説明

合成繊維紙、電気絶縁紙および合成繊維紙の製造方法

【課題】層内接着強力が強く、絶縁破壊強さが強い合成繊維紙および電気絶縁紙を提供する。
【解決手段】ポリフェニレンサルファイド繊維からなる合成繊維紙であって、前記ポリフェニレンサルファイド繊維が単繊維断面形状が単糸断面の長径と短径との比(長径/短径)が1.5以上であるものを含み、かつ、少なくとも一部が熱融着していることを特徴とする合成繊維紙。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成繊維紙及び電気絶縁紙に関するものである。
【背景技術】
【0002】
モーター、コンデンサー、変圧器、ケーブル等に用いられる電気絶縁紙は、モーター等の過酷な使用条件に耐えるべく、耐熱性、耐薬品性、耐加水分解性等が求められるとともに、緻密で絶縁破壊強さが高いことが要求さている。かつ、折り曲げ加工などするときに、層内剥離しないように強い層内接着強度が必要である。
【0003】
耐熱性、耐薬品性、耐加水分解性に優れるポリフェニレンサルファイド繊維(以下、PPS繊維という)を用いて、緻密な湿式不織布を得る手段として、構成するPPS繊維の極細化が提案されている(特許文献1)。
【0004】
しかし、ナノファイバーのような非常に細い繊維を均一に水に分散するのが困難で、緻密でピンホールのない湿式不織布を得るのが非常に難しかった。
【0005】
なお、扁平な繊維を用いた湿式不織布の例は、特許文献2、3にあるが、湿式不織布の層内接着強度の向上には寄与しなかった。
【特許文献1】特開2006−257618号公報
【特許文献2】特開2003−49388号公報
【特許文献3】特開2006−200066号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、層内接着強力が強く、絶縁破壊強さが強い合成繊維紙および電気絶縁紙を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち本発明は、ポリフェニレンサルファイド繊維からなる合成繊維紙であって、前記ポリフェニレンサルファイド繊維が単繊維断面の長径と短径との比(長径/短径)が1.5以上であるものを含み、かつ、少なくとも一部が熱融着していることを特徴とする合成繊維紙である。
【0008】
また本発明は、本発明の合成繊維紙からなることを特徴とする電気絶縁紙である。
【0009】
また本発明は、単繊維断面の長径と短径との比(長径/短径)が1.5以上のポリフェニレンサルファイド繊維を含む湿式不織布を、加熱加圧処理により熱融着させる工程を含むことを特徴とする合成繊維紙の製造方法である。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、層内接着強力が強く、絶縁破壊強さが強い合成繊維紙および電気絶縁紙を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の合成繊維紙は、PPS繊維からなる。PPSは、繰り返し単位としてp−フェニレンサルファイド単位やm−フェニレンサルファイド単位などのフェニレンサルファイド単位を含有するポリマーである。PPSは、これらのいずれかの単位のホモポリマーでもよいし、両方の単位を有する共重合体でもよい。また、他の芳香族サルファイドとの共重合体であってもよい。
【0012】
また、PPSの重量平均分子量としては、40000〜60000が好ましい。40000以上とすることで、PPS繊維として良好な力学的特性を得ることができる。また、60000以下とすることで、溶融紡糸の溶液の粘度を抑え、特殊な高耐圧仕様の紡糸設備を必要とせずに済む。
【0013】
PPS繊維は、単繊維断面の長径と短径との比(長径/短径)が1.5以上であるもの(以下、「扁平PPS繊維」という)を含むことが重要である。扁平PPS繊維を含むことで、真円状の繊維のみを採用した場合よりも空隙部分が小さくなり、緻密な合成繊維紙を得ることができ、高い絶縁破壊強さを発現できることができるようになる。長径と短径との比(長径/短径)が1.5未満では、空隙を小さくできず、緻密な合成繊維紙を得ることができない。扁平PPS繊維の長径と短径との比(長径/短径)としては、2.0以上が好ましい。一方、その上限値としては、25.0以下が好ましい。25.0よりも大きくなると、繊維がねじれやすくなり、ねじれた部分がフシとなって空隙ができ、欠点を生じ易くなる。
