説明

合成樹脂中空体

【課題】加飾性が良好であるとともに破損し難く、また廃棄の際のリサイクル性が良く、製品コストと作業コストも抑えることのできる合成樹脂中空体を提供すること。
【解決手段】少なくとも口部14を有し内部が中空である樹脂製の中空成形体aと、前記中空成形体aの内部に流体物として液体を部分的に充填し、残りの部分には空気が入った状態、または前記中空成形体aの内部に流体物として液体を全体的に充填した状態で、前記口部に閉栓部材18を装着して、その内部に液体を保持し、これを金型内に装着して溶融樹脂を射出しオーバーモールドすることで、前記中空成形体aの外側に一体化形成された樹脂外装体16と、前記中空成形体aの口部に装着される閉栓部材と、を備えた合成樹脂中空体Aであって、前記樹脂外装体が、全光線透過率(JIS K7105に準拠し、1mm厚のシートで測定)80%以上の高透明性合成樹脂から成る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧水、薬品、飲料など流動性を有する液状物を収容するための合成樹脂中空体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、化粧水、薬品、飲料などの液状物を収容する収容器として、耐腐食性、気密性に優れた蓋付きの収容器が広く使用されている。これらの収容器は、ガラスからなるのが一般的であり、また同様な効果を得るために、金属製の収容器が使用される場合もある。
【0003】
ところでガラス製の収容器は、重厚感、高級感があるため特に化粧水の容器として好適に使用されてはいるものの、搬送中の衝撃や使用中の落下などによって、容易に破損してしまう場合があった。
【0004】
一方、金属製の収容器は、特に耐衝撃性に優れるものの、重量、及び原材料費が増し、また加工に手間がかかってしまうものであった。
また、ガラス製および金属製の収容器は、簡単な形状から成ることが多いため加飾性は乏しいものであった。
【0005】
そこで、特許文献1では、図10に示したように、ガラス製および金属製の収容器100の外側に、樹脂をオーバーモールディングして、収容器100の外側に樹脂外装体102を形成し、意匠性を加えるようにした複合容器104が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表2004−527424号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、このような従来の複合容器104は、コアの収容器100の材質が、ガラス製および金属製であるが故に加工性がある程度限定され、デザインの自由度は乏しく満足できるものではない。
【0008】
また、このような複合容器104のうち、ガラス製の収容器100については、外側を樹脂外装体102で覆ってはいるものの、やはりコアの収容器100がガラス製であるため、落下などによる破損を防止するには至らないものである。
【0009】
さらに、複合容器104は、ガラスと樹脂という異なる材質の組み合わせからなるため、廃棄の際に分離の必要があるなどリサイクル性に不利がある。
本発明は、このような現状に鑑みなされたものであって、コアとなる中空成形体(a)(インナーボトル)を樹脂製とすることによって加飾性が良好であるとともに、樹脂外装体を高透明性合成樹脂とすることで、加飾性が良好な合成樹脂中空体(A)を提供することを目的とする。
【0010】
また、コアとなる中空成形体(a)を樹脂製とし、さらに樹脂外装体を高透明性合成樹脂とすることで、万が一落下しても、破損し難い合成樹脂中空体(A)を提供することを他の目的とする。
【0011】
さらに、コアとなる中空成形体(a)を樹脂製とし、さらに樹脂外装体を高透明性合成樹脂とすることで、廃棄の際においても、分離の必要がなく、それによってリサイクル性の良好な合成樹脂中空体(A)を提供することを他の目的とする。
【0012】
また、コアとなる中空成形体(a)を樹脂製とし、さらに樹脂外装体を高透明性合成樹脂とすることで、製品コストを抑えることができるとともに、作業コストも抑えることのできる合成樹脂中空体(A)を提供することを目的とする。
さらに確実に良品を維持するために、中空成形体(a)が接着剤層およびEVOH、ポリエステル、またはHDPE等からなるバリアー層を含む一つまたは複数の個別のポリマー層を有する合成樹脂中空体(A)を提供することを目的とする。
また中空成形体(a)が、リサイクルにおける互換性に貢献すると共に、オーバーモールドされる外装層に対する接着性を向上させる接着剤層を有する合成樹脂中空体(A)を提供することを他の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、前述したような従来技術における問題点を解決するために発明されたものであって、
