説明

合成樹脂レンズ

【課題】サングラス、視力矯正用の眼鏡、シ−ルドなどに使用した場合に、自然な色調で装着時に著しい色調変化が少なく、コントラスト(視認性)の良い合成樹脂レンズを提供する。
【解決手段】熱可塑性樹脂に、570〜610nmに光線透過率の極小値を持つブルー系色素と、380〜500nmのブルーライト光の内、400〜440nmに光線透過率の極大値を、480〜520nmの光線透過率の極小値を持つピンク系色素を含有させて、570〜610nmに光線透過率の極小値を有し、透過色調を無彩色系レンズにしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、サングラス、視力矯正用の眼鏡、シ−ルドなどに使用できる合成樹脂レンズに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、眼鏡(サングラス、視力矯正)用レンズにおいて、視認性の良いレンズとして、可視光線のなかで散乱しやすい380nm〜500nmの青色光線の波長領域を吸収または反射するレンズが存在する。このレンズは、散乱光を遮蔽し、結果として遠景がすっきり、ハツキリ見える視認性の良いレンズとして販売されている。
【0003】
さらに、眼鏡用レンズにおいて、防眩効果があり、かつ裸眼と眼鏡装着時においても色調変化が少ないレンズとしては、無彩色系のグレー系レンズが存在する。
【0004】
また、文献に記載された眼鏡用レンズとして、標準比視感度曲線の中心波長近傍に極大吸収値を有する有機色素と共に紫外線吸収剤および青色光吸収剤を含有し、550〜585nmの波長範囲に透過率曲線の極小値を有し、該極小値での透過率が25%以下、590〜660nmの波長範囲における平均透過率が15%以上、かつ、470〜550nmの波長範囲における平均透過率が10%以上である合成樹脂基材からなるものが存在する(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−43550号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来の青色光線の波長領域を吸収または反射する眼鏡用レンズでは、青色光が減光されているため、ピンク・オレンジ・アンバー系の色調をしている。そのため裸眼と眼鏡装着時においては色調変化があり、物体色がブルー系の場合は色分別がしにくいことがあるという問題点を有していた。
【0007】
さらに、上記従来の無彩色系のグレー系眼鏡用レンズでは、可視光線をほぼ均一に減光するため、視認性は裸眼同等または可視光線透過率量が低くなり低下するという問題点を有していた。
【0008】
また、特許文献1に示された従来の眼鏡用レンズでは、太陽光線の眩しさを軽減し、橙色光に対する高い透過率によりトンネル内でのナトリウムランプの照明(中心波長589nm)にも順応できるとしているが、この眼鏡用レンズにおいても裸眼と眼鏡装着時においては色調変化があるという問題点を有していた。
【0009】
そこで、この発明は、上記従来の問題点を解決することをその課題としており、サングラス、視力矯正用の眼鏡、シ−ルドなどに使用した場合に、自然な色調で装着時に著しい色調変化が少なく、コントラスト(視認性)の良い合成樹脂レンズを提供することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明の合成樹脂レンズは、熱可塑性樹脂に、570〜610nmに光線透過率の極小値を持つブルー系色素と、380〜500nmのブルーライト光の内、400〜440nmに光線透過率の極大値を、480〜520nmの光線透過率の極小値を持つピンク系色素を含有させて、570〜610nmに可視光線透過率の極小値を有し、透過色調を無彩色系レンズにしている。
【0011】
