説明

合紙及びこれを用いた積層体

【課題】CTP用平版印刷版の表面の傷付き及びこの表面とのブロッキングの発生が低減する合紙、及びこの合紙とCTP用平版印刷版とが交互に積層された積層体を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、CTP用平版印刷版の表面を保護する合紙であって、CTP用平版印刷版の表面と接触する面のプリント・サーフ表面粗さが4μm以上15μm以下であり、抽出pHが5未満であることを特徴とする。当該合紙の透気度を5秒以上20秒以下とすることが好ましい。当該合紙の水分を4%以上12%以下とすることが好ましい。坪量を30g/m以上60g/m以下とし、クラーク剛度(縦)を30以上60以下とすることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CTP用平版印刷版の表面を保護する合紙、及びこの合紙とCTP用平版印刷版との積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
平版印刷版における製版方法においては、レーザー光で平版印刷版に直接書き込む製版方法が開発されている。この方法は、従来のフィルム原稿を用いて密着露光する製版方法とは異なり、コンピューターで作成した版下を、フィルム原稿を通さずに、直接レーザー光により平版印刷版に露光し、現像を行うという、CTP(computer to plate)方式などと呼ばれている方法である。
【0003】
このようなCTP方式に対応する平版印刷版(CTP用平版印刷版)は、一般的に、光ラジカル発生剤、アルカリ可溶性バインダー、多官能性のモノマー又はプレポリマーなどを含有する光重合性層(画像形成層)と、この光重合性層の表面に形成され、光重合性層を空気中の酸素から保護する酸素遮断樹脂層を備えている。このような層を有するため、CTP用平版印刷版の表面は柔らかく、軟化しやすい。通常、製造工程においては、CTP用平版印刷版の表面を保護するため、CTP用平版印刷版と合紙とを交互に重ね合わせて、保管・流通させる。しかしながら、平版印刷版と合紙との積層枚数を増やすと、CTP用平版印刷版表面は上述のように柔らかいため、傷つきやすく、また、合紙との間でブロッキング現象が発生し、貼り付きやすくなる。なお、このブロッキング現象は、例えば自動給版装置においてCTP用平版印刷版と合紙との剥離の際に生じるトラブルの原因となる。
【0004】
このような中、画像形成層を保護する目的で、填料の種類と含有量とを規定した合紙が提案されている(特許第4319373号公報参照)。また、CTP用平版印刷版と合紙とのブロッキングを防止するため、表面のベック平滑度を20秒以上60秒以下とした合紙が提案されている(特開2009−23354号公報参照)。この表面のベック平滑度を規定した合紙によれば、比較的平滑な表面を有することで、CTP用平版印刷版とのブロッキングを改善できるとされている。しかしながら、上記いずれの合紙も、CTP用の平版印刷版において、表面の傷付きの発生、及びこの表面とのブロッキングの発生という不都合を十分に解決したものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4319373号公報
【特許文献2】特開2009−23354号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上述のような事情に基づいてなされたものであり、CTP用平版印刷版の表面の傷付き及びこの表面とのブロッキングの発生が低減する合紙、及びこの合紙とCTP用平版印刷版とが交互に積層された積層体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するためになされた発明は、
CTP用平版印刷版の表面を保護する合紙であって、
CTP用平版印刷版の表面と接触する面のプリント・サーフ表面粗さが4μm以上15μm以下であり、
抽出pHが5未満であることを特徴とする。
