説明

合成繊維不織布の製造方法並びに布状及び/又は綿状の繊維の分別装置

【課題】各種素材が混合した布状繊維廃棄物から付加価値の高い合成繊維不織布を効率良く製造する。
【解決手段】布状繊維廃棄物を近赤外分光光度計からなるプラスチック判別機を用いて布状繊維廃棄物を構成する素材の種類を識別し、該布状繊維廃棄物中に含まれるセルロース含有繊維を10重量%以上含む繊維を特定して選別、除去し、残りの、セルロース含有繊維を10重量%以上含む繊維が選別、除去された繊維廃棄物を反毛化後、不織布に加工し、産業用資材である合成繊維不織布としてリサイクルする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、布状繊維製品及び/又は綿状繊維製品を原料として合成繊維不織布を製造する方法およびそれに用いる繊維製品の分別装置に関するものであり、特に、衣服やカーテン等からなる布状繊維廃棄物から付加価値の高い合成繊維不織布を効率良く製造するための合成繊維不織布の製造方法、並びにその際に用いる布状及び/又は綿状の繊維を素材別に分別するための分別装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、衣服やカーテン、綿等からなる繊維廃棄物は、複数以上の素材により構成されているものが有り、かつ、多くの物は、各種繊維素材の混合物として排出されている。これら各種繊維素材が混合した繊維廃棄物をリサイクルしようとした場合、衣服や服地についてはその素材表示ラベルを見て分別する、又は、熟練者がその繊維の風合いや手触り感、燃焼時の臭い等から用途に合致しない素材の物を分別してリサイクルが行われている。ところが、繊維廃棄物の種類によっては、各種様々な素材が混合しているが故に十分な分別ができず、例えば、開繊、反毛化して不織布とした場合にその用途が限られる、或いは、不織布としてもその価値が低くて経済的に合わない等の理由でリサイクルされず廃棄される場合があった。
【0003】
繊維廃棄物の中でも、布地からなるカーテンは、ポリエステル系繊維、アクリル繊維、アクリル系繊維を主体とする合成繊維からなるものや、これら合成繊維にレーヨン、木綿等のセルロース含有繊維が混紡されたものや難燃処理されたもの等、様々な種類のものが知られている。これらカーテン廃棄物の反毛化においては、予め、適当な大きさに切断、裁断する作業が必要で手間を要すること、また、ポリエステル系繊維等のフィラメントは、特殊な開繊機や方法を選択して開繊しなければ良好な反毛が得られないため、不織布に加工する上で効率が上がらないという問題があった。
【0004】
従って、各種素材が混合したカーテン廃棄物については、単一素材や一定割合の素材で構成された物を分別して集積することができれば、不織布に加工する条件もコントロールし易く、その製品価値も高めることが可能である。
【0005】
プラスチックの種類を識別する装置については、近赤外分光光度計からなるプラスチック識別機が知られている(例えば特許文献1参照。)。このプラスチックの種類を識別する近赤外分光光度計からなる装置については、例えば、ABS樹脂、アクリロニトリルスチレン、ポリアミド、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリカ ABS、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、アクリル樹脂(ポリメチルメタクリレート樹脂)、ポリアセタール、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリウレタン、塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデンからなる15種類のプラスチック種を識別するプラスチック種類識別計が上市され販売されている。
【0006】
プラスチックの種類を識別する装置の原理は、特許文献1に示されるように、近赤外光をプラスチック成形体に照射し、その反射光又は透過光を所定の分光手段により検出した基準吸収スペクトルをコンピューター・ディスプレイ上に表示させる近赤外分光光度計であり、このスペクトラムと、予め、学習している標準プラスチックのスペクトラムデーターと照合してプラスチックの種類を識別する装置である。このようなプラスチックの種類を識別する装置は、家電リサイクル、容器包装リサイクル、自動車リサイクル等のリサイクル分野において、プラスチックの種類を識別するために用いられ、活用されている。
【0007】
しかし、各種繊維素材が混合した繊維を分別するために、プラスチックの種類を識別する装置を用いる方法については、これまで検討された事例は認められない。
【特許文献1】特開2006−84350号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、各種素材が混合した布状及び/又は綿状の繊維、例えばカーテン廃棄物等の繊維廃棄物から、土木資材や難燃資材として好適な合成繊維不織布を効率良く製造するための合成繊維不織布の製造方法並びにそれに用いる繊維素材を識別して分別回収するための分別装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記課題を解決するため、鋭意検討を重ねた結果、各種素材が混合した布状及び/又は綿状の繊維、例えばカーテン廃棄物等の繊維廃棄物から、耐久性や難燃性が劣る木綿又はレーヨン等のセルロース含有繊維を特定して分別して反毛化することで、付加価値の高い合成繊維不織布として、土木資材や難燃資材として好適な合成繊維不織布を効率良く製造することができる、との着想を得、本発明を完成させるにいたった。
【0010】
すなわち、本発明は、
(1)合成繊維不織布の製造方法であって、原料としての布状及び/又は綿状の繊維を、近赤外分光光度計により前記布状及び/又は綿状の繊維を構成する素材の種類を識別する素材識別工程と、前記素材識別工程において、セルロース含有繊維を10重量%以上含むと識別された布状繊維(以下、セルロース系布状繊維ともいう。)や綿状繊維を選別し、原料から除去するセルロース除外工程と、前記除外されたセルロース系布状繊維や綿状繊維以外の布状及び/又は綿状の繊維を反毛とする反毛工程と、前記反毛工程で得られた反毛を不織布に加工する不織布加工工程と、を有することを特徴とする合成繊維不織布の製造方法、
(2)前記布状及び/又は綿状の繊維が繊維廃棄物であり、製造される合成繊維不織布が再生合成繊維不織布である前記(1)記載の合成繊維不織布の製造方法、
