合成樹脂製の滑り軸受
【課題】製造費、耐久性及びシール性を向上できてステアリング操作時の円滑な操舵を長期間にわたって維持できる合成樹脂製の滑り軸受を提供すること。
【解決手段】滑り軸受1は、上部ケース2と、上部ケース2に対して軸心Oの回りで円周方向Rに回転自在となるように上部ケース2に重ね合わされている合成樹脂製の下部ケース3と、上部ケース2及び下部ケース3間の環状空間4に配される合成樹脂製の滑り軸受片5と、円環状の一端部では夫々環状空間4に連通する上部ケース2及び下部ケース3間の径方向Xの内周側の隙間6及び外周側の隙間7の外部に連通する円環状の他端部の夫々を閉鎖する合成樹脂製のシール部材8とを具備している。
【解決手段】滑り軸受1は、上部ケース2と、上部ケース2に対して軸心Oの回りで円周方向Rに回転自在となるように上部ケース2に重ね合わされている合成樹脂製の下部ケース3と、上部ケース2及び下部ケース3間の環状空間4に配される合成樹脂製の滑り軸受片5と、円環状の一端部では夫々環状空間4に連通する上部ケース2及び下部ケース3間の径方向Xの内周側の隙間6及び外周側の隙間7の外部に連通する円環状の他端部の夫々を閉鎖する合成樹脂製のシール部材8とを具備している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スラスト滑り軸受、特に四輪自動車におけるストラット型サスペンション(マクファーソン式)の滑り軸受として組み込まれて好適な合成樹脂製の滑り軸受に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ストラット型サスペンションは、主として四輪自動車の前輪に用いられ、主軸と一体となった外筒の中に油圧式ショックアブソーバを内蔵したストラットアッセンブリにサスペンションコイルばねを組合せたものである。斯かるサスペンションにおいては、ステアリング操作においてストラットアッセンブリがコイルバネと共に回る際に、ストラットアッセンブリのピストンロッドが回る形式と、ピストンロッドが回らない形式のものがあるが、いずれの形式においてもストラットアッセンブリの回動を円滑に許容するべく、車体の取付部材とコイルバネの上部バネ座シートとの間に、転がり玉軸受に代えて、合成樹脂製の滑り軸受が使用される場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−27227号公報
【特許文献2】特開2001−27228号公報
【特許文献3】特開2001−27229号公報
【0004】
合成樹脂製の下部ケースと、この下部ケースに重ねられた合成樹脂製の上部ケースと、上部及び下部ケース間の空間に配された合成樹脂製の滑り軸受手段とを具備した合成樹脂製の滑り軸受に関して、特許文献1においては、上部及び下部ケース間において外周側に配された外側弾性シール手段と、上部及び下部ケース間において内周側に配された内側弾性シール手段とを備えている合成樹脂製の滑り軸受が、特許文献2においては、上部及び下部ケース間の空間において外周側に配された外側シール手段と、上部及び下部ケース間の空間において内周側に配された内側ラビリンスシール手段とを備えている合成樹脂製の滑り軸受が、そして、特許文献3においては、下部ケースの外面を覆って配されていると共に両環状の端部で下部及び上部ケース間の空間の外側及び内側環状開口を閉塞した弾性シール手段を具備した合成樹脂製の滑り軸受が提案されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1の滑り軸受では、上部及び下部ケース間において内外周側の夫々の隙間をシールするために、別体の内側弾性シール手段と外側弾性シール手段とを当該各隙間に配しているために、組立作業に時間を要して清掃費の上昇を招来する虞を有しており、特許文献2の滑り軸受では、上部及び下部ケース間において内側の隙間をシールするために、ラビリンスシール手段を用いているために、弾性シール手段に比較して内周側の隙間からの塵埃、泥水等の侵入に対する防御性が若干劣っており、特許文献3の滑り軸受では、上部及び下部ケース間において内外周側の夫々の隙間をシールする弾性シール手段が下部ケースの外面に配されているために、長期間の使用において下部ケースからの弾性シール手段の脱落等の虞を有しており、いずれの滑り軸受も、製造費、耐久性及びシール性に関して未だ満足できるものではない。
【0006】
本発明は、前記諸点に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、摺動面への塵埃等の侵入を確実に防止し得て、塵埃等の侵入に起因する摺動特性の低下を生じさせることがなく、しかも、組立作業に時間を短縮できると共に振動等によって容易に脱落することがなく、而して、製造費、耐久性及びシール性を向上できてステアリング操作時の円滑な操舵を長期間にわたって維持できる合成樹脂製の滑り軸受を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の合成樹脂製の滑り軸受は、軸方向において円環状下面を有した円環状の上部ケース基部、この上部ケース基部の円環状下面の径方向の内周端部から垂下した内周側円筒垂下部及び上部ケース基部の円環状下面の径方向の外周端部から垂下した外周側円筒垂下部を夫々一体的に有した合成樹脂製の上部ケースと、この上部ケースに対して軸心の回りで回転自在となるように当該上部ケースに重ね合わされていると共に軸方向において円環状上面を有した円環状の下部ケース基部及びこの下部ケース基部の円環状上面から上部ケース基部の円環状下面に向かって突出した円環状突部を夫々一体的に有した合成樹脂製の下部ケースと、軸方向における円環状の上面及び径方向の円筒状の内周面で上部ケース基部の円環状下面及び内周側円筒垂下部の径方向の外周面に摺動自在に接触する一方、軸方向における円環状の下面及び径方向の円筒状の外周面で円環状突部の軸方向における環状上面及び径方向の円筒状内周面に接触するように、上部ケース基部の円環状下面及び下部ケース基部の円環状突部の環状上面間の環状空間並びに内周側円筒垂下部の外周面及び円環状突部の円筒状内周面間の環状空間に配された合成樹脂製の滑り軸受片と、径方向の内周側には、上部ケースの内周側円筒垂下部及び下部ケース基部の円環状突部間の隙間を閉鎖するように、上部ケースの内周側円筒垂下部の径方向の内周面に接触する可撓性の内周側環状シール部を、径方向の外周側には、上部ケースの外周側円筒垂下部及び下部ケース基部の円環状突部間の隙間を閉鎖するように、上部ケースの外周側円筒垂下部の径方向の内周面に接触する可撓性の外周側環状シール部を夫々有すると共に内周側環状シール部及び外周側環状シール部を相互に連結する連結部を有している合成樹脂製のシール部材とを具備しており、内周側環状シール部及び外周側環状シール部は、下部ケース基部の円環状突部の環状上面の複数個の穴部に配された柱状部を有した連結部と共に一体成形されている。
【0008】
本発明の合成樹脂製の滑り軸受によれば、内周側環状シール部と外周側環状シール部とが下部ケース基部の円環状突部の環状上面に形成された複数個の穴部に配された柱状部を有した連結部と共に一体形成されているので、部品点数を少なくでき、製造費の低減を図り得、しかも、脱落の虞をなくし得て耐久性を向上させることができ、加えて、シール部材が、径方向の内周側及び外周側で、上部ケースの内周側円筒垂下部及び下部ケース基部の円環状突部の円筒面部間の隙間を閉鎖する内周側環状シール部及び上部ケースの外周側円筒垂下部及び下部ケース基部の円環状突部の外周円筒面部間の隙間を閉鎖する外周側環状シール部を有しているために、シール性をさらに向上させることができる。
【0009】
本発明の合成樹脂製の滑り軸受の好ましい例では、内周側環状シール部は、下部ケース基部の円環状突部の円筒内面に円周方向に沿って一体的に形成された複数個の突部を覆って当該円環状突部の円筒内面に接合された円環状の内周シール基部と、この内周シール基部の径方向の内周端部に連接されていると共に上部ケースの内周側円筒垂下部の外周面に弾性的に撓み接触する可撓性の内周シール部とを具備しており、この内周シール部は、内周シール基部の厚みよりも小さい厚みを有していると共に内周シール基部の内周端部に連接されている外周端部から斜め下方に伸びている。
【0010】
また、外周側環状シール部は、下部ケース基部の円環状突部の外周縁の円環状平面部に連なる外周面及び該外周面に円周方向に沿って一体的に形成された複数個の突起を覆って当該外周面に接合された円環状の外周シール基部と、外周シール基部に連接されていると共に外周側円筒垂下部の台形断面円筒部の内周面に弾性的に撓み接触する可撓性の外周シール部とを具備していてもよく、この外周シール部は、外周シール基部の厚みよりも小さい厚みを有していると共に外周シール基部の外周端部に連接されている内周端部から斜め下方に伸びているとよい。
【0011】
好ましい例では、複数個の穴部の夫々は、下部ケース基部の円環状突部の環状上面の外周縁部に円周方向に沿って立設された複数個の湾曲状の突起部間の切れ目の夫々に位置しており、結合下部ケース基部の円環状突部は、径方向外方の一端では径方向外方に、径方向内方の他端では穴部に夫々開口している外周側の凹溝と、径方向外方の一端では穴部に、径方向内方の他端では径方向内方に夫々開口している内周側の凹溝とを具備しており、連結部は、径方向内方では柱状部に一体形成されている一方、径方向外方では外周側環状シール部に一体形成されていると共に外周側の凹溝に配された外側連結部と、径方向の外方では柱状部に一体的に形成されている一方、径方向内方では内周側環状シール部に一体的に形成されていると共に内周側の凹溝に配された内側連結部とを具備している。
【0012】
上部ケースは、上部ケース基部の軸方向における円環状上面の径方向中央部に一体的に形成されている円環状の台座部を有していてもよい。
【0013】
一つの好ましい例では、内周側円筒垂下部は、軸方向の上端部で上部ケース基部の円環状下面の径方向の内周端に連接された厚肉円筒部と、軸方向の上端部で厚肉円筒部の軸方向下端に連接されていると共に厚肉円筒部に対して薄肉の薄肉円筒部とを有しており、内周側環状シール部は、薄肉円筒部の径方向の円筒状の外周面に接触しており、外周側円筒垂下部は、軸方向の上端部で上部ケース基部の円環状下面の径方向の外周端部に連接されていると共に軸方向において上部ケース基部の円環状下面から離れるに従って拡径した内周面を有した台形断面円筒部と、台形断面円筒部の軸方向下端に連接されている円筒部を有しており、外周側環状シール部は、台形断面円筒部に接触している。
【0014】
