説明

合着用セメント材料及び合着用セメントの製造方法

【課題】高弾性の合着用セメントを提供する。
【解決手段】ラジカル重合可能なウレタンアクリレート系オリゴマーまたはウレタンメタクリレート系オリゴマー14.9〜99.6wt%と、メタクリル酸エステルが49.8wt%以下と、メタクリル酸エステル重合体、メタクリル酸エステル共重合体、ウレタンアクリレート系ポリマー、ウレタンメタクリレート系ポリマー、及び無機フィラーからなる群から選ばれる1つ以上からなるフィラーが70wt%以下の合着用セメント材料に重合開始剤0.03〜1wt%と、アミン0.03〜1wt%とを添加することにより、高弾性の合着用セメントを作製する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人工歯などを接着するための合着用セメント材料及び合着用セメントの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般の歯牙は、歯根膜を介して歯槽骨に保持されており、この歯根膜が外力を緩衝して歯槽骨への衝撃を軽減している。図4は、一般の歯牙の構造を示す断面図である。図4に示すように、歯牙はエナメル質101と象牙質102と歯髄103とから構成されており、セメント質104を介して歯根膜105と接続されている。
【0003】
歯根膜105の厚さは約0.25mmであり、外力により縦方向に約10μm変位し、横方向には約20μm変位する。この特性により歯根膜105は、歯槽骨106に対する衝撃を軽減している。なお、歯根膜自体の弾性率は不明であるが、例えば、非特許文献1には、歯根膜105と類似の性質を持つ歯肉107は、弾性率が0.66〜4.36MPaであると開示されている。
【0004】
一方、歯を治療する技術の一つとして、歯の欠損部分に充填物を埋め込んだり、覆い被せたりする技術がある。また、場合によっては歯が歯根部より欠損した部位に人工歯を埋め込む技術も知られている。代表的なものの例としては、歯の中心部などに充填物を埋め込むインレーや、歯の全体を覆い被せるクラウン、複数の歯を結合させて両端側の歯を覆い被せて結合するブリッジ、歯槽骨に直接支台を埋め込み、その支台に人工歯を結合するインプラントなどがある。
【0005】
図5は、インレー、クラウン、ブリッジ及びインプラントの構造を示す図である。図5(a)はインレーを示しており、歯の中に直接充填物を埋め込んでいる。図5(b)はクラウンを示しており、歯全体を覆うように結合される。さらに、図5(c)はブリッジを示しており、歯の欠損した部位には、人工歯を両側の歯で結合し、両端側の歯はクラウンと同様に結合される。また、図5(d)はインプラントを示しており、歯槽骨に支台111を埋め込み、その支台111に人工歯112を結合している。
【0006】
前述したインレー、クラウン、ブリッジ及びインプラントなどの接着では、合着用セメントが使用されている。従来、合着用セメントは、歯牙や人工歯と一体化させることを目的としており、強度的に優れ、充填物等を強固に保持する非常に硬いものが用いられている(例えば、特許文献1参照)。
【0007】
【特許文献1】特開2000−53518号公報
【非特許文献1】Viscoelastic properties of oral soft tissue, Dent Master J 4(1), 47-53, 1985
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
現状では、歯根膜による緩衝作用の必要性の有無にもかかわらず、前述した硬いセメントが全ての接着領域で使用されている。図5(a)及び図5(b)に示したインレー及びクラウンでは、欠損部を歯牙と一体化させるために合着用セメントが用いられているが、歯牙そのものは残存しているため、歯根膜も残存している。このため、緩衝力は十分に備わっている。また、図5(c)に示したブリッジにおいても、前述した合着用セメントでブリッジを接着して、ブリッジを保持する歯牙と一体化させている。ところが、特にスパンの長い(人工歯の数が多い)ブリッジの場合、不規則な力がブリッジに作用すると、ブリッジを保持する複数の歯に異常な力が働く場合がある。スパンの長いブリッジの場合、歯根膜のみでは十分に外力を緩衝することができないため、歯牙の損傷や補綴物の脱落、セメントのヒビ割れによる2次う蝕が発生する可能性がある。
【0009】