本発明の合成樹脂中空体(A)は、
少なくとも口部を有し内部が中空である樹脂製の中空成形体(a)と、
前記中空成形体(a)の内部に流体物として液体を部分的に充填し残りの部分には空気が入った状態、または前記中空成形体(a)の内部に流体物として液体を全体的に充填した状態で、前記口部に閉栓部材を装着して、その内部に液体を保持し、これを金型内に装着して溶融樹脂を射出しオーバーモールドすることで、前記中空成形体(a)の外側に一体化形成された樹脂外装体と、
前記中空成形体(a)の口部に装着される閉栓部材と、
を備えた合成樹脂中空体(A)であって、
前記樹脂外装体が、全光線透過率(JIS K7105に準拠し、1mm厚のシートで測定)80%以上の高透明性合成樹脂から成ることを特徴とする。
【0014】
また、本発明の合成樹脂中空体(A)は、
少なくとも口部を有し内部が中空である樹脂製の中空成形体(a)と、
前記中空成形体(a)を金型内に装着し、前記中空成形体(a)の内部に流体物として気体をブローした状態で前記金型内に溶融樹脂を射出しオーバーモールドすることで、前記中空成形体(a)の外側に一体化形成された樹脂外装体と、
前記中空成形体(a)の口部に装着される閉栓部材と、
を備えた合成樹脂中空体(A)であって、
前記樹脂外装体が、全光線透過率(JIS K7105に準拠し、1mm厚のシートで測定)80%以上の高透明性合成樹脂から成ることを特徴とする。
【0015】
さらに、本発明の合成樹脂中空体(A)は、
少なくとも口部を有し内部が中空である樹脂製の中空成形体(a)と、
前記中空成形体(a)を金型内に装着し、前記中空成形体(a)の内部に流体物として液体および気体を併用して充填した状態で前記金型内に溶融樹脂を射出しオーバーモールドすることで、前記中空成形体(a)の外側に一体化形成された樹脂外装体と、
前記中空成形体(a)の口部に装着される閉栓部材と、
を備えた合成樹脂中空体(A)であって、
前記樹脂外装体が、全光線透過率(JIS K7105に準拠し、1mm厚のシートで測定)80%以上の高透明性合成樹脂から成ることを特徴とする。
【0016】
このように樹脂外装体に高透明性合成樹脂を用いれば、樹脂外装体を介しても中空成形体(a)がはっきりと目視できるとともに、極めて透明性が高いため高級感を醸し出すことができる。さらに、審美性、美観性を極めて向上させることができる。
【0017】
また、本発明の合成樹脂中空体(A)は、
前記中空成形体(a)が、全光線透過率80%以上の高透明性合成樹脂から成ることが好ましい。
【0018】
上記したように中空成形体(a)についても高透明性合成樹脂を用いることにより、樹脂外装体と中空成形体(a)との相乗効果でさらに高級感を醸し出すことができる。また、審美性、美観性についてもさらに向上させることができる。
【0019】
また、本発明の合成樹脂中空体(A)において、
前記閉栓部材の材料は、通常の合成樹脂であれば使用できるが、特に全光線透過率80%以上の高透明性合成樹脂から成ることが好ましい。
【0020】
このように閉栓部材についても高透明性合成樹脂を用いれば、閉栓部材、樹脂外装体、中空成形体(a)の相乗効果でさらに高級感を醸し出すことができる。また、審美性、美観性についてもさらに向上させることができる。
【0021】
また、本発明の合成樹脂中空体(A)は、
前記高透明性合成樹脂が、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体のアイオノマーであることが好ましい。
【0022】
このような高透明性合成樹脂を用いれば、安価に合成樹脂中空体(A)を成形することができる。また、厚肉成形も良好に行うことができ、さらにガラスのような重厚感が得られ、これにより高級感を醸し出すことができる。
【0023】
また、本発明の合成樹脂中空体(A)は、
前記高透明性合成樹脂が、有色または無色のいずれかであることが好ましい。
このように構成すれば、合成樹脂中空体(A)の色のバリエーションが多種となり、多様なデザインコンセプトから選ばれた一つにあわせて、合成樹脂中空体(A)を製造することができる。
また、本発明の合成樹脂中空体(A)は、
一つまたは複数の異なる独立ポリマー層を備えており、射出成形、射出ブロー成形、射出延伸ブロー成形、または押出ブロー成形などの方法によって製造されることが好ましい。
【0024】
また、本発明の合成樹脂中空体(A)は、
前記高透明性合成樹脂に、光反射粉が分散されていることが好ましい。
このように構成すれば、光反射粉に光が反射して美しく輝き、それによって審美性に優れ、高級感が醸し出された合成樹脂中空体(A)とすることができる。
【0025】
また、本発明の合成樹脂中空体(A)は、
前記中空成形体(a)の外表面に、前記樹脂外装体が融着していることが好ましい。
