説明

合成樹脂複合体及びその製造方法

【課題】竿素材の外面を清浄にし、装飾層との密着性を向上させるとともに、装飾層の表面を改質処理しながら素材の軽量化を図ることのできる竿体を提供する。
【解決手段】強化繊維にマトリックス樹脂を含浸させたプリプレグによって形成された竿素材1の外面又はその竿素材1の外面に施された塗膜層3の外面における処理領域の全域を、高エネルギーを付与する手段によって作動ガスから生成された高エネルギー粒子を局所的に作用させさせながら処理領域に亘って作用させて被処理面2に形成してある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、素材の外面に装飾層を形成してある合成樹脂複合体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
竿素材の外周面に装飾層を形成するに、直接、前記外周面にウレタン樹脂系の塗料を、刷毛塗り又は吹き付けによって塗布して形成していた(特許文献1)。
【特許文献1】特開2007−110925号公報(段落〔0023〕,図1及び図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記竿素材の外周面に対しては、塗装を行う前に外径等を整え表面を清浄にするために研磨加工等を施していた。
しかし、竿素材の外周面に細かい有機物等が付着することを完全には除去できないものである。
また、焼成前の竿素材の保形性を維持するために、保形テープを竿素材の表面に螺旋状に巻き付けていくが、焼成後にその保形テープを取り去った竿素材の表面には螺旋状の保形テープ跡が残っている。
この保形テープ跡を完全に取り去ることが出来ないわけではないが、そのためには研磨工程での作業負担が大きなものとなり、かつ、竿素材の肉厚が薄くなり、強化繊維の切断損傷を招来し、敢えて、その保形テープ跡を残した状態で装飾層を塗布形成することもあった。
その為に、螺旋部の境界に有機物等の他の雑物が溜まり易く、それらが、竿素材の外周面と装飾層との密着性を阻害することがあった。
【0004】
また、装飾層の表面に、撥水性等を付与する場合には、撥水性の塗料等を付与することで行っていたが、塗料を塗布すると重量的に重いものとなり、素材の軽量化に反するものとなっていた。
【0005】
本発明の目的は、素材の外面を清浄にし、装飾層との密着性を向上させるとともに、装飾層の表面を改質処理しながら素材の軽量化を図ることのできる合成樹脂複合体を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
〔構成〕
請求項1に係る発明の特徴構成は、強化繊維にマトリックス樹脂を含浸させたプリプレグによって形成された素材の外面に装飾層を形成するとともに、前記素材の外面又は前記装飾層の外面における処理領域の全域を、高エネルギーを付与する手段によって作動ガスから生成された高エネルギー粒子を局所的に作用させながら前記処理領域に亘って作用させて被処理面に形成してある点にあり、その作用効果は次の通りである。
【0007】
〔作用効果〕
素材の外面に高エネルギー粒子を作用させることによって、高エネルギー粒子の酸素分子と有機物中の炭素分子とが反応して二酸化炭素等の化合物となって前記外面より除去され、かつ、金属酸化物と他の高エネルギー粒子の水素分子とが還元反応して、揮発性等の化合物に変化して除去される。また、作動ガスとして圧縮空気等を素材の表面に作用させることにより、その他の雑物が高エネルギー粒子との衝突により取り除かれ装飾層との境界面が清浄になり、密着性が向上する。
これによって、素材の外面と装飾層との剥離等が抑制され、安定した装飾美を維持できる。
また、作動ガスとして弗素や塩素を含むガスを素材の外面や装飾層の外面に作用させることによって、弗素や塩素を含むガスの撥水基と素材の外面や装飾層に含まれる原子とが結合して、素材の外面や装飾層に撥水性を付与することができる。しかも、素材や装飾層自体の外面を改質して撥水性を付与するので、撥水性の塗料を塗布する場合のように重量増を来たさない。
