説明

合板および合板を製造するための方法

本発明は、少なくとも2層の木材ベニア層と少なくとも1層の接着剤層とを含む合板に関し、それによってその接着剤層はトリアジン化合物(T)、ホルムアルデヒド(F)および場合によっては尿素を含む樹脂組成物を含み、ここでその接着剤層のモルF/(NH比は0.70〜1.10の間にあり、その接着剤層のモルF/T比は1.0〜3.5の間にある。本発明はさらに合板を製造するための方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、少なくとも2層の木材ベニア層と少なくとも1層の接着剤層とを含む合板に関し、ここでその接着剤層には、(フリーの形態および/または反応した形態での)トリアジン化合物(T)、ホルムアルデヒド(F)および場合によっては尿素を含む樹脂組成を含む。
【0002】
かかる合板は、通常はトリアジン化合物が実質的にメラミン(M)からなり、テリー・セラーズ・ジュニア(Terry Sellers,Jr.)『プライウッド・アンド・アドヘーシブ・テクノロジー(Plywood and Adhesive Technology)』(1985年、マーセル・デッカー・インコーポレーテッド(Marcel Dekker Inc.)、米国ニューヨーク州ニューヨーク(New York,NY,USA))からも公知であり、また商業的規模で実用化されている。
【0003】
公知の合板の欠点は、最終製品の機械的性質たとえば剪断強さを現行の基準に適合するよう充分に良好なものとするために、その接着剤層が必ず大量のホルムアルデヒドを含んでいて、その結果、接着剤層におけるモルF/(NH比が1.2以上となっていることである。かかる基準の一例を挙げれば、日本農林規格JAS987−2000、補遺(2003年2月27日)がある。接着剤層の中の上記の大量のホルムアルデヒドが次いで、高いホルムアルデヒド放散(F−放散)をもたらす可能性があるが、それは健康問題につながるために望ましいことではない。
【0004】
公知の合板の欠点を顕著に抑制し、しかも、充分に高い機械的性質たとえば剪断強さを有する合板を提供することが、本発明の目的である。
【0005】
接着剤層のモルF/(NH比を0.70〜1.10の間とし、接着剤層のモルF/T比を1.0〜3.5の間とすることにより、上記の目的が達成される。
【0006】
本発明による合板の利点は、ホルムアルデヒドの量およびF−放散を、同一の木材層を有する公知の合板の場合に比較して低くしながらも、本発明による合板が、たとえば日本農林規格JAS987−2000、補遺(2003年2月27日)に制定されているような、機械的性質たとえば剪断強さに関する厳しい規定に適合できる点にある。接着剤層の重量(通常、g/(接着剤層)mで表現)を従来の合板よりも軽くしながらも、上記の厳しい規定に適合させることが可能であるのも、本発明による合板のさらなる利点である。
【0007】
国際公開第01/38416A1号パンフレットにおいて、複合パネルのための接着剤組成物が開示されており、その接着剤組成物には、ホルムアルデヒドと尿素および/またはメラミンとの反応生成物が含まれ、そのモル比を選択して、複合パネルにおけるホルムアルデヒドの放散を所望のレベルになるようにしている。国際公開第01/38416A1号パンフレットにおいては、複合パネルにおいてその接着剤組成物を使用することが原因の物理的、機械的性質のマイナスを取り返すために、その接着剤組成物に対してイソシアネートを加えなければならない。
【0008】
本発明による合板には、(合板においては公知で一般的なことではあるが)少なくとも2層の木材ベニア層と少なくとも1層の接着剤層とが含まれる。本発明の文脈においては、「合板」という用語は、接着剤層がまったく硬化されていないかまたはほんの部分的に硬化されている場合と、さらには、接着剤層がほとんど完全または完全に硬化されている場合との両方を指している。したがって、トリアジン(たとえばメラミン)、ホルムアルデヒドおよび尿素などの、接着剤層内に存在する各種化合物は、それらの遊離の形態で存在していてもよいし、あるいは全面的または部分的に反応させた形態で存在していてもよい。