠材及びその製造方法

【課題】合成樹脂モノフィラメント製の土木用籠材の部品数を2個にし、その組立作業の効率を高め、ロール状に折り曲げて小さくしたものを現場で元の箱形形状の大きさに簡単容易に復元でき、さらに底面部分に通水性マットを敷く場合には通水性マットを上下で挟んでずれるのを防ぐ。
【解決手段】合成樹脂モノフィラメントからなる線材を亀甲形に編み上げた網体で箱形に形成した合成樹脂モノフィラメント製の土木用籠材1を、蓋無し網体2と蓋有り網体3の2つの部品を組み合わせたものから構成し、底面が上下に2重に重なり合うように取り付けると共に、隣り合う側面22と32との側端縁同士を連結用線材で連結し、箱形の土木用籠材1の隣り合う側面12の4箇所の側端縁同士、及び、4つの側面12の上辺と下辺縁の少なくとも一方に、復元用線材4を取り付けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、合成樹脂モノフィラメントからなる線材を亀甲形に編み上げた網体を6面に有する箱形に形成した合成樹脂モノフィラメント製の土木用籠材に係り、特に、合成樹脂モノフィラメント製の土木用籠材の部品数を2個にし、その組立作業の効率を高め、ロール状に折り曲げて小さくしたものを現場で元の箱形形状の大きさに簡単容易に復元できる合成樹脂モノフィラメント製の土木用籠材及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
合成樹脂モノフィラメントからなる線材を亀甲形に編み上げた網は、元々は生け簀用網として本願出願人が某大手繊維メーカーの協力を得て製品化したものである。合成樹脂モノフィラメントからなる線材を亀甲形の網に編み上げるには、専用の装置が必要なのは勿論であるが、2本の線材を亀甲形に撚合うには各線材を直前に予熱し、引っ張りながら編み上げることが必要である。予熱の温度や張力の強さは、線材の太さ、亀甲形のサイズ、その時々の気象条件などで毎回微妙に異なる。これが適切でないと、編み上げたときに所定の強度と形状を有する亀甲形の網にならずに崩れ、製品化できない。このように高度の製造ノウハウが要求され、本願出願人以外の業者は製造していないのが現状である。
合成樹脂モノフィラメントからなる線材を亀甲形に編み上げた網は、耐水性が高く、引っ張り強度も鉄線よりも強くて軽量であり、紫外線にも強い等の利点があり、生け簀用網としては20年以上使用されている。ただ難点としては、値段が高いことであるが、耐久性が高くランニングコストを考えると、他の材料からなる生け簀用網に比べて有利であることが徐々に理解されて普及し始めてきており、又海外でも巨大生け簀用網として採用されている。
本願出願人は、この網が耐久性、強度、軽量、紫外線に強いなどの特徴を活かして、海以外の陸上の土木用の例えば落石用防止ネットとしても使用し始めている。鉄製の金網に比べて、前にもふれたように、値段が高いことが当初、普及の妨げであったが、鉄製の金網が場所によっては5〜10年程で錆びて交換が余儀なくされるのに、この網は20〜30年以上の耐久性があり、又軽量でもあることが知られ、ランニングコストや山奥の現場での施工性を考えて徐々に普及し始めている。
本願出願人は、土木用落石用防止ネットをヒントに、さらにこの網を使った箱形の土木用籠材を考えていたが、他の企業に先行されてしまった。先行した企業はこの網を使った箱形の土木用籠材について特許(第4256448号)を取得している。
【0003】
ところで、特許第4256448号の「土木用籠材、土木用籠材の製造方法及び土木用籠材の組み付けキット」の明細書の〔0039〕〔0043〕の記載及び図面の図3によれば、土木用籠材Aは、第1分割体D1、第2分割体D2及び第3分割体D3の3つの部品よりなっている。また、図面の図1によれば、第1分割体D1は矩形の平板型、第2分割体D2は上向きのコ字型、第3分割体D3は下向きの逆L型、のそれぞれの形状からなっている。
そして、この第1分割体D1、第2分割体D2及び第3分割体D3を箱形に組み付け、その内部に砕石等の中詰め材を充填して第3分割体D3の蓋となる上面部P6の周辺縁を隣り合う辺縁と連結することで、中詰め材が詰め込まれた土木用籠材Aが得られる(明細書の〔0044〕参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4256448号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許第4256448号の土木用籠材Aは、第1分割体D1、第2分割体D2及び第3分割体D3の3つの部品よりなっているので、3つの異なる形状からなる部品が必要となり、その分、面倒である。
また、3つの部品を箱形に組み付けるので、その分、組立作業が面倒となる。
さらに、この箱形への組立作業を現場で行うとすると、現場での作業効率が著しく低下することが予想される。
これを回避するためには、蓋となる上面部P6の周辺縁のみを連結せずに工場で箱形に組み立て、これを現場に輸送する場合には折り曲げて小さくして運ぶことになるが、現場で元の大きさに戻すのに手間がかかると考えられる。
加えて、箱形の土木用籠材の底面部分に、水の浄化機能を果たす微生物が付着する通水性マットを敷く場合、中詰め材の詰め込み中に底面部分に敷いた通水性マットがずれて作業がスムーズにできないことが考えられる。
【0006】
この発明は、上記のような課題に鑑み、その課題を解決すべく創案されたものであって、その目的とするところは、合成樹脂モノフィラメント製の土木用籠材の部品数を2個にし、その組立作業の効率を高め、ロール状に折り曲げて小さくしたものを現場で元の箱形形状の大きさに簡単容易に復元でき、さらに底面部分に通水性マットを敷く場合には通水性マットを上下で挟んでずれるのを防ぐことのできる合成樹脂モノフィラメント製の土木用籠材及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以上の課題を達成するために、請求項1の発明は、合成樹脂モノフィラメントからなる線材を亀甲形に編み上げた網体を上面、4つの側面及び底面の6面からなる箱形に形成した合成樹脂モノフィラメント製の土木用籠材において、当該土木用籠材を蓋無し網体と蓋有り網体の2つの部品を組み合わせたものから構成し、上記蓋無し網体は、合成樹脂モノフィラメントからなる線材を亀甲形に編み上げた網体からなり、亀甲形を構成する隣り合う2本の線材を撚った撚り軸の軸方向になる方形状