説明

合成樹脂着色用マスターバッチ

【課題】本発明は、メタリック調の着色をするために非結晶性の合成樹脂中へ練り込んだ場合においても、マスターバッチに含まれる樹脂等の成分によって合成樹脂成形品の強度低下を起こすことのない合成樹脂着色用マスターバッチを提供することを目的とする。
【解決手段】本発明の合成樹脂着色用マスターバッチは、アルミニウム顔料とポリエチレンワックスと直鎖状低密度ポリエチレン樹脂とを含み、直径が2.5mmであり高さが2mm以上5mm以下である円柱ペレット状の形状とした場合にラトラ値が2.5%以下となることを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成樹脂にメタリック調の着色を付与する合成樹脂着色用マスターバッチに関する。特に、非結晶性または結晶性のいずれの種類の合成樹脂に対して練り込みを行なっても、これを練り込んだ合成樹脂の強度が低下しないという特性を備えた合成樹脂着色用マスターバッチ、および当該合成樹脂着色用マスターバッチを用いて製造される合成樹脂成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
MIC(Mold−in−Color)材により合成樹脂を着色する場合、たとえば合成樹脂に対して着色剤としての顔料を直接練り込んで合成樹脂自体を所望の色に着色することが行なわれている。特に、合成樹脂をメタリック調に着色する場合には、一般的に通常の塗料で使用されるペースト状アルミニウム顔料が用いられている。
【0003】
しかしながら、ペースト状アルミニウム顔料は、ミネラルスピリット等に代表される有機溶剤を含有することから通常は湿潤状態にある。このため、ペースト状アルミニウム顔料をそのままの状態で練り込んで合成樹脂を着色した場合には、有機溶剤成分が合成樹脂中に残留することからこれを成形した合成樹脂成形品の表面において有機溶剤成分がブリードすることがあった。一方、ペースト状アルミニウム顔料に含まれるアルミニウム顔料は、それ自体が金属であることから合成樹脂の界面とのなじみ(濡れ性)が乏しく、以って合成樹脂中でのアルミニウム顔料の分散性はあまり良好ではない。これらの理由により、合成樹脂成形品に十分なメタリック調の着色を施すことが困難となるケースが存した。
【0004】
これらの問題を解決するために、たとえばテルペン−フェノール樹脂と低密度ポリエチレン樹脂とを含む被覆物によりアルミニウム等の金属粒子を被覆してなる易流動性粒状物質をペレット化(いわゆるマスターバッチ化)して、これを合成樹脂に練り込みことによってメタリック調に着色するという提案がされている(特許文献1)。
【0005】
この提案によるマスターバッチは、取り扱いが容易であるとともにペースト状アルミニウム顔料に含まれるような有機溶剤成分をほとんど含まず、しかも合成樹脂中での分散性も良好なため、ポリエチレンフィルムなどへのメタリック調の着色に利用されている。
【特許文献1】特表昭59−501550号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、テルペン−フェノール樹脂や低密度ポリエチレン樹脂を使用した上記のようなマスターバッチを非結晶性の樹脂(たとえばABS樹脂など)に練り込んだ場合、そのマスターバッチに含まれるテルペン−フェノール樹脂や低密度ポリエチレン樹脂に起因して合成樹脂成形品の強度低下を起こす場合があった。
【0007】
本発明はこのような状況に鑑みなされたものであって、その目的とするところは、メタリック調の着色をするために非結晶性の合成樹脂中へ練り込んだ場合においても、マスターバッチに含まれる樹脂等の成分によって合成樹脂成形品の強度低下を起こすことのない合成樹脂着色用マスターバッチを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねたところ、合成樹脂着色用マスターバッチに含まれる樹脂成分として特定のポリエチレン樹脂を採用するとともにラトラ値を特定の値以下とすれば、上記目的を達成できるとの知見を得、この知見に基づきさらに検討を重ねることによりついに本発明を完成するに至ったものである。
【0009】