【0008】
当該合紙によれば、CTP用平版印刷版の表面と接触する面の表面粗さを比較的粗くしているため、CTP用平版印刷版表面との接触面積が少なくなり、ブロッキングの発生を低減することができる。なお、プリント・サーフ表面粗さは、ベック平滑度や正反射平滑度と異なり、表面の微視的な凹凸を評価できるため、ブロッキングの発生に直結する表面形状を直接的に評価することができる。
【0009】
また、当該合紙の抽出pHを5未満と酸性領域にしているため、当該合紙をCTP用平版印刷版表面と接触させた際、CTP用平版印刷版の光重合性層に含まれるアルカリ可溶性バインダーの溶出を抑えることができる。従って、当該合紙によれば、表面の傷付きを抑えることができ、更にこのバインダーが合紙と密着することによって生じるブロッキングの発生をより抑えることができる。
【0010】
当該合紙の透気度を5秒以上20秒以下とすることが好ましい。このように合紙の透気度(通気性)を比較的高くすることで、合紙とCTP用平版印刷版とを重ね合わせた際、CTP用平版印刷版表面に水分が滞在しにくくなる。従って、当該合紙によれば、CTP用平版印刷版の光重合性層に含まれるアルカリ可溶性バインダーの溶出をさらに抑えることができ、その結果、CTP用平版印刷版表面の傷付き及びブロッキングの発生をより抑えることができる。
【0011】
当該合紙の水分を4%以上12%以下とすることが好ましい。当該合紙の水分を上記範囲とすることで、CTP用平版印刷版の光重合性層に含まれるアルカリ可溶性バインダーが合紙に染み込むこと、すなわちこのバインダーの溶出をさらに抑えることができ、その結果、CTP用平版印刷版表面の傷付き及びブロッキングの発生をより抑えることができる。
【0012】
坪量を30g/m以上60g/m以下とし、クラーク剛度(縦)を30以上60以下とすることが好ましい。当該合紙によれば、このように所定の坪量及び腰の強さ(剛度)を備えることで、CTP用平版印刷版と交互に積層した際も、押し潰されにくくなる。従って、当該合紙によれば、CTP用平版印刷版表面の傷付き及びブロッキングの発生をより抑えることができる。
【0013】
本発明の積層体は、CTP用平版印刷版と当該合紙とが交互に積層されてなるものである。当該積層体によれば、当該合紙がCTP用平版印刷版の表面を保護しているため、CTP用平版印刷版の表面の傷付き及び合紙とのブロッキングの発生が低減される。
【0014】
ここで、「プリント・サーフ表面粗さ」とは、JIS−P8151(2004)に記載のプリント・サーフ試験機法による測定値をいう。「抽出pH」とは、JIS−P8133(1998)に記載の水抽出液pHの試験方法による測定値をいう。「透気度」とは、JIS−P8117(2009)に記載のガーレー法による測定値をいう。「水分」とは、JIS−P8127(2010)に記載のロットの水分試験方法−乾燥器による方法による測定値をいう。「坪量」とは、JIS−P8124(1998)に記載の坪量測定方法による測定値をいう。「クラーク剛度」とは、JIS−P8143(2009)に記載のクラークこわさ試験機法による測定値をいう。
【発明の効果】
【0015】
以上説明したように、本発明の合紙によれば、CTP用平版印刷版の表面の傷付き及びこの表面とのブロッキングの発生を低減することができる。従って、当該合紙とCTP用平版印刷版とを交互に積層させることで、品質等を低下させることなくCTP用平版印刷版の保管・流通等を行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の合紙及び積層体の実施の形態を詳説する。
【0017】
<合紙>
本発明の合紙は、CTP用平版印刷版の表面を保護する合紙である。
【0018】
(プリント・サーフ表面粗さ)