典型的には木材ベニア層と接着剤層を交互に存在させ、通常は表面層が木材ベニア層であるような、5層または7層またはそれ以上の層からなる合板は、極めて一般的なものである。合板の中の木材ベニア層は通常連続相であるが、それはたとえば、丸太をピーリングする公知の方法で得られる。木材層、特に内側層あるいは最終用途において目に触れることがない層は、互いに配列させた2個、3個、4個またはそれ以上の木片からなるようにすることも可能である。しかしながら、本発明における合板の定義には、木片および接着剤互いに混合させ、その混合物自体が層を形成し、ボード全体がかかる層で構成されている、OSB(オリエンテッド・ストランド・ボード(oriented strand board))などのシステムは含まない。
【0009】
本発明による木材ベニア層の厚みは一般的な合板製造方法に従って選択することができるが、本発明による接着剤層ではF−放散を抑制できることから、F−放散を調節する役割を果たしているとされている表面層を、公知の合板の場合よりは薄くしてもなお、受容可能なF−放散性能を有する合板を与えることが可能である。合板における木材ベニア層の典型的な厚みの範囲は、約0.4mmから、約5mm、10mmあるいはそれ以上とすることができる。
【0010】
本発明による合板において選択される木材のタイプは、一般的な合板製造方法に従って選択することができる。軟材および硬材のいずれもが実際に使用されており、本発明による合板においても使用することができる。合板製造の際に選択することが可能な木材のタイプの例を挙げれば、軟材としてはたとえばモミ材またはマツ材、硬材としてはたとえばレッドメランチまたはイエローメランチがある。しかしながら、合板のF−放散は選択した木材の性質と相関がありうることが知られているので、本発明による合板では、F−放散が高い合板と通常関連づけられているようなある種のタイプの木材(たとえば淡色メランチたとえばイエローメランチ)を、F−放散に関してより厳しい要求があるような用途においても使用可能とすることができる、ということに注目されたい。本発明による合板の少なくとも1層の木材層が、イエローメランチまたはレッドメランチを含んでいるのが好ましい。
【0011】
本発明による合板には、少なくとも1層の接着剤層を含む。その接着剤層には樹脂組成物を含むが、それに関しては以下において詳しく述べる。さらに、本発明による接着剤層には、通常と同様に、その他の化合物も含まれる。かかるその他の化合物の例としては、触媒たとえば酸、水、充填剤たとえば小麦粉、およびホルムアルデヒドなどが挙げられる。その他の化合物の全量は、接着剤層の重量パーセントとして、約1または2重量%から約40または50重量%までといった広い範囲の中で変化させることが可能であるが、より一般的には約10重量%から約30重量%までである。
【0012】
本発明による接着剤層には、樹脂組成物を含み、それには(遊離の形態または反応させた形態で)トリアジン化合物(T)(好ましくはメラミン(M))、ホルムアルデヒド(F)および場合によっては尿素が含まれる。一般的には、かかる樹脂組成物は公知であって、ホルムアルデヒド、トリアジン化合物および場合によっては尿素を水に添加して混合物を形成させ、次いでその混合物を好適かつ公知の温度およびpHの条件下で反応させて、樹脂を形成させることにより、製造することができる。公知のことであるが、その他の化合物を樹脂に添加して、その最終製品にある種の特性たとえば耐湿性を与えるようにすることができる。本発明による接着剤層において使用するのに適したトリアジンは、少なくとも1個の−NH基を有していなければならないが、かかるトリアジンはそれ自体が公知であって、たとえば、メラミン、アンメリン(ammeline)、アンメリド(ammelide)、メラム(melam)、またはメレム(melem)などが挙げられる。トリアジン(たとえばメラミン)と尿素のいずれもが−NH基を含んでいるので、少なくともそれらが未反応の形態にある場合には、その樹脂組成物(したがって、その接着剤層も)モルF/(NH比を有している。本発明の文脈において、および一般的に行われていることであるが、モルF/(NH比の計算では、反応したかもしれないものも含めてすべての−NH基を勘定に入れている。さらに、尿素およびメラミン以外の化合物、たとえばメラム(melam)またはメレム(melem)のようなトリアジン化合物からの−NH基もまた、計算に含めている。本発明による樹脂組成物および接着剤層のモルF/T比またはモルF/M比の計算は、反応したかもしれないもトリアジンまたはメラミンも含めて、すべてのトリアジンまたはメラミンを勘定に入れて行う。
