説明

合成繊維起毛布用着色剤及び抜染剤、並びにそれらを用いた加工方法及びその方法により加工した合成繊維起毛布

【課題】合成繊維起毛布を加工した場合、型際で変色又は消色が発生する問題がなく、着色又は抜染部分とエッチング部分との重複部分では、合成繊維起毛布の地染めの色が、着色剤によって着色されたり、地染めの色が変色又は消色したりしない合成繊維起毛布用着色剤及び抜染剤、並びにそれらを用いた加工方法及び当該方法により加工した合成繊維起毛布を提供する。
【解決手段】酸化アルミニウム及び酸化ケイ素を含有する複合金属酸化物、糊剤、分散染料及びシリコーンオイルを含有し、かつpHが9〜13の範囲であることを特徴とする合成繊維起毛布用着色剤、又は酸化アルミニウム及び酸化ケイ素を含有する複合金属酸化物、糊剤及び非イオン系界面活性剤を含有し、かつpHが9〜13の範囲であることを特徴とする合成繊維起毛布用抜染剤を用いて、合成繊維起毛布を加工する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成繊維起毛布の表面を、着色又は抜染加工し、その部分に重複する形で変色や消色することなく、凹状にエッチング加工を行うことができる合成繊維起毛布用着色剤及び抜染剤、並びにそれらを用いた加工方法及びその方法により加工した合成繊維起毛布に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、合成繊維起毛布の表面に、凹部を形成すると同時に凹部を着色する方法として、分散染料とアルカリ性物質を含有する捺染剤を用いる方法が提案されている。(例えば、特許文献1〜3参照。)。しかしながら、近年の趣向の多様化にともない、より新しい意匠を持つ起毛布が求められている。
【0003】
例えば、合成繊維起毛布からなるカーシートの意匠は、より新規性を求めるデザイナーの要望に応えるため、着色、抜染、凹部を形成するエッチング、立体光輝性、艶などを複雑に組み合わせたものになってきている。その中で、合成繊維起毛布への意匠表現は、樹脂プリントとエンボス、着色とエッチング併用、抜染とエッチングの併用などがある。このうち、着色とエッチングの併用又は抜染とエッチングの併用において、従来の着色剤又は抜染剤及びエッチング剤を用いて合成繊維起毛布を加工した場合、着色又は抜染部分とエッチング部分との境界部分(以下、「型際」という。)で、着色にじみ、変色又は消色が発生する問題があった。また、着色又は抜染部分とエッチング部分との重複部分では、本来なら合成繊維起毛布の地染めの色で凹部に加工する必要があるが、着色剤による着色が残ったり、地染めの色が変色又は消色したりする問題あった。そこで、この問題を解決するため、着色又は抜染部分とエッチング部分をある程度離す必要があり、通常は着色又は抜染部分とエッチング部分との間に2〜3mmのクリアランスを設けていた。
【0004】
上記のように、着色又は抜染部分とエッチング部分を離した状態でしか加工できないのではデザインの自由度が低く、より新しい意匠デザインの要求に応えることができない。そこで、着色又は抜染部分とエッチング部分とを重複した状態で加工が可能な手法が求められている。
【特許文献1】特開昭56−123487号公報
【特許文献2】特開2000−96439号公報
【特許文献3】特開2002−69318号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、合成繊維起毛布を加工した場合、型際で変色又は消色が発生する問題がなく、着色又は抜染部分とエッチング部分との重複部分では、合成繊維起毛布の地染めの色が、着色剤によって着色されたり、地染めの色が変色又は消色したりしない合成繊維起毛布用着色剤及び抜染剤、並びにそれらを用いた加工方法及び当該方法により加工した合成繊維起毛布を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記の課題を解決するために、鋭意研究を重ねた結果、酸化アルミニウム及び酸化ケイ素を含有する複合金属酸化物を含有する複合金属酸化物及び糊剤を含有し、かつpHが9〜13の範囲である合成繊維起毛布用加工剤を着色剤又は抜染剤として、合成繊維起毛布上に塗布し、さらに糊剤、アルカリ性物質及びベントナイトを含有するエッチング剤を前記合成繊維起毛布用加工剤の塗布部分の一部と重複するように塗布することで、型際で変色又は消色が発生することなく、前記合成繊維起毛布用加工剤のみを塗布した部分は着色又は抜染加工ができ、着色又は抜染部分とエッチング部分との重複部分では、変色又は消色することなく合成繊維起毛布の地染めの色を保持したまま凹部が形成できることを見出した。
【0007】
すなわち、本発明は、酸化アルミニウム及び酸化ケイ素を含有する複合金属酸化物を含有する複合金属酸化物、糊剤、分散染料及びシリコーンオイルを含有し、かつpHが9〜13の範囲である合成繊維起毛布用着色剤と、前記複合金属酸化物、糊剤及び非イオン系界面活性剤を含有し、かつpHが9〜13の範囲である合成繊維起毛布用抜染剤とを提供するものである。
