説明

合成樹脂被覆金属缶体の製造方法及び装置

合成樹脂被覆金属缶体を破胴現象を生じることなく絞りしごき加工を大きい加工量で行うことを可能にする。
両面に熱可塑性樹脂被覆アルミニウム板1から絞り形成されたリドロ工程缶20の側壁部には、パンチ11の押込みに従って順次、第1しごきダイ14と第2しごきダイ15とで、それぞれ元板厚からの板厚減少率が35〜55%、60〜75%の範囲内となる加工量で第1及び第2のしごき加工が行われ、金属缶胴が製造される。熱可塑性樹脂の被膜層が金属胴部の破損(破胴)を防止する方向に作用するので、しごき加工の加工条件の緩和が図られ、板厚減少率が大きいしごき加工を行っても、第1工程缶21、第2工程缶22に破胴現象を生じることなく品質が維持されたしごき加工が可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、金属板に対してパンチやしごきダイを用いて絞り・しごき加工をすることによって合成樹脂被覆金属缶体を製造する方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、缶本体と缶底部とが絞り・しごき加工によって一体成形され、その後、蓋体を缶本体の開口部周囲に巻き締める等によって形成されたアルミニウム2ピース缶又はスチール2ピース缶のような絞りしごき金属缶が広く流通している。これら2ピース缶のための金属缶体は、アルミニウムやスチール製の平板から打ち抜いた円板を深絞り加工して底部が側壁部と一体になったカップ体を形成し、その後、そのカップ体の側壁部にしごき加工を施すことによって製造されている。側壁部にしごき加工を施すことで、カップ体の側壁部の厚みが減少され、金属素材の使用量を少なくした絞りしごき金属缶が形成される。
【0003】
このしごき加工は、冷却・潤滑剤すなわちクーラントを用いたウェット状態で絞りしごき加工が行われる。ウェット成形では成形した缶の洗浄設備が必要であり排水処理などの環境対策設備も必要となる。
【0004】
このような絞りしごき金属缶において、缶内面の耐食性確保のための内面塗装が不要で、しかも内容物の風味の維持(フレーバー性)に優れている等の理由で、金属板の両面にポリエステルフィルム等の合成樹脂フィルムをラミネートした合成樹脂被覆アルミニウム缶体や合成樹脂被覆スチール缶体(以下、単に「樹脂被覆缶体」という)が提案されている(特許文献1参照)。深絞り・しごき加工は、クーラント、即ち、冷却・潤滑剤を用いることなく、ドライ状態で行われる。この加工は、ドライ成形と称されており、冷却・潤滑剤を用いないことで、製造工程の簡素化や高速化が図られている。また、この加工法は、環境への負荷も軽減されるので、環境に配慮した製造方法と言える。更に、缶胴表面への印刷をする場合、印刷インキが滑剤の膜で弾かれることもなく、適切な印刷が可能である。樹脂被覆缶体は、例えばアルミニウム板の両面に熱可塑性ポリエステル系樹脂を被覆してなる樹脂被覆アルミニウム板を、その表面に滑剤を塗布した後、ドライ状態で絞り加工してカップ体を形成し、そうしたカップ体をパンチとリング状しごきダイとの協働でドライ状態で且つ1ストロークでしごき加工を行うことにより、シームレス缶体として高速で連続製缶される。連続製缶開始前にはパンチ及びリングダイ内に加温用液体を循環させ、連続製缶開始直前又は直後にパンチ及びリングダイ内に冷却用液体を流すことによって、パンチの表面温度を適宜の温度に保ち、また同時に深絞り・しごき加工の開始に伴う缶の過度の温度上昇を防止して、連続したしごき加工を可能にすることも提案されている。
【特許文献1】特開2002−178048号公報(段落[0028]〜[0035]、図3〜図6)
【0005】
従来の、アルミニウム等の金属板を深絞り・しごき加工することによる金属缶の製造工程の一例、及び製造装置の概要の一例が、図3に示されている。図3に示す深絞り・しごき加工装置50は、円筒状のパンチ11、パンチ11が嵌入可能な円筒状のブランクホルダー12、ブランクホルダー12の加工方向先側に近接して配設された環状のリドロダイ13、該リドロダイ13の先側に順次間隔を置いて配置された第1しごきダイ54、第2しごきダイ55及び第3しごきダイ56、並びに第3しごきダイ56の先側に配置されているストリッパー17を備えている。これらパンチ11、ブランクホルダー12、各しごきダイ54〜56及びストリッパー17は、それぞれが同じ中心軸線上に並べて配設されている。金属板は通常、図示されていないカッピングプレス(カッパー)によって、浅いカップ状のカップCに成形されて、深絞り・しごき加工装置50に供給される。パンチ11は、リドロダイ13を貫通して押し込まれるときに、ブランクホルダー12とリドロダイ13とによって環状に挟まれて保持されていたカップCを絞り成形によってリドロ工程缶60に成形する。パンチ11の更なる押込みによって、リドロ工程缶60の側壁部には第1しごきダイ54〜第3しごきダイ56によって順次に第1〜第3のしごき加工が施され、それぞれ第1工程缶61〜第3工程缶63に成形される。リドロダイ13と第1しごきダイ54との間の距離Laはリドロ工程缶60の長さ(側壁部の長さ)を考慮して設定されており、第1しごきダイ54と第2しごきダイ55との間の距離Lb、及び第2しごきダイ55と第3しごきダイ56との間の距離Lcは、それぞれ、第1しごき加工で得られる第1工程缶61の長さ、又は第2しごき加工で得られる第2工程缶62の長さ(共に側壁部の長さ)を考慮して設定される。