このように中空成形体(a)の外表面と前記樹脂外装体とが融着していれば、樹脂外装体の内側で中空成形体(a)ががたついたり、回転してしまうことを防止することができる。
さらに、両部材の境界線が見え難くなるため、審美性の優れた合成樹脂中空体(A)とすることができる。
【0026】
また、本発明の合成樹脂中空体(A)は、
前記中空成形体(a)が、薄肉成形体であることが好ましい。
【0027】
このように中空成形体(a)が薄肉成形体であれば、樹脂外装体と一体的とする際に、両部材の境界線が見え難くなるため、審美性の優れた合成樹脂中空体(A)とすることができる。
また、例えばブロー成形によって薄肉成形体を成形すれば、生産性を向上させることができ、使用する樹脂量を抑えることができる。
【0028】
また、本発明の合成樹脂中空体(A)は、
前記樹脂外装体の厚みが、1mm以上であることが好ましい。
このように樹脂外装体の厚みが1mm以上であれば、ガラスのような重厚感を得ることができるとともに、樹脂外装体を様々な形状とすることができ、審美性に優れた合成樹脂中空体(A)とすることができる。
【0029】
また、本発明の合成樹脂中空体(A)は、
前記中空成形体(a)が、接着剤層およびバリアー層を含む一つまたは複数の個別のポリマー層を備えることが好ましい。
また、本発明の合成樹脂中空体(A)は、
前記中空成形体(a)が、前記樹脂外装体に対する接着性の向上のために、外側に接着剤層を有することが好ましい。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、コアとなる中空成形体(a)を樹脂製とすること及び樹脂外装体を高透明性合成樹脂とすることで、加飾性が良好な合成樹脂中空体(A)を提供することができる。
【0031】
また、コアとなる中空成形体(a)を樹脂製とし、さらに樹脂外装体を高透明性合成樹脂とすることで、仮に落下しても、破損し難い合成樹脂中空体(A)を提供することができる。
さらに、コアとなる中空成形体(a)を樹脂製とし、さらに樹脂外装体を高透明性合成樹脂とすることで、廃棄の際においても、分離の必要がなく、リサイクル性の良好な合成樹脂中空体(A)を提供することができる。
【0032】
さらに、コアとなる中空成形体(a)を樹脂製とし、さらに樹脂外装体を高透明性合成樹脂とすることで、製品コストを抑えることができるとともに、作業コストも抑えることのできる合成樹脂中空体(A)を提供することができる。
【0033】
コアとなる中空成形体(a)がガラスの場合、薄肉のフラットなボトムを有する薄い厚みのガラス中空成形体を使用すると、樹脂外装体でオーバーモールドする際に割れが発生し易いが、本発明では中空成形体(a)を樹脂製としているので、容易にオーバーモールドすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】図1は、本発明の実施例による合成樹脂中空体(A)を示した斜視図である。
【図2】図2は、本発明の実施例による合成樹脂中空体(A)の断面図である。
【図3】図3は、本発明の他の実施例による合成樹脂中空体(A)を示した斜視図である。
【図4】図4は、本発明の他の実施例による合成樹脂中空体(A)を示した斜視図である。
【図5】図5は、本発明の実施例で用いる中空成形体(a)であって、図5(a)は、開栓状態の中空成形体(a)、図5(b)は、図5(a)の中空成形体(a)に流体物として液体を収納し、閉栓部材で閉栓した状態を示した図である。
【図6】図6は、本発明の合成樹脂中空体(A)の実施例による製造方法を説明する図であって、図6(a)は中空成形体(a)を金型内にセットした状態を示した図、図6(b)は金型を閉じた状態を示した図、図6(c)は中空成形体(a)の外表面を一体的に覆うように樹脂外装体が充填された状態を示した図である。
【図7】図7は、本発明の合成樹脂中空体(A)の実施例による製造方法を説明する図であって、図7(a)は金型を開いた状態を示した図、図7(b)は金型内から合成樹脂中空体(A)を取り外した状態を示した図である。
【図8】図8は、本発明の合成樹脂中空体(A)の他の実施例による製造方法を説明する図であって、図8(a)は中空成形体(a)を金型内にセットした状態を示した図、図8(b)は金型を閉じた状態を示した図、図8(c)は中空成形体(a)の外表面を一体的に覆うように樹脂外装体が充填された状態を示した図である。
【図9】図9は、本発明の合成樹脂中空体(A)の実施例による製造方法を説明する図であって、図9(a)は金型を開いた状態を示した図、図9(b)は金型内から合成樹脂中空体(A)を取り外した状態を示した図である。
【図10】図10は、従来の複合容器の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明の実施の形態(実施例)を図面に基づいてより詳細に説明する。
