説明

合成糸を紡糸しかつ巻上げるための装置

本発明は、合成糸を紡糸しかつ巻上げるための装置に関する。該装置は糸を形成するためのフィラメントを溶融紡糸するための紡糸装置(1)と、フィラメントを冷却するための冷却装置と、冷却装置に冷却空気を供給するための空調装置と、糸をボビンに巻上げる巻取装置とを有している。まだ熱い糸が巻上げられることを回避するためには、巻取装置の巻取コンポーネントは本発明によれば空調室内部に配置されている。この場合、空調室は空調装置と接続されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は請求項1の上位概念として記載した、合成糸を紡糸しかつ巻上げるための装置に関する。
【0002】
合成糸を溶融紡糸する場合には有利には顆粒状のプラスチックが溶融されかつ紡糸装置によって多数のストランド状のフィラメントとして押出される。この場合には300℃の温度が紡糸装置において発生する。紡糸されたばかりのフィラメントを冷却するため並びに過度の加熱を回避するためには当該装置は冷却及び空調装置を有している。例えばDE4223198A1号明細書によれば、空調装置が一方ではフィラメントを冷却するために冷却装置のための冷却空気を準備し、他方では巻取装置が設置される設置室を空調することが公知である。通常は複数の階層に亘って延在する装置の周辺を空調するためにはきわめて高出力の空調装置が設置室空調化に使用されなければならない。したがって公知の装置は高い所要エネルギを必要とする。さらに設置室は限られてしか冷却できない。何故ならば周辺は常に作業員に適合させられている必要があるからである。特に糸が>4000mの巻上げ速度、有利には>6000mの巻上げ速度で巻上げられる高速紡糸法では、巻上げに際して糸が十分に冷却されないという付加的な問題がある。しかし、高温で巻かれた糸は糸があとで冷却することで発生する収縮現象に基づき形状安定性が低い。
【0003】
DE19837491A1号明細書によれば、合成糸を高速紡糸しかつ巻上げる装置であって、空調装置の冷却流が紡糸装置から巻取装置まで糸道に沿って発生させられる装置が公知である。これにより、糸の冷却は巻上げまでに改善される。しかし紡糸ライン全体に沿って発生させられた冷却空気流は、紡糸装置と巻取装置との間に中間接続された糸の熱処理装置と糸案内装置とに直接的に不都合に作用する。別の問題は、紡糸装置から紡糸ラインに沿って案内された冷却流がすでに紡糸領域において放射熱によって強く加熱され、巻取装置の領域ではもはや冷却作用が達成されないことにある。
【0004】
従って本発明の課題は冒頭に述べた形式の合成糸を紡糸かつ巻上げる装置を改良し、できるだけわずかな消費エネルギで糸の冷却と糸の巻上げとが所定の空調された環境で行なわれるようにすることである。
【0005】
本発明の別の目的は、糸を巻上げるための空調された環境をプロセスに関連して簡単な形式で変化させることができる装置を、紡糸と巻上げとのために提供することである。
【0006】
解決は請求項1の特徴を有する装置によって与えられた。
【0007】
本発明の有利な実施例は従属請求項の特徴とその組み合わせによって規定されている。
【0008】
本発明の長所は、糸製造に必要な空調が糸に近い環境だけで行なわれることである。このためには糸をボビンに巻上げる巻取装置の巻取コンポーネントが巻取装置に構成された空調室の内部に配置されている。前記空調室は空調装置と接続されているので、空調室内には糸を巻上げるのに必要な環境条件があらかじめ存在することになる。本発明の特別な利点は、空調されていない室への装置の設置が可能であることである。当該装置に配属された空調装置は公知の空調装置に比べて著しく小さな出力能しか有しておらず、著しいエネルギの節減をもたらす。巻取装置の空調室への空調装置の直接的な接続は巻上げに際して糸の強い冷却を可能にするので、本発明の装置は特に高速で行なわれる紡糸と巻上げに適している。
【0009】
一方では空調装置からの巻取装置のすぐ近い環境に与えられる影響を阻止し、他方では巻取装置におけるボビン交換を可能にするためには本発明の1実施例によれば、巻取装置の空調室が少なくとも1つの閉鎖可能なボビン開口を有し、このボビン開口を通して巻き終ったボビンの取出しが実施可能になっている。空調室と周辺環境とにおける雰囲気の直接的な接続は、完成した巻き上がったボビンを取出す短い交換期だけにしか行なわれない。
