説明

合成潤滑剤のための酸化防止剤及び製造方法

【課題】多段階でかつ高価な分離及び精製を必要とすることがない、潤滑剤配合物の調整方法を提供する。
【解決手段】アルキル化フェニル−α−ナフチルアミン、ホルムアルデヒド、及びベース潤滑剤を混合して、混合物を生成する工程と、混合物を加熱して、縮合反応を引き起こし、反応の水を除去して、潤滑剤と酸化防止剤の組成物を生成する工程と、添加剤又は添加剤パッケージを潤滑剤と酸化防止剤の組成物にブレンドして、最終潤滑剤配合物を生成する工程とを含む、最終潤滑剤配合物を調製する方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2007年2月8日出願の米国特許出願第11/672,559号の優先権を主張し、また2007年10月24日出願の米国特許出願第11/923,250号の利益も主張し、それらの開示は、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、一般に潤滑剤のための酸化防止剤に関し、さらに詳細にはポリオールエステル潤滑剤などの合成潤滑剤のための酸化防止剤に関する。
【背景技術】
【0003】
合成潤滑剤は、一般に定置タービン、ジェットエンジン、液圧系統など要求の厳しい高価値用途において指定されている。いくつかの合成潤滑剤は、「ポリオールエステル」と呼ばれ、これには一塩基性脂肪酸と「ネオペンチル」構造を有する多価アルコールから生成される化合物が含まれる。合成エステル潤滑剤を生成するのに有用な代表的アルコールとしては、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリトリトール、及びジペンタエリトリトールが挙げられる。これらのアルコールは、吉草酸、イソペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、イソオクタン酸、2−エチルヘキサン酸、ペラルゴン酸、イソノナン酸、デカン酸、及びドデカン酸を含めて、一般に約5個〜約12個の炭素原子を有する脂肪酸と反応してエステルを生成する。上記に示すアルコールは、一般にβ−水素を含まず、エステルを生成するために利用可能なヒドロキシル基の数が主に異なる。
【0004】
選択された脂肪酸、すなわち同じか又は異なる、及び炭素原子の数に応じて、生成したポリオールエステルの特性を、特定の用途に必要とされる特定の粘度範囲、流動点、引火点、及び揮発性をもたらすように「設計する」ことができる。より低い分子量の酸、例えば吉草酸、イソペンタン酸などは、一般に低温における流動性が重要であるときに使用される。分枝を有する酸を組み込むことによって、酸化安定性及び耐加水分解性などの特性を向上させてもよい。多くの用途では、より高い分子量の酸とより低い分子量の混合物酸によって、望ましい特性がもたらされる。米国特許第4,440,657号は、潤滑剤としての使用に適した多くの単純なエステル、ジエステル、及びポリオールエステルを開示する。
【0005】
合成潤滑剤をその化学構造に基づいて選択することに加えて、様々な添加剤を潤滑剤にブレンドして、その耐酸化性の向上、生成したスラッジの分散、耐加水分解性の改善、金属の不動態化、さびの抑制などを行う。例えば、アルキル化ジフェニルアミン及びアルキル化フェニル−α−ナフチルアミンを重合することによって生成された酸化防止剤は、熱可塑性樹脂、潤滑剤、及び液圧作動液(油圧油)を含めて(これらに限定されない)多くの工業用途で、耐酸化性を改善するために広く使用されている。米国特許第3,509,214号は、芳香族第二級ナフチルアミン又はN−アリールナフチルアミンを、カップリング又はクロスカップリングしてオリゴマーを生成し、このオリゴマーは合成潤滑剤中の添加剤として存在するとき潤滑剤の高温酸化に対する抵抗性を高めることを開示する。
【0006】
さらなる代表的酸化防止添加剤が米国特許第5,160,647号に開示されており、アルキルフェニル置換−1−アミノナフタレンのホルムアルデヒド縮合生成物が開示されている。この特許では、開示された化合物の調製物はすべて、溶媒中で調製され、この化合物は固体材料として単離され、精製される。
【0007】