【0006】
ところで、アルミニウムは、スチールと比較して強度やr値、限界絞り比等の機械的特性が劣る金属素材であるため、大きな変形を伴う絞り・しごき加工の際には、胴部が破断する破胴現象が生し易い。したがって、アルミニウム板の絞り・しごき加工においては加工量や加工速度を制限せざるを得ず、アルミニウム2ピース缶の製造において、その速度及び素材のゲージダウン等にも制約が生じている。
【0007】
カップCの一部断面を拡大して示すように、樹脂被覆のないアルミニウム板製カップCを用いて側壁部の元板厚からの板厚減少率が60〜80%となる絞りしごき缶を成形する場合、側壁部の破断率を10ppm以下に抑えるには、1個のしごきダイによる1回のしごき加工当たりのしごき率を40%以下に抑えなければならない。したがって、上記のようにリドロ工程缶(カップ体)60をパンチストローク方向に順に並べたしごきダイに順次通すことによって多段にしごき加工を行うことが必要となり、パンチストローク長さが長くなるという傾向がある。例えば、500ml缶の場合、3個のしごきダイを295.5mm以上の配置長さに保つことが必要であり、その結果、パンチストローク長さは668mm程度に長くなっている。ストロークが長くなると、製缶マシン可動部に生じる慣性力や衝撃力が増大するために機械部品の破損が生じ易くなるので、製缶スピードを速くすることが難しい。また、長いストロークはパンチの振れの増大の原因になるため、偏肉等を含めて製缶精度が低下することに繋がり、缶の品質にも悪影響が及ぶ。上記問題点を解決するため、ストローク長さを短くし、複数のしごきダイで同時にしごき加工を行うことも考えられるが、缶の側壁部の破断が起こるので、この方法は採用困難である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
両面に被膜層が存在している樹脂被覆金属板、或いはそれから成形された内外両側に被膜層が存在している樹脂被覆カップ体においては、金属板のしごき加工の際に、樹脂被膜層が金属板の成形性向上に寄与するという現象が生じていることが見い出された。そこで、樹脂被覆缶体の製造において、樹脂被膜層の成形性への貢献を考慮して、金属板のしごき加工の加工条件の緩和を図る点で解決すべき課題がある。
【0009】
この発明の目的は、樹脂被覆缶体の製造において、樹脂被膜層の存在を利用して金属板のしごき加工の加工条件の緩和を図りつつ、破胴現象を生じることなくしごき加工を大きい加工量で行うことを可能にし、しごき加工エネルギーの削減及びしごき加工時間の短縮等を実現し、高速製缶を可能にし、更にパンチのストロークを短縮し、絞りしごき加工装置の小型化を図ることができる合成樹脂被覆金属缶体の製造方法及び装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するため、この発明による合成樹脂被覆金属缶体の製造方法は、両面に熱可塑性樹脂を被覆した金属板をカップ体に絞り成形した後、パンチと複数のしごきダイを用いて前記カップ体の側壁部にしごき加工を施すことにより金属缶胴を製造する方法において、前記しごき加工は、前記カップ体の前記側壁部に対して第1しごきダイによって元板厚からの板厚減少率が35〜55%の範囲内となる加工量で行われる第1しごき加工と、前記第1しごき加工が行われた前記側壁部に対して第2しごきダイによって前記元板厚からの板厚減少率が60〜75%の範囲内となる加工量で行われる第2しごき加工とから成ることを特徴としている。ここで絞り成形には、再絞り成形を含んでもよい。また、元板厚は、金属板をカップ体に絞り成形する前の平板での厚さで、熱可塑性樹脂被覆を含む厚さである。
【0011】
この合成樹脂被覆金属缶体の製造方法によれば、両面に熱可塑性樹脂を被覆した金属板から形成されたカップ体にしごき加工を施して合成樹脂被覆金属缶体が製造されるが、内外両面に熱可塑性樹脂が被覆されているカップ体の側壁部に対してパンチと協働して施される第1しごき加工では、第1しごきダイによって元板厚からの板厚減少率が35〜55%の範囲内となる加工量でしごき加工が行われる。その後、第1しごき加工が行われた側壁部に対して第2しごきダイによって元板厚からの板厚減少率が60〜75%の範囲内となる加工量で第2しごき加工が行われる。熱可塑性樹脂の被膜層が金属胴部であるカップ体の側壁部の破損(破胴)を防止する方向に作用するので、しごき加工の加工条件の緩和が図られ、板厚減少率が大きい加工量でしごき加工を行っても、カップ体に破胴現象を生じることなく品質が維持されたしごき加工が可能となる。
