説明

合成樹脂組成物を塗膜する方法

規定された特定の表面抵抗率および静電気散逸電圧値を有する熱可塑性樹脂および熱硬化性樹脂などの合成樹脂は、静電気支援塗膜方法において塗膜されるべき基材として有利に用いられる。従って、しばしば基材の物理的特性に有害である導電性添加剤をより少なく用いてもよいか、および/または基材の導電率をあまりに高めない添加剤を用いてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
比較的高い電気抵抗および比較的高い静電気散逸を有する合成樹脂組成物は、意外にも、静電気支援塗膜方法において用いられるときに優れた塗料塗り重ねを有する。
【背景技術】
【0002】
エポキシ樹脂、メラミン樹脂およびいわゆるシートモールディング樹脂(またはコンパウンド)などの熱硬化性樹脂ならびにポリオレフィン、ポリアミド、ポリエステルおよび多くの他の樹脂などの熱可塑性樹脂を含む合成樹脂(ポリマー)は、近代生活の至る所に存在する。合成樹脂は無数の用途を有し、これらの用途の一部においては、しばしば美観の理由で、樹脂が見た目のよい表面外観および/または特定の色を有することが望ましい。後者を樹脂組成物自体を着色することにより実行してもよい一方で、多くの場合、樹脂を塗料で塗膜する(塗装する)ことがより望ましい場合がある。塗膜された品目は、しばしば、全く塗膜されなかった樹脂品目より良好な外観を有する。更に、樹脂品目が金属を含むより大きなアセンブリの部品である場合、金属は、しばしば、美観目的および/または耐腐食目的のために塗膜(塗装)され、金属部品および樹脂部品両方が同じ塗料で塗膜される場合、金属部品および樹脂部品は、しばしば望ましい均一な外観を有する。
【0003】
特に工業的に広く用いられる塗膜プロセスの1つのタイプは、いわゆる静電気支援塗膜である。このプロセスにおいて、接地された基材(塗膜されるべき品目)は、大地からの高い電圧差により帯電されている塗料粒子または塗料小滴によって吹きつけられるか、または前記塗料粒子または塗料小滴に浸漬される。従って、粒子は、もちろん粒子によって塗膜される基材表面に静電気で引きつけられる。静電気支援塗膜には多くの利点がある。例えば、所望の塗料厚さのより速い塗り重ね、より高い塗膜効率、すなわち、塗料粒子または塗料小滴が所望の表面上に残るパーセンテージがより高い、特に曲面上の塗料がより均一、および廃棄物であるとともに環境上有害であり得るオーバースプレーがより少ない、などである。従って、例えば、静電気支援塗膜は、車体(自動車、トラック、鉄道車両、機関車、スノーモービルなどを含む)および器具キャビネットを塗膜するために用いられる。例えば、(非特許文献1)を参照のこと。この参考文献は本明細書に参照により援用する。
【0004】
しかし、このタイプの塗膜プロセスを用いるための1つの要件は、塗膜されるべき基材が、ある程度まで導電性であることである。通常は、熱可塑性樹脂および熱可塑性樹脂を含む合成樹脂は十分に導電性ではなく、従って単純にはこのプロセスを用いることができない。この問題の1つの解決策は導電性プライマにより合成樹脂を塗膜することであるが、これは、もう1つの工程および追加のコストを加える。もう1つの方法は、導電性充填剤、例えば、(恐らく最も一般的には)カーボンブラック、グラファイトフレークおよびカーボンナノチューブなどの多くの異なる形態を取ったグラファイト(炭素)を添加することにより合成基剤樹脂組成物を(十分な)導電性にすることである。しかし、こうした多くの導電性充填剤は、それほどコストがかからないものがある一方で、組成物の他の多くの特性、例えば、塗膜される部品の靱性および/または最終的な外観に悪影響を及ぼす。従って、こうした充填剤の使用を最小限に抑えることが重要である。
【0005】
「静電塗装のための目標導電率の公表された文献コンデンサスは、約105〜約106S/cmの値であると思われる」(非特許文献2)。これは典型的な金属より遙かに導電性でない一方で、合成樹脂においてこのタイプの導電率を達成するためにかなりの量の導電性充填剤をしばしば必要とする。従って必要とされる導電性充填剤の量を減らす方法を見出し、および/または有用であるが、樹脂組成物の他の特性にそれほど有害でない他の導電性充填剤を見出すことが望ましいであろう。
【0006】
【非特許文献1】S.J.バビネック(S.J.Babinec)ら、R.A.リンツ(R.A.Ryntz)ら編、「ポリマーおよびプラスチックの塗料(Coating of Polymers and Plastics)」、マーセル・デッカー(Marcel Dekker,Inc.)、New York、2003年、34〜44頁