滑り軸受片は、上部ケース基部の円環状下面に摺動自在に接触する円環状の上面及び下部ケース基部の円環状突部の環状上面に接触する円環状の下面を夫々有している円環状のスラスト滑り軸受片部と、一端部でスラスト滑り軸受片部の一端部から軸方向下方に伸びて当該一端部に一体的に形成されていると共に上部ケース基部の内周側円筒垂下部の外周面に摺動自在に接触する円環状の内側面及び下部ケース基部の円環状突部の内周面に接触する円環状の外側面を夫々有した円筒状のラジアル滑り軸受片部と、スラスト滑り軸受片部の外周面から径方向外方に突出していると共に下部ケースに対して滑り軸受片が円周方向に回転しないように円周方向において下部ケース基部の円環状突部の環状上面の外周縁部に当該外周縁部に沿って立設された複数個の湾曲状の突起部間に配された複数個の径方向突板片部とを具備していてもよい。
【0015】
スラスト滑り軸受片部は、その円環状の上面の内周側に設けられた円環状溝と、円環状溝に一端で開口している一方、他端でその外周面で開口していると共にその上面に円周方向に等間隔に離間して設けられた複数個の径方向溝とを有しており、ラジアル滑り軸受片部は、両端で開口して円環状の内側面に円周方向に等間隔に離間して設けられた複数個の軸方向溝を有していても、これにかえて、その円環状の上面に円周方向に沿い、かつ径方向に少なくとも内側列と外側列の二列にわたって形成された複数個の内側凹部及び外側凹部を有しており、ラジアル滑り軸受片部は、両端で開口して円環状の内側面に円周方向に等間隔に離間して設けられた複数個の軸方向溝を有していてもよい。
【0016】
好ましい例では、内周側環状シール部及び外周側環状シール部は、連結部と共に下部ケース基部の円環状突部にインサート成形されている。
【0017】
本発明の合成樹脂製の滑り軸受は、好ましくは、四輪自動車におけるストラット型サスペンションのスラスト滑り軸受として用いられる。
【0018】
上部ケースを形成する合成樹脂は、ポリアセタール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂などの熱可塑性合成樹脂であってもよく、また、下部ケースを形成する合成樹脂は、ガラス繊維、炭素繊維等の補強繊維を含有したポリアセタール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂などの熱可塑性合成樹脂であってもよく、滑り軸受片を形成する合成樹脂は、ポリアセタール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレン樹脂などのポリオレフィン樹脂などの熱可塑性合成樹脂であってもよく、シール部材を形成する合成樹脂としては、ポリウレタン樹脂、ポリエステルエラストマーなどを好ましい例として挙げることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、摺動面への塵埃等の侵入を確実に防止し得て、塵埃等の侵入に起因する摺動特性の低下を生じさせることがなく、しかも、組立作業に時間を短縮できると共に振動等によって容易に脱落することがなく、而して、製造費、耐久性及びシール性を向上できてステアリング操作時の円滑な操舵を長期間にわたって維持できる合成樹脂製の滑り軸受を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は、本発明の実施の形態の好ましい例の図3に示すI−I線矢視断面説明図である。
【図2】図2は、図1に示す例の正面説明図である。
【図3】図3は、図1に示す例の平面説明図である。
【図4】図4は、図1に示す例の一部拡大断面説明図である。
【図5】図5は、図1に示す例の一部拡大断面説明図である。
【図6】図6は、図1に示す例の上部ケースの平面説明図である。
【図7】図7は、図1に示す例の図6に示す上部ケースのVII−VII線矢視断面説明図である。
【図8】図8は、図1に示す例の図7に示す上部ケースの一部拡大断面説明図である。
【図9】図9は、図1に示す例の下部ケースの平面説明図である。
【図10】図10は、図9に示す下部ケースのX−X線矢視断面説明図である。
【図11】図11は、図10に示す下部ケースの一部拡大断面説明図である。
【図12】図12は、図9に示す下部ケースのXII−XII線矢視拡大断面説明図である。
【図13】図13は、図9に示す下部ケースの一部拡大平面説明図である。
【図14】図14は、図9に示す下部ケースの一部拡大平面説明図である。
【図15】図15は、図13に示す下部ケースのXV−XV線矢視断面説明図である。
【図16】図16は、図9に示す下部ケースのXVI−XVI線矢視断面説明図である。
【図17】図17は、図18に示す滑り軸受片のXVII−XVII線矢視断面説明図である。
【図18】図18は、図1に示す例の滑り軸受片の平面説明図である。
【図19】図19は、図1に示す例の滑り軸受片の底面説明図である。
【図20】図20は、図18に示す滑り軸受片のXX−XX線矢視断面説明図である。
【図21】図21は、図18に示す滑り軸受片のXXI−XXI線矢視拡大説明図である。
【図22】図22は、図1に示す例のシール部材の平面図説明図である。
【図23】図23は、図22示すシール部材のXXIII−XXIII線矢視断面説明図である。
【図24】図24は、図1に示す例のシール部材を具備した下部ケースの斜視説明図である。
【図25】図25は、図1に示す例のシール部材を具備した下部ケースの平面説明図である。
【図26】図26は、図25に示すシール部材を具備した下部ケースのXXVI−XXVI線矢視断面説明図である。
【図27】図27は、図25に示すシール部材を具備した下部ケースのXXVII−XXVII線矢視断面説明図である。
【図28】図28は、図26に示すシール部材を具備した下部ケースの一部拡大断面説明図である。
【図29】図29は、図25に示すシール部材を具備した下部ケースの一部拡大平面説明図である。
【図30】図30は、図25に示すシール部材を具備した下部ケースのXXX−XXX線矢視断面説明図である。
【図31】図30は、図1に示す例の滑り軸受片の他の実施の形態の図32に示すXXXI−XXXI線矢視断面説明図である。
【図32】図32は、図30に示す滑り軸受片の平面説明図である。
【図33】図33は、図30に示す滑り軸受片の底面説明図である。
【図34】図34は、図30に示す滑り軸受片の一部拡大断面説明図である。
【図35】図35は、図31に示す滑り軸受片の一部拡大断面説明図である。
【図36】図36は、図32に示す滑り軸受片のXXXVI−XXXVI線矢視断面説明図である。
【図37】図37は、図1に示す滑り軸受をストラット型サスペンションに組込んだ断面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に本発明を、図に示す好ましい実施の形態の例に基づいて更に詳細に説明する。なお、本発明はこれらの例に何等限定されないのである。
【0022】
図1から図5において、四輪自動車におけるストラット型サスペンションに用いるための本例の滑り軸受1は、取付部材を介して車体側に固定される合成樹脂製の上部ケース2と、上部ケース2に対して軸心Oの回りで円周方向Rに回転自在となるように当該上部ケース2に重ね合わされていると共にサスペンションコイルばね用のばね座面が形成されている合成樹脂製の下部ケース3と、上部ケース2及び下部ケース3間の環状空間4に配される合成樹脂製の滑り軸受片5と、円環状の一端部では夫々環状空間4に連通する上部ケース2及び下部ケース3間の径方向Xの内周側の隙間6及び外周側の隙間7の外部に連通する円環状の他端部の夫々を閉鎖する合成樹脂製のシール部材8とを具備している。
【0023】
上部ケース2は、特に図6から図8に詳細に示すように、軸方向Yにおいて円環状下面9を有する円環状の上部ケース基部10と、上部ケース基部10の円環状下面9の径方向Xの内周端部11から垂下した内周側円筒垂下部12と、上部ケース基部10の円環状下面9の径方向Xの外周端部13から垂下した外周側円筒垂下部14と、上部ケース基部10の円環状上面15の径方向Xの中央部に突出して形成された円環状の台座部16とを夫々一体的に有している。
【0024】
内周側円筒垂下部12は、上端部17で上部ケース基部10の円環状下面9の内周端部11に連接された厚肉円筒部18と、内周側段部円環状面19及び外周側段部円環状面20を介して厚肉円筒部18の下端部21に上端部22で連接されていると共に厚肉円筒部18に対して薄肉の薄肉円筒部23とを有している。
【0025】
厚肉円筒部18及び薄肉円筒部23は、ストラット型サスペンションの軸部材が貫通する貫通孔24を規定する円筒状の内周面25及び26を有しており、厚肉円筒部18は、円筒状の外周面27を、薄肉円筒部23は、外周面27よりも小径であって、外周側段部円環状面20から円環状端面28にかけて先細りとなる截頭円錐状の外周面29を夫々有している。
【0026】
円筒状の外周面30を有する外周側円筒垂下部14は、上端部31で上部ケース基部10の円環状下面9の外周端部13に連接されていると共に上部ケース基部10の円環状下面9から離れるに従って拡径した内周面32を有した台形断面円筒部33と、上端部34で台形断面円筒部33の下端部35に連接されている円筒部36とを夫々有しており、円筒部36の円環状端面37は、内周側円筒垂下部12の薄肉円筒部23の円環状端面28よりも軸方向Yにおいて下方に位置している。
【0027】
下部ケース3は、特に図9から図16に詳細に示すように、円環状上面38を有した円環状の下部ケース基部39と、下部ケース基部39の円環状上面38から軸方向Yの上方に向かって突出した円環状突部40と、下部ケース基部39の円環状下面41の内周部42に円環状下面41から軸方向Yの下方に向かって突出した円筒部43と、円筒部43の端部44において円筒部43の円筒状の内周面45から径方向Xの内方に突出した円環状の突出部46と、円筒部43の端部44において軸方向Yの下方に向かって突出した円環状の突出部47と、円環状突部40の環状上面48の外周縁部に円環状平面部49を残して軸方向Yの上方に向かって突出していると共に軸心O回りの円周方向Rで互いに離間して立設された複数個の湾曲状の突起部50とを一体的に有している。
【0028】
円環状突部40は、その環状上面48の円環状平面部49に連接した円筒状の外周面51と、外周面51に連接した円環状の段部面52と、段部面52に連接していると共に円環状上面38を超えて軸方向Yの下方に伸びる外周円筒面53と、外周円筒面53の下端部54よりも径方向Xの外方に位置する環状突出面55とを備えており、環状突出面55は、一方では、環状の上面56及び円弧状凹面57を介して外周円筒面53の下端部54に、他方では、環状のテーパ面55aを介して円環状下面41に夫々連接している。
【0029】
