説明

合成糸および合成糸から作られている製品

【課題】合成糸および合成糸から作られている製品
【解決手段】高性能繊維を呈さず、コアにワイヤのみを有し、それにもかかわらず耐破断性特性が同等である、耐破断性の合成糸が提供され、この糸は、互いに平行か、互いにより合わせられているかのいずれかの、少なくとも1つの繊維ガラスストランドと少なくとも1つのワイヤストランドとのコアと、非金属で高性能でない繊維から作られている少なくとも1つのカバーストランドとを含有し、これらから作られている織物に加えて、防護製品および衣類は、この織物から作られている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、糸、織物および上述の糸から編まれる防護衣類に関する。特に、本発明は、費用のかかる高性能な繊維を使用することなく、防護衣類に効果的な破断抵抗をもたらす耐破断性の合成糸構造に関する。
【背景技術】
【0002】
多くの産業において、従業員のケガを防ぐために、防護衣類、特に、手袋を提供することが望ましい。上述の衣類は、許容可能な耐破断性をもたらすと同時に、適切な柔軟性と耐久性とを有することが理想的である。この点について、これらの特質を有するニット衣類は、機能強化した耐破断性性能を達成するために、「高性能」繊維を含む糸から構成されている。これらの糸は、単一のまたは複数のストランドから構成されるコアが、1つ以上の付加的なストランドを巻き付けられる巻き付け技術を使用して構成されている。コアか、巻き付けストランドかのいずれかは、高性能繊維から構成されるストランドを含むことができる。これらの典型的なものとして、米国特許第4,777,789号、米国特許第4,838,017号および米国特許第5,119,512号に開示される耐破断性の糸が挙げられる。これらの特許は、本明細書に使用されるように、拡大連鎖ポリエチレン(Spectra(登録商標)、Alliedによるブランド繊維)またはアラミド(Kevlar(登録商標),DuPontによるブランド繊維)などの繊維を意味する、周知の「高性能」繊維の使用を開示している。
【0003】
耐破断性の合成糸および衣類を作るための、これらの高性能繊維の使用には、多少の不利な点が伴う。先ず、これらの高性能繊維から作られている製品は、剛性であり、特に、防護手袋の場合、着用者に一定の触覚と適応機能とを失わせることがある。この感度の損失は、食肉加工産業の労働者にとっては重大である。
【0004】
高性能繊維の使用に対する別の潜在的な欠点は、コストである。たとえば、高性能繊維についての単位長さのコストは、おそらく、耐破断性の合成糸において次に費用のかかるコンポーネントのコストの数倍である。耐破断性の合成糸の高性能繊維含有率を実質的に減少または削減することは、きわめて望ましい。
【0005】
これらの問題に対する1つの解決策は、Kolmesへの米国特許第6,363,703号により提案されている。この特許において、合成糸は、少なくとも1つの繊維ガラスストランドのコアを有し、この繊維ガラスコアストランドまわりに巻き付けられている少なくとも1つのワイヤストランドを必要とし、ワイヤおよび繊維ガラスまわりに巻き付けられる1つ以上のカバーストランドが後に続き、このカバーストランドは、非金属で高性能でない材料から作られている。
【0006】
巻き付けたワイヤ構造の必要なく、高性能繊維を含む合成糸と比べてコスト削減の効果的なレベルの耐破断性性能を提供する耐破断性糸構造の必要性がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本発明の1つの目的は、巻き付けたワイヤコンポーネントなしに、高性能繊維を含有すると同時に良好な感触および柔軟性を維持する、合成物の耐破断性を有する高性能繊維を含有しない合成糸を提供することである。
【0008】
本発明の別の目的は、限定されるのではないが、本発明の合成糸から作られている手袋、エプロン、アームシールド、ジャケットおよびフェンシングのユニフォームなどのスポーツ用品を含む、防護衣類を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の以上および他の目的は、