【非特許文献2】S.J.バビネック(S.J.Babinec)ら、R.A.リンツ(R.A.Ryntz)ら編、「ポリマーおよびプラスチックの塗料(Coating of Polymers and Plastics)」、マーセル・デッカー(Marcel Dekker,Inc.)、New York、2003年、41頁
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、合成樹脂組成物の表面を塗料材料で塗膜することを含む方法であって、前記塗膜方法が静電気で支援され、前記組成物が約5×107オーム/sq以上の表面抵抗および約5kV未満の散逸電圧値(a dissipation voltage value)を有することを改良点とする方法に関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本明細書では特定の用語を用いており、こうした用語を以下で定義する。
「合成樹脂」は、人によって製造された[熱硬化性樹脂の場合、架橋(硬化)の前および/または後の]高分子材料を意味する。有用な材料には、熱可塑性樹脂および熱硬化性樹脂が挙げられる。組成物は天然樹脂を含有してもよいが、少なくとも1種の合成樹脂を含有しなければならない。合計組成物の好ましくは少なくとも40重量%、より好ましくは50重量%は合成樹脂である(2種以上の合成樹脂が存在する場合、それは計算において用いられる樹脂の合計である)。
【0009】
「表面抵抗」(オーム/平方(sq))は、5000ボルトの印加電圧を用いてASTM方法D257によって測定される。表面抵抗は、好ましくは約1.0×108オーム/sq以上、より好ましくは約5.0×108オーム/sq以上、非常に好ましくは約1.0×109オーム/sq以上である。
【0010】
「散逸電圧値」(kV(キロボルト))は、試験方法Aにおいて後述されるように測定される。散逸電圧値は約5kV以下、好ましくは約3kV以下である。
【0011】
塗装されるべき合成樹脂組成物は、用いられる特定の種類の樹脂のために通常用いられる方法によって調製し、造形してもよい。例えば、熱可塑性樹脂は、一軸スクリュー押出機および二軸スクリュー押出機ならびにニーダなどの典型的な溶融混合タイプの装置内で組成物を構成する種々の成分と溶融混合してもよい。表面抵抗率を減らす多少の成分を必要とするので(有用な材料の種類に関しては以下を参照のこと)、これも従来の方式で添加される。例えば、カーボンブラックを二軸スクリュー押出機の背部にフィードしてもよく、またはそれをサイドフィーダに添加してもよい。特にどのように表面抵抗が減るにしても、成分を効率的に用いるために、すなわち、所望の表面抵抗率を得て可能な限りその成分を使わないために成分の良好な分散を得ることが通常は重要である。
【0012】
熱硬化性樹脂に関して、樹脂を架橋する前に種々の成分を樹脂に混合してもよい。これは、典型的には、樹脂を溶融(樹脂が周囲温度で既に液体でないと仮定して)し、種々の成分を添加し、通常は比較的(熱可塑性樹脂と比較して)低粘度の液体に種々の成分を分散させることにより行ってもよい。効果的なミキサーまたは分散をこの目的のために用いてもよい。
【0013】
塗料が樹脂表面に接着できるかぎり、ほぼ全ての合成樹脂を用いることができる。有用な熱可塑性樹脂には、ポリオレフィン(特にポリエチレンおよびそのコポリマー、ポリプロピレンおよびそのコポリマーならびにポリスチレン)、ポリ(メタ)アクリレート[特にポリ(メチルメタクリレート)]、ポリカーボネート、フッ素化ポリマー、ポリエステル[特にポリ(エチレンテレフタレート)、ポリ(1,3−プロピレン)テレフタレート)、ポリ(1,4−ブチレンテレフタレート)、ポリ(1,6−シクロヘキシレンジメタノールテレフタレート)、およびポリ(エチレン1,6−ナフタレート)]およびこれらのすべてのコポリマー]、ポリアミド(特にナイロン6,6、ナイロン6、およびポリ(1,4−フェニレンテレフタルアミド)およびこれらのいずれかのコポリマー]、サーモトロピック液晶ポリマー、ポリスルホン、ポリ(オキシメチレン)ホモポリマーおよびコポリマー、ポリスルフィド、ポリケトン(エーテル連結基を含むポリケトンを含む)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)コポリマー、塩素化ポリマー[特にポリ(塩化ビニル)およびポリ(塩化ビニリデン)]、または熱可塑性エラストマー、特に熱可塑性ブロックコ(ポリエステル−ポリエーテル)、ブロックコポリオレフィン、熱可塑性ウレタンまたは熱可塑性ゴム弾性ポリマーブレンドが挙げられる。2つ以上のポリマーのブレンドを用いてもよい。