米国特許第3,492,233号は、有機過酸化物の存在下で、酸化防止剤、耐荷重剤、洗浄剤、防食剤などの添加剤分子を潤滑剤分子に、前記添加剤と有機潤滑剤ベース流体を加熱することによって化学結合させることにより生成された脱水素縮合生成物を含有する潤滑剤組成物を開示する。
【0008】
米国特許第6,426,324号は、有機過酸化物の存在下でジフェニルアミン及びN−アリールナフチルアミンから生成されたエステル流体潤滑剤に適した酸化防止剤組成物を開示する。この開示では、ポリオールエステル潤滑剤ベースとの反応物が開示されているが、開示によれば、副生成物であり、アミンとポリオールエステル流体との反応を最小限に抑える方式が好ましい。
【0009】
潤滑剤流体のための酸化防止剤の現行の調製法は多段階であり、困難でかつ高価な分離及び精製を必要とすることが多い。これらの現行の調製法は、ポリオールエステルなどすでに高価な合成潤滑剤の調製コストを増加させる。適当な酸化防止剤特性を有する化合物が利用可能であり、その調製及び合成潤滑剤への組込みの方法が複雑でなくなり、効率が高くなれば、ポリオールエステル潤滑剤の安定化技術が向上するであろう。このような化合物並びにその調製及び合成ポリオールエステル潤滑剤への組込み方法を、本明細書に後述する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の実施形態は、次式の化合物
【化1】


を含み、
式中、R1はH又は直鎖状又は分枝状のアルキルであり、
ARは、フェニル、ナフチル、又はフェナントリルであり、
一実施形態において、m=0であり、別の実施形態において、m=1であり、さらに別の実施形態において、m=2であり、
R2はアルキル置換カルボキシルである。
【0011】
式Iの化合物は、合成潤滑剤、例えばポリオールエステル潤滑剤又は液圧作動液中の酸化防止添加剤として有用である。
【0012】
本発明の一態様において、酸化防止添加剤は、一般にベース潤滑剤の存在下でのアルキル化フェニル−α−ナフチルアミン(ALK PANA)とホルムアルデヒドの縮合反応によって調製される。一実施形態において、調製方法は、アルキル化フェニル−α−ナフチルアミン、ホルムアルデヒド、氷酢酸、及びベース潤滑剤、例えばポリオールエステルを混合する工程を含む。次いで、この混合物を加熱撹拌して、縮合反応を引き起こす。水が生成し、それを留去する。水を除去した後、溶液を加熱し、真空ストリッピングして、残存水及び酢酸を実質的に除去する。縮合反応生成物、すなわち酸化防止剤は、ベース潤滑剤中に存在したままである。
【0013】
次いで、この酸化防止剤及びベース潤滑剤の混合物を同じ又は相溶性の潤滑剤にブレンドする。所望に応じて、さらなる添加剤又は添加剤パッケージが添加される。ポリオールエステル潤滑剤などの合成潤滑剤の存在下でのアルキル化フェニル−α−ナフチルアミンとホルムアルデヒドの縮合反応により酸化防止剤を生成する本発明の方法は、さらに単離又は後処理工程を行うことがなく、酸化防止添加剤を含むこれらの高価値潤滑剤を調製する効率を大幅に改善する。以前は、これらのタイプの酸化防止剤化合物の調製には、これらのタイプの化合物をその合成が行われた溶媒から単離及び精製するための多段階工程が必要であった。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施形態は、次式の化合物であり、
【化2】

【0015】
式中、R1はH又は直鎖状又は分枝状のアルキルであり、ARは、フェニル、ナフチル、又はフェナントリルであり、一実施形態において、mは0であり、別の実施形態において、mは1であり、別の実施形態において、mは2であり、R2はアルキル置換カルボキシルである。一実施形態において、ARはフェニルである。別の実施形態において、R1は第三級オクチルである。式Iの化合物としては、R2がR3−C(=O)O−である実施形態が挙げられる。式Iの化合物のさらなる実施形態は、mが0、1、又は2の場合であり、その化合物はそれぞれ、ホルムアルデヒドと結合したアルキルフェニルナフチルアミンのダイマー(ビス)、トリマー(トリス)、又はテトラマー(ター)である。
【0016】