また、図5(d)に示したインプラントでは、歯槽骨に支台111が埋め込まれているため、歯根膜が残存していない。さらに、支台111と人工歯112とが前述した硬いセメントによって接着されている。前述したように従来の合着用セメントは歯牙や人工歯と一体化させることを目的としているため緩衝力はなく、人工歯に外力が作用すると、外力が直接歯槽骨に作用して、歯槽骨が損傷する可能性がある。
【0010】
本発明は前述の問題点に鑑み、高弾性である合着用セメントを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の合着用セメント材料は、ラジカル重合可能なウレタンアクリレート系オリゴマーまたはウレタンメタクリレート系オリゴマーが14.9〜99.6wt%含まれている。
【0012】
本発明の合着用セメントの製造方法は、前記合着用セメント材料に、重合開始剤0.03〜1wt%と、アミン0.03〜1wt%を混合して合着用セメントを作製する工程を有することを特徴とする。なお、さらに、メタクリル酸エステルと、メタクリル酸エステル重合体、メタクリル酸エステル共重合体、ウレタンアクリレート系ポリマー、ウレタンメタクリレート系ポリマー、及び無機フィラーからなる群から選ばれる1つ以上からなるフィラーとを混合してもよい。この場合、重合開始剤、アミン、メタクリル酸エステル及びフィラーの混合する順序は任意であり、特に限定されるものではない。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ラジカル重合可能なウレタンアクリレート系オリゴマーまたはウレタンメタクリレート系オリゴマーを用いることにより、緩衝作用を有する高弾性の合着用セメントを提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明者は、ウレタンアクリレートオリゴマーもしくはウレタンメタクリレートオリゴマーは分子量(1000−10000)と末端基とを調節して高弾性の材料に調整できる点に着目し、鋭意検討を重ねた結果、ラジカル重合可能なウレタンアクリレート系オリゴマーまたはウレタンメタクリレート系オリゴマーを合着用セメント材料に用いることにより、被着体表面に塗布されるレジン系接着剤と化学的に結合し、高弾性の合着用セメントを提供できることを見いだした。
【0015】
ウレタンアクリレート系オリゴマー(ウレタンメタクリレート系オリゴマー)は、分子の末端にアクリレート(メタクリレート)とウレタン結合を持つ化合物のうち、分子量が1000から10000までのものの総称である。また、ウレタンアクリレート系オリゴマーまたはウレタンメタクリレート系オリゴマーはラジカル重合が可能なものである。比率が14.9wt%より小さいと、重合前の粘性が低くなり、セメントとして使用することが困難である。また、比率が99.6wt%を超えると、他の添加剤の効果がなくなってしまう。したがって、ウレタンアクリレート系オリゴマーまたはウレタンメタクリレート系オリゴマーは、14.9〜99.6wt%である必要がある。
【0016】
また、メタクリル酸エステルは、重合後のセメントの弾性を調節するために添加するものであるが、液状であるためにウレタンアクリレート系オリゴマー(ウレタンメタクリレート系オリゴマー)の硬化前の流動性(粘性)にも影響する。比率が49.8wt%を超えると、重合前の粘性が低くなり、セメントとして使用することが困難であるため、メタクリル酸エステルは、49.8wt%以下であることが好ましい。
【0017】
本発明に用いるメタクリル酸エステルとしては、例えば、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート等が挙げられる。
【0018】
また、セメントが硬化した後の圧縮強さを向上させるために、メタクリル酸エステル重合体、メタクリル酸エステル共重合体、ウレタンアクリレート系ポリマー、ウレタンメタクリレート系ポリマー、及び無機フィラーからなる群から選ばれる1つ以上からなるフィラーが70wt%以下含まれてもよい。これらのフィラーは、硬化後の圧縮強さを向上させることができるとともに、重合前の液またはペーストの流動性を調節することができる。フィラーが70wt%を超えると、セメントとしての機能が失われてしまうため、フィラーは70wt%以下であることが好ましい。
【0019】