(3)前記布状繊維がカーテンである前記(1)又は(2)に記載の合成繊維不織布の製造方法、
(4)前記セルロース含有繊維が木綿又はレーヨンを10重量%以上含む繊維である前記(1)〜(3)のいずれかに記載の合成繊維不織布の製造方法、
(5)前記素材選別工程において、前記素材識別工程において近赤外分光光度計により原料としての布状及び/又は綿状の繊維の中からアクリル系繊維を30重量%以上含むと識別された布状繊維(以下、アクリル系布状繊維ともいう。)及び/又は綿状繊維を選別し、該選別されたアクリル系布状及び/又は綿状の繊維を回収し、前記反毛工程において反毛とし、該反毛を前記不織布加工工程において不織布に加工して難燃性不織布とする前記(1)〜(4)の何れかに記載の合成繊維不織布の製造方法、
(6)布状及び/又は綿状の繊維の分別装置であって、布状及び/又は綿状の繊維の供給装置と、布状及び/又は綿状の繊維の供給状況を検知するための位置センサーと、供給された布状及び/又は綿状の繊維を間欠的に搬送する搬送装置と、前記搬送装置によって搬送される布状及び/又は綿状の繊維に近赤外光を照射して反射光を検出するための検出機と、検出機の位置での布状及び/又は綿状の繊維の搬送状態を検出するための位置センサーと、前記検出機での識別データーに基づいて布状及び/又は綿状の繊維を繊維素材毎に分別する仕分け機と、該仕分け機後部に設置された2乃至4個の仕分け品収容部と、を備えることを特徴とするからなる布状及び/又は綿状の繊維の分別装置、
(7)前記供給装置が、布状及び/又は綿状の繊維を搬送装置の上部から供給し、上方に傾斜した経路において、該布状及び/又は綿状の繊維を引っ掛けて引き上げる装置であることを特徴とする前記(6)記載の布状及び/又は綿状の繊維の分別装置、
(8)前記仕分け機が、前記布状及び/又は綿状の繊維の識別データーを基に、搬送経路を変更して仕分け品収容部に投入するものである前記(6)又(7)に記載の布状及び/又は綿状の繊維の分別装置、
(9)前記布状及び/又は綿状の繊維が、繊維廃棄物であり、布状繊維廃棄物及び/又は綿状繊維廃棄物の分別に用いられる前記(6)〜(8)のいずれかに記載の分別装置、
(10)セルロース含有繊維を10重量%以上含むセルロース系布状及び/又は綿状の繊維と、アクリル系繊維を30重量%以上含むアクリル系布状及び/又は綿状の繊維と、それ以外の合成繊維からなる布状及び/又は綿状の繊維と、識別不能の繊維からなる布状及び/又は綿状の繊維とに識別し、分別して回収することを特徴とする前記(6)〜(9)のいずれかに記載の布状及び/又は綿状の繊維の分別装置、
である。
【発明の効果】
【0011】
合成繊維不織布を製造するにあたって、布状及び/又は綿状の繊維を近赤外分光光度計により布状及び/又は綿状の繊維を構成する素材の種類を識別してセルロース含有繊維を10重量%以上含むセルロース系布状繊維や綿状繊維を選別、除去後、前記残りの布状繊維や綿状繊維の繊維素材を反毛とし、該反毛を不織布に加工してリサイクルすれば、セルロース含有繊維の含有量の低い不織布を得ることができ、例えば、廃棄物埋め立て処分場等の透水性シートとして布状繊維や綿状繊維をリサイクルすることができる。また、前記布状繊維及び/綿状繊維が繊維廃棄物であり、製造される合成繊維不織布が再生合成繊維不織布であれば、繊維廃棄物の再生利用が可能となる。
【0012】
また、前記布状繊維がカーテンであれば、カーテンの構成素材がポリエステル系繊維、アクリル繊維、アクリル系繊維を主体とする合成繊維が多いため、これら合成繊維に混紡されたレーヨン、木綿等のセルロースを10重量%以上含む繊維を特定して分別することで、レーヨン、木綿等のセルロース含有繊維の含有量が少ない合成繊維不織布を得ることができる。このようにして製造された不織布は、セルロース含有繊維を10重量%以上含む繊維が選別、除去された合成繊維で構成されているため、例えば、土木用資材として使用した場合に、土中のバクテリア等による分解が生じ難く、有効に利用できるため好ましい。
【0013】
また、前記セルロース含有繊維が、木綿又はレーヨンを10重量%以上含む繊維であれば、近赤外分光光度計により、容易に、セルロース含有繊維であることを特定することができる。
【0014】
また、前記近赤外分光光度計により選別して回収される布状繊維や綿状繊維が、アクリル系繊維を30重量%以上含むアクリル系布状繊維や綿状繊維であれば、識別して回収した繊維廃棄物は難燃性を有するため、アクリル系繊維を30重量%以上含む繊維を分別後、開繊、反毛化した反毛を用いて不織布を加工すれば、難燃性が付与された不織布を得易いため、より付加価値の高い不織布としてリサイクルすることも可能となる。
【0015】
また、前記合成繊維不織布を製造するにあたって、繊維廃棄物等の布状繊維や綿状繊維の供給装置と、布状繊維や綿状繊維の供給状況を検知するための位置センサーと、供給された布状繊維や綿状繊維を間欠して搬送する搬送装置と、前記搬送装置によって搬送される布状繊維や綿状繊維に近赤外光を照射して反射光を検出するための検出機と、検出機の位置での該布状繊維や綿状繊維の搬送状態を検出するための位置センサーと、該検出機での識別データーに基づいて布状繊維や綿状繊維を繊維素材毎に分別する仕分け機と、該仕分け機後部に設置された2乃至4個の仕分け品収容部からなる布状繊維廃棄物や綿状繊維廃棄物の分別装置を用いることにより、カーテン廃棄物等の布状繊維の原料の中から、セルロース含有繊維を10重量%以上含む繊維を効率的に、かつ自動で選別処理することもできる。
【0016】
前記供給装置は、布状繊維や綿状繊維を搬送装置の上部から供給するものであり、上方に傾斜した経路において、該布状繊維や綿状繊維を引っ掛けて引き上げることにより、布状繊維や綿状繊維を一枚(一塊)ずつ供給可能とするものであり、これにより、検出部において識別される複数種以上の布状繊維や綿状繊維が混在することなく、かつ、折り重なった状態で識別されるため、回収される布状繊維や綿状繊維の識別精度が向上し、その結果、精度良く分別処理することができる。
【0017】
また、前記仕分け装置が、前記布状繊維や綿状繊維の識別データーに基づき、搬送経路を変更して仕分け品収容部に投入することにより、素材別に分別された布状繊維や綿状繊維を、それぞれ効率よく回収することができる。
【0018】
