説明

合成繊維用処理剤及び該処理剤を付与した海苔網用合成繊維

【課題】
海苔網用合成繊維の製造工程において、海苔胞子の生育性及び製糸、製網での十分な潤滑性、静電気防止性を与える合成繊維用処理剤及び該処理剤を付与した海苔網用合成繊維を提供することを目的とする。
【解決手段】
脂肪酸エステル(A)を15〜65重量%、脂肪族アルコールのエチレンオキサイド付加物と脂肪酸とのエステル(B)を10〜40重量%含有し、(A)/(B)の含有比率が80/20〜40/60であり、さらに非イオン活性剤(C)を20〜50重量%、ポリエーテル(D)を2〜20重量%含有し、アニオン活性剤(E)を0.1〜10重量%含有する合成繊維用処理剤。また前記合成繊維用処理剤が0.3〜2.0重量%付着していることを特徴とする海苔網用合成繊維。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成繊維処理剤及び該処理剤を付与した海苔網用合成繊維に関するものであり、更に詳しくは、海苔網用合成繊維の製造工程において、海苔胞子の生育性及び製糸、製網の上で十分な潤滑性、静電気防止性を付与する合成繊維処理剤及び該処理剤を付与した海苔網用合成繊維に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、海苔網としては海藻類の付着性が優れるとの理由からポリビニルアルコール繊維が広く使用されているが、波浪条件が厳しく網地やロープに大きな力の掛かる場所で行われる浮き流し式の場合ではポリビニルアルコール繊維のみでは強度や屈曲疲労性が不足のためポリアミド繊維やポリエステル繊維等と混撚して使用されている。
【0003】
海苔胞子の養生や成長を阻害せず、海苔網用として適する合成繊維を提供する方法としては、ブロックポリエーテルアミドを混合含有せしめたポリアミドからなる海苔網用繊維で、繊維の横断面形状を4葉から8葉断面にし、耐疲労性が良好で海苔の育成も良好な海苔網を提供する方法(特許文献1)、合成繊維用ポリマーと高吸水性樹脂とを混紡して得られる原糸を製網してなる海苔胞子の付着や生育に優れた海苔網を提供する方法(特許文献2)、吸水性の低い合成繊維表面に高吸湿性微粒子を付着させ、海苔などの海洋動植物の付着性を高める方法(特許文献3)等が開示されているが、いずれも海苔網用合成繊維を製造するための処理剤については何一つ言及されていない。一方、漁網などを含む産業資材用合成繊維で、毛羽、糸切れが少なく良好な紡糸工程通過性を有する合成繊維用処理剤として、チオジプロピオン酸のジエステル及び分岐アルコールのエチレンオキサイド付加物のリン酸エステル塩及び硬化ヒマシ油のエチレンオキサイド付加物を特定比率で含有する処理剤(特許文献4)、エステル系潤滑成分とチオエーテル基を有するエステルと二級スルホネートのアルカリ金属塩及びヒンダードフェノール系酸化防止剤を含む処理剤(特許文献5)等が開示されているが、いずれも海苔胞子の養生や海苔の生育に関する記載は一切なされておらず、海苔網用合成繊維を製造する上での最適な処理剤、かつ海苔網用合成繊維の最適な提供方法としては、公知の文献がないのが現状であった。
【特許文献1】特開昭58−193633号公報
【特許文献2】特開昭62−096024号公報
【特許文献3】特開2003−088261号公報
【特許文献4】特開平4−185768号公報
【特許文献5】特開平8−120563号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような従来技術に鑑み、本発明は、海苔網用合成繊維の製造工程において、海苔胞子の生育性及び製糸、製網での十分な潤滑性、静電気防止性を与える合成繊維用処理剤及び該処理剤を付与した海苔網用合成繊維を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、脂肪酸エステル(A)を15〜65重量%、脂肪族アルコールのエチレンオキサイド付加物と脂肪酸とのエステル(B)を10〜40重量%含有し、(A)/(B)の含有比率が80/20〜40/60であり、さらに非イオン活性剤(C)を20〜50重量%、ポリエーテル(D)を2〜20重量%含有し、アニオン活性剤(E)を0.1〜10重量%含有する合成繊維用処理剤である。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、海苔胞子の成長を十分に促し、製糸、製網の上で十分な潤滑性、静電気防止性に優れる海苔網用合成繊維を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明について、以下に詳述する。