【0014】
扁平PPS繊維の単繊維繊度としては、0.1〜7.0dtexが好ましい。0.1dtexより細い場合は、繊維強力が弱くなり、紙力が弱くなってしまう。また、7.0dtexよりも太くなると、抄紙工程にて繊維がねじれた場合の節部分の空隙サイズが大きくなり、後の処理で空隙を潰しにくくなる。
【0015】
扁平PPS繊維のカット長としては、0.1〜10mmが好ましく、より好ましくは0.4〜6mmである。0.1mmよりも短いと、粉のようになってしまい、脱落することなく湿式不織布を構成することが難しくなる。また、10mmよりも長くなると、繊維がねじれ易くなる。ねじれると、ねじれた部分が節となり、その部分に空隙ができ易くなる。
【0016】
扁平PPS繊維における捲縮の有無については、有するものと有さないものとのそれぞれに利点がある。捲縮を有する扁平PPS繊維は、扁平繊維がねじれにくくなり、空隙の欠点の発生を抑えることができ、かつ、繊維同士の絡合性が向上して強度の優れた湿式不織布を得るのに適している。一方、捲縮を有しない扁平PPS繊維は、ムラが小さい均一な湿式不織布を得るのに適している。
【0017】
扁平PPS繊維は、延伸繊維、未延伸繊維のいずれであってもよいが、湿式不織布を、緻密化するために加熱加圧処理をしたときに、隣接する単繊維同士が変形しながら熱融着して空隙を潰しやすくなる点で、未延伸繊維であることが好ましい。
【0018】
扁平PPS繊維を得る方法としては、例えば、扁平型や矩形等の口金を用いて公知の方法を用いて得ることができる。
【0019】
例えば、PPSのポリマペレットを、140〜180℃で3〜24時間程度乾燥した後、エクストルーダー型紡糸機で溶融し、ポリマ温度(紡糸温度)を295℃〜320℃として、孔径0.1〜1.0mmで、長径と短径の比(長径/短径)が1.5以上のスリット吐出口等矩形や楕円形等の口金から紡糸し、得ることができる。
【0020】
上記の手段で得た扁平繊維を、必要に応じて、2.0〜5.0倍程度に延伸してもよいし、未延伸の状態で用いても良い。
【0021】
また、PPSフィルムをスリットすることによっても扁平PPS繊維を得ることができる。
【0022】
本発明の合成繊維紙における扁平PPS繊維の混率としては、10%以上が好ましく、より好ましくは50%以上である。混率が10%よりも少ないと、十分に緻密化の効果が得られない。
【0023】
本発明の合成繊維紙の坪量としては、30〜300g/mが好ましい。300g/m以下とすることで、湿式不織不を薄くでき省スペース化を図ることができるとともに、折り曲げ加工時にひび割れなどを発生しない柔軟な合成繊維紙を得ることができる。一方、30g/mよりも薄いと、十分な絶縁破壊強さを得ることができない。
【0024】
本発明の合成繊維紙を製造する方法の一例を示す。
【0025】
まず、扁平PPS繊維を含むPPS繊維を水中に分散させ、抄紙用分散液をつくる。
【0026】
抄紙用分散液に対する繊維の合計量としては、0.005〜5質量%が好ましい。0.005質量%以上とすることで、30g/m以上の目付の大きな湿式不織布を効率的に得ることができる。また、5質量%以下にすることで、繊維の分散状態が良くなり均一な湿式不織布を得ることができる。
【0027】
抄紙用分散液には、水分散性を向上するためにカチオン系、アニオン系、ノニオン系などの界面活性剤などからなる分散剤や油剤、また泡の発生を抑制する消泡剤等を添加してもよい。
【0028】
抄紙用分散液を、丸網式、長網式、傾斜網式などの抄紙機または手漉き抄紙機を用いて抄紙し、これをヤンキードライヤーやロータリードライヤー等で乾燥し、湿式不織布とすることができる。
【0029】