【0013】
本発明による接着剤層は、少なくとも0.70、最大で1.10のモルF/(NH比を有している。少なくとも0.70のモルF/(NH比とすることによって、その接着剤層が充分な接着力を有し、それによって、充分な剪断強さで代表される機械的性質が得られるようになる。好ましくはモルF/(NH比が少なくとも0.74または0.78;より好ましくは、モルF/(NH比が少なくとも0.80または0.82;最も好ましくは、モルF/(NH比が少なくとも0.85である。
【0014】
先にも述べたように、本発明による合板からのF−放散を可能な限り低く保つことが重要であって、このことは、接着剤層のモルF/(NH比を最大で1.10または1.08、好ましくは最大で1.05または1.0とすることによって、達成される。
【0015】
本発明による接着剤層は、トリアジン化合物としてメラミンを含み、そのモルF/M比を少なくとも1.0とすることが好ましく、それによって、存在しているメラミンをホルムアルデヒドと実際に反応することを確実に可能とし、遊離のメラミンの量が限定されることとなる。遊離のメラミンは得られる合板の機械的性質に寄与することはないが、捕捉剤として機能する可能性はある。好ましくはモルF/M比が少なくとも1.25または1.5;より好ましくはモルF/M比が少なくとも1.75、最も好ましくは少なくとも2.0である。
【0016】
モルF/(NH比が低い場合でも、接着剤層が優れた接着力を有するようにするためには、本発明による接着剤層のモルF/M比を最大で3.5、好ましくは最大で3.25または3.0、最も好ましくは最大で2.75、さらには2.50とする。
【0017】
上述したモルF/(NH比ならびにモルF/T比およびモルF/M比を、本発明による樹脂組成物にも適用するのが好ましい。接着剤層中に存在するホルムアルデヒド、尿素およびメラミンの少なくともかなりの部分が、その樹脂組成物の製造の際の添加に由来していて、それによって、良好な性能を有する接着剤層とするための所望の化学反応が実際に起きるようにするのが、好ましい。接着剤層の中のメラミンの少なくとも60重量%が樹脂組成物の製造の際の添加に由来しているのが好ましく、より好ましくは、その量が少なくとも70重量%、さらにより好ましくはその量が少なくとも80重量%、最も好ましくはそれが少なくとも90重量%である。接着剤層の中の尿素の少なくとも40重量%が樹脂組成物の製造の際の添加に由来しているのが好ましく、より好ましくは、その量が少なくとも50重量%または60重量%、特にその量が少なくとも70重量%、さらにより好ましくはその量が少なくとも80重量%、そして最も好ましくはそれが少なくとも90重量%である。接着剤層の中のホルムアルデヒドの少なくとも80重量%が樹脂組成物の製造の際の添加に由来しているのが好ましく、より好ましくは、その量が少なくとも90重量%、さらにより好ましくはその量が少なくとも95重量%、最も好ましくはそれが少なくとも99重量%である。
【0018】
本発明による接着剤層には(硬化させる前に)、少なくとも樹脂組成物から生成した、ある程度の量の水を含む。別の言い方をすれば、本発明による接着剤層は固形分含量を有していて、それは、共に添加した層の中の(水を除いた)すべての化合物の重量パーセントとして定義される。硬化させる前の接着剤層の固形分含量を高くするほど、本発明による合板のF−放散が抑制されることが見出された。したがって、該固形分含量は好ましくは少なくとも50重量%、より好ましくは少なくとも60重量%または65重量%、特に少なくとも70重量%、最も好ましくは少なくとも75重量%、さらには80重量%である。
【0019】