a.少なくとも1つの繊維ガラスストランド、および耐破断性をもたらすのに十分な直径の少なくとも1つのワイヤストランドを備え、この少なくとも1つの繊維ガラスストランドおよび少なくとも1つのワイヤストランドは、互いに平行であるか、互いにより合わせられているコアであり、この糸のコアだけは金属を含有する、コアと、
b.第1の方向に、このコアのまわりに巻き付けられている、非金属で高性能でない少なくとも1つの繊維カバーストランドと、
を備える、合成糸の案出と、
耐破断かつ耐摩耗性の織物を作成する際のこれの使用と、その織物から作成される製品および衣類とによって、果たされる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本明細書に使用されるような「繊維(fiber」」という用語は、糸(yarn)および織物(fabric)のアセンブリに使用される基礎コンポーネントについてである。一般に、繊維は、これの直径または幅よりもずっと大きい長さ寸法を有するコンポーネントである。この用語は、リボン、ストリップ、ステープル、規則的または不規則な断面を有する、細断繊維、カット繊維または短繊維などの他の形態を含む。「繊維」は、複数の上記のいずれか1つまたは上記の組合せをも含む。
【0011】
本明細書に使用されるように、「高性能繊維(high performance fiber)」という用語は、10g/デニールより大きい高い値のテナシティを有する、合成または天然の非ガラス繊維のクラスを意味し、そのために、それらは、高い摩耗および/または耐破断性が重要である場合の適用に向いている。一般に、高性能繊維は、最終繊維構造において、きわめて高度な分子配向および結晶性を有する。
【0012】
本明細書に使用される「フィラメント(filament)」という用語は、シルクにおいて自然に見られるような無制限の長さのまたは非常に長い繊維を指す。この用語はさらに、特に押出し成形プロセスによって生成される人造繊維も指す。繊維を組成する個々のフィラメントは、丸い、ギザギザのある、または、小鈍鋸歯状の形状、豆形、または他のものを含むために、様々な断面のいずれか1つを有する。
【0013】
本明細書に使用される「糸(yarn)」という用語は、織布を形成するために、編む、織るまたは、そうでない場合、絡み合わせるのに適する形態をとる、織物繊維、フィラメントまたは材料の連続ストランドを指す。糸は、通常、より合わせによって互いに結び合わされる人造繊維からなる紡績糸、多数の連続フィラメントまたはストランドからなるマルチフィラメント糸、または、単一のストランドからなるモノフィラメント糸とを含むために、様々な形態を生じることが可能である。
【0014】
本明細書に使用されるような「エアインターレーシング(エアによる織り交ぜ)(air interlacing)」という用語は、ストランドを結合するために、したがって、単一の断続的に混じり合わせたストランドを形成するために、エアジェットに糸の複数のストランドを施すことを指す。この処理は、「エアタッキング(エアによるつなぎ合わせ)(air tacking)」とも呼ばれる。この用語は、特に、機織り(weaving)プロセスにおける、これのさらなる処理を容易にするために、マルチフィラメント糸をエアコンパクティング(エアによる緻密化)(air compacting)する方法について言及するために、当技術分野において理解される「混ぜ合い(intermingling)」または「絡ませ(entangling)」というプロセスを指すのには使用されない。混ぜ合わされた糸ストランドは、一般に、別の糸と結合されない。どちらかといえば、個々のマルチフィラメントストランドは、単一のストランドの領域内で互いに絡み合わされる。このエアコンパクティングは、糸サイズ付けの代替として、そして、改良されたピック抵抗をもたらすための手段として使用される。この用語は、さらに、単一の糸または複数の糸ストランドのかさを増大するのに行われる、周知のエアによるかさ高加工について言及しない。合成糸におけるエアインターレーシングの方法およびそのための適切な装置は、米国特許第6,349,531号と、米国特許第6,341,483号と、米国特許第6,212,914号とに説明され、それらの関連部分は、参照してここに組み込まれる。