【0010】
糸によって連行された環境空気の侵入は有利には、巻取装置の空調室が少なくとも1つの幅の狭い糸開口を有し、これを通して糸が個々に又は一緒に巻取コンポーネントに供給可能であることで回避される。
【0011】
空調装置に接続するために空調室が供給開口と排出開口とを冷却空気を案内するために有している本発明の有利な構成によっては、冷却空気が空調室内で連続的に更新されかつ過熱した冷却空気が排出されることが保証される。又、糸が巻取られない時期又は冷却空気流が例えば糸交換に際して糸案内を妨げる時期においては、空調室への供給を閉鎖することができる。さらに供給開口の遮断は供給開口の自由な開口横断面を空気量の制御又は調整のために変化させるために利用することもできる。
【0012】
空調室の供給開口が糸開口により形成されており、該糸開口に冷却装置の冷却室の下降シャフトが接続されている本発明の実施例は、ドラフトされていない部分的にしか方向づけられていない糸が付加的な熱処理なしで製造されるプロセスにとって特に有利である。
【0013】
巻取装置の空調室内部で冷却空気を強制案内するためには、排出開口は有利には空調装置の吸引器に接続され、加熱された冷却空気が連続的に空調室から導出され得るようになっている。この場合にも部分閉鎖によって導出される冷却空気量を変化させるか又は冷却空気の取出しを完全に阻止するために排出開口を有利には閉鎖可能に構成することもできる。
【0014】
巻取装置内部における空調装置の高い統合性を維持するためには、空調室は一部、巻取装置の機械フレームのフレーム壁から形成されている。この場合には空調室は有利には機械フレームと固定的に結合され、巻取装置は簡単な形式で交換可能でかつ運搬可能である完全ユニットを成す。特に完全な設備内にはこのような巻取装置が複数並べて配置されることを考慮すれば前記完全ユニットによっては特に狭い間隔の配置が達成される。
【0015】
巻取装置の空調室は複数の平行に走る糸を往復移動させるための綾振装置と、ボビンに糸を当付ける押付けローラと、ボビンを受容するためのボビンスピンドルから形成される巻取コンポーネントとを有している。
【0016】
駆動装置とパワエレクトロニクスとを同時に冷却するためには巻取装置の空調装置は、駆動エレクトロニクス、制御エレクトロニクス及び駆動装置が空調和室により取囲まれるように構成されることもできる。
【0017】
例えば完全にドラフトされた糸を製造するためには本発明による装置は少なくとも1つのドラフト機構を有する処理装置を有している。この構成は、処理装置が処理室内に配置され、処理室が空調装置に接続されている状態で使用されると有利である。
【0018】
この場合、空気の供給は直接、処理室の別個の供給開口又は排出開口を通して又は糸開口を通して行なうことができる。有利には処理室は下降シャフトによって冷却装置の冷却室及び/又は巻取装置の空調室と接続されている。
【0019】
以下、本発明の装置の若干の実施例を添付図面に基づき詳細に説明する。
【0020】
図1は本発明の装置の1実施例の概略的な側面図。
【0021】
図2は本発明の装置の別の実施例の概略的な側面図。
【0022】
図3は図2の実施例の一部の概略的な斜視図。
【0023】
図4は本発明の別の実施例の概略的な断面図。
【0024】
図1には本発明の装置の第1実施例が概略的に側面図で示されている。本発明の装置は紡糸装置1、冷却装置2、巻取装置4並びに空調装置3から構成されている。
【0025】
紡糸装置1は加熱された紡糸ヘッド6を有し、この紡糸ヘッド6は溶融物供給装置を介して図示されていない溶融物源、例えば押出機と接続されている。この場合には複数の紡糸装置が1つの共通の溶融物源に対応配置されていることができる。紡糸ヘッド6は下側に紡糸ノズル7を有している。この場合には例えば複数の紡糸ノズル7が一列に並べて1つの紡糸ヘッドに保持されていることができる。
【0026】