先に述べたように、本発明による接着剤層には、場合によっては、尿素が含まれる。しかしながら、尿素の量を比較的低くし、その結果として、接着剤層中の−NH基の大部分がトリアジンからのものとすると、本発明による接着剤層性質、特に得られる合板の剪断強さが改良されることが見出された。好ましくは本発明による接着剤層の中の尿素の量は、0〜25g/mの間または2〜23g/(接着剤層)mの間;より好ましくは、尿素の量は4〜21の間または6〜20g/(接着剤層)mの間、特には8〜19g/mの間または10〜18g/(接着剤層)mの間、そして最も好ましくは12〜17g/mの間である。
【0020】
本発明による接着剤層には、トリアジン化合物、ホルムアルデヒドおよび場合によっては尿素を含む樹脂組成物が含まれる。それに加えて、本発明による接着剤層には、場合によっては、他のタイプの樹脂が同様に含まれていてもよい。かかる他のタイプの樹脂の例としては、フェノール樹脂およびpMDIまたはイソシアネート樹脂がある。しかしながら、接着剤層内のかかる他のタイプの樹脂の量は合計して、50重量%または40重量%未満、より好ましくは30重量%または20重量%未満、特には10重量%、5重量%またはさらに2重量%もしくは1重量%未満であるのが好ましい。本発明による接着剤層には、イソシアネートまたはpMDIタイプ樹脂を実質的に含まず、さらに前記の他のタイプの樹脂も実質的に一切含まないのが好ましい。好ましくは、他のタイプの樹脂の前記の量は、全体として本発明による合板におけるすべての接着剤層に適用するのが好ましい。
【0021】
合板は多くの場合、2層以上の接着剤層を含む。本発明においては、それらの接着剤層の少なくとも1層が、先に定義した組成とモル比を有する。好ましくは、接着剤層の少なくとも50%が前記組成とモル比を有し、より好ましくは、接着剤層の少なくとも2/3またはさらには75%が前記組成を有する。本発明による合板における接着剤層の実質的に全部が、先に定義した組成とモル比を有していれば最も好ましい。本発明による合板における接着剤層が完全に硬化されているのが好ましいが、本発明による合板が部分的に硬化されていたり、ほとんど完全に硬化されていることが望ましい、あるいは必要であるということも時にはあり得る。
【0022】
本発明による接着剤層が特定の性質を有している結果として、本発明による合板を構成して、F−放散に関する厳しい規制に適合できるようにすることができる。本発明による合板が、最大で0.5mg/LのJAS987−2000法による平均F−放散値を有しているのが好ましい。後に実施例において示すが、上記のF−放散に関する目標を達成するためには、本発明による接着剤層における特定のモル比以外には、なんら特別な手段をとる必要はない。平均F−放散値を最大で0.3mg/Lとするのがより好ましい。このことは、本発明による合板が、タイプI合板のためのF****等級に適合可能であることを意味している。
【0023】
本発明による合板が、比較対象の公知の合板よりもF−放散性が低いが、それにも関わらず、その機械的性質は実用上の要求に充分応えることができる。これは、JAS987−2000に規定されているような、剪断強さからも実証される。本発明による合板が、好ましくは少なくとも4または5kg/cm、より好ましくは少なくとも6または7kg/cm、特に少なくとも8または9kg/cm、最も好ましくは少なくとも10または11kg/cmの剪断強さを有しているのが好ましい。一般的には、本発明による合板に必要とされる剪断強さは、40kg/cm以下、ほとんどの場合30kg/cm以下である。当業者には公知のことであるが、上述のような剪断強さの値を達成するためには、接着剤層あたりの接着剤組成物の量を変化させる必要がある。
【0024】
本発明はさらに、合板を製造するための方法にも関し、それに含まれるのは以下の工程である:
a)メラミン(M)、ホルムアルデヒド(F)および場合によっては尿素を含む樹脂組成物を製造する工程;
b)その樹脂組成物および場合によっては他の化合物を含む、接着剤組成物を製造する工程であって、それによって、その接着剤層のモルF/(NH比を0.70〜1.10の間とし、接着剤層のモルF/M比を1.0〜3.5の間とする、工程;
c)その接着剤組成物を、木材層の少なくとも片面に塗布し、それによって少なくとも1層の接着剤層を形成させる工程;
d)その少なくとも1層の接着剤層を第二の木材層と接触させ、それによって合板を形成させる工程;