当該合紙におけるCTP用平版印刷版の表面と接触する面のプリント・サーフ表面粗さの下限は4μmであり、6μmが好ましい。一方、この面のプリント・サーフ表面粗さの上限は、15μmであり、10μmが好ましい。当該合紙によれば、CTP用平版印刷版の表面と接触する面の表面粗さをこのように比較的粗くしているため、CTP用平版印刷版表面との接触面積が少なくなり、ブロッキングの発生を低減することができる。なお、プリント・サーフ表面粗さは、表面の微視的な凹凸を評価できるため、ブロッキングの発生に直結する表面形状を直接的に評価することができる。
【0019】
ここで、プリント・サーフ表面粗さは、紙試料と平面測定ランドとの間のエアーリークを指定された条件下で測定して、算出するものである。具体的には、プリント・サーフ表面粗さは、流体インピーダンスにより圧損測定からエアリークした流量を計測し、紙表面の平滑度が基準平面(メータリングランド)に対しどれだけ離れているかの平均距離として表される。この際、エア供給溝、メータリングランド、及びエア戻り溝のサイズはそれぞれ51μmであり、従来のエアーリーク式平滑度計で問題であった紙の通気性の影響が最小限化されるため、ブロッキングの発生に直結する表面の微細な凹凸を正確に評価できる。加えて、プリント・サーフ表面粗さの測定においては、実際の印刷ドットに近いスケールでの平滑度測定が行えるため、CTP用平版印刷版に設けられた記録情報に対応した平坦性を評価できる。
【0020】
この面の表面粗さが上記下限未満の場合は、CTP用平版印刷版表面との接触面積が広くなり、ブロッキングが生じやすくなる。逆に、この面の表面粗さが上記上限を超える場合は、凹凸が粗く、CTP用平版印刷版表面の傷付きが生じやすくなる。なお、この表面粗さは、例えば、カレンダーロールの線圧調整や、プレスロールの線圧調整、原料パルプのフリーネスの調整、防滑剤の添加等により調整することができる。
【0021】
(ベック平滑度)
当該合紙におけるCTP用平版印刷版の表面と接触する面のベック平滑度としては、20秒未満が好ましく、5秒以上18秒以下がさらに好ましい。当該合紙によれば、CTP用平版印刷版の表面と接触する面における表面粗さとして、微視的な凹凸状態の指標となるプリント・サーフ表面粗さを上記範囲とすることに加え、全体的(巨視的)な凹凸状態の指標となるベック平滑度を上記範囲とすることで、さらにブロッキングの発生を低減することができる。ベック平滑度が20秒を超える場合は、CTP用平版印刷版表面との接触面積が広くなり、ブロッキングが生じやすくなる。逆に、ベック平滑度が5秒未満の場合は、凹凸が粗く、CTP用平版印刷版表面の傷付きが生じやすくなる。
【0022】
更には、上述のとおり、プリント・サーフ表面粗さは微視的な表面形状評価であるのに対し、ベック平滑度は巨視的な表面形状評価である。そのため、ベック平滑度の値は、紙の表面性以外に紙の通気性の影響も受ける。そのため、当該合紙のようにベック平滑度を低くしようとすると、通気性が高くなり、この形態を達成するためにはパルプ繊維の叩解度を低く抑える必要がある。しかしながら、単に叩解度を抑えると比較的叩解された繊維と叩解されていない繊維とが混在しやすくなるため、上記プリント・サーフ表面粗さが制御しにくくなる。そこで叩解濃度を低めに、例えば3.0%以下に下げ、DDRプレートも好ましくはカッティングプレートを使用し、均一な叩解状態とすることが好ましい。
【0023】
なお、ベック平滑度は、JIS−P8119(1998)ベック平滑度の測定方法に基づき測定することができる。
【0024】
(抽出pH)
当該合紙の抽出pHは、5未満であり、3.5以上4.5以下が好ましい。当該合紙の抽出pHをこのように酸性領域にしているため、当該合紙をCTP用平版印刷版表面と接触させた際、CTP用平版印刷版の光重合性層に含まれるアルカリ可溶性バインダーの溶出を抑えることができる。従って、当該合紙によれば、光重合性層が溶けることによる表面の傷付きを抑えることができ、更に光重合性層中のバインダーが合紙と密着することによって生じるブロッキングの発生をより抑えることができる。
【0025】