【0008】
〔構成〕
請求項2に係る発明の特徴構成は、前記高エネルギーを付与する手段が、大気圧又は大気圧から減圧されて高真空に至らない減圧下において、電極間に高周波又は直流パルス電圧を印加して、作動ガスからプラズマを発生させる手段である点にあり、その作用効果は次の通りである。
【0009】
〔作用効果〕
(1) 素材の外面に高エネルギー化された粒子を作用させることによって、その粒子と有機物等とが反応して反応物が除去されてクリーニング面が形成される。また、高エネルギー化された粒子が素材の外面に接触作用することによってその外面性状が変化して表面改質面が形成される。
この場合に、高エネルギー粒子として利用されているのが、高エネルギー手段によって生成されたプラズマを構成するラジカルやイオンであるので、作動ガスを送り込み、電極間に所定の電圧を作用させる限り、大量のラジカル等を生成することができ、効率よくクリーニング作用を施すことができる。
(2) プラズマを生成するのに、大気圧又は大気圧から減圧されて高真空に至らない減圧下において行っているので、高真空を必要とする場合に比べて、設備として大規模なものを必要としない。
【0010】
〔構成〕
請求項3に係る発明の特徴構成は、前記装飾層が塗料を塗布して形成されている塗膜層である点にあり、その作用効果は次の通りである。
【0011】
〔作用効果〕
塗料を塗布して装飾層としての塗膜層を形成してある。したがって、塗料を塗布する手法であっても、素材の外面が清浄化され密着性が向上しているので、長期に亘って塗膜層の剥離等を回避できる。
【0012】
〔構成〕
請求項4に係る発明の特徴構成は、前記装飾層が薄膜層であり、局所的に高エネルギーを付与する手段によって、原料の化学反応を促進させて、生成された反応化合物を堆積させて前記薄膜層を形成している点にあり、その作用効果は次の通りである。
【0013】
〔作用効果〕
(1) 薄膜層を形成するにCVD製法を用いているが、局所的に高エネルギーを付与するので、素材に与える熱的影響が少なく、素材に含まれる硬化剤等の劣化を抑制できる。
(2) 被処理面を形成するのに、高エネルギー化手段によって高エネルギー粒子を素材の外面に作用させているので、薄膜層と同様の製造手法によって形成されていることとなる。
したがって、被処理面と薄膜層とを形成するに、同様の製造手法を用いて行うことができ、製造装置等を兼用化でき、連続的な製造工程を構築できる。
【0014】
〔構成〕
請求項5に係る発明の特徴構成は、前記装飾層が薄膜層であり、大気圧または大気圧より減圧されて高真空に至らない減圧下において、一対の電極間に高周波もしくは直流パルス電圧を印加して、前記電極間に導入した作動ガスから非平衡プラズマを現出し、前記非平衡プラズマによって原料に対して局所的で高エネルギーを付与して化学反応を促進し、化学反応によって生成された反応化合物を前記被処理面の外側に堆積させて形成してある点にあり、その作用効果は次の通りである。
【0015】
〔作用効果〕
装飾層としての薄膜層を、原料に対して局所的でかつ高エネルギーを付与して化学反応を促進する手段として、非平衡プラズマを採用している。これによって、電離した電子は高温であっても、ラジカルや他の励起種等の粒子は低温であるために、素材上に形成される成膜の温度も低温であり素材に与える熱的影響が少ない。
【0016】
〔構成〕
請求項6に係る発明の特徴構成は、大気圧または大気圧より減圧されて高真空に至らない減圧下において、一対の電極間に高周波もしくは直流パルス電圧を印加して、前記電極間に導入した作動ガスからプラズマを現出し、前記プラズマを構成するイオン及び/又はラジカルを、強化繊維にマトリックス樹脂を含浸させたプリプレグによって形成された素材の外面に作用させて被処理面を形成する前処理工程と、