円環状突部40の外周面51には、平面視方形状の突部58が円周方向Rに沿って一体的に複数個形成されており、突部58は、円環状の段部面52から軸方向Yの上方に向かって伸びており、突部58の上端面59は、外周面51を介して環状上面48の円環状平面部49に連接されており、突部58の外面60は、外周円筒面53の外径よりも小径に形成されている。
【0030】
円環状突部40は、その環状上面48に連接した内周面62に、環状段部面63を介して縮径すると共に内周面64aを有する縮径円筒部64を備えており、円環状上面38は、円環状の切欠き段部面65を介して円筒部43の円筒状の内周面45に連接している。
【0031】
円環状突部40の縮径円筒部64の内周面64aには、平面視方形状の突部66が円周方向Rに沿って一体的に複数個形成されており、突部66は、円環状上面38から軸方向Yの上方に向かって伸びており、突部66の上端面67は、縮径円筒部64の内周面64a及び環状段部面63を介して内周面62に連接されている。
【0032】
円環状突部40の環状上面48には、円周方向Rに沿って複数個の穴部68が軸方向Yの下方に向かって形成されており、穴部68は、その円形開口部69から当該穴部68を規定する底面70にかけて先細りとなる截頭円錐状であり、穴部68を規定する内面71は、截頭円錐面を有している。これら穴部68は、下部ケース3の円環状突部40の肉厚とその他の部位の肉厚とを均肉にして成形時のヒケ等の不具合を極力低下させるために設けられたものである。
【0033】
複数個の穴部68のうち、環状上面48の外周縁部に円周方向Rに沿って立設された湾曲状の突起部50間の切れ目72に位置する環状上面48に形成された穴部68aの円形開口部69aの周縁において円環状突部40には、円形開口部69aを囲む深さの浅い円周方向Rにおいて互いに対向する一対の半円形凹部73と、径方向Xの内方に半円形凹部73に連なって内周面62で開口すると共に半円形凹部73と同じ深さの円周方向Rにおいて互いに対向する一対の内側径方向凹部74と、径方向Xの外方に半円形凹部73に連なると共に円環状突部40の閉塞部76により径方向Xの外方で閉塞されており、且つ、半円形凹部73と同じ深さの円周方向Rにおいて互いに対向する一対の外側径方向凹部77と、半円形凹部73、内側径方向凹部74及び外側径方向凹部77の底面78よりも軸方向Yの下方に位置していると共に突部58の中間部を貫通して径方向Xの外方では突部58の外面60で開口する一方、径方向Xの内方では穴部68aに連通した外周側の凹溝79とが形成されており、凹溝79は、底面78よりも軸方向Yの下方に位置している底面80及び円周方向Rにおいて互いに対向する一対の壁面81で規定されており、壁面81の夫々は、内周側端縁82及び外周側端縁83を具備しており、内周側端縁82は、穴部68aを規定する内面71に連接しており、外周側端縁83は、外面60に連接している。
【0034】
穴部68aの円形開口部69aの周縁において円環状突部40には、更に、内側径方向凹部74の底面78よりも軸方向Yの下方に位置していると共に穴部68a側から径方向Xの内方に伸びた切欠いた切欠き凹溝83aと、切欠き凹溝83aを規定する底面86に段部面87を介して連接した底面88で規定されると共に突部66の内面89で開口した開口溝83bと、円周方向Rの側面で開口溝83bに連通すると共に径方向Xの内方で内周面62で開口する一方、径方向Xの外方では傾斜面94で、軸方向Yの下方では環状段部面63で夫々規定されており、しかも、円周方向Rにおいて互いに対向する一対の切り欠き溝84とが形成されており、切欠き凹溝83aは、径方向Xの外方で穴部68aに連通している。
【0035】
切欠き凹溝83a及び開口溝83bを規定する円周方向Rにおいて相対向する円環状突部40の一対の壁面92の夫々は、内周側端縁93及び外周側端縁95を具備しており、内周側端縁93は、切り欠き溝84を規定する傾斜面94に連接しており、外周側端縁95は、穴部68aを規定する内面71に連接しており、傾斜面94は、切り欠き溝84を軸方向Yの上方に向かうに連れて径方向Xの幅を大きくするように、傾斜している。
【0036】
このようにして円環状突部40は、径方向Xの外方の一端では外面60で径方向Xの外方に、径方向Xの内方の他端では穴部68aに、そして、径方向Xの外方の一端から径方向Xの内方の他端に亘って軸方向V上方に夫々開口している凹溝79と、径方向Xの外方の一端では穴部68aに、径方向Xの内方の他端では内面89で径方向Xの内方に、そして、径方向Xの外方から径方向Xの内方の他端に亘って軸方向Yの上方に夫々開口していると共に相互に連通された切欠き凹溝83a及び開口溝83bからなる内周側の凹溝83cとを具備している。
【0037】
環状空間4に配された合成樹脂製の滑り軸受片5は、特に図17から図21に詳細に示すように、上部ケース基部10の円環状下面9に摺動自在に接触する円環状の上面97及び下部ケース基部39の円環状突部40の環状上面48に接触する円環状の下面98を夫々有している円環状のスラスト滑り軸受片部99と、円環状の一端部でスラスト滑り軸受片部99の円環状の一端部に一体的に形成されていると共に上部ケース基部10の内周側円筒垂下部12の厚肉円筒部18の外周面27に摺動自在に接触する円環状の内側面100及び下部ケース基部39の円環状突部40の内周面62に接触する円環状の外側面101を有して軸方向Yの下方に伸びた円筒状のラジアル滑り軸受片部102と、スラスト滑り軸受片部99の外周面103から外方向に突出していると共に下部ケース3に対して滑り軸受片5が円周方向Rに回転しないように円周方向Rにおいて下部ケース基部39の円環状突部40の環状上面48の外周縁部に沿って立設された複数個の湾曲状の突起部50間の切れ目72に配されて隣接する当該突起部50に挟持された複数個の径方向突板片部104とを具備している。
【0038】
スラスト滑り軸受片部99は、円環状の上面97の内周側に設けられた円環状溝105と、円環状溝105に一端で開口している一方、他端で外周面103に開口していると共に上面97に円周方向Rに等間隔に離間して設けられた複数個の径方向溝106とを有しており、ラジアル滑り軸受片部102は、両端で開口して円環状の内側面100に円周方向Rに等間隔に離間して設けられた複数個の軸方向溝107を有しており、これら円環状溝105、径方向溝106及び軸方向溝107は、グリース等の潤滑油剤の溜まり部となっている。
【0039】
シール部材8は、特に図4及び図5並びに図22から図30に詳細に示すように、上部ケース基部10の内周側円筒垂下部12の軸方向端部108である薄肉円筒部23及び下部ケース基部39の内周端部109間の隙間6を閉鎖するように、内周側円筒垂下部12の薄肉円筒部23の截頭円錐状の外周面29に弾性的に撓み接触する可撓性の内周側環状シール部110と、上部ケース基部10の外周側円筒垂下部14の軸方向端部111及び下部ケース基部39の外周端部112間の隙間7を閉鎖するように、外周側円筒垂下部14の台形断面円筒部33の内周面32に弾性的に撓み接触する可撓性の外周側環状シール部113と、内周側に配された内周側環状シール部110及び外周側に配された外周側環状シール部113を相互に連結する複数個の連結部115とを有している。
【0040】
内周側環状シール部110は、下部ケース基部39の円環状上面38から軸方向Xの上方に向かって突出した円環状突部40の縮径円筒部64に一体的に形成された複数個の平面視方形状の突部66の外表面を覆って該縮径円筒部64に一体的に接合された円環状の内周シール基部116と、内周シール基部116に連接されていると共に内周側円筒垂下部12の薄肉円筒部23の截頭円錐状の外周面29に弾性的に接触する円環状の可撓性の内周シール部117とを具備している。
【0041】
内周シール部117は、内周シール基部116の厚みよりも小さい厚みを有していると共に内周シール基部116の内周端部118から径方向Xの内方であって斜め下方に伸びている。
【0042】
外周側環状シール部113は、下部ケース基部39の円環状上面38から軸方向Xの上方に向かって突出した円環状突部40の外周面51、突部58の上端面59、突部58の外面60及び段部面52の内周側を覆って該外周面51に一体的に接合された円環状の外周シール基部119と、外周シール基部119に連接されていると共に外周側円筒垂下部14の台形断面円筒部33の内周面32に弾性的に撓み接触する円環状の外周シール部120を具備している。
【0043】
外周シール部120は、外周シール基部119の厚みよりも小さい厚みを有していると共に外周シール基部119の内周端部121から径方向Xの外方であって斜め下方に伸びている。
【0044】
外周シール部120は、円環状平面部49をも覆うようになっていてもよい。
【0045】
連結部115の夫々は、切れ目72に位置する環状上面48に形成された穴部68aに充填された柱状部115aと、径方向Xの内側では柱状部115aに一体形成されている一方、径方向Xの外方では外側シール基部119に一体形成されていると共に凹溝79に配された外側連結部115bと、径方向Xの外側では柱状部115aに一体的に形成されている一方、径方向Xの内側では内周シール基部116に一体的に形成されていると共に切欠き凹溝83a及び開口溝83bからなる凹溝83cに配された内側連結部115cとを具備しており、柱状部115aは、底面70及び内面71を覆って当該底面70及び内面71に接合しており、外側連結部115bは、凹溝79を規定する円環状突部40の互いに対面する一対に壁面81及び底面80を覆って当該壁面81及び底面80に接合しており、内側連結部115cは、底面86、底面88及び壁面92を覆って当該底面86、底面88及び壁面92に接合している。
【0046】
内周側環状シール部110及び外周側環状シール部113は、柱状部115aを有した連結部115と共に下部ケース基部39の円環状突部40にインサート成形されており、而して、複数の連結部115の夫々は、一端部である内側連結部115cでは内周側環状シール110に、他端部である外側連結部115bでは外周側環状シール部113に夫々インサート成形により一体的に連接されている。
【0047】
以上の滑り軸受1は、上部ケース2に対する下部ケース3の円周方向Rの相対回転を、上部ケース基部10の円環状下面9に対するスラスト滑り軸受片部99の上面97及び厚肉円筒部18の外周面27に対するラジアル滑り軸受片部102の内側面100の夫々の円周方向Rの相対的な摺動でもって許容するようになっている。
【0048】
斯かる滑り軸受1によれば、複数の連結部115の夫々が、一端部では内周側環状シール110に、他端部では外周側環状シール部113に夫々インサート成形により一体的に連接されているため、部品点数を少なくでき、組立性に優れて製造費の低減を図り得、しかも、脱落の虞をなくし得て耐久性を向上させることができる。