図1は本発明の合成樹脂中空体(A)の実施例を示した図、図2は図1の合成樹脂中空体(A)の断面図、図3および図4は合成樹脂中空体(A)の他の実施例を示した図、図5から図7は、合成樹脂中空体(A)の製造方法の実施例を説明する図である。
【0036】
<合成樹脂中空体(A)>
本発明の合成樹脂中空体(A)は、例えば化粧水、薬品、飲料など流動性を有する液状物を収容するためのものである。
【0037】
図1に示したように、合成樹脂中空体(A)は、液状物22を出し入れするための口部14を有する中空成形体(インナーボトル)aと、この中空成形体(a)の外表面を一体的に覆うように形成された樹脂外装体16とから構成されている。すなわち、本発明においては、樹脂外装体が中空成形体(a)の外表面の周囲にオーバーモールドされることになる。
【0038】
そして、液状物22が口部14から外方に飛散することを防ぐために、中空成形体(a)の口部14に閉栓部材18が装着され得る。なお、本実施例においては、口部14と閉栓部材18が螺合するように構成されている。しかし本発明は、これに限定されるものではなく、例えば口部14に閉栓部材18を嵌入することができる。要は中空成形体(a)の口部14から液状物22が飛散しないような仕組みで有れば如何なる構成でも採用され得るものである。
【0039】
さらに合成樹脂中空体(A)内に収容される液状物22としては、例えば水、水溶液、化粧水、薬品、または有機溶剤などの油性成分と水性成分との混合液、あるいは有機溶剤を用いることができる。また、本発明において液状物とはペースト状のものも含む。
【0040】
このような合成樹脂中空体(A)は、図2に示したように、中空成形体(a)の口部14下端から中空成形体(a)の全体を覆うように樹脂外装体16が形成されている。
本実施例では、中空成形体(a)の形状に対して樹脂外装体16の形状が球形であるが、他にも図3に示したように装飾を施した形状としたりすることもできる。結局如何なる形状も樹脂外装体16に採用され得る。
【0041】
また、樹脂外装体16を形成する前に、中空成形体(a)の外表面に文字や図形などをプリントしておくこともできる。この場合、中空成形体(a)のプリント部分は、樹脂外装体16で常に保護された状態であるため、できるだけ長くプリント部分をきれいな状態として維持することができる。
【0042】
さらに図4に示したように、樹脂外装体16の外表面に装飾的な凹凸部20を設けることもでき、このようにすることで合成樹脂中空体(A)は、よりデザインバリエーション、審美性、高級感が増す。
【0043】
ところでこのような合成樹脂中空体(A)は、樹脂外装体16の材料として高透明性合成樹脂を用いることが好ましく、好ましくは全光線透過率(JIS K7105に準拠し、1mm厚のシートで測定)が80%から100%、より好ましくは全光線透過率が85%から100%の合成樹脂を用いることが望ましい。
【0044】
上記範囲を満たす高透明性合成樹脂の材質としては、例えばアイオノマー樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、スチレン系樹脂(スチレン・アクリロニトリル共重合体樹脂、スチレン・メチルメタクリレート共重合体樹脂など)を用いることができ、好ましくはアイオノマー樹脂、ポリエステル樹脂、より好ましくは、アイオノマー樹脂を用いることができる。
【0045】
アイオノマー樹脂としては、例えば不飽和カルボン酸含量が1〜40重量%のエチレン・不飽和カルボン酸共重合体のカルボキシル基の少なくとも一部、通常0モル%を超え、かつ100モル%以下、好ましくは90モル%以下を金属イオンで中和したものを使用することができる。
【0046】
アイオノマー樹脂のベースポリマーとなるエチレン・不飽和カルボン酸共重合体は、エチレンと不飽和カルボン酸、さらに任意に他の極性モノマーを共重合して得られるものである。ここに不飽和カルボン酸としては、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチルなどを例示することができるが、特にメタクリル酸が好ましい。
【0047】
また共重合成分となり得る極性モノマーとしては、任意に酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルのようなビニルエステル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n−ヘキシル、アクリル酸イソオクチル、メタクリル酸メチル、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチルのような不飽和カルボン酸エステル、一酸化炭素などであり、特に不飽和カルボン酸エステルは好適な共重合成分である。
【0048】