【0008】
また、前記合成繊維起毛布用着色剤又は抜染剤を合成繊維起毛布上に塗布する第1工程と、次いで糊剤、アルカリ性物質及びベントナイトを含有するエッチング剤を、前記合成繊維起毛布用加工剤の塗布部分の一部と重複するように塗布する第2工程とを含むことを特徴とする合成繊維起毛布の加工方法及びその加工方法により加工された成繊維起毛布を提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の合成繊維起毛布用着色剤又は抜染剤を用いると、着色又は抜染部分とエッチング部分とを離すことなく合成繊維起毛布を加工することができる。また、着色又は抜染部分とエッチング部分の境界部分である型際で変色又は消色を生じず、かつ合成繊維起毛布用加工剤(着色剤又は抜染剤)の塗布部とエッチング剤の塗布部とが重複し、加工後に凹部となる部分においても変色又は消色を生じない。
【0010】
よって、本発明の合成繊維起毛布用着色剤又は抜染剤を用いて合成繊維起毛布を加工すると、これまでにない斬新な意匠性を持つ合成繊維起毛布が得られる。したがって、本発明の合成繊維起毛布用着色剤又は抜染剤を用いて加工された合成繊維起毛布は、衣料、家具、車両内装材(カーシートなど)等の意匠性が求められる用途に好適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0012】
本発明の合成繊維起毛布用着色剤(以下、「着色剤(A)」という。)及び合成繊維起毛布用抜染剤(以下、「抜染剤(B)」という。)に用いる複合金属酸化物は、酸化アルミニウム及び酸化ケイ素を含有する複合金属酸化物を含有する複合金属酸化物である。当該複合金属酸化物は、酸化アルミニウム及び酸化ケイ素を含有していれば、酸化ナトリウム、酸化カリウム、酸化マグネシウム、酸化鉄、酸化カルシウム等の他の金属酸化物を含有していても構わない。また、当該複合金属酸化物は、含水物でも無水物でも構わない。
【0013】
前記複合金属酸化物としては、例えば、酸化ナトリウム、酸化カリウム、酸化アルミニウム及び酸化ケイ素を含有するナトリウムカリウムアルミニウムシリケート(別名ネフェリンサイナイト)、酸化ナトリウム、酸化アルミニウム及び酸化ケイ素を含有するナトリウムアルミニウムシリケート等の合成複合金属酸化物;酸化アルミニウム及び酸化ケイ素を主成分として含有するベントナイト等の天然複合金属酸化物などが挙げられる。
【0014】
前記複合金属酸化物の中でも、ナトリウムカリウムアルミニウムシリケートは、合成繊維起毛布用加工剤とエッチング剤との重複部分及び型際部分での変色が抑制できるため好ましい。また、合成繊維起毛布用加工剤の水を除いた不揮発分中の複合金属酸化物ナトリウムカリウムアルミニウムシリケートの配合比率は、5〜30質量%が好ましく、10〜25質量%がより好ましい。
【0015】
前記着色剤(A)及び抜染剤(B)に用いる糊剤は、塗工適性を付与するために、適度な粘度を維持し、かつ水洗の際に余剰のこれらの捺染剤を容易に起毛繊維から取り除けるようにするため配合する。このような糊剤としては、例えば、カルボキシルメチルセルロースナトリウム、プロピルオキシセルロース、アルギン酸エステル、グアーガムエチレンオキサイド付加物、エチルセルロース、メチルセルロース、ブリティッシュガム等の加工糊剤;ポリアクリル酸塩、ポリアクリル酸誘導体、ポリ酢酸ビニル、アクリル酸エステル−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリウレタン、ポリマレイン酸共重合体塩、非イオン界面活性剤等の合成糊剤;デンプン、可溶性デンプン、水溶性デンプン、水溶性デンプン誘導体等のデンプン類などの各種糊剤が挙げられる。これらの糊剤は、単独で用いることも、2種類以上を併用することもできる。着色剤(A)又は抜染剤(B)の水を除いた不揮発分中の糊剤の配合比率は、1〜20質量%が好ましく、5〜15質量%がより好ましく、7〜12質量%がさらに好ましい。
【0016】
また、上記の糊剤の中でも、カルボキシルメチルセルロースナトリウムは、着色剤(A)又は抜染剤(B)を合成繊維起毛布に塗布した後、水洗の際に余剰のこれらを容易に起毛繊維から取り除けるので好ましい。
【0017】
また、前記着色剤(A)及び抜染剤(B)は、pHが9〜13の範囲であるが、10〜13の範囲がより好ましい。pHをこの範囲とすることで、型際の変色又は消色を防止することができる。また、この範囲のpHとするため、水に溶解するとアルカリ性を示す金属塩を着色剤(A)又は抜染剤(B)に配合する。このような金属塩としては、例えば、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム等が挙げられる。また、この金属塩を2種以上併用しても構わない。pHを調整するために用いるこれらの金属塩の合計の配合比率は、合成繊維起毛布用加工剤の水を除いた不揮発分中、1〜70質量%が好ましく、10〜60質量%がより好ましく、20〜55質量%がさらに好ましい。