【0049】
加えて、滑り軸受1によれば、シール部材8が、上部ケース2の内周側円筒垂下部12及び下部ケース3の内周端部109間の隙間6を閉鎖する内周側環状シール部110と、上部ケース2の外周側円筒垂下部14及び下部ケース3の外周端部112間の隙間7を閉鎖する外周側環状シール部113とを有しているために、シール性を向上させることができる。
【0050】
ところで、図31から図36に示すように、上部ケース基部10の円環状下面9に摺動自在に接触する円環状の上面97及び下部ケース基部39の円環状突部40の環状上面48に接触する円環状の下面98を夫々有している円環状のスラスト滑り軸受片部99と、一端部でスラスト滑り軸受片部99の一端部に一体的に形成されていると共に上部ケース2の厚肉円筒部18の外周面27に摺動自在に接触する円環状の内側面100及び下部ケース基部39の円環状突部40の内周面62に接触する円環状の外側面101を有して軸方向Yの下方に伸びた円筒状のラジアル滑り軸受片部102と、スラスト滑り軸受片部99の外周面103から外方向に突出していると共に下部ケース3に対して滑り軸受片5が円周方向Rに回転しないように円周方向Rにおいて下部ケース基部39の円環状突部40の環状上面48の外周縁部に沿って立設された複数個の湾曲状の突起部50間の切れ目72に配されて隣接する当該突起部50に挟持された複数個の径方向突板片部104とを具備している合成樹脂製の滑り軸受片5において、スラスト滑り軸受片部99は、円環状の上面97に円周方向Rに沿い、かつ径方向に少なくとも内側列と外側列の二列にわたって形成された複数個の内側凹部122及び外側凹部123を有していてもよい。
【0051】
内側列に形成された内側凹部122の夫々は、軸心Oを中心とする内側円弧状面124と、径方向に拡径された外側円弧状面125と、内側円弧状面124と外側円弧状面125との両端部を結合する円弧状面126及び126とで規定されている。
【0052】
外側列に形成された外側凹部123は、軸心Oを中心とする内側円弧状面127と、径方向に拡径された外側円弧状面128と、内側円弧状面127と外側円弧状面128とを結合する円弧状面129及び129とで規定されており、外側凹部123は、内側列に形成された内側凹部122間の円周方向Rの夫々の切れ目130に対応する位置に配列されている。
【0053】
円周方向Rに沿って各60°間隔で配列された小円形部130aは、滑り軸受1の成形時の突き出しピン位置を示し、内側凹部122には配列されていない。
【0054】
図31から図36に示すラジアル滑り軸受片部102も、軸方向Yの両端で開口して円環状の内側面100に円周方向Rに等間隔に離間して設けられた複数個の軸方向溝107を有していてもよい。
【0055】
スラスト滑り軸受片部99の円環状の上面97に円周方向Rに沿い、かつ径方向に少なくとも内側列と外側列の二列にわたって配列された複数個の内側凹部122及び外側凹部123並びに軸方向溝107は、グリース等の潤滑油剤の溜まり部となる。
【0056】
図31から図36に示す滑り軸受片5を具備した滑り軸受1によれば、シール部材8が、上部ケース2の内周側円筒垂下部12及び下部ケース3の内周端部109間の隙間6を閉鎖する内周側環状シール部110と、上部ケース2の外周側円筒垂下部14及び下部ケース3の外周端部112間の隙間7を閉鎖する外周側環状シール部113とを有しているために、シール性を向上させることができる上に、内側凹部122及び外側凹部123に充填されたグリース等の潤滑油剤が上部ケース基部10の円環状下面9とスラスト滑り軸受片部99の上面97との間に摺動方向にわたって常時介在するために、操舵力の増大を防ぐことを可能とする。
【0057】
例えば、図37に示すように、ストラット型サスペンション、車体側の取付部材131の車体側座面132に滑り軸受1の上部ケース2の円環状上面15の円環状の台座部16を当接させ、サスペンションコイルばね133の上端部に滑り軸受1のばね座面134としての下部ケース3の円環状下面41を当接させて、本例の合成樹脂製の滑り軸受1を車体側の取付部材131の車体側座面132とサスペンションコイルばね133との間に配して、当該本例の合成樹脂製の滑り軸受1を四輪自動車におけるストラット型サスペンションに適用してもよい。
【0058】
図37に示すストラット型サスペンションでは、車体側の取付部材131に対するサスペンションコイルばね133の円周方向Rの相対回転は、滑り軸受1の上部ケース基部10の円環状下面9に対するスラスト滑り軸受片部99の上面97及び厚肉円筒部18の外周面27に対するラジアル滑り軸受片部102の内側面100の夫々の円周方向Rの相対的な摺動で許容される。
【符号の説明】
【0059】
1 滑り軸受
2 上部ケース
3 下部ケース
4 環状空間
5 滑り軸受片
6、7 隙間
8 シール部材
110 内周側環状シール部
113 外周側環状シール部
115 連結部
【技術分野】
【0001】
本発明は、スラスト滑り軸受、特に四輪自動車におけるストラット型サスペンション(マクファーソン式)の滑り軸受として組み込まれて好適な合成樹脂製の滑り軸受に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ストラット型サスペンションは、主として四輪自動車の前輪に用いられ、主軸と一体となった外筒の中に油圧式ショックアブソーバを内蔵したストラットアッセンブリにサスペンションコイルばねを組合せたものである。斯かるサスペンションにおいては、ステアリング操作においてストラットアッセンブリがコイルバネと共に回る際に、ストラットアッセンブリのピストンロッドが回る形式と、ピストンロッドが回らない形式のものがあるが、いずれの形式においてもストラットアッセンブリの回動を円滑に許容するべく、車体の取付部材とコイルバネの上部バネ座シートとの間に、転がり玉軸受に代えて、合成樹脂製の滑り軸受が使用される場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−27227号公報
【特許文献2】特開2001−27228号公報
【特許文献3】特開2001−27229号公報
【0004】
合成樹脂製の下部ケースと、この下部ケースに重ねられた合成樹脂製の上部ケースと、上部及び下部ケース間の空間に配された合成樹脂製の滑り軸受手段とを具備した合成樹脂製の滑り軸受に関して、特許文献1においては、上部及び下部ケース間において外周側に配された外側弾性シール手段と、上部及び下部ケース間において内周側に配された内側弾性シール手段とを備えている合成樹脂製の滑り軸受が、特許文献2においては、上部及び下部ケース間の空間において外周側に配された外側シール手段と、上部及び下部ケース間の空間において内周側に配された内側ラビリンスシール手段とを備えている合成樹脂製の滑り軸受が、そして、特許文献3においては、下部ケースの外面を覆って配されていると共に両環状の端部で下部及び上部ケース間の空間の外側及び内側環状開口を閉塞した弾性シール手段を具備した合成樹脂製の滑り軸受が提案されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1の滑り軸受では、上部及び下部ケース間において内外周側の夫々の隙間をシールするために、別体の内側弾性シール手段と外側弾性シール手段とを当該各隙間に配しているために、組立作業に時間を要して清掃費の上昇を招来する虞を有しており、特許文献2の滑り軸受では、上部及び下部ケース間において内側の隙間をシールするために、ラビリンスシール手段を用いているために、弾性シール手段に比較して内周側の隙間からの塵埃、泥水等の侵入に対する防御性が若干劣っており、特許文献3の滑り軸受では、上部及び下部ケース間において内外周側の夫々の隙間をシールする弾性シール手段が下部ケースの外面に配されているために、長期間の使用において下部ケースからの弾性シール手段の脱落等の虞を有しており、いずれの滑り軸受も、製造費、耐久性及びシール性に関して未だ満足できるものではない。
【0006】
本発明は、前記諸点に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、摺動面への塵埃等の侵入を確実に防止し得て、塵埃等の侵入に起因する摺動特性の低下を生じさせることがなく、しかも、組立作業に時間を短縮できると共に振動等によって容易に脱落することがなく、而して、製造費、耐久性及びシール性を向上できてステアリング操作時の円滑な操舵を長期間にわたって維持できる合成樹脂製の滑り軸受を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の合成樹脂製の滑り軸受は、軸方向において円環状下面を有した円環状の上部ケース基部、この上部ケース基部の円環状下面の径方向の内周端部から垂下した内周側円筒垂下部及び上部ケース基部の円環状下面の径方向の外周端部から垂下した外周側円筒垂下部を夫々一体的に有した合成樹脂製の上部ケースと、この上部ケースに対して軸心の回りで回転自在となるように当該上部ケースに重ね合わされていると共に軸方向において円環状上面を有した円環状の下部ケース基部及びこの下部ケース基部の円環状上面から上部ケース基部の円環状下面に向かって突出した円環状突部を夫々一体的に有した合成樹脂製の下部ケースと、軸方向における円環状の上面及び径方向の円筒状の内周面で上部ケース基部の円環状下面及び内周側円筒垂下部の径方向の外周面に摺動自在に接触する一方、軸方向における円環状の下面及び径方向の円筒状の外周面で円環状突部の軸方向における環状上面及び径方向の円筒状内周面に接触するように、上部ケース基部の円環状下面及び下部ケース基部の円環状突部の環状上面間の環状空間並びに内周側円筒垂下部の外周面及び円環状突部の円筒状内周面間の環状空間に配された合成樹脂製の滑り軸受片と、径方向の内周側には、上部ケースの内周側円筒垂下部及び下部ケース基部の円環状突部間の隙間を閉鎖するように、上部ケースの内周側円筒垂下部の径方向の内周面に接触する可撓性の内周側環状シール部を、径方向の外周側には、上部ケースの外周側円筒垂下部及び下部ケース基部の円環状突部間の隙間を閉鎖するように、上部ケースの外周側円筒垂下部の径方向の内周面に接触する可撓性の外周側環状シール部を夫々有すると共に内周側環状シール部及び外周側環状シール部を相互に連結する連結部を有している合成樹脂製のシール部材とを具備しており、内周側環状シール部及び外周側環状シール部は、下部ケース基部の円環状突部の環状上面の複数個の穴部に配された柱状部を有した連結部と共に一体成形されている。
【0008】