【0008】
本発明の合成繊維用処理剤は、脂肪酸エステル(A)(以下(A)成分という)を15〜65重量%含有することが必要であり、25〜50重量%であることが好ましい。(A)成分は平滑剤として機能し製糸及び製網工程において十分な潤滑性を得るための成分である。(A)成分の含有量が、15重量%未満では製糸工程での糸切れ・毛羽が増加し、65重量%より多いと精練工程で処理剤が脱落しにくくなり海苔胞子の生育の妨げになる。
【0009】
本発明における(A)成分である脂肪酸エステルとしては、炭素数6〜26の高級脂肪酸と炭素数10〜30の一価高級飽和アルコールまたは2〜6価の多価アルコールからなる脂肪族エステル化合物や天然由来の植物油などが好適に使用される。
【0010】
具体例としては、オレイルオレート、1,6−ヘキサンジオールジラウレート、ジオレイルアジペート、ジオレイルチオジプロピオネート、トリメチロールプロパントリラウレート、ペンタエリスリトールテトラオクタノエート等の脂肪族エステル化合物、ヤシ油、ナタネ油、ヒマワリ油などの植物油等が挙げられるが、なかでも脂肪族エステル化合物が好ましい。
【0011】
本発明の合成繊維用処理剤は、脂肪族アルコールのエチレンオキサイド付加物と脂肪酸とのエステル(B)(以下(B)成分という)を10〜40重量%含有することが必要であり、15〜35重量%であることが好ましい。(B)成分は平滑剤としても機能するが、(A)成分の水中脱落性、溶解性を補助する効果も有する。(B)成分の含有量が、10重量%未満では精練工程で処理剤が脱落しにくくなり、40重量%より多いと結果として(A)成分の含有量が減少してしまうことから製糸工程での糸切れ・毛羽が増加する。
【0012】
本発明における(B)成分には、炭素数1〜26の脂肪族アルコールのエチレンオキサイド付加物と炭素数6〜24の脂肪酸とのエステルが好適に使用される。
【0013】
具体例としては、オレイルアルコールEO(エチレンオキサイド。以下EOと略す)10モル付加物デカノエート、1,4−ヘキサンジオールEO5モル付加物ジオレート、ラウリルアルコールEO5モル付加物アジペート、トリメチロールプロパンEO20モル付加物トリオレート、グリセリンEO12モル付加物トリラウレート、PEG1000ジオレート、PPG600ジラウレートなどが挙げられる。なかでも1,6−ヘキサンジオールEO5モル付加物ジラウレート、ラウリルアルコールEO5モル付加物アジペートなどの2価のエステル化合物が好ましい。
【0014】
本発明の合成繊維用処理剤の(A)成分と(B)成分の含有比率は、(A)/(B)=80/20〜40/60であることが必要であり、70/30〜50/50であることが好ましい。(A)成分の含有比率が80より多いと、精練工程で処理剤が脱落しにくくなり、40未満であると製糸工程での糸切れ・毛羽が増加する。
【0015】
本発明の合成繊維用処理剤は、非イオン性活性剤(C)(以下(C)成分という)を20〜50重量%含有することが必要であり、25〜40重量%であることが好ましい。(C)成分は乳化剤として機能し、平滑剤成分である(A)成分と(B)成分を精練工程で脱落させるための成分であり、親水基であるEOやPO(プロピレンオキサイド。以下POと略す)などを付加していても良い。(C)成分の含有量が、20重量%未満では、精練工程で処理剤が脱落しにくくなり、50重量%より多いと結果として平滑剤の比率が減少してしまうことから製糸工程での糸切れ・毛羽が増加する。
【0016】
本発明における(C)成分には、炭素数6〜26脂肪族アルコールに親水基を付加したものと炭素数10〜30の高級脂肪酸からなる非イオン性活性剤が好適に使用される。
【0017】