本発明に用いるメタクリル酸エステル重合体またはメタクリル酸エステル共重合体としては、例えば、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート等の重合体または共重合体等が挙げられる。また、ウレタンアクリレート系ポリマー及びウレタンメタクリレート系ポリマーは、例えば、ポリウレタンビーズなどが挙げられる。さらに、無機フィラーは、石英やガラスなどが挙げられる。
【0020】
重合開始剤は、重合を伴う一般的な歯科用材料に0.03〜1.0wt%程度添加されているものである。重合開始剤が1wt%を超えると、重合率は進むが、その分保存中に重合する危険性がある。また、重合開始剤が0.03wt%より小さいと、重合開始剤の効果が得られなくなる。したがって、重合開始剤は、0.03〜1wt%である必要がある。なお、本発明に用いる重合開始剤は、例えば、過酸化ベンゾイルやカンファキノン等が挙げられる。
【0021】
また、本発明の合着用セメント材料を重合させるために必要であるアミンは触媒として用いられ、例えば、ジメチルアミノエチルメタクリレートやジメチルパラトルイジンなどが挙げられる。アミンが1wt%を超えると、可塑剤として作用させるため、物性を低下させる。また、アミンが0.03wt%より小さいと、触媒としての機能が得られなくなる。したがって、アミンは、0.03〜1wt%である必要がある。
【0022】
また、硬化後のセメントの圧縮弾性率は、1GPaを超えると、硬質であり、口腔内では弾力性を持たず、歯牙や歯槽骨が損傷する可能性があるため、1GPa以下であることが好ましい。
【0023】
さらに、合着用セメントを製造する方法としては、主に2種類の方法がある。1つは、液に粉末を添加することによってセメントを製造する方法であり、もう1つは、2種類のペーストを混合して製造する方法である。
【0024】
液に粉末を添加する方法の場合は、まず、メタクリル酸エステル重合体、メタクリル酸エステル共重合体、ウレタンアクリレート系ポリマー、ウレタンメタクリレート系ポリマー、及び無機フィラーからなる群から選ばれる1つ以上からなるフィラーと、重合開始剤として過酸化ベンゾイルと混合して混合粉末を生成する。次に、ラジカル重合可能なウレタンアクリレート系オリゴマーまたはウレタンメタクリレード系オリゴマーと、メタクリル酸エステルと、触媒としてジメチルパラトルイジンと(光重合の場合はさらに重合開始剤としてカンフアキノンと、触媒としてジメチルアミノエチルメタクリレートと)を混合した混合液を生成する。そして、生成した混合液に前記混合粉末を添加する。この結果、重合が開始され、合着用セメントを作製することができる。
【0025】
上記方法で用いられる各化合物は、フィラーが0〜70wt%、過酸化ベンゾイルが0.03〜1.0wt%、ラジカル重合可能なウレタンアクリレート系オリゴマーまたはウレタンメタクリレート系オリゴマーが14.9〜99.6wt%、メタクリル酸エステルが0〜49.8wt%、カンファキノンが0〜1.0wt%、ジメチルアミノエチルメタクリレートが0〜1.0wt%、ジメチルパラトルイジンが0.03〜1.0wt%とする。
【0026】
一方、2種類のペーストを混合する方法の場合は、まず、ラジカル重合可能なウレタンアクリレート系オリゴマーまたはウレタンメタクリレート系オリゴマーと、メタクリル酸エステルと、重合開始剤として過酸化ベンゾイルと(光重合の場合はさらに重合開始剤としてカンフアキノンと、触媒としてジメチルアミノエチルメタクリレートと)を混合した溶液aと、ラジカル重合可能なウレタンアクリレート系オリゴマーまたはウレタンメタクリレート系オリゴマーと、メタクリル酸エステルと、触媒としてジメチルパラトルイジンと(光重合の場合はさらに重合開始剤としてカンフアキノンと、触媒としてジメチルアミノエチルメタクリレートと)を混合した溶液bを生成する。次に、この溶液a及びbにそれぞれ、メタクリル酸エステル重合体、メタクリル酸エステル共重合体、ウレタンアクリレート系ポリマー、ウレタンメタクリレート系ポリマー、及び無機フィラーからなる群から選ばれる1つ以上からなるフィラーを混合したペーストa及びbを生成する。そして、生成した2種類のペーストを混合する。この結果、重合が開始され、合着用セメントを作製することができる。
【0027】
