説明

合成樹脂製容器

【課題】容器内への物品の収容及びこの容器からの物品の取出しを容易に行えるものとすると共に、不活性ガスによる置換作業を確実に、効率良く行うことを可能とする。
【解決手段】物品を載置する底面部1、及びこの底面部の周縁から立ち上がるように連設された長手方向側壁部2,2及び短手方向側壁部3,3により、上方に向かって開口する合成樹脂製の包装用容器10とする。底面部は、長手方向側壁部に沿うようにほぼ直線的に折り曲げ可能に形成された折曲部5を備える。折曲部の両端付近において、短手方向側壁部は部分的に切り欠かれた切欠部4を有する。これにより、折曲部を介して互いに対向する長手方向側面部の間隔を拡げたり狭めたりすることができ、容器内への物品の収容、及びこの容器からの物品の取出しを容易に行えるものとなる。また、切欠部を介して不活性ガスによる置換作業を短時間で確実に、効率良く行うことが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成樹脂製容器に係り、詳しくは、容器内に収容された物品が外部からの衝撃等によって破損してしまわないように保護したり、収容された物品が複数である場合、これらがばらばらとなってしまわないように一体的に保持したりするのに用いられる合成樹脂製容器の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
外部からの衝撃等によって物品が破損してしまわないように保護したり、複数の物品がばらばらとなってしまわないように一体的に保持したりするために、合成樹脂製容器により物品を収容することが行われている。たとえば、物品としてカステラやスポンジケーキといった柔らかい菓子等の食品を収容する場合、図8に示されるような側壁部102を備えた容器110が用いられている。
【0003】
このような容器110では、側壁部102が、物品の周囲側面全体を覆うものなっている。ゆえに、容器110内へ物品を収容したり、容器110からの物品を取出したりすることが容易ではなく、とりわけ柔らかいカステラやスポンジケーキを消費者が取り出すことは煩わしい作業となっている。
【0004】
そこで、容器からの物品の取出しを容易に行えるようにしたものについての技術はあまり提案されていないが、たとえば、容器の側壁を傾斜させて、収容する物品の側面と容器の側壁部内面との間に適度な空間(「膨出空間」)を形成するようにし、そこに取り出す際に指などを入れることができることから、容器に対する物品の出し入れがし易くなるようにしたものがある(特許文献1[図1]の符号10を参照)。
【0005】
他方、物品を衛生的に密閉、包装する技術において、物品を脱酸素状態で包装することが行われている。たとえば、物品としてカステラやスポンジケーキといった菓子等の食品を包装する場合、食味等の品質低下を抑制し、保存性を良くすることを目的として、容器内に食品を収容した後、この容器内に存在する空気を、窒素(N)ガスや炭酸(CO)ガス
等の不活性ガスを単体で、もしくはこれらを混合したもので置換することが行われている。
【0006】
この不活性ガス置換作業としては、たとえば、食品を収容した内容器をさらに外装袋の中に入れ、不活性ガス供給装置に接続されたノズルを用いて外装袋内及び内容器内へ不活性ガスを充填することにより行っている。
【0007】
ところが、このような従来の不活性ガス置換方法では、図8で示されるような内容器110の側壁部102の深さ(高さ)が大きいものである場合、内容器110の内部、特に、内容器110の底部101付近に存在する空気を追い出して不活性ガスに置換することが困難なものであった。
【0008】
また、内容器110の内部に存在する空気を追い出して不活性ガスに置換すること容易に行うため、内容器110の側壁部102に、空気を追い出すための切り欠け部や孔部を設けることが考えられる。しかしながら、無闇に内容器110の側壁部102に切り欠け部や孔部を設けると、むしろ、側壁部102の強度の低下を招いてしまう虞があり、また、製造コストも掛る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2006−96371号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記事情に鑑みて成されたものであり、容器内への物品の収容、及びこの容器からの物品の取出しを容易に行えるものとした容器を提供することを目的とする。
