説明

合成樹脂製スナップファスナー

【課題】衣服が面内方向に引っ張られる等して、雌スナップと雄スナップに横方向の力が加えられても、雌,雄スナップの嵌合が容易に外れることのない合成樹脂製スナップファスナーを提供する。
【解決手段】雌,雄スナップから成る合成樹脂製スナップファスナーにおいて、雄型嵌合部材3における円形基板8bの表面外縁部に、雄型嵌合部10bよりも背の高い環状隆起部13を設け、雌,雄スナップが互いに嵌合した状態において、雌型嵌合部10aが雄型嵌合部10bと環状隆起部13との間に形成された環状溝14に嵌り込むことにより、雄型嵌合部材3に対する雌型嵌合部材1の横方向への移動を環状隆起部13で阻止するように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、雌型嵌合部材及び雄型嵌合部材と、それらを衣服の生地、ビニール袋などの可撓性シートに取り付けるリベット部材とを備えた合成樹脂製スナップファスナーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、衣服の生地、ビニール袋などの可撓性シートに刺し通す突起が円形頭部の裏面中央部に突設された合成樹脂製のリベット部材と、円形基板の表面に略円筒状で且つ先端側内周面に係合用膨出部を形成した雌型嵌合部が形成され、当該雌型嵌合部内の基板中央に前記シートに刺し通した突起を貫通させてカシメ止めするための貫通孔が形成された合成樹脂製の雌型嵌合部材とによる雌スナップと、可撓性シートに刺し通す突起が円形頭部の裏面中央部に突設された合成樹脂製のリベット部材と、円形基板の表面に略円筒状で且つ先端側外周面に係合用膨出部を形成した雄型嵌合部が形成され、当該雄型嵌合部内の基板中央に前記シートに刺し通した突起を貫通させてカシメ止めするための貫通孔が形成された合成樹脂製の雄型嵌合部材とによる雄スナップとから成る合成樹脂製スナップファスナーは、特許文献1,2等によって知られている。
【0003】
この種の合成樹脂製スナップファスナーにおいては、図5の(A)に示すように、雌型嵌合部材1及び雄型嵌合部材3が略同一の直径とされており、雄型嵌合部材3は、雄型嵌合部10bの先端を円形基板8bの表面外縁部よりも軸芯方向外方(表面側)へ適当距離H突出させた形状に成型されていた。
【0004】
そのため、図5の(B)に示す雌,雄スナップA,Aの嵌合状態において、衣服が面内方向に引っ張られる等して、雌スナップAと雄スナップAに横方向(矢印方向a,b)の力が加えられた際、雄型嵌合部材3の雄型嵌合部10bが雌型嵌合部10aで押されて弾性変形し、雄型嵌合部10bと雌型嵌合部10aの嵌合が不測に外れることがあった。この傾向は、スナップファスナーの寸法が小さくて、雄型嵌合部10bの直径方向での厚みが薄い場合や、スナップファスナーの材料樹脂がポリエステルのような柔らかい合成樹脂である場合に特に顕著である。
【0005】
また、雄型嵌合部10bの先端が円形基板8bの表面外縁部よりも突出しているため、洗濯した衣服にアイロンやローラで、プレスを掛ける際、アイロンやローラが雄型嵌合部10bの先端に当たって、雄型嵌合部10bの先端部が押し潰されることがあり、その結果、雌型嵌合部10aとの嵌合が不安定になったり、嵌合不能になることがあった。
【0006】
【特許文献1】特開2004−248704号公報
【特許文献2】特開2005−152059号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記の点に留意してなされたもので、その目的は、アイロン掛けによって雄型嵌合部の先端部が押し潰されるのを防止でき、しかも、衣服が面内方向に引っ張られる等して、雌スナップと雄スナップに横方向の力が加えられても、雌,雄スナップの嵌合が容易に外れることのない合成樹脂製スナップファスナーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明が講じた技術的手段は、次の通りである。