【0014】
同様に、多くの異なる種類の熱硬化性樹脂を用いてもよい。これらには、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、各種のいわゆるシートモールディングコンパウンド、アミノ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、アルキッド樹脂、アリル樹脂およびフラン樹脂が挙げられる。相溶性熱硬化性樹脂の混合物も用いてよい。
【0015】
これらの合成樹脂はいずれも、充填剤、補強剤、顔料、酸化防止剤、潤滑剤、離型剤、難燃剤、結晶化抑制剤、結晶化促進剤および/または加速剤、可塑剤および強化剤などの(導電率を高める添加剤に加えて)他の従来の成分を含有してもよい。これらは、従来の量で存在してもよい。
【0016】
樹脂組成物の形成後、熱可塑性樹脂は、典型的な溶融成形方法、例えば、射出成形、ブロー成形、回転成形または押出によって部品に成形してもよい。熱成形などの他の一般成形方法も用いてよい。熱硬化性樹脂の場合、典型的には、熱硬化性樹脂を硬化剤と混合し、しばしば加熱金型に添加し、加熱金型内で、熱硬化性樹脂は固体高分子材料に硬化(架橋)する。
【0017】
上述したように、樹脂組成物の導電率が以前考えられていたほどに高い必要はないので、より低い量の導電性添加剤を用いることが可能である。しかし、添加されたときに以前「必要であった」レベルに導電率を高めない幾つかの他の添加剤も現在用いることが可能である。こうした添加剤には、イオン導電性ポリマーが挙げられる。これらの幾つかをカーボンブラックなどのより月並みの導電性添加剤の存在しない状態で、またはこれらの種類の添加剤に加えて、用いることが可能である。
【0018】
イオン伝導性ポリマーはイオンを伝導できるポリマーを意味する。市販されているイオン伝導ポリマーの1種は、「ペレスタット(Pelestat)」(登録商標)6321および6500(日本、京都のサンヨー・ケミカル(Sanyo Chemical Industries,Ltd.(Kyoto,Japan)))、「イルガスタット(Irgastat)」(登録商標)P22(米国ニューヨーク州タリータウンのチバ・スペシャルティ・ケミカルズ(Ciba Specialty Chemicals(Tarrytown,NY10591 U.S.A)))および「ペバックス(Pebax)」(登録商標)MV1074およびMH1657(米国ペンシルバニア州フィラデルフィアのアルケマ社(Arkema,Inc.(Philadelphia,PA19103 U.S.A)))という商品名で入手できるポリ(エーテル−エステル−アミド)(PEEA)である。こうしたポリマーの導電率は、好ましくはポリマーに少なくとも多少可溶性であるアルカリ金属塩などのイオン材料が存在することが必要である。一般的に言うと、ある程度、イオン伝導ポリマー中に存在するイオン材料が多ければ多いほど導電率は高い。こうしたイオン伝導性ポリマーは、例えば、他の熱可塑性プラスチックを「帯電防止性」にするための他の熱可塑性プラスチック中の添加剤として現在使われている。しかし、こうしたイオン伝導性ポリマーは、合成樹脂、特に本明細書に記載された表面(電気)抵抗および散逸電圧値を有する組成物を静電気支援塗装プロセス中で有用であるのに十分な導電性にするためにこうしたプロセスにおいて用いられなかった。
【0019】
イオン伝導性ポリマーは、樹脂組成物を形成させるための従来の手段、例えば、熱可塑性プラスチック組成物のための溶融混合によって合成樹脂、好ましくは熱可塑性合成樹脂に混合してもよい。
【0020】
用いられるイオン伝導性ポリマーの量は、所望の最終表面抵抗、イオン伝導性ポリマーの固有導電率および全体的な組成物中にどんな他の成分が存在するかなどの幾つかの要素により異なる。しかし、イオン伝導性ポリマーが合成である場合、イオン伝導性ポリマーを含む組成物中に存在する合成樹脂の合計の典型的には約5〜約35重量%のイオン伝導性樹脂が用いられる。
【0021】
本方法は、車体および器具などの、静電気で支援される吹付けを用いて通常塗膜される種々の品目を塗膜するために有用である。
【0022】
(試験方法A)
7.5cm×12.5cm×厚さ3mmの長方形サイズに合成樹脂組成物のシートを成形するか、またはより大きなシートを取り出し、このサイズに長方形を切り出す。プラスチックパネルの中心とスチールパネルの中心との間にアルミニウムフォイルを挿入することにより、プラスチックをスチールパネル(10cm×30cm)に電気的に接触させる。その後、プラスチックパネルのより長い縁の両方で両面接着テープ(幅1.5cm)およびマグネットも用いることによりプラスチックプレートをスチールパネルに取り付ける。その後、スチールパネルも接地されるように、このアセンブリを接地されているフレームに垂直に掛ける。