【0012】
また、この発明による合成樹脂被覆金属缶体の製造装置は、両面に熱可塑性樹脂を被覆した金属板を絞り成形して得られたカップ体の側壁部をパンチと複数のしごきダイを用いてしごき加工を施すことにより金属缶胴を製造する装置において、前記複数のしごきダイは、元板厚からの板厚減少率が35〜55%の範囲内となる加工量で第1しごき加工を行う第1しごきダイと、前記第1しごきダイから前記第1しごき加工で得られる金属缶胴の長さ又はその長さを僅かに超える距離を置いて配置され且つ前記第1しごき加工が行われた前記側壁部に対して前記元板厚からの板厚減少率が60〜75%の範囲内となる加工量で第2しごき加工を行う第2しごきダイとから成ることを特徴としている。なお、ここでの金属缶胴の長さは、缶底と側壁部をつなぐテーパ部分(チャイム部)を含まない缶胴の側壁部の長さを意味する。また、両ダイの距離は、しごき加工を行うダイ・ストレート部位置での両ダイの距離を意味する。
【0013】
この合成樹脂被覆金属缶体の製造装置によれば、両面に熱可塑性樹脂を被覆した金属板から形成されたカップ体にしごき加工を施して合成樹脂被覆金属缶体が製造されるが、内外両面に熱可塑性樹脂が被覆されているカップ体の側壁部に対してパンチと協働して施される第1しごき加工では、第1しごきダイによって元板厚からの板厚減少率が35〜55%の範囲内となる加工量でしごき加工が行われる。第2しごきダイは第1しごきダイから第1しごき加工で得られる金属缶胴の長さを僅かに超える距離を置いて配置されているので、金属缶胴は第1しごきダイを通過した直後に第2しごきダイを通過開始し、第1しごき加工が行われた側壁部に対して第2しごきダイによって元板厚からの板厚減少率が60〜75%の範囲内となる加工量で第2しごき加工が行われる。熱可塑性樹脂の被膜層が金属胴部であるカップ体の側壁部の破損(破胴)を防止する方向に作用するので、しごき加工の加工条件の緩和が図られ、板厚減少率が大きい加工量でしごき加工を行っても、カップ体に破胴現象を生じることなく品質が維持されたしごき加工が可能となる。前述のようにしごきダイは、第1及び第2のしごきダイからなり、両ダイは第1しごき加工で得られる金属缶胴の長さを僅かに超える距離を置いて配置させる。よって、両ダイがある缶胴について缶の先端と後方とを同時にしごき加工をするということがなく、ダイとパンチの芯ズレによる偏肉や破胴の虞が少ない。また、両しごきダイ間の距離も最小限に短縮化され、装置の配置に要するスペース、加工速度等において改善が図られる。
【0014】
この合成樹脂被覆金属缶体の製造方法及び装置において、前記第1しごきダイ及び前記第2しごきダイは、それぞれ単独しごきダイとすることができる。第1しごきダイは、しごき加工を単独で行うしごきダイ、即ち、1つのリング状のしごきダイで構成し、第1しごきダイは、元板厚からの板厚減少率が35〜55%の範囲内となる加工量で第1しごき加工を行う。第2しごきダイによる加工量は第1しごきダイによる加工量よりも少ないので、第1しごきダイを単独しごきダイとするときには、第2しごきダイも単独しごきダイとして構成することができる。
【0015】
この合成樹脂被覆金属缶体の製造方法及び装置において、前記第1しごきダイ及び前記第2しごきダイのうち、少なくとも前記第1しごきダイは、しごき加工方向に並設された先行側しごきダイと後続側しごきダイとから成る複合しごきダイとすることができる。第1しごきダイが行う加工量は、元板厚からの板厚減少率が35〜55%であって、第2しごきダイによる加工量と比較して大きな加工量であるので、第1しごきダイを先行側しごきダイと後続側しごきダイとがしごき加工方向に並んで配置した複合しごきダイとすることで、しごき加工を各しごきダイに分担させることが好ましい。複合しごきダイの先行側しごきダイと後続側しごきダイは隣接配置することが、偏肉やパンチのぶれ防止やパンチストロークの短縮化に最も有効であるが、それらのダイの間隔を、それらのダイで同時にしごき加工が行われる範囲にすることもできる。その場合、先行側しごきダイと後続側しごきダイの間隔は、先行側しごきダイのみで加工した場合の缶胴側壁長さの半分以下の間隔であることが、偏肉やパンチのぶれ防止の面から好ましい。第2しごきダイは、第1しごきダイと同様に複合しごきダイとすることもできるが、その加工量は第1しごきダイによる加工量よりも少ないので、単独しごきダイとすることができる。
【0016】
この合成樹脂被覆金属缶体の製造方法及び装置において、前記先行側しごきダイによる前記側壁部のしごき加工を前記元板厚からの板厚減少率が18〜40%の範囲内となる加工量で行い、前記後続側しごきダイによる前記側壁部のしごき加工を前記元板厚からの板厚減少率が35〜55%の範囲内となる加工量で行うことができる。複合しごきダイとして構成されている第1しごきダイにおいては、厚肉が減少する前のより肉厚の金属板及び樹脂被膜層については加工量を大きくできるので、先行側しごきダイによる加工量を後続側しごきダイによる加工量の半分以上とするのが好ましい。