即ち、本発明は、可撓性シートに刺し通す突起が円形頭部の裏面中央部に突設された合成樹脂製のリベット部材と、円形基板の表面に略円筒状で且つ先端側内周面に係合用膨出部を形成した雌型嵌合部が形成され、当該雌型嵌合部内の基板中央に前記シートに刺し通した突起を貫通させてカシメ止めするための貫通孔が形成された合成樹脂製の雌型嵌合部材とによる雌スナップと、可撓性シートに刺し通す突起が円形頭部の裏面中央部に突設された合成樹脂製のリベット部材と、円形基板の表面に略円筒状で且つ先端側外周面に係合用膨出部を形成した雄型嵌合部が形成され、当該雄型嵌合部内の基板中央に前記シートに刺し通した突起を貫通させてカシメ止めするための貫通孔が形成された合成樹脂製の雄型嵌合部材とによる雄スナップとから成る合成樹脂製スナップファスナーであって、雄型嵌合部材における円形基板の表面外縁部に、雄型嵌合部よりも背の高い環状隆起部を設け、雌,雄スナップが互いに嵌合した状態において、雌型嵌合部が雄型嵌合部と環状隆起部との間に形成された環状溝に嵌り込むことにより、雄型嵌合部材に対する雌型嵌合部材の横方向への移動を環状隆起部で阻止するように構成したことを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、雄型嵌合部材における円形基板の表面外縁部に、雄型嵌合部よりも背の高い環状隆起部を設けたので、雄型嵌合部の先端が環状隆起部よりも軸芯方向内方に位置することになり、洗濯した衣服にアイロンやローラで、プレスを掛ける際、アイロンやローラが雄型嵌合部の先端に当たって、雄型嵌合部の先端部が押し潰されるのを防止することができ、しかも、雌,雄スナップの嵌合状態においては、雌型嵌合部が雄型嵌合部と環状隆起部との間に形成された環状溝に嵌り込むことにより、雄型嵌合部材に対する雌型嵌合部材の横方向への移動が環状隆起部で阻止されるので、雌スナップと雄スナップを軸芯方向へ引き離すことによって、嵌合を外すことができるが、衣服が面内方向に引っ張られる等して、雌スナップと雄スナップに横方向の力が加えられても、雌型嵌合部が環状隆起部の内周面に当たって、雄型嵌合部の一定以上の変形が規制されることになり、雌,雄スナップの嵌合が不測に外れる虞がない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図1〜図4は、雌スナップAと雄スナップAとから成る合成樹脂製スナップファスナーの一例を示す。雌スナップAは、雌型嵌合部材1と、それを可撓性シート(例えば、衣服の生地、テープ状の布、ビニール袋等である。以下、同じ。)Bに取り付けるリベット部材2とから構成され、雄スナップAは、雄型嵌合部材3と、それを可撓性シートBに取り付けるリベット部材4とから構成されている。
【0011】
尚、雌型嵌合部材1、雄型嵌合部材3、リベット部材2,4は、何れも、ポリエステル製であるが、ポリブチレンテレフタレートやポリアセタール等であってもよい。
【0012】
リベット部材2,4は、円形頭部5a,6aの裏面中央部に断面円形で且つ先鋭な突起5b,6bを突設したものである。
【0013】
雌型嵌合部材1は、前記リベット部材2の突起5bを挿入する円形で且つ突起5bの太さと略等しい(例えば、0.1mm程度大きい)内径の貫通孔7aが形成された円形基板8aの表面(可撓性シートBと対面する面とは反対側の面)に、前記貫通孔7aと同芯状に突出した略円筒状で且つ先端側内周面に周方向複数個に分割された係合用膨出部(アンダーカット部)9aを形成した雌型嵌合部10aを一体成型したもので、前記可撓性シートBに刺し通したリベット部材2の突起5bを貫通孔7aに挿入し、その突出先端部を打撃により拡径変形させてカシメ止めするように構成されている。前記係合用膨出部9aは雌型嵌合部10aの先端よりも若干距離(例えば、0.1〜1mm程度)低い位置に設けられている。また、雌型嵌合部10aの裏面側には、放射状の補強リブ11で周方向複数個に区画された環状の溝12が形成されている。
【0014】
雄型嵌合部材3は、前記リベット部材4の突起6bを挿入する円形で且つ突起6bの太さと略等しい(例えば、0.1mm程度大きい)内径の貫通孔7bが形成された円形基板8bの表面(可撓性シートBと対面する面とは反対側の面)に、前記貫通孔7bと同芯状に突出した略円筒状で且つ先端側外周面に周方向複数個に分割された係合用膨出部(アンダーカット部)9bを形成した雄型嵌合部10bを一体成型したもので、前記可撓性シートBに刺し通したリベット部材4の突起6bを貫通孔7bに挿入し、その突出先端部を打撃により拡径変形させてカシメ止めするように構成されている。
【0015】
この実施形態は、上記構成の合成樹脂製スナップファスナーにおいて、雄型嵌合部材3における円形基板8bの表面外縁部に、雄型嵌合部10bよりも背の高い環状隆起部13を設けて、雄型嵌合部10bの先端を当該環状隆起部13の先端よりも若干距離(例えば、0.1〜1mm程度)h、軸芯方向内方に位置させる一方、雌型嵌合部材1の外径を環状隆起部13の内径より僅かに小さくし、雌,雄スナップA,Aの嵌合状態において、雌型嵌合部10aが雄型嵌合部10bと環状隆起部13との間に形成された環状溝14に嵌り込むことにより、雄型嵌合部材3に対する雌型嵌合部材1の横方向への移動を環状隆起部13で阻止するように構成した点に特徴がある。
【0016】