具体例としては、ポリオキシアルキレンラウリルエーテル、ポリオキシアルキレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレンオレイン酸エステル、ソルビタンモノラウレート、ソルビトールテトラオレート、グリセリンモノオレート、ポリオキシアルキレンソルビタントリオレート、ポリオキシアルキレンヒマシ油、ポリオキシアルキレン硬化ヒマシ油、ポリオキシアルキレン硬化ヒマシ油トリオクタノート、ポリオキシアルキレンラウリルアミノエーテル、ジエタノールアミンモノラウロアミド、ポリオキシエチレンジエチレアミンモノラウリルアミドなどが挙げられる。なかでもポリオキシアルキレンオレイン酸エステル、ポリオキシアルキレンヒマシ油、ポリオキシアルキレン硬化ヒマシ油、ポリオキシアルキレン硬化ヒマシ油トリオクタノートなどの非イオン性活性剤が好ましい。
【0018】
本発明の合成繊維用処理剤は、ポリエーテル(D)(以下(D)成分という)を2〜20重量%含有することが必要であり、3〜15重量%であることが好ましい。(D)成分は乳化剤として機能するほかに転相粘度を下げる機能も有する。転相粘度とは水と油を界面活性剤を介して混ぜるときに、親水型と親油型で相変化するときに発生する増粘のことをいう。
【0019】
本発明において、(D)成分としては、脂肪族アルコールEOとPO付加物が挙げられ、分子量は特に制限はないが、500〜3000が好ましい。(D)成分の含有量が2%未満では、転相粘度が高くなり処理剤の水中脱落性や脱落物の水溶性が劣り、20重量%より多いと(D)成分自体の粘度が高いため結果として処理剤全体の粘度が上がってしまい製糸工程での糸切れ・毛羽が増加する。
【0020】
(D)成分としては、ブタノールのEO/PO=30/70(モル比)付加物(分子量=1000)、ラウリルアルコールのEO/PO=50/50(モル比)付加物(分子量=1400)などが挙げられる。また、(D)成分としてポリエチレングリコール(PEG)を用いてもよい。具体的には、PEG400、PEG800などが挙げられる。なお、EO、POの付加形態は、ブロック付加でもランダム付加でもまたはブロック/ランダム付加でもかまわない。
【0021】
本発明の合成繊維用処理剤は、アニオン活性剤(E)(以下(E)成分という)を0.1〜10重量%含有することが必要であり、0.2〜5重量%であることが好ましい。(E)成分は合成繊維と金属ロールとの接触で発生する静電気の発生を防止する静電気防止剤としての機能を有する。(E)成分の含有量が、0.1重量%未満では静電気の発生が激しくなり、10重量%より多いと摩擦が高くなり製糸工程での糸切れ・毛羽が増加する。
【0022】
(E)成分としては、トリデシルスルホン酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、オクチルリン酸エステルナトリウム塩、ポリオキシエチレンラウリルアミン塩、オクタン酸カリウム、オレイン酸ナトリウム、オレイン酸カリウム等が挙げられる。なかでもオクチルリン酸エステルナトリウム塩などの有機リン酸エステル塩が好ましい。
【0023】
本発明の合成繊維用処理剤には、前記(A)〜(E)成分の他に、例えば酸化防止剤、消泡剤、防腐剤、防錆剤等を必要に応じて混合して使用することができるが、これらの添加量は油剤全体に対して5重量%未満である。
【0024】
本発明の合成繊維用処理剤の海苔網用合成繊維への付着量は、合成繊維に対して0.3〜2重量%、好ましくは0.5〜1.5重量%であればよい。
【0025】
本発明の合成繊維用処理剤は、低粘度鉱物油で希釈した非水系油剤、水で乳化したエマルジョン油剤、ニートオイルのいずれの状態で使用しても良く、原糸に付与する方法としてはオイリングローラーやガイド給油装置を用いて紡糸工程で付与すればよい。
【0026】
本発明における海苔網用合成繊維としては、ポリアミド繊維またはポリエステル繊維が好ましい。ポリアミド繊維は、ナイロン66、ナイロン6、ナイロン46等、及びそれらのポリマを主成分とする共重合ポリマ、及びブレンドポリマからなることが好ましい。ポリエステル繊維は、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリテトラメチレンテレフタレート、ポリ乳酸等、及びそれらのポリマを主成分とする共重合ポリマ、及びブレンドポリマからなることが好ましい。上記素材の中でも特にナイロン6繊維が好ましい。
【0027】
次に本発明の海苔網用合成繊維の典型的な製造方法について概述する。
【0028】