【0017】
この合成樹脂被覆金属缶体の製造方法及び装置において、前記金属板は、アルミニウム板とすることができる。表面に合成樹脂が被覆された金属板をしごき加工するときの、その金属層に対する合成樹脂被覆層の成形性向上作用は、スチールと比較して機械的特性が劣るアルミニウムに対して特に効果的である。
【0018】
この合成樹脂被覆金属缶体の製造方法及び装置において、前記熱可塑性樹脂は、1.45〜11.8GPaの引張り弾性率を有することが好ましい。熱可塑性樹脂の引張り弾性率を上記の範囲に定めることにより、しごき加工を受ける金属層に対する合成樹脂被覆層の補強作用を十分に発揮させることができる。熱可塑性樹脂の引張り弾性率が範囲外であると、破胴発生率が高くなり、熱可塑性樹脂層に一部剥離や缶内面における金属露出が観察される。
【0019】
この合成樹脂被覆金属缶体の製造方法及び装置において、前記熱可塑性樹脂は、ポリエステル樹脂とすることができる。熱可塑性樹脂は、上記の特性や補強作用を考慮すると、ポリエステル樹脂が好ましいが、その他の樹脂として、ポリプロピレンやナイロンとすることもできる。
【0020】
この合成樹脂被覆金属缶体の製造方法及び装置において、前記熱可塑性樹脂は、前記金属板に対して、前記金属缶胴の内面側となる側で5〜50μm厚で、且つ前記金属缶胴の外面側となる側で3〜50μm厚で被覆されていることが好ましい。熱可塑性樹脂の膜厚が上記の範囲外である場合には、熱可塑性樹脂に金属面からの一部又は大きな剥離が観察される。
【発明の効果】
【0021】
この発明による合成樹脂被覆金属缶体の製造方法及び装置は、上記のように構成されているので、内外両面に熱可塑性樹脂が被覆されているカップ体の側壁部に対してパンチと協働して施される第1しごき加工では、第1しごきダイによって元板厚からの板厚減少率が35〜55%の範囲内となる加工量で、その後、第1しごき加工が行われた側壁部に対して第2しごきダイによる第2しごき加工では、元板厚からの板厚減少率が60〜75%の範囲内となる加工量で行われる。熱可塑性樹脂の被膜層が金属胴部であるカップ体の側壁部の破損(破胴)を防止する方向に作用するので、板厚減少率が大きい加工量でしごき加工を行っても、カップ体に破胴現象が発生するのを回避することができ良品質を維持するしごき加工が可能であり、良品質が維持された脂被覆金属缶体を得ることができる。したがって、しごき加工に対する加工制限が緩和されると共に、しごき加工の段数が減少するので、加工エネルギーの削減、加工時間の短縮等が実現され、高速製缶を可能にすることができる。更に、製造装置においては、しごき加工の段数が減少することに対応して、しごき加工用のパンチのストロークを短縮することができるので、絞りしごき加工装置の小型化、省スペースの効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】この発明による合成樹脂被覆金属缶体の製造方法によって合成樹脂被覆金属缶体を製造する工程の一例、及びこの発明による合成樹脂被覆金属缶体の製造装置の一例を示す概略図である。
【図2】この合成樹脂被覆金属缶体の製造方法及び装置の別の実施の態様を示す図である。
【図3】従来の、アルミニウム板等の金属板を深絞り・しごき加工することによる金属缶の製造工程及び製造装置の一例の概要を示す図である。
【符号の説明】
【0023】
1 樹脂被覆アルミニウム板 2 アルミニウム板
3 アルミニウム板2の内面 4 アルミニウム板2の外面
5,6 熱可塑性樹脂被膜
10 合成樹脂被覆金属缶体の製造装置 11 パンチ
12 ブランクホルダー 13 リドロダイ
14,34 第1しごきダイ
14a 先行側しごきダイ 14b 後続側しごきダイ
15,35 第2しごきダイ 17 ストリッパー
20 リドロ工程缶 21 第1工程缶
22 第2工程缶
C,C’ カップ
L0 リドロ工程缶20の長さ L1 第1工程缶21の長さ
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、添付した図面に基づいて、この発明による合成樹脂被覆金属缶体の製造方法及び装置の実施の形態を説明する。図1はこの発明による合成樹脂被覆金属缶体の製造方法によって合成樹脂被覆金属缶体を製造する工程の一例、及びこの発明による合成樹脂被覆金属缶体の製造装置の一例を示す概略図である。図1に示す実施の態様では、缶底と一体に形成された缶本体及び蓋体から成る所謂2ピース缶の缶本体を製造する工程の一部(しごき加工工程)が示されている。
【0025】