の平面の網体の両端側を同じ面で一部重ね合うようにそれぞれ折り曲げて形成された折り曲げ片と、当該折り曲げ片がそれぞれ形成された両端から中央側寄りに向けて箱形の土木用籠材の高さに相当する長さだけ離れた位置で、当該折り曲げ片の折り曲げ方向と同じ方向の上下向きに折り曲げて形成された向かい合う一対の側面と、向かい合う一対の当該側面の間に形成される非折曲の底面とからなり、上向きにコ字型の側断面形状に形成され、上記蓋有り網体は、合成樹脂モノフィラメントからなる線材を亀甲形に編み上げた網体からなり、亀甲形を構成する隣り合う2本の線材を撚った撚り軸の軸方向になる方形状の平面の網体の両側が、両端から中央側寄りに向けて箱形の土木用籠材の上面に形成される向かい合う一対の蓋面の各蓋面に相当する長さだけ離れた位置で、同じ方向の上下向きに折り曲げてそれぞれ形成された一対の蓋面と、それぞれの一対の当該蓋面の折り曲げ位置から中央側寄りに向けて箱形の土木用籠材の高さに相当する長さだけ離れた位置で、上記蓋面の折り曲げ方向と同じ方向の上下向きに折り曲げてそれぞれ形成された向かい合う一対の側面と、向かい合う一対の当該側面の間に形成された非折曲の底面とからなり、上面側で一対の当該蓋面の先端側が一部重なり合う長方形の枠型の側断面形状に形成され、上記蓋無し網体及び上記蓋有り網体の各底面が上下に2重に重なり合うように取り付けると共に、隣り合う蓋無し網体の側面の側端縁と蓋有り網体の側面の側端縁とを合成樹脂モノフィラメントからなる連結用線材でそれぞれ連結し、上記蓋無し網体と上記蓋有り網体を組み合わせた6面からなる箱形の土木用籠材の隣り合う側面の4箇所の側端縁同士、及び、4つの側面の上辺縁と下辺縁の少なくとも一方に、輸送時にロール状に巻かれて折り畳まれて小さくなった土木用籠材を元の箱形の形状に瞬時に復元させる働きをなす合成樹脂モノフィラメントからなる復元用線材を取り付けた手段よりなるものである。
【0008】
ここで、請求項1の好ましい態様として、上下に2重に重なり合う底面同士の間には通水性マットが取り付けられている。また、土木用籠材の向かい合う一対の側面の上側には吊り輪が取り付けられている。
【0009】
また、以上の課題を達成するために、請求項4の発明は、合成樹脂モノフィラメントからなる線材を亀甲形に編み上げた方形状の平面の網体を使用して、亀甲形を構成する隣り合う2本の線材を撚った撚り軸の軸方向になる方形状の平面の網体の両端側を同じ面で一部重ね合うようにそれぞれ折り曲げて折り曲げ片を形成し、折り曲げ片を折り曲げて重ねた2辺の周辺縁及び他の2辺の周辺縁に沿って復元用線材を亀甲形の網目の間を挿通して取り付けた後、折り曲げ片がそれぞれ形成された両端から中央側寄りに向けて箱形の土木用籠材の高さに相当する長さだけ離れた位置で、折り曲げ片の折り曲げ方向と同じ方向の上下向きに折り曲げて向かい合う一対の側面をそれぞれ形成し、向かい合う一対の側面の間に非折曲の底面を形成して、上向きにコ字型の側断面形状に形成した蓋無し網体を造り、合成樹脂モノフィラメントからなる線材を亀甲形に編み上げた方形状の平面の網体を使用し、亀甲形を構成する隣り合う2本の線材を撚った撚り軸の軸方向になる方形状の平面の網体の両側が、両端から中央側寄りに向けて箱形の土木用籠材の上面に形成される向かい合う一対の蓋面の各蓋面に相当する長さだけ離れた位置で、同じ方向の上下向きに折り曲げて一対の蓋面をそれぞれ形成し、それぞれの当該蓋面の折り曲げ位置から中央側寄りに向けて箱形の土木用籠材の高さに相当する長さだけ離れた位置で、当該蓋面の折り曲げ方向と同じ方向の上下向きに折り曲げて向かい合う一対の側面をそれぞれ形成し、向かい合う一対の側面の間に非折曲の底面を形成し、上面側で一対の蓋面の先端側が一部重なり合う長方形の枠型の側断面形状に形成した蓋有り網体を造り、上記蓋無し網体及び上記蓋有り網体の各側面の側端縁同士が隣り合うように、且つ各底面が上下に2重に重なり合うように6面からなる箱形に組み合わせた後に、隣り合う蓋無し網体の側面の側端縁と蓋有り網体の側面の側端縁とを交互に、合成樹脂モノフィラメントからなる連結用線材を亀甲形Kの網目の間を螺旋状に巻きながら挿通してそれぞれ連結した手段よりなるものである。
【0010】
また、以上の課題を達成するために、請求項5の発明は、合成樹脂モノフィラメントからなる線材を亀甲形に編み上げた方形状の平面の網体を使用して、亀甲形を構成する隣り合う2本の線材を撚った撚り軸の軸方向になる方形状の平面の網体の両端側を同じ面で一部重ね合うようにそれぞれ折り曲げて折り曲げ片を形成し、折り曲げ片がそれぞれ形成された両端から中央側寄りに向けて箱形の土木用籠材の高さに相当する長さだけ離れた位置で、折り曲げ片の折り曲げ方向と同じ方向の上下向きに折り曲げて向かい合う一対の側面をそれぞれ形成し、向かい合う一対の側面の間に非折曲の底面を形成して、上向きにコ字型の側断面形状に形成した蓋無し網体を造り、合成樹脂モノフィラメントからなる線材を亀甲形に編み上げた方形状の平面の網体を使用し、一対の蓋面の折り曲げ予定線上及びこれに直角な他の2辺の周辺縁に沿って復元用線材を亀甲形の網目の間を挿通して取り付けた後、亀甲形を構成する隣り合う2本の線材を撚った撚り軸の軸方向になる方形状の平面の網体の両側が、両端から中央側寄りに向けて箱形の土木用籠材の上面に形成される向かい合う一対の蓋面の各蓋面に相当する長さだけ離れた位置で、同じ方向の上下向きに折り曲げて一対の蓋面をそれぞれ形成し、それぞれの当該蓋面の折り曲げ位置から中央側寄りに向けて箱形の土木用籠材の高さに相当する長さだけ離れた位置で、当該蓋面の折り曲げ方向と同じ方向の上下向きに折り曲げて向かい合う一対の側面をそれぞれ形成し、向かい合う一対の側面の間に非折曲の底面を形成し、上面側で一対の蓋面の先端側が一部重なり合う長方形の枠型の側断面形状に形成した蓋有り網体を造り、上記蓋無し網体及び上記蓋有り網体の各側面の側端縁同士が隣り合うように、且つ各底面が上下に2重に重なり合うように6面からなる箱形に組み合わせた後に、隣り合う蓋無し網体の側面の側端縁と蓋有り網体の側面の側端縁とを交互に、合成樹脂モノフィラメントからなる連結用線材を亀甲形Kの網目の間を螺旋状に巻きながら挿通してそれぞれ連結した手段よりなるものである。
【0011】