また、本発明は、不活性ガスによる置換作業を確実に、効率良く行うことを可能とした容器を提供することを他の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の請求項1に係る合成樹脂製容器は、物品を載置する底面部、及びこの底面部の周縁から立ち上がるように連設された側壁部を備え、これらによって物品を収容可能とする空間を形成する、上方に向かって開口する合成樹脂製の包装用容器であって、前記底面部の任意の位置にほぼ直線的に折り曲げ可能に形成された折曲部と、該折曲部の両端付近において前記側壁部が部分的に切り欠かれた切欠部とを有することを特徴とする。
【0012】
本発明の請求項2に係る合成樹脂製容器は、請求項1に記載の合成樹脂製容器において、前記容器の素材である合成樹脂が有する弾性力により、前記底面部に物品が載置されていないときは、前記底面部の折曲部が上方へ持ち上がるように該底面部の下面が地面から離れるようにし、また、前記底面部に物品が載置されたときは、その物品の重みによって前記底面部の折曲部が下方へ下がって該底面部の下面が接地することを特徴とする。
【0013】
本発明の請求項3に係る合成樹脂製容器は、請求項2に記載の合成樹脂製容器において、前記折曲部として、1本又は複数本の溝部が形成されることを特徴とする。
【0014】
本発明の請求項4に係る合成樹脂製容器は、請求項2に記載の合成樹脂製容器において、前記折曲部として、2本又は3本の溝部が形成されることを特徴とする。
【0015】
本発明の請求項5に係る合成樹脂製容器は、請求項1乃至4の何れか1項に記載の合成樹脂製容器において、前記折曲部は、底面部のほぼ中心を通る位置に形成されていることを特徴とする。
【0016】
本発明の請求項6に係る合成樹脂製容器は、請求項1乃至5の何れか1項に記載の合成樹脂製容器において、前記底面部は、折曲部を対称軸として、下面の両側端部付近に一対の隆起部を有することを特徴とする。
【0017】
本発明の請求項7に係る合成樹脂製容器は、請求項1乃至6の何れか1項に記載の合成樹脂製容器において、前記底面部は、四角形又は楕円形であることを特徴とする。
【0018】
本発明の請求項8に係る合成樹脂製容器は、請求項1乃至7の何れか1項に記載の合成樹脂製容器において、物品を外装袋に収容するための補助的な内容器として用いられることを特徴とする。
【0019】
本発明の請求項9に係る合成樹脂製容器は、請求項1乃至8の何れか1項に記載の合成樹脂製容器において、前記外装袋の内部の空気を不活性ガスで置換する場合に物品の内容器として用いられることを特徴とする。
【0020】
本発明の請求項10に係る合成樹脂製容器は、請求項1乃至9の何れか1項に記載の合成樹脂製容器において、前記物品として、穀物生地を加熱してなる菓子類、又はこの菓子類を用いた加工食品を収容するために用いられることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明の合成樹脂製容器は、底面部の任意の位置にほぼ直線的に折り曲げ可能に形成された折曲部と、該折曲部の両端付近において側壁部が部分的に切り欠かれた切欠部とを有するものとなっている。ゆえに、折曲部が上方へ持ち上がるように底面部を折り曲げると側壁部が外側に倒れて物品を収容可能とする空間の入口が拡がり、また、切欠部もあることから、側壁部に邪魔されずにスムーズに物品を収容し、かつ、取り出すことができる。
したがって、物品の製造業者等が物品の容器への収容作業を円滑に行うことができると共に、消費者等が容器から物品を取り出すことも容易に行える。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に係る合成樹脂製容器を示す斜視図である。
【図2】本発明に係る合成樹脂製容器を示す側面図である。
【図3】本発明に係る合成樹脂製容器を示す平面図である。
【図4】本発明に係る合成樹脂製容器における折曲部の構造を説明する部分拡大図である。
