説明

合成樹脂材料の検査方法および検査装置

【課題】より精度の高い検査結果を得ることが可能な合成樹脂材料の検査方法および検査装置を得る。
【解決手段】実施形態にかかる合成樹脂材料の検査方法は、複数のステップを有する。一つのステップでは、合成樹脂材料の検体が切削あるいは研磨されて面が設けられる。もう一つのステップでは、面の複数の位置が押されて各位置での測定値が得られる。もう一つのステップでは、測定値またはこの測定値に基づいて算出された物理量と位置とが対応付けて出力される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、合成樹脂材料の検査方法および検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、合成樹脂材料の検体に当てた光の反射光あるいは透過光に基づいて当該検体の検査を行う検査方法が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−150720号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
合成樹脂材料の検査方法では、より精度の高い検査結果を得ることが求められている。
【0005】
そこで、本発明の実施形態は、一例として、より精度の高い検査結果を得ることが可能な合成樹脂材料の検査方法および検査装置を得ることを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施形態にかかる合成樹脂材料の検査方法は、複数のステップを有する。一つのステップでは、合成樹脂材料の検体が切削あるいは研磨されて面が設けられる。もう一つのステップでは、面の複数の位置が押されて各位置での測定値が得られる。もう一つのステップでは、測定値またはこの測定値に基づいて算出された物理量と位置とが対応付けて出力される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】図1は、実施形態にかかる合成樹脂材料の検査方法が行われる検査装置の一例が模式的に示された平面図である。
【図2】図2は、実施形態にかかる合成樹脂材料の検査方法で用いられるベースと検体の一例が示された斜視図である。
【図3】図3は、実施形態にかかる合成樹脂材料の検査方法の手順の一例が示されたフローチャートである。
【図4】図4は、図2に示されたベースの断面図である。
【図5】図5は、図2に示されたベースに検体がセットされた状態の一例が示された断面図である。
【図6】図6は、図5に示された検体がセットされたベースに合成樹脂材料が充填されて固化された状態の一例が示された断面図である。
【図7】図7は、図6に示されたベースおよび検体の加工位置の一例が示された断面図である。
【図8】図8は、図7に示された加工位置に面が設けられた検体の一例が示された断面図である。
【図9】図9は、図8に示された面が設けられた検体に用いられる測定装置の一部の一例が示された模式図である。
【図10】図10は、実施形態にかかる合成樹脂材料の検査方法での検体の測定位置の一例が模式的に示された平面図である。
【図11】図11は、実施形態にかかる合成樹脂材料の検査方法での検体の測定位置を移動させる移動装置の一例が示された平面図である。
【図12】図12は、実施形態にかかる合成樹脂材料の検査方法での押部(側面図)と検体(断面図)の一例が示された図であって、押部が検体を押す前の状態が示された図である。
【図13】図13は、実施形態にかかる合成樹脂材料の検査方法での押部(側面図)と検体(断面図)の一例が示された図であって、押部が検体を押した状態が示された図である。
【図14】図14は、実施形態にかかる合成樹脂材料の検査方法での押部(側面図)と検体(断面図)の一例が示された図であって、押部が検体を押した後に検体から離間した状態が示された図である。
【図15】図15は、実施形態にかかる合成樹脂材料の検査方法で測定結果に基づいて算出された物理量が測定位置に対応して示された出力例が示された図である。
【図16】図16は、図15に対応した検体に生じたウエルドラインおよびクラックの一例が模式的に示された斜視図である。
【図17】図17は、図8に示されたベースおよび検体の加工位置(面が設けられる位置)が例示された断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1に示されるように、本実施形態にかかる検査装置1は、ベース格納部2や、樹脂成形部3、面形成部4、測定部5、搬送部6、操作部7、出力部8、制御部9等を備えている。搬送部6は、ベース格納部2、樹脂成形部3、面形成部4、および測定部5間で、ベース11を搬送する。搬送部6は、ベース11の単体の他、検体10(図2等参照)がセットされたベース11、検体10と一体化されたベース11、検体10と一体化されて加工されたベース11、測定実施後のベース11等も搬送することもできる。