【0018】
また、着色剤(A)には、複合金属酸化物、糊剤の他に分散染料及びシリコーンオイルを配合する。この分散染料は特に限定されるものではないが、中でも高い耐光性と耐アルカリ堅牢性を有するアンスラキノン系染料が好ましい。このアンスラキノン系染料としては、例えば、C.I.ディスパース・イエロー51、C.I.ディスパース・レッド91、C.I.ディスパース・レッド92、C.I.ディスパース・ブルー60、C.I.ディスパース・ブルー158等が挙げられる。これらの分散染料は、単独で用いることも、2種類以上を併用することもできる。また、着色剤(A)の水を除いた不揮発分中の分散染料の配合比率は、目的とする色によって異なるが、通常は0.05〜20質量%が好ましい。
【0019】
着色剤(A)には、上記の分散染料に加え、シリコーンオイルを配合することで、型際の変色又は消色を防止することができる。このシリコーンオイルとしては、直鎖状ポリオルガノシロキサンであっても、分岐状ポリオルガノシロキサンであっても良く、例えば、ポリジメチルシロキサン等のポリアルキルシロキサン、ポリフェニルメチルシロキサンなどが挙げられる。また、エチレンオキサイド(EO)変性、プロピレンオキサイド(PO)変性、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドの両方での(EO/PO)変性等のポリエーテル変性されたポリオルガノシロキサンも用いることができる。これらのシリコーンオイルの中でも、ポリジメチルシロキサンが好ましい。また、シリコーンオイルの動粘度は、10〜10000mm/sの範囲が好ましく、10〜1000mm/sの範囲がより好ましい。シリコーンオイルの動粘度がこの範囲であれば、150℃〜160℃の比較的低い温度での熱蒸気処理においても、十分に高い着色濃度が得られる。なお、この動粘度は、JIS Z 8803−1991に記載の方法で、ウベローデ粘度計を用いて測定したものである。
【0020】
また、着色剤(A)にシリコーンオイルを配合する際には、界面活性剤を用いて水中で乳化して調製したシリコーンオイル乳化液として用いると、より高い着色濃度が得られるので好ましい。このシリコーンオイルを水中で乳化する際に用いる界面活性剤としては、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルを主成分としたものが挙げられる。この界面活性剤の使用量としては、シリコーンオイル100質量部に対して、1〜20質量部の範囲が好ましく、5〜15質量部の範囲がより好ましい。また、シリコーンオイルを水中で乳化する際に、前記分散染料を加えて乳化しても構わない。
【0021】
シリコーンオイルの配合量は、前記分散染料100質量部に対して、10〜500質量部の範囲が好ましく、50〜300質量部の範囲がより好ましく、80〜120質量部の範囲がさらに好ましい。シリコーンオイルの配合量がこの範囲であれば、150℃〜160℃の比較的低い温度での熱蒸気処理においても、十分に高い着色濃度が得られ、着色剤(B)の粘度も作業に適したものとなる。
【0022】
さらに、合成繊維起毛布の地染めされた色を抜染して、より鮮明な色を着色する場合には、前記着色剤(A)に非イオン系界面活性剤を配合することが好ましい。この非イオン系界面活性剤としては、例えば、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ブチルジグリコール、ブチルトリグリコール、ヘキシルジグリコール、ベンジルジグリコール、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンフェニルエーテル等が挙げられる。
【0023】
これらの中でも、ポリオキシアルキレンフェニルエーテルは高い抜染性を有するので好ましい。ポリオキシアルキレンフェニルエーテルの具体例として、ポリオキシプロピレンビスフェノールAエーテルが挙げられる。また、ポリオキシアルキレンフェニルエーテルとポリエチレングリコールとの併用がより好ましい。抜染剤(B)の水を除いた不揮発分中の非イオン系界面活性剤の配合比率としては、15〜45質量%が好ましく、20〜40質量%がより好ましい。さらに、ポリオキシアルキレンフェニルエーテルとポリエチレングリコールとを併用する場合は、ポリオキシアルキレンフェニルエーテル/ポリエチレングリコールとの質量基準の配合比が、1〜50/99〜50が好ましく、5〜45/95〜55がより好ましい。
【0024】
抜染剤(B)に合成繊維起毛布の地染めされた色を抜染する効果を付与する非イオン系界面活性剤は、上記の着色剤(A)と同様のものを用いることができる。また、抜染剤(B)においてもポリオキシアルキレンフェニルエーテルとポリエチレングリコールとの併用がより好ましく、好ましい配合比率及びポリオキシアルキレンフェニルエーテル/ポリエチレングリコールとの質量基準の配合比も同様である。