また金属イオンとしては、1価,2価あるいは3価の原子価を有する金属イオン、特に元素周期律表におけるIA、IIA、IIIA、IVAおよびVIII族の1〜3価の原子価を有する金属イオンであり、具体的には、Na+、K+、Li+、Cs+、Ag+、Hg+、Cu+、Be++、Mg++、Ca++、Sr++、Ba++、Cu++、Cd++、Hg++、Sn++、Pb++、Fe++、Co++、Ni++、Zn++、Al+++、Sc+++、Fe+++、Y+++などが挙げられる。
【0049】
これらの材質は、透明性、耐衝撃性、耐擦傷性に優れており、また厚肉成形が可能であるとともに、ガラスのような重厚感を得ることができるため、樹脂外装体16の材料として好適である。また本発明では、この樹脂外装体16の厚みが1mm以上であることが好ましい。
【0050】
なお、中空成形体(a)や閉栓部材18については、如何なる樹脂材料を用いても良いものであり、例えばポリオレフィン系樹脂(ポリエチレン、ポリプロピレンなど)、ポリエステル(PET(ポリエチレンテレフタレート)、PETG、PCTG、PCT(ポリシクロヘキサン・ジメチル・テレフタレート)、PCTA、PEN(ポリエチレン・ナフタレート)など)、アクリル樹脂、スチレン系樹脂(スチレン・アクリロニトリル共重合体樹脂、スチレン・メチルメタクリレート共重合体樹脂など)、シクロオレフィン・ポリマー、ポリカーボネート、ポリアミド、アイオノマー樹脂、およびPAN(ポリアクリロ窒化物)を用いることができるが、上記の樹脂外装体16と同じ材質を用いることで樹脂外装体16との相乗効果を得て、さらに高級感や美観性、審美性を高めることができる。
【0051】
しかしながら、中空成形体(a)については、後述するように金型内に中空成形体(a)をセットした状態で、外表面上に溶融樹脂を流入させて樹脂外装体16を形成するため、高透明性合成樹脂を用いる場合には溶融温度が比較的高いポリエステルやポリアミドなどを使用することが好ましい。
【0052】
また中空成形体(a)に収容する液状物22が薬品の場合には、高透明性合成樹脂の中でも比較的耐薬品性に優れたポリエチレンやポリプロピレンなどを使用することが好ましい。
また、バリアー特性を向上させるために、いくつかの層からなり、それらのうちの一つがEVOHなどのバリアー層を有する中空成形体(a)を使用することが可能であり好ましい。しかし、その他のバリアー層もまた可能である。
また、外装樹脂に対すると同様に、その他の層に対するバリアー層の接着性を向上するための接着剤層を有することも可能である。
さらに閉栓部材18についても、部分的に薬品と触れ合う場合もあるため、上記の中空成形体(a)と同様、高透明性合成樹脂の中でも比較的耐薬品性に優れたポリエチレンやアイオノマー樹脂などを使用することが好ましい。
【0053】
このような高透明性合成樹脂は、有色であっても無色であっても良く、さらに中空成形体(a)、樹脂外装体16、閉栓部材18でそれぞれ色を変えることもできる。
もちろん、中空成形体(a)が2つの成形体を振動溶着で溶着させる方法でなる中空成形体(a)の場合には、2つをそれぞれに異なる色の成形体とし、これを溶着して中空成形体(a)とすることも可能である。
【0054】
有色の場合において、例えばアイオノマーにHeliogen Blue K6911D(BASF社製)を含有させた青色の高透明性合成樹脂を用いて成形を行えば、青色とすることができる。
【0055】
このような高透明性合成樹脂を使用することによって、中空成形体(a)の表面に文字や図形が施されていたとしても、樹脂外装体16の外側から確実に中空成形体(a)に施された文字や図形を目視することができ、より合成樹脂中空体(A)の高級感、審美性、美観性を向上させることができる。
【0056】
また、高透明性合成樹脂に光反射粉(図示せず)を分散させれば、光反射粉に光が反射して輝き、さらに高級感を醸し出すことができる。
このような光反射粉としては、光反射粉のコアとなるマイカの表面に金属または金属酸化物が被覆された光反射粉から構成することが好ましい。
【0057】
<合成樹脂中空体(A)の製造方法>
次に本発明の合成樹脂中空体(A)の製造方法について説明する。
図5(a)に示したように、中空成形体(a)を最初に準備する。中空成形体(a)は、ブロー成形や、予め2つに分割した成形体を成形し振動溶着で2つを溶着させる方法で、予め製造されたものであり、特に製造方法が限定されるものではない。ブロー成形を行った場合には、中空成形体(a)を薄肉成形体とすることができ、肉厚は0.1mmから10mm程度の範囲とすることが好ましく、さらに好ましくは0.2mmから8mmの範囲である。
【0058】
次いで、図5(b)に示したように、中空成形体(a)の口部14より内部へ流体物として液体30を流入させ、口部14に閉栓部材18を装着する。なお液体30は、後述する金型24,26内に中空成形体(a)をセットして、溶融樹脂を流入させた際に、樹脂圧で中空成形体(a)が変形することが無いよう、中空成形体(a)内に流入可能な全容量の50%以上を充填することが好ましく、さらに好ましくは70%以上である。