上記方法で用いられる各化合物は、片方のペーストにおいては、フィラーが0〜70wt%、ラジカル重合可能なウレタンアクリレート系オリゴマーまたはウレタンメタクリレート系オリゴマーが14.9〜99.6wt%、メタクリル酸エステルが0〜49.8wt%、過酸化ベンゾイルが0.03〜1.0wt%、カンファキノンが0〜1.0wt%、ジメチルアミノエチルメタクリレートが0〜1.0wt%とする。もう一方のペーストにおいては、フィラーが0〜70wt%、ラジカル重合可能なウレタンアクリレート系オリゴマーまたはウレタンメタクリレート系オリゴマーが14.9〜99.6wt%、メタクリル酸エステルが0〜49.8wt%、カンファキノンが0〜1.0wt%、ジメチルアミノエチルメタクリレートが0〜1.0wt%、ジメチルパラトルイジンが0.03〜1.0wt%とする。
【0028】
以下、実施例に基づいて、本発明を詳細に説明する。
A社製のウレタンアクリレートオリゴマー、B社製のウレタンアクリレートオリゴマー及びC社製のウレタンアクリレートオリゴマーの3種類に、それぞれ、過酸化ベンゾイルを0.5wt%添加して攪拌した混合液aを作製し、さらに、前述した3種類のオリゴマーに、それぞれ、ジメチルパラトルイジンを0.5wt%添加して攪拌した混合液bを作製した。
【0029】
次に、それぞれの混合液a、bを等重量混合して、重合させて硬化体の試作A、B、Cを作製した。
【0030】
また、それぞれの混合液a、bに石英ガラス粉末10wt%をそれぞれ混合したペーストa、bと、ポリウレタンビーズを10wt%混合したペーストa、bとを作製した。そして、石英ガラス粉末が含まれているペーストaとペーストbとを混合練和して、重合させて硬化体の試作A−Si、B−Si、C−Siを作製した。さらに、ポリウレタンビーズが含まれているペーストaとペーストbとを混合練和して、重合させて硬化体の試作A−U、B−U、C−Uも作製した。本実施例に用いた2ペースト試作は表1に示すとおりである。
【0031】
【表1】

【0032】
さらに、A社製のウレタンアクリレートオリゴマー、B社製のウレタンアクリレートオリゴマー及びC社製のウレタンアクリレートオリゴマーの3種類に、それぞれ、ジメチルパラトルイジン0.5wt%を混合した混合液を作製し、作製したそれぞれの混合液に、過酸化ベンゾイルの粉末を0.5wt%添加して重合させて、硬化体の粉液試作A′、B′、C′を作製した。
【0033】
また、過酸化ベンゾイルの粉末0.5wt%と、石英ガラス粉末10wt%とを混合した混合粉末を、前記混合液に添加して重合させて硬化体の粉液試作A′−Si、B′−Si、C′−Siを作製した。
【0034】
また、比較例として、以下の表2に示す4種類の組み合わせの粉末及び液が混合された材料を硬化させた硬化体も作製した。なお、比較例では、ジーシー社製の、リン酸塩系、カルボキシレート系、グラスアイオノマー系、レジン系を用いた。
【0035】
【表2】

【0036】
次に、本実施例で作製した9種類の2ペースト試作、6種類の粉液試作及び4種類の比較例で圧縮破壊試験を行った。図1に示すように、それぞれの硬化体を直径6mm、高さ12mmの形状に加工して実験を行った。実験結果を以下の表3に示す。
【0037】
【表3】

【0038】
表3は、破壊時の圧縮強さ及び変位を示しており、比較例では、破壊時の変位は1.28mm以下であったのに対して、本実施例で作製した15種類の試作はいずれも6mm変位した時点では破壊されなかった。
【0039】
次に、本実施例で作製した9種類の2ペースト試作及び4種類の比較例で引張り試験を行った。比較例については何れも脆性材料であるため、図2に示すようにそれぞれの硬化体を直径6mmの円柱状に加工してダイヤメトラル法による引張り試験を行った。一方、本実施例で作製した9種類の2ペースト試作については、図3に示すようにそれぞれの硬化体を20mmの棒状に加工して単純引張り法による引張り試験を行った。実験結果を表4に示す。
【0040】
【表4】

【0041】
表4は、破断時の引張り強さ及び変位を示しており、比較例では、破断時の変位は0.45mm以下であったのに対して、本実施例で作製した9種類の2ペースト試作は9.3〜43.8mmであった。
【0042】
前述したように、歯根膜の厚さは約0.25mmであり、縦方向に10μm、横方向に20μm変位する。本実施例で作製した試作をセメントとして用いた場合、セメント層を50μmと仮定すると、例えば試作A−Siでは、
圧縮方向:(6/12)×0.05=0.025mm
引張り方向:(25.2/20)×0.05=0.0563mm
