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合成皮革
説明

合成皮革

【課題】耐汗性、柔軟性などの物性のバランスに優れ、さらに保管時に割れや皺を生じることもなく、ざらつき感やべたつき感の無い、自動車シートや内装材等に利用できる合成皮革の提供。
【解決手段】式(A)で表される繰り返し単位と末端ヒドロキシル基からなるポリカーボネートジオールであって、式(A)で表される繰り返し単位の60〜100モル%は1,5−ペンタンジオールカーボネートB又は1,6−ヘキサンジオールカーボネートCで表される繰り返し単位であり、Bの繰り返し単位とCの繰り返し単位の割合が90:10〜10:90(モル比)であり、数平均分子量が800〜3500であり、1級末端OH比率が95〜99.5%であるポリカーボネートジオールと、有機ジイソシアネート、鎖延長剤の反応生成物を含むポリウレタン樹脂から形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリウレタン樹脂からなる合成皮革に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の合成皮革としては、ポリプロピレングリコールやポリテトラメチレングリコールなどのポリエーテルポリオールを用いて重合されたポリウレタン樹脂溶液を、繊維質基材や成膜板に塗布し水中で凝固して得られるものがある。これらの合成皮革は、柔軟性に優れるものの、汗などの成分により分解を受けやすく耐久性に問題があった。また、ヒドロキシ化合物と二塩基酸を反応させて得られるポリエステルポリオールを用いて重合されたポリウレタン樹脂溶液を用い、凝固して得られる合成皮革が存在する。この合成皮革は、耐加水分解性に問題があった。
【0003】
これらの問題を解決するため、例えば、特許文献1には、ポリカーボネートジオールを用いて重合されたポリウレン樹脂が用いられた。例えば、ポリカーボネートジオール、有機イソシアネート及び低分子ジオールよりなるポリウレタンと、ポリエステル系ジオール、有機ジイソシアネート及び低分子ジオールよりなるポリウレタンとからなるウレタン組成物が、繊維基材中及び/又は繊維基材上に含有又は接合されてなる多孔質シート状物が、開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、高分子ジオール、有機イソシアネート及び必要により鎖伸長剤からなるポリウレタン樹脂の溶液を基体に付与し湿式製膜法により得られる多孔質シート材料において、高分子ジオールがポリカーボネートジオールとポリエステルジオールの混合ジオールであり、かつポリカーボネートジオールが1,4−ブタンジオール及び他の炭素数4〜6のアルカンジオールの1種以上からなり、かつ該ジオールの合計モル数に基づいて該ジオールが1,4−ブタンジオールを50〜90モル%含有し、かつ数平均分子量が500〜5000の共重合ポリカーボネートジオールであり、ポリウレタン樹脂の凝固価が7〜14であることを特徴とする多孔質シート材料が、開示されている。
【0005】
また、特許文献3には、脂肪族ジオールとジアルキルカーボネートのエステル交換反応により得られる脂肪族オリゴカーボネートジオールと、活性水素基を有する化合物を開始剤として環状エステル化合物を開環付加重合することによって得られるポリエステルポリオールとのエステル交換反応により得られるポリエステルポリカーボネートジオール、ポリイソシアネート、及び鎖延長剤とからなるポリウレタン樹脂を用いてなる合成皮革表面被膜層が、開示されている。
【0006】
また、特許文献4には、炭素数が4以上6以下のアルカンジオールからなるポリカーボネートジオール(a1)と炭素数が7以上12以下のアルカンジオールからなるポリカーボネートジオール(a2)からなり、前記ポリカーボネートジオールのいずれもが共重合ポリカーボネートジオールであり、(a1)と(a2)の合計重量に対する(a1)の百分率重量%が10%以上80%以下である高分子ジオール、有機イソシアネート及び鎖伸長剤を反応させてなることを特徴とし、湿式凝固して得られる多孔質シート材料が、開示されている。
【0007】
さらに、特許文献5には、主剤及び硬化剤から構成される繊維積層体用表層材形成性組成物において、主剤が1,6−ヘキサンジオールと低分子カーボネートから得られるポリカーボネートジオールであり、硬化剤が数平均分子量350〜500、平均官能基数(f)が2≦f<3であるヘキサメチレンジイソシアネートの変性ポリイソシアネート(B1)とf≧3であるヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート変性ポリイソシアネート(B2)からなるものであって、(B1):(B2)=50:50〜95:5(重量比)であり、主剤及び硬化剤の両方に有機溶剤を含まないことを特徴とする繊維積層体用表層材形成性組成物から形成された表層と繊維布帛とからなる合成皮革が、開示されている。
【0008】
しかしながら、これらの文献に開示された合成皮革は、耐加水分解性は有するものの、自動車シートのように高い耐久性が要求される用途では、耐汗性が十分ではなかった。さらに、通常合成皮革はロール状で保管されるが、保管条件によっては、合成皮革に割れが発生したり、巻き戻した後に、合成皮革に皺が残るなどの問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第3142102号
【特許文献2】特開2003−119314号公報
【特許文献3】特開2004−346094号公報
【特許文献4】特許第4177318号
【特許文献5】特開2009−185260号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、耐汗性、柔軟性などの物性のバランスに優れ、さらに保管時に割れや皺を生じることもない合成皮革を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、特定のポリカーボネートジオールを用いることにより上記の問題点を解決できることを見出し、本発明をなすに至った。
すなわち、本発明の構成は以下のとおりである。
[1](a)有機ジイソシアネート、(b)ポリカーボネートジオール、及び(c)鎖延長剤の反応生成物を含んでなるポリウレタン樹脂から形成された合成皮革であって、
該ポリカーボネートジオール(b)が、下記式(A)で表される繰り返し単位と末端ヒドロキシル基を有するポリカーボネートジオールであって、式(A)で表される繰り返し単位の60〜100モル%は、下記式(B)又は(C)で表される繰り返し単位であり、下記式(B)で表される繰り返し単位と下記式(C)で表される繰り返し単位の割合が、90:10〜10:90(モル比)であり、数平均分子量が800〜3500であり、そして1級末端OH比率が95〜99.5%であることを特徴とする上記の合成皮革。
【化1】