ナフチル環のR2基の源は、ポリオールエステル反応媒体であると思われる。実施例3及び4に示すように、ホルムアルデヒドを利用するカップリング反応を、実施例1に示す同じ反応をポリオールエステルベース潤滑剤中で実施する代替策としてメタノール又は氷酢酸中で実施すると、実施例3又は4の生成物の赤外スペクトルにカルボニル吸光度は存在しない。したがって、ポリオールエステルを反応媒体として使用して化合物が調製されたときの式Iの化合物のカルボニル吸光度の源は、ベースポリオールエステルのカルボキシラート部分の1つであると考えられる。ホルムアルデヒドがカルボニルの源であった場合、この反応は、メタノール又は酢酸が溶媒として使用された場合にも起こるものと予想され得る。R2の源がポリオールエステルからのカルボキシラートであるという仮定に従って、一実施形態において、R3は、直鎖状又は分枝状のアルキル基、すなわち炭化水素CnH2n+1(式中、n=4〜11である)からなる群から選択される。
【0017】
式Iの化合物がペンタエリトリトールの酸エステルを含むベース潤滑剤中で生成される実施形態において、R2の有機酸は、一般に吉草酸、イソペンタン酸、ヘキサン酸、オクタン酸、イソオクタン酸、2−エチルヘキサン酸、ペラルゴン酸、イソノナン酸、デカン酸、及びドデカン酸からなる群から選択される。
【0018】
ペンタエリトリトールテトラエステルが平均鎖長約6.3の直鎖状又は分枝鎖のC5〜C10から生成された実施例1において、R3は、直鎖状又は分枝鎖のC4〜C9アルキルの同様の分布である可能性がある。R2カルボキシラートは、ナフチル環の2、4、5、7、及び8位の1つ又は複数の水素原子を置換することによってナフチル環に加えられる可能性がある。実施例1において、元素分析でカルボキシル酸素(O2として)とNのモル比が約0.85である。この比は、ポリオールエステルからのカルボキシル部分の式Iの含窒素オリゴマーへの著しい転移度を示唆する。
【0019】
本発明の別の態様において、酸化防止添加剤は、一般にベース潤滑剤の存在下でアルキル化フェニル−α−ナフチルアミン(ALK PANA)とホルムアルデヒドの縮合反応によって調製される。一実施形態において、調製方法は、アルキル化フェニル−α−ナフチルアミン、ホルムアルデヒド、氷酢酸、及びベース潤滑剤、例えばポリオールエステルを混合する工程を含む。次いで、この混合物を加熱撹拌して、縮合反応を引き起こす。水が生成し、留去される。水を除去した後、溶液を加熱し、真空ストリッピングして、残存水及び酢酸を実質的に除去する。縮合生成物、すなわち酸化防止剤は、ベース潤滑剤中に存在したままである。
【0020】
一実施形態において、式Iの化合物は、アルキル化フェニル−α−ナフチルアミン、例えばN−4−アルキルフェニル−1−ナフトリアミン、パラホルムアルデヒド、氷酢酸、及びポリオールエステルベース潤滑剤を混合することによって調製される。一実施形態において、ポリオールは、ネオペンチルグリコール、トリメトルプロパン、ペンタエリトリトール、ジペンタエリトリトールなどからなる群から選択される。別の実施形態において、ポリオールは、吉草酸、イソペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、イソオクタン酸、2−エチルヘキサン酸、ペラルゴン酸、イソノナン酸、デカン酸、及びそれらの組合せからなる群から選択された有機酸でエステル化される。製造中、炭化水素を添加して、共沸混合物を生成して、反応の水を放出する上で容易にすることができる。一実施形態において、炭化水素は、水と共沸混合物を生成することが知られている飽和又は芳香族の炭化水素の1つである。
【0021】
別の実施形態において、本発明は、酸化防止添加剤を含む潤滑油又は液圧作動液配合物を混合する方法を含む。本方法は、潤滑油又は液圧作動液を準備する工程と、油溶性ベースポリオールエステル潤滑剤中で調製された酸化防止剤、例えば式Iの化合物を有する十分量の相溶性ベースポリオールエステル潤滑剤を、酸化防止剤が予め選択された濃度に到達するようにブレンドする工程とを含む。別の実施形態において、潤滑油はポリオールエステルである。一実施形態において、得られた潤滑油配合物は、ポリオールエステルを実質的に含む。「ポリオールエステルを実質的に含む」に関して、ポリオールエステルが最終配合物のおよそ少なくとも約90重量%以上を含むことを意味する。