【図5】本発明に係る合成樹脂製容器の動きを説明する図であり、(A)物品を収容する前の状態を示す側面図、(B)物品を収容したときの状態を示す側面図である。
【図6】本発明に係る合成樹脂製容器の使用方法を説明する図であり、(A)物品を収容する前の状態を示す斜視図、(B)物品を収容したときの状態を示す斜視図、(C)物品を取り出す状態を示す斜視図である。
【図7】本発明に係る合成樹脂製容器を内容器として用いて外装袋内へ収容する状態を説明する図であり、(A)内容器を外装袋内へ収容する前の状態を示す斜視図、(B)内容器を外装袋内へ収容した後、窒素置換をする状態を示す斜視図、(C)外装袋の開口部を密閉した状態を示す斜視図である。
【図8】従来の合成樹脂製容器を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に係る合成樹脂製容器の好適な例を実施の形態として、図面に基づき説明する。本実施の形態においては、底面部の平面形状が四角形(長方形)である容器について説明する。
なお、以下に述べる実施の形態は、あくまでも本発明の好適な具体例であり、本発明の範囲は、これに限られるものではない。
【0024】
まず、本発明に係る合成樹脂製容器は、物品を載置する底面部、及びこの底面部の周縁から立ち上がるように連設された側壁部によって物品を収容可能とする空間を形成する、上方に向かって開口する合成樹脂製の包装用容器である。
このような合成樹脂製容器は、たとえば、合成樹脂素材を用いて圧空成形により製造されるが、真空成形や射出成形によっても、又、これらの成形方法を併用しても製造することができる。また、本発明に用いられる合成樹脂素材としては、たとえば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリスチレン(PS)、ポリプロピレン(PP)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエチレン(PE)、ABS樹脂のほか、エコロジー素材と言われる、100%植物由来のポリ乳酸樹脂(PLA)、澱粉を50%以上含むポリプロピレン(PP)混合樹脂、タピオカ樹脂を挙げることができ、これらのうち二つ以上の素材を組み合わせて用いても良い。
【0025】
本実施の形態における合成樹脂製容器10は、合成樹脂素材としてポリエチレンテレフタレート(PET)を用いて圧空成形により製造されたものであり、図1乃至図3に示すように、底面部1と、この底面部1の周縁から立ち上がるようにそれぞれ連設された、一対の長手方向側壁部2,2、及び一対の短手方向側壁部3,3によって形成された物品収容可能空間Sを有する。また、合成樹脂製容器10は、短手方向側壁部3にそれぞれ切欠部4を備えると共に、底面部1に折曲部5を備える。
なお、長手方向側壁部2に、長手方向側壁部2の強度低下を抑制する補強リブ9が設けられている。
【0026】
底面部1には、物品収容可能空間S内に収容した物品が載置される。本実施の形態において底面部1は、長方形の形状であり、該長方形の長手方向の二辺に平行に、かつ、底面部1のほぼ中心を通る位置に折曲部5を備える。
このように折曲部5が底面部1のほぼ中心を通る位置に形成されると、折曲部5を対称軸として底面部1の左右がほぼ対称となることから、物品を整然と載置したい場合には、折曲部5を目標として載置することで作業性が良い(向上した)ものとすることができる。
【0027】
この底面部1は、たとえば、物品が接した状態で配される載置部11と共に、傾斜部12とを有する。すなわち、底面部1は、全面的に高さが均一な平坦なものであっても良いが、部分的に高さが異なる領域を含むものとしても良い。この傾斜部12は、側壁部2の立ち上がる縁部側に向かうにしたがって徐々に深くなるように下方に窪むように設けられている。
【0028】
図において底面部1は、折曲部5を挟むように内側に配された載置部11,11と、この載置部11の外側にそれぞれ配された傾斜部12,12とから構成されたものとして示されている。
【0029】
切欠部4は、短手方向側壁部3,3に設けられ、互いに対向する一方の短手方向側壁部3と他方の短手方向側壁部3を部分的に切り欠くようにそれぞれ形成されている。