【0009】
図2に示されるように、ベース11には、検体10がセットされる。ベース11は、検体10のセット部、支持部、容器の一例である。検体10は、主として合成樹脂材料(熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、プラスチック、エンジニアリングプラスチック)で構成された部品である。また、ベース11は、主として合成樹脂材料(熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、プラスチック、エンジニアリングプラスチック)で構成された部品である。検体10、ベース11ともに、有機あるいは無機のフィラーを含むことができる。図2に例示されるベース11は、一例としては、直方体状(立方体状)の外観を呈した部品である。また、図2に例示される検体10は、矩形かつ板状(扁平な直方体状)の外観を呈した部品である。検体10は、ベース11のスペックに合わせて、電子機器の筐体(図示されず)等から適宜な形状に切断されることができる。
【0010】
ベース11には、一つの面11aに開口した凹部(収容部、開口部)11bが設けられている。凹部11bは、筒状部11cと、筒状部11cから張り出した張出部(第二の凹部、支持部、引掛部)11dと、を有している。筒状部11cは、円筒状(円柱状)に形成されている。張出部11dは、筒状部11cの延びた方向に沿ったキー溝状(溝状)に形成されている。張出部11dは、面11aに対する平面視では、十字状に四箇所設けられている。よって、図2に示されるように、一例としては、検体10は、この検体10の端部が対向する二つの張出部11dに差し込まれた状態に、ベース11にセットされることができる。
【0011】
ベース格納部2には、複数のベース11が格納されている。ベース格納部2には、スペック(大きさ、材質、凹部11bのスペック等)が異なる複数のベース11が格納されることができる。ベース格納部2に格納された複数のベース11の中から、検体10に対応したベース11が選択され、他の処理セクション(セクション、処理部、領域、処理領域、本実施形態では、樹脂成形部3、面形成部4、測定部5等)での処理に用いられることができる。
【0012】
樹脂成形部3は、検体10の少なくとも一部を合成樹脂材料(第二合成樹脂材料、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、プラスチック、エンジニアリングプラスチック)で覆う。本実施形態では、一例として、ベース11に支持された検体10の少なくとも一部が、合成樹脂材料の覆部12(図6等参照)で覆われる。
【0013】
面形成部4は、検体10を切削あるいは研磨して、測定(物性の取得)の対象となる面P1(図8等参照)を設ける。本実施形態では、一例として、ベース11に支持され覆部12で一部が覆われた検体10に、面P1が設けられる。
【0014】
測定部5は、面P1の複数の位置MP(図10参照)を押して、各位置MPでの測定値を得る。本実施形態では、一例として、ベース11に支持され覆部12で一部が覆われ面P1が設けられた検体10の当該面P1に対して、測定が行われる。
【0015】
搬送部6は、図1に示されるように、一例としては、レール6aと、スライダ6bと、アーム6cと、支持部6dと、を有する。図1に示されるように、本実施形態では、一例として、処理セクションおよびベース格納部2が列状に配置されており、レール6aは、この列に沿って延びている。スライダ6bは、レール6aの長手方向に沿って往復することができ、少なくとも処理セクションおよびベース格納部2に対応する(対向する)位置で停止されることができる。アーム6cは、その先端が搬送路側(レール6a側)の位置(第一の位置、短縮位置)にある短縮状態(引込状態)と、その先端が処理セクションまたはベース格納部2側の位置(第二の位置、伸長位置)にある伸長状態との間で伸縮することができる。また、アーム6cは、それら各状態で停止することができる。支持部6dは、ベース11を支持した状態(ホールドした状態)と離した状態(リリースした状態)とを切り替えることができる。搬送部6の各部は、それぞれモータやソレノイド等のアクチュエータ(図示されず)を有しており、これらアクチュエータの動作は、例えば、制御部9によって制御される。すなわち、一例としては、制御部9によって制御された搬送部6によって、処理セクションおよびベース格納部2間でベース11すなわち検体10が搬送される。なお、複数の処理セクションの配置や、搬送部6の構成は、適宜に変更することができる。一例としては、複数の処理セクションが搬送部6を囲うように配置されたり、検査装置1の高さ方向に積層されて配置されたり、搬送部6がロボットアームやベルトコンベヤ等を含んだりすることができる。