【0025】
本発明の合成繊維起毛布の加工方法に用いるエッチング剤(以下、「エッチング剤(C)」という。)は、糊剤、アルカリ性物質及びベントナイトを含有する。この糊剤は、着色剤(A)又は抜染剤(B)に用いる糊剤と同様のものを用いることができるが、中でもデンプンが好ましい。デンプンを用いると、アルカリ性物質を高濃度とした場合でも、高い粘度、良好な粘性が得られる。
【0026】
前記エッチング剤(C)に用いるアルカリ性物質としては、強アルカリ性のものが好ましく、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム等の無機アルカリ物質;アンモニア水、炭酸グアニジン等の有機アルカリ物質などが挙げられる。これらの中でも、エッチング剤(C)の塗布後に行う熱蒸気処理に耐えられる耐熱性を有する無機アルカリ物質が好ましい。また、無機アルカリ物質の中でも、水酸化ナトリウムはエッチング効果が高いので特に好ましい。エッチング剤(C)中のアルカリ性物質の配合比率としては、15〜25質量%が好ましく、18〜23質量%がより好ましい。アルカリ性物質の配合量がこの範囲であれば、合成繊維起毛布の表面を良好な凹状にエッチングできる。
【0027】
前記アルカリ性物質として水酸化ナトリウムを用いる場合、水溶液で用いることが好ましい。その濃度は、特に限定されるものではないが、通常は30〜50質量%で用いるのが好ましい。
【0028】
また、前記エッチング剤(C)にベントナイトを配合すると、起毛繊維の下部へのアルカリ性物質の浸透を適度に抑制できるため、起毛繊維をすべて加水分解して基布が露出することがなく、起毛繊維を適度に残して、輪郭がはっきりした凹状にエッチングすることができる。エッチング剤(C)中のベントナイトの配合比率としては、1〜10質量%が好ましく、4〜8質量%がより好ましい。
【0029】
前記着色剤(A)、抜染剤(B)及びエッチング剤(C)には、必要に応じて、界面活性剤、還元防止剤、金属イオン封鎖剤、蛍光増白剤、防腐剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤等の添加剤などを配合することもできる。
【0030】
本発明で用いる前記着色剤(A)、抜染剤(B)及びエッチング剤(C)の調製方法としては、例えば、以下の方法が挙げられる。
【0031】
(1)着色剤(A)の調製方法
糊剤を水に溶解又は分散し、その溶液又は分散液に複合金属酸化物、非イオン系界面活性剤等を添加して均一に混合して元糊として調製する。次いで、この元糊に、分散染料及びシリコーンオイル乳化液を均一に混合した分散染料液、pHを調整するため炭酸ナトリウム等を加え、必要に応じ水を追加した後、均一に混合して着色剤(A)を得る。
【0032】
(2)抜染剤(B)の調製方法
抜染剤(B)は、着色剤(A)の調製で用いた分散染料液を配合しないこと以外は、着色剤(A)の調製方法と同様にして得る。
【0033】
(3)エッチング剤(C)の調製方法
糊剤及びベントナイトを均一に混合して元糊として調製する。次いで、この元糊に、アルカリ性物質の水溶液を加え、均一に混合してエッチング剤(C)を得る。
【0034】
また、本発明の合成繊維起毛布の加工方法としては、例えば、下記の1〜5の工程による方法が挙げられる。
【0035】
(第1工程)
着色剤(A)又は抜染剤(B)を合成繊維起毛布上に、ローラー捺染、オート捺染、手捺染等の方法で塗布する。
【0036】
(第2工程)
次いで、第1工程で塗布した着色剤(A)又は抜染剤(B)の湿潤状態の塗布面(ウェット状態)の一部と重複するように塗布するエッチング剤(C)をローラー捺染、オート捺染、手捺染等の方法で塗布する。なお、着色剤(A)又は抜染剤(B)を乾燥した後、エッチング剤(C)を塗布する方法でも構わない。
【0037】
上記の第1工程及び第2工程で、着色剤(A)又は抜染剤(B)と、エッチング剤(C)とを合成繊維起毛布上に塗布した後、下記の第3工程による後処理を行う。
【0038】
(第3工程)
3−1.乾燥工程
上記で着色剤(A)又は抜染剤(B)、及びエッチング剤(C)を塗布した合成繊維起毛布を、室温で乾燥後、100℃〜130℃で2〜3分間乾燥する。
【0039】
3−2.熱蒸気処理工程
上記で乾燥した合成繊維起毛布を、HTスチーマーを用いて、温度140℃〜180℃、蒸気量50〜100%の条件で5〜10分間の熱蒸気処理を行い、染料を発色させる。
【0040】
3−3.還元洗浄工程
上記で熱蒸気処理を行った合成繊維起毛布を、ハイドロサルファイトナトリウム、合成洗剤及び水酸化ナトリウムの水溶液を用いて、80〜90℃に保ちながら洗浄する。
【0041】
3−4.洗浄乾燥工程