すなわち、本発明の合成樹脂着色用マスターバッチは、アルミニウム顔料とポリエチレンワックスと直鎖状低密度ポリエチレン樹脂とを含み、直径が2.5mmであり高さが2mm以上5mm以下である円柱ペレット状の形状とした場合にラトラ値が2.5%以下となることを特徴としている。
【0010】
ここで、本発明の合成樹脂着色用マスターバッチは、上記ポリエチレンワックスと上記直鎖状低密度ポリエチレン樹脂とを9:1〜7:3の質量比で含むことが好ましく、アルミニウム顔料を60質量%以上80質量%以下の範囲で含むことが好ましい。
【0011】
また、本発明は、このような合成樹脂着色用マスターバッチを用いて製造される合成樹脂成形品にも係る。
【発明の効果】
【0012】
本発明の合成樹脂着色用マスターバッチは、上記のような構成を有することにより非結晶性の合成樹脂中へ練り込んだ場合においても、合成樹脂成形品の強度を低下させないという優れた効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の合成樹脂着色用マスターバッチは、アルミニウム顔料とポリエチレンワックスと直鎖状低密度ポリエチレン樹脂とを含み、直径が2.5mmであり高さが2mm以上5mm以下である円柱ペレット状の形状とした場合にラトラ値が2.5%以下となることを特徴としている。本発明の合成樹脂着色用マスターバッチは、このような各成分を含み、かつこのようなラトラ値を有する限り、この種のマスターバッチに含まれる従来公知の添加剤を任意に含むことができる。以下、本発明の合成樹脂着色用マスターバッチの各構成等についてさらに詳細に説明する。
【0014】
<アルミニウム顔料>
本発明で使用するアルミニウム顔料は、特に限定されないが、たとえば平均粒径が5〜250μm程度であるフレーク状のものを使用することができる。好ましくは、平均粒径が5〜30μm程度のものもしくは60〜150μm程度のものが好適であり、着色の目的および用途に応じて任意のものを選択することができる。その平均粒径が上記範囲内であれば、緻密なメタリック感を樹脂に付与することや、粒子感のあるキラキラとしたスパークル感といった意匠を樹脂に付与することができる。
【0015】
なお、本発明において平均粒径とは、レーザー回折法、マイクロメッシュシーブ法、コールターカウンター法、などの公知の粒度分布測定法により測定された粒度分布により、体積平均を算出して求められるものをいう。
【0016】
また、当該アルミニウム顔料は、どのような製法によって得られたものであってもよい。たとえば、ボールミル中で原料のアルミニウム粉末をミネラルスピリット等の有機溶剤で湿潤状態にし、スチールボールを用いてこのアルミニウム粉末を湿式粉砕することによって得られるアルミニウム顔料等を用いることができる。
【0017】
また、本発明のアルミニウム顔料の表面には、上記のような湿式粉砕時に粉砕助剤として添加されるステアリン酸やオレイン酸等が付着していてもよく、さらに当該アルミニウム顔料表面を適宜表面処理したものを使用してもよい。
【0018】
<ポリエチレンワックス>
本発明で使用するポリエチレンワックスは、結晶性が低く、低密度であり、他の樹脂との分散性(混和性)がよいという特性を備えていることが好ましい。このようなポリエチレンワックスは、具体的には、140℃での溶融粘度が150〜6000mPa・sの範囲にあるものを挙げることができ、特に3000〜5000mPa・sの範囲にあるものが好ましい。
【0019】
このような溶融粘度を有するポリエチレンワックスは、本発明の合成樹脂着色用マスターバッチの製造時において、後述の直鎖状低密度ポリエチレン樹脂を加熱しながらアルミニウム顔料と混練する際にアルミニウム顔料を当該マスターバッチ中に均一に分散させるという優れた作用を示す。
【0020】
なお、上記溶融粘度は、JIS K 2283:2000のウベローデ法に準じて測定することができる動粘度(mm2/s)を用いて、以下の換算式(式1)により溶融時における絶対粘度(mPa・s)として求められる粘度である。
【0021】
具体的には、ポリエチレンワックスを同じ質量のテトラリン(テトラヒドロナフタレン)に加え120℃以下で加熱溶解することによって得られる濃度50%の希釈溶液を用いて、測定温度100℃にてウベローデ法に準じてそれの動粘度を測定する。そして、その動粘度を以下の(式1)により換算した値(すなわち絶対粘度)を溶融粘度とする。