硫酸相対粘度3〜4のナイロン6チップをエクストルーダー型紡糸機を用い、270〜300℃で溶融し、濾過した後、口金細孔から紡出する。紡出糸条は、口金直下に設置された長さ5〜30cmの加熱筒で囲まれた280℃〜330℃の高温雰囲気中を通過させ、その後15〜30℃の空気を吹きつけて空冷する。冷却固化した糸条に合成繊維用処理剤を、付着量として0.3〜2重量%となるよう付与する。合成繊維用処理剤の成分は前記したとおりである。
【0029】
給油された糸条は、所定の速度で回転する引き取りロールに捲回して引き取る。引き取りロールの速度は300〜1000m/min、好ましくは、500〜800m/minである。引き取られた糸条は、一旦巻き取ることなく、給糸ロールとの間で2〜10%、好ましくは3〜8%のプレストレッチを付与した後、第1延伸ロールとの間で1段目の延伸を行い、引き続き第2延伸ロールとの間で2段目の延伸を行う。次いで、第3延伸ロールとの間で3段目の延伸をおこなった後、弛緩ロールとの間で1〜10%の弛緩を与えながら弛緩熱処理して、巻取り機で巻き取る。引き取りロール及び給糸ロールは片掛けロールもしくはネルソン型ロールを用い、第1延伸ロール以降はネルソン型ロールが用いられることが好ましい。各ロールの温度は、引き取りロール及び給糸ロールは40℃以下、第1延伸ロールは80〜150℃、第2延伸ロールは180〜220℃、第3延伸ロールは200〜220℃とすることが好ましい。弛緩ロールは100〜150℃とすることが好ましい。延伸の配分は、1段目の延伸は、全延伸倍率の60〜80%、2段目の延伸倍率は20〜40%、3段目の延伸倍率は5〜20%で行うことが好ましい。全延伸倍率は、4〜6倍の範囲であることが好ましい。なお、前記プロセスにおいて、第3延伸ロールを省略して2段延伸を行うこともできる。延伸された糸条は熱セットされ巻き上げられるが、巻き上げ直前に糸条を交絡付与装置に通して交絡を付与することが好ましい。交絡付与装置は高圧空気を複数のノズルから噴出させ、糸条に略直交して吹きつけることによって間歇的に交絡を付与する方式のものが好ましい。
【0030】
以上の方法で製造された原糸とポリビニルアルコール繊維をリング撚糸機を用いて交撚し、無結節編網機、ラッセル編網機または蛙又編網機を使用して製網することが好ましい。
【実施例】
【0031】
次に、実施例により本発明を詳細に説明する。なお、本文及び実施例に用いた物性等の測定方法は以下の通りである。
【0032】
(1)硫酸相対粘度:98%硫酸を溶媒とし、試料2.5g/溶媒25ml濃度の溶液をオストワルド粘度計を用いて25℃で測定して求めた。
【0033】
(2)総繊度:JIS L1013(1999) 8.3.1 A法により、所定荷重0.045cN/dtexで正量繊度を測定して総繊度とした。
【0034】
(3)単糸数:JIS L1013(1999) 8.4の方法で算出した。
【0035】
(4)単糸繊度:上記総繊度を上記単糸数で除することで算出した。
【0036】
(5)付着油分量:JIS L1013(1999) 8.27 b)の方法で、ジエチルエ−テル抽出分を測定し、付着油分量とした。
【0037】
(6)強度・伸度:JIS L1013(1999) 8.5.1標準時試験に示される定速伸長条件で測定した。試料をオリエンテック社製“テンシロン”(TENSILON)UCT−100を用い、掴み間隔は25cm、引張り速度は30cm/分で行った。なお、伸度はS−S曲線における最大強力を示した点の伸びから求めた。
【0038】
(7)静電気発生量:東レエンジニアリング(株)製摩擦試験機YF850にて糸速50m/分、張力200gで直径5cmの固定金属ピン(表面Cr梨地メッキ加工)に常温で180度接触させた後の静電気発生量をヒューグルエレクトロニクス(株)製静電気測定器MODEL−2Lを使用して糸から3cmの位置で測定した。
【0039】
(8)製糸糸切れ:製糸スタートから、繊維パッケージ重量で合計1000kg製糸した時の糸切れ回数を以下の基準で評価した。
【0040】
○ : 糸切れ発生回数が、0回
△ : 糸切れ発生回数が、1回
× : 糸切れ発生回数が、2回以上。
【0041】
(9)水中分散性:30℃の海水50mlに処理剤5滴を加えゴム栓をした試験管で上下に10回振った後の状態を以下の基準で判定した。
【0042】
○ : 透明で、泡がすぐに消える
△ : わずかに白濁する、もしくは泡が消えるまで1分程度かかる
× : 白濁する、もしくは泡が消えるまで2分以上かかる。
【0043】