紡糸ノズル7は供給されたポリマ溶融物からそれぞれ一束の細いストランド状のフィラメントを押出すために多数のノズル孔を有している。フィラメント束は符号10で示されている。紡糸装置1の下側には冷却装置2が設けられ、該冷却装置2は紡糸ノズル7のすぐ下側に配置された冷却室8を有している。冷却室8は透過性のブロー壁を介してブロー室9と接続されている。ブロー室9は空気通路11.1を介して空調装置3に接続されている。
【0027】
空調装置3は空調器46と送風機47とを有している。空調器46によって冷却空気が形成され、該冷却空気は送風機47と空気通路11.1とを介してブロー室9へ送られる。
【0028】
冷却装置2の下側にはプレパレーション装置12と糸ガイド13とが配置されている。プレパレーション装置12と糸ガイド13はフィラメント束10を一本の糸に集成する。紡糸装置1からフィラメント束10を引出すためと、糸5を巻取装置4へ導くためには2つの順次駆動されたガレット15.1,15.2が配置されている。これらのガレット15.1,15.2には糸5が部分的に巻掛けられる。
【0029】
巻取装置4は紡糸された糸5を巻上げるために複数の巻取コンポーネントを有している。このためには巻取コンポーネントとして綾振装置18、押付けローラ19及び巻取スピンドル21が設けられている。巻取コンポーネント18,19,21は機械フレーム22に張出すように保持されている。巻取スピンドル21はスピンドル駆動装置23により駆動され、綾振装置18は綾振駆動装置24により駆動される。巻取コンポーネントにはヘッド糸ガイド16が前置されている。機械フレーム22には空調室17が接続され、空調室17の壁48は巻取コンポーネント18,19,21を取囲んでいる。空調室17の壁48は狭い糸開口25を有し、この糸開口25を通して供給される糸5が案内される。空調装置17は糸5の走入側で供給開口と空気通路11.2とにより空調装置3もしくは空調器46に接続されている。このためには、空気通路11.2は空調器46と接続されている。空調室17の反対側には排出開口29が設けられている。この排出開口29によって空調室17は空気通路11.3と吸引器30とを介して空調装置3の空調器46に接続されている。これによって有利な形式で糸走行方向に流れ、ひいては糸案内を助成する冷却空気の強制案内が達成される。
【0030】
巻取スピンドル21の自由端部にて空調室17はボビン開口26を有し、該ボビン開口26はドア27によって閉鎖されている。ボビン開口26は、巻き終ったボビン20を巻取スピンドル21から引抜き可能でかつボビン開口26を通して取出可能に設計されている。
【0031】
図1に示された本発明の装置の実施例では例として1つの糸道しか示されていない。しかし、この装置部分は複数の糸が平行に又はグループを成して並べて紡糸され、引出されかつ巻上げられるように拡大することができる。一本の糸を高速紡糸するためには紡糸装置1に溶融したポリマ溶融物が供給されかつ紡糸ノズル7によって紡糸ヘッド6の下側でフィラメント束10が形成されるように押出される。フィラメント束10の個々のストランド状のフィラメントは押出されるとすぐ冷却装置2の冷却室8へ案内される。空調装置3から供給された冷却空気、すなわちブロー室9を通って一様に冷却室8へ吹込まれる冷却空気によってフィラメント束10の冷却が行なわれる。フィラメント束10は冷却室8から出たあとでプレパレーション装置12と糸ガイド13を通って糸5に纏められる。糸5はガレット15.1と15.2を介して巻取装置4へ導かれる。ここで糸5は糸開口25を通って巻取装置4の空調室17へ走入し、綾振装置18、押付けローラ19及び巻取スピンドル21を用いてボビン20として巻上げられる。糸5の補完冷却のために空調室17には供給開口28と空気通路11.2を介して冷却空気が空調器46によって供給される。空調器46はこのためにはファンの形をした送風手段を有することができる。冷却空気は空調室17の糸走入側に流入する。空調室17内で加熱された冷却空気は反対側にて排出開口29と空気通路11.3とを通して吸引器30により引出され、再生のために空調器46に供給される。この結果、一様に空調された環境が空調室17に発生し、糸5は同じコンディションのもとで十分に冷却されてボビン20として巻上げられる。