尚、図示の例では、雌型嵌合部10aが雄型嵌合部10bと環状隆起部13との間に形成された環状溝14に嵌り込んだ状態において、環状隆起部13の内周面と雌型嵌合部10aの外周面との間に微小な隙間Sが形成されるような寸法関係に設定されているが、雌型嵌合部10aが雄型嵌合部10bと環状隆起部13との間に形成された環状溝14に嵌り込んだ際、環状隆起部13の内周面と雌型嵌合部10aの外周面が接触するように設定してもよい。また、図示の例では、環状隆起部13の先端側の内周面を垂直(軸芯と平行)に形成してあるが、先端側ほど半径方向外方に位置する傾斜面としてもよい。
【0017】
上記の構成によれば、雄型嵌合部材3における円形基板8bの表面外縁部に、雄型嵌合部10bよりも背の高い環状隆起部13を設けたので、雄型嵌合部10bの先端が環状隆起部13よりも軸芯方向内方に位置することになり、洗濯した衣服にアイロンやローラで、プレスを掛ける際、アイロンやローラが雄型嵌合部10bの先端に当たらず、雄型嵌合部10bの先端部(係合用膨出部9b)が押し潰されるのを防止できる。また、雌型嵌合部材1においても、係合用膨出部9aを雌型嵌合部10aの先端よりも若干距離低い位置に設けてあるので、アイロンやローラが雌型嵌合部10aの先端に当たらず、雌型嵌合部10aの先端部(係合用膨出部9a)が押し潰されるのを防止できる。
【0018】
しかも、雌,雄スナップA,Aの嵌合状態においては、図4の(B)に示すように、雌型嵌合部10aが雄型嵌合部10bと環状隆起部13との間に形成された環状溝12に嵌り込むことにより、雄型嵌合部材3に対する雌型嵌合部材1の横方向への移動が環状隆起部13で制限されるので、雌スナップAと雄スナップAを軸芯方向へ引き離すことによって、嵌合を外すことはできるが、衣服が面内方向に引っ張られる等して、雌スナップAと雄スナップAに横方向(矢印方向a,b)の力が加えられても、雌型嵌合部10aの外周面が環状隆起部11の内周面に当たって、雄型嵌合部10bの一定以上の変形が阻止されることになり、雌,雄スナップA,Aの嵌合が不測に外れる虞がない。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係る合成樹脂製スナップファスナーの構成部材を説明する斜視図である。
【図2】雄型嵌合部材の斜視図である。
【図3】雄型嵌合部材の縦断側面図である。
【図4】合成樹脂製スナップファスナーの縦断側面図である。
【図5】従来の合成樹脂製スナップファスナーの縦断側面図である。
【符号の説明】
【0020】
雌スナップ
雄スナップ
可撓性シート
可撓性シート
1 雌型嵌合部材
2,4 リベット部材
3 雄型嵌合部材
5a,6a 円形頭部
5b,6b 突起
7a,7b 貫通孔
8a,8b 円形基板
9a,9b 係合用膨出部
10a 雌型嵌合部
10b 雄型嵌合部
13 環状隆起部
14 環状溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性シートに刺し通す突起が円形頭部の裏面中央部に突設された合成樹脂製のリベット部材と、円形基板の表面に略円筒状で且つ先端側内周面に係合用膨出部を形成した雌型嵌合部が形成され、当該雌型嵌合部内の基板中央に前記シートに刺し通した突起を貫通させてカシメ止めするための貫通孔が形成された合成樹脂製の雌型嵌合部材とによる雌スナップと、可撓性シートに刺し通す突起が円形頭部の裏面中央部に突設された合成樹脂製のリベット部材と、円形基板の表面に略円筒状で且つ先端側外周面に係合用膨出部を形成した雄型嵌合部が形成され、当該雄型嵌合部内の基板中央に前記シートに刺し通した突起を貫通させてカシメ止めするための貫通孔が形成された合成樹脂製の雄型嵌合部材とによる雄スナップとから成る合成樹脂製スナップファスナーであって、雄型嵌合部材における円形基板の表面外縁部に、雄型嵌合部よりも背の高い環状隆起部を設け、雌,雄スナップが互いに嵌合した状態において、雌型嵌合部が雄型嵌合部と環状隆起部との間に形成された環状溝に嵌り込むことにより、雄型嵌合部材に対する雌型嵌合部材の横方向への移動を環状隆起部で阻止するように構成したことを特徴とする合成樹脂製スナップファスナー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−142360(P2008−142360A)
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−333918(P2006−333918)
【出願日】平成18年12月12日(2006.12.12)
【出願人】(397004836)武田精機株式会社 (9)
【Fターム(参考)】