この切欠部4は、たとえば、折曲部5の端部5a(5b)から短手方向側壁部3の上縁部における所望の間隔を有する二つの箇所に向かって拡がるように切り欠かれた形状、具体的には、略V字形や略U字形をしたものとすると望ましい。
【0030】
図1及び図2において、切欠部4は、短手方向側壁部3の上縁部31において所定間隔を有して設けた二つの上縁部31a,31b(31c,31d)からそれぞれ、底面部1に設けられた折曲部5の端部5a(5b)までの領域を切り欠くことで、側面視略V字形に形成された状態が示されている。言い換えれば、短手方向側壁部3を切り欠くことで形成された切欠端縁部41,41が、底面部1側から上縁部31側に向かって拡がる、側面視略V字形をした形状となっている状態が示されている。
【0031】
このように切欠部4が略V字形をしていると、物品を取り出し易い。また、物品を脱酸素状態で包装する際に行われる物品収容可能空間S内の空気の置換作業を効率良く確実に行うものとすることができる。
【0032】
折曲部5は、底面部1の任意の位置に、長手方向にほぼ直線状に折り曲げ可能に形成された、長手方向側面部2,2の搖動を自在とするヒンジ部である。この折曲部5の端部5a,5bは、短手方向側壁部3側において露呈している。
図3において、折曲部5は、底面部1の中心点CPを通る位置に、長手方向に沿ってほぼ直線状に形成されたものとして示されている。
【0033】
折曲部5は、1本又は複数本の溝部により構成されたものとすることができる。溝部が1本であると、シンプルに折り曲げ可能となる。
また、溝部は、その形状や本数により弾力性の調整を行うことができる。すなわち、溝部が1本だと弾性力が強くなり過ぎる傾向にあり、物品が軽い場合には、底面部1に載置したときに十分に底面部1が下がらず、折曲部5がやや上方へ浮き、物品が安定的に載置できない虞がある。逆に、溝部が4本以上だと、折曲部5の折れ曲がり方が容器ごとにバラつき、また、折曲部5の幅が広くなり、折れ曲がるときに物品の表面を巻き込み傷ませる虞がある。ゆえに、溝部が2本又は3本の場合、弾性力の微妙な調整をすることができるため、比較的軽い物品を収容する合成樹脂製容器の場合に好適である。
【0034】
この折曲部5としては、たとえば、図4に示すように、2本の溝部51,52が形成されたものとすることができる。
これらの溝部51,52は、それぞれ合成樹脂素材のもつ柔軟さと弾性力によって、物品を底面部1の載置部11へ載せたときに、外部から負荷が掛ることで、ぞれぞれの溝部51,52の開口が狭まり、逆に、物品を底面部1の載置部11へ載せていないときは、外部から負荷が掛らないため、拡がった開口状態に戻るように機能する。
【0035】
すなわち、物品を収容していないときは、容器素材である合成樹脂の弾性力により底面部1が折り曲げられ折曲部5が上方へ持ち上がるように底面部1下面が地面から離れると共に、長手方向側壁部2が外側に倒れて物品を収容可能とする空間が拡がり、物品が収容し易い状態となる。一方、物品を底面部1に載置して収容したときは、物品の重みによって底面部1の折曲部5が下方へ下がって底面部1下面が地面に近づき、外側に倒れていた長手方向側壁部2が内側に立ち上がって収容する物品を保持・保護する状態となる。
【0036】
そして、このような構造の折曲部5は、物品収容可能空間S内への物品の収容や、その取り出しを効果的に行えるように、長手方向側壁部2,2を適切に動作させることができる。
【0037】
折曲部5は、図5(A)に示すように、底面部1に何も載置されていない状態のとき、その弾性力によって、互いに対向する長手方向側壁部2,2同士の間隔を拡げると共に、底面部1を上方へ持ち上げるように機能する。また、折曲部5は、底面部1に物品Cが載置された状態のとき、図5(B)に示すように矢印一点鎖線で示すように、その物品Cの重みによって互いに対向する長手方向側壁部2,2同士の間隔を狭めると共に、底面部1の下面を接地させるように機能する。
【0038】
図5(A)において、底面部1に何も載置されておらず、互いに対向する長手方向側壁部2,2同士が拡がった間隔d1を有し、底面部1に設けられた折曲部5が作業面Wより上方へ持ち上げられた高さtを有している状態が示されている。