【0059】
このような液体30は、金型24,26内である程度加熱されることから、加熱されても正常な物性を持つ液体30であることが好ましい。
なお、加熱により、物性の異常が生ずる恐れのある場合には、例えば水など加熱可能な液体30を中空成形体(a)内に入れておき、樹脂充填後にこれを除去し、この後に所望の液状物22を収容するようにすれば良い。
【0060】
勿論、この状態で、既に所望の液状物22を中空成形体(a)内に収容することも可能であるが、上述したように金型24,26内である程度加熱されることから、液状物22が物性異常を生ずることのない場合にのみ、初めから所望の液状物22を中空成形体(a)内に収容するようにすれば良い。
【0061】
なお成形時に使用する液体30としては、合成樹脂中空体(A)の製造後に中空成形体(a)内を空にした後、洗浄せずに乾燥だけで済むように、水やアルコールを使用することが好ましい。
【0062】
次いで、図6(a)に示したように、金型24,26内に中空成形体(a)をセットして、金型24,26内の空間に中空成形体(a)の容器部分が浮いた状態とする。
なお本実施例においては、金型24,26内に中空成形体(a)がセットされる前に、中空成形体(a)の口部14に閉栓部材18を装着しているが、他にも中空成形体(a)の口部14から液体30が流出しないよう金型24,26に堰(図示せず)を設けることができる。さらに予め中空成形体(a)の口部14に螺子形状(図示せず)を形成して金型24,26に螺合させるようにすることができる。そのようにすることによって、中空成形体(a)に閉栓部材18を装着しなくても、金型24,26内にセットすることができる。
【0063】
さらに、この状態で図6(b)に示したように金型24,26を閉じ、図6(c)に示したように樹脂流入口28より高透明性合成樹脂を金型24,26内に充填する。
このようなプロセスにより、金型24,26内の中空成形体(a)の口部14下端から中空成形体(a)の外周に、溶融された高透明性合成樹脂がオーバーモールドされることとなる。
【0064】
さらに、図7(a)に示したように高透明性合成樹脂が固化した後に金型24,26を開き、図7(b)に示したように金型24,26内から合成樹脂中空体(A)を取り出して、ランナーおよびスプルーを取り外し、中空成形体(a)内の液体30を取り除く。その結果、図1に示したように中空成形体(a)に一体的に樹脂外装体16が形成された合成樹脂中空体(A)を得ることができる。また、中空成形体(a)に閉栓部材18が装着されていない状態の場合には、金型24,26から取り出した後に中空成形体(a)内の液体30を取り除き、中空成形体(a)の口部14に閉栓部材18を装着する。このプロセスで上記と同様に中空成形体(a)に一体的に樹脂外装体16が形成された合成樹脂中空体(A)を得ることができる。なお、この場合、中空成形体(a)の外表面と樹脂外装体16とは融着された状態となっている。それによって、樹脂外装体16の内側で中空成形体(a)ががたついたり、回転してしまうことを防ぐ。さらに、両部材の境界線が見え難くなる。それによって、改善された審美性、美観性を得ることができる。
【0065】
なお本発明において、樹脂外装体16に耐傷付性や意匠性を付与するために、樹脂外装体16に塗装、印刷、ハードコートをすることができる。
このような方法によれば、樹脂外装体16の充填後に、中空成形体(a)内の液体30を取り除き、所望の液状物22を中空成形体(a)内に流入させることにより、液状物22が収容された合成樹脂中空体(A)を製造することができる。このため、従来のように冷凍された液体30を解凍して、中身を取り出し、再度液状物22を充填するといった煩雑な工程を経る必要がなく、製造コストも削減され得る。
【0066】
さらに、中空成形体(a)と樹脂外装体16の両方が樹脂製であるため、廃棄の際には互いに分離する必要もなく、満足すべきリサイクル性を持つことができる。
また合成樹脂中空体(A)の製造後に、成形時に中空成形体(a)内に収容されていた液体30を除去して、新たに所望の液状物22を中空成形体(a)内に収容する場合でも、成形時に中空成形体(a)内に収容する液体30に水を使用することが可能であることから、水の除去後に中空成形体(a)内を乾燥するのみで良いため、製造工程が複雑化することもなく、合成樹脂中空体(A)の製造コストを削減することができる。
【0067】
さらに、コアとなる中空成形体(a)を樹脂製とし、さらに樹脂外装体16を高透明性合成樹脂としているので、合成樹脂中空体(A)の高級感、審美性、美観性をこの上なく改善することができる。
【0068】