【0015】
本発明は、高性能繊維を有する糸と同等の破断抵抗を有する耐破断性合成糸の概念に向けられているが、それは、費用のかからない高性能繊維を有し、巻き付けられたワイヤ層を含有しない。一般に、糸は、従来の高性能でない糸の1つ以上のカバーを有して、繊維ガラスの少なくとも1つのストランドと、ワイヤの少なくとも1つのストランドとを含有するコアとから形成されている。コアのいずれか1つ、2つまたはすべて、およびカバーは、2つのストランドを含むことができる。図1ないし図3は、様々な実施形態の典型的な例である。以前は、ワイヤに対する損傷が、ストレッチングを、または、ワイヤに接するエッジ(ブレードなど)の衝撃を回避するために、ワイヤの巻き付けた層を使用することが必要であると考えられていた。このワイヤに対する損傷は、一般に、ワイヤのストレッチングおよびその後の弛緩による、ベンドまたはクリンプの発生を示す。
【0016】
しかしながら、本発明者らは、ワイヤに対する上記の顕著な損傷を回避すると同時に、コアのまわりにワイヤのストランドを巻き付ける必要なく、コア内に隣接する繊維ガラスおよびワイヤストランドを使用する糸構造を提供することができることを見出した。本発明の文脈内で、「隣接するストランド(adjacent strand)」という用語は、これらのストランドが、互いに平行な構成と、より合わされる構成の両方を含み、並んでいることを示す。しかしながら、本発明において、その構造は、巻き付けたワイヤ層を含有しない。オペレーションのあらゆる特別の理論に保持されることを望むのではないのと同時に、繊維ガラスの平行ストランドの存在は、糸にとって、特に、ワイヤにとって緩衝効果をもたらし、それにより、上述のベンドまたはクリンプの生成を回避することが考えられる。さらにまた、繊維ガラス自体は伸びないので、糸のコアにとって「アンカー」として機能する、したがって、高いストレッチング力がワイヤに作用することを回避すると考えられる。
【0017】
図1を参照すると、単一の繊維ガラスストランド16とワイヤの単一のストランド18とから形成されたコア12を含む、耐破断性の合成糸10の一実施形態が示されている(これらのストランドは、縮尺どおりには図示されず、下記に示されるように様々なサイズである)。本発明の耐破断性の糸10のこの実施形態は、非金属で高性能でない繊維22、24から形成された2つのカバー層を有するカバー14をさらに備えている。第1のカバー22は、コア12まわりに巻き付けられ、第2のカバー24は、好ましくは、第1のカバー22とは反対の巻き付け方向に、第1のカバー22まわりに巻き付けられている。
【0018】
図2に示される第2の実施形態において、耐破断性の合成糸10は、単一の繊維ガラスストランド16とワイヤの単一のストランド18とから形成された、コア12を有している(再度、縮尺どおりには図示せず)。この実施形態は、非金属で高性能でない繊維から形成された単一のカバー22をさらに有している。
【0019】
別の実施形態において、コアは、1つ以上の付加的なストランドを有することができる。これらの1つ以上の付加的なストランドは、以下に制限されるものではないが、繊維ガラス、ワイヤおよび従来の高性能でない繊維を含む、あらゆる高性能でない材料から作られることができる。これらの付加的な1つ以上のストランドは、繊維ガラスコアストランドとワイヤコアストランドとのいずれか一方か、両方と、平行であるか、同時により合わせられるかのいずれかのコアに配置されることができる。別の方法として、2つ以上の付加的なコアストランドが存在して、エアインターレーシングに適切な材料から作られる場合、これらの付加的なコアストランドは、エアインターレースされることができる。コアに付加的な平行ストランドを有する一実施形態は、図3に示され、これは、繊維ガラスのストランド16と、ワイヤのストランド18と、高性能でない繊維の付加的なコアストランド19とから形成されたコア12を備え、カバー14は、上述のような2つのカバー層22、24を有している。