さらに、この発明の合成樹脂レンズは、熱可塑性樹脂に、570〜610nmに光線透過率の極小値を持つブルー系色素と、380〜500nmのブルーライト光の内、400〜440nmに光線透過率の極大値を、480〜520nmの光線透過率の極小値を持つピンク系色素を含有させて、570〜610nmに可視光線透過率の極小値を有したシートを、透明の熱可塑性樹脂レンズに貼り付けている。
【0012】
そして、この発明の合成樹脂レンズでは、前記ブルー系色素の含有率が0. 004〜0. 005wt%、前記ピンク系色素の含有率が0. 008〜0. 00 9wt%であるものとしている。
【0013】
この発明の合成樹脂レンズでは、前記ブルー系色素と前記ピンク系色素の含有比が1:2であるものとしている。
【0014】
この発明の合成樹脂レンズでは、前記レンズ表面に可視光線を反射する蒸着膜を備えたものとしている。
【0015】
この発明の合成樹脂レンズでは、前記レンズ表面に偏光度90〜100%のグレー系偏光膜を備えたものとしている。
【0016】
この発明の合成樹脂レンズでは、前記レンズ表面に可視光線を反射する蒸着膜および偏光度90〜100%のグレー系偏光膜を備えたものとしている。
【0017】
この発明の合成樹脂レンズでは、前記シート表面に可視光線を反射する蒸着膜を備えたものとしている。
【0018】
この発明の合成樹脂レンズでは、前記シート表面に偏光度90〜100%のグレー系偏光膜を備えたものとしている。
【0019】
この発明の合成樹脂レンズでは、前記シート表面に可視光線を反射する蒸着膜および偏光度90〜100%のグレー系偏光膜を備えたものとしている。
【発明の効果】
【0020】
この発明の合成樹脂レンズは、以上に述べたように構成されているので、サングラス、視力矯正用の眼鏡、シ−ルドなどに使用した場合に、自然な色調で装着時に著しい色調変化が少なく、コントラスト(視認性)の良いものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】実施例1で得たこの発明の合成樹脂レンズの可視光線透過率を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、この発明の合成樹脂レンズを実施するための形態を、詳細に説明する。
【0023】
この発明の合成樹脂レンズは、熱可塑性樹脂に、ブルー系色素とピンク系色素を含有させて、570〜610nmに光線透過率の極小値を有し、透過色調を無彩色系レンズにしている。
【0024】
さらに、この発明の合成樹脂レンズは、熱可塑性樹脂に、ブルー系色素とピンク系色素を含有させて、570〜610nmに可視光線透過率の極小値を有したシートを、透明の熱可塑性樹脂レンズに貼り付けたものとしている。
【0025】
そして、このレンズの可視光線透過率は、10〜70%とするのが好ましく、なかでも20〜55 %とするのがより好ましい。
【0026】
前記レンズの厚みは、1〜12mmとするのが好ましく、1. 2〜2. 6mmとするのがより好ましい。前記シートの厚みは、0. 3〜1. 2mmとするのが好ましい。
【0027】
なお、この発明において無彩色系とは、JIS Z8701によるXYZ表色系の色度座標のうち、JIS Z8110のXYZ表色系の色度区分の白の範囲とする。
【0028】
熱可塑性樹脂としては、ポリカーボネート、透明ポリアミド、ウレタン、アクリル等を使用することができる。
【0029】
ブルー系色素としては、570〜610nmに光線透過率の極小値を持つものとしており、テトラアザポルフィリン化合物、アザポリフィリン化合物等を使用することができる。
【0030】
ピンク系色素としては、380〜500nmのブルーライト光の内、400〜440nmに光線透過率の極大値を、480〜520nmの光線透過率の極小値を持つものとしており、1, 4−ヒドロキシアントラキノン、ビオラントロン、1−(2−ニトロフェニラゾ)−2−ナフトール等を使用することができる。
【0031】
この発明の合成樹脂レンズにおいて、前記ブルー系色素の含有率は、0. 001〜0.10wt%としており、0. 004〜0. 005wt%とするのが好ましく、前記ピンク系色素の含有率は、0. 005〜0.15wt%としており、0. 008〜0. 009wt%とするのが好ましい。