本発明の合成樹脂製の滑り軸受によれば、内周側環状シール部と外周側環状シール部とが下部ケース基部の円環状突部の環状上面に形成された複数個の穴部に配された柱状部を有した連結部と共に一体形成されているので、部品点数を少なくでき、製造費の低減を図り得、しかも、脱落の虞をなくし得て耐久性を向上させることができ、加えて、シール部材が、径方向の内周側及び外周側で、上部ケースの内周側円筒垂下部及び下部ケース基部の円環状突部の円筒面部間の隙間を閉鎖する内周側環状シール部及び上部ケースの外周側円筒垂下部及び下部ケース基部の円環状突部の外周円筒面部間の隙間を閉鎖する外周側環状シール部を有しているために、シール性をさらに向上させることができる。
【0009】
本発明の合成樹脂製の滑り軸受の好ましい例では、内周側環状シール部は、下部ケース基部の円環状突部の円筒内面に円周方向に沿って一体的に形成された複数個の突部を覆って当該円環状突部の円筒内面に接合された円環状の内周シール基部と、この内周シール基部の径方向の内周端部に連接されていると共に上部ケースの内周側円筒垂下部の外周面に弾性的に撓み接触する可撓性の内周シール部とを具備しており、この内周シール部は、内周シール基部の厚みよりも小さい厚みを有していると共に内周シール基部の内周端部に連接されている外周端部から斜め下方に伸びている。
【0010】
また、外周側環状シール部は、下部ケース基部の円環状突部の外周縁の円環状平面部に連なる外周面及び該外周面に円周方向に沿って一体的に形成された複数個の突起を覆って当該外周面に接合された円環状の外周シール基部と、外周シール基部に連接されていると共に外周側円筒垂下部の台形断面円筒部の内周面に弾性的に撓み接触する可撓性の外周シール部とを具備していてもよく、この外周シール部は、外周シール基部の厚みよりも小さい厚みを有していると共に外周シール基部の外周端部に連接されている内周端部から斜め下方に伸びているとよい。
【0011】
好ましい例では、複数個の穴部の夫々は、下部ケース基部の円環状突部の環状上面の外周縁部に円周方向に沿って立設された複数個の湾曲状の突起部間の切れ目の夫々に位置しており、結合下部ケース基部の円環状突部は、径方向外方の一端では径方向外方に、径方向内方の他端では穴部に夫々開口している外周側の凹溝と、径方向外方の一端では穴部に、径方向内方の他端では径方向内方に夫々開口している内周側の凹溝とを具備しており、連結部は、径方向内方では柱状部に一体形成されている一方、径方向外方では外周側環状シール部に一体形成されていると共に外周側の凹溝に配された外側連結部と、径方向の外方では柱状部に一体的に形成されている一方、径方向内方では内周側環状シール部に一体的に形成されていると共に内周側の凹溝に配された内側連結部とを具備している。
【0012】
上部ケースは、上部ケース基部の軸方向における円環状上面の径方向中央部に一体的に形成されている円環状の台座部を有していてもよい。
【0013】
一つの好ましい例では、内周側円筒垂下部は、軸方向の上端部で上部ケース基部の円環状下面の径方向の内周端に連接された厚肉円筒部と、軸方向の上端部で厚肉円筒部の軸方向下端に連接されていると共に厚肉円筒部に対して薄肉の薄肉円筒部とを有しており、内周側環状シール部は、薄肉円筒部の径方向の円筒状の外周面に接触しており、外周側円筒垂下部は、軸方向の上端部で上部ケース基部の円環状下面の径方向の外周端部に連接されていると共に軸方向において上部ケース基部の円環状下面から離れるに従って拡径した内周面を有した台形断面円筒部と、台形断面円筒部の軸方向下端に連接されている円筒部を有しており、外周側環状シール部は、台形断面円筒部に接触している。
【0014】
滑り軸受片は、上部ケース基部の円環状下面に摺動自在に接触する円環状の上面及び下部ケース基部の円環状突部の環状上面に接触する円環状の下面を夫々有している円環状のスラスト滑り軸受片部と、一端部でスラスト滑り軸受片部の一端部から軸方向下方に伸びて当該一端部に一体的に形成されていると共に上部ケース基部の内周側円筒垂下部の外周面に摺動自在に接触する円環状の内側面及び下部ケース基部の円環状突部の内周面に接触する円環状の外側面を夫々有した円筒状のラジアル滑り軸受片部と、スラスト滑り軸受片部の外周面から径方向外方に突出していると共に下部ケースに対して滑り軸受片が円周方向に回転しないように円周方向において下部ケース基部の円環状突部の環状上面の外周縁部に当該外周縁部に沿って立設された複数個の湾曲状の突起部間に配された複数個の径方向突板片部とを具備していてもよい。
【0015】
スラスト滑り軸受片部は、その円環状の上面の内周側に設けられた円環状溝と、円環状溝に一端で開口している一方、他端でその外周面で開口していると共にその上面に円周方向に等間隔に離間して設けられた複数個の径方向溝とを有しており、ラジアル滑り軸受片部は、両端で開口して円環状の内側面に円周方向に等間隔に離間して設けられた複数個の軸方向溝を有していても、これにかえて、その円環状の上面に円周方向に沿い、かつ径方向に少なくとも内側列と外側列の二列にわたって形成された複数個の内側凹部及び外側凹部を有しており、ラジアル滑り軸受片部は、両端で開口して円環状の内側面に円周方向に等間隔に離間して設けられた複数個の軸方向溝を有していてもよい。
【0016】
好ましい例では、内周側環状シール部及び外周側環状シール部は、連結部と共に下部ケース基部の円環状突部にインサート成形されている。
【0017】
本発明の合成樹脂製の滑り軸受は、好ましくは、四輪自動車におけるストラット型サスペンションのスラスト滑り軸受として用いられる。
【0018】
上部ケースを形成する合成樹脂は、ポリアセタール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂などの熱可塑性合成樹脂であってもよく、また、下部ケースを形成する合成樹脂は、ガラス繊維、炭素繊維等の補強繊維を含有したポリアセタール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂などの熱可塑性合成樹脂であってもよく、滑り軸受片を形成する合成樹脂は、ポリアセタール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレン樹脂などのポリオレフィン樹脂などの熱可塑性合成樹脂であってもよく、シール部材を形成する合成樹脂としては、ポリウレタン樹脂、ポリエステルエラストマーなどを好ましい例として挙げることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、摺動面への塵埃等の侵入を確実に防止し得て、塵埃等の侵入に起因する摺動特性の低下を生じさせることがなく、しかも、組立作業に時間を短縮できると共に振動等によって容易に脱落することがなく、而して、製造費、耐久性及びシール性を向上できてステアリング操作時の円滑な操舵を長期間にわたって維持できる合成樹脂製の滑り軸受を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は、本発明の実施の形態の好ましい例の図3に示すI−I線矢視断面説明図である。
【図2】図2は、図1に示す例の正面説明図である。
【図3】図3は、図1に示す例の平面説明図である。
【図4】図4は、図1に示す例の一部拡大断面説明図である。
【図5】図5は、図1に示す例の一部拡大断面説明図である。
【図6】図6は、図1に示す例の上部ケースの平面説明図である。
【図7】図7は、図1に示す例の図6に示す上部ケースのVII−VII線矢視断面説明図である。
【図8】図8は、図1に示す例の図7に示す上部ケースの一部拡大断面説明図である。
【図9】図9は、図1に示す例の下部ケースの平面説明図である。
【図10】図10は、図9に示す下部ケースのX−X線矢視断面説明図である。
【図11】図11は、図10に示す下部ケースの一部拡大断面説明図である。
【図12】図12は、図9に示す下部ケースのXII−XII線矢視拡大断面説明図である。
【図13】図13は、図9に示す下部ケースの一部拡大平面説明図である。
【図14】図14は、図9に示す下部ケースの一部拡大平面説明図である。
【図15】図15は、図13に示す下部ケースのXV−XV線矢視断面説明図である。
【図16】図16は、図9に示す下部ケースのXVI−XVI線矢視断面説明図である。
【図17】図17は、図18に示す滑り軸受片のXVII−XVII線矢視断面説明図である。
【図18】図18は、図1に示す例の滑り軸受片の平面説明図である。
【図19】図19は、図1に示す例の滑り軸受片の底面説明図である。
【図20】図20は、図18に示す滑り軸受片のXX−XX線矢視断面説明図である。
【図21】図21は、図18に示す滑り軸受片のXXI−XXI線矢視拡大説明図である。
【図22】図22は、図1に示す例のシール部材の平面図説明図である。
【図23】図23は、図22示すシール部材のXXIII−XXIII線矢視断面説明図である。
【図24】図24は、図1に示す例のシール部材を具備した下部ケースの斜視説明図である。
【図25】図25は、図1に示す例のシール部材を具備した下部ケースの平面説明図である。
【図26】図26は、図25に示すシール部材を具備した下部ケースのXXVI−XXVI線矢視断面説明図である。
【図27】図27は、図25に示すシール部材を具備した下部ケースのXXVII−XXVII線矢視断面説明図である。
【図28】図28は、図26に示すシール部材を具備した下部ケースの一部拡大断面説明図である。
【図29】図29は、図25に示すシール部材を具備した下部ケースの一部拡大平面説明図である。
【図30】図30は、図25に示すシール部材を具備した下部ケースのXXX−XXX線矢視断面説明図である。
【図31】図30は、図1に示す例の滑り軸受片の他の実施の形態の図32に示すXXXI−XXXI線矢視断面説明図である。
【図32】図32は、図30に示す滑り軸受片の平面説明図である。
【図33】図33は、図30に示す滑り軸受片の底面説明図である。
【図34】図34は、図30に示す滑り軸受片の一部拡大断面説明図である。
【図35】図35は、図31に示す滑り軸受片の一部拡大断面説明図である。
【図36】図36は、図32に示す滑り軸受片のXXXVI−XXXVI線矢視断面説明図である。
【図37】図37は、図1に示す滑り軸受をストラット型サスペンションに組込んだ断面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に本発明を、図に示す好ましい実施の形態の例に基づいて更に詳細に説明する。なお、本発明はこれらの例に何等限定されないのである。
【0022】