【0016】
操作部7では、オペレータの操作入力が行われる。操作部7は、例えば、キーボードや、操作ボタン、スイッチ等である。出力部8は、種々の出力を実行する。出力部8は、例えば、ディスプレイや、発光部、スピーカ、データライタ等である。ディスプレイは、例えば、LCD(liquid crystal display)やOELD(organic electroluminescent display)等であることができる。出力部8としてのディスプレイは、測定部5での測定値またはこの測定値に基づいて制御部9等で算出された物理量と位置MPとを対応付けて出力することができる。制御部9は、検査装置1の各部を制御する。制御部9は、例えば、回路基板とこの回路基板に設けられた電子部品等を含むことができる。制御部9は、例えば、CPU(central processing unit、制御部の一例)や、RAM(random access memory、記憶部の一例)、ROM(read only memory、記憶部の一例)、HDD(hard disk drive、記憶部の一例)、記憶媒体のコネクタ、記憶媒体のドライブ、コントローラ、通信インタフェース等を含むことができる。検査装置1は、プログラム(アプリケーション等)によって動作することができる。この場合、CPUが不揮発性の記憶部にインストールされ読み出されたプログラムにしたがって動作し、検査装置1の各部の制御が実行される。
【0017】
図3は、検体10の検査方法の一例が示されたフローチャートである。まずは、検体10が準備される(ステップS10)。ステップS10では、例えば、ベース11に合うように、検査対象となる部品(一例としては電子機器の筐体)から検体10が切り出される。このステップS10は、検査装置1外で行われる。形状や大きさ等が限定された範囲では、検査装置1内(例えば、面形成部4)で行われることもできる。
【0018】
次に、操作部7で、樹脂成形部3で使用される樹脂(すなわち、覆部12の樹脂)や、検体10の検査(各処理セクションでの処理)で使用されるベース11等を選択する入力操作が、行われる(ステップS11)。操作部7では、他のステップや処理に関するパラメータ等を設定することもできる。
【0019】
次に、ベース11に検体10がセットされる(ステップS12)。このステップS12では、一例としては、図4,5に示されるように、樹脂成形部3内に搬送されたベース11に、オペレータが、検体10を差し込む等することで、検体10がベース11にセットされる。この場合、検査装置1には、樹脂成形部3に対応して、当該樹脂成形部3に外部からアクセスするための扉(図示されず)等が設けられる。
【0020】
次に、樹脂成形部3で、検体10の少なくとも一部が合成樹脂材料(第二合成樹脂材料)で覆われる(ステップS13)。このステップS13では、一例としては、図5,6に示されるように、検体10が収容された凹部11b内に流動性を有した状態の合成樹脂材料が導入されて充填され、固化されることにより、検体10の少なくとも一部が、覆部12で覆われる。覆部12は、検体10を支持する支持部として機能する。このように、検体10が覆部12で覆われることで、一例としては、検体10を単独で取り扱う場合に比べて、取り扱いやすくなるという効果が得られる。また、一例としては、小さな検体10でも比較的大きな検体10と同様に取り扱いやすくなるという利点もある。また、合成樹脂材料(第二合成樹脂材料)は、一例としては、常温で硬化し、収縮が小さく、発熱量が小さいもの等が好適である。これにより、温度変化や形状変化が検体10の特性に影響を及ぼすのを抑制しやすくなる。また、樹脂成形部3は、樹脂成形に必要な装備(例えば、樹脂タンクや、注入装置、配管、ノズル、温度可変装置(温調装置)等、図示されず)を備えている。
【0021】