【0023】
その後、約15〜22℃の温度および40〜60%の相対湿度で30秒にわたり1cmの距離から0.9バール(ゲージ)の圧力で−90kVで「帯電した空気」を合成樹脂シートに吹付ける。好ましいスプレーガンは、「ノードソン・シュア・コート(Nordson Sure Coat)」(登録商標)スプレーガン(米国オハイオ州アンハーストのノードソン社(Nordson Corp.(Amherst,OH44001 USA)))である。但し、(適切な条件をもたらすことができる)あらゆる静電気携帯式スプレーガンを用いることが可能である。吹付け中、スプレーガンをプラスチックプレートの表面上で動かす。
【0024】
この吹付け操作を図1に示している。図1は操作の平面図(または下面図である)。1は、合成成形樹脂シート3に向いているノズル8を有する完備したスプレーガンである。帯電した空気粒子は粒子2中に負電荷を有する円によって表されており、粒子は3に向けて8から移動する。3は、両面テープ(通常はマスキングテープ)4によってスチール裏地プレート5に保持されている。3と5の両方に接触しているアルミニウムフォイル7は3と5の間にあり、よって3および5を電気的に接続している。2によって「塗膜」されている3の表面が垂直であるように、5は、通常はマグネット(図示せず)によってフレーム(図示せず)上で保持されている。更に、5は6によって大地に接続されている。換言すると、5は通常はフレームに接地され、フレームも次に接地されている(図示せず)。
【0025】
吹付けを止めてから10秒後、静電場計を用いることにより合成樹脂プレート上の残留電圧を測定する。静電場計の検出器は樹脂プレートの表面から2.5cm離す(静電場計は、吹付けの直後におよび10秒の読み取りのために適所にある必要がある)。換言すると、静電場計は図1の1の位置を取り、検出器は3の表面から2.5cm離れ、プラスチックプレートの中心に位置している。好ましいメータは、「シムコ(SIMCO)」(登録商標)静電場計FMX−002(米国ペンシルバニア州ハットフィールドのシムコ・インダストリアル・スタチック・コントロール(Simco Industrial Static Control(Hatfield,PA19440,USA)))である。
【0026】
10秒後の静電場計の読み取り(kV)のこの絶対値は散逸電圧値である。換言すると、メータの読み取りが正または負であるか否かは問題ではない。散逸電圧は常に正の数である。試験は、この方法の再現性が±0.4kVであることを示している。
【0027】
(表面抵抗率)
表面抵抗率は、5000ボルトの印加電圧を用いるASTM方法D257を用いておよそ室温および相対湿度50%で測定される。
【0028】
(塗装手順)
プラスチックプレートを最初に秤量し、その後、(スチール裏地プレートおよびアルミニウムフォイルを含む)散逸電圧値のために上記の手順を用いてスチールフレームに垂直に取り付けた。150mL/分の塗料流量により−90kVで静電ベル(77mm鋸歯状トヨタカートリッジベル、米国コネチカット州ノーウォークのABB社(ABB Inc.(Norwalk,CT06851,USA))、30,000rpm)を用いてパネルにプライマ表面(#176−2477、本願特許出願人)を吹付けた。ベルとパネルとの間の距離は300mmであった。2つのコートをコート間で15秒のフラッシュタイムにより80秒にわたり被着させた。乾燥フィルム塗り厚は28〜35μmであった。サンプルを7分にわたりフラッシュし、140℃で20分にわたり電気炉内で焼成し、冷却し、そして再秤量した。
【0029】
プレートを(同じ方法によって)垂直に再び掛け、160mL/分の塗料流量により−60kVで静電ベル(65mm Behr Bell、米国ミシガン州プリマスのデュール・インダストリーズ社(Durr Industries,Inc.(Plymouth,MI48170,USA))、42,500rpm)を用いてブラック水性ベースコート(202Black、本願特許出願人)を静電気で吹付けた。ベルとパネルとの間の距離は300mmであった。2つのコートをコート間で70秒のフラッシュタイムにより130秒にわたり被着させた。乾燥フィルム塗り厚は10〜15μmであった。サンプルを90秒にわたりフラッシュし、104℃で4分にわたり電気炉内で焼成した。プレートを再秤量した。