この抽出pHが5以上の場合は、光重合性層が溶けやすく、その結果、表面の傷付き及びブロッキングが生じやすい。逆に、この抽出pHが3.5未満の場合は、酸性が強すぎて、合紙の保存性等が低下するとともに、設備腐食の問題が発生するおそれがある。
【0026】
なお、この抽出pHは、例えば、抄紙の際、硫酸アルミニウム(硫酸バンド)、硫酸等の添加剤の種類及び量等を調整することで、所望の範囲に調整することができる。
【0027】
(透気度)
当該合紙の透気度の下限としては、5秒が好ましく、10秒がさらに好ましい。一方、この透気度の上限としては、20秒が好ましく、18秒がさらに好ましい。このように合紙の透気度(通気性)を比較的高くすることで、合紙とCTP用平版印刷版とを重ね合わせた際、CTP用平版印刷版表面に水分が滞在しにくくなる。従って、当該合紙によれば、CTP用平版印刷版の光重合性層に含まれるアルカリ可溶性バインダーの溶出をさらに抑えることができ、その結果、CTP用平版印刷版表面の傷付き及びブロッキングの発生をより抑えることができる。
【0028】
この透気度が、上記下限未満の場合は、CTP用平版印刷版表面に水分が滞在しやすくなり、この水分により、アルカリ可溶性バインダーが溶出し、CTP用平版印刷版表面の傷付き及びブロッキングが発生しやすくなる。逆に、この透気度が上記上限を超える場合は、合紙の強度が低下し、CTP用平版印刷版と交互に積層した際に合紙が潰れ、その結果、CTP用平版印刷版表面の傷付き及びブロッキングが生じやすくなる。なお、この透気度は、合紙の細孔構造を変化させると言う観点から見ると、細孔を形成する天然木材繊維の叩解度を進めることによっても制御は可能であるが、例えば、使用するパルプ繊維のフリーネスや、内添剤及び塗工液の種類及び量、乾燥や、カレンダー処理の際の線圧等を調整することで、所望する値に調整することができる。
【0029】
特には、後述する合紙の水分(ここで言う水分とは、CTP用平版印刷版に互いに重ね合わされる状態における合紙の水分を言う。)との組み合わせによる相乗効果を発揮するため、合紙の水分が過度に気散したり保持されない状態を維持するため、透気度が5秒以上20秒以下に調整することが好ましい。
【0030】
(水分)
当該合紙の水分の下限としては、4%が好ましく、6%がさらに好ましい。一方、この水分の上限としては、12%が好ましく、10%がさらに好ましい。当該合紙の水分を上記範囲とすることで、CTP用平版印刷版の光重合性層に含まれるアルカリ可溶性バインダーが合紙に染み込むこと、すなわちこのバインダーの溶出をさらに抑えることができ、その結果、CTP用平版印刷版表面の傷付き及びブロッキングの発生をより抑えることができる。
【0031】
この水分が上記下限未満の場合は、合紙に含まれる水分が少ないため、アルカリ可溶性バインダーが合紙に染み込みやすく、ブロッキングの発生等が生じやすくなる。また、合紙に含まれる水分が少ないと、静電気による貼り付きが生じやすくなる。逆に、この水分率が上記上限を超える場合は、合紙に含まれる水分により、アルカリ可溶性バインダーが溶けやすくなる場合がある。なお、この水分は、抄紙工程における乾燥ドライヤー条件や、抄紙機の抄速、厚さ、坪量等の調整、シーズニングマシンを使用して加湿する方法などにより調整することができる。
【0032】
特には、CTP用平版印刷版の合紙に提供された際の水分を4%以上12%以下とし、透気度を5秒以上20秒以下に調整する組み合わせが、相乗的に機能し、本発明の課題であるCTP用平版印刷版の表面の傷付き及びこの表面とのブロッキングの発生が低減する合紙の提供に効果的である。
【0033】
(坪量)
当該合紙の坪量の下限としては、30g/mが好ましく、40g/mがさらに好ましい。一方、この坪量の上限としては、60g/mが好ましく、55g/mがさらに好ましい。当該合紙によれば、このように所定の坪量を備えることで、CTP用平版印刷版と交互に積層した際も、押し潰されにくくなる。従って、当該合紙によれば、CTP用平版印刷版表面の傷付き及びブロッキングの発生をより抑えることができる。
【0034】