また、図5(B)において、底面部1に物品Cが載置されると、互いに対向する長手方向側壁部2,2同士が狭められた間隔d2を有し、底面部1に設けられた折曲部5が作業面Wに接地した状態が示されている。すなわち、長手方向側壁部2,2は、拡がった間隔d1から狭められた間隔d2(d1>d2)となり、底面部1は、折曲部5を介して作業面W上に安定的に配された状態となる。
【0039】
したがって、本発明の合成樹脂製容器10は、図6(A)に示すように、容器10内への物品Cの収容前は、互いに対向する長手方向側壁部2,2同士の間隔が大きく拡がった状態であるので、容器内への物品の収容が容易に行えるものとなる。
また、図6(B)に示すように、容器10内への物品Cの収容後は、長手方向側壁部2が物品の近傍に位置し、物品Cが外部からの衝撃等によって破損しないように長手方向側壁部2等によって保護することができる。
さらに、図6(C)に示すように、容器10内から物品を取出すときは、上述のとおり合成樹脂素材のもつ弾性力によって溝部が拡がった開口状態に戻るように機能して、対向する長手方向側壁部2,2同士の間隔を拡げ、容器の上面が大きく開口すると共に、底面部1が上方に持ち上がる状態となり、物品の取出しが容易に行える。
【0040】
また、底面部1は、図2に示すように、その下面において対向する短手方向の両端部付近に、折曲部5を軸として対称に一対の隆起部6,6を有する。隆起部6は、上述した傾斜部12から延長するように設けることができる。
図において、底面部1から立ち上がる長手方向側壁部2の立ち上がり角部に沿って、隆起部6がそれぞれ設けられた状態が示されている。
【0041】
折曲部5が底面部1下面の真ん中で下方に突出していることから、物品を底面部1に載置したときに、折曲部5を軸(支点)として底面部1の両端部がシーソーのように交替に接地するような状態で不安定となることがあるが、上述のように底面部1に隆起部6を設けると、底面部1が安定的に接地して、物品が載置された合成樹脂製容器10が安定した状態とすることができる。
【0042】
また、本発明において底面部1は、本実施の形態以外のものについては図示しないが、その平面形状が四角形又は楕円形であると望ましい。
四角形又は円形とは、カステラやスコッチケーキ、ホールタイプのスポンジケーキ、バームクーヘン、パイなど、穀物生地を加熱してなる菓子類や、この菓子類を用いて果物やクリームや餡等と組み合わせた加工品の形状と適合する形状を意味する。
【0043】
このように底面部1の平面形状を四角形又は楕円形とすると、工業製品でポピュラーに採用されている形状である長方形、正方形、円形、楕円形といった物品に対応することができる。とりわけ、穀物生地を加熱してなる菓子類、又はこの菓子類を用いた加工品である物品を収容するのに適した容器とすることができる。
【0044】
本発明の合成樹脂製容器10においては、その上方に向かって開口しているが、物品収容可能空間S内に物品を収容後、その上から不織布シートや、フィルム等で覆うようにしても良いし、上面に別途蓋体を設けるものとしても良い。
また、本発明の合成樹脂製容器10は、物品を外装袋に収容するための補助的な内容器として用いることができる。特に、上述した穀物生地を加熱してなる菓子類や、この菓子類を用いた加工食品を収容するための内容器としての使用に好適である。
【0045】
以上のように構成した本発明の合成樹脂製容器10は、物品を収容した内容器を外装袋で全体的に被覆し、これら内容器及び外装袋の内部の空気を不活性ガスで置換する包装手段における、内容器として用いることができる。
このような包装手段は、たとえば、図7に示すことができる。
まず、図7(A)に示すように、物品Cを収容した内容器10を、さらに外装袋60で全体的に被覆する。
【0046】
次いで、図7(B)に示すように、外装袋60の内に不活性ガス(窒素)注入管61と、濃度測定器に接続された濃度測定管(センサノズル)62を挿入し、不活性ガス(窒素)注入管61より外装袋60の内に不活性ガス(窒素)を注入して充填すると共に、その濃度を濃度測定管62により測定する。不活性ガスの注入は、その濃度が一定の基準値に達するまで行う。