本発明の合成繊維紙の製造方法は、扁平繊維を含む湿式不織布を加熱加圧処理する工程を含むことが重要である。加熱加圧処理のとき、扁平PPS繊維が含まれていることが緻密な合成繊維紙を得るのに非常に有益である。扁平繊維は、隣接する繊維同士の接触が面となり、加熱加圧処理する前から既に空隙が少なく、容易に空隙を潰して緻密な合成繊維紙を得ることができる。また、加熱加圧処理して熱接着するときに、接着面積が大きくなるので、接着力が強くなり、紙の層内接着強力を向上することができる。このとき、扁平繊維は、空隙を潰すために繊維が熱で変形し易い未延伸糸であることが好ましい。
【0030】
加熱加圧処理の手段としては、平板等での熱プレス、カレンダーなどを採用することができる。なかでも、連続して加工することができるカレンダーが好ましい。カレンダーのロールは、金属−金属ロール、金属−紙ロール、金属−ゴムロール等を使用することができる。
【0031】
加熱加圧処理の圧力としては、98〜7000N/cmが好ましい。98N/cm以上とすることで繊維間の空隙を潰すことができる。一方、7000N/cm以下とすることで、加熱加圧処理工程における合成繊維紙の破れ等を防ぎ、安定して処理を施すことができる。
【0032】
加熱加圧処理の温度としては、150〜250℃が好ましく、より好ましくは170〜230℃である。150℃よりも低いと、繊維同士が熱融着せず緻密な合成繊維紙を得ることができない。一方、250℃を超えると、PPS繊維が軟らかくなりすぎて、カレンダーのロールや熱プレスの板等の加熱加圧装置に貼りついてしまい、表面が荒れたものができてしまったり、貼りついたものをはがせず、合成繊維紙を得ることができない。
【0033】
加熱加圧処理としてカレンダー加工を採用した場合の工程通過速度としては、2〜30m/minが好ましく、より好ましくは3〜20m/minである。2m/min以上とすることで、良好な作業効率を得ることができる。一方、30m/min以下とすることで、合成繊維紙の内部の繊維にも熱を伝導させ、繊維の熱融着の実効を得ることができる。
【0034】
上記のようにして得られた合成繊維紙は、緻密で、絶縁破壊強さが強く、電気絶縁紙に好適に用いることができる。
【実施例】
【0035】
[測定・評価方法]
(1)単糸断面の長径と短径の比(長径/短径)
光学電子顕微鏡にて、単糸断面で最長径と最短径を測定し、長径を短径で割って、算出した。
【0036】
(2)坪量
JIS L 1906:2000に準じて、10cm×10cmの試験片を3枚採取し、標準状態におけるそれぞれの質量(g)を量り、その平均値を1m当たりの質量(g/m)で表した。
【0037】
(3)電気絶縁破壊強さ
JIS K 6911:1995に則り測定した。試料の異なる5か所から約10cm×10cmの試験片を採取し、直径25mm、質量250gの円盤状の電極で試験片を挟み、試験媒体には空気を用い、0.25kV/秒で電圧を上昇させながら周波数60Hzの交流電圧をかけ、絶縁破壊したときの電圧を測定した。得られた絶縁破壊電圧をあらかじめ測定しておいた中央部の厚さで割り、絶縁破壊強さを算出した。
【0038】
(4)層内接着強力
JIS K 2111:2002(12.2項:接着力の測定)に準じて測定した。50mm×200mmの試験片を5枚採取し、試験片全幅にわたり、できるだけ層の中心を長さ方向に20mm引き裂き、引き裂き箇所が直角になるように、引き裂かれていない部分を手で持ちながら、300m/minで引張り、接着力の試験片5個の平均値を算出し、10mm幅に換算した。
【0039】
(5)熱融着の有無
試験片表面を、電子顕微鏡を用いて倍率300倍で観察し、熱融着の有無を確認した。
【0040】
[実施例1]
(丸断面PPS繊維)
丸形状の単繊維断面を有するPPS繊維として、単繊維繊度1.0dtex、カット長6mmの延伸したPPS繊維(東レ社製‘トルコン’、品番S101)を用いた。
【0041】
(扁平PPS繊維)
PPSのポリマペレットを、160℃で10時間乾燥した後、エクストルーダー型紡糸機で溶融し、ポリマ温度(紡糸温度)を315℃として、長辺0.7mm、短辺0.3mmのスリット型吐出孔から押し出して600m/分の速度で巻き取り、3.1dtexの扁平繊維を得た。これをギロチンタイプカッターで6mmにカットし、扁平PPS繊維のカットファイバーを得た。得られた扁平繊維の長径/短径比は、2.3であった。
【0042】
