説明

合成樹脂成形品表面の親水性疎水性制御法

【課題】同一合成樹脂材料による一体構造の合成樹脂成形品においても、合成樹脂成形品表面の親水性や疎水性を自在に制御する方法。
【解決手段】合成樹脂成形品を特定の界面活性剤を含有する超臨界二酸化炭素に接触させる第1工程、及び接触させた後の合成樹脂成形品を一定の環境条件下で一定時間保持する第2工程からなる親水性疎水性制御法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成樹脂成形品表面の親水性疎水性制御法に関する。
【背景技術】
【0002】
合成樹脂は、熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂に大別される。中でも熱可塑性樹脂は、種々の成形方法が適用可能であり、リサイクルも比較的容易であるため、多様な用途に広く用いられている。これら合成樹脂は種類が多く、その性質も多様であるため、それらの性質を利用して多くの成形品が作られ利用されている。しかし、得られる成形品が、すべての要求特性を満たすことは困難であり、不十分な性質を改善するため、各種添加剤の配合、成形加工方法の工夫等が行われてきた。
多くの合成樹脂は疎水性で帯電しやすく、この性質を利用した成形法もある。しかし、親水性に乏しい合成樹脂の製品、例えば、結露による不透明化が問題となる農業用フィルムや食品包装用ラップフィルムでは、表面の親水性が不可欠なため、原料となる合成樹脂に界面活性剤が練り込まれる。
【0003】
しかし、合成樹脂に界面活性剤を練り込む場合、合成樹脂の溶融温度以上に晒されるため熱で変質する場合があり、使用可能な界面活性剤は限られる。また、合成樹脂に添加された界面活性剤は、成形加工性を低下させたり、成形品内部に留まって表面に出てこないため全く効果を示さないか、もしくは少なくとも初期には効果を示さない場合がある。逆に、合成樹脂に添加された界面活性剤が一度に成形品表面に移行してべたつきを生じ、成形品表面の汚染をまねく場合もある。この副次的弊害を解消するため、例えば農業用積層フィルムのように中間層に界面活性剤である防曇剤を多目に添加し、中間層を挟む表層と裏層によって防曇剤を徐々に農業用積層フィルムの表面に移行させて積層フィルム表面に一定の親水性を発現させることが行われている。しかし、中間層に防曇剤を多目に添加することは、防曇剤の潤滑効果による混練機の空回り等のトラブルも起こりやすく均一に分散させることが難しい。しかも、積層による方法は異種材料の積層を伴うため、層剥離のおそれがある。
【0004】
従来の合成樹脂に各種添加剤を練り込む方法とは別に、超臨界流体を用いて合成樹脂に各種添加剤を含浸させる方法が知られており、キャリアー液体に界面活性剤を加えることが記載されている(例えば、特許文献1参照)。また、超臨界流体を用いて合成繊維に界面活性剤を含浸させる方法が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
これらの合成樹脂に界面活性剤を含浸させる方法によって得られた合成樹脂の製品は、一体構造であり層剥離の問題もない。しかし、合成樹脂製品の表面における疎水性乃至親水性の程度の制御方法については正確な記載はない。
従って、超臨界流体を用いて界面活性剤を含浸させた同一合成樹脂材料による一体構造の成形品においても、合成樹脂成形品表面の親水性や疎水性を自在に制御できる方法が強く望まれている。
【特許文献1】特表平8−506612号公報
【特許文献2】特開2001−226874号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、同一合成樹脂材料による一体構造の合成樹脂成形品においても、合成樹脂成形品表面の親水性や疎水性を自在に制御する方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意研究した。その結果、例えば、合成樹脂成形品を特定の界面活性剤を含有する超臨界二酸化炭素に接触させる第1工程、及び接触させた後の合成樹脂成形品を一定範囲の環境条件下で一定範囲の時間保持する第2工程からなる親水性疎水性制御法によって前期課題が解決されることを知り、その知見に基づいて本発明を完成した。