また、以上の課題を達成するために、請求項6の発明は、合成樹脂モノフィラメントからなる線材を亀甲形に編み上げた方形状の平面の網体を使用して、亀甲形を構成する隣り合う2本の線材を撚った撚り軸の軸方向になる方形状の平面の網体の両端側を同じ面で一部重ね合うようにそれぞれ折り曲げて折り曲げ片を形成し、折り曲げ片を折り曲げて重ねた2辺の周辺縁及び他の2辺の周辺縁に沿って復元用線材を亀甲形の網目の間を挿通して取り付けた後、折り曲げ片がそれぞれ形成された両端から中央側寄りに向けて箱形の土木用籠材の高さに相当する長さだけ離れた位置で、折り曲げ片の折り曲げ方向と同じ方向の上下向きに折り曲げて向かい合う一対の側面をそれぞれ形成し、向かい合う一対の側面の間に非折曲の底面を形成して、上向きにコ字型の側断面形状に形成した蓋無し網体を造り、合成樹脂モノフィラメントからなる線材を亀甲形に編み上げた方形状の平面の網体を使用し、一対の蓋面の折り曲げ予定線上及びこれに直角な他の2辺の周辺縁に沿って復元用線材を亀甲形の網目の間を挿通して取り付けた後、亀甲形を構成する隣り合う2本の線材を撚った撚り軸の軸方向になる方形状の平面の網体の両側が、両端から中央側寄りに向けて箱形の土木用籠材の上面に形成される向かい合う一対の蓋面の各蓋面に相当する長さだけ離れた位置で、同じ方向の上下向きに折り曲げて一対の蓋面をそれぞれ形成し、それぞれの当該蓋面の折り曲げ位置から中央側寄りに向けて箱形の土木用籠材の高さに相当する長さだけ離れた位置で、当該蓋面の折り曲げ方向と同じ方向の上下向きに折り曲げて向かい合う一対の側面をそれぞれ形成し、向かい合う一対の側面の間に非折曲の底面を形成し、上面側で一対の蓋面の先端側が一部重なり合う長方形の枠型の側断面形状に形成した蓋有り網体を造り、上記蓋無し網体及び上記蓋有り網体の各側面の側端縁同士が隣り合うように、且つ各底面が上下に2重に重なり合うように6面からなる箱形に組み合わせた後に、隣り合う蓋無し網体の側面の側端縁と蓋有り網体の側面の側端縁とを交互に、合成樹脂モノフィラメントからなる連結用線材を亀甲形Kの網目の間を螺旋状に巻きながら挿通してそれぞれ連結した手段よりなるものである。
【発明の効果】
【0012】
課題を解決するための手段よりなるこの発明に係る合成樹脂モノフィラメント製の土木用籠材及びその製造方法によれば、合成樹脂モノフィラメント製の土木用籠材の部品数を2個に減少できる。これにより、部品数が減少することにより組み立て作業の効率を高めることができる。また、部品数を減らすことで網体の切断作業などの部品製作の工程が減り、部品製作の作業効率も高めることができる。
しかも、合成樹脂モノフィラメント製の土木用籠材に復元用線材を取り付けることにより、この土木用籠材を輸送時に小さくロール状に巻いても、現場で復元用線材の働きによって、元の箱形の土木用籠材に瞬時に復帰させることができる。すなわち、4つの側面の隣り合う隅角部には全て復元用線材が上下向きに取り付けられているので、一時的に弧状に曲がっていた4つの側面をこの復元用線材の働きで上下方向の直線上に瞬時に復帰させることができる。また、側面の上辺縁又は下辺縁の少なくとも一方に取り付けられた復元用線材と、二重底になった底面との協動による働きで、ロール状に巻かれた蓋面や底面部分を平面状に瞬時に復帰させることができる。
さらに、土木用籠材の底面を二重にすることにより、設置作業などで傷みやすい下面側の底面網体の表面が破網した場合でも内部の中詰め材が飛び出ることはなく、設置作業も安全で容易とすることができる。
【0013】
また、請求項2の場合には、二重の底面の網体の間に挟んだ通水性マットに、微生物が付着できるようにして河川などの水の浄化機能を果たすようにすることができる。また、通水性マットにより、砂、泥などの流失もある程度防ぐことができる。さらに、通水性マットは上下の底面網体で固定されるため、中詰め材を土木用籠材の内部に詰め込む作業時に、通水性マットのズレが起こらず作業をスムーズに行うことができる。
【0014】
また、請求項3の場合には、吊り輪を利用して中詰め材を詰め込んだ重たい土木用籠材をクレーンで吊り上げて所定の設置場所に容易に移動させることができ、土木用籠材の周囲にクレーンで吊り上げるためのロープなどの取り付け作業を不要にでき、現場での作業効率を高めることができる。
【0015】
また、請求項4にあっては、土木用籠材の蓋無し網体に復元用線材を簡単に取り付けることができる。
【0016】
また、請求項5にあっては、土木用籠材の蓋有り網体に復元用線材を簡単に取り付けることができる。
【0017】
また、請求項6にあっては、土木用籠材の蓋無し網体及び蓋有り網体の双方に復元用線材を簡単に取り付けて、土木用籠材の現場での復元力を更に高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】この発明を実施するための形態を示す復元用線材が蓋無し網体に取り付けられたときの合成樹脂モノフィラメント製の土木用籠材の分解斜視図である。
【図2】この発明を実施するための形態を示す復元用線材が蓋有り網体に取り付けられたときの合成樹脂モノフィラメント製の土木用籠材の分解斜視図である。
【図3】この発明を実施するための形態を示す復元用線材が蓋無し網体及び蓋有り網体の双方に取り付けられたときの合成樹脂モノフィラメント製の土木用籠材の分解斜視図である。
【図4】この発明を実施するための形態を示す合成樹脂モノフィラメント製の網体の部分表面図である。
【図5】(A)はこの発明を実施するための形態を示す蓋有り網体の折り曲げ前の展開図である。 (B)はこの発明を実施するための形態を示す蓋無し網体の折り曲げ前の展開図である。
【図6】(A)はこの発明を実施するための形態を示す合成樹脂モノフィラメントからなる線材の部分斜視図である。 (B)はこの発明を実施するための形態を示す合成樹脂モノフィラメントからなる線材を束ねた復元用線材の部分斜視図である。 (C)はこの発明を実施するための形態を示す復元用線材を亀甲形の間に挿通させたときの部分側面図である。
【図7】(A)はこの発明を実施するための形態を示す連結用線材で連結するときの合成樹脂モノフィラメント製の土木用籠材の斜視図である。 (B)はこの発明を実施するための形態を示す連結用線材で連結するときの部分拡大図である。
【図8】(A)はこの発明を実施するための形態を示す合成樹脂モノフィラメント製の土木用籠材に吊り輪をとりつけたときの平面図である。 (B)はこの発明を実施するための形態を示す合成樹脂モノフィラメント製の土木用籠材に吊り輪をとりつけたときの側面図である。