【0032】
さらに、この発明の合成樹脂レンズにおいて、前記ブルー系色素と前記ピンク系色素の含有比は、4:9〜5:8としており、1:2とするのが好ましい。
【0033】
この発明の合成樹脂レンズは、前記無彩色系レンズ表面やシート表面に、可視光線を反射するシルバー系の蒸着膜を備えたものとすることができる。この場合、前記蒸着膜を備える前のレンズやシ−トの可視光線透過率は35〜60%とするのが好ましく、前記蒸着膜を備えた後のレンズやシートの可視光線透過率は15〜50%とするのが好ましい。前記蒸着膜としては、金属クロム、アルミ、チタン、あるいはSiO、SiO2 、TiO2 、Ti3 O5 、ZrO2 等を真空蒸着してなる積層膜としている。
【0034】
この発明の合成樹脂レンズは、前記無彩色系レンズ表面やシート表面やシート表面に、偏光度90〜100%のグレー系偏光膜を備えたものとすることができる。この場合のレンズやシートの可視光線透過率は、15〜35%とするのが好ましい。前記グレー系偏光膜としては、ポリビニルアルコールの偏光膜をポリカーボネート、トリアセテート、ポリアミド等の透明のフィルムを保護層として貼りあわせたシートとしている。
【0035】
さらに、この発明の合成樹脂レンズは、前記無彩色系レンズ表面やシート表面に、偏光度90〜100%のグレー系偏光膜を備え、その表面に可視光線を反射する蒸着膜を備えたものとしてもよい。この場合、前記グレー系偏光膜を備えたレンズの可視光線透過率は15〜50%とするのが好ましく、前記蒸着膜を備えたレンズの可視光線透過率は10〜35%とするのが好ましい。
【0036】
この発明の合成樹脂レンズは、前記無彩色系レンズ表面に、透明の熱可塑性樹脂レンズを備えたものとしてもよい。
【0037】
さらに、この発明の合成樹脂レンズは、前記無彩色系レンズ表面に、透明の熱可塑性樹脂レンズを備え、その透明の熱可塑性樹脂レンズの表面に前記蒸着膜を備えたものとしてもよい。
【0038】
また、この発明の合成樹脂レンズは、前記無彩色系レンズ表面に、透明の熱可塑性樹脂レンズを備え、その透明の熱可塑性樹脂レンズの表面に前記グレー系偏光膜を備えたものとしてもよい。
【0039】
さらにまた、この発明の合成樹脂レンズは、前記無彩色系レンズ表面に、透明の熱可塑性樹脂レンズを備え、その透明の熱可塑性樹脂レンズの表面に前記蒸着膜と前記グレー系偏光膜を備えたものとしてもよい。
【0040】
なお、この発明の合成樹脂レンズは、色度図によると、X:0. 25±0. 02、Y:0. 27±0. 02のブルー系色素と、X:0. 39±0. 02、Y:0. 34±0. 02のピンク系色素を熱可塑性樹脂に含有させた結果、X:0. 28±0. 02、Y:0. 29±0. 02の無彩色系レンズとなった。
【0041】
以下、この発明の合成樹脂レンズを実施例に基づいて、詳細に説明する。
【0042】
〔実施例1〕
ポリカーボネート樹脂1kg当たり、ブルー系色素としてテトラアザポルフィリン化合物を0. 0450g、ピンク系色素として1, 4−ヒドロキシアントラキノンを0. 0882gを練り込んで、外径79mm、中心レンズ厚1.8mmの眼鏡用レンズ、厚さ1.8mmのヘルメット用シールドにそれぞれ成形した。この実施例で得た眼鏡用レンズおよびヘルメット用シールドの可視光線透過率を図1に示す。
【0043】
〔実施例2〕
実施例1で得たレンズおよびシールドの表面に、それぞれクロムを真空蒸着してシルバーミラーのサングラス用レンズおよびヘルメット用シールドとした。
【0044】
〔実施例3〕
実施例1で得たレンズおよびシールドの表面に、それぞれグレー系偏光膜を貼り付けて偏光グレーのサングラス用レンズおよびヘルメット用シールドとした。
【0045】
〔実施例4〕
実施例1で得たレンズおよびシールドの表面に、それぞれグレー系偏光膜を貼り付けて、さらにその表面にクロムを真空蒸着し、サングラス用レンズおよびヘルメット用シールドとした。