【0022】
溶融粘度(mPa・s/140℃)=
(動粘度(mm2/s)×11.68)−190 ・・・(式1)
さらに、本発明のポリエチレンワックスは、上記のような溶融粘度を有するとともに900〜930kg/m3という密度を有していることが好ましい。このような密度は、さらに好ましくは910〜920kg/m3である。このように、該密度が900〜930kg/m3の範囲内であれば、ポリエチレンワックスの結晶化度が低く、非結晶性樹脂に対して容易に混練することができるという作用が示される。なお、このような密度は、たとえばJIS K 6760:1990により測定することができる。
【0023】
上記のような各特性を有するポリエチレンワックスは、一般に市販されているものを使用することができ、たとえば三洋化成株式会社製のサンワックスシリーズや三井化学株式会社製の三井ハイワックスシリーズなどを挙げることができる。
【0024】
このような本発明のポリエチレンワックスは、以上の説明からも明らかなように、均一な組成のマスターバッチが製造できるという作用を有するとともに、非結晶性樹脂への易分散という作用をも有するものであり、本発明の特徴点のひとつを構成するものである。
【0025】
<直鎖状低密度ポリエチレン樹脂>
本発明で使用する直鎖状低密度ポリエチレン樹脂は、結晶性が低く、低密度であり、強度と延性に優れており、他の樹脂との相溶性が良好であるという作用を備えていることが好ましい。このような直鎖状低密度ポリエチレン樹脂は、具体的には、メタロセン触媒を使用して重合することにより得られるポリエチレン樹脂であり、分子量分布(Mw/Mn)の狭いものをいう。ここで、「直鎖状」とは、分岐鎖や側鎖の少ないポリエチレン分子を意味する概念的なものであって、化学構造的に直鎖状の分子のみを意味するものではない。
【0026】
このような本発明の直鎖状低密度ポリエチレン樹脂は、より具体的には、メルトフローレートが1.0〜6.0g/10minの範囲にあるものが好ましく、さらに好ましくは3.0〜5.0g/10minの範囲にあることが好適である。このようなメルトフローレートを有する直鎖状低密度ポリエチレン樹脂は、当該マスターバッチにより着色する樹脂(母材樹脂)に対して機械的強度が類似しており強靭な衝撃強度を有するため、母材樹脂の機械的強度を損なわないという優れた作用を有する。しかも、このような直鎖状低密度ポリエチレン樹脂は、優れた延性と靭性を有するため当該マスターバッチ自体の強度を向上させるという作用をも有している。なお、メルトフローレートは、JIS K 7210:1990により測定することができる。
【0027】
さらに、本発明の直鎖状低密度ポリエチレン樹脂は、上記のようなメルトフローレートを有するとともに以下のような密度と融点を有していることが好ましい。すなわち、該密度は、900〜940kg/m3の範囲内であることが好ましく、さらに好ましくは920〜930kg/m3の範囲内であることが好適である。このような範囲の密度を採用することにより、上記ポリエチレンワックスと同様に、結晶化度が低く、非結晶性樹脂に対して容易に混練することができるという作用が示される。なお、該密度は、上記のポリエチレンワックスに対する方法と同様の方法により測定することができる。
【0028】
一方、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂の融点は、95〜130℃であることが好ましく、さらに好ましくは110〜125℃であることが好適である。このような融点を有することにより、マスターバッチあるいは合成樹脂成形品を製造する際の加熱混練時に容易に溶融することができ加工性に優れたものとなる。なお、このような融点は、たとえばJIS K 7121により測定することができる。
【0029】
このような直鎖状低密度ポリエチレン樹脂は、一般に市販されているものを使用することができ、たとえばプライムポリマー社製のエボリュー(商品名)等を挙げることができる。
【0030】
このような本発明の直鎖状低密度ポリエチレン樹脂は、以上の説明からも明らかなように、当該マスターバッチで着色される合成樹脂成形品の機械的強度を低下させることなく本来の強度に維持することができるという作用を有するものであり、上記のポリエチレンワックスの使用と相俟って本発明の特徴点のひとつを構成するものである。