【0022】
潤滑剤又は液圧作動液配合物に関して、当業者は、この用語には、カン、ドラム、又はバルク容器に分配するための市販の包装配合物が包含されることを理解しよう。これらの潤滑剤配合物としては、鉱油系材料、ポリオールエステルなどの合成潤滑剤、及びそれらの相溶性組合せがを挙げることができる。これらの配合物は、酸化防止剤、すなわち式Iの化合物の1つ又は複数を単独又は腐食防止剤、磨耗防止剤、分散剤、金属不動態化剤など他の相溶性化合物と組み合わせて含むこともできる。潤滑剤又は液圧作動液配合物中の式Iの化合物の有用な濃度は、一般に約0.1〜約10%である。一実施形態において、式Iの化合物を含有するエステル化ペンタエリトリトールベース配合物の濃度は、約1.5〜約5.5重量パーセントである。潤滑剤又は液圧作動液中の式Iの化合物の他の濃度は、特定の用途向けに想定してもよく、本開示の範囲内とみなすことができる。
【0023】
(実施例1)
式Iの化合物の調製
N−(4−t−オクチルフェニル)−1−ナフチルアミン(161.4g/0.487モル)を、パラホルムアルデヒド(95%)(10.78g/0.341モル);氷酢酸(21.15g/0.352モル);シクロヘキサン(50g)、及び混合C5〜C10カルボキシラート(平均炭素鎖長約6.3)を含むペンタエリトリトールテトラエステル(161.4g)と混合した。混合物を撹拌し、穏やかな窒素スパージ下で約110℃に約90分間加熱し、シクロヘキサンを水共沸混合物としてディーンスタークトラップに留去し、発生した水と氷酢酸とを除去した。
【0024】
トラップに回収された酢酸水溶液は、重量が13.37gであり、(滴定によって確定して)4.83gの酢酸が含まれていた。残りの8.54gには、完全な反応に対して計算された6.14gの水、並びにパラホルムアルデヒド及び氷酢酸反応物質中に存在する水が含まれる。
【0025】
次に、混合した反応物を、(約1mmHgまでの)真空下で140℃に2時間加熱することによって真空ストリッピングした。真空ストリッピングした後、反応混合物を窒素スパージ(約10L/時間)で約1時間処理した。得られた赤みがかった粘性液体は、重量が323.4gであり、酸価は0.07であった。
【0026】
上記の反応による生成物をさらに特徴付けるために、赤みがかった粘性液体の一定分量を、激しく混合しながら一定分量のメチルアルコールで2回粉末化を図った。次いで、得られた沈殿物を真空濾過で回収し、さらに数回一定分量のメタノールで洗浄した。得られた桃色粉末を、恒量になるまで25℃で真空乾燥し、収率は、赤みがかった液体に対して45.7重量%であった。赤みがかった液体の残りには、メタノール中での溶解度が若干あるより低い分子量種が含まれていたと考えられる。桃色粉末の赤外スペクトルは、エステルカルボニルの存在を示唆している1744cm−1におけるカルボニル吸収を示している。さらに、この生成物について実測された元素分析、すなわちC−82.70、H−8.88、N−3.22、O−6.24は、カルボキシル酸素と窒素のモル比が0.85であることを明らかにする。これらの事実は、置換反応によるポリオールエステルからのカルボキシル部分の含窒素オリゴマーへの著しい転移度が生じることを裏付ける。
【0027】
最初に投入された反応物質のALK PANA/ホルムアルデヒドのモル比は1.00/0.70であったので、ALK PANA/ホルムアルデヒドオリゴマーのモル比3.33/2.33で表わされる平均組成が理論的に生じるはずである。平均C5H11C(=O)O−基を呈するカルボキシラート部分の寄与を考慮することによって、約1455の分子量は平均式C99.23H124.88N3.33O5.66で表わされるメタノール不溶性材料に対して計算し、上記に示した「実測」値に比較して有利である計算された元素分析C−81.92、H−8.65、N−3.20、O−6.22が得られる。
【0028】