図1に示す合成樹脂被覆金属缶体の製造装置において、絞り・しごき加工を受ける金属板は、カップC’の一部断面を拡大して示すように、アルミニウム板2と、その両面3,4に被膜処理が施された熱可塑性樹脂被膜5,6とから成る平らな樹脂被覆アルミニウム板1である。樹脂被覆アルミニウム板1は、通常、図示しないカッピングプレスで打ち抜いた浅いカップ形状のカップC’で絞り・しごき加工装置に供給される。熱可塑性樹脂被膜5,6は、後述する成形性向上作用を考慮するとポリエステル樹脂とすることが好ましいが、各条件を満たすその他の熱可塑性樹脂として、ポリエステル樹脂、ポリエステルエラストマー、ポリプロピレン、ナイロン等が挙げられる。引っ張り弾性率が1.45〜11.8GPaである熱可塑性有機樹脂は、アルミニウム板2に対して金属缶胴の内面3となる側で、5〜50μm厚の被膜5として施されており、金属缶胴の外面4となる側で、3〜50μm厚の被膜6として施されている。アルミニウム板1と合成樹脂被膜5,6との組み合わせる際に、被膜厚さと引張り弾性率を上記の範囲に定め、アルミニウム板との密着力を200g/15mm幅以上となるように設けるときには、金属板材料をしごき加工するときの合成樹脂被膜層としての成形性向上作用は、機械的特性が比較的に劣るアルミニウムに対して特に効果的であることが判明している。熱可塑性樹脂の引張り弾性率やアルミニウム板との密着力が範囲外であると、破胴発生率が高くなり、熱可塑性樹脂層に一部剥離や缶内面における金属露出が観察される。
【0026】
図1に示すように、両面に熱可塑性樹脂被膜5,6を有する樹脂被覆アルミニウム板を図示しないプレスで絞り成形したカップC’は、先ず、合成樹脂被覆金属缶体の製造装置(以下、単に「製造装置」と略す)10によって絞り加工を施すことにより、リドロ缶体20に形成される。その後、製造装置10は、後述するパンチ11と複数のしごきダイ14,15を用いてリドロ缶体20の側壁部にしごき加工を施すことにより、1ストロークで且つドライ状態で、合成樹脂被覆金属缶胴を製造する。図1においては、図3の場合と同様に、各工程缶20〜22をその中心軸線より上半分のみを示す。
【0027】
図1に示す製造装置10は、図3に示した従来の製造装置と同様に、それぞれが中心軸線を同じにして並べて配設されている円筒状のパンチ11、パンチ11が嵌入可能な円筒状のブランクホルダー12、ブランクホルダー12に加工方向先方側に近接して配設された環状のリドロダイ13、リドロダイ13の加工方向先方側に向かって間隔を置いて順次配置された第1しごきダイ14、第2しごきダイ15及びストリッパー17を備えている。パンチ11は、ブランクホルダー12及びリドロダイ13を貫通して前進するときに、ブランクホルダー12とリドロダイ13とによって環状に挟まれて保持された樹脂被覆アルミニウム板1(カップC’)を(再)絞り成形することで、リドロ工程缶20に成形する。リドロ工程缶20をパンチ11で押し込んでいくときに、リドロ工程缶20の側壁部は第1しごきダイ14、及び第2しごきダイ15によって順次しごき加工が施され、それぞれ、樹脂被覆とともに金属肉が延ばされて順次、薄肉化と缶長さを長くした第1工程缶21、第2工程缶22(金属缶胴)に成形される。
【0028】
第1しごきダイ14は、リドロダイ13からリドロ工程缶20の長さ(正確には側壁部の長さ)L0、又はそれよりも僅かに長い距離を置いて配置されている。第1しごきダイ14は、パンチ11と協働して、樹脂被覆アルミニウム板1からなるカップC’を元板厚からの板厚減少率が35〜55%の範囲内となる加工量で第1しごき加工を行う。ここでは、板厚減少率は元板厚からの減少率として定義されている。第1しごきダイ14が行う第1加工量は、第2しごきダイによる第2加工量と比較して大きな加工量に設定されている。図1に示す実施の形態においては、第1しごきダイ14は、しごき加工方向、即ち、中心軸線方向に互いに密着して並んで配置された二つのしごきダイ(先行側しごきダイ14a、後続側しごきダイ14b)から成る複合しごきダイとして構成されている。この構成によって、第1しごきダイ14が行うしごき加工を各しごきダイ14a、14bに分担させることができる。このとき、熱可塑性樹脂被膜5,6が破胴、即ち、金属胴部であるカップ体の側壁部の破損を防止する方向に作用する。したがって、板厚減少率が大きい加工量でしごき加工を行っても、リドロ工程缶20に破胴現象を生じることなく品質が維持されたしごき加工が可能となるので、しごき加工の加工条件の緩和が図られる。
【0029】
図1に示す実施の態様において、先行側しごきダイ14aと後続側しごきダイ14bとの加工量の配分については、先行側しごきダイ14aによる側壁部の元板厚からの板厚減少率を18〜40%の範囲内の加工量とし、後続側しごきダイ14bによる側壁部の元板厚からの板厚減少率を35〜55%の範囲内の加工量とすることができる。複合しごきダイとして構成されている第1しごきダイ14においては、厚肉が減少する前のより肉厚の側壁部及び樹脂被膜層については加工量を大きくできるので、先行側しごきダイ14aによる加工量を後続側しごきダイ14bによる加工量の半分以上とするのが好ましい。
【0030】