大気圧または大気圧より減圧されて高真空に至らない減圧下において、一対の電極間に高周波もしくは直流パルス電圧を印加して、前記電極間に導入した反応ガスから非平衡プラズマを現出し、前記非平衡プラズマによって原料に対して局所的で高エネルギーを付与して化学反応を促進し、化学反応によって生成された反応化合物を前記被処理面の外側に堆積させて形成した装飾層を形成する装飾工程とからなる点にあり、その作用効果は次の通りである。
【0017】
〔作用効果〕
素材の外面に対する前処理工程及び装飾工程共に、高エネルギー化手段を駆使して所定の処理を行うものであるので、両工程をプラズマ処理装置で連続的に行うことができ、段取り替えの時間も最小限に抑えることができ、製造効率を高めることができる。
【0018】
〔構成〕
請求項7に係る発明の特徴構成は、前記素材が筒状の竿素材である点にあり、その作用効果は次の通りである。
【0019】
〔作用効果〕
CVDによる製法を用いることができるので、筒状を呈する三次元的な素材であっても、表面処理と成膜を短時間で行うことができ、多品種少量生産品である釣り竿であっても、能率よく生産することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
〔第1実施形態〕
大気圧プラズマ処理装置4を使用して、合成樹脂複合体としての釣り竿の各竿体Aの竿素材1について表面処理を行う構造について説明する。処理対象となる竿体Aの構造について説明する。
図示してはいないが、炭素繊維等の強化繊維を一方向に引き揃えたものに、エポキシ等の熱硬化性樹脂を含浸させて、プリプレグシートを構成する。その他、バルクモールド法、シートモールド法を利用して、プリプレグシートを構成してもよい。このプリプレグシートを所定形状に裁断して、メインパターンを形成する。この他、竿尻端等の補強を図る為に、メインパターンより軸芯長の短い補強パターン等が使用される。
【0021】
メインパターンとして、強化繊維を周方向に引き揃えた第1層と、強化繊維を軸線方向に沿って引き揃えた第2層と、強化繊維を周方向に引き揃えた第3層とを揃える。これらを重ね合わせてマンドレルに巻回し、または、順次マンドレルに巻回して積層していくことによって、筒状体を構成する。筒状体をマンドレルと一体で焼成し、マンドレルを脱芯後所定長さに裁断し研磨処理等を行って竿素材1を構成する。
竿素材1の外面には、後記する表面処理が施されて被処理面2が形成され、その被処理面2の外側に樹脂塗料を施して装飾層Bが形成されて、竿体Aが形成される。
このように構成された竿素材1の外面には、強化繊維が表出して、樹脂と強化繊維とが混在する状態となっている。
【0022】
次に、この竿素材1の外面に被処理面2を形成する大気圧プラズマ処理装置4について説明する。カバーケース4Aの内側に円筒状の陽極5が設置され、カバーケース4Aの中心部に棒状の陰極6が配置され、陽極5と陰極6とが直流電源11に接続される。カバーケース4Aの上面に作動ガスを投入する作動ガス投入口7、カバーケース4Aの下部に反応性ガスを投入する原料投入口8を備えて、大気圧プラズマ処理装置4は構成されている。
【0023】
なお、大気圧プラズマ処理装置4は、上方側のプラズマ発生領域9と、下方側の反応領域10とに区分けされる。反応領域10においては、原料としての反応性ガスを原料投入口8から投入してプラズマと接触させ、反応性ガスをイオン化によって高エネルギー化して、竿素材1に向けて放出する。原料の反応領域10を、反応化合物の竿素材1に向かう出口4a付近に設けることによって、プラズマの発生が安定して行えるようにしてある。
【0024】
ここに、カバーケース4Aの材質としては、真鍮、銅などの放熱性に優れた金属、合金等を用いるのが望ましい。陽極5については、カバーケース4Aと同等な材料を用いるのが望ましい。陰極6については、真鍮や銅、チタン、タングステン等の導電性を有する金属、合金等が採用される。
【0025】
上記したように、プラズマ発生領域9と反応領域10とは分離されており、大気圧でプラズマを発生させるプラズマ発生領域9内では高密度なプラズマを安定させて発生させることができ、その高密度なプラズマを用いて反応領域10で反応性ガスのプラズマ化が促進される。