【0031】
<ラトラ値>
本発明の合成樹脂着色用マスターバッチは、直径が2.5mmであり高さが2mm以上5mm以下である円柱ペレット状の形状とした場合に、ラトラ値が2.5%以下となることを要する。
【0032】
ここで、ラトラ値とは、日本粉末冶金工業会規格である「JPMA P 11−1922」に準じて測定した値である。具体的には、まず直径が2.5mmであり高さが2mm以上5mm以下である円柱ペレット状の形状の合成樹脂着色用マスターバッチを製造する。これは、たとえば所定量のアルミニウム顔料(アルミニウム顔料はペースト状のものも使用できる)、ポリエチレンワックスおよび直鎖状低密度ポリエチレン樹脂を、万能攪拌機等を用いて加熱、混練し、得られた混練物をクラッシャー等の粉砕方法で粉砕し、その粉砕物をディスクペレタイザーで円柱ペレット状にすることにより製造することができる。そして、このような形状(高さは2mm以上5mm以下であれば種々の高さのものが含まれていても差し支えない)の合成樹脂着色用マスターバッチ15.00g(「封入質量」とする)を量りとり、内周表面に1枚の障害板を有する、篩目開き1180μmのステンレス製金網籠に封入し、回転速度87±10rpmで1000回転させた後、篩(すなわちステンレス製金網籠)の中に残った合成樹脂着色用マスターバッチの質量(「残量質量」とする)を測定する。次いで、これらの各測定した質量に基づいて、(封入質量−残量質量)/封入質量×100という計算式から質量減少率を求め、これを本発明のラトラ値とする。
【0033】
すなわち、このラトラ値とは、衝撃が加えられた場合の形状保持性の尺度となるものであり、合成樹脂着色用マスターバッチの強度の尺度となるものである。本発明の合成樹脂着色用マスターバッチは、上述の方法で測定したラトラ値が2.5%以下となることを要し、好ましくは1.5%以下となることが好適である。このようなラトラ値を有することにより、本発明の合成樹脂着色用マスターバッチを合成樹脂中に練り込んだ場合に、合成樹脂成形品の強度が低下しないという優れた効果が示される。
【0034】
<合成樹脂着色用マスターバッチ>
本発明の合成樹脂着色用マスターバッチは、合成樹脂にメタリック調の着色を付与するために用いられるものであり、上記の通り、直径が2.5mmであり高さが2mm以上5mm以下である円柱ペレット状の形状とした場合に、ラトラ値が2.5%以下となることを要するが、その形状をこの円柱ペレット状の形状のみに限定するものではなく、任意の形状とすることができる。しかし、好ましくは、上記のような円柱ペレット状の形状とすることが好適である。
【0035】
このような本発明の合成樹脂着色用マスターバッチは、上記ポリエチレンワックスと上記直鎖状低密度ポリエチレン樹脂とを、9:1〜7:3の質量比で含むことが好ましく、さらに、8.5:1.5〜7.5:2.5の質量比で含むことがより好ましい。
【0036】
当該質量比が、上記範囲内であれば合成樹脂着色用マスターバッチ製造時の生産性が良好となる。たとえば、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂の上述の質量比が3を超えると(すなわちポリエチレンワックスとの合計量中で30%を超えて含まれると)、当該マスターバッチを構成する樹脂成分(キャリア樹脂ともいい、ポリエチレンワックスと直鎖状低密度ポリエチレン樹脂の両者を示す)の強度が強くなりすぎて、当該マスターバッチを混練機から取り出す際の作業性や、造粒時の生産性が著しく悪化する傾向を示す。また、ポリエチレンワックスの上述の質量比が9を超えると(すなわち直鎖状低密度ポリエチレン樹脂との合計量中で90%を超えて含まれると)、当該マスターバッチを構成する樹脂成分の強度が弱くなり、輸送時等において当該マスターバッチの形状が崩れる恐れがある。
【0037】
また、本発明の合成樹脂着色用マスターバッチは、上記アルミニウム顔料を60質量%以上80質量%以下の範囲で含むことが好ましく、さらに、65質量%以上75質量%以下の範囲で含むことがより好ましい。
【0038】