単離した生成物のGPC分析は、テトラヒドロフラン溶液で実施し、一連の混合孔径GPCカラムを使用して検討した。フォトダイオードアレイUV検出器(Waters/Alliance 2996)を使用して溶離液の検出を行い、ポリスチレン標準物質を使用して分子量較正を行った。GPC値:Mn=1293、Mw=1558、ただしD=1.20。
【0029】
(実施例2)
ポリオールエステル溶媒中におけるN−フェニル−1−ナフチルアミンとホルムアルデヒドの縮合
実施例1の手順に従って、N−フェニル−1−ナフチルアミン(150.3g/0.685モル)を、パラホルムアルデヒド(95%)(15.2g/0.481モル)、氷酢酸(31.1g/0.518モル)、シクロヘキサン(62g)、及び混合C5〜C10カルボキシラートを含むペンタエリトリトールテトラエステルと混合した。混合物を加熱しながら撹拌し、次いで真空ストリッピングした。得られた生成物は、重量321.0gの粘性液体であり、酸価0.07であった。この調製物のメタノール不溶性成分を、収率35.3重量%でベージュ色粉末として単離した。単離した生成物の赤外スペクトルも、カルボニル酸素の特徴である1744cm−1における吸光度を示した。この生成物について実測された元素分析、すなわちC−82.74、H−6.74、N−4.69、O−6.44は、カルボキシル酸素と窒素のモル比が0.60であることを明らかにする。実施例1と同様に処理して、平均式C67.67H63.33N3.33O6.48で表わされるこのメタノール不溶性材料について、約987の分子量が計算される。GPCデータは、Mn=965、Mw=1076の値(ただし、D=1.12)を示す。
【0030】
(実施例3)
メタノール中におけるN−(4−t−オクチル−1−ナフチルアミン)とホルムアルデヒドの縮合
米国特許第5,160,647号の実施例1に記載されている手順に従って、98%H2SO4(10.2g/約0.1モル)で酸性化されたメタノール(150m1)中に懸濁させたN−(4−t−オクチルフェニル)−1−ナフチルアミン(33.1g/0.1モル)を37.6%ホルムアルデヒド水溶液(4.0g/0.05モル)と混合し、約2時間加熱還流した。この参考にした特許に記載されている徹底した精製の後、ベージュ色の生成物が収率76.8%(ダイマーとして計算した)で得られ、それについては、赤外スペクトルのカルボニル吸収が存在していなかった。ダイマーC49H58N2について計算された分析:C−87.19;H−8.66;N−4.15、実測値:C−87.26;H−8.61;N−4.07。GPC分析によって、Mn=996、Mw=1076、及びD=1.08が明らかであり、大部分がジメチレン−トリスALK PANA組成物であることが示唆される。
【0031】
(実施例4)
氷酢酸中におけるN−(4−t−オクチル−1−ナフチルアミン)とホルムアルデヒドの縮合
これらの実施例(A−C)は、いくつかの含窒素ナフチルアミンとホルムアルデヒドのモル比を使用した調製物を示す。
【0032】
A)モル比1.0/0.5(アミン/ホルムアルデヒド)。N−(4−t−オクチルフェニル)−1−ナフチルアミン(22.97g/0.0693モル)を、撹拌しながら45gの氷酢酸に混合した。この混合物を、撹拌しながら65℃に加熱して、アミンを溶解した。95%パラホルムアルデヒド(1.09g/0.0345モル)を添加し、急速に溶解した。75℃に発熱するに伴って、沈殿物が1分未満に現れた。反応混合物を室温まで放冷し、不溶性沈殿物を回収し、Waring Blendor(登録商標)でメタノールを用いて粉末にし、吸引濾過し、メタノールで洗浄し、80℃で恒量になるまで乾燥した。15.83gのベージュ色粉末を、反応物質の重量に対して収率67.6%で回収した。C49H58N2について計算された分析;計算値−C、86.94;H、8.62;N、4.16;及び実測値−C、87.19;H、8.66;N、4.15。GPC分析によって、Mnは918、Mwは1009、かつD値は1.10であることが明らかである。GPCの結果は、実施例3の生成物で得られたGPCの結果と実質的に同じである。カルボニル吸収は赤外スペクトルに存在しない。
【0033】