【0032】
ボビン20が巻終ると巻取りが中断され、巻取スピンドル21におけるボビン20は空の巻管と交換される必要がある。このためにはボビン開口26のドア27が開放され、ボビン交換が実施される。次いで新たに巻取過程が開始され、ボビン開口26のドア27が閉じられる。
【0033】
空調室17は壁48の部分領域に有利にはのぞき窓を有し、巻取過程を連続的に観察できるようになっている。
【0034】
さらに空調室17の壁48の部分は機械フレーム22もしくは機械フレーム22の壁によって直接形成されている。
【0035】
図2と3は本発明の装置の別の実施例が示されている。この実施例は図2では概略的に断面図で示され図3では概略的に部分側面図で示されている。特別な断りがない限り、以下の記述は図2と3との両方に当嵌まるものである。
【0036】
図2と図3とに示した実施例は先きの実施例とほぼ同じであるので、先きの実施例の記述を参照されたい。ここでは先きの実施例に対する相違点だけを説明する。同じ働きを有する構成部分は同じ符号で示されている。
【0037】
図2と図3の実施例は主として紡糸装置1と巻取装置4とから構成されている。この場合、紡糸装置1と巻取装置4との間には引出しガレットが配置されている。紡糸装置1と紡糸装置の下側に配置された冷却装置2とは図1に示された実施例と同様に構成されている。この場合、紡糸ヘッド6は相前後して配置された複数の紡糸ノズル7を全部で4本の糸を紡糸するために有している。
【0038】
冷却装置2の下側では冷却室8に直接的に下降シャフト32が接続している。下降シャフト32は反対側の端部で巻取装置4の空調室17と接続されている。巻取装置4は長手方向軸に分配されて複数の巻取部位を有している。各巻取部位にて1本の糸5がボビン20に巻上げられる。このためにはボビン20は巻取スピンドル21.1に保持される。巻取スピンドル21.1は糸5を巻上げるために一様な巻取速度が与えられるように駆動される。巻取スピンドル21.1は片持式に長手方向軸に対し平行にボビンレボルバ33に回転可能に支承されている。ボビンレボルバ33には間隔をおいて第2の巻取スピンドル21.2が配置されている。ボビンレボルバ33は機械フレーム22に回転可能に支承されているので巻取スピンドル21.1と21.2は交互に巻上げ領域と交換領域とにもたらされることができる。このためにはボビンレボルバ33には駆動装置が配設されている。巻上げ領域では巻取スピンドル21.1又は21.2は押付けローラ19と協働する。この押付けローラ19は糸を巻取られるボビン20の周面に接触させる。押付けローラ19は有利には、例えば機械フレーム22と旋回可能に結合された可動な保持体に回転可能に支承されている。
【0039】
糸5を各巻取部位にてボビン20に巻上げるためには綾振装置18が設けられている。この綾振装置18によって糸は各巻取部位にて綾振工程内で往復運動させられる。
【0040】
綾振装置18の上側ではフレーム部分22.1に複数のヘッド糸ガイド16と複数の自由回転可能な分配ローラ35とが前置されている。巻取部位の側方においては、フレーム部分22.2に引出しガレット31が配置されている。引出しガレット31の外周に案内された糸5を分配するためには引出しガレット31の下流に糸案内条片36が配置されており、この糸案内条片36によって糸5は平行な走りで引出しガレット31から引出される。次いで糸5は分配ローラ35を介して巻取部位へ導かれる。
【0041】
この場合、巻取装置4はその長手方向軸で紡糸装置1と引出しガレット8に対し横方向に配置されている。このためには引出しガレット31と紡糸装置1とが設けられている端面側には巻取装置4の操作側が構成されている。機械フレーム22の自由端部においては片持式に突出する巻取スピンドル21.1と21.2の上側に操作パネル34が配置されている。操作パネル34を介して操作員はすべての制御可能なアクチェータ並びに巻取装置4並びに引出しガレット31の作用経過を操作することができる。同時に下降シャフト32の下側に配置された、巻取装置4の端面の領域にある装置は一人で操作することができる。機械フレーム22並びに機械フレーム部分22.1と22.2とにおいては閉じられた空調室17を形成するための壁48が固定されている。この場合、空調室17は、ほぼすべての巻取コンポーネント並びにすべての駆動装置、駆動エレクトロニクス及び制御エレクトロニクスが取囲まれるように設計されている。電子的な構成部分と駆動装置はこのためには機械フレーム22に統合されている。このような巻取装置はEP0845432A1号明細書によって公知であるので、これについてはこの文献を参照されたい。