更に、本分別装置によると、繊維素材が、セルロース含有繊維を10重量%以上含む繊維と、アクリル系繊維を30重量%以上含む繊維と、それ以外の合成繊維と、識別不能の繊維とに識別し、該識別データーを基に仕分け機を制御することで、布状繊維廃棄物や綿状繊維廃棄物を前記した2乃至4種の素材に分別して回収することができ、これにより付加価値の高い合成繊維不織布を製造するための原料を分別して回収することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明の合成繊維不織布の製造方法は、衣服やカーテン等の布状繊維や綿等からなる繊維の素材の種類を、近赤外分光光度計を用いて識別し、木綿又はレーヨン等からなるセルロース含有繊維を10重量%以上含む繊維を特定して原料中から分別、除去するとともに、該繊維を構成する素材毎に分別し、分別された繊維を反毛化後、合成繊維不織布とする合成繊維の製造方法である。なお、本発明における繊維は、紙、パルプ等の古紙からなる紙製品を含むものではなく、繊維製品の中でも、布状繊維及び綿状繊維、並びにそれらの廃棄物を対象とするものである。
【0020】
布状繊維や綿状繊維を構成する素材を識別する際には、近赤外分光光度計から成るプラスチック判別計を用いることが好ましい。近赤外分光光度計で使用する近赤外光の波長領域は、1300〜2600nmの範囲であり、プラスチックの種類を識別する場合においては、通常、1600〜2400nmが使用され、布状繊維や綿状繊維の素材識別においてもこの波長領域の近赤外光を使用することが好ましい。布状繊維や綿状繊維の素材を識別するための測定を行うにあたって、前記波長領域における測定回数、走査回数、測定点数を設定して行われるが、通常、1測定あたり約2秒の識別時間で測定されるものである。近赤外光を利用して素材の識別を行う場合、黒色や濃色の材料は、近赤外反射光が材料に吸収されて得られないため、識別は困難となるが、白色やその他のガラものは容易に識別できる。なお、近赤外分光光度計で布状繊維や綿状繊維の構成素材を識別する際には、該繊維廃棄物の形状は、綿状、布状、糸状の何れであっても良いが、構成素材を識別後、分別する点から布状繊維であることが好ましい。また、近赤外分光光度計により繊維の素材の選別を行う場合に、薄いポリエチレン製の袋に挿入されている物で、単一の素材が挿入されている物、例えば、カーテン原反等については、ポリエチレン製の袋を解袋することなく、袋中の繊維素材の選別を行っても選別が可能であるため、袋を取り外して選別する手間を省くことも可能である。
【0021】
また、布状繊維の中で、カーテンについては、ポリエステル系繊維を使用しているものが多く、何社かのカーテンメーカーの製品見本帳について、その素材を調べてみると、ポリエステル系繊維単独で構成されているものが50%以上を占めている。しかしながら、カーテンの素材については、縦糸と横糸の素材を異なる素材の糸で構成したものや、異なる素材を混紡して使用し、風合いや洗濯した際の耐久性、遮光性、難燃性等の機能性を付与したものも挙げられる。具体的には、ポリエステル系繊維にアクリル繊維、アクリル系繊維、レーヨン、木綿等の繊維が様々な割合で混紡され、製織されたものである。また、カーテンの中でも、レースカーテンについては、近赤外分光光度計で識別する際に、近赤外光が素材を透過して反射光が集光され難い場合は、複数枚以上のレースカーテンを積層して反射光を集光しやすくすると容易に識別可能となる。
【0022】
これらポリエステル系繊維にアクリル繊維、アクリル系繊維、レーヨン、木綿等の繊維が混紡されたものは、ポリエステル系繊維に10重量%以上の混紡率で混紡されたものであれば、ポリエステル系繊維と異なるピークを検出できるため、識別が可能となる。更に、20重量%以上の混紡率のものは、より容易に識別することができるため好ましい。
【0023】
本発明におけるセルロース含有繊維とは、主としてレーヨン、木綿等からなる紡績糸である。更に、麻、絹、羊毛等からなる天然繊維も、同様にして、本発明における近赤外分光光度計でのセルロース含有繊維の識別方法を使用して分別することが可能である。本発明においては、布状繊維や綿状繊維から耐久性や難燃性に劣るセルロース含有繊維を10重量%以上含む繊維を選別、除去して回収される布状繊維や綿状繊維等の原料繊維は、耐久性の優れる合成繊維から構成されることとなるため、不織布を製造して再利用する上で有用と成り、好ましい。
【0024】
本発明におけるポリエステル系繊維とは、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレン−2、6−ジカルボン酸、フタル酸、α、β−(4−カルボキシフェノキシ)エタン、4,4‘−ジカルボキシジフェニル、5−ナトリウムスルホイソフタル酸等の芳香族ジカルボン酸;アゼライン酸、アジピン酸、セバシン酸等の脂肪族ジカルボン酸とエチレングリコール、ジエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサン−1,4−ジメタノール、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のジオールからなる繊維形成性のポリエステルを挙げることができ、構成単位の80モル%以上がエチレンテレフタレート単位であることが好ましい。また、末端に反応性官能基としてカルボキシル基や水酸基を有するリン酸エステル等のリン含有エステル形成性化合物を前記ポリエステル形成性モノマーと重縮合した難燃性ポリエステル、リン含有難燃剤又は臭素含有難燃剤を混合成形、後加工等により導入又は付与して得られるポリエステル系難燃繊維を使用することもできる。
【0025】
次に、本発明におけるアクリル系繊維とは、アクリロニトリルモノマーを85重量%未満含む共重合体を用いてなる繊維であり、具体的には、アクリロニトリル30〜70重量%、塩化ビニルモノマー及び/又は塩化ビニリデンモノマー等のハロゲン含有ビニル系単量体を70〜30重量%、及び、これらと共重合可能なビニル単量体0〜10重量%からなる共重合体の繊維である。更に、難燃性を付与する点から、前記共重合体は、アクリロニトリル40〜60重量%、塩化ビニルモノマー及び/又は塩化ビニリデンモノマー等のハロゲン含有ビニル系単量体を60〜40重量%、及び、これらと共重合可能なビニル単量体0〜10 重量%からなる共重合体の繊維が好ましい。一方、一般的なアクリル繊維とは、アクリロニトリルをモノマー単位として85重量%以上含む共重合体を用いてなる繊維でアクリル系繊維と区分される。
【0026】
図1〜図4に示すのは、それぞれ、赤外分光光度計により木綿100重量%、ポリエステル系繊維100重量%、アクリル繊維100重量%、アクリル系繊維100重量%から成る布状繊維を分析した結果であり、図5〜図7に示すのは、それぞれ、ポリエステル系繊維69重量%、70重量%、55重量%に、レーヨン31重量%、アクリル繊維30重量%、アクリル系繊維45重量%が混紡された布状繊維を分析した結果を示す。