(分散液)
上記丸断面PPS繊維の配合量を8.0g/Lとして、水1Lとともに家庭用ジューサーミキサーに投入して攪拌し、丸断面PPS繊維の分散液とした。攪拌時間としては、繊維同士が絡むのを防ぐために10秒とした。
また、上記扁平PPS繊維の配合量を8.0g/Lとして、扁平PPS繊維の分散液も同様にして調製した。
【0043】
(抄紙)
上記丸断面PPS繊維の分散液および上記扁平PPS繊維の分散液1Lずつを、底に140メッシュの手漉き抄紙網を設置した大きさ25cm×25cm、高さ40cmの手すき抄紙機(熊谷理機工業社製)に投入し、さらに水を追加して抄紙分散液の総量を20Lとし、攪拌棒で十分に攪拌した。
そして手すき抄紙機の水を抜き、抄紙網に残った湿紙をろ紙に転写させた。
【0044】
(乾燥)
上記湿紙をろ紙ごとロータリー式乾燥機に投入し、温度125℃、工程通過速度0.5m/min、工程長1.25m(処理時間2.5min)にて乾燥する処理を、5回繰り返した。
【0045】
(加熱加圧処理)
上記乾燥処理した湿式不織布をろ紙から剥離させて、鉄ロールとペーパーロールとからなるカレンダー加工機に通し、合成繊維紙を得た。カレンダー条件は、温度230℃、圧力100kN/25cm(4kN/cm)、ロール回転速度3m/minとし、表裏の2回繰り返した。
【0046】
[実施例2]
(丸断面PPS繊維)
実施例1で用いたのと同様のものを用いた。
【0047】
(扁平PPS繊維)
実施例1で用いたのと同様のものを用いた。
【0048】
(分散液)
上記丸断面PPS繊維の配合量を2.4g/Lとした以外は実施例1と同様にして、丸断面PPS繊維の分散液を調製した。
また、上記扁平PPS繊維の配合量を2.4g/Lとした以外は実施例1と同様にして、扁平PPS繊維の分散液を調製した。
【0049】
(抄紙)
上記丸断面PPS繊維の分散液および上記扁平PPS繊維の分散液を用いた以外は実施例1と同様にして、湿紙を得た。
【0050】
(乾燥)
上記湿紙を用い、また乾燥処理の繰り返し数を2回とした以外は実施例1と同様にして、乾燥処理した湿式不織布を得た。
【0051】
(加熱加圧処理)
上記乾燥処理した湿式不織布を用いた以外は実施例1と同様にして、合成繊維紙を得た。
【0052】
[実施例3]
(丸断面PPS繊維)
実施例1で用いたのと同様のものを用いた。
【0053】
(扁平PPS繊維)
厚み4.6μmのPPSフィルム(東レ社製‘トレリナ’、タイプ1X00)を、幅0.1mmにスリットしてスリットヤーンを得た。これをギロチンタイプカッターでカット長6mmにカットし、扁平PPS繊維のカットファイバーを得た。得られた扁平PPS繊維の長径/短径比は、21.7、繊度は6.0dtexであった。
【0054】
(分散液)
上記丸断面PPS繊維を用い、実施例1と同様にして、配合量8.0g/Lの丸断面PPS繊維の分散液を調製した。
また、上記扁平PPS繊維を用いた以外は実施例1と同様にして、配合量8.0g/Lの扁平PPS繊維の分散液を調製した。
【0055】
(抄紙)
上記丸断面PPS繊維の分散液および上記扁平PPS繊維の分散液を用いた以外は実施例1と同様にして、湿紙を得た。
【0056】
(乾燥)
上記湿紙を用いた以外は実施例1と同様にして、乾燥処理した湿式不織布を得た。
【0057】
(加熱加圧処理)
上記乾燥処理した湿式不織布を用いた以外は実施例1と同様にして、合成繊維紙を得た。
【0058】
[比較例1]
(丸断面PPS繊維(1.0dtex))
実施例1で用いたのと同様の丸断面PPS繊維を、丸断面PPS繊維(1.0dtex)として用いた。
【0059】
(丸断面PPS繊維(3.0dtex))
単繊維繊度3.0dtex、カット長6mmの未延伸PPS繊維(東レ社製‘トルコン’、品番S111)を、丸断面PPS繊維(3.0dtex)として用いた。
【0060】
(分散液)
上記丸断面PPS繊維(1.0dtex)を用い、実施例1と同様にして、配合量8.0g/Lの丸断面PPS繊維(1.0dtex)の分散液を調製した。
また、上記丸断面PPS繊維(3.0dtex)を用いた以外は実施例1と同様にして、配合量8.0g/Lの丸断面PPS繊維(3.0dtex)の分散液を調製した。