また、安定した高密度なプラズマを用いるため、作動ガスとしては特に不活性ガスを用いる必要はなく、圧縮空気等を使用しても、プラズマを発生させることができる。
【0026】
表面処理を受ける竿素材1は、支持フレーム12に取り付けられて、自身の軸芯X周りで回転すべく構成してあり、外周面の全域に亘って均等に表面処理が行われるようにしてある。
【0027】
次に、竿素材1に対する前処理工程を行う運転方法について説明する。
(1) 前記したように、作動ガスとしては、窒素、酸素、圧縮空気等が使用されるが、アルゴン、ヘリウム等の不活性ガスを使用してもよい。竿素材1の外面に付着した有機汚染物を取り除く場合には、作動ガス内に前記した窒素等ともに、反応性ガスとして酸素、空気、炭酸ガス等の酸化性ガスが使用される。また、金属酸化物の還元を行う場合には、反応性ガスとして、水素、アンモニア等の還元性ガスを用いることができる。
【0028】
(2) 反応性ガスと作動ガスとを混合した反応ガスにおいて、作動ガスの体積割合は90〜99atm%である。また、作動ガスのガス流量は、10L/min〜50L/minの範囲が適切であり、望ましくは、30L/minである。
(3) 使用電源11としては、高周波電源でも可能であるが、ここでは、直流パルス電源を使用する。パルスの立ち上がりが10μs以下のものであり、電界強度が1.0〜1000kv/cmで望ましくは20〜300kv/cmである。パルスのオン時間を200μsとする。
(4) 放電形態はグロー放電である。
【0029】
以上のような大気圧プラズマ処理装置4によって、次のような表面処理が行われる。
(1) 前記した作動ガスを作動ガス投入口7より投入し、前記した電極5、6間に前記した直流電界を与える。
(2) 大気圧プラズマ処理装置4のカバーケース4Aにおいて、主電極5、外側電極6との間で、作動ガスをプラズマ化する。つまり、反応ガス中の作動ガスが直流パルス電源によってプラズマ化されて、イオン、ラジカル、電子が一体となった非平衡プラズマが発生する。
【0030】
(3) プラズマ化によって発生した、イオン、ラジカル等は、それら自体が高エネルギー粒子となり、これらの高密度の非平衡プラズマは反応領域10に向かう。
(4)反応領域10では、原料投入口8から原料としての反応性ガスが投入されて、非平衡プラズマによって、反応性ガス内の粒子がプラズマ化される。
具体的には、有機汚染物を除去する表面クリーニングにおいては、反応性ガスとして酸素、空気、炭酸ガス等の酸化性ガスが使用される。また、金属酸化物の還元を行う場合には、反応性ガスとして、水素、アンモニア等の還元性ガスを用いることができる。
【0031】
(5)プラズマ化した作動ガスは、竿素材1に向かうとともに、反応性ガスをイオン化して、反応ガス全体が高エネルギー粒子を含むものとなる。
ここで、高エネルギーとは、略100evのエネルギー状態をいう。
(6) プラズマ化され高エネルギー粒子を含む反応ガスは、図外のブロワによって投入された速度を維持しながら、カバーケース4Aの出口4aより放出されて、竿素材1の外面に吹き付けられ、竿素材1の表面クリーニング或いは表面改質を行う。
【0032】
(7) 竿素材1の外面に至った酸化性ガスのラジカル(高エネルギー粒子)は有機汚染物の炭素と結合して揮発性の炭酸ガスとなって、竿素材1の外面に付着した有機汚染物を消失させる。同様に、反応性ガスとして還元性ガスを使用している場合には、その還元性ガスが竿素材1の外面に付着する金属酸化物等と化合して、還元物として消失させる。
(8) 以上のような処理によって、竿素材1の外面に被処理面2を形成する。
【0033】