【化2】


【化3】

【発明の効果】
【0012】
本発明は、耐汗性、柔軟性などの物性のバランスに優れ、さらに保管時に割れや皺を生じることもない合成皮革を提供することができるという効果を有する。さらに、本発明の合成皮革は、耐加水分解性に優れ、ざらつき感やべたつき感の無い良好な表面を有する。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明について具体的に説明する。
【0014】
ポリウレタン樹脂
本発明において、ポリウレタン樹脂は、有機ジイソシアネート(a)、ポリカーボネートジオール(b)、及び鎖延長剤(c)の反応生成物を含んでなる。
【0015】
有機ジイソシアネート(a)
本発明で用いる有機ジイソシアネート(a)としては、2,4−トリレジンジイソシアネート、2,6−トリレジンジイソシアネート及びその混合物、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート(MDI)、ナフタレン−1,5−ジイソシアネート(NDI)、3,3’−ジメチル−4,4’ビフェニレンジイソシアネート(TODI)、粗製TDI、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート(PMDI)、粗製MDIなどの芳香族ジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)、フェニレンジイソシアネートなどの芳香脂肪族ジイソシアネート、4,4’−メチレンビスシクロヘキシルジイソシアネート(水添MDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、シクロヘキサンジイソシアネート(水添XDI)などの脂肪族ジイソシアネートを挙げることができるが、これらには限定されない。
【0016】
通常、1種の有機ジイソシアネートを選択して用いるが、これらの有機ジイソシアネートから2種類以上を選択しそれらを混合して、又は逐次追加して用いても構わない。有機ジイソシアネートの使用量は、通常、ポリカーボネートジオールと鎖延長剤の総量に対し、0.95〜1.2当量である。
有機イソシアネートとしてMDIを用いた場合、機械物性に優れる合成皮革が得られるので好ましい。また、水添MDIを用いた場合、耐光性に優れる合成皮革が得られるので好ましい。
【0017】
ポリカーボネートジオール(b)
本発明で用いるポリカーボネートジオール(b)は、下記式(A)で表される繰り返し単位と末端ヒドロキシル基を有するポリカーボネートジオールであって、式(A)で表される繰り返し単位の60〜100モル%は、下記式(B)又は(C)で表される繰り返し単位であり、下記式(B)で表される繰り返し単位と下記式(C)で表される繰り返し単位の割合が、90:10〜10:90(モル比)であり、数平均分子量が800〜3500であり、そして1級末端OH比率が95〜99.5%であることを特徴とする。
また、ポリカーボネートジオール(b)において、式(A)で表される繰り返し単位の割合は、好ましくは95モル%以上100モル%以下、より好ましくは97モル%以上100モル%以下、さらに好ましくは99モル%以上100モル%以下である。
【化4】