【0042】
糸5を通すためには空調室17の壁48には引出しガレット31の上側にて前方領域に糸開口25が形成されている。糸開口25にて直接的に下降シャフト32が空調室17に接続されている。
【0043】
巻取装置4の操作側では操作パネル34が自由に接近可能に空調室17の外側に保持されている。巻取装置4を操作するために空調室17は巻取スピンドル21.1と21.2の領域にボビン開口26を有している。このボビン開口26はドア27で閉鎖可能に構成されている。ボビン開口26の上側では糸入口の領域に別の操作開口36が設けられている。この操作開口36は別のドア37で運転状態では閉鎖されている(図3)。巻取装置4の下側では空調室17の壁48に排出開口29が底グリッドによって形成されている。排出開口29は集合管38と空気通路11.2とを介して吸引器30と接続されている。この吸引器30は空調器46と協働する。空調装置3は空気通路11.2を介して冷却装置2と接続されている。
【0044】
図2と図3とに示された装置は特に、予備配向された糸からいわゆるPOY糸を製造するのに適している。紡糸装置1と巻取装置4とが相互にL字型に配置されていることによって有利には、処理後に糸5を巻取装置4へ紡糸平面に対し横に向けられた分配平面にて分配することが行なわれる。これによってきわめてわずかな構成高さを実現することができ、装置全体は2階に亘って延び、一番下の階には空調装置17を有する巻取装置4が設置され、上側の階は溶融物源、例えば押出機を備えた紡糸装置1を有している。この場合、冷却装置2を介して冷却室8へ導入される冷却空気流は下降シャフト32を介して空調室17まで導かれる。この場合、冷却流は糸5と共に空調室17の糸開口25を通って巻取装置4の巻取部位へ達する。
【0045】
空調室17における巻取室4の下側に構成された排出開口29によって使用済みの冷却空気は吸出され、吸引器30を介して空調器46に戻される。さらに排出開口29が底グリッドとして構成されることは、糸を巻上げる際に発生する遊離した構成部分、例えばプレパレート残留物又は摩擦屑が直接一緒に吸い出されるという利点をもたらす。図2と図3とに示された配置では、糸処理は紡糸から巻取までそれぞれ好適化された環境雰囲気で行なわれる。空調室17内の強化された冷却のためには空調室17への付加的な供給開口28を構成する可能性も考えられる。
【0046】
図4には本発明の装置の別の実施例が概略的に断面図で示されている。この実施例は図1の実施例とほぼ同じであるので先きの記述を参照されたい。ここでは図1の実施例に対する相違点だけ記述する。この場合、同じ作用を有する構成部分には同じ符号が付けられている。紡糸装置1、冷却装置2及び巻取装置4は図1の実施例とほぼ同じである。冷却装置2と巻取装置4との間には処理装置14が設けられている。この場合、処理装置14はタングル装置39とドラフト装置40とによって形成されている。ドラフト装置40は相上下して配置された2つのガレットユニット41.1と41.2とを有している。これらのガレットユニット41.1と41.2はそれぞれ1つの駆動されたガレットと1つの自由回転可能なオーバランローラとから形成されている。タングル装置39とドラフト装置40とは1つの処理室42内に配置されている。処理室42は上側にて壁48に糸入口開口43と下側にて出口開口44とを有している。糸入口開口43には下降シャフト32が接続されており、下降シャフト32は処理室42を冷却装置2を有する冷却室8と接続している。処理室42の出口側には排出開口29が構成され、排出開口29は空気通路11.2と吸引器30を介して空調器46と連結されている。
【0047】