【0020】
別の実施形態において、コアは、ワイヤの単一のストランドに平行な繊維ガラスの単一のストランドを含有し、このワイヤの単一のストランドは、高性能でない繊維のシースストランドで巻き付けられている。このコアは、次に、合成糸を形成するために、高性能でない繊維の1つ以上のカバー層で巻き付けられる。
【0021】
さらなる別の実施形態において、本発明の合成糸は、高性能でない繊維が使用される限り、3つ以上のカバー層を有することが可能である。この実施形態は、図4に示され、単一の繊維ガラスストランド16とワイヤの単一のストランド18とから形成されたコア12を備えている(縮尺どおりには図示されず)。カバー14は、3つのカバー層22、24、26を有し、それぞれは、高性能でない繊維から形成され、各連続するカバー層は、直ぐ下にある層とは反対の方向に巻き付けられていることが好ましい。
【0022】
本発明の実施に使用されるワイヤは、約0.0013インチ(0.0005118cm)と0.0036インチ(0.0014173cm)の直径を有することが望ましく、約0.0016インチ(0.00062992cm)ないし約0.0020インチ(0.0007874cm)の直径を有することが好ましい。2つのワイヤが使用される場合、これらは、範囲の下位、たとえば、約0.0013ないし約0.0020の直径であることが好ましい。本発明のワイヤストランドは、糸に従来から使用されているあらゆる金属から作られることが可能であり、合成糸の所望の特性および最終用途に基づき、上記に明記される範囲から選択されたワイヤの特定の直径を有する、焼きなまされたステンレス鋼から形成されることが好ましい。
【0023】
第1のカバーストランド、と、使用される場合、第2のカバーストランドとは、非金属の、高性能でない繊維から構成される。これらのストランドは、約50ないし約1200のデニール範囲内の、紡績形状か、フィラメント形状かのいずれかで設けられることができる。カバーストランドに対して適切な材料は、限定されるものではないが、ポリエステル、ポリエステル/綿の混紡、アクリル、およびナイロン、ウール、綿の様々なタイプを含む。1つまたは複数のカバーストランドについての特定の材料の選択は、合成糸の最終用途およびその糸に望まれる物理的特性(外観、感触など)によって変化する。非金属で高性能でない繊維カバーストランドは、従来のニットおよび機織り装置で合成糸の処理を可能にするのに十分な割合で、コアのまわりに巻き付けられている、つまり、コアは1つ以上のカバー層でカバーされている。各連続カバーストランドは、直前のカバーストランドの方向と同じか、反対の方向に、好ましくは、直前のカバーストランドの方向と反対の方向に巻き付けられている。カバーは、合成物の基礎をなす部分が完全にカバーされるように巻き付けられることが必要ではないが、このようにすることが好ましい。カバーストランドは、それぞれ独立して、1インチ(2.54cm)につき約6回転ないし約13回転の割合で巻き付けられることが、特に好ましい。
【0024】
コアにおける繊維ガラスストランド(または複数の繊維ガラスストランド)は、連続マルチフィラメントか、モノフィラメントか、紡績のいずれかの、E−ガラスか、S−ガラスかのいずれかでよく、あらゆる所望のサイズか、デニールでよい。本発明の実施は、下記の表1に示されるように、市販の繊維ガラスストランドのいくつかの異なるサイズを使用することを考慮している。
【表1】

【0025】
表1におけるサイズの指定は、繊維ガラスストランドを明記するのに当技術分野において周知である。
【0026】