当該アルミニウム顔料の含有量が、60質量%以上80質量%以下の範囲内であれば当該マスターバッチ中の樹脂成分の含有量が相対的に減少するため、当該マスターバッチを着色目的の母材樹脂に添加した場合に母材樹脂以外の樹脂成分(「コンタミ」と呼ばれる)の割合を減少させることができるという効果が示される。このような「コンタミ」は母材樹脂の強度を低下させる要因となるため、結果的に母材樹脂の強度低下の防止に寄与することになる。
【0039】
一方、アルミニウム顔料の含有量が上記の範囲を超えると当該マスターバッチの強度が低下し、軽い衝撃によりその形状が崩れてしまう。このようにその形状が崩れると、当該マスターバッチを容器中あるいは包装体中に梱包して輸送している間等において粉体状物が発生し、着色目的の母材樹脂に配合する際の取り扱いに不都合を伴うことになる。また、該粉体状物の飛散により設備等が汚染される恐れもあるため好ましくない。
【0040】
またさらに、スクリューフィーダー等で当該マスターバッチと母材樹脂とをフィードしかつ溶融して練り込むことにより合成樹脂成形品を成形する際に該粉体状物が含まれると、それが当該マスターバッチとともにフィードされて母材樹脂と練り込まれることにより、一連の成形工程の最初に成形される合成樹脂成形品とそれより後に成形される合成樹脂成形品とにおいて含まれるアルミニウム顔料の濃度に差が発生する(最初に成形される合成樹脂成形品に含まれるアルミニウム顔料の濃度の方が高くなる)原因となる恐れがある。以上の諸点より、アルミニウム顔料の含有量を60質量%以上80質量%以下の範囲内とし、当該粉体状物の発生を防止することが好ましい。
【0041】
なお、本発明の合成樹脂着色用マスターバッチは、本発明の効果を妨げない範囲内において、従来公知の任意の添加剤を含有することができる。そのような添加剤としては、たとえば、タルク、シリカなどの体質顔料、アゾ系顔料、アンスラキノン系顔料、キナクリドン系顔料、フタロシアニン系顔料、ペリレン系顔料、ペリノン系顔料、ジオキサジン系顔料、キノフタロン系顔料等の有機顔料、酸化チタン、ベン柄、群青、紺青、黄色酸化鉄、黄鉛、クロムバーミリオン、複合酸化物系顔料等の無機顔料、カーボンブラック等の顔料、分散剤等を挙げることができる。
【0042】
上記において、分散剤としては、たとえばステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸ストロンチウム、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウムなどの金属石鹸、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトトリプロピルトリメトキシシランなどのシランカップリング剤、無水マレイン酸等を挙げることができる。
【0043】
<合成樹脂着色用マスターバッチの製造方法>
本発明の合成樹脂着色用マスターバッチは、公知のどのような製造方法によっても製造することができる。たとえば、上述したアルミニウム顔料(アルミニウム顔料はペースト状のものも使用できる)、ポリエチレンワックスおよび直鎖状低密度ポリエチレン樹脂を万能攪拌機等により加熱しながら混練する(混練工程)。当該混練工程における加熱温度は、配合する樹脂成分(すなわちポリエチレンワックスおよび直鎖状低密度ポリエチレン樹脂)により異なるが、通常は140〜180℃の範囲とすることが好ましい。また、当該混練工程における混練時間は、当該配合する樹脂成分がアルミニウム顔料と均一に分散する限り特に限定されないが、通常は0.5〜2時間とすることが好ましい。
【0044】
このような加熱温度および混練時間により、ペースト状のアルミニウム顔料(いわゆるアルミニウム顔料ペースト)を使用した場合であっても、当該アルミニウム顔料ペーストに含まれる溶剤成分が除去されるため好ましい。
【0045】
次いで、このような混練工程により均一に混練された後に、混練物をクラッシャー等の粉砕方法により粉砕し(粉砕工程)、ディスクペレタイザーで実質的に固形分100%のペレット状の本発明の合成樹脂着色用マスターバッチを製造することができる。
【0046】
<合成樹脂成形品>
上述のようにして得られる本発明の合成樹脂着色用マスターバッチは、適宜、合成樹脂(すなわち当該着色目的の母材樹脂)中に練り込むことにより、好適に合成樹脂成形品を製造することができる。すなわち、本発明の合成樹脂成形品は、本発明の合成樹脂着色用マスターバッチを用いて製造されるものである。