そして、内容器10及び外装袋60の内部の空気(酸素)が不活性ガス(窒素)で置換された後、図7(C)に示すように、外装袋60の開口部を溶着等により封止する。
【0047】
このような包装手段により、物品収容可能空間Sの内部、特に底面部1付近に溜まっている空気(酸素)が、切欠部4を介して容易に物品収容可能空間Sの外へ逃げることが可能となるので、物品収容部の下方により多くの不活性ガスが行き渡り、効率良く確実に不活性ガスで置換を行うことができる。
【0048】
したがって、この内容器(合成樹脂製容器)10内に、物品として、穀物生地を加熱してなる菓子類、又はこの菓子類を用いた加工食品を収容するものとすれば、窒素置換による長期保存と、内容器による外部刺激からの保護が適切に行える食品を提供することができる。
【符号の説明】
【0049】
C 物品(菓子)、S 物品収容可能空間、W 作業面、1 底面部、2 長手方向側壁部、3 短手方向側壁部、4 切欠部、5 折曲部、6 隆起部、9 補強リブ、10 合成樹脂製容器(内容器)、11 載置部、12 傾斜部、31 上端部、41 切欠端縁部、51,52 溝部、60 外装袋、61 不活性ガス(窒素)注入管、62 濃度測定管。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品を載置する底面部、及びこの底面部の周縁から立ち上がるように連設された側壁部を備え、これらによって物品を収容可能とする空間を形成する、上方に向かって開口する合成樹脂製の包装用容器であって、
前記底面部の任意の位置にほぼ直線的に折り曲げ可能に形成された折曲部と、
該折曲部の両端付近において前記側壁部が部分的に切り欠かれた切欠部と、
を有することを特徴とする合成樹脂製容器。
【請求項2】
前記容器の素材である合成樹脂が有する弾性力により、前記底面部に物品が載置されていないときは、前記底面部の折曲部が上方へ持ち上がるように該底面部の下面が地面から離れるようにし、また、前記底面部に物品が載置されたときは、その物品の重みによって前記底面部の折曲部が下方へ下がって該底面部の下面が接地することを特徴とする請求項1に記載の合成樹脂製容器。
【請求項3】
前記折曲部として、1本又は複数本の溝部が形成されることを特徴とする請求項2に記載の合成樹脂製容器。
【請求項4】
前記折曲部として、2本又は3本の溝部が形成されることを特徴とする請求項2に記載の合成樹脂製容器。
【請求項5】
前記折曲部は、底面部のほぼ中心を通る位置に形成されていることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の合成樹脂製容器。
【請求項6】
前記底面部は、折曲部を対称軸として、下面の両側端部付近に一対の隆起部を有することを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載の合成樹脂製容器。
【請求項7】
前記底面部は、四角形又は楕円形であることを特徴とする請求項1乃至6の何れか1項に記載の合成樹脂製容器。
【請求項8】
物品を外装袋に収容するための補助的な内容器として用いられることを特徴とする請求項1乃至7の何れか1項に記載の合成樹脂製容器。
【請求項9】
前記外装袋の内部の空気を不活性ガスで置換する場合に物品の内容器として用いられることを特徴とする請求項1乃至8の何れか1項に記載の合成樹脂製容器。
【請求項10】
前記物品として、穀物生地を加熱してなる菓子類、又はこの菓子類を用いた加工食品を収容するために用いられることを特徴とする請求項1乃至9の何れか1項に記載の合成樹脂製容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−28358(P2013−28358A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−165105(P2011−165105)
【出願日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【出願人】(000178594)山崎製パン株式会社 (42)
【出願人】(593144851)東海プラスチック工業株式会社 (1)
【Fターム(参考)】