坪量は、透気度、水分、合紙表面の平坦性及び剛度にも影響を及ぼす項目であり、本発明者等の知見では、CTP用平版印刷版の表面と接触する面のプリント・サーフ表面粗さを4μm以上15μm以下とし、抽出pHを5未満、透気度を5秒以上20秒以下、水分が4%以上12%以下、クラーク剛度(縦)が30以上60以下となるように、坪量を30g/m以上60g/m以下に調整することが、本発明の課題であるCTP用平版印刷版の表面の傷付き及びこの表面とのブロッキングの発生が低減する合紙の提供に効果的である。
【0035】
この坪量が上記下限未満の場合は、押し潰されやすくなり、傷付き及びブロッキングの発生がおこりやすくなる。逆に、この坪量が上記上限を超えると、取扱性が低下するとともに、合紙表面の粗さ調整が困難になるおそれがある。
【0036】
(クラーク剛度(縦))
当該合紙のクラーク剛度(縦)の下限としては、30が好ましく、40がさらに好ましい。一方、このクラーク剛度(縦)の上限としては、60が好ましく、55がさらに好ましい。当該合紙によれば、このように所定の坪量に加えて、所定の腰の強さ(剛度)を備えることで、CTP用平版印刷版と交互に積層した際も、押し潰されにくくなる。従って、当該合紙によれば、CTP用平版印刷版表面の傷付き及びブロッキングの発生をさらに抑えることができる。
【0037】
このクラーク剛度(縦)が上記下限未満の場合は、押し潰されやすくなり、傷付き及びブロッキングの発生がおこりやすくなる。逆に、この剛度が上記上限を超えると、取扱性が低下するおそれがある。
クラーク剛度の調整には、坪量が最も影響するが、原料パルプ種の選択やマシンカレンダーやソフトカレンダー等による平坦化処理により調整可能である。
【0038】
(原料パルプ)
当該合紙の原料パルプとしては、特に限定されず、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)、広葉樹未晒クラフトパルプ(LUKP)、針葉樹晒クラフトパルプ(NUKP)、古紙パルプ(DIP)、機械パルプ(TMP)等を1種類又は2種類以上を混合して用いることができる。
【0039】
これらの原料パルプの中でも、NUKPを含む原料パルプが、適当な剛度を得やすくなるため好ましい。全原料パルプ中のNUKPの含有量としては、50質量%以上が好ましく、70質量%以上がさらに好ましく、90質量%以上100質量%以下がさらに好ましい。
【0040】
当該合紙の原料パルプのフリーネスとしては、400cc以上が好ましく、500cc以上800cc以下がさらに好ましい。原料パルプのフリーネスを上記範囲とすることで
合紙に適度なクッション性及び剛度を付与することができ、CTP用平版印刷版の表面の傷付きをさらに抑えることができる。
【0041】
なお、フリーネスは、JIS−P8121(1995)「パルプのろ水度試験方法」に基づいて測定することができる。
【0042】
(灰分)
当該合紙の灰分としては、1%以下が好ましく、0.001%以上0.3%以下がさらに好ましい。このように灰分を下げることで、CTP用平版印刷版の表面の傷付き発生をさらに抑えることができる。また、灰分を下げる、すなわち、無機填料の含有量を下げることで、これらが触媒的に反応し、アルカリ可溶性バインダーの溶出が加速されることを防ぐことができる。
【0043】
灰分は原料パルプ由来の無機物が含まれるため、極力含有灰分量の多い古紙パルプの含有を避け、好ましくはバージンパルプ100%で製造することが好ましい。古紙パルプを含有させる場合は、2段フローテーターや洗浄を強化した古紙パルプを利用することが好ましく、配合割合を多くとも50%以下に抑えることが好ましい。
【0044】
なお、灰分は、JIS−P8251「紙、板紙及びパルプ−灰分試験方法−525℃燃焼法」に基づき測定することができる。
【0045】
(製造方法)
当該合紙の製造方法としては特に制限されず、公知の製紙方法により製造することができる。例えば、パルプ原料スラリーに必要に応じて紙力増強剤、サイズ剤、歩留向上剤等の添加剤を加え、これを公知の抄紙機にて抄紙し、乾燥することにより得られる。