【図9】(A)〜(C)はこの発明を実施するための形態を示す合成樹脂モノフィラメント製の土木用籠材をロール状に巻いて小さくする方法の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面に記載の発明を実施するための形態に基づいて、この発明をより具体的に説明する。
【0020】
図において、合成樹脂モノフィラメント製の土木用籠材1は、合成樹脂モノフィラメントからなる線材aを六角形の亀甲形Kに編み上げた網体を6面に有する箱形に形成したもので、箱形の上面部分には向かい合う一対の蓋面11、4面からなる箱形の側面12、2重底からなる箱形の底面13から構成されている。蓋面11、側面12及び底面13の各面は、合成樹脂モノフィラメントからなる線材aを亀甲形Kに編み上げた網面で形成されている。
【0021】
合成樹脂モノフィラメントは、強度や耐久性にすぐれている。特に耐水性に優れていることは生け簀用網として使用されていることで実証済みである。土木用籠材1は内部に石などの中詰め材を詰めて、河川などで使用されるので、錆びない特性は貴重である。この合成樹脂モノフィラメントには耐久性や強度に優れた例えばポリエステルが使用される。
【0022】
合成樹脂モノフィラメントの線材aは、直径が例えば2mm〜5mmのものが使用される。直径が2mmの場合には強度不足や耐久性の低下の問題がある。また、直径が5mm以上になると、土木用籠材1として利用できる六角形の亀甲形Kに編み上げことが難しいし、また過剰な強度と耐久性を有することになり経済性がさらに低下するからである。引っ張り強度としては10kg/mm2以上が望まれる。
【0023】
合成樹脂モノフィラメント製の土木用籠材1は、蓋無し網体2と蓋有り網体3の2つの部品よりなっている。この2つの部品を箱形の土木用籠材1に組み立て場合に、蓋無し網体2は網体の一部が当該籠材1の蓋面11を構成しない側の網体であり、蓋有り網体3は網体の一部が同籠材1の蓋面11を構成する側の網体である。
【0024】
蓋無し網体2は、合成樹脂モノフィラメントからなる線材aを亀甲形Kに編み上げた網体からなり、加工前は平面からみて方形状の平面になっている。蓋無し網体2は、亀甲形Kを構成する隣り合う2本の線材aを撚った撚り軸bの軸方向t(図4参照)になる網体の両端側は少し重ね合うようにそれぞれ折り曲げられた折り曲げ片21になっている。折り曲げ片21は例えば10cmほどが重ね合うようにそれぞれ折り曲げられている。撚り軸bの軸方向tになる網体の両端側を重ね合うように折り曲げて折り曲げ片21を形成するのは、撚り軸bの軸方向tになる蓋無し網体2の両端側は、亀甲形Kの六角形になっていなく、強度的に弱くなっているので、端部を折り曲げて補強しているのである。
【0025】
蓋無し網体2の亀甲形Kの撚り軸bの軸方向t(図4参照)になる両側は、折り曲げ片21がそれぞれ形成された両端から中央側寄りに向けて箱形の土木用籠材1の高さに相当する長さだけ離れた位置で、折り曲げ片21の折り曲げ方向と同じ方向の上下向きの例えば直角な上向きに折り曲げられている。この折り曲げの向きは、上向きに直角に折り曲げられた部分は箱形の土木用籠材1に組み立てられたとき、向かい合う側面22を構成することになるが、この側面22に形成されている亀甲形Kの撚り軸bの軸方向tが上下向きになるようにするためである。
【0026】
土木用籠材1の内部に中詰め材を詰め込むと、中詰め材の重さでこの側面22には上下向き側に対して強い曲げ力が作用して曲がりやすくなる。これから側面22が簡単に曲がらないようにするためには、上下向き側回りに作用する曲げモーメントに対して抵抗する曲げ剛性を高めることが必要となる。この曲げ剛性を高める役目を果たすのが亀甲形Kの撚り軸の向きで、これが上下向きの場合には曲げ剛性が高まり、側面22が中詰め材の重さで変形するのが防がれるのである。
【0027】
向かい合う側面22の間の折り曲げられなかった部分は箱形の土木用籠材1の二重の底面の一方側の底面23を構成することになる。この蓋無し網体2は側面から見て、上向きにコ字型になっていて、直角に折り曲げられた両側が側面22となり、両側面22の間の中央部分が底面23になる。
【0028】
蓋有り網体3は、合成樹脂モノフィラメントからなる線材aを亀甲形Kに編み上げた網体からなり、加工前は平面からみて方形状の平面になっている。蓋有り網体3は、亀甲形Kを構成する隣り合う2本の線材aを撚った撚り軸bの軸方向t(図4参照)になる網体の両側が、両端から中央側寄りに向けて箱形の土木用籠材1の蓋面11に相当する長さだけ離れた位置で、直角に折り曲げられている。この直角に折り曲げられた両部分は箱形の土木用籠材1に組み立てられたとき、先端側が上下に一部重ね合う蓋面31をそれぞれ構成することになる。
【0029】
蓋有り網体3の亀甲形Kの撚り軸bの軸方向t(図4参照)になる両側は、蓋面31がそれぞれ直角に折り曲げられた位置から中央側寄りに向けて箱形の土木用籠材1の高さに相当する長さだけ離れた位置で、蓋面31の折り曲げ方向と同じ方向に直角な上向きに折り曲げられている。この折り曲げの向きは、上向きに直角に折り曲げられた部分は箱形の土木用籠材1に組み立てられたとき、向かい合う側面32を構成することになるが、この側面32に形成されている亀甲形Kの撚り軸bの軸方向tが上下向きになるようにするためである。
【0030】
土木用籠材1の内部に中詰め材を詰め込むと、中詰め材の重さでこの側面32には上下向き側に対して強い曲げ力が作用して曲がりやすくなる。これから側面32が簡単に曲がらないようにするためには、上下向き側回りに作用する曲げモーメントに対して抵抗する曲げ剛性を高めることが必要となる。この曲げ剛性を高める役目を果たすのが亀甲形Kの撚り軸の向きで、これが上下向きの場合には曲げ剛性が高まり、側面32が中詰め材の重さで変形するのが防がれるのである。
【0031】
向かい合う側面32の間の折り曲げられなかった部分は箱形の土木用籠材1の二重の底面の一方側の底面33を構成することになる。この蓋有り網体3は側面から見て、長方形の枠型になっていて、上面側で先端側が一部重なり合う部分が両蓋面31となり、直角に上向きに折り曲げられた両側が側面32となり、両側面32の間の中央部分が底面33になる。
【0032】
合成樹脂モノフィラメントからなる復元用線材4は、輸送時にロール状に巻かれて折り畳まれて小さくなった土木用籠材1を元の箱形の形状に瞬時に復元させる働きをなすものである。復元用線材4は、蓋無し網体2及び蓋有り網体3を構成する線材aと同じものを例えば3本束ねてこれを捩って1本の線状にしたものが使用される。合成樹脂モノフィラメントからなる復元用線材4は熱を加えない場合には十分な復元力を備えている。また、3本束ねてこれを捩って1本にしているため、網体2,3の線材aに比べて剛性が強くなってその復元力も高まる。