このステップS13では、後のステップS14で面P1(図8参照)が形成される側を、合成樹脂材料(第二合成樹脂材料)で覆うのが好適である。これにより、一例としては、検体10の表面に凹凸がある場合等にあっても、面形成部4で面P1の加工をより容易に行いやすくなる。また、一例としては、検体10にクラックCR(図15,16参照)が生じていた場合には、クラックCRを合成樹脂材料(第二合成樹脂材料)で埋めることができる。よって、一例としては、検査装置1で検体10を取り扱う際に、クラックCRが生じていたことによる不都合(例えば、クラックCRの伸展や、検体10の割れ等)が生じるのを抑制しやすくなる。なお、例えば、検体10に狭い隙間が存在する場合や、クラックCRが細かく、無数に存在するような場合等には、真空脱泡を行うこともできる。
【0022】
また、ステップS13で検体10を覆う合成樹脂材料(第二合成樹脂材料)は、検体10とは異なる材質とすることができる。具体的には、検体10の合成樹脂材料と、覆部12の合成樹脂材料とで、例えば、物性や、特性、硬さ、硬度、ヤング率、合成樹脂基材、フィラーの有無、フィラーの含有率、フィラーの種類等を異ならせることができる。仮に、検体10の面P1等にクラックCR等が生じていた場合に、ステップS13で流動性を有した状態の合成樹脂材料(第二合成樹脂材料)が導入されると、上述したように、当該クラックCRには合成樹脂材料が入る。この場合に、クラックCRに入った合成樹脂材料が検体10の合成樹脂材料と異なる材質であると、一例としては、測定部5におけるクラックCRではない部分の測定結果と、クラックCRの部分(合成樹脂材料が入った部分)の測定結果とに差異が生じやすくなる。よって、一例としては、異常箇所の誤検知を抑制しやすくなり、より精度の高い検査(測定)を行いやすい。
【0023】
ここで、検体10を覆う合成樹脂材料(すなわち、覆部12を構成する第二合成樹脂材料)が、検体10より硬い(硬度がより高い、ヤング率がより高い)場合、検体10および覆部12が一体化されたベース11(アセンブリ)の剛性が高くなる。よって、一例としては、検体10がベース11あるいは覆部12によりしっかりと支持されるため、測定部5での測定結果に対する覆部12の影響を減らしやすくなる。また、一例としては、面形成部4での加工の際に、覆部12が柔らかすぎて部分的に剥がれる等の不都合が生じにくくなる。
【0024】
一方、検体10を覆う合成樹脂材料(すなわち、覆部12を構成する第二合成樹脂材料)が、検体10より柔らかい(硬度がより低い、ヤング率がより低い)場合、クラックCRの部分が柔らかくなる。よって、一例としては、クラックCRが無い部分より剛性が低いクラックCRの部分で、剛性が低くなるため、クラックCRにより硬い合成樹脂材料が入ってクラックCRが無い部分で剛性が高くなる場合に比べて、測定結果を判別しやすくなる。
【0025】
次に、面形成部4で、検体10が切削あるいは研磨されて、面P1が設けられる(ステップS14)。このステップS14では、一例としては、図7,8に示されるように、検体10および覆部12が一体化されたベース11(アセンブリ)が、検体10の検査を行いたい面に沿った面GPで切断され、この面GPが研磨されることで、面P1が形成される。このステップS14によって、面P1の凹凸が測定結果に影響を及ぼす(誤測定の一因となる)のを抑制しやすくなる。切断は、検体10やベース11(アセンブリ)等のスペックによっては省略することができる。また、研磨では、研磨部として、例えば回転式のグラインダ等を、用いることができる。また、研磨では、面粗さが段階的に小さくなるように、研磨部(例えば、グラインダ等)を変更することができる。一例としては、最終的には、面P1は、その凹凸が500nm(ナノメートル)以下(より好適には、10〜20nmの範囲内)に収まる程度に、鏡面状に仕上げられる。
【0026】
次に、面P1が洗浄され(ステップS15)、ステップS15で面P1が濡れる場合には、面P1が乾燥される(ステップS16)。これらステップS15,S16では、一例としては、検査装置1の内部(例えば、樹脂成形部3および面形成部4のうち少なくともいずれか一方)に、洗浄装置(洗浄部、図示されず)および乾燥装置(乾燥部、図示されず)が設けられる。そして、一例としては、検体10および覆部12が一体化されたベース11(アセンブリ)の状態で、少なくとも面P1、好適にはアセンブリの全体が、洗浄され、乾燥される。洗浄装置は、一例としては、不純物の少ない水(純水)を供給する装置として構成され、タンク、配管、ノズル、ポンプ等を有する。また、乾燥装置は、一例としては、ケース、ヒータ、ファン、ノズル等を有する。なお、洗浄装置および乾燥装置が、樹脂成形部3に設けられる構成では、一例として、樹脂成形のための温度可変機構の少なくとも一部を、乾燥装置に流用できるという利点がある。また、洗浄装置および乾燥装置が、面形成部4に設けられる構成では、一例として、洗浄装置および乾燥装置が他の処理セクションに設けられ当該処理セクションから面形成部4に搬送される場合に比べて、塵芥等が付着しにくくなるという利点がある。