【化5】


【化6】

【0018】
本発明におけるポリカーボネートジオール(b)の1級末端OH比率は、ポリカーボネートジオールを0.4kPa以下の圧力下、攪拌しながら160℃〜200℃の温度で加熱することにより初期留分として得られるアルコール類において、両末端が1級ヒドロキシル基であるジオールの、ジオールを含むアルコール類(エタノールを除く)の合計に対する重量%として定義される。ここでのジオールを含むアルコール類は、ポリカーボネートジオールの末端部分のセグメントに対応している。具体的には、本発明における1級末端OH比率は、ポリカーボネートジオール(70g〜100g)を0.4kPa以下の圧力下、攪拌しながら160℃〜200℃の温度で加熱することにより、該ポリカーボネートジオールの約1〜2重量%に相当する量の留分、即ち約1g(0.7〜2g)の留分を得て、これを約100g(95〜105g)のエタノールを溶剤として用いて回収し、回収した溶液をガスクロマトグラフィー(GC)分析にかけて得られるクロマトグラムのピーク面積の値から、下記式(1)により計算した値をいう。
1級末端OH比率(%)=A÷B×100 (1)
A:両末端が1級OH基であるジオールのピーク面積の総和
B:ジオールを含むアルコール類(エタノールを除く)のピーク面積の総和
【0019】
なお、上記の1級末端OH比率の測定のために行なうGC分析において検出される「ジオールを含むアルコール類(エタノールを除く)」の具体例としては、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−ペンタンジオール、1−ブタノール、1−ペンタノール、1−ヘキサノールなどが挙げられる。上記のようにポリカーボネートジオールを0.4kPa以下の圧力下で、攪拌しながら160℃〜200℃の温度で加熱すると、ポリカーボネートジオールの末端部分のみがジオール単位に分解されて蒸発し、留分として得られる。この留分中の全アルコール類における両末端が1級OH基であるジオールの比率を、本願におけるポリカーボネートジオール(b)の1級末端OH比率とする。
【0020】
合成皮革に用いられるポリウレタン樹脂には、有機ジイソシアネートとして、MDIなどの芳香族ジイソシアネートを用いることが多い。芳香族ジイソシアネートは反応性が高いため、ウレタン反応を適切に制御することが重要となる。反応が制御できない場合、微細なゲル状物が生成し、合成皮革の表面にざらつき感が出るとともに、保管時に割れが発生する場合や、まき皺が発生する場合がある。さらに、プレポリマー法でポリウレタンを重合する場合、有機イソシアネートとポリカーボネートジオールを反応させるプレポリマー反応を適切に制御することも重要となる。反応が制御できない場合、プレポリマーの分子量分布が広くなり、鎖伸長剤との反応により得られるポリウレタンの分子規則性が低下し、合成皮革の柔軟性や圧縮回復性が低下する場合がある。ポリカーボネートジオール(b)の1級末端OH比率が99.5%以下であれば、使用する有機ジイソシアネートの種類によらず、ウレタン反応が適切に制御されるため、得られる合成皮革は、表面にざらつき感が無く、保管時の割れやまき皺の発生が効果的に防止される。さらには、柔軟性や圧縮回復性に優れるポリウレタン樹脂が得られる。
【0021】
原料ジオールの末端が1級OH基でない場合において、反応性が低い脂肪族ジイソシアネートを用いたときには、重合に時間を要するとともに、得られるポリウレタンの分子量分布も大きくなる。低分子量物が多くなった場合、合成皮革の強度が低下するとともに、目的とする厚みの合成皮革を得られない場合がある。さらに、合成皮革の表面にべたつき感が出るとともに、保管時に癒着が発生する場合もある。ポリカーボネートジオール(b)の1級末端OH基比率が95%以上あれば、これらの問題は起きにくい。1級末端OH基比率が96%以上である場合はさらに好ましく、97%以上である場合低分子量物の影響による上記の問題は殆ど起こらない。
【0022】
本発明で用いるポリカーボネートジオール(b)の製造方法は、特に限定されない。例えば、Schnell著、ポリマー・レビューズ第9巻、p9〜20(1994年)に記載される種々の方法で製造することが出来る。
【0023】
本発明で用いるポリカーボネートジオール(b)は、1,5−ペンタンジオールと1,6−ヘキサンジオールをジオール原料として用いる。それらジオールに加え、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−ドデカンジオール、1,11−ウンデカンジオール、1,12−ドデカンジオールなどの側鎖を持たないジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、2−エチル−1,6−ヘキサンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,4−ジメチル−1,5−ペンタンジオール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオールなどの側鎖を持ったジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)−プロパンなどの環状ジオールから、1種類又は2種類以上のジオールを原料として用いても良い。その量は、本発明で示す繰り返し単位の割合を満たせば、特に限定させるものではない。
【0024】
さらに、本発明で用いるポリカーボネートジオール(b)の性能を損なわない範囲で、1分子に3以上のヒドロキシル基を持つ化合物、例えば、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオール、ペンタエリスリトールなどを用いることにも出来る。この1分子中に3以上のヒドロキシル基を持つ化合物を余り多く用いると、ポリカーボネートの重合反応中に架橋してゲル化が起きてしまう。したがって、1分子中に3以上のヒドロキシル基を持つ化合物を用いる場合であっても、当該化合物は、原料とするジオールの合計量に対し、0.1〜5質量%にするのが好ましい。より好ましくは、0.1〜2質量%である。
【0025】
本発明で用いるポリカーボネートジオール(b)は、炭酸エステルとして、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジプロピルカーボネート、ジブチルカーボネートなどのジアルキルカーボネート、ジフェニルカーボネートなどのジアリールカーボネート、エチレンカーボネート、トリメチレンカーボネート、1,2−プロピレンカーボネート、1,2−ブチレンカーボネート、1,3−ブチレンカーボネート、1,2−ペンチレンカーボネートなどのアルキレンカーボネートが挙げられる。これらの内から1種又は2種以上の炭酸エステルを原料として用いることが出来る。ジアルキルカーボネート又は/及びジアリールカーボネートを用いた場合、ジオールと炭酸エステルとの仕込み比などの条件により、本発明の1級末端OH比率のポリカーボネートジオールが容易に得られるので好ましい。また、入手のしやすさや重合反応の条件設定のしやすさの観点より、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジフェニルカーボネート、ジブチルカーボネートを用いることがさらに好ましい。
【0026】
本発明で用いるポリカーボネートジオール(b)の製造において、触媒を添加しても良いし、添加しなくてもよい。触媒を添加する場合は、通常のエステル交換反応触媒から自由に選択することが出来る。例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、亜鉛、アルミニウム、チタン、コバルト、ゲルマニウム、スズ、鉛、アンチモン、ヒ素、セリウムなどの金属、塩、アルコキシド、有機化合物が用いられる。特に好ましいのは、チタン、スズ、鉛の化合物である。また、触媒の使用量は、通常、得られるポリカーボネートジオール重量の0.00001〜0.1%である。
【0027】
ポリカーボネートジオール(b)の製造方法の一例として、カーボネートとしてジメチルカーボネートを用いる方法を述べる。ポリカーボネートジオールの製造は、2段階に分けて行うことができる。ジオールとジメチルカーボネートをモル比で20:1ないし1:10の割合で混和し、常圧又は減圧下、100〜300℃で反応させ、生成するメタノールをジメチルカーボネートとの混合物として除去して、低分子量ポリカーボネートジオールを得ることができる。次いで、減圧下、160〜250℃で加熱して、未反応のジオールとジメチルカーボネートを除去するとともに、低分子量ポリカーボネートジオールを自己縮合させて、所定の分子量のポリカーボネートジオールを得ることができる。
【0028】
本発明の1級末端OH比率を持つポリカーボネートジオールは、原料ジオールの純度、温度や時間などの重合条件、さらに、カーボネートとしてジアルキルカーボネート又は/及びジアリールカーボネートを用いる場合は、ジオールとカーボネートの仕込み比などの条件より、1つの方法を選択して、又は適宜組み合わせることにより得ることができる。
【0029】
工業的に得られる1,5−ペンタンジオールは、2級ヒドロキシル基を有する不純物として、1,5−ヘキサンジオール及び1,4−シクロヘキサンジオールを、各々0.2〜2重量%含有している。一方、工業的に得られる1,6−ヘキサンジオールは、1,4−シクロヘキサンジオールなどの2級ヒドロキシル基を有する不純物を0.1〜2重量%含んでいる。これら2級ヒドロキシル基を持つジオールは、ポリカーボネートジオール製造時、エステル交換反応性が低いため、ポリカーボネートジオールの末端基となることが多く、その結果、末端に2級ヒドロキシル基を持つポリカーボネートジオールとなる。
【0030】
また、カーボネートとして、ジアルキルカーボネート又は/及びジアリールカーボネートを用いた場合、目的とするポリカーボネートジオールの分子量に対応させて、ジオールとカーボネートを化学量論量又はそれに近い割合で仕込んで反応させると、ポリカーボネートジオールの末端にカーボネートに由来するアルキル基やアリール基が残存することが多い。そこで、カーボネートに対するジオールの量を、化学量論量の1.01〜1.30倍とすることで、ポリカーボネートジオールの末端に残存するアルキル基やアリール基末端が減り、ヒドロキシル基とすることが出来る。さらに、副反応により、ポリカーボネートジオールの末端がビニル基になったり、例えばカーボネートとしてジメチルカーボネートを用いた場合、メチルエステルやメチルエーテルになることもある。一般的に、副反応は、反応温度が高いほど、反応時間が長いほど起きやすくなる。
【0031】
本発明で用いられるポリカーボネートジオール(b)において、上記式(A)で表される繰り返し単位における下記式(B)又は(C)で表される繰り返し単位の割合(以降、「主成分割合」と称する。)は、60〜100モル%である。主成分比率が上記の範囲であれば、耐加水分解性や耐熱性、柔軟性などの性能バランスがよい多孔質構造体を得ることができる。特に、主成分割合が60モル%以上であることによって、合成皮革の柔軟性が適切に保たれ、また、ポリカーボネートジオールの粘度が上昇して用いる溶剤量が多くなるという事態の発生が抑止される。これらの観点から、主成分割合が70〜100モル%であることが更に好ましい。主成分割合が85〜100モル%である場合、最も好ましい。
【0032】
本発明で用いられるポリカーボネートジオール(b)において、上記式(B)で表される繰り返し単位と(C)で表される繰り返し単位の割合(以降、「共重合割合」と称し、上記式(B):上記式(C)で表す。)は、モル比で90:10〜10:90である。共重合割合がこの範囲であれば、高い柔軟性を有する合成皮革が得られる。さらに、共重合割合が70:30〜30:70である場合、ポリカーボネートジオールの結晶性が低下し、保管時に割れを生じこともなく、まき皺が発生することもなく好ましい。共重合比率が60:40〜40:60である場合、さらに好ましい。
【0033】
従来、ポリカーボネートジオールは、上記式(C)で表される繰り返し単位と末端ヒドロキシル基からなり、高い結晶性を有し、耐加水分解性、耐熱性や耐薬品性は高いものの、柔軟性が不足し、ウレタン樹脂の組成によっては、保管時に割れが発生し、まき皺が生成するという不都合があった。本発明では、上記式(C)の繰り返し単位とメチレン鎖長が近く、分岐構造を持たず、奇数のメチレン鎖を持つ繰り返し単位(上記式(B)の繰り返し単位)で結晶性を低下させるとともに、特定の主成分割合と共重合割合を有することにより、高い耐加水分解性、耐熱性や耐薬品性を維持しつつ、強度と柔軟性を併せ持ち、保管時に割れ発生やまき皺の生成のない合成皮革を得られることを見出した。
【0034】
本発明で用いられるポリカーボネートジオール(b)の平均分子量の範囲は、数平均分子量で800〜3500である。ポリカーボネートジオールの数平均分子量が800以上であれば、合成皮革の強度や柔軟性を維持でき、保管時の割れ発生やまき皺が低下することがない。また、ポリカーボネートジオールの数平均分子量が3500以下であれば、粘度が過度に高くなく、取り扱いが容易であり、ポリウレタンの重合で多量の溶媒が必要となることもない。ポリカーボネートジオールの数平均分子量が1000〜3000である場合、さらに好ましい。
【0035】
本発明のポリカーボネートジオール(b)は、柔軟性を向上させる目的で、その分子内に下式(D)の繰り返し単位で表される構造を含むこともできる。
【化7】