これらの繊維ガラスストランドは、最終製品のための特定の適用により、単独で、または組合せて使用されることができる。限定的ではない例示として、約200の合計デニールがコアの繊維ガラスコンポーネントに望まれる場合、単一のD−225か、2つのほぼ平行なG−450のストランドが使用されることができる。好ましい実施形態において、単一のストランドか、ストランドの組合せかのいずれかが、約200と約1200の間のデニールを有する。
【0027】
上記の表は、一般に入手できる繊維ガラスストランドサイズを示していることを理解されたい。本発明の実施は、他の繊維ガラスストランドサイズの使用を考慮し、その場合、それらは、市場で入手可能であるか、特定の適用に適切であると分かる。
【0028】
適切な好ましいタイプの繊維ガラス繊維は、カミング(Coming)およびPPGによって製造される。その繊維は、1デニールにつき約12グラムないし約20グラムの比較的高いテナシティの望ましい特性と、漂白剤および溶剤によって影響を及ぼされない、ほとんどの酸およびアルカリに対する耐性と、かび汚れおよび日光などの環境状況に対する耐性と、摩耗に対する、およびエージングに対する高い耐性とを有する。
【0029】
1つまたは複数の繊維ガラスストランドと、1つまたは複数のワイヤストランドと、複数のカバーを含むために、本発明の糸の総合的なデニールは、約300デニールと約5000デニールとの間であることが好ましい。さらにまた、繊維ガラスおよびワイヤコンポーネントの組合せたミル重量は、合成糸の25%と60%との間であるべきである。
【0030】
本発明の合成糸は、そのままで使用されることが可能である、または、静電防止、抗菌、選択放射線吸収(UV、IRなど)、染色または他の所望の特性をもたらすために、様々な処理に施されることが可能である。1つまたは複数の上述の処理は、たとえば、米国特許第6,260,344号と、米国特許第6,266,951号と、米国特許第6,351,932号とに記述されるものなどの市販の抗菌物質を使用して、抗菌特性を与えることを含むことが好ましい。これらの処理は、個々に、または、2つ以上を組合せて使用されることが可能である。上述の処理は、当技術分野において周知であり、従来の糸処理装置を使用して、完成糸のアセンブリの前に、完成糸、その糸のあらゆる部分、または、糸の個々のコンポーネント、または、これの部分に適用されることが可能である。
【0031】
(実施例)
限定的ではない例示として、本発明の様々な実施形態を明らかにする糸構造が、下記の表2に実施例1ないし5として示されている。実施例6ないし9は、比較テストのために含まれ、下文で説明される。術語「_X」は、使用される特定の合成糸コンポーネントのストランドの数を指す。各実例において、第1のカバー層および第2のカバー層は、対向する第1の方向および第2の方向に巻き付けられている(第3のカバー層の場合、それは、第1の層と同じ方向に、そして、第2の層に対して反対の方向に巻き付けられている)。
【表2】

【0032】
小さいデニールのコアおよびカバーを使用する実施例は、10ゲージか、類似の編機を使用して編んでいる。大きいデニールのコアおよびカバーを使用する実施例は、7ゲージか、同様なサイズの編機を使用して編んでいる。
【0033】
本発明の糸は、標準の製糸装置で製造されることができる。糸に3つのカバー層が設けられている場合、繊維ガラスおよびワイヤコアには、第1のステップで第1のカバーストランドが巻き付けられることが好ましい。次に、第2のカバーストランド、および、使用される場合、第3のカバーストランドは、独立したマシンの第2のオペレーションで追加される。しかしながら、他の手順が、当業者には容易に明らかであるように、使用されることができる。
【0034】
本発明の糸は、上記に本明細書に記述される非金属の耐破断性糸にまさるいくつかの利点を有する。繊維ガラスおよびワイヤコアストランドおよび1つまたは複数のカバーストランドは、互いに相互に利益をもたらす。繊維ガラスコンポーネントは、耐破断/磨耗性のワイヤストランドのためのサポートとして機能する。結果として生じる糸の特性は、繊維ガラスおよびワイヤコアのまわりの1つまたは複数のカバーストランドの、直径および巻き付け(1インチ(2.54cm)当たりの回転(ターン))の割合を変えることによって、変えられることができる。