【0027】
次に、測定部5で、面P1の複数の位置MPが押され、各位置MPでの測定値が得られる(ステップS17)。このステップS17では、図9に示されるように、測定装置13は、一例としては、基部(支持部、筐体)14と可動部(押部、押圧部)15とを備える。基部14は、可動部15を、面P1に近付く方向(遠ざかる方向、面P1と交叉する(垂直な)方向)に沿って往復可能に、支持する。また、基部14は、可動部15に荷重を与えて当該可動部15を面P1に向けて押す。すなわち、基部14は、可動部15を動かすアクチュエータ(例えば電磁ソレノイド等、図示されず)を有する。また、基部14は、可動部15の変位量を検出する変位センサ(例えば、静電容量式変位計等、図示されず)を有する。可動部15は押部の一例である。
【0028】
また、図10に示されるように、ステップS17では、測定される位置MPは、一例として、検体10の面P1上で、格子状(相互に直交するX方向およびY方向の二次元座標の格子状、グリッド状)に離散的に配置される。そして、このような複数の位置MPで測定を行うため、測定部5には、一例として、図11に示されるような、測定装置13の移動装置16が設けられる。移動装置16は、一例としては、レール16aと、スライダ16bと、レール16cと、スライダ16dと、を有する。図11に示されるように、本実施形態では、一例として、移動装置16は、検体10の面P1を覆うように(例えば面P1の上方に)位置されている。レール16aおよびレール16cは、面P1に沿い、相互に交叉する方向(垂直な方向)に沿って延びている。図11の例では、レール16aはX方向に沿って延び、レール16cは、X方向と直交するY方向に沿って延びている。スライダ16bは、レール16aの長手方向に沿って往復することができ、複数の位置(任意の位置)で停止されることができる。スライダ16dは、レール16cの長手方向に沿って往復することができ、複数の位置(任意の位置)で停止されることができる。スライダ16dに、図9に示されるような測定装置13が設けられる。移動装置16の各部は、それぞれモータやソレノイド等のアクチュエータ(図示されず)を有しており、これらアクチュエータの動作は、例えば、制御部9によって制御される。このような構成により、移動装置16は、測定装置13を、複数の位置MPに対応する(対向する)位置に移動させることができる。なお、複数の位置MPの配置や、移動装置16の構成は、適宜に変更することができる。また、固定された測定装置13に対して検体10およびベース11を移動可能な構成とすることができるし、測定装置13と検体10およびベース11との双方を移動可能な構成とすることもできる。これらの場合、測定部5に設けられた移動装置(図示されず)が検体10およびベース11を移動することができるし、搬送部6が検体10およびベース11を移動することができる。また、測定装置13の移動装置16や、検体10およびベースの移動装置(図示されず)、あるいは搬送部6等は、面P1に沿ったX方向およびY方向のみならず、それら方向と垂直な方向(検体10およびベース11と測定装置13とが近接および離間する方向、面P1と交叉する方向)に移動することもできる。
【0029】
ステップS17では、一例としては、ナノインデンタ(ナノインデンテーション)による微小部分の測定が実施される。図12〜14に例示されるように、ステップS17では、測定装置13は、可動部15を面P1に近接させ、接触させ、さらに押し込む。可動部15は、一例としては、面P1に垂直に移動する。各位置MPで、面P1は、可動部15の先端部15aに押されて凹む。測定装置13は、可動部15に既知の荷重(所定の荷重、力、例えば、複数の位置MPについて同じ荷重)を与える。よって、可動部15の検体10への進入は、検体10の物性(例えば、硬さや弾性等)に応じた最深位置で止まる。すなわち、可動部15の先端部15aの押しによって、面P1には、凹部10aが形成される。そして、凹部10aの深さは、物性(例えば、硬さや弾性等)に応じて変化する。硬い位置MPほど(硬度あるいはヤング率が高いほど)凹部10aは浅い。なお、凹部10aの深さは、数nm(少なくとも、1nm)以上になるよう、荷重の大きさは適宜に設定される。変位センサは、面P1が凹んだ際の可動部15の変位量を検出する。一例として、変位センサは、可動部15の先端部15aが面P1に当接してから最深位置に至るまでの変位量δを検出する。この変位量δは、凹部10aの深さδに等しい。一例として、ステップS17での測定値は、変位量(凹部10aの深さ)δである。なお、先端部15aは、例えば、多角錐状(例えば三角錐状)あるいは円錐状に形成される。また、可動部15の少なくとも先端部15aは、ダイヤモンド等の硬質な材料で構成される。