【0007】
本発明は以下によって構成される。
(1)合成樹脂成形品を界面活性剤を含有する超臨界二酸化炭素に接触処理させる第1工程、及び接触させた後の合成樹脂成形品を一定範囲の環境下で一定範囲の時間保持する第2工程からなる親水性疎水性制御法であり、界面活性剤が下記式で表される化合物から選ばれる1種以上であることを特徴とする合成樹脂成形品表面の親水性疎水性制御法。
A:RC(=O)O(CO)
B:RC(=O)O(CO)COR
C:φ−CHCH−φ−O(CO)
D:HCO(CO)COR

HCO(CO)

CO(CO)
E:RC(=O)N(COH)
ここで、R、R、R及びRは、それぞれ独立して炭素数が9〜21のアルキル基またはそれぞれ独立して炭素数が9〜21のアルキレン基を表し、i、j及びkはそれぞれ独立して5〜300の整数を表し、l、m及びnは、それぞれが独立した整数を表し、かつl+m+nが10〜100である。また、φ−はフェニル基を表し、−φ−はフェニレン基を表す。
(2)界面活性剤のHLB値が、7〜20の範囲である前記(1)項記載の合成樹脂成形品表面の親水性疎水性制御法。
(3)合成樹脂がポリオレフィン樹脂である前記(1)または(2)項記載の合成樹脂成形品表面の親水性疎水性制御法。
(4)第1工程において、超臨界二酸化炭素中の界面活性剤の含有率が、接触処理される合成樹脂成形品の重量に対して5〜15重量%の範囲である前記(1)〜(3)項のいずれか1項記載の合成樹脂成形品表面の親水性疎水性制御法。
(5)第1工程において、超臨界二酸化炭素への合成樹脂成形品の接触処理が、温度60〜120℃、圧力10〜40MPa、時間5〜60分で行なわれる前記(1)〜(4)項のいずれか1項記載の合成樹脂成形品表面の親水性疎水性制御法。
(6)第1工程において、接触処理された合成樹脂成形品を蒸留水で2〜5分洗浄した後、50〜70℃で20〜60分間乾燥する前記(1)〜(5)項のいずれか1項記載の合成樹脂成形品表面の親水性疎水性制御法。
(7)接触処理し洗浄し乾燥した合成樹脂成形品を、第2工程において、温度20〜60℃、相対湿度20〜100%で3時間またはそれ以上の時間保持する前記(1)〜(6)項のいずれか1項記載の合成樹脂成形品表面の親水性疎水性制御法。
(8)前記(1)〜(7)項のいずれか1項記載の合成樹脂成形品表面の親水性疎水性制御法を用いて得られる合成樹脂成形品。
【発明の効果】
【0008】
本発明の合成樹脂成形品表面の親水性疎水性制御法を用いれば、例えば、所望の親水性または疎水性を持った表面を有する、同一材料による一体の合成樹脂成形品が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下に、本発明の実施形態を説明する。
本発明の合成樹脂成形品表面の親水性疎水性制御法は、第1工程で合成樹脂成形品を界面活性剤を含有する超臨界二酸化炭素と接触させる。超臨界二酸化炭素は、合成樹脂に対しても高い拡散性を持ち、可塑剤としても働き、分子内に極性をもたない合成樹脂中にも均一に界面活性剤を導入することを可能にする。第2工程では界面活性剤を含有する超臨界二酸化炭素と接触させた後の合成樹脂成形品を一定の雰囲気下で一定時間保持して、成形品表面の界面活性剤濃度や活性を制御し、所望の親水性または疎水性を発現させる。
【0010】
本発明で用いられる合成樹脂としては、特に限定はされないが、ポリオレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂等が例示できる。