第2しごきダイ15は、第1しごきダイ14から第1工程缶21の長さ(正確には側壁部の長さ)L1又はそれを僅かに超える距離を置いて配置されている。したがって、第1工程缶21は第1しごきダイ14を通過した直後に先頭部分から第2しごきダイ15を通過開始し、第1しごき加工が行われた側壁部に対して第2しごきダイによって第2しごき加工が行われる。第1しごき加工と第2しごき加工とが同時に行われることはなく、過大な衝撃荷重が缶やパンチ11に作用することはない。第2しごきダイ15は、第1工程缶21の側壁部に対して、パンチ11と協働して元板厚からの板厚減少率が60〜75%の範囲内の加工量で第2しごき加工を行う。第2しごきダイ15については、第1しごきダイ14と同様に複合しごきダイとすることもできるが、第1しごきダイ14による加工量よりも少ない加工量を持ち、また、金属缶体の偏肉等を調整し製品品質を維持するためにも、単独しごきダイとして構成するのが好ましい。
【0031】
第1しごきダイ14における加工量と、第2しごきダイ15による加工量は、それぞれ板厚減少率として35%〜55%、60%〜75%の各範囲内になるように、側壁部をしごき加工できることが、実際にも確認された。即ち、合成樹脂被膜層が存在していることによって、しごき加工に対する加工制限が緩和され、大きい加工量でしごき加工を行っても破胴現象の発生を回避できることが確認された。従来はしごき加工に3個のしごきダイ54,55,56(図3参照)を用いていたが、必要なしごきダイを第1しごきダイ14と第2しごきダイ15の2個とすることができる。その結果、しごき加工段数の減少、加工エネルギーの削減、加工時間の短縮等が実現され、高速製缶が可能となる。更に、製造装置10においては、両しごきダイ14,15間の距離が最小限に短縮化されると共にしごき加工の段数が減少することに対応して加工用のパンチのストロークを短縮することができるので、製造装置10を小型化し、設置面積を省スペース化し、加工速度等においても高速化を図ることができる。
【0032】
図2は、この発明による合成樹脂被覆金属缶体の製造方法及び装置についての別の実施の態様を示す図である。図2に示す実施の態様は、第1しごきダイの構成が異なる以外、格別の構成上の相違がないので、同じ機能を奏する構成要素には同じ符号を付して重複する説明を省略する。図2に示す実施の態様では、第1しごきダイ34及び第2しごきダイ35は、それぞれ、1つのリング状のしごきダイ、即ち、しごき加工を単独で行う単独しごきダイとして構成されている。第1しごきダイ34は、元板厚からの板厚減少率が35〜55%の範囲内となる第1加工量で第1しごき加工を行うことができる。第2しごきダイ35による第2加工量は、元板厚からの板厚減少率が60〜75%の範囲内であって第1加工量よりも少なく、また図1に示す実施の態様と同様、偏肉等を調整し製品品質を維持するため、第2しごきダイ35も単独しごきダイとして構成することが好ましい。
【0033】
表1には、この発明による合成樹脂被覆金属缶体の製造についての実施例1〜16と比較例1〜12とについてしごき加工を行った試験の条件と評価結果とが掲載されている。表1の横方向の項目は、缶サイズ、ツール・成形条件、有機樹脂被膜及び評価結果である。缶サイズは缶径が211(呼び径)、蓋径が204(呼び径)、缶ハイトが122mmの350ml缶、及び167mmの500ml缶である。ツール・成形条件の項目は、パンチストローク、1番目のしごき形態、複合しごきダイによる各板厚減少率、及び最終しごきダイによる板厚減少率の小項目から成る。有機樹脂被膜の項目は、種類、厚み、引張り弾性及び内面樹脂の密着力の小項目から成る。樹脂被覆の金属缶体は、被覆された合成樹脂フィルム被膜が傷ついたり、ピンホール等の被膜損傷が生じ易いので、耐食性、フレーバー性等の品質を確保するには、製造中に被膜損傷が生じないようにする必要がある。そのため、評価結果については、破胴発生率、ロールバック(成形終了後の缶をパンチから抜く際に開口端近傍に発生する座屈)、有機樹脂被覆材の剥離、及び缶内面金属露出の観点で評価がなされている。
【表1】

【0034】
実施例1、実施例2及び実施例8が1番目のしごきを単独しごきで行った例であり、実施例3〜実施例7及び実施例9が1番目のしごきを複合しごきダイによって同時しごきした例である。その他、上記項目について、表1に掲載のとおりであって本発明で定められている範囲内の数値である。各実施例についての評価結果に関しては、破胴発生率はいずれの例もゼロであり、ロールバックの発生は無いか、発生していても微小な状態であり、有機樹脂被覆材の剥離についてはその発生が認められず、缶内面金属露出においてもエナメルレーター測定で0.00mAと観察可能以下となっている。
【0035】
これに対して、比較例1は、1番目のしごきダイが単独(図2に示す実施の態様に相当)で板厚減少率(31%)を本発明で定められている範囲(35%〜55%)よりも小さくした例である。評価結果では缶の開口端部での座屈であるロールバックの発生が認められ、缶内面金属露出も0.12mAとあるように有意の値が認められた。