B)モル比1.0/0.67(アミン/ホルムアルデヒド)。N−(4−t−オクチルフェニル)−1−ナフチルアミン(22.97g/0.0693モル)を、撹拌しながら45gの氷酢酸に混合した。この混合物を、撹拌しながら65℃に加熱して、アミンを溶解した。95%パラホルムアルデヒド(1.53g/0.0483モル)を添加し、急速に溶解した。75℃に発熱するに伴って、沈殿物が1分未満に現れた。反応混合物を室温まで放冷し、不溶性沈殿物を回収し、Waring Blendor(登録商標)でメタノールを用いて粉末にし、吸引濾過し、メタノールで洗浄し、80℃で恒量になるまで乾燥した。18.99gのベージュ色粉末を、反応物質の重量に対して収率81.1%で回収した。C77H87N3について計算された分析;計算値−C、87.69;H、8.32;N、3.99;及び実測値−C、87.10;H、8.53;N、4.00。GPC分析によって、Mnは1067、Mwは1334、かつD値は1.25であることが明らかである。カルボニル吸収は赤外スペクトルに存在しない。
【0034】
C)モル比1.0/1.0(アミン/ホルムアルデヒド)。N−(4−t−オクチルフェニル)−1−ナフチルアミン(22.97g/0.0693モル)を、撹拌しながら45gの氷酢酸に混合した。この混合物を、撹拌しながら65℃に加熱して、アミンを溶解した。95%パラホルムアルデヒド(2.18g/0.690モル)を添加し、急速に溶解した。75℃に発熱するに伴って、沈殿物が1分未満に現れた。反応混合物を室温まで放冷し、不溶性沈殿物を回収し、Waring Blendor(登録商標)でメタノールを用いて粉末にし、吸引濾過し、メタノールで洗浄し、80℃で恒量になるまで乾燥した。21.4gのベージュ色粉末を、反応物質の重量に対して収率91.5%で回収した。C25H29N(繰り返し単位)について計算された分析;計算値−C、87.40;H、8.52;N、4.08;及び実測値−C、86.94;H、8.47;N、3.98。GPC分析によって、Mnは1565、Mwは2548、かつD値は1.63であることが明らかである。カルボニル吸収は赤外スペクトルに存在しない。
【0035】
実施例4B)及びC)は、縮合オリゴマー化系に従って、平均分子量がより高く、かつこれらの平均を含む生成物の分布がより大きい、すなわちD値がより高い生成物の生成予想を実質的に確証する。
【0036】
(実施例5)
潤滑油の高温安定化
実施例1、2、3、及び4で調製された化合物の一定分量を使用して、95.29重量%のエステル、2.35重量%の他の添加剤、及び下記の表1に挙げる可変重量%の実施例1、2、3、及び4の化合物の組成を有する工業用潤滑剤配合物を作製した。連邦試験方法(Federal Test Method)5308で、400℃、72時間、空気流5リットル/時間の条件下、銅、アルミニウム、鋼鉄、銀、及び亜鉛の試験金属を使用して、酸化腐食(OCS)試験を実施した。表1には、粘度上昇;酸価;生成したスラッジ;及びポリオールエステル潤滑剤中でいくつかの濃度の実施例でいくつかの金属について標準試験に従った腐食(mg/cm2)も記載されている。標準的工業用潤滑剤(Vanlube 9317)、及びいずれの添加剤パッケージも含まない同じポリオールエステルの一定分量を、それぞれ正の対照及び負の対照として使用する。負の対照のZnの括弧なしの値、例えば「37.8」は重量減少を示し、負の対照のCuの括弧の値、例えば「(0.062)」は重量増加を示す。
表1
【表1】

【0037】
本発明の式Iについて実施例1の結果は、同様の条件下で確定された「正の対照」として上記に示された現在の市販標準物(Vanlube 9317)の結果に比べて有利である。
【0038】
本明細書で特定の実施形態を参照にして、本発明を説明してきたが、これらの実施形態は、本発明の原理及び応用の例示にすぎないことを理解されたい。本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく本発明の方法及び装置に様々な修正及び変形を実施できることは、当業者には明らかとなる(理解されよう)。したがって、本発明は、添付の特許請求の範囲内である修正形態及び変形形態、並びにそれらの等価物を含むものである。
【0039】
本発明の好ましい態様は下記のとおりである。
1.