【0035】
本発明の糸の耐破断性性能は、下記の表3に示され、この表3は、本発明により構成される糸(高性能繊維のない)の性能と、高性能繊維を含む同様の構造とを比較している。テストは、ASTMテスト手順F1790−97を使用して行われた。このASTMテストについて、基準力は、テストされる材料において1インチ進み、「切り離し」を開始するために、テスト装置のカッティングエッジに必要とされる質量である。上記に記述されるASTMテストを使用して収集される耐破断性データは、下記の表3に要約されている。実施例10ないし12のそれぞれは、Spectra(登録商標)の繊維/繊維ガラスの組合せを含む、市販の耐破断性合成糸である。Spectra(登録商標)の繊維コアストランドは、実施例10および実施例11の繊維ガラスコアストランドまわりに巻き付けられている。Spectra(登録商標)の繊維コアストランドは、実施例12の繊維ガラスコアストランドに平行である。
【表3】

【0036】
同等の合成物のデニールについて、本発明の糸は、高性能繊維の削減によるかなりのコスト削減の、そして、巻き付けるワイヤを必要とすることなく、巻き付けられたワイヤ層を有する合成糸に比べて、同等の耐破断性の、高性能繊維糸と同等の耐破断性性能をもたらす。ある場合に、本発明は、同様の合成物デニールでの他の構造と比べて、かなり改善された耐破断性をもたらす。
【0037】
実施例10ないし12は、高性能繊維の量および繊維ガラスコアストランドのサイズが増大されるとき、耐破断性性能結果を確実に改善することを示している。驚くべきことに、本発明の糸は、高性能繊維(所定の同等の合成物デニールおよび繊維ガラスサイズ)を含む実施例のそれぞれに比べて優るとも劣らない。テスト結果は、比較的低コストのワイヤ/繊維ガラスの組合せが、高性能繊維を含有する糸と同等の耐破断性性能をもたらすことを示している。
【0038】
本発明の合成糸は、耐破断かつ耐摩耗性の織物を作成するのに使用されることが可能であり、それは同様に、防護製品および衣類を作成するのに使用されることが可能である。図5を参照すると、本発明による耐破断かつ耐摩耗性の手袋40が示されている。この手袋は、着用者の指のそれぞれのための指サック42を含む。耐破断性糸は、制限されるものではないが、アームシールド、エプロンまたはジャケット、およびフェンシングなどのスポーツ用のスポーツウエアを含む、様々な他のタイプの耐破断性衣類および製品に組み込まれることができる。
【0039】
本発明は、好ましい実施形態およびこれらの実施形態の例示とともに説明されているが、本発明の精神と範囲とから逸脱することなく修正および変更できることは、当業者が容易に理解するように、理解されるべきである。上述の修正および変更は、添付の特許請求の範囲およびそれらの同等物の範囲内にあると考慮される。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】単一の繊維ガラスストランドとワイヤの単一のストランドとから形成されたコアを含む、耐破断性の合成糸の一実施形態を示している。
【図2】耐破断性の合成糸が、単一の繊維ガラスストランドとワイヤの単一のストランドとから形成されたコアを有している実施形態を示している。
【図3】コアに付加的な平行ストランドを有する実施形態を示している。
【図4】単一の繊維ガラスストランドとワイヤの単一のストランドとから形成されたコアを備えている実施形態を示している。
【図5】本発明による耐破断かつ耐摩耗性の手袋を示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
耐破断性の合成糸であって、