中でも、ポリオレフィン樹脂は主に炭素と水素からなる化合物であることから、焼却時の有害ガスの発生が少なく環境負荷が少ない素材である。また、軽量で比較的安価なため、ポリオレフィン樹脂成形品は、産業資材、生活資材等として広く用いられている。現に、農業用フィルムや食品包装用ラップフィルムには多くのポリオレフィン樹脂が用いられている。従って、これら合成樹脂の中で、ポリオレフィン樹脂は、多様な用途に用いられ、本発明の合成樹脂成形品表面の親水性疎水性制御法の適用に最も適した樹脂といえる。
【0011】
ポリオレフィン樹脂としては、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリシクロオレフィン樹脂、ポリメチルペンテン樹脂等が挙げられる。ポリエチレン樹脂としては低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)等が挙げられる。ポリプロピレン樹脂としては、プロピレンの結晶性単独重合体、プロピレンとエチレンもしくは炭素数4以上のα−オレフィンから選ばれる1種以上との二元以上の結晶性共重合体、またはそれらの混合物である。具体的には、沸騰ヘプタン不溶部を70重量%以上、好ましくは80重量%以上含有する結晶性ポリプロピレン、プロピレン重合成分を70重量%以上含有する結晶性エチレン−プロピレン共重合体、結晶性プロピレン−1−ブテン共重合体、結晶性プロピレン−1−ヘキセン共重合体、結晶性エチレン−プロピレン−1−ブテン三元共重合体等の結晶融点を有するプロピレン共重合体が挙げられる。
【0012】
本発明で用いられる界面活性剤は下記式で表される化合物から選ばれる1種以上である。
A:RC(=O)O(CO)
B:RC(=O)O(CO)COR
C:φ−CHCH−φ−O(CO)
D:HCO(CO)COR

HCO(CO)

CO(CO)
E:RC(=O)N(COH)
ここで、R、R、R及びRは、それぞれ独立して炭素数が9〜21のアルキル基またはそれぞれ独立して炭素数が9〜21のアルキレン基を表し、i、j及びkはそれぞれ独立して5〜300の整数を表し、l、m及びnは、それぞれが独立した整数を表し、かつl+m+nが10〜100である。また、φ−はフェニル基を表し、−φ−はフェニレン基を表す。
【0013】
上記式Aで表される化合物としては、例えば、モノオレイン酸ポリエチレングリコール(オキシエチレン単位の数nEO=5〜10)が挙げられる。上記式Bで表される化合物としては、例えば、ポリオキシエチレンジステアリン酸エステル(nEO=5〜200)が挙げられる。上記式Cで表される化合物としては、例えば、ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル(nEO=5〜40)が挙げられる。上記式Dで表される化合物としては、例えば、イソステアリン酸ポリオキシエチレングリセリル(nEO=25)が挙げられる。上記式 Eで表される化合物としては、例えば、ヤシ油脂肪酸(炭素数8〜16)ジエタノールアミドが挙げられる。これらの界面活性剤は、単独使用でも、2種以上の併用でも構わない。
【0014】
本発明で用いられる界面活性剤のHLB値としては、7〜20の範囲であることが好ましい。HLB値は0〜20の範囲の値をとり、値が小さいと親油性を示し、値が大きいと親水性を示す。本発明においてHLBの算出方法はグリフィンの方法が主として用いられる。
本発明で用いられる界面活性剤の分子量は、特に限定はされないが、上記式A、B、C、及びDのようなポリエチレングリコール系界面活性剤の場合は、500〜10000の範囲が好ましく、上記式Eのような非ポリエチレングリコール系界面活性剤の場合は、250〜2000の範囲が好ましい。
【0015】
本発明の親水性疎水性制御法が適用できる合成樹脂成形品の種類は、特に限定されるものではなく、射出成形品、フィルム、シート、繊維等が挙げられる。
【0016】