比較例2は、1番目のしごきダイが単独であるが、最終しごきダイによる板厚減少率(77%)が本発明で定められている範囲よりも大きい場合の例である。評価結果では100%の破胴発生率が認められた。
比較例3及び比較例4は、1番目のしごきダイが単独で且つ板厚減少率を17%、13%とされているように比較例1よりも更に低下させた場合の例である。いずれもロールバックの発生が認められ、破胴発生率についても比較例4で30%と認められた。缶内面金属露出については、板厚減少率を下げるほど高い数値として観察された。
【0036】
比較例5〜比較例8は、有機樹脂被覆を施さない場合の例である。比較例5においては、更に、1番目のしごきダイが単独しごきダイであり且つ板厚減少率(27%)を本発明で定められている範囲(35%〜55%)よりも小さくした例である。評価結果については、破胴発生率が30%であり、且つロールバックの発生も認められた。比較例6においては、1番目のしごきダイが単独しごきダイであるが、有機樹脂被覆を施さない以外は本発明の条件内の例である。評価結果については、破胴発生率が820ppmであると認められた。また、比較例7においては、1番目のしごきダイを複合しごきダイとしているが、有機樹脂被覆を施さない以外は本発明の条件内の例である。評価結果については、破胴発生率が710ppmであると認められた。更に、比較例8は、現行の3つの単独しごきダイを用いているが、有機樹脂被覆を施さない以外は本発明の条件内の例である。この場合、パンチストローク長さを本願の実施例よりも長くする必要がある。評価結果については、破胴発生率が5ppmであると認められた。
【0037】
比較例9以下の比較例にすべてにおいて、1番目のしごきダイは複合しごきダイとされている。比較例9は有機樹脂被膜をエポキシフェノール塗料(以下、E/P塗料と略記する)(内外面に被膜厚み20/20μm)とした場合の例である。この場合の評価結果は、破胴発生率が2.5%であり、ロールバックの発生も認められ、E/P塗料の剥離面積も大きく、缶内面の金属露出も132mAと最大の値が観察された。
比較例10は、複合しごきダイのうち後続側しごきダイ14bによる板厚減少率(60%)を本発明で定められている範囲(35%〜55%)よりも大きくした例であるが、評価結果においては、0.2%の破胴発生率、1.2mAの缶内面金属露出が認められた。 比較例11は、最終しごきダイ(第2しごきダイ)による板厚減少率を本発明で定められている範囲よりも大きくした(77%)例であるが、評価結果においては、破胴発生率が100%発生し、ロールバックの発生も認められた。
比較例12は、複合しごきダイのうち後続側しごきダイ14bによる板厚減少率(27%)を本発明で定められている範囲(35%〜55%)よりも小さくした例であるが、評価結果においては、破胴発生率が10%発生し、ロールバックの発生も認められた。また、2.4mAの缶内面金属露出が認められた。
【0038】
実施例10は、有機樹脂被膜の引張り弾性率(12.0GPa)を本発明で定められている好適範囲(1.45GPa〜11.8GPa)よりも大きくした例である。この場合、破胴発生率が200ppmであり、ロールバックは発生しなかった。
実施例11は、有機樹脂被膜の内面樹脂の密着力(180g/15mm幅)を本発明で定められている好適範囲(200g/15mm幅)よりも小さくした例である。この場合、有機樹脂材料の一部に剥離が発生しており、5mAの缶内面の金属露出も観察された。
実施例12及び実施例13は、有機樹脂被膜がポリエチレンとポリプロピレンとで異なるが、引張り弾性率(それぞれ0.52GPa、0.75GPa)を本発明で定められている好適範囲(1.45GPa〜11.8GPa)より小さくした場合の例である。この場合、破胴発生率がそれぞれ150ppm、100ppmであり、両例とも軽微なロールバックの発生が認められ、缶内面の金属露出はそれぞれ2.5mA、4.4mAが観察された。
更に、実施例14〜実施例16は、有機樹脂被膜の厚さを内面/外面でそれぞれ3/16、16/2、55/55μmで施し、本発明で定められている好適範囲(5〜50μm/3〜50μm)を外した場合の例である。この場合、実施例14及び実施例15では破胴発生率がそれぞれ10ppm、20ppmであり、缶内面の金属露出もそれぞれ5.5mA、3.0mAが観察された。実施例16では、破胴発生率30ppm、軽微なロールバック、及び0.6mAの缶内面金属露出が観察された。
【産業上の利用可能性】
【0039】
この発明による実施の形態では、樹脂被覆したアルミニウム板の絞り・しごき加工による製缶について説明したが、他の金属、例えば、スチール缶の場合でも同様の効果を期待することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
