説明

合成樹脂製積層ボトル

【課題】従来のエアゾール容器よりも低い圧力で内容液を安定的に排出できる合成樹脂製積層ボトルを提案する。
【解決手段】ボトルの本体部分を形成する少なくとも一層からなる合成樹脂製の外層1と、この外層1の内側で該外層の内周面に部分的又は全体的に剥離、縮減可能に配置される合成樹脂製の内層2とを備えた合成樹脂製積層ボトルにおいて、前記外層1はガスの透過を阻止するガス不透過層を少なくとも一層有しており、前記内層をガスを含む内容液の充填空間を形成し、該ガスの透過を許容して外層との相互間にてガスの貯留空間3を形成するガス透過層にて構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内層の一部又は全部を外層の内面より剥離、縮減可能な内層を備えた合成樹脂製積層ボトルに関するものであり、内容液に含まれるガス(内容液に溶け込んだ炭酸飲料のような液体)の圧力を利用して該液体の安定的な排出を実現しようとするものである。
【背景技術】
【0002】
エアゾール容器は、ヘアースプレー等の化粧料や害虫駆除等の薬剤を入れた容器に適用されておりその用途は極めて広いが、内容物とともに充填される加圧ガスはその圧力が比較的高いため、この種の容器にあっては容器の変形や破損を起こしやすいことから安全対策を施しておくことが必要不可欠でその構造の複雑化が避けられない状況にあり、比較的低い圧力を利用した内容液の排出が望まれているところ、このような容器はポンプ式の容器を除いては今のところ存在していないのが現状であって、この点に関する先行技術としては、トップキャップの上部に小孔を設けるとともにこの小孔を低融点物質で塞ぎ、弁ケースのフランジ及び各ガスケットに低融点物質で塞いだ小孔へ通じる通気孔を設けた防爆機構が提案されている(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】特許第2507568号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の課題は、内容液の排出にかかわる圧力の低減を図りつつも内容物を安定的に排出することができる新規な合成樹脂製積層ボトルを提案するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、ボトルの本体部分を形成する少なくとも一層からなる合成樹脂製の外層と、この外層の内側で該外層の内周面に部分的又は全体的に剥離、縮減可能に配置される合成樹脂製の内層とを備えた合成樹脂製積層ボトルであって、
前記外層はガスの透過を阻止するガス不透過層を少なくとも一層有しており、
前記内層はガスを含む内容液の充填空間を形成し、該ガスの透過を許容して外層との相互間にてガスの貯留空間を形成するガス透過層からなることを特徴とする合成樹脂製積層ボトルである。
【0005】
上記の構成になるボトルにおいては、ボトルの口部に固定保持され、バルブを開放することによって内層内の内容液を該内容液に含まれるガスに由来する圧力によって排出する吐出器を配置することができる。
【発明の効果】
【0006】
内容液に溶け込んだガスは経時変化によりボトルの上部におけるヘッドスペース部分に充満されるとともに、内層を通過して該内層と外層との間へと移行しその相互間に形成される貯留空間に充満される。この状態で吐出器の閉塞弁を開放すると内容液は該閉塞弁につながるステム、ノズルを通して外界へ排出され、内層の圧力は急速に低下する一方、これと同時に貯留空間内に充満しているガスにより貯留空間が膨張して内容液の排出に寄与することになり、ガス圧がそれほど高くなくとも内容液は安定的に排出されることとなる。
【0007】
かかる排出形式では、内容液が排出されたのちにおいては内層の容積は減少した状態になるが経時変化によってヘッドスペース及び貯留空間にガスが充満され内層の体積は復元することになり、とりわけ定量的な排出を行うことができる利点がある。
【0008】
また、ボトル内の圧力は通常のエアゾール容器に比較して小さく設計できる(約70%程度)ため、容器の変形や破損を引き起こすことがない。また、容器を構成する材料の使用量の削減を図ることも可能でありボトルの軽量化、コンパクト化が可能であり、さらにボトルのデザイン面での自由も高まる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、図面を用いて本発明をより具体的に説明する。
図1は本発明にしたがう合成樹脂製積層ボトルの実施の形態をその断面について示した図である。
【0010】
図における1はボトルの本体部分を形成する外層(体)である。この外層1は一層若しくは複数層にて構成されるが、少なくとも一層のガス不透過層(ポリアミド樹脂やEVOH等)を有している。外層1を複数層にて構成し、その中間層及び最外層の何れかにガス不透過層を配置する場合には外層1を構成する各層(とくにガス不透過層よりもボトル内方側の層)の相互間に接着層を介在させること等によって剥離不能にしておくことが好ましい。また、外層1のうち、最も内側に位置する層をガス不透過層とすることによって剥離による貯留空間を効率的に形成することができる。
【0011】
また、2は外層1の内側で該外層1の内周面に部分的又は全体的に剥離、縮減可能に配置される内層(体)である。この内層2はガスを含む内容液の充填する充填空間を形成するとともに該ガスの透過を許容するガス透過層(例えば、ポリエチレンテレフタレート樹脂等)からなる。部分的な剥離を行うには、内層2と外層1との間の剥離部分を除く領域に接着層を設けるか、あるいは凹凸リブ等の連結手段にて内外層の接触面積を増大させたり剥離抵抗力を高めることによって達成することができる。
【0012】
また、3は内層2と外層1との間に形成されるガスの貯留空間である。この貯留空間3はボトルのヘッドスペースにガスが充満し(内容液の排出前)内圧バランスが平衡状態に保たれている場合には内層2が外層1に密着または近接していて該貯留空間3は明確には現れないが、内容液の排出により内層2内の圧力が低下したときに図2に示すように膨張する。