本発明の合成樹脂成形品表面の親水性疎水性制御法は、第1工程で合成樹脂成形品を界面活性剤を含有する超臨界二酸化炭素と接触させる。超臨界二酸化炭素は、31.7℃以上、圧力7.2MPa以上の状態の流体であって、わずかの圧力変化で大きな密度変化を起こす他、低粘度、高拡散性であるため、色々な界面活性剤を溶解し、合成樹脂成形品の中に均一に浸透させることができる。
【0017】
合成樹脂成形品に対して界面活性剤を均一に含有させるためには、耐圧容器に合成樹脂成形品と界面活性剤を入れた後、超臨界二酸化炭素を耐圧容器に導入して接触処理する。処理条件は用いられる合成樹脂の種類等により適宜選択されるが、処理温度は65〜115℃が好ましく、80〜105℃がより好ましい。処理圧力は10〜40MPaが好ましく、15〜40MPaがより好ましい。処理時間は5〜60分が好ましく、10〜30分がより好ましい。処理条件が上記の範囲内であれば、処理された合成樹脂成形品には十分な量の界面活性剤が導入され、合成樹脂成形品の表面は、第2工程の処理により所望の親水性または疎水性を発現する。
また、第1工程の処理の際に、耐圧容器に投入される界面活性剤の量は、合成樹脂の種類、成形品の用途、界面活性剤の種類等により変わるが、合成樹脂成形品の重量に対して0.01〜20重量%の範囲が好ましく、5〜15重量%の範囲がより好ましい。界面活性剤の量が上記の範囲内であれば、第2工程の処理により所期の親水性または疎水性表面を有する合成樹脂成形品が得られる
【0018】
尚、第1工程の処理の際に、耐圧容器に投入される合成樹脂成形品に含まれている添加剤が、超臨界二酸化炭素により該成形品から抽出されるおそれがある場合は、処理の際に、予め耐圧容器に該添加剤を所定量投入し、抽出による損失を補償することが望ましい。
接触処理された合成樹脂成形品の表面を蒸留水で2〜5分洗浄した後、表面の水分を拭き取り、50〜70℃で20〜30分程度乾燥することが望ましい。
【0019】
本発明の合成樹脂成形品表面の親水性疎水性制御法の第2工程では、合成樹脂成形品表面に所望の親水性または疎水性を発現させるため、第1工程で超臨界二酸化炭素と接触させた合成樹脂成形品を一定の環境条件下で一定時間保持する。環境条件及び保持時間は界面活性剤の種類や第1工程での処理条件で変わる。本発明で使用する界面活性剤でしかも比較的HLB値の高いものを用いる場合は、界面活性剤を導入しない合成樹脂成形品表面に比べれば親水性であることは当然である。しかし、例えば、温度20〜60℃、相対湿度20〜100%で、3時間、好ましくは6時間、より好ましくは12時間保持すれば、一定の範囲で合成樹脂成形品表面を親水性乃至疎水性に変化させることができる。
【実施例】
【0020】
以下、実施例及び比較例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらにより限定されるべきものではない。尚、実施例及び比較例で用いた評価方法は下記の通りである。また、界面活性剤のオキシエチレン単位の数nEO及びHLB値はカタログ値である。
【0021】
1)ポリオレフィンフィルム面の親水性
ポリオレフィンフィルムサンプル上に滴下した純水の接触角を測定してフィルム面の親水性を評価した。測定温度20℃。数値が小さいほど親水性である。
2)増加率(界面活性剤の導入率)
超臨界二酸化炭素処理を行なったポリオレフィンフィルムサンプルを蒸留水で3分洗浄した後60℃で20分乾燥し、処理前後の重量変化から増加率(界面活性剤の導入率:重量%)を算出した。
3)第2工程の環境条件と保持時間
3−1)ポリオレフィンフィルムサンプルを20℃、相対湿度25%の状態に12時間保持後、フィルムサンプル上に滴下した水の接触角を測定してフィルム面の親水機能の発現性を評価した。後述する表1のDryの条件である。
3−2)ポリオレフィンフィルムサンプルを20℃、相対湿度80%の状態に12時間保持後、フィルムサンプル上に滴下した水の接触角を測定してフィルム面の親水機能の発現性を評価した。後述する表1のWet-1の条件である。