【0036】
本発明のポリカーボネートジオール(b)において、分子中の式(D)の繰り返し単位の含有量は、本発明に影響しない範囲であれば特に限定されるものではないが、その量が増えると耐熱性や耐薬品性が低下する。従って、式(D)で表される繰り返し単位を導入する場合には、式(A)で表されるカーボネートの繰り返し単位に対し、式(D)で表される(エーテル由来の構造を有する)繰り返し単位が0.05〜5モル%以下であることが好ましく、0.05〜3モル%以下であることがさらに好ましい。
【0037】
鎖延長剤(c)
本発明に用いる鎖延長剤(c)としては、エチレングリコール、1,4−ブタンジオールなどの短鎖ジオール類、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、トリレンジアミン、キシリレンジアミン、ジフェニルジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノシクロヘキシルメタン、ピペラジン、2−メチルピペラジン、イソホロンジアミンなどのジアミン類、及び水が挙げられるが、これらに限定されない。通常は1種の鎖延長剤を選択して用いるが、これらの鎖延長剤から2種類以上を選択しそれらを混合して用いても構わない。鎖延長剤の使用量は、通常、ポリカーボネートジオール(b)のモル数を100として50〜500モルである。
【0038】
ポリウレタン樹脂の製造
本発明のポリウレタン樹脂は、ポリウレタン業界で公知の方法により得ることができる。例えば、ポリカーボネートジオールと有機ジイソシアネートとを、20〜150℃で2〜12時間反応させて、末端がイソシアネート基となったウレタンプレポリマーを合成した後、これに鎖延長剤を加え、20〜150℃で2〜12時間反応させることによって、目的とする分子量を有するポリウレタン樹脂を得るプレポリマー法、又は、ポリカーボネートジオールと有機イソシアネートと鎖延長剤とを一括して添加し、20〜150℃で3〜12時間反応させることによって、目的とする分子量を有するポリウレタン樹脂を得るワンショット法がある。
【0039】
必要に応じて、ポリカーボネートジオール以外のポリオールを添加して使用することも出来る。使用可能なポリオールとしては、例えば、ポリエステル系ポリオール、ポリエーテル系ポリオール、ポリカプロラクトン系ポリオール、アクリルポリオール、ポリオレフィンポリオール、ひまし油ポリオールが挙げられ、単独又は混合して使用することができる。これらのポリオールの使用量は、本発明のプレポリマーの特性を損なうことが無ければ特に限定されないが、通常は、ポリカーボネートジオールに対し、50質量%以下、好ましくは30%以下、さらに好ましくは10質量%以下である。
【0040】
この反応において、必要に応じてウレタン反応触媒を添加することができる。触媒としては、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン、モルホリンなどの含窒素化合物、酢酸カリウム、ステアリン酸亜鉛、オクチル酸スズなどの金属塩、ジブチルスズジラウレートなどの有機金属化合物が挙げられる。必要に応じて、重合停止剤を添加することもできる。重合停止剤としては、メタノール、ブタノール、シクロヘキサノールなどの1価のアルコール類やジブチルアミンなどを使用することができる。
【0041】
これらの反応は、有機溶媒中で行ってもよい。有機溶媒としては、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド、ジエチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、テトラヒドロフラン(THF)、メチルエチルケトン(MEK)、ジオキサン、アセトン、シクロヘキサン、トルエンなどを用いることができる。これらの有機溶媒は、1種類又は2種類以上の混合物として用いることができる。一般には、有機溶剤は、得られるポリウレタン樹脂の濃度が5〜50重量%となるように用いられる。
【0042】
本発明のポリウレタン樹脂は、有機溶媒に溶解してポリウレタン樹脂溶液として合成皮革の製造に用いられる。有機溶媒としては、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド、ジエチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、テトラヒドロフラン(THF)、メチルエチルケトン(MEK)、ジオキサン、アセトン、シクロヘキサン、トルエンなどを用いることができる。これらの有機溶媒は、1種類又は2種類以上の混合物として用いることができる。有機溶媒中ポリウレタン樹脂溶液の濃度は、一般的には5〜50重量%である。
【0043】
ポリウレタン樹脂溶液に成膜助剤を添加することもできる。成膜助剤としては、カプリル酸、カプリン酸、ラウリル酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキン酸、メリシン酸などの炭素数が比較的多い脂肪族カルボン酸、オクチルアルコール、ノニルアルコール、デシルアルコール、ドデシルアルコール、テトラデシルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコールなどの長鎖アルコールが挙げられる。さらに、炭素数1〜6のアルキルアルコールと炭素数6〜18の脂肪族カルボン酸から得られるカルボン酸エステル、グリセリンと炭素数10〜22の脂肪族カルボン酸から得られるカルボン酸モノエステル、ジエステル、トリエステル、ソルビタンと炭素数10〜22の脂肪族カルボン酸から得られるカルボン酸モノエステル、ジエステルトリエステルが挙げられる。
【0044】
ポリウレタン樹脂溶液には、必要に応じて、着色剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、難燃剤、撥水撥油剤、消臭剤、帯電防止剤、芳香剤、離型剤、滑剤、充填剤、発泡剤などの添加剤を単独で又は2種類以上を併せて添加することもできる。さらに、必要に応じて、合成ゴム、ポリ塩化ビニル又は塩化ビニル共重合体、酢酸ビニル又は酢酸ビニル共重合体、アミノ酸樹脂、ポリウレタン/ポリアミノ酸ブロック共重合体、ポリエステルエラストマー、ポリアミドエラストマー、ポリアミドなどの重合体を添加することもできる。
【0045】
合成皮革の製造
本発明の合成皮革の製造方法としては、ポリウレタン樹脂溶液を基材に塗布又は含浸して湿式凝固させる湿式法、ポリウレタン樹脂溶液を離型紙又は基材に塗布し乾燥させる乾式法がある。さらに、離型紙にポリウレタン樹脂溶液を塗布し、その上に接着層を介して基材を貼り合わせた後に離型紙を除去するトランスファーコーティング法を用いることも出来る。
【0046】
湿式法を例にとり、以下に説明する。
基材としては、種々のものが使用できる。例えば、繊維質基材としては、繊維を不織布、織布、網布などの形状にした繊維集合体、あるいは繊維集合体の各繊維間が弾性重合体で結合されたものなどが挙げられる。この繊維集合体に用いられる繊維としては、木綿、麻、羊毛などの天然繊維、レーヨン、アセテートなどの再生又は半合成繊維、ポリアミド、ポリエステル、ポリアクリロニトリル、ポリビニルアルコール、ポリオレフィンなどの合成繊維が挙げられる。これらの繊維は、単独紡糸繊維でも混合紡糸繊維でも構わない。その他の基材としては、紙、離型紙、ポリエステルやポリオレフィンのプラスティックフィルム、アルミなどの金属板、ガラス板などが挙げられる。
【0047】
基材が、起毛布、編布、不織布の場合、その表面に塗布したポリウレタン樹脂溶液が基材の内部まで浸透しやすく、柔軟性が劣り品位の面で好ましくない。よって、予め基材に前処理を施すこともできる。その前処理方法としては、基材をフッ素系の撥水剤等で処理する方法、カレンダーに通し基材のふくらみを押しつぶして平滑にする方法などがある。
【0048】
ポリウレタン樹脂溶液の塗布や含浸は、一般的に用いられている方法で行うことができる。塗布方法の例としては、フローティングナイフコーター、ナイフオーバーロールコーター、リバースロールコーター、ロールドクターコーター、グラビアロールコーター、キスロールコーターなどを挙げることができる。