【0030】
プレートを(同じ方法によって)垂直に再び掛け、205mL/分の塗料流量により−85kVで静電ベル(55mm鋸歯状Behr Bell、デュール・インダストリーズ(Durr Industries,Inc.)、42,500rpm)を用いてクリアコート(「キノ・クリアコート(Kino Clearcoat)RC−8139、本願特許出願人)を静電気で吹付けた。ベルとパネルとの間の距離は300mmであった。1つのコートを60秒にわたり被着させた。乾燥フィルム塗り厚は30〜35μmであった。サンプルを7分にわたりフラッシュし、104℃で20分にわたり電気炉内で焼成した。プレートを再秤量した。
【0031】
各塗料(種類)の重量を計算し、表に示す。一般的に言うと、各塗料の重量が大きければ大きいほど、静電気吹付けは効率的であり、オーバースプレーは少ない。より大きい重量は望ましい。
【0032】
実施例において、すべての部は重量部である。
【0033】
実施例において、以下の材料を用いている。
「アラルダイト(Araldite)」(登録商標)ECN1299−米国ニューヨーク州ブリュースターのバンチコ社(Vantico Inc.(Brewster,NY10509,USA))製のエポキシクレゾールノボラック樹脂。
【0034】
「エンゲージ(Engage)」(登録商標)8180−米国ミシガン州ミッドランドのダウ・ケミカル社(Dow Chemical Co.(Midland,MI48674,USA))から入手できるエチレン/1−オクテンコポリマー。
【0035】
「エポン(EPON)」(登録商標)1002F−米国テキサス州ヒューストンのレゾリューション・パフォーマンス・プロダクツ(Resolution Performance Products(Houston,TX77210,USA))製のエポキシ樹脂。
【0036】
FLT300−日本、大阪の石原産業(Ishihara Sangyo Kaisha,Ltd.(Osaka,Japan))から入手できるTiO2ウィスカー。
【0037】
「イルガノックス(Irganox)」(登録商標)1010−米国ニューヨーク州タリータウンのチバ・スペシャルティ・ケミカルズ(Ciba Specialty Chemicals(Tarrytown,NY10591 USA))から入手できる酸化防止剤。
【0038】
「ケッチェンブラック(KetjenBlack)EC−600JD−米国イリノイ州シカゴのアクゾ・ノーベル・ポリマー・ケミカルズ社(Akzo Nobel Polymer Chemicals LLC(Chicago,IL60607,USA))から入手できるカーボンブラック。
【0039】
「ロタデル(Lotader)」(登録商標)AX8900−米国ペンシルバニア州フィラデルフィアのアトフィナ・ケミカルズ社(Atofina Chemicals,Inc.(Philadelphia,PA19103,USA))から入手できるエステルコポリマー。
【0040】
「ロキシオール(Loxiol)」(登録商標)HOB7119−米国オハイオ州シンシナティのコグニス社(Cognis Corp.(Cincinnati,OH45232,USA))から入手できる脂肪酸エステルの混合物(離型剤)。
【0041】
「ペレスタット(Pelestat)」(登録商標)6321および6500−日本、京都のサンヨー・ケミカル(Sanyo Chemical Industries,Ltd.(Kyoto,Japan))から入手できるイオン伝導性ポリマー。
【0042】
「プラストホール(Plasthall)」(登録商標)809−ポリエチレングリコール400ジ−2−エチルヘキサノエート。
【0043】
ポリマーA−中に分散された海泡石2.5重量%を含有するポリ(エチレンテレフタレート)ポリマー。分散方法に関しては、同時係属米国特許出願CL2180_______を参照のこと。
【0044】
ポリマーB−エチレン/n−ブチルアクリレート/グリシジルメタクリレート(66/22/12重量%)コポリマー、メルトインデックス8g/10分。
【0045】
ポリマーC−50モル%の1,6−ジアミノヘキサン、50モル%の2−メチル−1,5−ジアミノペンタンおよびテレフタル酸から製造されたコーポリアミド。
【0046】
ポリマーD−45モル%のナイロン−6,6と、1,6−ジアミノヘキサンおよびテレフタル酸からの55モル%のポリアミドのポリマーブレンド。
【0047】
ポリマーE−無水マレイン酸グラフトEPDMエラストマー。
【0048】
ポリマーF−本願特許出願人製のポリ(1,4−ブチレンテレフタレート)ポリマー。