3−3)ポリオレフィンフィルムサンプルを40℃の温水中に12時間浸漬保持後、水分を拭き取り、フィルムサンプル上に滴下した水の接触角を測定してフィルム面の親水機能の発現性を評価した。後述する表1のWet-2の条件である。
【0022】
実施例1
沸騰ヘプタン不溶部を96重量%含有するMFR2g/10分(JIS K 7210に準拠し、温度230℃、公称荷重2.16kgの条件にて測定)のプロピレンホモポリマー粉末に、樹脂組成物の重量基準で、フェノール系酸化防止剤BHTを0.2重量%、及びステアリン酸カルシウムを0.1重量%の割合となるように添加し、それをヘンシェルミキサー(商品名)に投入し、混合攪拌した。得られた混合物を、口径50mmφの裏層用単軸押出機に供給し、Tダイ温度240℃で溶融し押出を行い、表面温度30℃の鏡面冷却ロールで急冷して、厚さ150μmのフィルムを得た。このフィルムを裁断して長さ4.5cm×幅1.5cmのポリプロピレンフィルムサンプルを作成した。
【0023】
前記ポリプロピレンフィルムサンプル、及び該ポリプロピレンフィルムサンプルの重量の10重量%にあたるモノオレイン酸ポリエチレングリコール(オキシエチレン単位の数nEO=5、HLB値=8、商品名:ノイゲンES−99、第一工業製薬(株)製)を、容量10mlの高圧カラムに入れ、ISCO社製SFE System 2200を用い、温度95℃、圧力25MPa、時間30分で超臨界二酸化炭素処理を行なった。処理後、ポリプロピレンフィルムサンプルを取り出し、蒸留水で3分洗浄した後、サンプル表面の水分を拭き取り、60℃で20分乾燥し、処理前後での重量変化からポリプロピレンフィルムサンプルの増加率(界面活性剤の導入率:重量%)を算出した。第1工程の処理後のポリプロピレンフィルムサンプルを上述の第2工程の環境条件と保持時間にて処理し、上述の方法に従って親水性を評価した。結果を表1に示した。
【0024】
実施例2
界面活性剤として、モノオレイン酸ポリエチレングリコール(nEO=9、HLB値:11、商品名:ノイゲンES−149、第一工業製薬(株)製)を用いた以外は、実施例1と同様に実施した。結果を表1に示した。
【0025】
実施例3
界面活性剤として、ポリオキシエチレンジステアリン酸エステル(nEO=175、HLB値:17、商品名:ノイゲンDS−601、第一工業製薬(株)製)を用いた以外は、実施例1と同様に実施した。結果を表1に示した。
【0026】
実施例4
界面活性剤として、ポリオキシエチレン化フェニルエーテル(nEO=10、HLB値:11、商品名:ノイゲンEA−87、第一工業製薬(株)製)を用いた以外は、実施例1と同様に実施した。結果を表1に示した。
【0027】
実施例5
界面活性剤として、ポリオキシエチレン化フェニルエーテル(nEO=40、HLB値:19、商品名:ノイゲンEA−207、第一工業製薬(株)製)を用いた以外は、実施例1と同様に実施した。結果を表1に示した。
【0028】
実施例6
界面活性剤として、イソステアリン酸ポリオキシエチレングリセリン(nEO=25、HLB値:15、商品名:ノイゲンGIS−125、第一工業製薬(株)製)を用いた以外は、実施例1と同様に実施した。結果を表1に示した。
【0029】
実施例7
界面活性剤として、ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド(HLB値:13、商品名:ダイアノールCDE、HLB値:13)第一工業製薬(株)製)を用いた以外は、実施例1と同様に実施した。結果を表1に示した。
【0030】
比較例1
実施例1と同様にして押出成形され、超臨界二酸化炭素処理をされなかったポリプロピレンフィルムサンプルを上述の第2工程の環境条件と保持時間にて処理し、上述の方法に従って親水性を評価した。結果を表1に示した。