図8は本発明の合成樹脂中空体(A)の製造方法の他の実施例を示した、図1から図7と同様な説明図である。
図8に示した合成樹脂中空体(A)は、図1から図7に示した実施例の合成樹脂中空体(A)と基本的には同じ構成であるので、同じ構成部材には同じ参照番号を付してその詳細な説明を省略する。
【0069】
図8に示した合成樹脂中空体(A)の製造方法が上記態様と異なる点は、流体物として気体32が使用されていることである。
この場合、図8(a)に示したように、空の状態の中空成形体(a)を金型24,26内にセットし、この状態で、中空成形体(a)の口部14から中に気体32をブローする。この時、中空成形体(a)内にブローする気体32の圧力は、好ましくは、0.04MPa〜1.0MPaの気体32である。なお、使用される気体32としては、特に限定されるものではなく、例えば空気、窒素、酸素、不活性ガス、炭酸ガスを用いることができ、中でも空気がより好ましい。
【0070】
次いで、図8(b)に示したように、中空成形体(a)内に気体32をブローさせたまま、金型24,26を閉じ、図8(c)に示したように、樹脂流入口28より溶融樹脂を金型24,26内に流入する。このようなプロセスで、溶融樹脂が中空成形体(a)を覆った状態となる。
【0071】
この状態で、ある程度の時間保持することで、溶融樹脂が冷却されて固化されることとなるが、この際、中空成形体(a)内にブローされた気体32の圧力を、樹脂充填時よりも下げることで、中空成形体(a)と樹脂外装体16との間に歪を生ずることなく、中空成形体(a)の周りに一体的に樹脂外装体16が被覆された状態とすることができる。なお、このときの気体32の圧力は、好ましくは0.02MPa〜0.5MPaに下げることが望ましい。
【0072】
次いで、図9(a)に示したように、金型24,26を開いて、図9(b)に示したように、ランナーおよびスプルーを取り外し、口部14に閉栓部材18を取り付ける。その結果、中空成形体(a)に一体的に樹脂外装体16が形成された合成樹脂中空体(A)を得ることができる。
【0073】
しかも、この実施例における製造方法では、中空成形体(a)へのオーバーモールドの際に、中空成形体(a)内に気体32をブローしている。その結果、成形後に、このまま、所望の液状物22を中空成形体(a)内へ収容することができ、上記の製造方法よりもさらに製造コストを削減することができる。
【0074】
なお、上記した合成樹脂中空体(A)の製造方法では、中空成形体(a)内に流入させる流体物として、液体30および気体32を単独で用いる場合を例に説明したが、他にも液体30および気体32を併用することも可能である。
【0075】
この場合には、まず中空成形体(a)の内部に液体30を1〜50%程度、好ましくは5〜20%程度流入させておき、次いで、中空成形体(a)の口部14に閉栓部材18を装着しないまま、この中空成形体(a)の口部14が上方を向くように金型24,26内の所定位置にセットする。
【0076】
そして、中空成形体(a)の口部14より、圧力0.04MPa〜1.0MPaの気体32を中空成形体(a)内へブローした状態で(すなわち、0.04MPa〜1.0MPaの圧力で気体32を中空成形体(a)内へブローした状態で)、金型24,26内へ溶融樹脂を流入させ、さらに硬化させることで、中空成形体(a)の周りに一体的に樹脂外装体16が被覆された合成樹脂中空体(A)を得ることができる。
【0077】
このように、中空成形体(a)内に流入させる流体物として、液体30および気体32を併用した場合には、気体32のブロー圧を溶融樹脂の流入中と、溶融樹脂の固化中とで変更しなくて良いという利点がある。また気体32だけの場合に比べて、中空成形体(a)の成形時の耐熱性、耐圧性が向上する。さらに液体30だけを用いた場合と比べると、中空成形体(a)内へ充填される液体30の量が少量で良くなるため、成形後に中空成形体(a)内から液体30を排出することが容易になる。
【0078】
以上、本発明の好ましい実施の態様を説明してきたが、本発明はこれに限定されることはなく、本発明の目的を逸脱しない範囲での種々の変更が可能なものである。例えば本明細書中では「流体物」として、液体および気体を用いているが、これに限定されるものではなく、例えば粉体であっても良い。
【符号の説明】
【0079】
A・・・合成樹脂中空体
a・・・中空成形体
14・・・口部
16・・・樹脂外装体
18・・・閉栓部材
20・・・凹凸部
22・・・液状物
24・・・金型
26・・・金型
28・・・樹脂流入口
30・・・液体
32・・・気体
100・・・収容器
102・・・樹脂外装体
104・・・複合容器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも口部を有し内部が中空である樹脂製の中空成形体(a)と、