【0049】
湿式凝固の方法としては、例えば、ポリウレタン樹脂溶液を含浸又は塗布した基材を、ポリウレタン樹脂溶液の溶媒と親和性があり、ポリウレタン樹脂には親和性が無く非溶媒である凝固浴中に直接浸漬し、該有機溶媒を抽出することにより凝固させる方法がある。上記の有機溶媒と親和性がありポリウレタン樹脂とは親和性が無く非溶媒であるものとしては、水、エチレングリコール、グリセリン、エチレングリコールモノエチルエーテル、ヒドロキシエチルアセテートなどが挙げられ、単独で又は2種類以上を混合して用いられる。さらに、任意の割合で有機溶媒を混合して使用することもできる。
【0050】
凝固浴の温度は、通常は30〜50℃である。凝固浴の温度をこのような温度範囲に設定することによって、ポリカーボネートジオール系ポリウレタン樹脂を用いる場合に、容易に多孔質構造を得ることができるため実用上好ましい。凝固工程を数段に分けて連続的に行うこともできる。この場合、第一段の凝固浴温度は、30〜50℃であることが好ましい。第一段より後の凝固浴では、必要に応じ、温度を高温側にも低温側にも設定することができる。湿式凝固後は、通常の方法で洗浄、乾燥を行うことができる。
【0051】
本発明において、基材が編布のように空隙率が大きい場合、ポリウレタン樹脂溶液を直接塗布又は含浸すると、ポリウレタン樹脂が基材の全体に浸透し柔軟性を低下させることもある。その場合は、接着剤を介在させたラミネート法を採用することもできる。接着剤としては、ポリウレタン系、ポリアクリル系、ポリアミド系、ポリエステル系などを使用することができるが、ポリウレタン系を用いることが好ましい。接着剤の塗布方法は、合成皮革の表面全体に塗布することもできるが、風合いや透湿性の観点から、合成皮革に点状又は線状に接着剤を塗布して積層する方法が好ましい。
【0052】
得られた合成皮革は、そのまま使用することができる。あるいは、この合成皮革は、更に各種特性を付与する目的から、ポリウレタン樹脂、塩化ビニルやセルロース系樹脂などのポリマー溶液又はエマルジョンを塗布したり、別途離型紙の上に塗工した上記ポリマー溶液やエマルジョンを乾燥して得た塗膜と貼り合わせた後で、離型紙を剥がして得られる積層体として用いることもできる。
【実施例】
【0053】
次に、実施例及び比較例によって、本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの例により何ら限定されるものではない。
以下の実施例及び比較例において示す物性値は、下記の方法で測定した。
【0054】
1)ポリカーボネートジオールの1級末端OH比率
ポリカーボネートジオールの1級末端OH比率は、以下の方法で測定した。ポリカーボネートジオールの70g〜100gを300ccのナスフラスコに測り取り、留分回収用のトラップ球(trap bulb)に接続したロータリーエバポレーターを用いて0.1kPa以下の圧力下、攪拌しながら、約180℃の加熱浴でポリカーボネートジオールを加熱して、トラップ球に該ポリカーボネートジオールの1〜2重量%に相当する量の初期留分、即ち約1g(0.7〜2g)の初期留分を得た。これを、約100g(95〜105g)のエタノールを溶剤として用いて回収し、回収した溶液をGC分析にかけて得られるクロマトグラムのピーク面積の値から、下記数式(1)により算出した。
1級末端OH比率(%)=A÷B×100 (1)
A:両末端が1級OH基であるジオールのピーク面積の総和
B:ジオールを含むアルコール類(エタノールを除く)のピーク面積の総和
ガスクロマトグラフィーの分析条件: カラム;DB−WAX(米国J&W社製)、30m、膜厚0.25μm、昇温条件:60℃〜250℃、検出器:FID(flame ionization detector)
【0055】
2)ポリカーボネートジオールの数平均分子量
無水酢酸とピリジンを用い、水酸化カリウムのエタノール溶液で滴定する「中和滴定法(JIS K 0070−1992)」によって水酸基価を決定し、下記数式(2)を用いて数平均分子量を計算した。
数平均分子量=2/(OH価×10―3/56.1) (2)
【0056】
3)ポリカーボネートジオールの共重合割合と主成分割合
100mlのナスフラスコにサンプルを1g取り、エタノール30g、水酸化カリウム4gを入れて、100℃で1時間反応した。反応液を室温まで冷却後、指示薬にフェノールフタレインを2〜3滴添加し、塩酸で中和した。冷蔵庫で1時間冷却後、沈殿した塩を濾過で除去し、GC(ガスクロマトグラフィー)を用いて分析した。GC分析は、カラムとしてDB−WAX(米国、J&W製)を付けたガスクロマトグラフィーGC−14B(日本、島津製作所製)を用い、ジエチレングリコールジエチルエステルを内部標準として、FIDを検出器として行った。なお、カラムの昇温プロファイルは、60℃で5分保持した後、10℃/minで250℃まで昇温した。
【0057】
(i)共重合割合
上記の分析結果を用い、1,5−ペンタンジオールと1,6−ヘキサンジオールとのモル比から、共重合割合(全体を100とした場合の1,5−ペンタンジオールのモル数:1,6−ヘキサンジオールのモル数)を求めた。
(ii)主成分割合
上記の分析結果を用い、下記の数式(3)により求めた。
主成分割合(モル%)={(B+C)/A}×100 (3)
A:上記式(A)の繰り返し単位に由来するジオールの全モル数
B:1,5−ペンタンジオールのモル数
C:1,6−ヘキサンジオールのモル数
【0058】
4)ポリカーボネートジオールの原料ジオールの純度分析
ジオール原料として用いた1,5−ヘキサンジオール及び1,6−ヘキサンジオールをガスクロマトグラフィーで分析した。条件は、カラムとしてDB−WAX(J&W製)付けたガスクロマトグラフィーGC−14B(島津製作所製)を用い、ジエチレングリコールジエチルエステルを内標として、FIDを検出器として行った。なお、カラムの昇温プロファイルは、60℃で5分保持した後、10℃/minで250℃まで昇温した。
【0059】
5)合成皮革の耐汗性
汗の代替としてオレイン酸を用いた。試料を45℃のオレイン酸中に1週間浸漬し、表面を観察した。浸漬前と変化が無い場合を(○)、ぬめり感が感じられる場合を(△)、表面形状が変化している場合を(×)として、合成皮革の耐汗性を評価した。
【0060】
6)合成皮革の柔軟性
合成皮革の柔軟性は、後述の比較例2で作成した合成皮革を基準にして、触感により、柔軟か否かを評価した。この基準の合成皮革よりも柔軟である場合を(○)、変わらない場合を(△)、硬い場合を(×)として表した。
【0061】
7)合成皮革の表面感触の評価
合成皮革の表面感触の評価は、べたつき感とざらつき感で行った。評価は、5人の検査員が行い、合成皮革の表面を手で触った時の感触を、下記の判定基準を元に点数とし、その平均点として表した。
(i)べたつき感の評価
べたつかない場合を0点、強くべたつきを感じる場合を5点として、0〜5点で採点した。
(ii)ざらつき感の評価
ざらつきがない場合を0点、全体的にざらつきを感じる場合を5点として、0〜5点で採点した。
【0062】
8)合成皮革の保存安定性
合成皮革を直径10cmの紙管に巻き付け、温度23℃、湿度50%の恒温室に1ヶ月間保管した。紙管から合成皮革を外し、温度23℃、湿度50%の恒温室に1日放置した後、表面を目視で観察した。全く割れや皺がない場合を(○)、1mm以下の微少な割れや皺が見られる場合を(△)、1mmを超える割れや皺が見られる場合を(×)として採点した。
【0063】
[ポリカーボネートジオールの重合例1]
原料に用いた1,5−ペンタンジオールと1,6−ヘキサンジオールを分析した。1,5−ペンタンジオールは、純度が98.5%で、1,5−ヘキサンジオールを1.1質量%、1,4−シクロヘキサンジオールを0.1質量%含んでいた。残りの0.3質量%は、複数の不明物であった。1,6−ヘキサンジオールは、純度が98.9%で、1,4−シクロヘキサンジオールを0.6質量%含んでいた。残りの0.5質量%は、複数の不明物であった。以下の重合例では、重合例8と12を除き、当該原料を使用した。