【0046】
上記添加剤としては公知のものを用いることができ、例えば紙力増強剤としては澱粉類、植物性ガム、水性セルロース誘導体、ポリアクリルアミド等を、サイズ剤としてはロジン、澱粉、CMC(カルボキシルメチルセルロース)、ポリビニルアルコール、アルキルケテンダイマー、ASA(アルケニル無水コハク酸)、中性ロジン等を、また歩留向上剤としてはポリアクリルアミド及びその共重合体、第4級アンモニウム塩等を挙げることができる。紙料スラリーには、さらに必要に応じて染料、顔料等の色料を添加してもよい。
【0047】
抄紙後の原紙には、必要に応じて、塗工やカレンダー処理を施すことができる。
【0048】
上記塗工は、シムサイザー、ゲートロール、2-ロールサイズプレスなどの公知の塗工機で行うことができる。また、塗工に用いる塗工薬品としては、酸化澱粉、高分子PAM、サイズ剤等の公知の薬品を1種又は2種以上を混合して用いることができる。
【0049】
また、上記カレンダー処理に用いられるカレンダー装置としては、例えばスーパーカレンダ、グロスカレンダ、ソフトコンパクトカレンダなどの金属又はドラムと弾性ロールの組み合わせになる各種カレンダーが、オンマシン又はオフマシン仕様で適宜使用できる。
【0050】
<積層体>
本発明の積層体は、CTP用平版印刷版と当該合紙とが交互に(例えば、それぞれ10〜100枚程度)積層されてなるものである。
【0051】
上記CTP用平版印刷版としては特に限定されないが、例えば以下の構造を有するものを挙げることができる。このCTP用平版印刷用版は、少なくとも一方の面側に形成される光重合性層を有する。この光重合性層には、光ラジカル発生剤、アルカリ可溶性バインダー、多官能性のモノマー又はプレポリマーなどを含有する。
【0052】
上記アルカリ可溶性バインダーとしては、ノボラック樹脂、レゾール樹脂、ポリビニルフェノール樹脂、アクリル酸誘導体の共重合体等が挙げられるが、更に、ノボラック樹脂又はポリビニルフェノール樹脂が好ましい。ノボラック樹脂としては、フェノール、m−クレゾール、o−クレゾール、p−クレゾール、2,5−キシレノール、3,5−キシレノール、レゾルシン、ピロガロール、ビスフェノール、ビスフェノール−A、トリスフェノール、o−エチルフェノール、m−エチルフェノール、p−エチルフェノール、プロピルフェノール、n−ブチルフェノール、t−ブチルフェノール、1−ナフトール、2−ナフトール等の芳香族炭化水素類の少なくとも1種を酸性触媒下、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ベンズアルデヒド、フルフラール等のアルデヒド類及び、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類から選ばれた少なくとも1種のアルデヒド類又はケトン類と重縮合させたものが挙げられる。
【0053】
当該積層体によれば、当該合紙がCTP用平版印刷版の表面を保護しているため、CTP用平版印刷版の表面の傷付き及び合紙とのブロッキングの発生が低減される。
【実施例】
【0054】
以下、実施例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0055】
[品質測定方法]
実施例及び比較例で得られた合紙の品質を以下の方法にて測定した。
【0056】
(プリント・サーフ表面粗さ(PS表面粗さ))
JIS−P8151(2004)に記載のプリント・サーフ試験機法に準じ、ソフトバッキングクランプ圧1.0MPaの条件下で測定した。
【0057】
(ベック平滑度)
JIS−P8119(1998)に記載のベック平滑度の測定方法に準じて測定した。
【0058】
(抽出pH)
JIS−P8133(1998)に記載の水抽出液pHの試験方法に準じて測定した。
【0059】
(透気度)
JIS−P8117(2009)に記載のガーレー法に準じて測定した。
【0060】
(水分)