【0027】
これらの分析結果において、レーヨン、木綿等からなるセルロース含有繊維を近赤外分光光度計により分析した場合、1924〜1974nm(1937、1946nm)と2084〜2163nm(2124nm)の波長領域に特徴的なブロードなピークが生じ、このピークを検出することにより、セルロース含有繊維を容易に識別できるため好ましい。更に、近赤外分光光度計で前記したポリエステル系繊維、アクリル繊維、アクリル系繊維、レーヨン、木綿を測定した場合、それぞれ、特徴的なピークが生じるため、このピークを基に識別することで各種素材毎に識別することが可能となる。
【0028】
一方、ポリエステル系繊維、アクリル繊維、アクリル系繊維からなる布状繊維についても、近赤外分光光度計により分析した結果は、各種素材毎に特徴的なピークを生じるため、構成素材を特定するために有効となる。ここで、ポリエステル系繊維、アクリル繊維、アクリル系繊維、及び、レーヨン又は木綿からなるセルロース含有繊維を近赤外分光光度計で分析した際の、各素材を識別するための特徴的ピークを表1に示す。ポリエステル系繊維が含まれている布状繊維については、2155、2183、2208nmに、ポリエステル系繊維に固有の3本の特徴的なピークが生じるため、容易に識別される。また、アクリル繊維は、1690,1743,2302nmに、アクリル系繊維は、1701、1746、2325、2381nmに、特徴的なピークを有する。その他のピークとして、例えば、1920nm付近に生じるピークは、ポリエステル系繊維、アクリル繊維、アクリル系繊維において共に生じるものであるが、特徴的ピークとの組合せによるピークパターンを基に、より精度良く識別することが可能となる。この様にして、セルロース含有繊維を10重量%以上含む繊維、アクリル繊維、アクリル系繊維を識別して、分別し、前記した近赤外分光分析によりポリエステル系繊維の含有有無を明確化すると、布状繊維中に残存する繊維中のポリエステル系繊維の含有量は、少なくとも50重量%を超えることとなる。
【0029】
【表1】

【0030】
一般に、近赤外分光光度計によりプラスチックを識別する装置においては、近赤外分光光度計とコンピューターを接続し、得られた近赤外光の吸光度のデーターをコンピューターに取り込むと共に、予め、記憶させておいたプラスチック種毎の近赤外光の吸光度のパターンとの合致性を比較、計算することによりプラスチック種を特定し、識別する機械が市販されている。
【0031】
ところで、アクリル系繊維が使用される繊維製品、中でもカーテンは、通常、40重量%以上の混紡比率で使用されているものが多いため、近赤外分光計での識別を容易に行うことができる。また、アクリル系繊維を含むカーテンのほとんどが、防炎製品であるため、識別後、分別して回収した繊維についても、良好な難燃性を有するものとなる。更に、アクリル系繊維を構成する樹脂自体が難燃性を有することから、難燃後加工されたポリエステル系繊維に対して、経年劣化による難燃性能の低下が生じ難い点に特徴を有する。
【0032】
図8は、各種布状繊維廃棄物を繊維素材毎に分別する分別装置1の構成について、具体的形態の1例を示す概略説明図である。この分別装置1において、布状繊維(廃棄物)又は綿状繊維等の原料繊維2は、例えば多数のフック6aを備えるベルトコンベア等の供給装置6により、引っ掛けて引き上げられ、搬送装置3の上方に搬送され、落下、供給される。この際に、位置センサー5cにより原料繊維2が搬送装置3に供給されたことを検知し、供給装置6を停止状態とする。そして、搬送装置3を駆動し、原料繊維2を検知機4まで搬送させる。次に、搬送装置3の位置センサー5bまで原料繊維2が搬送され、検知機4上部に原料繊維2があることを、位置センサー5a、5bにより検知すると、搬送装置3の駆動は停止し、検知機4により原料繊維に対して近赤外光を照射して素材の識別が行われる。得られたデーターはコンピューター(図示省略。)に送られ、該コンピューターでの識別結果を基に原料繊維2の素材を判定する。この判定の識別データーに基づいて、仕分け機7の方向が変更され、更に、搬送装置3を駆動して原料繊維が仕分け機7に搬送される。それと同時に、仕分け機7の搬送機構も駆動され、原料繊維2が、その素材別に仕分けされ、核仕分け品収容部8に分別回収されるように構成されている。
【0033】
なお、布状繊維廃棄物等の原料繊維2が、検知機4で識別された後、位置センサー5aを通過すると、供給装置6が再駆動し、次の原料繊維2が、順次、搬送装置3に落下、供給される。この一連の操作は、例えば、シーケンサーを用いて制御し、これらの操作は繰り返し行われて原料繊維2の分別が行われる。
【0034】
図示した分別装置1においては、供給装置6は、傾斜したコンベアからなり、例えば、鋼鉄の太い針を植えた木材を帆布で繋いだスパイクド・ラチスで布状繊維廃棄物2を引っ掛けて移送し、搬送装置3の上に順次供給させるものである。この際、原料繊維2の大きさは、識別頻度が多くなって分別処理効率が劣ってしまうため30cm角以上であることが好ましく、大きさが非常に大きいものについては、予め、幅1m、長さ2m以下に切断して分別することが好ましい。また、搬送装置3は、コンベア装置からなることが好ましい。また、検知機4は、布状繊維廃棄物2と密着して素材を識別すると識別精度が高いことから、布状繊維廃棄物2の下方から近赤外光を照射するように設置して識別操作を行うように構成することが好ましい。
【0035】
また、布状繊維や綿状繊維等の原料繊維2の仕分け方法は、分別回収した繊維の用途に応じて、仕分け品収容部8を2乃至4個設置し、識別された原料2を、セルロース含有繊維を10重量%以上含むセルロース系原料繊維もしくは綿及び識別不能な原料繊維と、それ以外の合成繊維からなる原料繊維との2種類に分別して回収する。あるいは、セルロース含有繊維を10重量%以上含むセルロース系布状繊維もしくは綿状繊維と、識別不能な繊維と、それ以外の合成繊維からなる繊維との3種類に分別して回収する。更には、セルロース含有繊維を10重量%以上含む繊維と識別不能な繊維と、アクリル系繊維を30重量%以上含む繊維と、それ以外の合成繊維からなる繊維との4種類に分別して回収するように、適宜、選択して分別することが好ましい。
【0036】