【0030】
面P1とは別の面で測定が行われない場合(ステップS18でNo)、ステップS17で得られた測定値から、各位置MPでの所定の物理量が算出される(ステップS19)。このステップS19では、一例として、制御部9は、ステップS17で得られた変位量δと、可動部15に与えられた荷重の大きさと、可動部15の先端部15aの形状とから、各位置MPでの物性(例えば、硬さや弾性等)に応じた物理量(例えば、硬度やヤング率等)を算出する。一例として、図12〜14に例示されるような形状の先端部15aの場合、面P1が凹んだ際の先端部15aの検体10との接触面積は、変位量δから幾何学的に算出することができる。よって、制御部9は、この算出された接触面積と、与えられた荷重の大きさとから、各位置MPでの物性(例えば、硬さや弾性等)に応じた物理量(例えば、硬度やヤング率等)を算出することができる。
【0031】
さらに、このステップS19では、出力態様に応じた画像処理が行われる。そして、測定値またはこの測定値に基づいて算出された物理量と位置MPとを対応付けた出力結果が、出力される(ステップS20)。このステップS20では、一例としては、出力部8としてのディスプレイの表示画面に、図15に示されるようなグラフが表示される。図15は、X方向およびY方向の二次元で離散的に配置された各位置MPでの物理量としてのヤング率が示された出力結果(グラフ)の一例である。図15の例では、空間的に補間処理が行われて、ヤング率の等高線が示されている。白抜きのパターンの部分がヤング率が高く、ドットパターンのドットが密になるほどヤング率が低い。図16は、図15の出力例に対応した検体10が模式的に示された斜視図である。図15,16を比較すれば、図15のような出力結果によって、検体10の面P1のXYの二次元座標上でウエルドラインWLやクラックCRが生じている部分(領域)を視覚的に認識しやすくなる。なお、図15は、ステップS20の出力結果の一例であって、出力結果の態様は、この例には限定されない。例えば、出力結果は、色やパターンで区別した平面図として出力することもできる。また、図15の例では、ウエルドラインWLは、ヤング率が一般部分より低い場所として観測することができるが、ヤング率が一般部分より高い場所として観測される場合もある。すなわち、本実施形態にかかる検査方法および検査装置によれば、検体10内で異常が生じている部分(領域)を、一般部分と物理量が異なる部分(領域)として、認識することができる。
【0032】
また、面P1とは別の面で測定が行われる場合(ステップS18でYes)、ステップS14に戻って、別の面が形成され、当該形成された面に対して、ステップS15以降の処理が実行される。図17に示されるように、検体10および覆部12が一体化されたベース11(アセンブリ)が、検体10の検査を行いたい面に沿った面GPで切断され、この面GPが研磨されることで、別の面が形成される。すなわち、検体10が面GPで切断あるいは研磨されて測定対象としての面が形成され、その面に対して測定が実行され、その測定後、さらに新しい面GPが切断されあるいは研磨されて測定対象としての新しい面が形成され、その面に対して測定が実行される。すなわち、本実施形態によれば、検体10が少しずつ削られて面が形成され、当該面について、測定値や物理量が得られることで、検体10の内部まで、物性(例えば、硬さや弾性等)に対応した物理量(例えば、硬度やヤング率等)を検査することができる。
【0033】
以上、説明したように、本実施形態にかかる合成樹脂材料の検査方法は、合成樹脂材料の検体10を切削あるいは研磨して面P1を設けるステップと、面P1の複数の位置MPを押して各位置MPでの測定値を得るステップと、測定値またはこの測定値に基づいて算出された物理量と各位置MPとを対応付けて出力するステップと、を有した。よって、一例としては、面P1の各位置MPで測定値をより精度良く得ることができるとともに、面P1の各位置MPでの物理量をより把握しやすくなる。よって、一例としては、合成樹脂材料の検体10で異常が生じている領域をより精度良くかつより容易に把握しやすい。
【0034】