JIS−P8127(2010)に記載のロットの水分試験方法−乾燥器による方法に準じて測定した。
【0061】
(坪量)
JIS−P8124(1998)に記載の坪量測定方法に準じて測定した。
【0062】
(クラーク剛度(縦))
JIS−P8143(2009)に記載のクラークこわさ試験機法に準じて測定した。
【0063】
(灰分)
JIS−P8251に記載の紙、板紙及びパルプ−灰分試験方法−525℃燃焼法に準じて測定した。
【0064】
[実施例1]
原料パルプとして、針葉樹未晒クラフトパルプ(NUKP)を用い、フリーネスが600ccとなるよう叩解した。この原料パルプのスラリーにエマルジョンサイズ剤(ハリマ化成社製 NES555)を固形分換算で0.2%、硫酸バンド(大明化学工業社製 液体硫酸アルミニウム)を固形分で0.75%添加し、多筒ツインワイヤー抄紙機に供給し実施例1のCTP用平版印刷版用の合紙を得た。なお、表面のプリント・サーフ表面粗さが7.2μmとなるように線圧を調整し、プレスロール及びカレンダー処理を行った。
【0065】
[実施例2〜7及び比較例1、2]
表面のプリント・サーフ表面粗さ、抽出pH等を調整するために、硫酸バンドの添加量並びにプレスロール及びカレンダー処理の際の線圧を適宜代え、表1に記載の坪量となるように抄紙したこと以外は、実施例1と同様にして、実施例2〜7及び比較例1、2の合紙を得た。
【0066】
上記実施例及び比較例で得られた各合紙の品質を上記方法にて評価した。評価結果を表1に示す。
【0067】
得られた合紙とCTP用平版印刷版とを、所定の表面粗さにした合紙の表面が、CTP用平版印刷版の表面と重なるように密着させて、1,030mm×800mmのシートに断裁し、これを50組積層して、積層体を得た。なお、このCTP用平版印刷版は、アルカリ可溶性バインダーを含む光重合性層及びこの光重合性層の表面に積層される酸素遮断樹脂層を備えるものである。
【0068】
この積層体をプレートセッターにセットし、自動給版し、合紙がCTP版にブロッキングした枚数(ブロッキング回数)、及び、表面に傷を有するCTP用平版印刷版の枚数(製版傷)を数え、以下の評価を行った。評価結果を表1に示す。
<ブロッキング回数>
◎:ブロッキング回数が50枚中0枚
○:ブロッキング回数が50枚中1枚
△:ブロッキング回数が50枚中2枚
×:ブロッキング回数が50枚中3枚以上
<製版傷>
◎:傷を有するCTP用平版印刷版が50枚中0枚
○:傷を有するCTP用平版印刷版が50枚中1枚
△:傷を有するCTP用平版印刷版が50枚中2枚
×:傷を有するCTP用平版印刷版が50枚中3枚以上
【0069】
【表1】

【0070】
表1に示されるように、実施例の各合紙は、ブロッキング回数及び製版傷が少ないことがわかる。また、これらは、プリント・サーフ表面粗さ、ベック平滑度、坪量、透気度、水分及びpHを所定の範囲に調整することと高い相関性があることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明の合紙は、CTP用平版印刷版の表面を保護する合紙として好適に用いられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
CTP用平版印刷版の表面を保護する合紙であって、
CTP用平版印刷版の表面と接触する面のプリント・サーフ表面粗さが4μm以上15μm以下であり、
抽出pHが5未満であることを特徴とする合紙。
【請求項2】
透気度が5秒以上20秒以下である請求項1に記載の合紙。
【請求項3】
水分が4%以上12%以下である請求項1又は請求項2に記載の合紙。
【請求項4】
坪量が30g/m以上60g/m以下であり、クラーク剛度(縦)が30以上60以下である請求項1、請求項2又は請求項3に記載の合紙。
【請求項5】
CTP用平版印刷版と、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の合紙とが交互に積層されてなる積層体。