【0033】
復元用線材4は、蓋無し網体2或いは蓋有り網体3の直角に折り曲げられた辺縁や端縁に沿って取り付けられるが、必要に応じて蓋無し網体2及び蓋有り網体3の双方の直角に折り曲げられた辺縁や端縁に沿って取り付けられることもある。
【0034】
図1に示すように復元用線材4が蓋無し網体2に取り付けられる場合には、図1に示すように例えば次の箇所に取り付けられる。復元用線材4は、蓋無し網体2の折り曲げ片21を折り曲げて重ねた2辺の周辺縁つまり両側面22の上辺縁22a、両側面22の左右両側端縁22b及び底面23の折り曲げられてない側の両幅端縁23aに沿ってそれぞれ取り付けられている。このうち側面22の左右両側端縁22bに取り付けられた復元用線材4は、上下向きになる。なお、土木用籠材1に組み立てられた後は、側面22の上辺縁22aは側面12の上辺縁12aになり、側面22の側端縁22bは側面12の側端縁12bになり、側面22の下辺縁23a及び底面23の折り曲げられてない側の幅端縁23aは側面12の下辺縁12cになる。復元用線材4は亀甲形Kの網目の間を挿通されている。復元用線材4は蓋無し網体2の両端側の折り曲げ片21を折り曲げて重ねた後、上向きにコ字型に折り曲げられる前の方形状の間にその4辺の周辺端縁に沿って取り付けられる。
【0035】
また、復元用線材4が蓋有り網体3に取り付けられる場合には、図2に示すように例えば次の箇所に取り付けられる。復元用線材4は、蓋有り網体3の蓋面31を直角に折り曲げた2辺の周辺縁つまり両側面32の上辺縁32a、両側面32の左右両側端縁32b及び底面33の折り曲げられてない側の両幅端縁33aに沿ってそれぞれ取り付けられている。このうち側面32の左右両側端縁32bに取り付けられた復元用線材4は、上下向きになる。なお、土木用籠材1に組み立てられた後は、側面32の上辺縁32aは側面12の上辺縁12aになり、側面32の側端縁32bは側面12の側端縁12bになり、側面32の下辺縁32c及び底面33の折り曲げられてない側の幅端縁33aは側面12の下辺縁12cになる。復元用線材4は亀甲形Kの網目の間を挿通されている。復元用線材4は蓋有り網体3の両側の蓋面31を直角に折り曲げた後、或いは蓋面31を折り曲げる前の折り曲げ予定線上にその4辺の周辺端縁に沿って取り付けられる。
【0036】
合成樹脂モノフィラメント製の土木用籠材1は、これを構成する蓋無し網体2の底面23に対して上向き直角に折り曲げられた向かい合う側面22と、同様に構成する蓋有り網体3の底面33に対して上向き直角に折り曲げられた向かい合う側面32とが平面から見て直角の位置関係になるようにして、蓋無し網体2の底面23と蓋有り網体3の底面33とは上下で重ね合わせられている。
【0037】
蓋無し網体2の底面23と蓋有り網体3の底面33とは上下で重ね合わせられていて、土木用籠材1の底面は2重になる。このため、この2重になった底面が輸送時にロール状に巻かれて折り畳まれて小さくなった土木用籠材1を復元用線材4との協動により元の箱形の形状に瞬時に復元させる手助けとなる働きがある。
【0038】
この上下で重ねるとき、蓋無し網体2に復元用線材4が取り付けられている場合には、蓋無し網体2の底面23を下側にし、蓋有り網体3の底面33を上側にして重ね合わせられている。逆に蓋有り網体3に復元用線材4が取り付けられている場合には、蓋有り網体3の底面33を下側にし、蓋無し網体2の底面23を上側にして重ね合わせられている。
【0039】
上下に重ね合わせられて直角に接する蓋無し網体2の側面22の両側端縁22bと、蓋有り網体3の側面32の両側端縁32bとは、図7にしめすように、合成樹脂モノフィラメント製の連結用線材14によって連結されている。連結用線材14は螺旋状に巻かれながら側面22の側端縁22bと直角に接する側面32の両側端縁32bとを連結している。つまり、連結用線材14は、側面22の側端縁22bの亀甲形Kの撚り軸bの軸方向t(図4参照)と平行な端辺と、側面32の側端縁32bの亀甲形Kの撚り軸bの軸方向tと平行な端辺とを、交互に、亀甲形Kの網目の間を螺旋状に巻かれながら挿通されている。
【0040】
また、蓋無し網体2の底面23の幅端縁23aと蓋有り網体3の側面32の下辺縁32cとは、合成樹脂モノフィラメント製の連結用線材14によって連結されている。連結用線材14は螺旋状に巻かれながら底面23の幅端縁23aと上下で直角に接する側面32の下辺縁32cとを連結している。つまり、連結用線材14は、底面23の幅端縁23aの亀甲形Kの撚り軸bの軸方向tと平行な端辺と、側面32の下辺縁32cとを、交互に、亀甲形Kの網目の間を螺旋状に巻かれながら挿通されている。
【0041】
蓋無し網体2の側面22の片方の側端縁22bと蓋有り網体3の側面32の片方の側端縁32bとを連結する連結用線材14と、蓋無し網体2の底面23の端縁23aと蓋有り網体3の側面32の下辺縁32cとを途中まで連結する連結用線材14とは、同一の1本の線材aからなっていて、連続的に連結されている。同様に、他方の側端縁22bと側端縁32bとを連結する連結用線材14と、幅端縁23aと下辺縁32cとを途中まで連結する別の連結用線材14とは、同一の1本の線材aからなっている。幅端縁23aと下辺縁32cの中央部分は2本の連結用線材14によって一部重複して連結されている。
【0042】
通水性マット5は、耐水性、耐候性、耐腐食性に優れた化学合成繊維を不規則に配列して不織布の繊維層に形成し、強度と弾性を有するもので、土木用籠材1の底面部分に、水の浄化機能を果たす微生物を付着させて、河川の浄化を図る場合に、蓋無し網体2の底面23と蓋有り網体3の底面33との間にサンドイッチ状に挟まれて使用される。なお通水性マット5は化学合成繊維以外の天然繊維が使用されることもある。この通水性マット5は、土砂や底面23,33の亀甲形Kの網目をすり抜ける小石が流出するのを防ぐ場合にも使用される。
【0043】
通水性マット5は、蓋無し網体2の底面23と蓋有り網体3の底面33との間にサンドイッチ状に挟まれて使用されるので、土木用籠材1の内部に中詰め材を詰め込んでも、中詰め材の重さでずれるという懼れはない。通水性マット5は底面23,33の平面サイズと略同じサイズの方形状になる。また、通水性マット5は弾性力があり復元力を有するため、輸送時にロール状に巻かれて折り畳まれて小さくなった土木用籠材1を復元用線材4との協動により元の箱形の形状に瞬時に復元させる手助けとなる働きがある。