となり、いずれも20μmの変形に対応できることがわかる。同様に、他の8種類の試作の場合も、20μmの変形に対応できる。なお、セメント層を50μmと仮定したのは、修復物を直接歯牙や支台歯に入れて適合性を試す(以下、試適)ときに、数十μmの余白がないと修復物がとれなくなってしまうため、試適後の取り外しのための余白を想定して50μmと仮定した。
【0043】
一方、比較例の場合は、最も変位の大きかったレジン系セメントでは、
圧縮方向:(1.28/12)×0.05=0.0053mm
引張り方向:(0.45/6)×0.05=0.0023mm
となり、20μmの変形に対応できないことがわかる。
【0044】
次に、本実施例で作製した9種類の2ペースト試作のうち、ポリウレタンビーズを添加したものを除いた6種類の2ペースト試作の耐久性試験を行った。実験方法としては、圧縮破壊試験と同じ形状の試験片を作製して、同じ条件で測定し、比例限界内の測定値で圧縮弾性率の比較を行った。実験結果を表5に示す。
【0045】
【表5】

【0046】
試験片は、それぞれ試験片の作製後、37℃の水中に保存したものである。弾性率が上昇しているのは、保存中に重合が進行したためであるが、弾性率の変化が極めて小さく、耐久性に優れることがわかる。
【0047】
次に、本実施例で作製した9種類の2ペースト試作のうち、フィラーを添加していない3種類の試作の生物学的安全性試験を行った。実験方法としては、それぞれの試作を半径1.7cm、厚さ1mmの円板状の試験片を作製し滅菌させた。そして、一般的に使われるHela S3(ヒト子宮頚部腺癌細胞)とCa9-22(ヒト下顎歯肉癌由来細胞)とを用いて培養液中に7日間浸漬後、培養液を抽出して、細胞を培養してその生存率をMTTアッセイ法により測定した。実験結果を図6に示す。
【0048】
細胞が80%以上生存すれば、生物学的に安全であると言われているが、試作AのCa9-22を除いて、80%以上生存しており、生体安定性が優れていることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】圧縮破壊試験の概要を説明する図である。
【図2】比較例における引張り試験の概要を説明する図である。
【図3】実施例における引張り試験の概要を説明する図である。
【図4】一般の歯牙の構造を示す断面図である。
【図5】インレー、クラウン、ブリッジ及びインプラントの構造を示す図である。
【図6】細胞生存率の比較結果を示す図である。
【符号の説明】
【0050】
101 エナメル質
102 象牙質
103 歯髄
104 セメント質
105 歯根膜
106 歯槽骨
107 歯肉
111 支台
112 人工歯

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラジカル重合可能なウレタンアクリレート系オリゴマーまたはウレタンメタクリレート系オリゴマーが14.9〜99.6wt%含まれていることを特徴とする合着用セメント材料。
【請求項2】
さらに、メタクリル酸エステルが49.8wt%以下含まれていることを特徴とする請求項1に記載の合着用セメント材料。
【請求項3】
さらに、メタクリル酸エステル重合体、メタクリル酸エステル共重合体、ウレタンアクリレート系ポリマー、ウレタンメタクリレート系ポリマー、及び無機フィラーからなる群から選ばれる1つ以上からなるフィラーが70wt%以下含まれていることを特徴とする請求項1または2に記載の合着用セメント材料。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか1項に記載の合着用セメント材料に、重合開始剤0.03〜1wt%と、アミン0.03〜1wt%を混合して合着用セメントを作製する工程を有することを特徴とする合着用セメントの製造方法。
【請求項5】
前記合着用セメントの圧縮弾性率が1.0GPa以下であることを特徴とする請求項4に記載の合着用セメントの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−184971(P2009−184971A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−26760(P2008−26760)
【出願日】平成20年2月6日(2008.2.6)
【出願人】(504258527)国立大学法人 鹿児島大学 (284)
【Fターム(参考)】