説明

合成樹脂表面に塗布されるプライマー

【目的】有害な有機溶剤を使用することなく、また、接着または塗装工程のコストを高くすることなく、合成樹脂表面に塗料、インクまたは接着剤を強固に定着させる。
【構成】合成樹脂エマルジョンと酸化還元電位が+150mV以下である還元水との混合物からなり、合成樹脂表面に塗布することにより前記合成樹脂表面の塗料、インクまたは接着剤との濡れ性を高める合成樹脂表面に塗布されるプライマーを用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は合成樹脂表面に塗布されるプライマーに係わり、特に、水性の塗料、インクまたは接着剤を合成樹脂表面に強固に定着させることを可能とするプライマーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、フッ素樹脂塗料等の合成樹脂の表面にインクを定着させることは困難であり、非常に複雑な工程を経て合成樹脂の表面の処理を行っていた。その処理において、合成樹脂表面を活性化するために用いる薬剤には有害物も含まれることがあり、物品の毒性の問題や廃棄物処理上の問題が発生していた。
【0003】
また、オレフィン系シートに接着剤を定着させるためには、表面をコロナ放電により活性化させるか、薬剤処理が必要であり、接着工程のコストアップまたは廃棄物処理上の問題が発生していた。さらに、飲料を入れるペットボトルは直接表面に印刷ができないため、別に印刷したフィルムをシュリンク包装しており、リサイクル時に包装材の取り外しに手間がかかっていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この発明は上記した点に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、有害な有機溶剤を使用することなく、また、接着または塗装工程のコストを高くすることなく、合成樹脂表面に塗料、インクまたは接着剤を強固に定着させることを可能とするプライマー(下塗剤)を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明の合成樹脂表面に塗布されるプライマーは、合成樹脂エマルジョンと酸化還元電位(O.R.P)が+150mV以下である還元水との混合物からなり、合成樹脂表面に塗布することにより前記合成樹脂表面の塗料、インクまたは接着剤との濡れ性を高めるものである。上記酸化還元電位が+150mV以下である還元水は水に交流または直流電圧を印加して電気分解することにより得られる。上記合成樹脂エマルジョンとは固化するまでに至らない重合度の液状合成樹脂と水と微量の界面活性剤とを混合して撹拌することにより得られるエマルジョンである。
【0006】
また、この発明の合成樹脂表面に塗布されるプライマーは、合成樹脂エマルジョンと鉱物を0.1重量%以上含むミネラル水との混合物からなり、合成樹脂表面に塗布することにより前記合成樹脂表面の塗料、インクまたは接着剤との濡れ性を高めるものである。上記ミネラル水はシリカ、活性カルシューム、マグネシューム、カリウム、亜鉛、鉄等の鉱物の水溶液として得ることができる。
【0007】
また、この発明の合成樹脂表面に塗布されるプライマーは、前記各プライマーまたはその混合物を電磁場中を循環させて処理したものである。上記電磁場中の処理は7000Gauss 程度の磁界中を循環させることで達成できる。このように電磁場中で処理することによりプライマーの活性を更に高めることができる。
【発明の効果】
【0008】
この発明のプライマーによれば、接着または塗装工程のコストを高くすることなく、合成樹脂表面に塗料、インクまたは接着剤を強固に定着させることが可能となる。
【0009】
このように合成樹脂表面に塗料を有害物を用いることなく定着させることができるので、自動車のボディーを合成樹脂で容易に製造でき、自動車を軽量化して燃費を改善することができる。
【0010】
また、合成樹脂シート対してインクジェット法によりインクをにじませることなく印字することができ、合成樹脂シートのインクジェット法による印刷を実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下この発明を実施するための最良の形態を実施例に即して説明する。
【実施例1】
【0012】
市販の塗料原料であるアクリルエマルジョン(アクリル・シリコンウレタンの液状重合物(35〜40重量%)と水(65〜60重量%)および微量界面活性剤との混合物エマルジョン)を5重量%加え、酸化還元電位(O.R.P)が+150mV以下である還元水を95重量%加え、これを撹拌混合することにより実施例1のプライマーを得た。
【実施例2】
【0013】
実施例1と同じアクリルエマルジョンを5重量%加え、ミネラル水を95重量%加えこれを撹拌混合することにより実施例2のプライマーを得た。上記ミネラル水はシリカ、活性カルシューム、マグネシューム、カリウム、亜鉛、鉄等の混合物1重量%の水溶液である。
【実施例3】
【0014】
実施例1のプライマーを7000Gauss の磁界中を循環させて実施例3のプライマーを得た。
【実施例4】
【0015】
実施例2のプライマーを7000Gauss の磁界中を循環させて実施例4のプライマーを得た。
【実施例5】
【0016】
実施例1のプライマー50重量%と実施例2のプライマー50重量%との混合物を7000Gauss の磁界中を循環させて実施例5のプライマーを得た。
【0017】
上記各実施例のプライマーの使用例を以下に説明する。使用例1ではポリプロピレン樹脂ボードに上記各実施例のプライマーを塗布して十分に乾燥させた後、市販の水性スプレーペイントを塗布した。この水性スプレーペイントが完全に乾燥した後スクラッチテストを行った。その結果水性スプレーペイントは十分強固にポリプロピレン樹脂ボードに定着していることが判明した。
【0018】
使用例2ではポリエチレン樹脂シートに上記各実施例のプライマーを塗布して十分に乾燥させた後、市販の水性スプレーペイントをスプレーした。この水性スプレーペイントが完全に乾燥した後スクラッチテストを行った。その結果水性スプレーペイントは十分強固にポリエチレン樹脂シートに定着していることが判明した。
【0019】
使用例3ではポリエチレンテレフタレート樹脂のいわゆるペットボトルに上記各実施例のプライマーを塗布して十分に乾燥させた後、市販の水性ペイントを塗布した。この水性ペイントが完全に乾燥した後スクラッチテストを行った。その結果水性ペイントは十分強固にペットボトルに定着していることが判明した。
【0020】
使用例4ではペットボトルに上記各実施例のプライマーを塗布して十分に乾燥させた後、市販の水性マジックインキ(商品名)を塗布した。この水性マジックインキが完全に乾燥した後スクラッチテストを行った。その結果水性マジックインキは十分強固にペットボトルに定着していることが判明した。
【0021】
実施例は以上のように構成されているが発明はこれに限られず、例えば、アクリルエマルジョン以外の合成樹脂エマルジョンを用いてこの発明を実施することも可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成樹脂エマルジョンと酸化還元電位が+150mV以下である還元水との混合物からなり、合成樹脂表面に塗布することにより前記合成樹脂表面の塗料、インクまたは接着剤との濡れ性を高める合成樹脂表面に塗布されるプライマー。
【請求項2】
合成樹脂エマルジョンと鉱物を0.1重量%以上含むミネラル水との混合物からなり、合成樹脂表面に塗布することにより前記合成樹脂表面の塗料、インクまたは接着剤との濡れ性を高める合成樹脂表面に塗布されるプライマー。
【請求項3】
前記プライマーを電磁場中を通して処理した請求項1または2のプライマー。
【請求項4】
請求項1のプライマーと請求項2のプラマーの混合物を電磁場中を循環させて処理したプライマー。

【公開番号】特開2006−169299(P2006−169299A)
【公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−360680(P2004−360680)
【出願日】平成16年12月14日(2004.12.14)
【出願人】(598040020)
【Fターム(参考)】