【0047】
ここで、母材樹脂中の当該マスターバッチの含有量は、0.1〜7.0質量%とすることが好ましく、さらに0.7〜5.0質量%とすることがより好ましい。当該マスターバッチの含有量が0.1〜7.0質量%の範囲内であれば、いわゆる「コンタミ」の割合が減少し、母材樹脂の強度低下を防止することができるため好ましい。
【0048】
また、本発明の合成樹脂着色用マスターバッチにより着色することができる(すなわち当該マスターバッチを練り込むことができる)合成樹脂(母材樹脂)の種類は特に限定されず、従来公知の種々の合成樹脂を挙げることができる。特に、ABS樹脂のような非結晶性の合成樹脂を挙げることができ、強度を低下させることなくこのような非結晶性の合成樹脂を着色することができることは本発明の大きな特徴である。なぜなら、従来の合成樹脂着色用マスターバッチでは、強度を低下させることなく非結晶性の合成樹脂を着色することができなかったからである。
【0049】
このように本発明の合成樹脂着色用マスターバッチは、非結晶性または結晶性のいずれの種類のどのような合成樹脂に対しても強度を低下させることなく練り込むことができ、それを好適に着色することができるという優れた効果を示す。
【0050】
このような本発明の合成樹脂成形品は、射出成形、押出成形、ブロー成形等の従来公知の各種成形方法により成形される成形品であって、その形状等は特に限定されない。また、このような最終の成形品ばかりではなく、最終の付形がされる前の中間仕掛品(たとえば本発明の合成樹脂着色用マスターバッチと着色目的の母材樹脂とをペレット状に混練した着色ペレットなど)も、本発明の合成樹脂成形品に含まれる。
【実施例】
【0051】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0052】
実施例、比較例に供したアルミニウム顔料は、平均粒径20μmのアルミニウム顔料を含んだペースト(商品名「アルペースト TCR2020」;東洋アルミニウム株式会社製)を用い、マスターバッチ中に含まれるアルミニウム顔料の含有量(固形分)が70質量%になるように配合した。なお、本実施例においてアルミニウム顔料の平均粒径は、レーザー回折式粒度分布測定機(商品名「MicrotracHRA9320−X100」、日機装株式会社製)を用いてレーザー回折法で測定される50%累積時の粒子径とする。
【0053】
まず、万能攪拌機にて、以下の表1に示す配合比率の各原料を混練時の加熱温度160℃で均一に混練、脱気して、混合物を作製した。引き続き、得られた当該混合物を、クラッシャー等で予備粉砕し、ディスクペレタイザーにて直径φが2.5mmであり高さが2mm以上5mm以下の円柱ペレット状の合成樹脂着色用マスターバッチを作製した。
【0054】
以下の表1中、ポリエチレンワックスとしては三洋化成株式会社製の商品名「サンワックス 161−P」(溶融粘度:4300mPa・s/140℃、密度:920kg/m3)を使用し、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂としては株式会社プライムポリマー製の商品名「エボリュー SP2510」(メルトフローレート:1.5g/10min、密度:923kg/m3、融点:121℃)を使用した。また、ラトラ値は、前述の方法により測定した。
【0055】
次いで、このように作製した各合成樹脂着色用マスターバッチを用いてABS樹脂を着色しABS樹脂からなる合成樹脂成形品を製造した。すなわち、各マスターバッチとABS樹脂とを後述する割合で配合して混練押出することにより着色ペレットを作製し、この着色ペレットを射出成形することにより合成樹脂成形品(テストピース)を作製した。
【0056】
ここで、着色する合成樹脂は、ABS樹脂(日本エイアンドエル株式会社製 「耐熱ABS樹脂 MTH−2」、メルトフローレート:11.4、密度:1040kg/m3)を使用した。また、上記着色ペレットの作製は、合成樹脂着色用マスターバッチの含有量が2.86質量%(アルミニウム顔料分2.00%)とになるように配合し、プラスチック工学研究所製の同方向2軸押出機BT−30−X−30L型(スクリュー径:30mm、L/D比:30、ダイス直径φ:3mm×2箇所)を使用し、押出温度220℃で混練押出しし、ストランドを水冷してカッターにてペレタイズした。その後、このように作製した着色ペレットを成型温度250℃にて射出成形することによりテストピースを作製した。