前処理工程を終えて、竿素材1の外面に形成された被処理層2の上に装飾層Bを形成する。ここでは、装飾層Bは、通常の塗膜層3によって、形成する。つまり、被処理面2の上からエポキシ樹脂系の塗料を塗布し、更に、その上からウレタン樹脂系の塗料を塗布する。両塗料は、吹き付け塗装方法か、扱き塗装方法で行われる。塗装厚みは、エポキシ樹脂系の塗料で1ミクロン、ウレタン樹脂系の塗料で10ミクロン位である。被処理面2の形成によって、プライマー処理剤としての機能も担っているエポキシ樹脂系の塗料層は省略してもよい。
【0034】
装飾層Bの外面に撥水性を付与する場合には、再度、大気圧プラズマ処理装置4によって、処理を行うことができる。この場合に作動ガスに混合する反応性ガスとしては、弗素や塩素等の撥水基を含むガスを用いることができる
そして、塗膜層3の外面に撥水性を持たせる表面改質処理を行う場合には、前記した非平衡プラズマによって、反応性ガスとしての弗素、塩素等の撥水基を含む反応性ガスの分子等がイオン化及びラジカル化して、そのイオン及びラジカル(高エネルギー粒子)が塗膜層3内の分子等と化合して、塗膜層3に撥水性を付与する。
【0035】
上記した表面処理方法において、有機汚染物の処理や金属酸化物等の除去を必要としなければ、原料投入口8より反応性ガスを投入する必要はなく、作動ガスのみをプラズマ発生領域においてプラズマ発生のためのガスとして使用し、そのプラズマ化したガスを竿素材1の外面に作用させて被処理面2を構成してもよい。
【0036】
〔第2実施形態〕
次に、前処理工程を終えた竿素材1に、前記した塗膜層3の代わりに、装飾層Bとして薄膜層13を形成する場合の装飾工程を行う運転方法について説明する。ここで、使用する大気圧プラズマ処理装置4は、前記したものと略同様である。
【0037】
(1) プラズマを発生するために用いる作動ガスは、安定した高密度のプラズマを用いる為に、窒素、酸素、圧縮空気等を使用する。不活性ガスを使用しなくとも、このような汎用ガスで、プラズマを十分発生させることができる。
(2) 竿素材1の外面に形成される薄膜層13を形成するには、原料として反応性ガスを投入する必要がある。反応性ガスとしては、錫化合物、珪素化合物、チタン化合物、ハロゲン系の弗素化合物や水素化合物、水酸化物等のガスを用いる。または、錫化合物、珪素化合物、チタン化合物の有機金属を用いる場合には、気化、霧化して用いる。
(3) 反応性ガスと作動ガスとを混合した反応ガスにおいて、作動ガスの体積割合は90〜99atm%である。作動ガスのガス流量は5リットル/min〜100リットル/minである。
【0038】
(4) 使用する電源としては、1.5kw程度の直流パルス電源を用いる。パルス周波数は1KHz程度でよい。デューティ比は10〜50%である。ただし、高周波を使用してもよい。
(5) 放電状態はグロープラズマである。
【0039】
(6) 以上のような大気圧プラズマ装置4によって、次のような表面処理が行われる。
圧縮空気等を作動ガスとして作動ガス投入口7より投入し、陽極5、陰極6間に直流パルスを印加することで高密度なプラズマが発生する。
(7) 高密度なプラズマは作動ガスによって反応領域10に運ばれ、原料投入口8から珪素化合物などが投入される。非平衡プラズマ中での原料はプラズマ化され、分解、結合、重合など化学反応が促進される。
(8) 化学反応が促進されることで反応化合物を形成する。反応化合物は作動ガスによって、カバーケース4Aの下端出口より、竿素材1の外面に至り、堆積して薄膜層13を形成する。
【0040】
〔別実施形態〕
(1)上記した表面クリーニング、表面改質、及び、CVDによる薄膜形成技術は、通常真空中で行われるが、大気圧または大気圧より減圧されて高真空に至らない減圧下においても、可能である。ここに、高真空とは、10-6Pa又は略10-6Paを示すものとする。
(2)合成樹脂複合体としては、上記した釣り竿用の竿体A以外に、リールシート、釣り糸ガイド、リール等に使用されている樹脂成形品、又は、自転車のフレーム、クランクアーム、ゴルフシャフト等の樹脂成形品をいう。