上記で還元洗浄した合成繊維起毛布を、水で洗浄後、室温で風乾させるか、合成繊維起毛布を構成する繊維が溶解しない程度の温度で加熱乾燥する。
【0042】
上記の第1工程から第3工程を経て、合成繊維起毛布の表面の着色剤(A)又は抜染剤(B)の塗布した部分で、エッチング剤(C)の塗布した部分と重複しない部分は着色又は抜染することができ、エッチング剤(C)の塗布した部分と重複する部分は、着色又は抜染されずに合成繊維起毛布の地染め色を維持したまま凹状にエッチングすることができる。
【0043】
本発明で用いる合成繊維起毛布としては、アルカリ性物質を含有するエッチング剤(C)により、エッチングされる必要があるため、アルカリ性物質により加水分解を受けやすい合成繊維製のものが好ましい。このような合成繊維としては、例えば、ポリエステル繊維、カチオンダイアブルポリエステル繊維等が挙げられる。このポリエステル繊維の中でも、ポリエチレンテレフタレート繊維はエッチング剤(C)により、エッチングされ易いので好適である。また、本発明で用いる合成繊維起毛布は、トリコット生地、モケット生地が好ましく、その起毛繊維の長さ(毛足の長さ)は、表面を加工し易いことから、0.5〜2mmが好ましく、1〜1.5mmがより好ましい。
【0044】
本発明の合成繊維起毛布用着色剤又は抜染剤を用いて加工した合成繊維起毛布は、図1のように加工される。合成繊維起毛布aの表面の着色剤(A)又は抜染剤(B)の塗布部でエッチング剤(C)の塗布部と重複しない部分は着色又は抜染される(着色剤又は抜染剤の塗布部b)。また、着色剤(A)又は抜染剤(B)の塗布部とエッチング剤(C)の塗布部との重複部分及びエッチング剤(C)のみの塗布部は、合成繊維起毛布の地染め色のまま凹状にエッチングされる(エッチング剤塗布部d)。さらに、着色剤又は抜染剤の塗布部とエッチング剤塗布部との型際部分cでは、変色又は消色を生じることはない。
【0045】
また、エッチング剤塗布部dに残す合成繊維起毛布の起毛繊維の長さ(毛足の長さ)は、元の起毛繊維の長さの30〜70%が好ましく、40〜60%がより好ましい。
【実施例】
【0046】
以下、実施例及び比較例を用いて本発明をさらに詳細に説明する。まず、シリコーンオイル乳化液、分散染料液、着色剤又は抜染剤用元糊及びエッチング剤を以下の手順で調製した。
【0047】
(調製例1:シリコーンオイル乳化液の調製)
シリコーンオイル(信越化学工業株式会社製「シリコーンオイルKF96−100cs」、ポリジメチルシロキサン、動粘度:100mm/s)50質量部、界面活性剤(三洋化成工業株式会社製「セロポール(登録商標)2320C」、主成分:ポリオキシアルキレンアルキルエーテル)4.5質量部及びイオン交換水45.5質量部を混合した後、分散撹拌機を用いて乳化し、シリコーンオイル乳化液を調製した。
【0048】
(調製例2:分散染料液の調製)
青色分散染料(ダイスタージャパン株式会社製「Miketon(登録商標) P Blue TGSF E/C」)5質量部、黄色分散染料(ダイスタージャパン株式会社製「Miketon(登録商標) P Yellow HLS」)5質量部、赤色分散染料(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製「TERATOP(登録商標) PINK 2GLA」)5質量部、調製例1で得たシリコーンオイル乳化液30質量部、及びイオン交換水55質量部を均一に混合して分散染料液を調製した。
【0049】
(調製例3:着色剤又は抜染剤用元糊の調製)
カルボキシメチルセルロースナトリウム(第一工業製薬株式会社製「ファインガムHE−SS」)4質量部をイオン交換水76質量部に溶解した後、その水溶液にポリエチレングリコール(日本油脂株式会社製「PEG300」)2質量部、ポリオキシアルキレンフェニルエーテル(ポリオキシプロピレンビスフェノールAエーテル;三洋化成工業株式会社製「ニューポール(登録商標)BP−5P」)10質量部及びナトリウムカリウムアルミニウムシリケート(白石工業株式会社製「ミネックス8F」)8質量部を加えて均一に混合して、着色剤又は抜染剤用元糊を調製した。
【0050】
(調製例4:エッチング剤の調製)
デンプン(三和澱粉工業株式会社製「ワキシアルファY」)4.5質量部、ベントナイト(水沢化学株式会社製「ベンクレイ(登録商標)MK−101」)14質量部及びイオン交換水81.5質量部を均一に混合して、エッチング剤元糊を調製した。このエッチング剤元糊45質量部と38質量%水酸化ナトリウム水溶液55質量部とを均一に混合して、エッチング剤を調製した。
【0051】
次いで、以下の手順で着色剤(1)〜(14)及び抜染剤(1)を調製した。
【0052】
(調製例5:着色剤(1)の調製)
調製例3で得た着色剤用元糊70質量部、調製例2で得た分散染料液10質量部、炭酸ナトリウム(キシダ化学株式会社製)5質量部及びイオン交換水15質量部を均一に混合して、着色剤(1)を調製した。
【0053】