e)その合板を硬化させる工程。
【0025】
工程a)における樹脂組成物の製造は、公知そのままの技術により実施することができるが、その際に、樹脂組成物を任意成分の他の化合物と組み合わせたときに、その接着剤層が工程b)で規定したモル比になるように、樹脂組成物のモルF/(NH比とモルF/M比を決めなければならない。工程c)、d)およびe)は、合板製造の当業者に周知の一般的な技術により実施することができる。公知のように、硬化工程e)をほんの部分的に実施することが望ましかったり、あるいは必要となったりすることもあろうが、完全硬化させるのが好ましい。工程a)で製造した樹脂以外の他のタイプの樹脂を、それに続く工程b)〜e)において使用することも可能である。かかる他のタイプの樹脂の例としては、フェノール樹脂およびpMDIまたはイソシアネート樹脂がある。しかしながら、接着剤層中および得られる合板の中の、接着剤組成物内のかかる他のタイプの樹脂の量は、50重量%または40重量%未満、より好ましくは30重量%または20重量%未満、特には10重量%、5重量%またはさらに2重量%もしくは1重量%未満であるのが好ましい。接着剤組成物、接着剤層およびさらには本発明によるすべての合板では、イソシアネートまたはpMDIタイプ樹脂を実質的に含まない、あるいはさらに、上記の他のタイプの樹脂のいずれをも実質的に含まないのが好ましい。
【0026】
たいていの場合、接着剤層あたりの接着剤組成物の量を増やすと、本発明による合板の剪断強さも上がる。接着剤層中の接着剤組成物の量は通常、g/(接着剤層)mの単位で表される。典型的な公知の接着剤層では、約275〜450g/mまたはそれ以上の接着剤組成物を含むことができる。本発明による接着剤層の特徴は、接着剤層中の接着剤組成物を減らしても、得られる合板が充分な機械的性質たとえば剪断強さを有している点にある。別な場合として、同じくらいの接着剤層の量を使用したときには、その他では比較対象としうる公知の合板よりも、得られた合板は高い剪断強さを有している。したがって、本発明による単一または複数の接着剤層が、75〜350g/mの間の、接着剤層あたりの接着剤組成物を含むのが好ましく;より好ましくは、100〜275g/mの間、特に110〜250g/mの間、さらに特には120〜225g/mの間、最も好ましくは125〜200g/mの間の、接着剤層あたりの接着剤組成物を含む。完全に実現可能なレベルとして、最大で175、さらには最大で150g/mの、接着剤層あたりの接着剤組成物によって、要求に対して充分に応えうる。
【0027】
硬化工程の1例はホットプレスであるが、場合によってはその前にコールドプレス工程を置いてもよい。
【0028】
本発明による合板、さらにはその製造について、下記の実施例および比較実験の手段によりより詳しく説明する。
【0029】
実施例1:樹脂の製造
176.4gのホルマリンを反応器に仕込んだ。そのホルマリンは、水中37.0重量%ホルムアルデヒドの溶液であって、0.8重量%のメタノールと120mg/kgのギ酸を含んでいた。その反応器の内容物を加温して30℃とした。2MのNaOHを用いて、pHを9に調節した。133.6gのメラミン(メーカー:DSM)を添加した。その反応器の内容物を30℃から95℃に加温したが、それには約10分かかった。この95℃への加熱の間に、反応器の温度が約85℃に達したところで透明な樹脂が形成されたが、これは、メラミンが全部溶解したことを示している。次いで50gの尿素を添加し、樹脂を冷却して85℃とし、その温度に保って樹脂をさらに反応させたが、その間にpHは7に低下した。曇点に到達したら(これは、尿素の添加15分後であった)、2MのNaOHを用いてpH2を8.8にまで上げた。「曇点」は、20℃で樹脂の1滴を大量の水の中に加えたときに、もはや直接的に溶解することなく、濁りを示す点と定義される。次いで、その樹脂組成物を急冷して20℃として、貯蔵可能とした。得られた樹脂組成物は、モルF/(NH比が0.90、モルF/M比が2.1、固形分含量が65重量%、粘度(20℃)が50mPas、水許容度(water tolerance)(20℃)が樹脂1gあたり水3g、そして20℃での貯蔵安定性が7日よりも大であった。「水許容度(water tolerance)」は、20℃で1gの樹脂に、樹脂が濁るまでに添加しうる水の量(単位:g)と定義される。