位置センサー5a,5b,5cは、例えば、光の反射有無により布状繊維廃棄物2の存在を検知する作用を有する光センサーを使用することができ、その動作については、供給装置6の下部にある位置センサー5cの位置を原料繊維2が通過している間は、供給装置6を駆動して搬送装置3に供給させる。一方、位置センサー5bの位置に原料繊維2が存在する場合には、供給装置6は停止し、搬送装置3に原料繊維2が供給されないように制御すれば、順次、分別操作を行うことができる。なお、位置センサー5a,5bの設置位置は、繊維原料2の搬送状況を検知して搬送装置3の駆動を制御可能であれば、搬送装置3のコンベア部の搬送面に対して、側部、上部、下部の何れに設置しても構わない。
【0037】
搬送装置3の制御については、位置センサー5aに布状繊維廃棄物2が有り、5bに無い状態となった時に、供給装置6を駆動させるように制御すれば、次の識別処理を行うことが可能となる。また、検知機4で識別するタイミングは、位置センサー5a,5bが共に繊維原料2を検知した後、搬送装置3を停止した時に行うようにし、引き続き、識別データーに基づいて仕分け機7の位置を変更する。そして、搬送装置3及び仕分け機7のコンベアを連動させて移送することにより、繊維原料2は素材毎に分別されて仕分け品収容部8に回収されることとなる。
【0038】
なお、仕分け機7は、仕分け品収容部8の数に応じたコンベアを設置し、搬送経路を変更して回収可能なように構成しても良い。その際には、識別データーに基づく搬送時間のタイムラグを計算して、タイミングを合わせることが必要となる。
【0039】
一方、カーテン原反等の巻物を本発明の分別装置を使用して分別する場合は、搬送装置3の上流側(供給装置6側)から順次供給し、検知機4で素材識別後、再び搬送装置3により下流側へ搬送し、原反等の重量を勘案して仕分け、回収可能な装置として構成すれば良い。
【0040】
図9は、布状繊維や綿状繊維等の原料繊維を近赤外分光光度計により、該布状繊維を構成する素材を識別して分別を行った後に反毛とする場合の工程をフロー図であって、前記布状繊維がカーテンである場合において、切断機及び/または裁断機で切断して10cm角程度の大きさとした後に、開繊機で反毛化する処理フロー図で有る。また、図10は、得られた反毛を用いて不織布を製造するための処理フローの一例を示すフロー図である。
【0041】
カーテン等からなる布状繊維廃棄物を用いて不織布を製造する場合、まず、10cm程度の幅に切断する必要が有る。そのために使用する切断機としては、送り機構と切断機構を有するシートカッターを用いて、切断することが好ましい。次に、回転円筒形に複数の刃が設置された裁断機で所定の大きさとして約10cm角程度の布片とすることが好ましい。また、カーテン生地の原反等からなる巻物状の布状繊維を処理する際には、切断機として、例えば、切断機の一種である昇降板に、丸ナイフを設置して巻物状原反の幅方向に、布幅を調整しながら切断することにより、効率良く10cm程度幅の短冊状の布に切断することができる。この短冊状の布を回転円筒形に複数の刃が設置された裁断機で所定の大きさの布片とすれば、同様に、10cm角程度の大きさの布片に切断することも可能である。
【0042】
このように切断機により10cm角程度の大きさに切断された布片に対して、水や帯電防止剤、油剤等をかけて湿潤した後に、複数台以上の開繊機を直列に並べた開繊装置で処理する、あるいは、開繊機で1回又は2回処理した後に、続いてカード機又はガーネットワインダーで処理することで、糸がほぼ開かれた反毛を得ることができる。一般に、ポリエステル系繊維のフィラメントは紡績糸に対して開繊することが難しく、ガーネットワイヤーを巻いたシリンダーロールを有するガーネット式開繊機で処理することが好ましい。そのため、ポリエステル系繊維を50重量%以上含む繊維廃棄物においては、前記したガーネット式開繊機を用いて開繊することが好ましい。この様に、繊維素材によって、開繊機の機種を選定することで、得られる反毛の性状が良好となるため、素材毎に選別した後に、前記開繊装置を選定して処理することが好ましい。
【0043】
更に、前記したような開繊機でカーテンの切断物を開繊する場合、未開繊物が分離される構造となった開繊機を使用することが好ましい。未開繊物を分離することで、綿状になった反毛を更に開繊機で処理すると、繊維が必要以上に切断されたり、傷められるのが防止されるためである。一方、カーテンを複数台以上の開繊機を直列に並べた開繊装置で開繊処理する場合においては、シリンダーロールに開繊用ワイヤーを巻き付けた開繊機を多段に組合せ、かつ、開繊用ワイヤーの刃の目立てを順次、小さなるように配列した開繊装置で、繊維を順次、開繊処理することで、良好な反毛が得やすくなる。更に、カーテン廃棄物を反毛化して使用する際には、金属製のフックやプラスチック付着物及び著しく傷んだカーテンを分別、除去する、望ましくは、クリーニング処理を行った上で、前記開繊装置を選定し、反毛化することも好ましい。
【0044】
また、得られた反毛を不織布とする場合、後述するように、ニードルパンチングマシンを用いてニードルパンチする、或いは、該反毛に熱融着性バインダー繊維を混合後、加熱融着して不織布とする方法が挙げられる。これらの方法により不織布を製造する際に、反毛を繋ぐためのバージン繊維を混合して不織布を製造しても良い。反毛を繋ぐために配合するバージン繊維は、近赤外分光光度計により繊維廃棄物を構成する素材の種類を識別後、選別された繊維素材から得られる反毛と同一の素材であることが好ましく、本発明では、セルロース含有繊維を除く合成繊維である。また、特定の素材だけにまで選別された繊維廃棄物においては、その素材と同一の繊維素材から成るバージン繊維を用いると、不織布製造時の端材や不良品を回収、リサイクルする上で不織布の品質をコントロールし易く、好ましい。反毛を繋ぐために配合するバージン繊維の配合量は、該反毛50〜100重量%に対して、0〜50重量%である。
【0045】
熱融着性バインダー繊維については、例えば、鞘部が200℃以下、好ましくは70℃以上170℃以下の融点を持ち、ポリエステル系樹脂又はポリプロピレン系樹脂からなる合成繊維等からなる芯とで形成される芯鞘型構造を有する熱融着性バインダー繊維(この繊維を単にバインダー繊維と称すことがある。)が挙げられる。この芯鞘型構造を有する熱融着性バインダー繊維は、繊維本体となる芯部の周囲に被覆材が被覆され、鞘部を形成する2層構造の繊維からなるバインダー繊維を前記反毛に混合して使用するものである。この芯鞘型構造を有する熱融着性バインダー繊維として、芯部がポリエステル樹脂で、鞘部が共重合ポリエステル樹脂からなるもの、或いは、芯部がポリプロピレン系繊維で鞘部が低融点ポリエチレンからなる複合繊維(ES繊維)は、単繊維繊度、繊維長、融点が異なる幾種もの物が市販されている。このため、バインダー繊維を混合して不織布を製造する際に、該バインダー繊維の単繊維繊度、繊維長、融点の選択幅が広いため、不織布の外観性、均一性が良好な不織布を容易に得ることができる。更に、より低融点で鞘部が溶融するバインダー繊維を使用することによって、より温和な成形加工条件を選択しても不織布の表面から内部までほぼ均一に接着することが容易と成るためより好ましく、成形時間を短縮することも可能となる。