(調製例6:着色剤(2)の調製)
調製例3で得た着色剤用元糊70質量部、調製例2で得た分散染料液10質量部、炭酸ナトリウム(キシダ化学株式会社製)10質量部及びイオン交換水10質量部を均一に混合して、着色剤(2)を調製した。
【0054】
(調製例7:着色剤(3)の調製)
調製例3で得た着色剤用元糊70質量部、調製例2で得た分散染料液10質量部及び炭酸ナトリウム(キシダ化学株式会社製)20質量部を均一に混合して、着色剤(3)を調製した。
【0055】
(調製例8:着色剤(4)の調製)
調製例3で用いたナトリウムカリウムアルミニウムシリケートの代わりにナトリウムアルミニウムシリケート(デグサジャパン株式会社製「SIPERNAT(登録商標)820A」)を用いた以外は調製例3と同様に行い、着色剤用元糊を調製した。この元糊を用いた以外は調製例6と同様に行い、着色剤(4)を調製した。
【0056】
(調製例9:着色剤(5)の調製)
調製例3で用いたナトリウムカリウムアルミニウムシリケートの代わりにベントナイト(水沢化学株式会社製「ベンクレイ(登録商標)MK−101」)を用いた以外は調製例3と同様に行い、着色剤用元糊を調製した。この元糊を用いた以外は調製例6と同様に行い、着色剤(5)を調製した。
【0057】
(調製例10:着色剤(6)の調製)
調製例3で用いたカルボキシメチルセルロースナトリウムの溶解に用いたイオン交換水76質量部を77質量部に、ナトリウムカリウムアルミニウムシリケート8質量部を7質量部に変更した以外は調製例3と同様に行い、着色剤用元糊を調製した。この元糊を用いた以外は調製例6と同様に行い、着色剤(6)を調製した。
【0058】
(調製例11:着色剤(7)の調製)
調製例3で用いたカルボキシメチルセルロースナトリウムの溶解に用いたイオン交換水76質量部を77質量部に、ポリエチレングリコール2質量部を1質量部に変更した以外は調製例3と同様に行い、着色剤用元糊を調製した。この元糊を用いた以外は調製例6と同様に行い、着色剤(7)を調製した。
【0059】
(調製例12:着色剤(8)の調製)
調製例3で用いたカルボキシメチルセルロースナトリウムの溶解に用いたイオン交換水76質量部を71.5質量部に、ポリエチレングリコール2質量部を6.5質量部に変更した以外は調製例3と同様に行い、着色剤用元糊を調製した。この元糊を用いて、炭酸ナトリウム(キシダ化学株式会社製)10質量部を炭酸ナトリウム(キシダ化学株式会社製)6.7質量部及び炭酸水素ナトリウム(キシダ化学株式会社製)3.3質量部に変更した以外は調製例6と同様に行い、着色剤(8)を調製した。
【0060】
(調製例13:着色剤(9)の調製)
調製例3で用いたカルボキシメチルセルロースナトリウムの溶解に用いたイオン交換水76質量部を78質量部に変更し、ポリエチレングリコールを配合しなかった以外は調製例3と同様に行い、着色剤用元糊を調製した。この元糊を用いた以外は調製例6と同様に行い、着色剤(9)を調製した。
【0061】
(調製例14:着色剤(10)の調製)
調製例3で用いたカルボキシメチルセルロースナトリウム4質量部を3質量部に、カルボキシメチルセルロースナトリウムの溶解に用いたイオン交換水76質量部を77質量部に変更した以外は調製例3と同様に行い、着色剤用元糊を調製した。この元糊を用いた以外は調製例5と同様に行い、着色剤(10)を調製した。
【0062】
(調製例15:着色剤(11)の調製)
調製例3で用いたカルボキシメチルセルロースナトリウムの溶解に用いたイオン交換水76質量部を84質量部に変更し、ナトリウムカリウムアルミニウムシリケートを配合しなかった以外は調製例3と同様に行い、着色剤用元糊を調製した。この元糊を用いた以外は調製例6と同様に行い、着色剤(11)を調製した。
【0063】
(調製例16:着色剤(12)の調製)
調製例3で得た着色剤用元糊70質量部、調製例2で得た分散染料液10質量部、炭酸水素ナトリウム(キシダ化学株式会社製)10質量部及びイオン交換水10質量部を均一に混合して、着色剤(12)を調製した。
【0064】
(調製例17:着色剤(13)の調製)
調製例3で得た着色剤用元糊70質量部、調製例2で得た分散染料液10質量部及びイオン交換水20質量部を均一に混合して、着色剤(13)を調製した。
【0065】
(調製例18:着色剤(14)の調製)
調製例2において、調製例1で得たシリコーンオイル乳化液を配合せず、イオン交換水55質量部を85質量部に変更した以外は調製例2と同様にして、分散染料液を調製した。この分散染料液を用いた以外は調製例5と同様に行い、着色剤(14)を調製した。
【0066】
(調製例19:抜染剤(1)の調製)
調製例3で得た抜染剤用元糊70質量部、炭酸ナトリウム(キシダ化学株式会社製)10質量部及びイオン交換水20質量部を均一に混合して、抜染剤(1)を調製した。
【0067】
上記で得られた着色剤(1)〜(14)及び抜染剤(1)の配合組成を表1〜3に示す。なお、配合組成表の各成分の質量部は、小数点以下2桁を四捨五入している。