【0044】
図8に示すように、合成樹脂モノフィラメント製の土木用籠材1の向かい合う一対の側面12の上側には吊り輪6が取り付けられている。吊り輪6は中詰め材を詰め込んだ土木用籠材1をクレーンで吊り上げる場合にクレーンのフックで引っ掛けられる部分である。吊り輪6は索状61の両端に形成されている。吊り輪6が形成された索状61は土木用籠材1の底面13と向かい合う側面12の外周に沿って一体的に取り付けられている。又その両端の吊り輪6は側面12の上側に出るように取り付けられている。
【0045】
吊り輪6は、土木用籠材1が小型の場合には、片側の側面12に2個、合計で4個取り付けられる。土木用籠材1が大型になると、その大きさに合わせて、吊り輪6の個数は増加し、4つの側面12の全てに取り付けられることもある。
【0046】
次に、合成樹脂モノフィラメント製の土木用籠材1の製作方法について以下説明する。
土木用籠材1は、蓋無し網体2と蓋有り網体3の2個の部品から構成され、蓋無し網体2及び蓋有り網体3は次のようにして製作される。
【0047】
蓋無し網体2は次のようにして製作される。
合成樹脂モノフィラメントからなる線材aを六角形の亀甲形Kに編み上げた平面な網面を所定の大きさの方形状に裁断する。このとき亀甲形Kの撚り軸bの軸方向t(図4、図5参照)に対して直交方向に裁断される。撚り軸bの軸方向tに平行な両幅端は亀甲形Kに編み上げる場合にその幅サイズになるように予め製造される。
【0048】
この平面な蓋無し網体2の亀甲形Kの撚り軸bの軸方向tとなる両端部分を、例えば10cmほどが重ね合うようにそれぞれ折り曲げる。蓋無し網体2の両端部分には折り曲げ片21が形成される。前にも述べたように、蓋無し網体2の亀甲形Kの撚り軸bの軸方向tとなる両端部分の強度を高めるためである。
【0049】
蓋無し網体2に復元用線材4が取り付けられる場合には、この後、蓋無し網体2の折り曲げ片21を折り曲げて重ねた2辺の周辺縁と、折り曲げられなかった他の2辺の周辺縁に取り付けられる。復元用線材4は亀甲形Kの網目の間を挿通させて取り付けられる(図6(C)参照)。蓋無し網体2に復元用線材4を取り付けない場合にはこの作業は省略される。
【0050】
このとき、蓋無し網体2は上向きにコ字型に折り曲げられてなく、平面状であるため、その分、復元用線材4の取り付け作業は楽になる。蓋無し網体2が上向きにコ字型に折り曲げられた後は、復元用線材4を取り付け箇所は、折り曲げて重ねた2辺の周辺縁は両側面22の上辺縁22aとなり、折り曲げられなかった他の2辺の周辺縁は両側面22の左右両側端縁22b及び底面23の折り曲げられてない側の両幅端縁23aになる。
【0051】
折り曲げ片21が形成された両端から中央寄りに、それぞれ土木用籠材1の高さに相当する長さ位置で上向きに直角に折り曲げて、側面22をそれぞれ形成する。これにより、蓋無し網体2は、両側に側面22が形成され、中央部分が底面23となる、上向きにコ字型の形状に形成される。
【0052】
蓋有り網体3は次のようにして製作される。
合成樹脂モノフィラメントからなる線材aを六角形の亀甲形Kに編み上げた平面な網面を所定の大きさの方形状に裁断する。このとき亀甲形Kの撚り軸bの軸方向t(図4、図5参照)に対して直交方向に裁断される。撚り軸bの軸方向tに平行な両幅端は亀甲形Kに編み上げる場合にその幅サイズになるように予め製造される。
【0053】
この平面な蓋有り網体3の亀甲形Kの撚り軸bの軸方向tとなる網体の両側を、両端から中央側寄りに向けて箱形の土木用籠材1の蓋面11に相当する長さだけ離れた位置で、
それぞれ上向きに直角に折り曲げる。折り曲げられた部分は蓋面31となる。この蓋面31は箱形に組み立てられた後は土木用籠材1の蓋面11になる。
【0054】
蓋有り網体3に復元用線材4が取り付けられる場合には、上記の折り曲げる前に、復元用線材4を折り曲げ予定線上に沿って取り付けるか、上記の折り曲げ後は復元用線材4を折り曲げ辺縁に取り付け、また復元用線材4を折り曲げられなかった他の2辺の周辺縁に取り付ける。復元用線材4は亀甲形Kの網目の間を挿通させて取り付けられる(図6(C)参照)。蓋有り網体3に復元用線材4を取り付けない場合にはこの作業は省略される。
【0055】
折り曲げる前に取り付けるときは、平面状であるため、その分、復元用線材4の取り付け作業は楽になる。蓋有り網体3が長方形の枠状に折り曲げられた後は、復元用線材4を取り付け箇所は、折り曲げた2辺の周辺縁は両側面32の上辺縁32aとなり、折り曲げられなかった他の2辺の周辺縁は両側面32の左右両側端縁32b及び底面33の折り曲げられてない側の両幅端縁33aになる。
【0056】
上向きに直角に折り曲げられて蓋面31が形成された下端から中央寄りに、それぞれ土木用籠材1の高さに相当する長さ位置でさらに上向きに直角に折り曲げて、側面32をそれぞれ形成する。これより前に上向きに直角に折り曲げられて蓋面31は、上向きの状態から水平状態になり、蓋面31は互いにその先端側は上下で一部重なり合う。これにより、蓋有り網体3は、上面に一対の蓋面31が形成され、両側に側面32が形成され、下面中央部分が底面33となる、長方形の枠型の形状に形成される。
【0057】
続いて、土木用籠材1は蓋無し網体2と蓋有り網体3とを組み合わせて次のようにして製作される。
蓋無し網体2の向かい合う一対の側面22と蓋有り網体3の向かい合う一対の側面32とが互いに直交するように取り付ける。つまり側面22の側端縁22bと側面32の側端縁32bとが直角な隅角部で隣り合って接するように取り付ける。
【0058】
この場合において、蓋無し網体2の周縁側に復元用線材4が取り付けられているときには、蓋無し網体2の底面23を下側にし、その上側から蓋有り網体3の底面33を重ねるようにして取り付ける(図1参照)。蓋有り網体3の周縁側に復元用線材4が取り付けられているときには、逆にして、蓋有り網体3の底面33を下側にし、その上側から蓋無し網体2の底面23を重ねるようにして取り付ける(図2参照)。何れにしても、復元用線材4が取り付けられている側の網体2又は網体3を下側にするのが好ましい。双方の網体2,3に復元用線材4が取り付けられているときには、どちらを下側にしてもよい。
【0059】