両面に熱可塑性樹脂を被覆した金属板をカップ体に絞り成形した後、パンチと複数のしごきダイを用いて前記カップ体の側壁部にしごき加工を施すことにより金属缶胴を製造する方法において、前記しごき加工は、前記カップ体の前記側壁部に対して第1しごきダイによって元板厚からの板厚減少率が35〜55%の範囲内となる加工量で行われる第1しごき加工と、前記第1しごき加工が行われた前記側壁部に対して第2しごきダイによって前記元板厚からの板厚減少率が60〜75%の範囲内となる加工量で行われる第2しごき加工とから成ることを特徴とする合成樹脂被覆金属缶体の製造方法。
【請求項2】
前記第1しごきダイ及び前記第2しごきダイは、それぞれ単独しごきダイであることから成る請求項1に記載の合成樹脂被覆金属缶体の製造方法。
【請求項3】
前記第1しごきダイ及び前記第2しごきダイのうち、少なくとも前記第1しごきダイは、しごき加工方向に並設された先行側しごきダイと後続側しごきダイとから成る複合しごきダイであることから成る請求項1に記載の合成樹脂被覆金属缶体の製造方法。
【請求項4】
前記先行側しごきダイによる前記側壁部のしごき加工は前記元板厚からの板厚減少率が18〜40%の範囲内となる加工量で行われ、前記後続側しごきダイによる前記側壁部のしごき加工は前記元板厚からの板厚減少率が35〜55%の範囲内となる加工量で行われることから成る請求項3に記載の合成樹脂被覆金属缶体の製造方法。
【請求項5】
前記金属板は、アルミニウム板であることから成る請求項1〜4のいずれか1項に記載の合成樹脂被覆金属缶体の製造方法。
【請求項6】
前記熱可塑性樹脂は、1.45〜11.8GPaの引張り弾性率を有することから成る請求項1〜4のいずれか1項に記載の合成樹脂被覆金属缶体の製造方法。
【請求項7】
前記熱可塑性樹脂は、ポリエステル樹脂であることから成る請求項6に記載の合成樹脂被覆金属缶体の製造方法。
【請求項8】
前記熱可塑性樹脂は、前記金属板に対して、前記金属缶胴の内面側となる側で5〜50μm厚で、且つ前記金属缶胴の外面側となる側で3〜50μm厚で被覆されていることから成る請求項1〜4のいずれか1項に記載の合成樹脂被覆金属缶体の製造方法。
【請求項9】
両面に熱可塑性樹脂を被覆した金属板を絞り成形して得られたカップ体の側壁部をパンチと複数のしごきダイを用いてしごき加工を施すことにより金属缶胴を製造する装置において、前記複数のしごきダイは、元板厚からの板厚減少率が35〜55%の範囲内となる加工量で第1しごき加工を行う第1しごきダイと、前記第1しごきダイから前記第1しごき加工で得られる金属缶胴の長さ又はその長さを僅かに超える距離を置いて配置され且つ前記第1しごき加工が行われた前記側壁部に対して前記元板厚からの板厚減少率が60〜75%の範囲内となる加工量で第2しごき加工を行う第2しごきダイとから成ることを特徴とする合成樹脂被覆金属缶体の製造装置。
【請求項10】
前記第1しごきダイ及び前記第2しごきダイは、それぞれ単独しごきダイであることから成る請求項9に記載の合成樹脂被覆金属缶体の製造装置。
【請求項11】
前記第1しごきダイ及び前記第2しごきダイのうち、少なくとも前記第1しごきダイは、しごき加工方向に並設された先行側しごきダイと後続側しごきダイとから成る複合しごきダイであることから成る請求項9に記載の合成樹脂被覆金属缶体の製造装置。
【請求項12】
前記先行側しごきダイによる前記側壁部のしごき加工は前記元板厚からの板厚減少率が18〜40%の範囲内となる加工量で行われ、前記後続側しごきダイによる前記側壁部のしごき加工は前記元板厚からの板厚減少率が35〜55%の範囲内となる加工量で行われることから成る請求項11に記載の合成樹脂被覆金属缶体の製造装置。
【請求項13】
前記金属板は、アルミニウム板であることから成る請求項9〜12のいずれか1項に記載の合成樹脂被覆金属缶体の製造装置。
【請求項14】
前記熱可塑性樹脂は、1.45〜11.8GPaの引張り弾性率を有することから成る請求項9〜12のいずれか1項に記載の合成樹脂被覆金属缶体の製造装置。
【請求項15】
前記熱可塑性樹脂は、ポリエステル樹脂であることから成る請求項14に記載の合成樹脂被覆金属缶体の製造装置。
【請求項16】
前記熱可塑性樹脂は、前記金属板に対して、前記金属缶胴の内面側となる側で5〜50μm厚で、且つ前記金属缶胴の外面側となる側で3〜50μm厚で被覆されていることから成る請求項9〜12のいずれか1項に記載の合成樹脂被覆金属缶体の製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【国際公開番号】WO2005/058520
【国際公開日】平成17年6月30日(2005.6.30)
【発行日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−516289(P2005−516289)
【国際出願番号】PCT/JP2004/018126
【国際出願日】平成16年12月6日(2004.12.6)
【出願人】(000003768)東洋製罐株式会社 (1,150)