【0064】
規則充填物を充填した精留塔と攪拌装置を備えた2Lのガラス製フラスコに、ジメチルカーボネートを430g(4.8mol)、1,5−ペンタンジオールを260g(2.5mol)、1,6−ヘキサンジオールを310g(2.6mol)仕込んだ。触媒としてチタンテトラブトキシド0.09gを加え、常圧下140〜150℃の温度で加熱・撹拌し、生成するメタノールとジメチルカーボネートの混合物を留去しながら、10時間反応させた。その後、反応温度を150℃〜190℃、圧力を10〜15kPaとして、生成するメタノールとジメチルカーボネートの混合物を留去しながら6時間反応を行った。その後、0.5kPaまで徐々に減圧しながら、190℃で8時間反応させた。得られたポリカーボネートジオールを分析した結果を、表1に示す。該ポリカーボネートジオールをPC1と称する。
【0065】
[ポリカーボネートジオールの重合例2]
上記重合例1と同じ装置を用い、ジメチルカーボネートを420g(4.7mol)、1,5−ペンタンジオールを260g(2.5mol)、1,6−ヘキサンジオールを270g(2.3mol)仕込んだ。触媒としてチタンテトラブトキシド0.08gを加え、上記重合例1と同条件で反応を行った。得られたポリカーボネートジオールを分析した結果を、表1に示す。該ポリカーボネートジオールをPC2と称する。
【0066】
[ポリカーボネートジオールの重合例3]
上記重合例1と同じ装置を用い、ジエチルカーボネートを500g(4.2mol)、1,5−ペンタンジオールを150g(1.4mol)、1,6−ヘキサンジオールを350g(3.0mol)仕込んだ。触媒としてチタンテトラブトキシド0.10gを加え、常圧下140〜150℃の温度で加熱・撹拌し、生成するエタノールとジエチルカーボネートの混合物を留去しながら、10時間反応させた。その後、反応温度を150℃〜190℃、圧力を10〜15kPaとして、生成するエタノールとジエチルカーボネートの混合物を留去しながら6時間反応を行った。その後、0.5kPaまで徐々に減圧しながら、190℃で8時間反応させた。得られたポリカーボネートジオールを分析した結果を、表1に示す。該ポリカーボネートジオールをPC3と称する。
【0067】
[ポリカーボネートジオールの重合例4]
上記重合例1と同じ装置を用い、エチレンカーボネートを465g(5.3mol)、1,5−ペンタンジオールを260g(2.5mol)、1,6−ヘキサンジオールを330g(2.8mol)仕込んだ。触媒としてチタンテトラブトキシド0.10gを加え、常圧で攪拌・加熱した。反応温度を150℃〜190℃、圧力を3.0〜5.0kPaとして、生成するエチレングリコールとエチレンカーボネートの混合物を留去しながら16時間反応を行った。その後、0.5kPaまで減圧し、エチレンカーボネートとジオールを留去しながら、190℃でさらに8時間反応させた。得られたポリカーボネートジオールを分析した結果を、表1に示す。該ポリカーボネートジオールをPC4と称する。
【0068】
[ポリカーボネートジオールの重合例5]
上記重合例1と同じ装置を用い、同じ条件で原料を仕込んだ。常圧下140〜150℃の温度で加熱・撹拌し、生成するメタノールとジメチルカーボネートの混合物を留去しながら、7時間反応させた。その後、反応温度を150℃〜190℃、圧力を10〜15kPaとして、生成するメタノールとジメチルカーボネートの混合物を留去しながら3時間反応を行った。その後、0.5kPaまで徐々に減圧しながら、190℃で3時間反応させた。得られたポリカーボネートジオールを分析した結果を、表1に示す。該ポリカーボネートジオールをPC5と称する。
【0069】
[ポリカーボネートジオールの重合例6]
上記重合例1と同じ装置を用い、上記重合例5と同じ条件で原料を仕込んだ。触媒としてチタンテトラブトキシド0.10gを加え、常圧で攪拌・加熱した。反応温度を150℃〜190℃、圧力を3.0〜5.0kPaとして、生成するエチレングリコールとエチレンカーボネートの混合物を留去しながら10時間反応を行った。その後、0.5kPaまで減圧し、エチレンカーボネートとジオールを留去しながら、190℃でさらに5時間反応させた。得られたポリカーボネートジオールを分析した結果を、表1に示す。該ポリカーボネートジオールをPC6と称する。
【0070】
[ポリカーボネートジオールの重合例7]
上記重合例4の条件で反応を行い、0.5kPaでジオールを留去しながら、190℃で、さらに10時間反応させた。得られたポリカーボネートジオールを分析した結果を、表1に示す。該ポリカーボネートジオールをPC7と称する。
【0071】
[ポリカーボネートジオールの重合例8]
原料の1,5−ペンタンジオールと1,6−ヘキサンジオールを蒸留で精製した。その結果、1,5−ペンタンジオールは、純度が98.9%で、1,5−ヘキサンジオールを0.4質量%含んでいたが、1,4−シクロヘキサンジオールは検出されなかった。残りの0.7質量%は、複数の不明物であった。1,6−ヘキサンジオールは、純度が99.1%で、1,4−シクロヘキサンジオールを0.3質量%含んでいた。残りの0.6質量%は、複数の不明物であった。上記の原料を用いてポリカーボネートジオールを重合した。
【0072】
ジエチルカーボネートを570g(4.8mol)、1,5−ペンタンジオールを260g(2.5mol)、1,6−ヘキサンジオールを315g(2.7mol)用いた以外は、上記重合例3に示す装置及び条件で反応を行った。得られたポリカーボネートジオールを分析した結果を、表1に示す。該ポリカーボネートジオールをPC8と称する。
【0073】
[ポリカーボネートジオールの重合例9]
上記重合例1と同じ装置を用い、ジエチルカーボネートを460g(3.9mol)、1,5−ペンタンジオールを100g(0.7mol)、1,6−ヘキサンジオールを370g(3.1mol)仕込んだ。触媒としてチタンテトラブトキシド0.10gを加え、上記重合例3と同じ条件で反応を行った。得られたポリカーボネートジオールを分析した結果を、表1に示す。該ポリカーボネートジオールをPC9と称する。
【0074】
[ポリカーボネートジオールの重合例10]
上記重合例1と同じ装置を用い、ジメチルカーボネートを430g(4.8mol)、1,6−ヘキサンジオールを590g(5.0mol)仕込んだ。触媒としてチタンテトラブトキシド0.09gを加え、上記重合例1と同条件で反応を行った。得られたポリカーボネートジオールを分析した結果を、表1に示す。該ポリカーボネートジオールをPC−10と称する。
【0075】
[ポリカーボネートジオールの重合例11]
上記重合例1と同じ装置を用い、ジメチルカーボネートを460g(5.1mol)、1,5−ペンタンジオールを260g(2.5mol)、1,6−ヘキサンジオールを280g(2.4mol)仕込んだ。触媒としてチタンテトラブトキシド0.09gを加え、常圧下140〜150℃の温度で加熱・撹拌し、生成するエタノールとジエチルカーボネートの混合物を留去しながら、5時間反応させた。その後、反応温度を150℃〜210℃、圧力を9〜15kPaとして、生成するエタノールとジエチルカーボネートの混合物を留去しながら6時間反応を行った。その後、0.5kPaまで徐々に減圧しながら、210℃で6時間反応させた。得られたポリカーボネートジオールを分析した結果を、表1に示す。該ポリカーボネートジオールをPC11と称する。
【0076】
[ポリカーボネートジオールの重合例12]
上記重合例8で用いた原料を用いた以外は、上記重合例4に示す装置及び条件で反応を行った。得られたポリカーボネートジオールを分析した結果を、表1に示す。該ポリカーボネートジオールをPC−12と称する。
【0077】
[ポリカーボネートジオールの重合例13]
上記重合例1と同じ装置を用い、ジメチルカーボネートを430g(4.8mol)、1,5−ペンタンジオールを550g(5.3mol)仕込んだ。触媒としてチタンテトラブトキシド0.09gを加え、上記重合例1と同条件で反応を行った。得られたポリカーボネートジオールを分析した結果を、表1に示す。該ポリカーボネートジオールをPC−13と称する。
【0078】
【表1】