【0049】
ポリマーG−米国テネシー州キングスポートのイーストマンケミカルカンパニー(Eastman Chemical Company(Kingsport,TN37662,USA))製のポリ(1,6−シクロヘキシレンジメタノールテレフタレート)ポリマー。
【0050】
PPG3563−米国ペンシルバニア州ピッツバーグのPPG インダストリ社(PPG Industy,Inc.(Pittsburgh,PA15272,USA))製のガラス繊維。
【0051】
タルク9102−米国イリノイ州マウントバーノンのバレッツ・ミネラルズ社(Barretts Minerals,Inc.(Mt.Vernon,IN47620,USA))製のタルク鉱物。
【0052】
「ウルトラノックス(Ultranox)」(登録商標)626−米国ウェストバージニア州モーガンタウンのGEスペシャルティー・ケミカルズ社(GE Specialty Chemicals,Inc.(Morgantown,WV26501 USA))から入手できる酸化防止剤、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリトリトールジホスファイト。
【0053】
「バンシル(Vansil)」(登録商標)HR325−米国コネチカット州ノーウォークのR.T.バンデルビルト社(R.T.Vanderbilt Co.(Norwalk,CT06850))製のウォラストナイト。
【実施例】
【0054】
(実施例1〜7および比較例A〜C)
表1で示した組成物を30mm「ウェルナー&フライデラー(Werner & Pfleiderer)」二軸スクリュー押出機内で製造した。ポリマーAおよびB、ならびに「ロキシオール(Loxiol)」(登録商標)、「イルガノックス(Irganox)」(登録商標)および「ウルトラノックス(Ultranox)」(登録商標)を押出機の背部にフィードした一方で、「プラストホール(Plasthall)」(登録商標)および「バンシル(Vansil)」(登録商標)をサイドフィードした。その後、この組成物を「ペレスタット(Pelestat)」(登録商標)とペレットブレンドし、シリンダーを280℃で設定し、型を120℃で設定し、7.6cm×12.7cm×厚さ0.32cmのプレートを成形するニッセイ・ジャパン(Nissei Japan)6オンス射出成形機にフィードした。プレートの表面抵抗率および散逸電圧値を試験し、それらを表1に示す。その後、プレートを静電気で吹付け塗装した。塗料の重量を表1に示す。
【0055】
【表1】

【0056】
(実施例8〜10および比較例D)
表2で示した組成物を30mm「ウェルナー&フライデラー(Werner & Pfleiderer)」二軸スクリュー押出機内で製造した。「ペレスタット(Pelestat)」(登録商標)を除くすべての成分を背部でフィードした。その後、この組成物を「ペレスタット(Pelestat)」(登録商標)とペレットブレンドし、シリンダーを315℃で設定し、型を160℃で設定し、7.6cm×12.7cm×厚さ0.32cmのプレートを成形するニッセイ・ジャパン(Nissei Japan)6オンス射出成形機にフィードした。この場合、型は150℃であった。プレートの表面抵抗率および散逸電圧値を試験し、それらを表2に示す。その後、プレートを静電気で吹付け塗装した。塗料の重量を表2に示す。
【0057】
【表2】

【0058】
(実施例11〜18および比較例E−H)
これらの組成物を30mm「ウェルナー&フライデラー(Werner & Pfleiderer)」二軸スクリュー押出機内で製造した。ポリマーFおよびB、ならびに「イルガノックス(Irganox)」(登録商標)および「ウルトラノックス(Ultranox)」(登録商標)を押出機の背部にフィードした一方で、「ロキシオール(Loxiol)」(登録商標)、「バンシル(Vansil)」(登録商標)、「ケッチェンブラック(KetjenBlack)、「ペレスタット(Pelestat)」(登録商標)および「プラストホール(Plasthall)」(登録商標)をサイドフィードした。この組成物を、シリンダー設定260℃、型温80℃、7.6cm×12.7cm×厚さ0.32cmのプレートを成形するニッセイ・ジャパン(Nissei Japan)6オンス射出成形機にフィードした。実施例17および18に関しては、「ペレスタット(Pelestat)」(登録商標)が押出機にサイドフィードでなく、代わりに押し出された組成物とペレットブレンドし、その後、射出成形機にフィードしたことを除き、手順は同じであった。プレートの表面抵抗率および散逸電圧値を試験した。その後、プレートを静電気で吹付け塗装した。これらの実施例に関するすべてのデータを表3に示す。