【0046】
また、前記反毛に対するバインダー繊維の配合量は、5重量%以上40重量%以下の範囲であると、合成繊維との混合状態が良くなり、不織布中で均一に分散して接着するため好ましい。更に、この範囲の配合量であれば、バインダー繊維同士の過剰な融着が抑制され、コスト的にも有利な不織布を得ることができる。これらバインダー繊維の中でも、芯鞘型低融点ポリエステル系繊維を使用して不織布を成形することが好ましい。
【0047】
また、前記バインダー繊維の繊維長は、3mm以上70mm以下が好ましく、単繊維繊度は1.5dtex以上7.8dtex以下のものを使用すると、不織布の成形性が良好になるため好ましく、また、汎用的に使用されるバインダー繊維である。
【0048】
前記した方法で製造される不織布の厚みと平均面密度は、製造方法によるところも有るが、例えば、0.5cm以上2cm以下の厚みで、平均面密度が300g/m以上2000g/m以下の範囲の不織布である。
【0049】
不織布を成形する際に、反毛とバインダー繊維又は繋ぎ用繊維等の繊維を混合する場合、ホッパー・ベール・ブレッカー、ホッパー・ミキサー、フェアノート等の混合機が使用される。所定量計量された繊維は、例えば、水平ラチスで運ばれたホッパー内に運ばれた繊維を、鋼鉄の太い針を植えた木材を帆布で繋いだスパイクド・ラチスで反転させながら、スパイクで繊維を掻き上げて、スパイクド・シリンダーの針との間で開繊して輸送し、雑物を落下させつつ混合する機構を有するホッパー・ベール・ブレッカー等の混合機を用いて、接着斑を生じ無いように混合される。
【0050】
また、本発明において使用される不織布の成形方法については、特に制限が無いが、公知の不織布成形方法として乾式法が好ましい。乾式法にはエアーレイド法とカード法がある。エアーレイド法は、混合、開繊した繊維を空気流により集めてマット状とするもので、カード法は、カード機でシリンダーと針布によって繊維を開繊しながら繊維をある程度平行化し、次いで、ウェブレイヤーを有するウェブ形成装置に搬送され、原反マットを作成するものである。
【0051】
このようにして作成された原反マットから不織布を形成する方法については、ニードルを用いてパンチングする方法(ニードルパンチフェルト)、或いは、熱融着性バインダー繊維を配合した原反マットをパンチングメタルやメッシュ金網等の熱風を通す板に原反マットを挟んで厚み調整して熱風加熱処理して成形し、バインダー繊維を熱融着する方法(熱融着型フェルト)が挙げられる。バインダー繊維を配合した原反マットを加熱して融着する際の加熱温度については、不織布の成形加工性から120℃以上180℃以下が好ましい。
【0052】
ところで、近赤外分光光度計を用いて繊維中のセルロース含有繊維を特定すると共に、選別除去した繊維中には、難燃性を有するアクリル系繊維を含有する物がある。該アクリル系繊維は、特に、防炎製品であるカーテン等の布状繊維中に含まれる物であるが、近赤外分光光度計を用いることにより、アクリル系繊維が30重量%以上含む繊維を特定して選別した布であれば、これらの布状繊維廃棄物を開繊して反毛を得、バインダー繊維や繋ぎ用繊維を配合する場合は、必要に応じて、バージンのアクリル系繊維を適宜、配合して不織布を作成すると、該合成繊維布織布を難燃化することも容易である。例えば、ポリエステル系繊維とアクリル系繊維が混紡された防炎製品であるカーテンを選別して回収し、これらのカーテン生地を開繊した反毛とし、合成繊維不織布を作成すると、得られた不織布は、カーテンの難燃性と略同等の難燃性を有するものとなる。
【0053】
一方、得られた不織布を土木用産業資材として使用する場合は、埋立処分場透水性シートや盛土押さえ用シートの用途が挙げられる。本発明方法により製造される合成繊維不織布においては、セルロース含有繊維として天然繊維も選別、除去され、少なくとも10重量%以下の含有量となるため、土中に施工した場合においても、土壌細菌等の微生物による不織布の分解が生じ難く、土木用産業資材として有効に利用できることとなる。
【0054】
<実施例>
以下に実施例により本発明を更に詳細に説明するが、この発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0055】
(I)プラスチック判別装置による繊維素材の識別
住江織物株式会社製カーテン見本帳:Ventana(‘98−’00)の318銘柄のカーテン生地について、15種類のプラスチックの素材を識別可能なアマノトレーディング株式会社製プラスチック種類判別計(PlaScan−W)を用いて、その素材を識別した。
【0056】
(識別1)
レーヨンを10重量%以上含む67銘柄のカーテンのサンプルを分析した結果、全て1924〜1974nm(1937、1946nm)に、ブロードなピークが生じ、セルロース含有繊維と特定された。
【0057】
(識別2)
(識別1)と同様にして、木綿を10重量%以上含む31銘柄のカーテンのサンプルを分析した結果、全て1924〜1974nm(1937、1946nm)に、ブロードなピークが生じ、セルロース含有繊維と特定された。
【0058】
(識別3)
アクリル系繊維を含有する繊維を特定して分別するため、識別ソフトを変更し、アクリル系繊維、アクリル系繊維/ポリエステル系繊維混合品、それ以外のプラスチックの3種類に識別できるようにして識別した。アクリル系繊維を30重量%以上含む57銘柄のカーテンのサンプルをこの方法で分析した結果、アクリル系繊維を60重量%以上含む18銘柄は、「PVDC」と判定されて識別され、残る39銘柄は「アクリル系繊維/PET」として識別された。
【0059】
(識別4)
レーヨン、木綿、アクリル系繊維を含まない150銘柄について識別した結果、129銘柄は、「PET」として判定されて識別され、全て、50重量%以上の含有量であった。残る21銘柄は、その他の素材である「OTHERS」と表示された。これらの21銘柄においても、2155、2183、2208nmに特徴的なピークが確認され、ポリエステル系繊維が含まれていることは識別されたが、ポリエステル系繊維の含有量は、50重量%未満であった。
【0060】
(識別5)