底面23,33の間に通水性マット5を取り付ける場合には、底面となる側の上に通水性マット5を敷いた後に上側と底面をその上から被せて、通水性マット5を上下の底面23,33でサンドイッチ状に挟む(図1〜図3参照)。通水性マット5は上下の底面23,33で挟まれることでずれるのが防がれる。
【0060】
このあと、直角な隅角部で隣り合う同士の側面22の側端縁22bと側面32の側端縁32bとを、連結用線材14を使って連結する(図7参照)。連結用線材14は、側面32の下辺縁32cと底面23の幅端縁23aとの一部を螺旋状に巻きながら連結した後に続けて側端縁22b,32bの下端側から上向きに連続して螺旋状に巻きながら連結する。側端縁22b,32bのみを連結する場合よりも、側面32の下辺縁32cと底面23の幅端縁23aとを一部含めて連続して連結した方が側端縁22b,32bの連結力は強くなる。
【0061】
以上の方法によって、上面部分が一対の蓋面11、側周面部分が4つの側面12,底面部分が二重となる底面23,33で構成された箱形の合成樹脂モノフィラメント製の土木用籠材1が製作される。
【0062】
箱形の合成樹脂モノフィラメント製の土木用籠材1を現場に輸送する場合には、蓋面11と二重の底面23,33とが重なり合うように上下を重ね合わせて潰す(図9(A)参照)。このとき4つの側面12はその高さ方向の中間部分で一時的に弧状に曲がる。これを土木用籠材1の長手方向に向けてロール状に巻き(図9(B)参照)、紐cでその外周側を一時的に巻いて元の箱形に戻らないように固定し(図9(C)参照)、巻いて小さく折り畳んだ状態で現場に運ぶ。
【0063】
現場で使用するときには、固定していた紐cを外すと、復元用線材4の働きで、元の箱形の土木用籠材1に瞬時に復帰する。すなわち、4つの側面12の隣り合う隅角部には全て復元用線材4が上下向きに取り付けられているので、一時的に弧状に曲がっていた4つの側面12は、この復元用線材4の働きで上下方向の直線上に復帰する。また、側面12の上辺縁12a又は下辺縁12cの少なくとも一方に取り付けられた復元用線材4と、二重底になった底面23,33との協動による働きで、ロール状に巻かれた蓋面11や底面23,33部分は、平面状に復帰する。また、底面23,33の間に通水性マット5が挟まれている場合には、この通水性マット5の働きも加わって、さらに平面状に復帰しやすくなる。
【0064】
その後は、一対の蓋面11を上側に開けて、内部に栗石などの中詰め材を詰め込み、一対の蓋面11を閉じ、一対の蓋面11の周縁及び一部が重なる部分を連結用線材14で連結して、一対の蓋面11が開かないように固定する。土木用籠材1に取り付けられた吊り輪6をクレーンのフックで引っ掛けて、中詰め材が充填された合成樹脂モノフィラメント製の土木用籠材1を所定の設置場所に移動して下ろす。
【0065】
なお、この発明は上記発明を実施するための形態に限定されるものではなく、この発明の精神を逸脱しない範囲で種々の改変をなし得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0066】
1 土木用籠材
11 蓋面
12 側面
12a 上辺縁
12b 側端縁
12c 下辺縁
13 底面
14 連結用線材
2 蓋無し網体
21 折り曲げ片
22 側面
22a 上辺縁
22b 側端縁
22c 下辺縁
23 底面
23a 幅端縁
3 蓋有り網体
31 蓋面
32 側面
32a 上辺縁
32b 側端縁
32c 下辺縁
33 底面
33a 幅端縁
4 復元用線材
5 通水性マット
6 吊り輪
61 索状
a 線材
b 撚り軸
c 紐
t 軸方向
K 亀甲形

【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成樹脂モノフィラメントからなる線材を亀甲形に編み上げた網体を上面、4つの側面及び底面の6面からなる箱形に形成した合成樹脂モノフィラメント製の土木用籠材において、
当該土木用籠材を蓋無し網体と蓋有り網体の2つの部品を組み合わせたものから構成し、
上記蓋無し網体は、合成樹脂モノフィラメントからなる線材を亀甲形に編み上げた網体からなり、亀甲形を構成する隣り合う2本の線材を撚った撚り軸の軸方向になる方形状の平面の網体の両端側を同じ面で一部重ね合うようにそれぞれ折り曲げて形成された折り曲げ片と、当該折り曲げ片がそれぞれ形成された両端から中央側寄りに向けて箱形の土木用籠材の高さに相当する長さだけ離れた位置で、当該折り曲げ片の折り曲げ方向と同じ方向の上下向きに折り曲げて形成された向かい合う一対の側面と、向かい合う一対の当該側面の間に形成される非折曲の底面とからなり、上向きにコ字型の側断面形状に形成され、
上記蓋有り網体は、合成樹脂モノフィラメントからなる線材を亀甲形に編み上げた網体からなり、亀甲形を構成する隣り合う2本の線材を撚った撚り軸の軸方向になる方形状の平面の網体の両側が、両端から中央側寄りに向けて箱形の土木用籠材の上面に形成される向かい合う一対の蓋面の各蓋面に相当する長さだけ離れた位置で、同じ方向の上下向きに折り曲げてそれぞれ形成された一対の蓋面と、それぞれの一対の当該蓋面の折り曲げ位置から中央側寄りに向けて箱形の土木用籠材の高さに相当する長さだけ離れた位置で、上記蓋面の折り曲げ方向と同じ方向の上下向きに折り曲げてそれぞれ形成された向かい合う一対の側面と、向かい合う一対の当該側面の間に形成された非折曲の底面とからなり、上面側で一対の当該蓋面の先端側が一部重なり合う長方形の枠型の側断面形状に形成され、
上記蓋無し網体及び上記蓋有り網体の各底面が上下に2重に重なり合うように取り付けると共に、隣り合う蓋無し網体の側面の側端縁と蓋有り網体の側面の側端縁とを合成樹脂モノフィラメントからなる連結用線材でそれぞれ連結し、
上記蓋無し網体と上記蓋有り網体を組み合わせた6面からなる箱形の土木用籠材の隣り合う側面の4箇所の側端縁同士、及び、4つの側面の上辺縁と下辺縁の少なくとも一方に、輸送時にロール状に巻かれて折り畳まれて小さくなった土木用籠材を元の箱形の形状に瞬時に復元させる働きをなす合成樹脂モノフィラメントからなる復元用線材を取り付けた、
ことを特徴とする合成樹脂モノフィラメント製の土木用籠材。
【請求項2】
上下に2重に重なり合う底面同士の間には、通水性マットが取り付けられている請求項1記載の合成樹脂モノフィラメント製の土木用籠材。
【請求項3】
土木用籠材の向かい合う一対の側面の上側には吊り輪が取り付けられている請求項1記載の合成樹脂モノフィラメント製の土木用籠材。