次式の化合物
【化3】


[式中、R1は直鎖状又は分枝状のアルキルであり、
ARは、フェニル、ナフチル、又はフェナントリルであり、
mは、0、1、又は2であり、
R2はアルキル置換カルボキシルである]。
2.
ARがフェニルである、1に記載の化合物。
3.
R1が第三級オクチルである、1に記載の化合物。
4.
R2がR3−C(=O)O−である、1に記載の化合物。
5.
直鎖状又は分枝状のアルキルがCnH2n+1を含み、式中、nは4〜11である、4に記載の化合物。
6.
R3が、ペンタエリトリトールの有機酸エステルに由来し、有機酸は、吉草酸、イソペンタン酸、ヘキサン酸、オクタン酸、イソオクタン酸、2−エチルヘキサン酸、ペラルゴン酸、イソノナン酸、デカン酸、ドデカン酸、及びそれらの組合せからなる群から選択される、4に記載の化合物。
7.
R3がイソブチルである、5に記載の化合物。
8.
ポリオールエステル潤滑剤と、
約0.1〜約10%(w/w)の1に記載の式Iの化合物
を含む潤滑油組成物。
9.
ポリオールエステル潤滑剤が、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリトリトール、及びジペンタエリトリトールからなる群から選択されたポリオールから生成され、ポリオールは、吉草酸、イソペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、イソオクタン酸、2−エチルヘキサン酸、ペラルゴン酸、イソノナン酸、デカン酸、ドデカン酸、及びそれらの組合せからなる群から選択された有機酸でエステル化される、8に記載の潤滑油組成物。
10.
ポリオールがペンタエリルトリトールであり、ポリオールが、吉草酸、イソペンタン酸、ヘキサン酸、オクタン酸、イソオクタン酸、2−エチルヘキサン酸、ペラルゴン酸、イソノナン酸、デカン酸、ドデカン酸、及びそれらの組合せからなる群から選択された酸でエステル化され、式Iの化合物が、メチレン−ビス−[N−4−tert−オクチルフェニル)−1−ナフチルアミン−C5〜C9カルボキシラート]、ジメチレン−トリス−[N−4−tert−オクチルフェニル)−1−ナフチルアミン−C5〜C9カルボキシラート]、トリメチレン−ter−[N−4−tert−オクチルフェニル)−1−ナフチルアミン−C5〜C9カルボキシラート]、及びそれらの組合せからなる群から選択される、8に記載の潤滑油。
11.
連邦試験方法5308に従って試験した後の粘度上昇が約10%以下である、8に記載の潤滑油。
12.
N−4−アルキルフェニル−1−ナフチルアミン、パラホルムアルデヒド、氷酢酸、及びポリオールエステルベース潤滑剤を混合する工程と、
混合物を加熱撹拌して、縮合反応を引き起こして、次式を有する化合物を生成する工程
【化4】


[式中、R1は直鎖状又は分枝状のアルキルであり、
ARは、フェニル、ナフチル、又はフェナントリルであり、
mは、2、3、又は4であり、
R2はアルキル置換カルボキシルである]と、
水を留去する工程と、
混合物を加熱し、真空ストリッピングして、残存水及び酢酸を実質的に除去し、それによってポリオールエステルベース潤滑剤中に式Iの化合物が生じる工程と
を含む方法。
13.