また、本実施形態では、測定値を得るステップでは、測定値として、面P1に押された可動部15の面P1からの変位量δが測定され、可動部15の形状、変位量δ、および可動部15を面P1に押した荷重から、検体10の硬さあるいは弾性に応じた物理量が算出される。よって、一例としては、検体10の局所的な硬さあるいは弾性に応じた物理量、すなわち、検体10における硬さあるいは弾性に応じた物理量を、より精度良く得ることができる。
【0035】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、上記実施形態は一例であって、種々に変形して実施することができる。例えば、測定値から硬度あるいはヤング率以外の物理量を算出して、当該物理量の検体での分布を得ることができる。また、検査装置、ならびにその各部、すなわち、ベース格納部、樹脂成形部、面形成部、測定部、搬送部、操作部、出力部、制御部、検体、ベース、覆部、測定装置、基部、可動部、移動装置等のスペック(構造や、方向、形状、大きさ、長さ、幅、厚さ、高さ、数、配置、位置、材質等)は、適宜に変更して実施することができる。また、出力部は、記憶媒体にデータを出力するデータ出力装置であることができるし、紙等の媒体に印刷する印刷装置であることができる。また、上記実施形態では、検体、ベース、および覆部が、合成樹脂材料である場合について例示したが、本発明は、合成樹脂材料以外の材料(例えば金属材料等)についても同様に適用することができる。
【符号の説明】
【0036】
1…検査装置、3…樹脂成形部、4…面形成部、5…測定部、10…検体、15…可動部(押部)、15a…先端部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成樹脂材料の検体を切削あるいは研磨して面を設けるステップと、
前記面の複数の位置を押して各位置での測定値を得るステップと、
前記測定値またはこの測定値に基づいて算出された物理量と前記位置とを対応付けて出力するステップと、
を有した、合成樹脂材料の検査方法。
【請求項2】
前記測定値を得るステップでは、前記測定値として、前記面に押された押部の前記面からの変位量が測定され、
前記物理量として、前記押部の形状、前記変位量、および前記押部を前記面に押した荷重から、前記検体の硬さあるいは弾性に応じた物理量が算出される、請求項1に記載の合成樹脂材料の検査方法。
【請求項3】
前記面を設けるステップの前に、前記検体の少なくとも一部を第二合成樹脂材料で覆うステップを有した、請求項1または2に記載の合成樹脂材料の検査方法。
【請求項4】
前記面を設けるステップでは、前記第二合成樹脂材料で覆った部分に面を設ける、請求項3に記載の合成樹脂材料の検査方法。
【請求項5】
前記第二合成樹脂材料の硬さは、前記合成樹脂材料の硬さと異なる、請求項3または4に記載の合成樹脂材料の検査方法。
【請求項6】
前記第二合成樹脂材料は、前記合成樹脂材料より柔らかい、請求項5に記載の合成樹脂材料の検査方法。
【請求項7】
前記第二合成樹脂材料は、前記合成樹脂材料より硬い、請求項5に記載の合成樹脂材料の検査方法。
【請求項8】
前記第二合成樹脂材料で覆うステップでは、流動する状態の前記第二合成樹脂材料が前記検体を収容した容器に導入され当該第二合成樹脂材料が固化される、請求項3〜7のうちいずれか一つに記載の合成樹脂材料の検査方法。
【請求項9】
一つの前記面について測定値を得るステップの後で、当該面を切削あるいは研磨して別の面を設けるステップと、
前記別の面の複数の位置を押して各位置での測定値を得るステップと、
を有した、請求項1〜8のうちいずれか一つに記載の合成樹脂材料の検査方法。
【請求項10】
検体を切削あるいは研磨して面を設けるステップと、
前記面の複数の位置を押して各位置での測定値を得るステップと、
前記測定値またはこの測定値に基づいて算出された物理量と前記位置とを対応付けて出力するステップと、
を有した、材料の検査方法。
【請求項11】
合成樹脂材料の検体を切削あるいは研磨して面を設ける面形成部と、
前記面の複数の位置を押して各位置での測定値を得る測定部と、
前記測定値またはこの測定値に基づいて算出された物理量と前記位置とを対応付けて出力する出力部と、
を備えた、合成樹脂材料の検査装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate


【公開番号】特開2013−7652(P2013−7652A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−140560(P2011−140560)
【出願日】平成23年6月24日(2011.6.24)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)