【0013】
4はボトルの口部に固定保持された吐出器である。この吐出器4はボトルの口部に隔壁4aを介して吊り下げ保持されステム4bの押圧によって通路の開放を可能とするバルブ4cと、このバルブ4cにつながる排出パイプ4dと、ステム4bにつながり該ステム4bを押圧して内容液を排出する押圧ヘッド4eからなる。
【0014】
内容液に溶け込んだガスは経時変化によりボトルの上部におけるヘッドスペース部分Sに充満されるとともに、内層2を透過して該内層2と外層1との間へと移行する。この状態で押圧ヘッド4eを押圧して吐出器4のバルブ4cを開放すると内容液は吸引パイプ4dを通りバルブ4c、ステム4bを経て押圧ヘッド4eのノズルから外界へ排出される。
【0015】
内容液の排出により内層2の圧力は急速に低下する一方、これと同時に貯留空間3は充満しているガスにより内容液の排出に寄与することになり、ガス圧が従来のエアゾール容器ほど高くなくとも内容液は安定的に排出されることとなる。
【0016】
かかる排出形式では、内容液が排出されたのちにおいては内層2の容積は減少した状態になるが経時変化によってヘッドスペースS及び貯留空間3にガスが充満され内層2の体積は復元することになり、とりわけ定量的な排出を行うことができる利点がある。
【0017】
また、ボトル内の圧力は通常のエアゾール容器に比較して約70%程度小さく設計できる。また、容器を構成する材料の使用量の削減を図ることも可能でありボトルの軽量化、コンパクト化が可能であり、さらにボトルのデザイン面での自由も高まる。
【0018】
上記の構成例は積層ボトルを例として説明したが、かかるボトルは外容器の内側に容積の減少を可能とする袋状の内容器を配置した二重容器を適用することも可能であり、この場合、内容器はガスの透過を許容する材料で構成し、外容器には少なくともガスの透過を阻止する材料を一層設けるように構成する。
【0019】
ガスの透過を許容する材料及びガスの透過を抑制する材料としては、内容物及びガスの種類、目的とする吐出形態(量)によって適宜適切な材料を選択して使用する。また、層の肉厚、材料密度、結晶化度、配向度等の観点からも、適切な樹脂材料及び材料グレードを選択することができる。また、外層1を金属で形成し、内層2を樹脂材料で形成することも可能である。
【0020】
図3、図4は本発明にしたがうボトルBを適用しその中に加圧媒体(液化ガスやガスが溶け込んだ溶媒)のみを充填して該ボトルBから排出されたガスの圧力でもってその上部に位置する容器(減容可能なデラミタイプの袋状容器)あるいは中皿を押圧、上昇させて内容物を定量的に排出する構成例を示したものである。
【0021】
図3、4において、5はボトルのステム4bに連係する連係部材、6はこの連係部材5にねじ止めされるカバー体(図4のものはカバー体自体が容器本体を構成する)、7はカバー体6の内側に配置されその内部に内容物を収納する減容可能な袋状の内容器、8はカバー体6の上端開口に固定保持される吐出器、9はカバー体6の内周面において摺動可能で該カバー体6の内周面と協働してその内側に内容物の収納空間を形成する中皿である。ここに、カバー体6と連係部材5とは排出されたガスでもって確実に内容器7あるいは中皿9を押圧することができるように気密状態に保持される。
【0022】
上記の構成になる容器は、内容液を入れる容器と加圧媒体を入れる容器がそれぞれ別体になっているので不使用時にはそれらを相互に分離して収納することが可能であり安全性がより一層高められる。また、通常のエアゾール容器では、内容物が残っているにもかかわらず加圧媒体のみが抜け出てしまうこともあるが、内容液と内容液を排出するためのガスが個別の容器に充填されているものにおいては内容液の確実な排出が可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0023】
比較的低い圧力でもって内容液の排出が可能な合成樹脂製積層ボトルが提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明にしたがう合成樹脂製積層ボトルの実施の形態を示した図である。
【図2】図1に示したボトルにおいて内容液を排出した状態を示した図である。
【図3】本発明にしたがう合成樹脂製積層ボトルを二重容器に適用した例を示した図である。
【図4】本発明にしたがう合成樹脂製積層ボトルをスライド式の中皿を備えた容器に適用した例を示した図である。
【符号の説明】
【0025】
1 外層
2 内層
3 貯留空間
4 吐出器
4a隔壁
4bステム
4cバルブ
4d排出パイプ
4e押圧ヘッド
5 連係部材
6 カバー体
7 内容器
8 吐出器
9 中皿
B ボトル
S ヘッドスペース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボトルの本体部分を形成する少なくとも一層からなる合成樹脂製の外層と、この外層の内側で該外層の内周面に部分的又は全体的に剥離、縮減可能に配置される合成樹脂製の内層とを備えた合成樹脂製積層ボトルであって、
前記外層はガスの透過を阻止するガス不透過層を少なくとも一層有しており、
前記内層はガスを含む内容液の充填空間を形成し、該ガスの透過を許容して外層との相互間にてガスの貯留空間を形成するガス透過層からなることを特徴とする合成樹脂製積層ボトル。
【請求項2】
ボトルの口部に固定保持され、バルブを開放することによって内層内の内容液を該内容液に含まれるガスに由来する圧力によって排出する吐出器を備える、請求項1記載の合成樹脂性積層ボトル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−269611(P2009−269611A)
【公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−118902(P2008−118902)
【出願日】平成20年4月30日(2008.4.30)
【出願人】(000006909)株式会社吉野工業所 (2,913)
【Fターム(参考)】