【0057】
そして、このテストピースを用いて、引張試験とアイゾット衝撃試験を実施した。引張試験は、JIS K 7113に準じ、テストピースの形状は1号型とし、引張速度50mm/minで引張降伏応力(MPa)を測定した。また、アイゾット衝撃試験はJIS K 7110に準じ、テストピースの形状は2号型とし、秤量は4Jでアイゾット衝撃強さ(kJ/m2)を測定した。
【0058】
【表1】

【0059】
実施例1の合成樹脂着色用マスターバッチと実施例2の合成樹脂着色用マスターバッチとを比較すると、実施例2のラトラ値が実施例1のラトラ値に比し低くなっており、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂の添加量が増加するのに伴い、合成樹脂着色用マスターバッチの強度が向上することが確認できた。これに対して、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂を含まない比較例1の合成樹脂着色用マスターバッチは、ラトラ値が高く、合成樹脂着色用マスターバッチの強度が不足することが明らかである。
【0060】
一方、実施例2の合成樹脂着色用マスターバッチを用いて製造されたテストピースの引張降伏応力は45.6MPaであり、着色する前のABS樹脂の引張降伏応力(45.6MPa)と比べ強度低下は認められなかった。また、実施例2のテストピースの破断面を目視確認すると相分離が認められず合成樹脂着色用マスターバッチが均一に分散していることが確認できた。さらに、実施例2のテストピースは、アイゾット衝撃強さが17.5kJ/m2であり、ABS樹脂のアイゾット衝撃強さ(17.3kJ/m2)に比べて強度低下が認められなかった。
【0061】
これに対して、比較例1の合成樹脂着色用マスターバッチを用いて製造されたテストピースは、17.6kJ/m2というアイゾット衝撃強さを示しABS樹脂のアイゾット衝撃強さとほぼ同等の値を示したが、引張降伏応力は45.4MPaとなり着色する前のABS樹脂の引張降伏応力(45.6MPa)に比べ、その強度は顕著に低下していた。このような比較例1のテストピースにおける強度低下は、上記のラトラ値の結果(比較例1のラトラ値が実施例1および2に比し低いという結果)と高い相関性を示した。
【0062】
以上の各試験結果より明らかなように、本発明の合成樹脂着色用マスターバッチを用いて製造される合成樹脂成形品においては、その強度が低下することなく着色されることは明らかである。そして、特にABS樹脂などの非結晶性の樹脂に使用した場合に有効であることが確認された。
【0063】
以上のように本発明の実施の形態および実施例について説明を行なったが、上述の各実施の形態および実施例の構成を適宜組み合わせることも当初から予定している。
【0064】
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウム顔料とポリエチレンワックスと直鎖状低密度ポリエチレン樹脂とを含み、
直径が2.5mmであり高さが2mm以上5mm以下である円柱ペレット状の形状とした場合にラトラ値が2.5%以下となる合成樹脂着色用マスターバッチ。
【請求項2】
前記ポリエチレンワックスと前記直鎖状低密度ポリエチレン樹脂とを、9:1〜7:3の質量比で含む、請求項1に記載の合成樹脂着色用マスターバッチ。
【請求項3】
前記アルミニウム顔料を60質量%以上80質量%以下の範囲で含む、請求項1または2に記載の合成樹脂着色用マスターバッチ。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の合成樹脂着色用マスターバッチを用いて製造される合成樹脂成形品。

【公開番号】特開2010−121092(P2010−121092A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−298515(P2008−298515)
【出願日】平成20年11月21日(2008.11.21)
【出願人】(399054321)東洋アルミニウム株式会社 (179)
【Fターム(参考)】