a.少なくとも1つの繊維ガラスストランドと、耐破断性をもたらすのに十分な直径の少なくとも1つのワイヤストランドとを備え、前記少なくとも1つの繊維ガラスストランドおよび前記少なくとも1つのワイヤストランドは、互いに平行であるか、互いにより合わせられているかであるコアであって、前記糸のコアだけは金属を含有するコアと、
b.第1の方向に、前記コアのまわりに巻き付けられている、非金属で高性能でない少なくとも1つの繊維カバーストランドと、
を具備する耐破断性の合成糸。
【請求項2】
前記少なくとも1つのワイヤストランドは、約0.0013インチ(0.0005118cm)と0.0036インチ(0.0014173cm)との間の直径を有する、請求項1に記載の耐破断性の合成糸。
【請求項3】
前記少なくとも1つの繊維ガラスストランドは、約50ないし約1200のデニールを有する、請求項1に記載の耐破断性の合成糸。
【請求項4】
非金属で高性能でない前記少なくとも1つの繊維カバーストランドの方向と反対の第2の方向に、非金属で高性能でないこの少なくとも1つの繊維カバーストランドまわりに巻き付けられている、非金属で高性能でない第2の繊維カバーストランドをさらに具備する、請求項1に記載の耐破断性の合成糸。
【請求項5】
非金属で高性能でない前記第1の繊維カバーストランドは、ポリエステル、ポリエステル/綿の混紡、ナイロン、アクリル、ウールおよび綿からなる群から選択された材料でできている、請求項1に記載の耐破断性の合成糸。
【請求項6】
非金属で高性能でない前記第2の繊維カバーストランドは、ポリエステル、ポリエステル/綿の混紡、ナイロン、アクリル、ウールおよび綿からなる群から選択された材料でできている、請求項4に記載の耐破断性の合成糸。
【請求項7】
前記コアは、前記少なくとも1つの繊維ガラスストランドと前記少なくとも1つのワイヤストランドとのうちの一方または両方と平行であるか、より合わせられている第2の繊維ガラスストランドをさらに具備する、請求項1に記載の耐破断性の合成糸。
【請求項8】
前記コアは、前記少なくとも1つの繊維ガラスストランドと前記少なくとも1つのワイヤストランドとのうちの一方または両方と平行であるか、より合わせられている第2のワイヤストランドをさらに具備する、請求項1に記載の耐破断性の合成糸。
【請求項9】
非金属で高性能でない前記少なくとも1つの繊維カバーストランドは、1インチ(2.54cm)につき約6回転ないし約13回転の割合で前記コアのまわりに巻き付けられている、請求項1に記載の耐破断性の合成糸。
【請求項10】
非金属で高性能でない前記少なくとも1つの繊維カバーストランドは、約50ないし約1200のデニールを有する、請求項1に記載の耐破断性の合成糸。
【請求項11】
前記少なくとも1つのワイヤストランドには、非金属で高性能でない繊維ストランドのシースが巻き付けられている、請求項1に記載の耐破断性の合成糸。
【請求項12】
前記第2の方向と反対の第3の方向に、前記コアと、非金属で高性能でない前記第1並びに第2の繊維カバーストランドとの組み合わせのまわりに巻き付けられている、非金属で高性能でない第3の繊維カバーストランドをさらに具備する、請求項4に記載の耐破断性の合成糸。
【請求項13】
前記糸またはこれの任意の部分は、静電防止処理と、抗菌処理と、放射線吸収、染色およびこれらの組合せをもたらすための処理とからなる群から選択された、少なくとも1つの処理が施されている、請求項1に記載の耐破断性の合成糸。
【請求項14】
耐破断性の合成糸から主として形成された耐破断かつ耐磨耗性の織物であって、
a.少なくとも1つの繊維ガラスストランドと、耐破断性をもたらすのに十分な直径の少なくとも1つのワイヤストランドとを備え、前記少なくとも1つの繊維ガラスストランドおよび前記少なくとも1つのワイヤストランドは、互いに平行であるか、互いにより合わせられているコアであり、前記糸のコアだけは金属を含有する、コアと、
b.第1の方向に、前記コアのまわりに巻き付けられている、非金属で高性能でない少なくとも1つの繊維カバーストランドと、
を具備する耐破断かつ耐摩耗性の織物。
【請求項15】