(3)上記実施形態としては、プラズマ発生領域9と反応領域10とに分割した大気圧プラズマ処理装置4を使用したが、プラズマ発生領域9と反応領域10とが同一領域に形成された大気圧プラズマ処理装置4を使用してもよい。この場合には、作動ガスと反応性ガスとを同一の領域内に投入することとなる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】大気圧プラズマ処理装置を示す構成図
【図2】竿素材の外面に被処理面と装飾層としての塗膜層を形成した状態を示す 縦断側面図
【図3】竿素材の外面に被処理面と装飾層としての薄膜層を形成した状態を示す 縦断側面図
【符号の説明】
【0042】
1 竿素材
2 被処理面
3 (塗膜層)装飾層
4 大気圧プラズマ処理装置
4A カバーケース
4a 出口
5 陽極
6 陰極
7 作動ガス投入口
8 原料投入口
9 プラズマ発生領域
10 反応領域
11 使用電源
12 支持フレーム
13 薄膜層(装飾層)
A 竿体
B 装飾層
X 軸芯



【特許請求の範囲】
【請求項1】
強化繊維にマトリックス樹脂を含浸させたプリプレグによって形成された素材の外面に装飾層を形成するとともに、前記素材の外面又は前記装飾層の外面における処理領域の全域を、高エネルギーを付与する手段によって作動ガスから生成された高エネルギー粒子を局所的に作用させながら前記処理領域に亘って作用させて被処理面に形成してある合成樹脂複合体。
【請求項2】
前記高エネルギーを付与する手段が、大気圧又は大気圧から減圧されて高真空に至らない減圧下において、電極間に高周波又は直流パルス電圧を印加して、作動ガスからプラズマを発生させる手段である請求項1記載の合成樹脂複合体。
【請求項3】
前記装飾層が塗料を塗布して形成されている塗膜層である請求項1または2記載の合成樹脂複合体。
【請求項4】
前記装飾層が薄膜層であり、局所的に高エネルギーを付与する手段によって、原料の化学反応を促進させて、生成された反応化合物を堆積させて前記薄膜層を形成している請求項1または2記載の合成樹脂複合体。
【請求項5】
前記装飾層が薄膜層であり、大気圧または大気圧より減圧されて高真空に至らない減圧下において、一対の電極間に高周波もしくは直流パルス電圧を印加して、前記電極間に導入した作動ガスから非平衡プラズマを現出し、前記非平衡プラズマによって原料に対して局所的で高エネルギーを付与して化学反応を促進し、化学反応によって生成された反応化合物を前記被処理面の外側に堆積させて形成してある請求項1または2記載の合成樹脂複合体。
【請求項6】
大気圧または大気圧より減圧されて高真空に至らない減圧下において、一対の電極間に高周波もしくは直流パルス電圧を印加して、前記電極間に導入した反応ガスからプラズマを現出し、前記プラズマを構成するイオン及び/又はラジカルを、強化繊維にマトリックス樹脂を含浸させたプリプレグによって形成された素材の外面に作用させて被処理面を形成する前処理工程と、
大気圧または大気圧より減圧されて高真空に至らない減圧下において、一対の電極間に高周波もしくは直流パルス電圧を印加して、前記電極間に導入した作動ガスから非平衡プラズマを現出し、前記非平衡プラズマによって原料に対して局所的で高エネルギーを付与して化学反応を促進し、化学反応によって生成された反応化合物を前記被処理面の外側に堆積させて形成した薄膜層を形成する装飾工程とからなる合成樹脂複合体の製造方法。
【請求項7】
前記素材が筒状の竿素材である請求項1〜6のうちのいずれか一項に記載の合成樹脂複合体。




【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2010−115159(P2010−115159A)
【公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−291312(P2008−291312)
【出願日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【出願人】(000002439)株式会社シマノ (1,038)
【Fターム(参考)】