【0030】
実施例2〜5:合板の製造
実施例1で製造した樹脂組成物75gを用い、4.6gの水、2.25gの触媒(水中20重量%ギ酸)および10.5gの小麦粉を添加して、接着剤を製造した。その接着剤のゲル化時間を測定すると、100℃で67秒であった。「ゲル化時間」は、沸騰水中に浸した試験管の中に5グラムの接着剤を入れたときに、ゲルが生成するまでに必要な時間と定義される。
【0031】
5プライの合板を、レッドメランチまたはイエローメランチから製造したが、いずれの場合も、用いた接着剤層は、122g/mまたは155g/(接着剤層)mであった。当業者には公知であるが、「5プライの合板」とは、5層の木材ベニア層と、それらの木材ベニア層の間の4層の接着剤層とから本質的になっている合板のことを意味する。それらのメランチは湿分11重量%にコンディショニングし、厚みは0.6mm(表面層)または1.4mm(中間層)であった。その合板は、まず10バールで30分間コールドプレスし、次いで125℃、10バールで10分間ホットプレスすることにより、製造した。その剪断強さとF−放散は下記の通りであった。
【0032】
【表1】

【0033】
比較実験
6953gのホルマリン(37重量%F)を反応器に仕込み、さらに400gのメラミンおよび2300gの尿素を加えた。2NのNaOH溶液を用いてpHを9に調節した。その反応器の内容物を加熱して95℃とし、その温度で5分間保った。次いで2Nのギ酸を用いてpHを5.0に調節し、次いで曇り点(30℃)に達するまで、樹脂の縮合反応を続けた。2NのNaOH溶液を用いてpHを8.0に調節することにより反応を停止させ、反応器の内容物を冷却して88℃とした。
【0034】
次いで、4025gのメラミン、100gの尿素および4635gのホルマリンを添加したが、この間は、pHを8.0±0.3に、温度を88±2℃に保った。この樹脂の縮合工程を70分間続けたが、その間温度を88℃に、pHを8.0〜8.5の間に保った。次いで樹脂を冷却して78℃とした。1600gの尿素を加え、新しく縮合工程を開始させた。この工程の間に、pHは7.2まで低下した。この工程を約35分間続けると、樹脂の粘度が100mPa・sとなった(30℃で測定)。2NのNaOH溶液を用いてpHを9.5とし、冷却により30℃とすることによって縮合反応を停止させた。
【0035】
このようにして製造した樹脂組成物1000gを用い、2gの触媒(NHCl、0.3重量%(ドライ/ドライ))および140gの小麦粉を添加して、接着剤組成物を製造した。その接着剤のゲル化時間を測定すると、100℃で240秒であった。
【0036】
レッドメランチから5プライの合板を製造したが、その接着剤層は、200g/mの接着剤層あたりの接着剤組成物とした。当業者には公知であるが、「5プライの合板」とは、5層の木材ベニア層と、それらの木材ベニア層の間の4層の接着剤層から本質的になっている合板のことを意味する。それらのメランチは湿分11重量%にコンディショニングし、厚みは0.6mm(表面層)または1.4mm(中間層)であった。その合板は、まず10バールで30分間コールドプレスし、次いで125℃、10バールで10分間ホットプレスすることにより、製造した。その剪断強さは8kg/cm、平均F−放散値は0.40mg/Lであった。
【0037】
これらの実施例および比較実験から、本発明による合板は公知の合板よりも低いF−放散を有していることと同時に、本発明による合板における接着剤層の方が公知の合板よりも接着剤層あたりの接着剤組成物の量が少なかったにもかかわらず、本発明による合板の方が公知の合板よりも高い剪断強さを有していることが、明らかに判る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
合板であって、少なくとも2層の木材ベニア層と少なくとも1層の接着剤層とを含み、それによって前記接着剤層がトリアジン化合物(T)、ホルムアルデヒド(F)および場合によっては尿素を含む樹脂組成物を含む合板であって、前記接着剤層のモルF/(NH比が0.70〜1.10の間にあり、前記接着剤層のモルF/T比が1.0〜3.5の間にあることを特徴とする、合板。