【0079】
[ポリウレタン樹脂の重合例1〜13]
還流冷却管、温度計、及び攪拌機を備えた反応機に、ポリカーボネートジオール(以降、PCDと略す。)350gとジメチルホルムアミド(以降、DMFと略す。)を入れ、充分に攪拌した。次いで、イソホロンジイソシアネート(以降、IPDIと略す。)と、触媒としてジブチルスズジラウレートを添加し、75℃で5時間反応させて、末端がイソシアネートのプレポリマーを得た。温度を40℃に下げた後、イソホロンジアミン(以下、IPDAと略す。)を添加し、数平均分子量が50000になった時点で、n−ヘキシルアミンを1g添加して反応を停止した。その後、固形分が30質量%となるようにDMFを添加、均一に撹拌して、ポリウレタン樹脂溶液を調製し、合成皮革に製造に用いた。
下記表2に、ポリウレタン樹脂の各原料の仕込み量を示す。得られたポリウレタン樹脂を、それぞれPUR1〜PUR13と称する。
【0080】
【表2】

【0081】
[実施例1]
70デニールのナイロン66基布(経密度136本/インチ、緯密度104本/インチ)を、0.8%のフッ素系撥水剤(明成化学株式会社製、アサヒガードLS317)を入れた浴に浸漬し、絞り率80%で絞った後、150℃の乾燥機で5分間乾燥した。該基布の上に、アプリケータを用いて、クリアランス100μmでポリウレタン樹脂溶液PUR1を塗布した。25℃の10%DMF水溶液に5分間浸漬して湿式凝固した後、65℃の温水に5分間浸漬して溶媒を取り除いた。次いで、絞液ロールで絞り、110℃で乾燥して合成皮革1を得た。
【0082】
[実施例2〜8]
ポリウレタン樹脂溶液PUR2〜4又はPUR6〜9を用いた以外は実施例1と同様の方法で、合成皮革2〜8を得た。
【0083】
[比較例1〜5]
ポリウレタン樹脂溶液PUR5又はPUR10〜13を用いた以外は、実施例1と同様の方法で合成皮革9〜13を得た。
【0084】
得られた合成皮革1〜13(実施例1〜8及び比較例1〜5の合成皮革)に関し、柔軟性、耐汗性、表面べたつき、表面ざらつき及び保存安定性を評価した。その結果を下記表3に示す。
【0085】
【表3】