【0068】
(着色剤及び抜染剤のpHの測定)
上記で得られた着色剤(1)〜(14)及び抜染剤(1)のpHをガラス電極法のpHメーター(株式会社堀場製作所製「pH Meter F−14」)を用いて、25℃の雰囲気下で測定した。測定した各着色剤及び抜染剤のpHは表1〜3に示す。
【0069】
(実施例1)
着色剤(1)を135メッシュのフラットスクリーン、φ11.5mmのチンマーバーで、ベージュ色に地染めされたポリエチレンテレフタレート繊維からなる起毛布の表面に塗布し、そのまま乾燥せずに連続してエッチング剤を60メッシュのフラットスクリーン、φ15mmのチンマーバーで、着色剤を塗布した面の一部に重なるようにウェットオンウェットで塗布した。この着色剤(1)及びエッチング剤を塗布した起毛布を100℃のパッドドライヤー(辻井染機工業株式会社製「SP−300SR」)で2分間乾燥した。
【0070】
次いで、乾燥した起毛布を、HTスチーマー(昭和機械工業株式会社製「HTS−71」)を用いて、温度175℃、蒸気量90%以上の条件で8分間の熱蒸気処理を行った。この熱蒸気処理した起毛布を、イオン交換水1リットルにハイドロサルファイトナトリウム2g、合成洗剤2g、及び水酸化ナトリウム2gを加えた溶液を用いて80℃で還元洗浄し、水洗した後、乾燥させて、評価用起毛布を得た。
【0071】
(実施例2)
実施例1で用いた着色剤(1)に代えて着色剤(2)を用いた以外は実施例1と同様にして、評価用起毛布を得た。
【0072】
(実施例3)
実施例1で用いた着色剤(1)に代えて着色剤(3)を用いた以外は実施例1と同様にして、評価用起毛布を得た。
【0073】
(実施例4)
実施例1で用いた着色剤(1)に代えて着色剤(4)を用いた以外は実施例1と同様にして、評価用起毛布を得た。
【0074】
(実施例5)
実施例1で用いた着色剤(1)に代えて着色剤(5)を用いた以外は実施例1と同様にして、評価用起毛布を得た。
【0075】
(実施例6)
実施例1で用いた着色剤(1)に代えて着色剤(6)を用いた以外は実施例1と同様にして、評価用起毛布を得た。
【0076】
(実施例7)
実施例1で用いた着色剤(1)に代えて着色剤(7)を用いた以外は実施例1と同様にして、評価用起毛布を得た。
【0077】
(実施例8)
実施例1で用いた着色剤(1)に代えて着色剤(8)を用いた以外は実施例1と同様にして、評価用起毛布を得た。
【0078】
(実施例9)
実施例1で用いた着色剤(1)に代えて着色剤(9)を用いた以外は実施例1と同様にして、評価用起毛布を得た。
【0079】
(実施例10)
実施例1で用いた着色剤(1)に代えて着色剤(10)を用いた以外は実施例1と同様にして、評価用起毛布を得た。
【0080】
(実施例11)
実施例1で用いた着色剤(1)に代えて抜染剤(1)を用いた以外は実施例1と同様にして、評価用起毛布を得た。
【0081】
(実施例12)
着色剤(1)を実施例1と同様の条件で塗布した後、100℃のパッドドライヤー(辻井染機工業株式会社製「SP−300SR」)で2分間乾燥した。次いで、エッチング剤を実施例1と同様に着色剤を塗布した面の一部に重なるようにウェットオンドライで塗布した。それ以降の手順を実施例1と同様にして、評価用起毛布を得た。
【0082】
(比較例1)
実施例1で用いた着色剤(1)に代えて着色剤(11)を用いた以外は実施例1と同様にして、評価用起毛布を得た。
【0083】
(比較例2)
実施例1で用いた着色剤(1)に代えて着色剤(12)を用いた以外は実施例1と同様にして、評価用起毛布を得た。
【0084】
(比較例3)
実施例1で用いた着色剤(1)に代えて着色剤(13)を用いた以外は実施例1と同様にして、評価用起毛布を得た。
【0085】
(比較例4)
実施例1で用いた着色剤(1)に代えて着色剤(14)を用いた以外は実施例1と同様にして、評価用起毛布を得た。
【0086】
上記の実施例1〜12及び比較例1〜4で得られた評価用起毛布について、以下の評価を行った。
【0087】
(エッチング性の評価)
エッチング剤を塗布した部分の状態を目視で観察し、形成された凹部の状態を以下の基準1〜3によって判定して、エッチング性を評価した。
3:型際がシャープに形成されており、エッチング面の凹部が均一である。
2:型際がややシャープさに欠けるが、エッチング面の凹部が均一である。
1:エッチング面の凹部が不均一で、凹部の深さも不十分である。
【0088】
(重複部分の変色)
着色剤又は抜染剤の塗布面とエッチング剤の塗布面とが重複する部分の状態を目視で観察し、その部分の変色状態を以下の基準1〜4によって判定して、重複部の変色について評価した。
4:重複部分がエッチング剤のみを塗布した面と同様に起毛布の地染め色そのままである。
3:重複部分のみ起毛布の地染め色がわずかに消色している。
2:重複部分の起毛布の地染め色がやや変色(黄変)又は着色剤の色が残る。