【請求項4】
合成樹脂モノフィラメントからなる線材を亀甲形に編み上げた方形状の平面の網体を使用して、亀甲形を構成する隣り合う2本の線材を撚った撚り軸の軸方向になる方形状の平面の網体の両端側を同じ面で一部重ね合うようにそれぞれ折り曲げて折り曲げ片を形成し、折り曲げ片を折り曲げて重ねた2辺の周辺縁及び他の2辺の周辺縁に沿って復元用線材を亀甲形の網目の間を挿通して取り付けた後、折り曲げ片がそれぞれ形成された両端から中央側寄りに向けて箱形の土木用籠材の高さに相当する長さだけ離れた位置で、折り曲げ片の折り曲げ方向と同じ方向の上下向きに折り曲げて向かい合う一対の側面をそれぞれ形成し、向かい合う一対の側面の間に非折曲の底面を形成して、上向きにコ字型の側断面形状に形成した蓋無し網体を造り、
合成樹脂モノフィラメントからなる線材を亀甲形に編み上げた方形状の平面の網体を使用し、亀甲形を構成する隣り合う2本の線材を撚った撚り軸の軸方向になる方形状の平面の網体の両側が、両端から中央側寄りに向けて箱形の土木用籠材の上面に形成される向かい合う一対の蓋面の各蓋面に相当する長さだけ離れた位置で、同じ方向の上下向きに折り曲げて一対の蓋面をそれぞれ形成し、それぞれの当該蓋面の折り曲げ位置から中央側寄りに向けて箱形の土木用籠材の高さに相当する長さだけ離れた位置で、当該蓋面の折り曲げ方向と同じ方向の上下向きに折り曲げて向かい合う一対の側面をそれぞれ形成し、向かい合う一対の側面の間に非折曲の底面を形成し、上面側で一対の蓋面の先端側が一部重なり合う長方形の枠型の側断面形状に形成した蓋有り網体を造り、
上記蓋無し網体及び上記蓋有り網体の各側面の側端縁同士が隣り合うように、且つ各底面が上下に2重に重なり合うように6面からなる箱形に組み合わせた後に、隣り合う蓋無し網体の側面の側端縁と蓋有り網体の側面の側端縁とを交互に、合成樹脂モノフィラメントからなる連結用線材を亀甲形Kの網目の間を螺旋状に巻きながら挿通してそれぞれ連結した、
ことを特徴とする合成樹脂モノフィラメント製の土木用籠材の製造方法。
【請求項5】
合成樹脂モノフィラメントからなる線材を亀甲形に編み上げた方形状の平面の網体を使用して、亀甲形を構成する隣り合う2本の線材を撚った撚り軸の軸方向になる方形状の平面の網体の両端側を同じ面で一部重ね合うようにそれぞれ折り曲げて折り曲げ片を形成し、折り曲げ片がそれぞれ形成された両端から中央側寄りに向けて箱形の土木用籠材の高さに相当する長さだけ離れた位置で、折り曲げ片の折り曲げ方向と同じ方向の上下向きに折り曲げて向かい合う一対の側面をそれぞれ形成し、向かい合う一対の側面の間に非折曲の底面を形成して、上向きにコ字型の側断面形状に形成した蓋無し網体を造り、
合成樹脂モノフィラメントからなる線材を亀甲形に編み上げた方形状の平面の網体を使用し、一対の蓋面の折り曲げ予定線上及びこれに直角な他の2辺の周辺縁に沿って復元用線材を亀甲形の網目の間を挿通して取り付けた後、亀甲形を構成する隣り合う2本の線材を撚った撚り軸の軸方向になる方形状の平面の網体の両側が、両端から中央側寄りに向けて箱形の土木用籠材の上面に形成される向かい合う一対の蓋面の各蓋面に相当する長さだけ離れた位置で、同じ方向の上下向きに折り曲げて一対の蓋面をそれぞれ形成し、それぞれの当該蓋面の折り曲げ位置から中央側寄りに向けて箱形の土木用籠材の高さに相当する長さだけ離れた位置で、当該蓋面の折り曲げ方向と同じ方向の上下向きに折り曲げて向かい合う一対の側面をそれぞれ形成し、向かい合う一対の側面の間に非折曲の底面を形成し、上面側で一対の蓋面の先端側が一部重なり合う長方形の枠型の側断面形状に形成した蓋有り網体を造り、
上記蓋無し網体及び上記蓋有り網体の各側面の側端縁同士が隣り合うように、且つ各底面が上下に2重に重なり合うように6面からなる箱形に組み合わせた後に、隣り合う蓋無し網体の側面の側端縁と蓋有り網体の側面の側端縁とを交互に、合成樹脂モノフィラメントからなる連結用線材を亀甲形Kの網目の間を螺旋状に巻きながら挿通してそれぞれ連結した、
ことを特徴とする合成樹脂モノフィラメント製の土木用籠材の製造方法。
【請求項6】
合成樹脂モノフィラメントからなる線材を亀甲形に編み上げた方形状の平面の網体を使用して、亀甲形を構成する隣り合う2本の線材を撚った撚り軸の軸方向になる方形状の平面の網体の両端側を同じ面で一部重ね合うようにそれぞれ折り曲げて折り曲げ片を形成し、折り曲げ片を折り曲げて重ねた2辺の周辺縁及び他の2辺の周辺縁に沿って復元用線材を亀甲形の網目の間を挿通して取り付けた後、折り曲げ片がそれぞれ形成された両端から中央側寄りに向けて箱形の土木用籠材の高さに相当する長さだけ離れた位置で、折り曲げ片の折り曲げ方向と同じ方向の上下向きに折り曲げて向かい合う一対の側面をそれぞれ形成し、向かい合う一対の側面の間に非折曲の底面を形成して、上向きにコ字型の側断面形状に形成した蓋無し網体を造り、
合成樹脂モノフィラメントからなる線材を亀甲形に編み上げた方形状の平面の網体を使用し、一対の蓋面の折り曲げ予定線上及びこれに直角な他の2辺の周辺縁に沿って復元用線材を亀甲形の網目の間を挿通して取り付けた後、亀甲形を構成する隣り合う2本の線材を撚った撚り軸の軸方向になる方形状の平面の網体の両側が、両端から中央側寄りに向けて箱形の土木用籠材の上面に形成される向かい合う一対の蓋面の各蓋面に相当する長さだけ離れた位置で、同じ方向の上下向きに折り曲げて一対の蓋面をそれぞれ形成し、それぞれの当該蓋面の折り曲げ位置から中央側寄りに向けて箱形の土木用籠材の高さに相当する長さだけ離れた位置で、当該蓋面の折り曲げ方向と同じ方向の上下向きに折り曲げて向かい合う一対の側面をそれぞれ形成し、向かい合う一対の側面の間に非折曲の底面を形成し、上面側で一対の蓋面の先端側が一部重なり合う長方形の枠型の側断面形状に形成した蓋有り網体を造り、
上記蓋無し網体及び上記蓋有り網体の各側面の側端縁同士が隣り合うように、且つ各底面が上下に2重に重なり合うように6面からなる箱形に組み合わせた後に、隣り合う蓋無し網体の側面の側端縁と蓋有り網体の側面の側端縁とを交互に、合成樹脂モノフィラメントからなる連結用線材を亀甲形Kの網目の間を螺旋状に巻きながら挿通してそれぞれ連結した、
ことを特徴とする合成樹脂モノフィラメント製の土木用籠材の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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