【請求項2】
前記トリアジン化合物がメラミン(M)であり、そして前記接着剤層のモルF/M比が1.0〜3.5の間にある、請求項1に記載の合板。
【請求項3】
前記樹脂組成物のモルF/(NH比が0.70〜1.10の間にあり、前記樹脂組成物のモルF/M比が1.0〜3.5の間にある、請求項2に記載の合板。
【請求項4】
前記接着剤層のモルF/(NH比が0.80〜1.05の間にあり、前記接着剤層のモルF/M比が1.0〜3.5の間にある、請求項2に記載の合板。
【請求項5】
前記樹脂組成物のモルF/(NH比が0.80〜1.05の間にあり、前記樹脂組成物のモルF/M比が1.0〜3.5の間にある、請求項4に記載の合板。
【請求項6】
前記接着剤層の中のメラミンの少なくとも60重量%および前記接着剤層中の尿素の少なくとも40重量%が、前記樹脂組成物を製造している間の添加に由来している、請求項2〜5のいずれか1項に記載の合板。
【請求項7】
硬化前の前記接着剤層の固形分含量が少なくとも50重量%である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の合板。
【請求項8】
前記接着剤層中の尿素の量が、0〜25g/(接着剤層)mの間にある、請求項1に記載の合板。
【請求項9】
前記接着剤層が実質的にフェノール樹脂を含まず、そして前記接着剤層が実質的にpMDI樹脂を含まない、請求項8に記載の合板。
【請求項10】
最大で0.5mg/Lの、JAS987−2000法による平均F−放散値を有する、請求項1〜9のいずれか1項に記載の合板。
【請求項11】
最大で0.3mg/Lの、JAS987−2000法による平均F−放散値を有する、請求項10に記載の合板。
【請求項12】
前記合板が、少なくとも4kg/cmの、JAS987−2000法による剪断強さを有する、請求項10または11に記載の合板。
【請求項13】
少なくとも1層の木材層がイエローメランチまたはレッドメランチを含む、請求項1〜12のいずれか1項に記載の合板。
【請求項14】
合板を製造するための方法であって、
a)メラミン(M)、ホルムアルデヒド(F)および場合によっては尿素を含む樹脂組成物を製造する工程;
b)前記樹脂組成物および場合によっては他の化合物を含む、接着剤組成物を製造する工程であって、それによって、前記接着剤層のモルF/(NH比を0.70〜1.10の間とし、接着剤層のモルF/M比を1.0〜3.5の間とする、工程;
c)前記接着剤組成物を、木材層の少なくとも片面に塗布し、それによって少なくとも1層の接着剤層を形成させる工程;
d)前記少なくとも1層の接着剤層を第二の木材層と接触させ、それによって合板を形成させる工程;
e)前記合板を硬化させる工程、
を含む方法。
【請求項15】
工程c)において前記接着剤組成物を、75〜250g/(接着剤層)mの間の量で塗布する、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
合板であって、少なくとも2層の木材ベニア層と少なくとも1層の接着剤層とを含み、それによって前記接着剤層がトリアジン化合物(T)、ホルムアルデヒド(F)および場合によっては尿素を含む樹脂組成物を含む合板であって、前記接着剤層中の尿素の量が0〜25g/(接着剤層)mの間にあり、そして、前記合板が、少なくとも4kg/cmの、JAS987−2000法による剪断強さを有することを特徴とする、合板。
【請求項17】
前記トリアジン化合物が実質的にメラミンからなる、請求項14に記載の合板。

【公表番号】特表2007−523764(P2007−523764A)
【公表日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−544298(P2006−544298)
【出願日】平成16年12月9日(2004.12.9)
【国際出願番号】PCT/EP2004/014153
【国際公開番号】WO2005/058991
【国際公開日】平成17年6月30日(2005.6.30)
【出願人】(503220392)ディーエスエム アイピー アセッツ ビー.ブイ. (873)
【Fターム(参考)】