(10)海苔の生育状況:海水を入れた恒温槽を20℃に温調し、製網した海苔網に海苔胞子を付着せしめた後、恒温槽中に20日間静置し、目視で生育状況を観察して以下の基準で判定した。
【0044】
○ : 黒々と1cm以上の長さに成長しているもの
△ : まばらにしか存在せず、丈も短いもの
× : ほとんど海苔の存在が確認できないもの。
【0045】
[実施例1〜5、比較例1〜6]
硫酸相対粘度3.5のナイロン6チップを、エクストルーダー型紡糸機を用いて紡糸温度290℃で溶融し、紡糸パック内で15μmの金属不織布フィルターで濾過した後、丸型吐出孔口金を用いて紡糸した。口金直下には長さ30cmの加熱筒を設置し、口金面から約35cm間を300℃の高温雰囲気とし、紡出糸条は該高温雰囲気中を通過させた後、20℃・30m/分の冷風により冷却固化され、表1、2記載の処理剤をロール給油法にて付与した。なお、表1、2に記載の油剤成分は全て竹本油脂(株)製の単成分を混合使用した。
【0046】
給油された糸条は、引き取りロールに速度500m/分で引き取り、引き続き、給糸ロールとの間で3%のストレッチをかけた。引取りロール及び給糸ロールは共に水循環ロールを用いて40℃の温度でコントロールした。次いで糸条は第1延伸ロールとの間で1段目の延伸、第2延伸ロールとの間で2段目の延伸をおこなった後、弛緩ロールとの間で5%の弛緩処理を施し、交絡付与装置にて糸条に交絡処理した後、巻取機で巻取った。 第1延伸ロールは140℃、第2延伸ロールは210℃、弛緩ロールは150℃とした。各ローラーの周速度は第1延伸ロールを1800m/分、第2延伸ロールを2500m/分として製糸した。糸条の交絡付与は、交絡付与装置のノズルから走行糸条に略直角方向から高圧空気を噴射して行った。交絡付与装置の前後に走行糸条を規制するガイドを設け、噴射ノズルは2穴タイプを用いた。走行糸条の巻取りは、0.17±0.02cN/dtexの一定張力にて定常の巻取りを行い、470dtex、10フィラメントのナイロン6繊維を得た。
【0047】
次に上記ナイロン6繊維を12本とクラレ(株)製100dtexのビニロンモノフィラメント(商品名:クラロンK−II)60本をリング撚糸機にて交撚し21Z/10cmの下撚りと10S/10cmの上撚りを掛け、この撚り糸を蛙又製網機にて目合い300mmの蛙又網を製網し海苔網とした。得られたナイロン6繊維及び海苔網の評価結果を表3、4に示す。
【0048】
【表1】

【0049】
【表2】

【0050】
【表3】

【0051】
【表4】

【0052】
表3、4から明らかなように、実施例1〜5はいずれの例も海苔の生育が優れている結果を示したが、比較例1、4、5は海苔が全く生育しないという結果であった。さらに、実施例1、3、4はいずれの例も糸切れがなく良好な製糸性を示したが、比較例2、3、6は糸切れ回数が多く製糸性が不十分であるという結果であった。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明による合成繊維用処理剤を付与した海苔網用合成繊維は製網時の工程通過性に優れ、海苔胞子の生育性にも優れる。そのため、本発明の合成繊維用処理剤を付与した海苔網用合成繊維は海苔網に好適に用いられるが、他の漁網用途でも好適に用いることが出来る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂肪酸エステル(A)を15〜65重量%、脂肪族アルコールのエチレンオキサイド付加物と脂肪酸とのエステル(B)を10〜40重量%含有し、(A)/(B)の含有比率が80/20〜40/60であり、さらに非イオン活性剤(C)を20〜50重量%、ポリエーテル(D)を2〜20重量%含有し、アニオン活性剤(E)を0.1〜10重量%含有する合成繊維用処理剤。
【請求項2】
請求項1記載の合成繊維用処理剤が0.3〜2重量%付着していることを特徴とする合成繊維。
【請求項3】
海苔網用である請求項2記載の合成繊維。

【公開番号】特開2010−59566(P2010−59566A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−225666(P2008−225666)
【出願日】平成20年9月3日(2008.9.3)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】