ポリオールエステルベース潤滑剤が、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリトリトール、及びジペンタエリトリトールからなる群から選択されたポリオールから生成され、ポリオールは、吉草酸、イソペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、イソオクタン酸、2−エチルヘキサン酸、ペラルゴン酸、イソノナン酸、デカン酸、ドデカン酸、及びそれらの組合せからなる群から選択された有機酸でエステル化される、12に記載の方法。
14.
N−4−アルキルフェニル−1−ナフチルアミンがN−4−tert−オクチル−1−ナフチルアミンを含む、12に記載の方法。
15.
混合工程が、ペンタエリトリトールと平均炭素鎖長約6.3のC5〜C10直鎖状又は分枝状の酸から生成されたポリオールエステルベース潤滑剤を選択する工程を含む、12に記載の方法。
16.
混合工程が、N−4−tert−オクチル−1−ナフチルアミンとパラホルムアルデヒドを約1.0/0.5〜約1.0/1.0のモル比で混合する工程を含む、12に記載の方法。
17.
合成潤滑剤を式Iの化合物とブレンドする工程をさらに含む、12に記載の方法。
18.
アルキル化フェニル−α−ナフチルアミン、ホルムアルデヒド、及びベース潤滑剤を混合して、混合物を生成する工程と、混合物を加熱して、縮合反応を引き起こし、反応の水を除去して、潤滑剤と酸化防止剤の組成物を生成する工程と、添加剤又は添加剤パッケージを潤滑剤と酸化防止剤の組成物にブレンドして、最終潤滑剤配合物を生成する工程とを含む、最終潤滑剤配合物を調製する方法。
19.
定置タービン、ジェットエンジン、及び液圧系統からなる群から選択された装置を潤滑する方法であって、
約0.1〜10%(w/w)の式Iの化合物;腐食防止剤、磨耗防止剤、分散剤、金属不動態化剤、及びそれらの組合せからなる群から選択された添加剤パッケージ;鉱油系材料、合成潤滑剤、ポリオールエステル、及びそれらの組合せからなる群から選択されたベース材料である残部の混合物を含む流体材料を準備する工程と、
流体材料を系統中に入れる工程と
を含む方法。
20.
分配するための市販の包装潤滑剤又は液圧作動液組成物であって、
約0.1〜10%(w/w)の式Iの化合物と、
腐食防止剤、磨耗防止剤、分散剤、金属不動態化剤、及びそれらの組合せからなる群から選択された添加剤パッケージ、並びに鉱油系材料、合成潤滑剤、ポリオールエステル、及びそれらの組合せからなる群から選択されたベース材料である残部と、
カン、ドラム、又はバルク容器からなる群から選択された容器と
を含む組成物。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルキル化フェニル−α−ナフチルアミン、ホルムアルデヒド、及びベース潤滑剤を混合して、混合物を生成する工程と、混合物を加熱して、縮合反応を引き起こし、反応の水を除去して、潤滑剤と酸化防止剤の組成物を生成する工程と、添加剤又は添加剤パッケージを潤滑剤と酸化防止剤の組成物にブレンドして、最終潤滑剤配合物を生成する工程とを含む、最終潤滑剤配合物を調製する方法。
【請求項2】
生成される酸化防止剤が次式の化合物である、請求項1に記載の方法
【化1】


[式中、R1は直鎖状又は分枝状のアルキルであり、
ARは、フェニル、ナフチル、又はフェナントリルであり、
mは、0、1、又は2であり、
R2はC5〜C10のカルボキシラートを含むペンタエリスリトールテトラエステルに由来する基である]。

【公開番号】特開2012−184433(P2012−184433A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−110168(P2012−110168)
【出願日】平成24年5月14日(2012.5.14)
【分割の表示】特願2009−544130(P2009−544130)の分割
【原出願日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【出願人】(508201282)ケムチュア コーポレイション (69)
【Fターム(参考)】