【0061】
(抄紙)
上記丸断面PPS繊維(1.0dtex)の分散液および上記丸断面PPS繊維(3.0dtex)の分散液を用いた以外は実施例1と同様にして、湿紙を得た。
【0062】
(乾燥)
上記湿紙を用いた以外は実施例1と同様にして、乾燥処理した湿式不織布を得た。
【0063】
(加熱加圧処理)
上記湿式不織布を用い、またカレンダー条件における温度を80℃とした以外は実施例1と同様にして、合成繊維紙を得た。
【0064】
[比較例2]
(丸断面PPS繊維)
実施例1で用いたのと同様のものを用いた。
【0065】
(扁平PPS繊維)
実施例1で用いたのと同様のものを用いた。
【0066】
(分散液)
上記丸断面PPS繊維の配合量を0.3g/Lとした以外は実施例1と同様にして、丸断面PPS繊維の分散液を調製した。
また、上記扁平PPS繊維の配合量を0.3g/Lとした以外は実施例1と同様にして、扁平PPS繊維の分散液を調製した。
【0067】
(抄紙)
上記丸断面PPS繊維の分散液および上記扁平PPS繊維の分散液を用いた以外は実施例1と同様にして、湿紙を得ることを試みた。
しかし、湿紙が薄くて抄紙網からその形を保ったまま剥離させることができず、試料を得ることができなかった。
【0068】
[比較例3]
(丸断面PPS繊維)
実施例1で用いたのと同様のものを用いた。
【0069】
(扁平PPS繊維)
実施例1で用いたのと同様のものを用いた。
【0070】
(分散液)
上記丸断面PPS繊維の配合量を13.0g/Lとした以外は実施例1と同様にして、丸断面PPS繊維の分散液を調製した。
また、上記扁平PPS繊維の配合量を13.0g/Lとした以外は実施例1と同様にして、扁平PPS繊維の分散液を調製した。
【0071】
(抄紙)
上記丸断面PPS繊維の分散液および上記扁平PPS繊維の分散液を用いた以外は実施例1と同様にして、湿紙を得た。
【0072】
(乾燥)
上記湿紙を用いた以外は実施例1と同様にして、乾燥処理した湿式不織布を得た。
【0073】
(加熱加圧処理)
上記湿式不織布を用い、またカレンダー条件における温度を80℃とした以外は実施例1と同様にして、合成繊維紙を得た。
【0074】
【表1】

【0075】
扁平繊維を混抄し、加熱加圧処理した合成繊維紙は、絶縁破壊強さが強く、層内接着強力も強い湿式不織布を得ることができた。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明の合成繊維紙は、モーター、コンデンサー、変圧器、ケーブル等に用いられる絶縁紙として利用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリフェニレンサルファイド繊維からなる合成繊維紙であって、前記ポリフェニレンサルファイド繊維が単繊維断面の長径と短径との比(長径/短径)が1.5以上であるものを含み、かつ、少なくとも一部が熱融着していることを特徴とする合成繊維紙。
【請求項2】
前記ポリフェニレンサルファイド繊維の少なくとも一部が未延伸糸である、請求項1記載の合成繊維紙。
【請求項3】
前記ポリフェニレンサルファイド繊維の単繊維繊度が0.1〜7.0dtexである、請求項1または2に記載の合成繊維紙。
【請求項4】
坪量が30〜300g/cmである、請求項1〜3のいずれか記載の合成繊維紙。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の合成繊維紙からなることを特徴とする電気絶縁紙。
【請求項6】
単繊維断面の長径と短径との比(長径/短径)が1.5以上のポリフェニレンサルファイド繊維を含む湿式不織布を、加熱加圧処理により熱融着させる工程を含むことを特徴とする合成繊維紙の製造方法。

【公開番号】特開2009−133033(P2009−133033A)
【公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−310426(P2007−310426)
【出願日】平成19年11月30日(2007.11.30)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】