ポリエステル系繊維100%のカーテン布地30重量%と、ポリエステル系繊維/アクリル繊維の混紡カーテン(重量比率=65/35)20重量%と、アクリル系繊維/ポリエステル系繊維の混紡カーテン(重量比率=50/50)20重量%とポリエステル系繊維/木綿の混紡カーテン(重量比率=72/28)10重量%と、木綿100%のカーテン20重量%を準備してプラスチック分別計で識別を行った。その結果、セルロース含有繊維を含むカーテンが28重量%、アクリル系繊維を含むカーテンが17重量%と、アクリル系繊維を含む繊維及びセルロース含有繊維を含むカーテンを分別除去したカーテン48重量%と、判別不能な繊維7重量%を分別回収した。用いたカーテンの生地と照し合せて分別されたカーテンの識別精度を確認した結果、アクリル系繊維を含むカーテンと、アクリル系繊維を含む繊維とセルロース含有繊維を含むカーテンを分別除去したカーテンには、セルロース含有繊維を含むカーテンは含まれていなかった。
【0061】
(II)不織布の製作
(実施例1)
識別5で分別したアクリル系繊維を含む繊維とセルロース含有繊維を含むカーテンを分別除去したカーテンを不織布用材料(A)とした。近赤外分光分析でのチャートから該不織布材料には、ポリエステル系繊維とアクリル繊維が含有されていることが判った。この不織布用材料(A)を10cm幅に成るように切断後、(株たいへい製開繊機(シリンダーオープナーB−03型)で2回開繊して開繊物(A)を得た。該開繊物80重量部に、芯鞘型低融点ポリエステル繊維(鞘部融点75℃、51mm、4.4dtex)を20重量部の比率で混綿し、カード機で更に混綿・開繊後、平均面密度が約1kg/m2となるように斜めに積層し固定した。前記繊維積層物をスパンボンド不織布に挟み、厚み25mmと成るようにパンチングメタル板に充填圧縮した状態で熱風対流型乾燥機で140℃×15分で乾燥処理後、不織布1を取出した。不織布1の厚みは25mm、平均面密度は972g/m2であった。
【0062】
(実施例2)
識別5で分別したアクリル系繊維を含む繊維を不織布用材料(B)として回収した。不織布1と同様にして、(株)たいへい製開繊機(シリンダーオープナーB−03型)で2回開繊して開繊物(B)を得た。該開繊物80重量部に芯鞘型低融点ポリエステル繊維(鞘部融点110℃、25mm、2.2dtex)を20重量部と、の比率で混綿し、カード機で更に混綿・開繊後、エアーレイ式フォーマーで混綿した綿を走行方向に移動しつつ、走行方向に対して斜めに積層し固定した。前記繊維をスパンボンド不織布に挟み、パンチングメタル板に充填圧縮した状態で熱風対流型乾燥機で160℃×2分で乾燥処理後、不織布2を取出した。不織布2の平均面密度は990g/m2で、厚みは13mmであった。
【0063】
(実施例3)
不織布2と同様にして、開繊物(B)を得た。該開繊物(B)50重量部に、芯鞘型低融点ポリエステル繊維(鞘部融点110℃、25mm、2.2dtex)20重量部とアクリル系繊維((株)カネカ製 カネカロン;38−23mm
、7.8dtex)30重量部の比率で混綿し、カード機で更に混綿・開繊後、エアーレイ式フォーマーで混綿した綿を走行方向に移動しつつ、走行方向に対して斜めに積層し固定した。前記繊維をスパンボンド不織布に挟み、パンチングメタル板に充填圧縮した状態で熱風対流型乾燥機で160℃×2分で乾燥処理後、不織布3を取出した。不織布3の平均面密度は1050g/m2で、厚みは15mmであった。
【0064】
(実施例4)
不織布2と同様にして、開繊物(B)を得た。次に、カード機にかけて繊維の方向を揃えてウェブレーヤーで積層して面密度を調整した原反とし、そのままDILO社製ニードルパンチング装置に移送して不織布4を回収した。なお、パンチングは、50cm×20cmのニードル板にオルガンニードル社製ニードルFPD−75 40Sを2.7本/cm2で設置し、パンチング速度:約1.5秒/回、送り速度:約50cm/分で実施し、厚み7mm、平均面密度999g/cm2の不織布4(ニードルパンチフェルト)を回収した。
【0065】
(比較例1)
木綿を主とした繊維廃棄物について、近赤外分光光度計よりなるプラスチック判別機でセルロース含有繊維を選別後、不織布用材料(C)として回収した。不織布用材料(C)における木綿の含有量は、製品表示から95重量%であった。次に、カーテン廃棄物を近赤外分光光度計よりなるプラスチック判別機でセルロース含有繊維を選別、除去した後、「PET」と判別された物だけを集めて不織布用材料(D)とした。この不織布用材料(C)と不織布用材料(D)は、不織布1と同様にして10cm幅に成るように切断後、それぞれ、(株)たいへい製開繊
機(シリンダーオープナーB−03型)で2回開繊して開繊物(C)及び開繊物(D)を得た。該開繊物(C)50重量部に、開繊物(D)30重量部と芯鞘型低融点ポリエステル繊維(鞘部融点75℃、51mm、4.4dtex)を20重量部の比率で混綿し、カード機で更に混綿・開繊後、平均面密度が約1kg/m2となるように斜めに積層し固定した。前記積層した繊維原反をスパンボンド不織布に挟み、パンチングメタル板に充填圧縮した状態で熱風対流型乾燥機で160℃×20分で乾燥処理後、不織布5を取出した。不織布5の厚みは25mmで、平均面密度は960g/m2であった。
【0066】
(比較例2)
識別5で分別したセルロース含有繊維を含むカーテンを不織布用材料(E)として回収した。不織布用材料(E)における木綿の含有量は、製品表示から算出した結果、約75重量%であった。次に、識別5で分別した、アクリル系繊維を含む繊維及びセルロース含有繊維を含むカーテンを分別除去したカーテンを不織布用材料(A)として回収した。この不織布用材料(E)と不織布用材料(A)は、それぞれ、10cm角の大きさに切断すると共に、(株)たいへい製開繊機(シ
リンダーオープナーB−03型)で2回開繊して開繊物(E)及び開繊物(A)を得た。該開繊物(A)15重量部に、開繊物(E)65重量部と芯鞘型低融点ポリエステル繊維(鞘部融点75℃、51mm、4.4dtex)を20重量部の比率で混綿し、カード機で更に混綿・開繊後、平均面密度が約1kg/m2となるように斜めに積層し固定した。前記積層した繊維原反をスパンボンド不織布に挟み、パンチングメタル板に充填圧縮した状態で熱風対流型乾燥機にて160℃×20分で乾燥処理後、不織布6を取出した。不織布6の厚みは20mmで、平均面密度は976g/m2であった。
【0067】
(参考例1)
合成繊維不織布として厚み30mm、面密度1000g/mの再生ポリエステル系繊維からなる不織布7(山一株式会社製YPF)を用いた。