図1から図5において、四輪自動車におけるストラット型サスペンションに用いるための本例の滑り軸受1は、取付部材を介して車体側に固定される合成樹脂製の上部ケース2と、上部ケース2に対して軸心Oの回りで円周方向Rに回転自在となるように当該上部ケース2に重ね合わされていると共にサスペンションコイルばね用のばね座面が形成されている合成樹脂製の下部ケース3と、上部ケース2及び下部ケース3間の環状空間4に配される合成樹脂製の滑り軸受片5と、円環状の一端部では夫々環状空間4に連通する上部ケース2及び下部ケース3間の径方向Xの内周側の隙間6及び外周側の隙間7の外部に連通する円環状の他端部の夫々を閉鎖する合成樹脂製のシール部材8とを具備している。
【0023】
上部ケース2は、特に図6から図8に詳細に示すように、軸方向Yにおいて円環状下面9を有する円環状の上部ケース基部10と、上部ケース基部10の円環状下面9の径方向Xの内周端部11から垂下した内周側円筒垂下部12と、上部ケース基部10の円環状下面9の径方向Xの外周端部13から垂下した外周側円筒垂下部14と、上部ケース基部10の円環状上面15の径方向Xの中央部に突出して形成された円環状の台座部16とを夫々一体的に有している。
【0024】
内周側円筒垂下部12は、上端部17で上部ケース基部10の円環状下面9の内周端部11に連接された厚肉円筒部18と、内周側段部円環状面19及び外周側段部円環状面20を介して厚肉円筒部18の下端部21に上端部22で連接されていると共に厚肉円筒部18に対して薄肉の薄肉円筒部23とを有している。
【0025】
厚肉円筒部18及び薄肉円筒部23は、ストラット型サスペンションの軸部材が貫通する貫通孔24を規定する円筒状の内周面25及び26を有しており、厚肉円筒部18は、円筒状の外周面27を、薄肉円筒部23は、外周面27よりも小径であって、外周側段部円環状面20から円環状端面28にかけて先細りとなる截頭円錐状の外周面29を夫々有している。
【0026】
円筒状の外周面30を有する外周側円筒垂下部14は、上端部31で上部ケース基部10の円環状下面9の外周端部13に連接されていると共に上部ケース基部10の円環状下面9から離れるに従って拡径した内周面32を有した台形断面円筒部33と、上端部34で台形断面円筒部33の下端部35に連接されている円筒部36とを夫々有しており、円筒部36の円環状端面37は、内周側円筒垂下部12の薄肉円筒部23の円環状端面28よりも軸方向Yにおいて下方に位置している。
【0027】
下部ケース3は、特に図9から図16に詳細に示すように、円環状上面38を有した円環状の下部ケース基部39と、下部ケース基部39の円環状上面38から軸方向Yの上方に向かって突出した円環状突部40と、下部ケース基部39の円環状下面41の内周部42に円環状下面41から軸方向Yの下方に向かって突出した円筒部43と、円筒部43の端部44において円筒部43の円筒状の内周面45から径方向Xの内方に突出した円環状の突出部46と、円筒部43の端部44において軸方向Yの下方に向かって突出した円環状の突出部47と、円環状突部40の環状上面48の外周縁部に円環状平面部49を残して軸方向Yの上方に向かって突出していると共に軸心O回りの円周方向Rで互いに離間して立設された複数個の湾曲状の突起部50とを一体的に有している。
【0028】
円環状突部40は、その環状上面48の円環状平面部49に連接した円筒状の外周面51と、外周面51に連接した円環状の段部面52と、段部面52に連接していると共に円環状上面38を超えて軸方向Yの下方に伸びる外周円筒面53と、外周円筒面53の下端部54よりも径方向Xの外方に位置する環状突出面55とを備えており、環状突出面55は、一方では、環状の上面56及び円弧状凹面57を介して外周円筒面53の下端部54に、他方では、環状のテーパ面55aを介して円環状下面41に夫々連接している。
【0029】
円環状突部40の外周面51には、平面視方形状の突部58が円周方向Rに沿って一体的に複数個形成されており、突部58は、円環状の段部面52から軸方向Yの上方に向かって伸びており、突部58の上端面59は、外周面51を介して環状上面48の円環状平面部49に連接されており、突部58の外面60は、外周円筒面53の外径よりも小径に形成されている。
【0030】
円環状突部40は、その環状上面48に連接した内周面62に、環状段部面63を介して縮径すると共に内周面64aを有する縮径円筒部64を備えており、円環状上面38は、円環状の切欠き段部面65を介して円筒部43の円筒状の内周面45に連接している。
【0031】
円環状突部40の縮径円筒部64の内周面64aには、平面視方形状の突部66が円周方向Rに沿って一体的に複数個形成されており、突部66は、円環状上面38から軸方向Yの上方に向かって伸びており、突部66の上端面67は、縮径円筒部64の内周面64a及び環状段部面63を介して内周面62に連接されている。
【0032】
円環状突部40の環状上面48には、円周方向Rに沿って複数個の穴部68が軸方向Yの下方に向かって形成されており、穴部68は、その円形開口部69から当該穴部68を規定する底面70にかけて先細りとなる截頭円錐状であり、穴部68を規定する内面71は、截頭円錐面を有している。これら穴部68は、下部ケース3の円環状突部40の肉厚とその他の部位の肉厚とを均肉にして成形時のヒケ等の不具合を極力低下させるために設けられたものである。
【0033】
複数個の穴部68のうち、環状上面48の外周縁部に円周方向Rに沿って立設された湾曲状の突起部50間の切れ目72に位置する環状上面48に形成された穴部68aの円形開口部69aの周縁において円環状突部40には、円形開口部69aを囲む深さの浅い円周方向Rにおいて互いに対向する一対の半円形凹部73と、径方向Xの内方に半円形凹部73に連なって内周面62で開口すると共に半円形凹部73と同じ深さの円周方向Rにおいて互いに対向する一対の内側径方向凹部74と、径方向Xの外方に半円形凹部73に連なると共に円環状突部40の閉塞部76により径方向Xの外方で閉塞されており、且つ、半円形凹部73と同じ深さの円周方向Rにおいて互いに対向する一対の外側径方向凹部77と、半円形凹部73、内側径方向凹部74及び外側径方向凹部77の底面78よりも軸方向Yの下方に位置していると共に突部58の中間部を貫通して径方向Xの外方では突部58の外面60で開口する一方、径方向Xの内方では穴部68aに連通した外周側の凹溝79とが形成されており、凹溝79は、底面78よりも軸方向Yの下方に位置している底面80及び円周方向Rにおいて互いに対向する一対の壁面81で規定されており、壁面81の夫々は、内周側端縁82及び外周側端縁83を具備しており、内周側端縁82は、穴部68aを規定する内面71に連接しており、外周側端縁83は、外面60に連接している。
【0034】
穴部68aの円形開口部69aの周縁において円環状突部40には、更に、内側径方向凹部74の底面78よりも軸方向Yの下方に位置していると共に穴部68a側から径方向Xの内方に伸びた切欠いた切欠き凹溝83aと、切欠き凹溝83aを規定する底面86に段部面87を介して連接した底面88で規定されると共に突部66の内面89で開口した開口溝83bと、円周方向Rの側面で開口溝83bに連通すると共に径方向Xの内方で内周面62で開口する一方、径方向Xの外方では傾斜面94で、軸方向Yの下方では環状段部面63で夫々規定されており、しかも、円周方向Rにおいて互いに対向する一対の切り欠き溝84とが形成されており、切欠き凹溝83aは、径方向Xの外方で穴部68aに連通している。
【0035】
切欠き凹溝83a及び開口溝83bを規定する円周方向Rにおいて相対向する円環状突部40の一対の壁面92の夫々は、内周側端縁93及び外周側端縁95を具備しており、内周側端縁93は、切り欠き溝84を規定する傾斜面94に連接しており、外周側端縁95は、穴部68aを規定する内面71に連接しており、傾斜面94は、切り欠き溝84を軸方向Yの上方に向かうに連れて径方向Xの幅を大きくするように、傾斜している。
【0036】
このようにして円環状突部40は、径方向Xの外方の一端では外面60で径方向Xの外方に、径方向Xの内方の他端では穴部68aに、そして、径方向Xの外方の一端から径方向Xの内方の他端に亘って軸方向V上方に夫々開口している凹溝79と、径方向Xの外方の一端では穴部68aに、径方向Xの内方の他端では内面89で径方向Xの内方に、そして、径方向Xの外方から径方向Xの内方の他端に亘って軸方向Yの上方に夫々開口していると共に相互に連通された切欠き凹溝83a及び開口溝83bからなる内周側の凹溝83cとを具備している。
【0037】
環状空間4に配された合成樹脂製の滑り軸受片5は、特に図17から図21に詳細に示すように、上部ケース基部10の円環状下面9に摺動自在に接触する円環状の上面97及び下部ケース基部39の円環状突部40の環状上面48に接触する円環状の下面98を夫々有している円環状のスラスト滑り軸受片部99と、円環状の一端部でスラスト滑り軸受片部99の円環状の一端部に一体的に形成されていると共に上部ケース基部10の内周側円筒垂下部12の厚肉円筒部18の外周面27に摺動自在に接触する円環状の内側面100及び下部ケース基部39の円環状突部40の内周面62に接触する円環状の外側面101を有して軸方向Yの下方に伸びた円筒状のラジアル滑り軸受片部102と、スラスト滑り軸受片部99の外周面103から外方向に突出していると共に下部ケース3に対して滑り軸受片5が円周方向Rに回転しないように円周方向Rにおいて下部ケース基部39の円環状突部40の環状上面48の外周縁部に沿って立設された複数個の湾曲状の突起部50間の切れ目72に配されて隣接する当該突起部50に挟持された複数個の径方向突板片部104とを具備している。
【0038】
スラスト滑り軸受片部99は、円環状の上面97の内周側に設けられた円環状溝105と、円環状溝105に一端で開口している一方、他端で外周面103に開口していると共に上面97に円周方向Rに等間隔に離間して設けられた複数個の径方向溝106とを有しており、ラジアル滑り軸受片部102は、両端で開口して円環状の内側面100に円周方向Rに等間隔に離間して設けられた複数個の軸方向溝107を有しており、これら円環状溝105、径方向溝106及び軸方向溝107は、グリース等の潤滑油剤の溜まり部となっている。
【0039】
シール部材8は、特に図4及び図5並びに図22から図30に詳細に示すように、上部ケース基部10の内周側円筒垂下部12の軸方向端部108である薄肉円筒部23及び下部ケース基部39の内周端部109間の隙間6を閉鎖するように、内周側円筒垂下部12の薄肉円筒部23の截頭円錐状の外周面29に弾性的に撓み接触する可撓性の内周側環状シール部110と、上部ケース基部10の外周側円筒垂下部14の軸方向端部111及び下部ケース基部39の外周端部112間の隙間7を閉鎖するように、外周側円筒垂下部14の台形断面円筒部33の内周面32に弾性的に撓み接触する可撓性の外周側環状シール部113と、内周側に配された内周側環状シール部110及び外周側に配された外周側環状シール部113を相互に連結する複数個の連結部115とを有している。