処理室42の下側には巻取装置4が配置されている。この巻取装置4はほぼ図1の実施例のものと同じである。この場合、巻取装置4は2つの巻取部位のための巻取コンポーネント並びにボビンレボルバ33に保持された2つの巻取スピンドル22.1と22.2とを有している。巻取装置4に構成された空調装置17はすべての主要巻取コンポーネントを取囲んでいる。この場合、各巻取部位には空調室17への糸開口25.1と25.2とが構成されている。空調装置17は上側の領域に供給開口28を有しかつ下側の領域に排出開口29を有している。供給開口28には絞り45が配設され、この絞り45によって供給開口28の横断面は完全に又は部分的に閉鎖されることができる。排出開口29にも相当の絞りが配設されていることができる。
【0048】
図4に示された実施例においては2本の糸が互いに平行に並べて紡糸装置1によって紡糸され、冷却装置2によって冷却されかつ処理装置14に供給される。この場合には糸はプレパレーション装置12によって処置されかつ糸ガイド13によって処理間隔に纏められる。下降シャフト32を介し糸5は糸入口開口43を介して処理装置14が配置されている処理室42内に達する。糸5は互いに平行にまずタングル装置39によってうず巻かされ、次いでドラフト装置40によってドラフトされる。処理室12の空調化のためには下降シャフト32と糸入口開口43とを介して冷却空気流が導入される。糸入口開口43はこれに相応して構成されている。消費された冷却空気は排出開口29を介して処理室から吸い出され、吸引器30を介して空調器46に戻される。処理室42は有利には操作開口を有し、該操作開口はドアで閉鎖されている。この状態は図4には示されていない。
【0049】
糸は巻取装置4によって処理室42から引出される。その際、糸5は糸出口開口44を通って処理室42から出て、糸開口25.1と25.2とを介して巻取装置4の巻取部位に達する。巻取装置4の空調室17内に適宜空調された環境を造り出すためには、空調装置3によって準備された冷却空気が供給開口28を介して導入される。この場合、供給開口28の開口横断面は絞り45によって調節可能であるので、空調室17内に任意の環境条件を得ることができる。この結果、糸処理の各ステップで糸に好適に適合させられた環境状況を付与することができる。しかし、処理室42を直接下降シャフトによって巻取装置の空調室17と接続することもできる。
【0050】
本発明の図示の実施例は可能なヴァリエーションの一部であるに過ぎない。原則的には本発明は、室内雰囲気とは無関係である空調された環境を糸処理と糸巻取のために得ることのできるすべての装置を包含するものである。さらに空調に必要な空調装置は相応に小さい出力で構成されるようにしたい。又、空調装置の図示の構造も同様に一例であるに過ぎない。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の装置の1実施例の概略的な側面図。
【図2】本発明の装置の別の実施例の概略的な側面図。
【図3】図2の実施例の一部の概略的な斜視図。
【図4】本発明の別の実施例の概略的な断面図。
【符号の説明】
【0052】
1 紡糸装置、 2 冷却装置、 3 空調装置、 4 巻取装置、 5 糸、 6 紡糸ヘッド、 7 紡糸ノズル、 8 冷却室、 9 ブロー室、 10 フィラメント束、 11 空気通路、 12 プレパレーション装置、 13 糸ガイド、 14 処理装置、 15.1,15.2 ガレット、 16 ヘッド糸ガイド、 17 空調室、 18 綾振装置、 19 押付けローラ、 20 ボビン、 21 巻取スピンドル、 22 機械フレーム、 22.1 フレーム、 23 スピンドル駆動装置、 24 綾振駆動装置、 25 糸開口、 26 ボビン開口、 27 ドア、 28 供給開口、 29 排出開口、 30 吸引器、 31 引出しガレット、 32 下降シャフト、 33 ボビンレボルバ、 34 操作パネル、 35 分配ローラ、 36 操作開口、 37 ドア、 38 集合管、 39 タングル装置、 40 ドラフト装置、 41.1,41.2 ガレットユニット、 42 処理室、 43 糸入口開口、 44 糸出口開口、 45 絞り、 46 空調器、 47 送風機、 48 壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成糸(5)を紡糸しかつ巻上げるための装置であって、糸(5)を形成するためのフィラメント(10)を溶融紡糸するための紡糸装置(1)と、フィラメント(10)を冷却するための冷却装置(2)と、冷却装置に冷却空気を供給するための空調装置と、糸(5)をボビン(20)に巻上げる巻取装置(4)とを有している形式のものにおいて、糸(5)をボビン(20)に巻上げるための巻取装置(4)の巻取コンポーネント(18,19,21)が巻取装置(4)にて構成された空調室(17)の内部に配置されており、該空調室(17)が空調装置(3)と接続されていることを特徴とする、合成糸(5)を紡糸しかつ巻上げるための装置。
【請求項2】
巻取装置(4)の空調室(17)が少なくとも1つの閉鎖可能なボビン開口(26)を有し、このボビン開口(26)を通して巻上げ済みのボビン(20)の取出しが実施可能である、請求項1記載の装置。
【請求項3】
巻取装置(4)の空調室(17)が少なくとも1つの幅の狭い糸開口(25)を有し、この糸開口(25)を通して糸(5)が個別に又は一緒に巻取りコンポーネント(18,19,21)に供給可能である、請求項1又は2記載の装置。
【請求項4】
空調室(17)が空調装置(3)に接続されるために冷却空気を案内する供給開口(28)と排出開口(29)とを有し、空調室(17)の供給開口(28)が閉鎖可能に構成されている、請求項1から3までのいずれか1項記載の装置。
【請求項5】
空調室(17)の供給開口(28)が糸開口(25)によって形成されており、冷却装置(2)の冷却室(8)から流出する冷却空気が下降シャフト(32)を介し空調室(17)に導かれる、請求項4記載の装置。
【請求項6】
空調室(17)の排出開口(29)が空調装置(3)の吸引器(30)に接続され、この吸引器(30)によって加熱した冷却空気が導出可能である、請求項4又は5記載の装置。
【請求項7】
空調室(17)の排出開口(29)が閉鎖可能に構成されている、請求項6記載の装置。
【請求項8】
空調室(17)の壁(48)が部分的に巻取装置の機械フレーム(22)のフレーム壁から形成されている、請求項1から8までのいずれか1項記載の装置。
【請求項9】
巻取コンポーネントが少なくとも綾振装置(18)と押付ローラ(19)と巻取スピンドル(21)とから構成されている、請求項1から8までのいずれか1項記載の装置。
【請求項10】
巻取装置(4)の駆動電子装置、制御電子装置及び駆動装置が空調室(17)で取囲まれている、請求項1から9までのいずれか1項記載の装置。
【請求項11】
巻取装置(4)の前に配置された引出しガレット(31)が空調室(17)の内部に配置されている、請求項1から10までのいずれか1項記載の装置。
【請求項12】
冷却装置(2)と巻取装置(4)との間で少なくとも1つの処理装置(14)が処理室(42)内に配置されており、該処理室(42)が空調装置(3)に接続されている、請求項1から10までのいずれか1項記載の装置。
【請求項13】
処理室(42)が下降シャフト(32)によって冷却装置(3)の冷却室(8)及び/又は巻取装置(4)の空調室(17)と接続されている、請求項12記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2006−522876(P2006−522876A)
【公表日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−504947(P2006−504947)
【出願日】平成16年4月1日(2004.4.1)
【国際出願番号】PCT/EP2004/003453
【国際公開番号】WO2004/090207
【国際公開日】平成16年10月21日(2004.10.21)
【出願人】(503420235)ザウラー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト (51)
【氏名又は名称原語表記】Saurer GmbH & Co. KG
【住所又は居所原語表記】Landgrafen Str. 45, D−41069 Moenchengladbach, Germany
【Fターム(参考)】