【0068】
(III)不織布の物性
試験材料として、平均面密度1000±50g/m2の不織布を用いた。不織布1〜不織布7について、それぞれ、200mm×25mmの布片を5枚切り出して試験サンプルとした。JIS A9511の燃焼性測定方法Aを使用し、図11に示すようにサンプルを鉛直方向から−45°傾けて、火源用ろうそくの炎をサンプル右端の先端に当て、約5秒間かけてろうそくの炎を等速で着火限界指示線まで移動させ、到達後直ぐに後退させた。サンプルを火から離した後、15秒間、状態を保持し、燃焼性を火の消え方とサンプル右端の先端からの燃焼距離を測定し、難燃性のレベルを比較評価した。その結果を表2に示す。
【0069】
【表2】

【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】各種布状繊維の内、木綿の布に近赤外線を照射した時に、吸収される吸光度スペクトルを示すグラフである。
【図2】各種布状繊維の内、ポリエステル系繊維の布に近赤外線を照射した時に、吸収される吸光度スペクトルを示すグラフである。
【図3】各種布状繊維の内、アクリル繊維の布に近赤外線を照射した時に、吸収される吸光度スペクトルを示すグラフである。
【図4】各種布状繊維の内、アクリル系繊維の布に近赤外線を照射した時に、吸収される吸光度スペクトルを示すグラフである。
【図5】各種布状繊維の内、ポリエステル系繊維69重量%とレーヨン31重量%が混紡された布に近赤外線を照射した時に、吸収される吸光度スペクトルを示すグラフである。
【図6】各種布状繊維の内、ポリエステル系繊維70重量%とアクリル繊維30重量%が混紡された布に近赤外線を照射した時に、吸収される吸光度スペクトルを示すグラフである。
【図7】各種布状繊維の内、ポリエステル系繊維55重量%とアクリル系繊維45重量%が混紡された布に近赤外線を照射した時に、吸収される吸光度スペクトルを示すグラフである。
【図8】各種布状繊維廃棄物を繊維素材毎に分別する分別装置の構成例を示す概略説明図である。
【図9】本発明方法において繊維廃棄物を構成する素材を識別して分別を行った後に、反毛を製造する際の処理フローの一例を示すフロー図である。
【図10】本発明方法において繊維廃棄物から得た反毛から不織布を製造する際の処理フローの一例を示すフロー図である。
【図11】難燃性試験の説明図である。
【符号の説明】
【0071】
1 分別装置
2 原料繊維
3 搬送装置
4 検知機
5a,5b,5c 位置センサー
6 供給装置
6a フック
7 仕分け機
8 仕分け品収容部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成繊維不織布の製造方法であって、
原料としての布状及び/又は綿状の繊維を、近赤外分光光度計により前記布状及び/又は綿状の繊維を構成する素材の種類を識別する素材識別工程と、
前記素材識別工程において、セルロース含有繊維を10重量%以上含むと識別された布状及び/又は綿状の繊維を選別し、原料から除去するセルロース除外工程と、
前記除外されたセルロース含有繊維を含む布状及び/又は綿状の繊維以外の布状及び/又は綿状の繊維を反毛とする反毛工程と、
前記反毛工程で得られた反毛を不織布に加工する不織布加工工程と、
を有することを特徴とする合成繊維不織布の製造方法。
【請求項2】
前記布状及び/又は綿状の繊維が繊維廃棄物であり、製造される合成繊維不織布が再生合成繊維不織布である請求項1記載の合成繊維不織布の製造方法。
【請求項3】
前記布状繊維がカーテンである請求項1又は2に記載の合成繊維不織布の製造方法。
【請求項4】
前記セルロース含有繊維が、木綿又はレーヨンを10重量%以上含む繊維である請求項1〜3のいずれかに記載の合成繊維不織布の製造方法。
【請求項5】
前記素材選別工程において、前記素材識別工程において近赤外分光光度計により原料としての布状及び/又は綿状の繊維の中からアクリル系繊維を30重量%以上含むと識別された布状及び/又は綿状の繊維を選別し、該選別された布状及び/又は綿状の繊維を回収し、前記反毛工程において反毛とし、該反毛を前記不織布加工工程において不織布に加工して難燃性不織布とする請求項1〜4の何れかに記載の合成繊維不織布の製造方法。
【請求項6】
布状及び/又は綿状の繊維の分別装置であって、
布状及び/又は綿状の繊維の供給装置と、
布状及び/又は綿状の繊維の供給状況を検知するための位置センサーと、
供給された布状及び/又は綿状の繊維を間欠的に搬送する搬送装置と、
前記搬送装置によって搬送される布状及び/又は綿状の繊維に近赤外光を照射して反射光を検出するための検出機と、
検出機の位置での布状及び/又は綿状の繊維の搬送状態を検出するための位置センサーと、
前記検出機での識別データーに基づいて布状及び/又は綿状の繊維を繊維素材毎に分別する仕分け機と、
該仕分け機後部に設置された2乃至4個の仕分け品収容部と、
を備えることを特徴とする布状及び/又は綿状の繊維の分別装置。
【請求項7】
前記供給装置が、布状及び/又は綿状の繊維を搬送装置の上部から供給し、上方に傾斜した経路において、該布状及び/又は綿状の繊維を引っ掛けて引き上げる装置であることを特徴とする請求項6記載の布状及び/又は綿状の繊維の分別装置。
【請求項8】
前記仕分け機が、前記布状及び/又は綿状の繊維の識別データーを基に、搬送経路を変更して仕分け品収容部に投入するものである請求項6又7に記載の布状及び/又は綿状の繊維の分別装置。
【請求項9】
前記布状及び/又は綿状の繊維が、繊維廃棄物であり、布状繊維廃棄物及び/又は綿状繊維廃棄物の分別に用いられる請求項6〜8に記載の分別装置。
【請求項10】
セルロース含有繊維を10重量%以上含むセルロース系布状及び/又は綿状の繊維と、アクリル系繊維を30重量%以上含むアクリル系布状及び/又は綿状の繊維と、それ以外の合成繊維からなる布状及び/又は綿状の繊維と、識別不能の繊維からなる布状及び/又は綿状の繊維とに識別し、分別して回収することを特徴とする請求項6〜9のいずれかに記載の布状及び/又は綿状の繊維の分別装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−191375(P2009−191375A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−30170(P2008−30170)
【出願日】平成20年2月12日(2008.2.12)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】