【0040】
内周側環状シール部110は、下部ケース基部39の円環状上面38から軸方向Xの上方に向かって突出した円環状突部40の縮径円筒部64に一体的に形成された複数個の平面視方形状の突部66の外表面を覆って該縮径円筒部64に一体的に接合された円環状の内周シール基部116と、内周シール基部116に連接されていると共に内周側円筒垂下部12の薄肉円筒部23の截頭円錐状の外周面29に弾性的に接触する円環状の可撓性の内周シール部117とを具備している。
【0041】
内周シール部117は、内周シール基部116の厚みよりも小さい厚みを有していると共に内周シール基部116の内周端部118から径方向Xの内方であって斜め下方に伸びている。
【0042】
外周側環状シール部113は、下部ケース基部39の円環状上面38から軸方向Xの上方に向かって突出した円環状突部40の外周面51、突部58の上端面59、突部58の外面60及び段部面52の内周側を覆って該外周面51に一体的に接合された円環状の外周シール基部119と、外周シール基部119に連接されていると共に外周側円筒垂下部14の台形断面円筒部33の内周面32に弾性的に撓み接触する円環状の外周シール部120を具備している。
【0043】
外周シール部120は、外周シール基部119の厚みよりも小さい厚みを有していると共に外周シール基部119の内周端部121から径方向Xの外方であって斜め下方に伸びている。
【0044】
外周シール部120は、円環状平面部49をも覆うようになっていてもよい。
【0045】
連結部115の夫々は、切れ目72に位置する環状上面48に形成された穴部68aに充填された柱状部115aと、径方向Xの内側では柱状部115aに一体形成されている一方、径方向Xの外方では外側シール基部119に一体形成されていると共に凹溝79に配された外側連結部115bと、径方向Xの外側では柱状部115aに一体的に形成されている一方、径方向Xの内側では内周シール基部116に一体的に形成されていると共に切欠き凹溝83a及び開口溝83bからなる凹溝83cに配された内側連結部115cとを具備しており、柱状部115aは、底面70及び内面71を覆って当該底面70及び内面71に接合しており、外側連結部115bは、凹溝79を規定する円環状突部40の互いに対面する一対に壁面81及び底面80を覆って当該壁面81及び底面80に接合しており、内側連結部115cは、底面86、底面88及び壁面92を覆って当該底面86、底面88及び壁面92に接合している。
【0046】
内周側環状シール部110及び外周側環状シール部113は、柱状部115aを有した連結部115と共に下部ケース基部39の円環状突部40にインサート成形されており、而して、複数の連結部115の夫々は、一端部である内側連結部115cでは内周側環状シール110に、他端部である外側連結部115bでは外周側環状シール部113に夫々インサート成形により一体的に連接されている。
【0047】
以上の滑り軸受1は、上部ケース2に対する下部ケース3の円周方向Rの相対回転を、上部ケース基部10の円環状下面9に対するスラスト滑り軸受片部99の上面97及び厚肉円筒部18の外周面27に対するラジアル滑り軸受片部102の内側面100の夫々の円周方向Rの相対的な摺動でもって許容するようになっている。
【0048】
斯かる滑り軸受1によれば、複数の連結部115の夫々が、一端部では内周側環状シール110に、他端部では外周側環状シール部113に夫々インサート成形により一体的に連接されているため、部品点数を少なくでき、組立性に優れて製造費の低減を図り得、しかも、脱落の虞をなくし得て耐久性を向上させることができる。
【0049】
加えて、滑り軸受1によれば、シール部材8が、上部ケース2の内周側円筒垂下部12及び下部ケース3の内周端部109間の隙間6を閉鎖する内周側環状シール部110と、上部ケース2の外周側円筒垂下部14及び下部ケース3の外周端部112間の隙間7を閉鎖する外周側環状シール部113とを有しているために、シール性を向上させることができる。
【0050】
ところで、図31から図36に示すように、上部ケース基部10の円環状下面9に摺動自在に接触する円環状の上面97及び下部ケース基部39の円環状突部40の環状上面48に接触する円環状の下面98を夫々有している円環状のスラスト滑り軸受片部99と、一端部でスラスト滑り軸受片部99の一端部に一体的に形成されていると共に上部ケース2の厚肉円筒部18の外周面27に摺動自在に接触する円環状の内側面100及び下部ケース基部39の円環状突部40の内周面62に接触する円環状の外側面101を有して軸方向Yの下方に伸びた円筒状のラジアル滑り軸受片部102と、スラスト滑り軸受片部99の外周面103から外方向に突出していると共に下部ケース3に対して滑り軸受片5が円周方向Rに回転しないように円周方向Rにおいて下部ケース基部39の円環状突部40の環状上面48の外周縁部に沿って立設された複数個の湾曲状の突起部50間の切れ目72に配されて隣接する当該突起部50に挟持された複数個の径方向突板片部104とを具備している合成樹脂製の滑り軸受片5において、スラスト滑り軸受片部99は、円環状の上面97に円周方向Rに沿い、かつ径方向に少なくとも内側列と外側列の二列にわたって形成された複数個の内側凹部122及び外側凹部123を有していてもよい。
【0051】
内側列に形成された内側凹部122の夫々は、軸心Oを中心とする内側円弧状面124と、径方向に拡径された外側円弧状面125と、内側円弧状面124と外側円弧状面125との両端部を結合する円弧状面126及び126とで規定されている。
【0052】
外側列に形成された外側凹部123は、軸心Oを中心とする内側円弧状面127と、径方向に拡径された外側円弧状面128と、内側円弧状面127と外側円弧状面128とを結合する円弧状面129及び129とで規定されており、外側凹部123は、内側列に形成された内側凹部122間の円周方向Rの夫々の切れ目130に対応する位置に配列されている。
【0053】
円周方向Rに沿って各60°間隔で配列された小円形部130aは、滑り軸受1の成形時の突き出しピン位置を示し、内側凹部122には配列されていない。
【0054】
図31から図36に示すラジアル滑り軸受片部102も、軸方向Yの両端で開口して円環状の内側面100に円周方向Rに等間隔に離間して設けられた複数個の軸方向溝107を有していてもよい。
【0055】
スラスト滑り軸受片部99の円環状の上面97に円周方向Rに沿い、かつ径方向に少なくとも内側列と外側列の二列にわたって配列された複数個の内側凹部122及び外側凹部123並びに軸方向溝107は、グリース等の潤滑油剤の溜まり部となる。
【0056】
図31から図36に示す滑り軸受片5を具備した滑り軸受1によれば、シール部材8が、上部ケース2の内周側円筒垂下部12及び下部ケース3の内周端部109間の隙間6を閉鎖する内周側環状シール部110と、上部ケース2の外周側円筒垂下部14及び下部ケース3の外周端部112間の隙間7を閉鎖する外周側環状シール部113とを有しているために、シール性を向上させることができる上に、内側凹部122及び外側凹部123に充填されたグリース等の潤滑油剤が上部ケース基部10の円環状下面9とスラスト滑り軸受片部99の上面97との間に摺動方向にわたって常時介在するために、操舵力の増大を防ぐことを可能とする。
【0057】
例えば、図37に示すように、ストラット型サスペンション、車体側の取付部材131の車体側座面132に滑り軸受1の上部ケース2の円環状上面15の円環状の台座部16を当接させ、サスペンションコイルばね133の上端部に滑り軸受1のばね座面134としての下部ケース3の円環状下面41を当接させて、本例の合成樹脂製の滑り軸受1を車体側の取付部材131の車体側座面132とサスペンションコイルばね133との間に配して、当該本例の合成樹脂製の滑り軸受1を四輪自動車におけるストラット型サスペンションに適用してもよい。
【0058】
図37に示すストラット型サスペンションでは、車体側の取付部材131に対するサスペンションコイルばね133の円周方向Rの相対回転は、滑り軸受1の上部ケース基部10の円環状下面9に対するスラスト滑り軸受片部99の上面97及び厚肉円筒部18の外周面27に対するラジアル滑り軸受片部102の内側面100の夫々の円周方向Rの相対的な摺動で許容される。
【符号の説明】
【0059】
1 滑り軸受
2 上部ケース
3 下部ケース
4 環状空間
5 滑り軸受片
6、7 隙間
8 シール部材
110 内周側環状シール部
113 外周側環状シール部
115 連結部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向において円環状下面を有した円環状の上部ケース基部、この上部ケース基部の円環状下面の径方向の内周端部から垂下した内周側円筒垂下部及び上部ケース基部の円環状下面の径方向の外周端部から垂下した外周側円筒垂下部を夫々一体的に有した合成樹脂製の上部ケースと、この上部ケースに対して軸心の回りで回転自在となるように当該上部ケースに重ね合わされていると共に軸方向において円環状上面を有した円環状の下部ケース基部及びこの下部ケース基部の円環状上面から上部ケース基部の円環状下面に向かって突出した円環状突部を夫々一体的に有した合成樹脂製の下部ケースと、軸方向における円環状の上面及び径方向の円筒状の内周面で上部ケース基部の円環状下面及び内周側円筒垂下部の径方向の外周面に摺動自在に接触する一方、軸方向における円環状の下面及び径方向の円筒状の外周面で円環状突部の軸方向における環状上面及び径方向の円筒状内周面に接触するように、上部ケース基部の円環状下面及び下部ケース基部の円環状突部の環状上面間の環状空間並びに内周側円筒垂下部の外周面及び円環状突部の円筒状内周面間の環状空間に配された合成樹脂製の滑り軸受片と、径方向の内周側には、上部ケースの内周側円筒垂下部及び下部ケース基部の円環状突部間の隙間を閉鎖するように、上部ケースの内周側円筒垂下部の径方向の内周面に接触する可撓性の内周側環状シール部を、径方向の外周側には、上部ケースの外周側円筒垂下部及び下部ケース基部の円環状突部間の隙間を閉鎖するように、上部ケースの外周側円筒垂下部の径方向の内周面に接触する可撓性の外周側環状シール部を夫々有すると共に内周側環状シール部及び外周側環状シール部を相互に連結する連結部を有している合成樹脂製のシール部材とを具備しており、内周側環状シール部及び外周側環状シール部は、下部ケース基部の円環状突部の環状上面の複数個の穴部に配された柱状部を有した連結部と共に一体成形されている合成樹脂製の滑り軸受。
【請求項2】