【0046】
〔実施例5〕
ポリカーボネート樹脂1kg当たり、ブルー系色素としてテトラアザポルフィリン化合物を0. 0450g、ピンク系色素として1, 4−ヒドロキシアントラキノンを0. 0882gを練り込んで、厚さ1.0mmのシ−トを得た。このシートを、別に成形した外径80mm、中心レンズ厚10mmの透明の眼鏡用レンズ、および別に成形した厚さ2mmの透明のヘルメット用シールドの表面にそれぞれ貼り付けた。
【0047】
〔実施例6〕
実施例5で得たレンズおよびシールドの表面に、それぞれクロムを真空蒸着してシルバーミラーのサングラス用レンズおよびヘルメット用シールドとした。
【0048】
〔実施例7〕
実施例5で得たレンズおよびシールドの表面に、それぞれグレー系偏光膜を貼り付けて偏光グレーのサングラス用レンズおよびヘルメット用シールドとした。
【0049】
〔実施例8〕
実施例5で得たレンズおよびシールドの表面に、それぞれグレー系偏光膜を貼り付けて、さらにその表面にクロムを真空蒸着し、サングラス用レンズおよびヘルメット用シールドとした。
【0050】
〔実施例9〕
ポリカーボネート樹脂1kg当たり、ブルー系色素としてテトラアザポルフィリン化合物を0. 0450g、ピンク系色素として1, 4−ヒドロキシアントラキノンを0. 0882gを練り込んで、厚さ1.2mmのシ−トを得た。このシートの表面に、グレー系偏光膜を貼り付けて偏光グレーのヘルメット用シールドとした。
【0051】
〔実施例10〕
実施例9で得たシールドのグレー系偏光膜の表面に、クロムを真空蒸着して、偏光グレーでシルバーミラーのヘルメット用シールドとした。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂に、570〜610nmに光線透過率の極小値を持つブルー系色素と、380〜500nmのブルーライト光の内、400〜440nmに光線透過率の極大値を、480〜520nmの光線透過率の極小値を持つピンク系色素を含有させて、570〜610nmに光線透過率の極小値を有し、透過色調を無彩色系レンズにしたことを特徴とする合成樹脂レンズ。
【請求項2】
熱可塑性樹脂に、570〜610nmに光線透過率の極小値を持つブルー系色素と、380〜500nmのブルーライト光の内、400〜440nmに光線透過率の極大値を、480〜520nmの光線透過率の極小値を持つピンク系色素を含有させて、570〜610nmに光線透過率の極小値を有したシートを、透明の熱可塑性樹脂レンズに貼り付けたことを特徴とする合成樹脂レンズ。
【請求項3】
前記ブルー系色素の含有率が0. 004〜0.00 5wt%、前記ピンク系色素の含有率が0. 008〜0. 009wt%であることを特徴とする請求項1または2記載の合成樹脂レンズ。
【請求項4】
前記ブルー系色素と前記ピンク系色素の含有比が1:2であることを特徴とする請求項3記載の合成樹脂レンズ。
【請求項5】
前記レンズ表面に可視光線を反射する蒸着膜を備えたことを特徴とする請求項1記載の合成樹脂レンズ。
【請求項6】
前記レンズ表面に偏光度90〜100%のグレー系偏光膜を備えたことを特徴とする請求項1記載の合成樹脂レンズ。
【請求項7】
前記レンズ表面に可視光線を反射する蒸着膜および偏光度90〜100%のグレー系偏光膜を備えたことを特徴とする請求項1記載の合成樹脂レンズ。
【請求項8】
前記シート表面に可視光線を反射する蒸着膜を備えたことを特徴とする請求項2記載の合成樹脂レンズ。
【請求項9】
前記シート表面に偏光度90〜100%のグレー系偏光膜を備えたことを特徴とする請求項2記載の合成樹脂レンズ。
【請求項10】
前記シート表面に可視光線を反射する蒸着膜および偏光度90〜100%のグレー系偏光膜を備えたことを特徴とする請求項2記載の合成樹脂レンズ。


【図1】
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