【0086】
[実施例9]
シリコン系樹脂で剥離処理したポリエチレンテレフタレートフィルムに、リバースロールコーターを用いてポリウレタン樹脂溶液PUR1を約100μmの厚さで塗布した。その後、120℃で8分間加熱して実施例1で用いた基布に重ねて、120℃に加熱したカレンダーロールを用いて貼り合わせた。80℃で36時間養生した後、ポリエチレンテレフタレートフィルムを剥がして合成皮革を得た。
【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明によれば、耐汗性、耐加水分解性、柔軟性などの物性のバランスに優れ、さらに保管時に割れや皺を生じることもなく、ざらつき感やべたつき感の無い良好な表面を有する合成皮革を得ることができる。この合成皮革は、自動車シートや内装材、衣類、靴、鞄、雑貨、家具などの用途に、好適に利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)有機ジイソシアネート、(b)ポリカーボネートジオール、及び(c)鎖延長剤の反応生成物を含んでなるポリウレタン樹脂から形成された合成皮革であって、
該ポリカーボネートジオール(b)が、下記式(A)で表される繰り返し単位と末端ヒドロキシル基を有するポリカーボネートジオールであって、式(A)で表される繰り返し単位の60〜100モル%は、下記式(B)又は(C)で表される繰り返し単位であり、下記式(B)で表される繰り返し単位と下記式(C)で表される繰り返し単位の割合が、90:10〜10:90(モル比)であり、数平均分子量が800〜3500であり、そして1級末端OH比率が95〜99.5%であることを特徴とする上記の合成皮革。
【化1】


【化2】


【化3】


【公開番号】特開2013−108196(P2013−108196A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−255145(P2011−255145)
【出願日】平成23年11月22日(2011.11.22)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】