内周側環状シール部は、下部ケース基部の円環状突部の円筒内面に円周方向に沿って一体的に形成された複数個の突部を覆って当該円環状突部の円筒内面に接合された円環状の内周シール基部と、この内周シール基部の径方向の内周端部に連接されていると共に上部ケースの内周側円筒垂下部の外周面に弾性的に撓み接触する可撓性の内周シール部とを具備しており、この内周シール部は、内周シール基部の厚みよりも小さい厚みを有していると共に内周シール基部の内周端部に連接されている外周端部から斜め下方に伸びている請求項1に記載の合成樹脂製の滑り軸受。
【請求項3】
外周側環状シール部は、下部ケース基部の円環状突部の外周縁の円環状平面部に連なる外周面及び該外周面に円周方向に沿って一体的に形成された複数個の突起を覆って当該外周面に接合された円環状の外周シール基部と、この外周シール基部に連接されていると共に外周側円筒垂下部の台形断面円筒部の内周面に弾性的に撓み接触する可撓性の外周シール部とを具備しており、この外周シール部は、外周シール基部の厚みよりも小さい厚みを有していると共に外周シール基部の外周端部に連接されている内周端部から斜め下方に伸びている請求項1又は2に記載の合成樹脂製の滑り軸受。
【請求項4】
複数個の穴部の夫々は、下部ケース基部の円環状突部の環状上面の外周縁部に円周方向に沿って立設された複数個の湾曲状の突起部間の切れ目の夫々に位置しており、下部ケース基部の円環状突部は、径方向外方の一端では径方向外方に、径方向内方の他端では穴部に夫々開口している外周側の凹溝と、径方向外方の一端では穴部に、径方向内方の他端では径方向内方に夫々開口している内周側の凹溝とを具備しており、連結部は、径方向内方では柱状部に一体形成されている一方、径方向外方では外周側環状シール部に一体形成されていると共に外周側の凹溝に配された外側連結部と、径方向の外方では柱状部に一体的に形成されている一方、径方向内方では内周側環状シール部に一体的に形成されていると共に内周側の凹溝に配された内側連結部とを具備している請求項1から3のいずれか一項に記載の合成樹脂製の滑り軸受。
【請求項5】
滑り軸受片は、上部ケース基部の円環状下面に摺動自在に接触する円環状の上面及び下部ケース基部の円環状突部の環状上面に接触する円環状の下面を夫々有している円環状のスラスト滑り軸受片部と、一端部でスラスト滑り軸受片部の一端部から軸方向下方に伸びて当該一端部に一体的に形成されていると共に上部ケース基部の内周側円筒垂下部の外周面に摺動自在に接触する円環状の内側面及び下部ケース基部の円環状突部の内周面に接触する円環状の外側面を夫々有した円筒状のラジアル滑り軸受片部と、スラスト滑り軸受片部の外周面から径方向外方に突出していると共に下部ケースに対して滑り軸受片が円周方向に回転しないように円周方向において下部ケース基部の円環状突部の環状上面の外周縁部に当該外周縁部に沿って立設された複数個の湾曲状の突起部間に配された複数個の径方向突板片部とを具備している請求項1から4のいずれか一項に記載の合成樹脂製の滑り軸受。
【請求項6】
スラスト滑り軸受片部は、その円環状の上面の内周側に設けられた円環状溝と、円環状溝に一端で開口している一方、他端でその外周面で開口していると共にその上面に円周方向に等間隔に離間して設けられた複数個の径方向溝とを有しており、ラジアル滑り軸受片部は、両端で開口して円環状の内側面に円周方向に等間隔に離間して設けられた複数個の軸方向溝を有している請求項5に記載の合成樹脂製の滑り軸受。
【請求項7】
スラスト滑り軸受片部は、その円環状の上面に円周方向に沿い、かつ径方向に少なくとも内側列と外側列の二列にわたって形成された複数個の内側凹部及び外側凹部を有しており、ラジアル滑り軸受片部は、両端で開口して円環状の内側面に円周方向に等間隔に離間して設けられた複数個の軸方向溝を有している請求項5に記載の合成樹脂製の滑り軸受。
【請求項8】
内周側環状シール部及び外周側環状シール部は、連結部と共に下部ケース基部の円環状突部にインサート成形されている請求項1から7のいずれか一項に記載の合成樹脂製の滑り軸受。
【請求項1】
軸方向において円環状下面を有した円環状の上部ケース基部、この上部ケース基部の円環状下面の径方向の内周端部から垂下した内周側円筒垂下部及び上部ケース基部の円環状下面の径方向の外周端部から垂下した外周側円筒垂下部を夫々一体的に有した合成樹脂製の上部ケースと、この上部ケースに対して軸心の回りで回転自在となるように当該上部ケースに重ね合わされていると共に軸方向において円環状上面を有した円環状の下部ケース基部及びこの下部ケース基部の円環状上面から上部ケース基部の円環状下面に向かって突出した円環状突部を夫々一体的に有した合成樹脂製の下部ケースと、軸方向における円環状の上面及び径方向の円筒状の内周面で上部ケース基部の円環状下面及び内周側円筒垂下部の径方向の外周面に摺動自在に接触する一方、軸方向における円環状の下面及び径方向の円筒状の外周面で円環状突部の軸方向における環状上面及び径方向の円筒状内周面に接触するように、上部ケース基部の円環状下面及び下部ケース基部の円環状突部の環状上面間の環状空間並びに内周側円筒垂下部の外周面及び円環状突部の円筒状内周面間の環状空間に配された合成樹脂製の滑り軸受片と、径方向の内周側には、上部ケースの内周側円筒垂下部及び下部ケース基部の円環状突部間の隙間を閉鎖するように、上部ケースの内周側円筒垂下部の径方向の内周面に接触する可撓性の内周側環状シール部を、径方向の外周側には、上部ケースの外周側円筒垂下部及び下部ケース基部の円環状突部間の隙間を閉鎖するように、上部ケースの外周側円筒垂下部の径方向の内周面に接触する可撓性の外周側環状シール部を夫々有すると共に内周側環状シール部及び外周側環状シール部を相互に連結する連結部を有している合成樹脂製のシール部材とを具備しており、内周側環状シール部及び外周側環状シール部は、下部ケース基部の円環状突部の環状上面の複数個の穴部に配された柱状部を有した連結部と共に一体成形されている合成樹脂製の滑り軸受。
【請求項2】
内周側環状シール部は、下部ケース基部の円環状突部の円筒内面に円周方向に沿って一体的に形成された複数個の突部を覆って当該円環状突部の円筒内面に接合された円環状の内周シール基部と、この内周シール基部の径方向の内周端部に連接されていると共に上部ケースの内周側円筒垂下部の外周面に弾性的に撓み接触する可撓性の内周シール部とを具備しており、この内周シール部は、内周シール基部の厚みよりも小さい厚みを有していると共に内周シール基部の内周端部に連接されている外周端部から斜め下方に伸びている請求項1に記載の合成樹脂製の滑り軸受。
【請求項3】
外周側環状シール部は、下部ケース基部の円環状突部の外周縁の円環状平面部に連なる外周面及び該外周面に円周方向に沿って一体的に形成された複数個の突起を覆って当該外周面に接合された円環状の外周シール基部と、この外周シール基部に連接されていると共に外周側円筒垂下部の台形断面円筒部の内周面に弾性的に撓み接触する可撓性の外周シール部とを具備しており、この外周シール部は、外周シール基部の厚みよりも小さい厚みを有していると共に外周シール基部の外周端部に連接されている内周端部から斜め下方に伸びている請求項1又は2に記載の合成樹脂製の滑り軸受。
【請求項4】
複数個の穴部の夫々は、下部ケース基部の円環状突部の環状上面の外周縁部に円周方向に沿って立設された複数個の湾曲状の突起部間の切れ目の夫々に位置しており、下部ケース基部の円環状突部は、径方向外方の一端では径方向外方に、径方向内方の他端では穴部に夫々開口している外周側の凹溝と、径方向外方の一端では穴部に、径方向内方の他端では径方向内方に夫々開口している内周側の凹溝とを具備しており、連結部は、径方向内方では柱状部に一体形成されている一方、径方向外方では外周側環状シール部に一体形成されていると共に外周側の凹溝に配された外側連結部と、径方向の外方では柱状部に一体的に形成されている一方、径方向内方では内周側環状シール部に一体的に形成されていると共に内周側の凹溝に配された内側連結部とを具備している請求項1から3のいずれか一項に記載の合成樹脂製の滑り軸受。
【請求項5】
滑り軸受片は、上部ケース基部の円環状下面に摺動自在に接触する円環状の上面及び下部ケース基部の円環状突部の環状上面に接触する円環状の下面を夫々有している円環状のスラスト滑り軸受片部と、一端部でスラスト滑り軸受片部の一端部から軸方向下方に伸びて当該一端部に一体的に形成されていると共に上部ケース基部の内周側円筒垂下部の外周面に摺動自在に接触する円環状の内側面及び下部ケース基部の円環状突部の内周面に接触する円環状の外側面を夫々有した円筒状のラジアル滑り軸受片部と、スラスト滑り軸受片部の外周面から径方向外方に突出していると共に下部ケースに対して滑り軸受片が円周方向に回転しないように円周方向において下部ケース基部の円環状突部の環状上面の外周縁部に当該外周縁部に沿って立設された複数個の湾曲状の突起部間に配された複数個の径方向突板片部とを具備している請求項1から4のいずれか一項に記載の合成樹脂製の滑り軸受。
【請求項6】
スラスト滑り軸受片部は、その円環状の上面の内周側に設けられた円環状溝と、円環状溝に一端で開口している一方、他端でその外周面で開口していると共にその上面に円周方向に等間隔に離間して設けられた複数個の径方向溝とを有しており、ラジアル滑り軸受片部は、両端で開口して円環状の内側面に円周方向に等間隔に離間して設けられた複数個の軸方向溝を有している請求項5に記載の合成樹脂製の滑り軸受。
【請求項7】
スラスト滑り軸受片部は、その円環状の上面に円周方向に沿い、かつ径方向に少なくとも内側列と外側列の二列にわたって形成された複数個の内側凹部及び外側凹部を有しており、ラジアル滑り軸受片部は、両端で開口して円環状の内側面に円周方向に等間隔に離間して設けられた複数個の軸方向溝を有している請求項5に記載の合成樹脂製の滑り軸受。
【請求項8】
内周側環状シール部及び外周側環状シール部は、連結部と共に下部ケース基部の円環状突部にインサート成形されている請求項1から7のいずれか一項に記載の合成樹脂製の滑り軸受。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【公開番号】特開2012−255500(P2012−255500A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−129325(P2011−129325)
【出願日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【出願人】(000103644)オイレス工業株式会社 (384)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【出願人】(000103644)オイレス工業株式会社 (384)
【Fターム(参考)】
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