【0031】
【表1】

【0032】
実施例、比較例から明らかなように本発明の方法を用いれば、合成樹脂成形品表面を単に親水化するだけでなく、親水化の度合いを積極的に制御することができる。すなわち、ある条件では親水化し、ある条件ではベース樹脂素材に近い表面状態にし、可逆的に制御することができる。
【産業上の利用可能性】
【0033】
例えばエアフィルターへの応用がある。疎水性に近い状態で静電気によりホコリや花粉その他の浮遊物を吸着する。十分に汚れたところで、水に浸漬して表面を親水化し、汚れを落とし易くすることもできる。何回でも洗浄可能なフィルターができあがる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成樹脂成形品を界面活性剤を含有する超臨界二酸化炭素に接触処理させる第1工程、及び接触させた後の合成樹脂成形品を一定範囲の環境条件下で一定範囲の時間保持する第2工程からなる親水性疎水性制御法であり、界面活性剤が下記式で表される化合物から選ばれる1種以上であることを特徴とする合成樹脂成形品表面の親水性疎水性制御法。
A:RC(=O)O(CO)
B:RC(=O)O(CO)COR
C:φ−CHCH−φ−O(CO)
D:HCO(CO)COR

HCO(CO)

CO(CO)
E:RC(=O)N(COH)
ここで、R、R、R及びRは、それぞれ独立して炭素数が9〜21のアルキル基またはそれぞれ独立して炭素数が9〜21のアルキレン基を表し、i、j及びkはそれぞれ独立して5〜300の整数を表し、l、m及びnは、それぞれが独立した整数を表し、かつl+m+nが10〜100である。また、φ−はフェニル基を表し、−φ−はフェニレン基を表す。
【請求項2】
界面活性剤のHLB値が、7〜20の範囲である請求項1記載の合成樹脂成形品表面の親水性疎水性制御法。
【請求項3】
合成樹脂がポリオレフィン樹脂である請求項1または2記載の合成樹脂成形品表面の親水性疎水性制御法。
【請求項4】
第1工程において、超臨界二酸化炭素中の界面活性剤の含有率が、接触処理される合成樹脂成形品の重量に対して5〜15重量%の範囲である請求項1〜3のいずれか1項記載の合成樹脂成形品表面の親水性疎水性制御法。
【請求項5】
第1工程において、超臨界二酸化炭素への合成樹脂成形品の接触処理が、温度60〜120℃、圧力10〜40MPa、時間5〜60分で行なわれる請求項1〜4のいずれか1項記載の合成樹脂成形品表面の親水性疎水性制御法。
【請求項6】
第1工程において、接触処理された合成樹脂成形品を蒸留水で2〜5分洗浄した後、50〜70℃で20〜60分間乾燥する請求項1〜5のいずれか1項記載の合成樹脂成形品表面の親水性疎水性制御法。
【請求項7】
接触処理し洗浄し乾燥した合成樹脂成形品を、第2工程において、温度20〜60℃、相対湿度20〜100%で3時間またはそれ以上の時間保持する請求項1〜6のいずれか1項記載の合成樹脂成形品表面の親水性疎水性制御法。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項記載の合成樹脂成形品表面の親水性疎水性制御法を用いて得られる合成樹脂成形品。

【公開番号】特開2008−45077(P2008−45077A)
【公開日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−223882(P2006−223882)
【出願日】平成18年8月21日(2006.8.21)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 2006年6月12日 社団法人 繊維学会発行の「繊維学会予稿集2006 61巻1号 (年次大会)」に発表
【出願人】(504145320)国立大学法人福井大学 (287)
【出願人】(000002071)チッソ株式会社 (658)
【Fターム(参考)】