【0059】
【表3】

【0060】
(実施例19〜24および比較例I)
組成物を30mm「ウェルナー&フライデラー(Werner & Pfleiderer)」二軸スクリュー押出機内で製造した。ポリマーG、Bおよび「ロタデル(Lotader)」(登録商標)、ならびに「イルガノックス(Irganox)」(登録商標)および「ウルトラノックス(Ultranox)」(登録商標)、タルク、「アラルダイト(Araldite)」(登録商標)、「エポン(EPON)」(登録商標)および「ロキシオール(Loxiol)」(登録商標)を押出機の背部にフィードした一方で、PPG、「バンシル(Vansil)」(登録商標)および「プラストホール(Plasthall)」(登録商標)をサイドフィードした。その後、この組成物を「ペレスタット(Pelestat)」(登録商標)とペレットブレンドし、シリンダー設定290℃、型温120℃、7.6cm×12.7cm×厚さ0.32cmのプレートを成形するニッセイ・ジャパン(Nissei Japan)6オンス射出成形機にフィードした。プレートの表面抵抗率および散逸電圧値を試験した。その後、プレートを静電気で吹付け塗装し、塗料の重量を測定した。すべてのデータを表4に示す。
【0061】
【表4】

【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】散逸電圧値を測定するための試験装置の上面図(または下面図)である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成樹脂組成物の表面を塗料材料で塗膜することを含む方法であって、前記塗膜方法が静電気で支援され、前記組成物が約5×107オーム/sq以上の表面抵抗および約5kV未満の散逸電圧値を有することを改良点とすることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記表面抵抗が約5×108オーム/sq以上であり、前記散逸電圧値が約3kV未満であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記合成樹脂が熱硬化性であることを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記合成樹脂が熱可塑性であることを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
前記熱可塑性樹脂が、ポリオレフィン、ポリ(メタ)アクリレート、ポリカーボネート、フッ素化ポリマー、ポリエステル、ポリアミド、サーモトロピック液晶ポリマー、ポリスルホン、ポリ(オキシメチレン)ホモポリマーまたはポリ(オキシメチレン)コポリマー、ポリスルフィド、ポリケトン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレンコポリマー、塩素化ポリマー、または熱可塑性エラストマーあるいはそれらのブレンドであることを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
導電性充填剤が存在することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記導電性充填剤が炭素であることを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
イオン伝導性樹脂が存在することを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記合成樹脂組成物が車体または器具の一部であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。

【図1】
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【公表番号】特表2009−533218(P2009−533218A)
【公表日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−505455(P2009−505455)
【出願日】平成19年4月10日(2007.4.10)
【国際出願番号】PCT/US2007/008928
【国際公開番号】WO2007/120704
【国際公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】