1:重複部分の起毛布の地染め色が変色(黄変)している。
【0089】
(型際部分の変色)
着色剤又は抜染剤の塗布部とエッチング剤の塗布部との型際部分の状態を目視で観察し、その部分の変色状態を以下の基準1〜5によって判定して、重複部の変色について評価した。
5:型際部分に変色がない。
4:型際部分がわずか消色している。
3:型際部分がやや黄変している。
2:型際部分が黄変又は橙変している。
1:型際部分の着色剤による着色又は起毛布の地染め色が消色している。
【0090】
(総合評価)
上記の評価結果の数値の合計を総合評価の結果とした。
【0091】
実施例1〜12及び比較例1〜4についての上記の評価結果を表1〜3に示す。
【0092】
【表1】

【0093】
【表2】

【0094】
【表3】

【0095】
表1〜3中の「W on W」は、合成繊維起毛布用着色剤又は抜染剤を乾燥させずに、その湿潤状態の塗布面にエッチング剤(C)を塗布したこと(ウェット・オン・ウェット)を示し、「W on D」は、合成繊維起毛布用着色剤又は抜染剤を乾燥した後、エッチング剤(C)を塗布したこと(ウェット・オン・ドライ)を示す。
【0096】
表1及び2に示した実施例1〜12の結果から、本発明の合成繊維起毛布用着色剤又は抜染剤を用いて加工した合成繊維起毛布は、合成繊維起毛布用着色剤又は抜染剤の塗布部とエッチング剤の塗布部とが重複し、加工後に凹部となる部分(重複部分)においても変色又は消色を生じず、かつ着色又は抜染部分とエッチング部分の境界部分(型際部分)で変色又は消色を生じないことが分かった。したがって、本発明の合成繊維起毛布用加工剤を用いることで、着色又は抜染部分とエッチング部分とを離すことなく合成繊維起毛布を加工することができ、新たな意匠性を持つ合成繊維起毛布が得られることが確認できた。
【0097】
表3に示した比較例1〜4の結果から、以下のことが分かった。
【0098】
比較例1は、複合金属酸化物を配合しなかった例である。この比較例1ではエッチング面の凹部が不均一で、凹部の深さも不十分であり、重複部分の起毛布の地染め色が黄変し、さらに型際部分で黄変を生じる問題があることが分かった。
【0099】
比較例2及び3は、合成繊維起毛布用加工剤のpHが9未満の例である。この比較例2及び3では、重複部分の起毛布の地染め色が黄変し、さらに型際部分で黄変を生じる問題があることが分かった。
【0100】
比較例4は、着色剤にシリコーンオイルを配合しなかった例である。この比較例4では重複部分が起毛布の地染め色が黄変し、さらに型際部分で着色剤による着色部分が消色する問題があることが分かった。
【図面の簡単な説明】
【0101】
【図1】本発明の表面加工剤を用いて加工した合成繊維起毛布の斜視図である。
【符号の説明】
【0102】
a 合成繊維起毛布
b 着色剤又は抜染剤の塗布部
c 着色剤又は抜染剤の塗布部とエッチング剤塗布部との型際部分
d エッチング剤塗布部
e 合成繊維起毛布の基材部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化アルミニウム及び酸化ケイ素を含有する複合金属酸化物、糊剤、分散染料及びシリコーンオイルを含有し、かつpHが9〜13の範囲であることを特徴とする合成繊維起毛布用着色剤。
【請求項2】
前記複合金属酸化物、糊剤、分散染料及びシリコーンオイルに加え、非イオン系界面活性剤を含有する請求項1記載の合成繊維起毛布用着色剤。
【請求項3】
酸化アルミニウム及び酸化ケイ素を含有する複合金属酸化物、糊剤及び非イオン系界面活性剤を含有し、かつpHが9〜13の範囲であることを特徴とする合成繊維起毛布用抜染剤。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項記載の合成繊維起毛布用着色剤又は合成繊維起毛布用抜染剤を合成繊維起毛布上に塗布する第1工程と、次いで糊剤、アルカリ性物質及びベントナイトを含有するエッチング剤を、前記合成繊維起毛布用加工剤の塗布部分の一部と重複するように塗布する第2工程とを含むことを特徴とする合成繊維起毛布の加工方法。
【請求項5】
請求項4記載の合成繊維起毛布の加工方法により加工されたことを特徴とする合成繊維起毛布。

【図1】
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【公開番号】特開2009−41139(P2009−41139A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−207829(P2007−207829)
【出願日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【出願人】(000002886)DIC株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】