前記少なくとも1つのワイヤストランドは、約0.0013インチ(0.0005118cm)と0.0036インチ(0.0014173cm)との間の直径を有する、請求項14に記載の耐破断かつ耐摩耗性の織物。
【請求項16】
前記少なくとも1つの繊維ガラスストランドは、約50ないし約1200のデニールを有する、請求項14に記載の耐破断かつ耐摩耗性の織物。
【請求項17】
非金属で高性能でない前記少なくとも1つの繊維カバーストランドの方向と反対の第2の方向に、非金属で高性能でないこの少なくとも1つの繊維カバーストランドまわりに巻き付けられている、非金属で高性能でない第2の繊維カバーストランドをさらに具備する、請求項14に記載の耐破断かつ耐摩耗性の織物。
【請求項18】
非金属で高性能でない前記第1の繊維カバーストランドは、ポリエステル、ポリエステル/綿の混紡、ナイロン、アクリル、ウールおよび綿からなる群から選択された材料でできている、請求項14に記載の耐破断かつ耐摩耗性の織物。
【請求項19】
非金属で高性能でない前記第2の繊維カバーストランドは、ポリエステル、ポリエステル/綿の混紡、ナイロン、アクリル、ウールおよび綿からなる群から選択された材料でできている、請求項17に記載の耐破断かつ耐摩耗性の織物。
【請求項20】
前記コアは、前記少なくとも1つの繊維ガラスストランドと前記少なくとも1つのワイヤストランドとのうちの一方または両方と平行であるか、より合わせられている第2の繊維ガラスストランドをさらに具備する、請求項14に記載の耐破断かつ耐摩耗性の織物。
【請求項21】
前記コアは、前記少なくとも1つの繊維ガラスストランドと前記少なくとも1つのワイヤストランドとのうちの一方または両方と平行であるか、より合わせられている第2のワイヤストランドをさらに具備する、請求項14に記載の耐破断かつ耐摩耗性の織物。
【請求項22】
非金属で高性能でない前記少なくとも1つの繊維カバーストランドは、1インチ(2.54cm)につき約6回転ないし約13回転の割合で前記コアのまわりに巻き付けられている、請求項14に記載の耐破断かつ耐摩耗性の織物。
【請求項23】
非金属で高性能でない前記少なくとも1つの繊維カバーストランドは、約50ないし約1200のデニールを有する、請求項14に記載の耐破断かつ耐摩耗性の織物。
【請求項24】
前記少なくとも1つのワイヤストランドには、非金属で高性能でない繊維ストランドのシースが巻き付けられている、請求項14に記載の耐破断かつ耐摩耗性の織物。
【請求項25】
前記第2の方向と反対の第3の方向に、前記コアと、非金属で高性能でない前記第1並びに第2の繊維カバーストランドとの組み合わせのまわりに巻き付けられている、非金属で高性能でない第3の繊維カバーストランドをさらに具備する、請求項17に記載の耐破断かつ耐摩耗性の織物。
【請求項26】
前記織物は、エプロン、手袋、アームシールド、ジャケットおよびフェンシングのユニフォームからなる群から選択された部材の形態である、請求項14に記載の耐破断かつ耐摩耗性の織物。
【請求項27】
前記織物は、手袋の形態である、請求項26に記載の耐破断かつ耐摩耗性の織物。
【請求項28】
前記糸またはこれの任意の部分は、静電防止処理と、抗菌処理と、放射線吸収、染色およびこれらの組合せをもたらすための処理とからなる群から選択された、少なくとも1つの処理が施されている、請求項14に記載の耐破断かつ耐摩耗性の織物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2007−514060(P2007−514060A)
【公表日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−538014(P2006−538014)
【出願日】平成16年10月26日(2004.10.26)
【国際出願番号】PCT/US2004/032767
【国際公開番号】WO2005/045109
【国際公開日】平成17年5月19日(2005.5.19)
【出願人】(506148361)スプリーム・エラスティック・コーポレーション (4)
【Fターム(参考)】