前記中空成形体(a)の内部に流体物として液体を部分的に充填し残りの部分には空気が入った状態、または前記中空成形体(a)の内部に流体物として液体を全体的に充填した状態で、前記口部に閉栓部材を装着して、その内部に液体を保持し、これを金型内に装着して溶融樹脂を射出しオーバーモールドすることで、前記中空成形体(a)の外側に一体化形成された樹脂外装体と、
前記中空成形体(a)の口部に装着される閉栓部材と、
を備えた合成樹脂中空体(A)であって、
前記樹脂外装体が、全光線透過率(JIS K7105に準拠し、1mm厚のシートで測定)80%以上の高透明性合成樹脂から成ることを特徴とする合成樹脂中空体(A)。
【請求項2】
少なくとも口部を有し内部が中空である樹脂製の中空成形体(a)と、
前記中空成形体(a)を金型内に装着し、前記中空成形体(a)の内部に流体物として気体をブローした状態で前記金型内に溶融樹脂を射出しオーバーモールドすることで、前記中空成形体(a)の外側に一体化形成された樹脂外装体と、
前記中空成形体(a)の口部に装着される閉栓部材と、
を備えた合成樹脂中空体(A)であって、
前記樹脂外装体が、全光線透過率(JIS K7105に準拠し、1mm厚のシートで測定)80%以上の高透明性合成樹脂から成ることを特徴とする合成樹脂中空体(A)。
【請求項3】
少なくとも口部を有し内部が中空である樹脂製の中空成形体(a)と、
前記中空成形体(a)を金型内に装着し、前記中空成形体(a)の内部に流体物として液体および気体を併用して充填した状態で前記金型内に溶融樹脂を射出しオーバーモールドすることで、前記中空成形体(a)の外側に一体化形成された樹脂外装体と、
前記中空成形体(a)の口部に装着される閉栓部材と、
を備えた合成樹脂中空体(A)であって、
前記樹脂外装体が、全光線透過率(JIS K7105に準拠し、1mm厚のシートで測定)80%以上の高透明性合成樹脂から成ることを特徴とする合成樹脂中空体(A)。
【請求項4】
前記中空成形体(a)が、全光線透過率80%以上の高透明性合成樹脂から成ることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の合成樹脂中空体(A)。
【請求項5】
前記閉栓部材が、全光線透過率80%以上の高透明性合成樹脂から成ることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の合成樹脂中空体(A)。
【請求項6】
前記高透明性合成樹脂が、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体のアイオノマーであることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の合成樹脂中空体(A)。
【請求項7】
前記高透明性合成樹脂が、有色または無色のいずれかであることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の合成樹脂中空体(A)。
【請求項8】
前記高透明性合成樹脂に、光反射粉が分散されていることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の合成樹脂中空体(A)。
【請求項9】
前記中空成形体(a)の外表面に、前記樹脂外装体が融着していることを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載の合成樹脂中空体(A)。
【請求項10】
前記中空成形体(a)が、薄肉成形体であることを特徴とする請求項1から9のいずれ
かに記載の合成樹脂中空体(A)。
【請求項11】
前記樹脂外装体の厚みが、1mm以上であることを特徴とする請求項1から10のいずれかに記載の合成樹脂中空体(A)。
【請求項12】
前記中空成形体(a)が、接着剤層およびバリアー層を含む一つまたは複数の個別のポリマー層を備えることを特徴とする請求項1から11のいずれかに記載の合成樹脂中空体(A)。
【請求項13】
前記中空成形体(a)が、前記樹脂外装体に対する接着性を向上するために、外側に接着剤層を有することを特徴とする請求項1から12のいずれかに記載の合成樹脂中空体(A)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−229059(P2012−229059A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−148470(P2012−148470)
【出願日】平成24年7月2日(2012.7.2)
【分割の表示】特願2010−256520(P2010−256520)の分割
【原出願日】平成19年7月18日(2007.7.18)
【出願人】(000174862)三井・デュポンポリケミカル株式会社 (174)
【Fターム(参考)】